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ホヤ由来カロテノイドの抗癌及び抗炎症作用の解明

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Academic year: 2021

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     博士(水産科学)小西いずみ 学位論文題名

ホヤ由来カロテノイドの抗癌及び抗炎症作用の解明 学位論文内容の要旨

  近年、 わが国で は食生活 の乱れに 起因する 生活習慣 病が増加の ー途を辿っている。中で も 、癌 は 日 本人の死 亡原因の 第1位を占め 、その予 防、治療 法の開発 が大きな 課題とな っ ている 。カロテ ノイドは 、抗酸化 作用、免 疫賦活作 用等を示す ことが報告されているが、

癌の予 防効果も 有する。 本研究で は、ユニ ークな構 造をもっカ ロテノイドを複数含み資源 量も豊 富な水ヤ を試料と し、癌の 予防や治 療の研究 で注目され ているアポトーシス誘導効 果を示 すホヤカ ロテノイ ドについ て検討し た。また 、癌をはじ め様々な生活習慣病の予防 に っ な が る 抗 炎 症 効 果 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド の 探 索 と そ の 機 能 性 の 解 明 も 行 っ た。

  第 一 章 では 、ヒト白 血病細胞 株HL‑60細胞に対 する増殖 抑制を示 すカロテ ノイドを ホヤ 中に探 索した。 ホヤに含 まれるカ ロテノイ ドをアセ トンを用い て抽出し、シリカゲル薄層 クロマ トグラフ イーによ り分画し た。得ら れた

Fractionl〜Fraction5の増殖抑制効果を調べた結 果、い ずれの画 分にも抑制 効果がみ られた。特 に 顕 著 な 増 殖 抑 制 効 果 を 示 し たFraction3、 Fraction4を 精製 し 各種 機器分析 により構 造解 析した 結果、Fraction4がfucoxanthinol(I)、

Fraction3がhalocynthiaxanthin(II)であることを 明 ら か に し た 。 次 い で 、fucoxanthinol及 び halocynthiaxanthinと、これまでに報告例のある fucoxanthin(m)の 増殖抑制 効果を比較した結 果、fucoxanthinolが特に強い増殖抑制作用を有 するこ とを見出した。その後、fucoxanthinolや halocynthiaxanthinで処理したHL‑60細胞の形態 を観察 したとこ ろ、アポト ーシス細 胞に特徴的

な 、 アポ ト ーシ ス 小 体に 加 えク ロ マ チン の 凝 集と 細 胞内DNAの 断片 化 がみ られた 。更に fucoxanthinolとhalocynthiaxanthinによるアポトーシス誘導機構を明らかにするためアポト ー シ ス の 制 御 因 子 で あ るBcL‑2タ ン パ ク 質 を ウ エ ス タン ブ ロッ ト 法 によ り 解析 し た 。 Fucoxanthinol、halocynthiaxanthin、fucoxanthinのいずれにおいてもその発現量が低下し、特 に、fucoxanthinolで顕著で あった。 以上より、 これらの カロテノ イドはBcL‑2の発現量の 低下 を引きお こし、そ の結果、癌 細胞でみ られるア ポトーシ スの抑制 を解除することで細 胞死を誘導することが推察された。

  第2章で は 、結 腸 癌Caco‑2、 乳癌MCF‑7、 前 立 腺癌LNcap細 胞 に対 す る 各種カロ テノイ ドの 増殖抑制 能およびアポトーシス誘導能を評価した。その結果、どの癌細胞に対しても、

fucoxanthinol>halocynthiaxanthin>fucoxanthinの順で強いアポトーシス誘導能を示した。ま

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た、カロテノイドの細胞内への取り込みにっいて分析した結果、fucoxanthinolが最も多く蓄 積していることが分かった。Fucoxanthjnolは、f眦oxanthinの末端のアセチル基が脱離し、アル コールが1個多い構造をとる。したがってf.uCoxantbjnよりも親水性が高い。こうした点が fucoxanthinolやhalocynthjax獄Mnの強 いアポトーシス誘導能に関わっているものと推察さ れた。

  一方、近 年の研究 により炎 症と癌を はじめとし た多くの 生活習慣 病の発症間に深い関わ りがある ことが明 らかなっ てきた。 炎症は、急 性炎症と 慢性炎症 に大別され、急性炎症を 引き起こ す細胞外 の刺激因 子であるLPSの刺激によって、細胞から1NF−a、IL_p、IL.6、

IFN‑yな ど の サ イ ト カ イ ン が 誘 導 さ れ る 。第3章で は、マ クロ ファー ジ様

RAW264.7細 胞 を 用 い て 、 炎 症 性 サ イ ト カイン 及び 炎症関 連酵素 のiNOS

COX‑2の遺伝 子発現 に対し て抑 制

効 果 を 示 す ホ ヤ カ ロ テ ノ イ ド の 探 索 を 行 っ た 。 最 初 に 、halocynthiaxanthin 及 び fucoxanthinolに つ い て 炎 症 性 サ イ トカイ ン及 びiNOSCOX‑2

mRNA発現へ の影響 を調 べたが 、両 カ ロテノ イド ともRAW264.7細胞に

対 し て 、 強 い 増 殖 抑 制 を 示 し た が 、 炎 症 関 連 遺 伝 子 へ の 発 現 抑 制 効 果 は 認 め ら れ な か っ た 。 次 に 、FraCtion2 り 抗 炎 症 作 用 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド の 探 索 を 行 っ た 。 HPLCに よ り 検 出 さ れ た Fraction2中 の5つ の ピ ー ク を 精 製 し構造 を解 析し、Fraon21

all0ロ 恥 ‐anoxantMn(W)、Fraction22 an‐カ.ロ門S‐diatOXanndn(V)、FraCtion2‐3

99 ‑cis‑alloxanthin( VI) 、Fraction249cむ ‐alloxannW) 、Fraction25 9cぬ―diatoxanthin(Vm)と 同定 した。 このう ちall.釘ロ 門s−alloxaJlthin、a11‐0ロ門s‐diatoxanthin 9c西 ‐auoXanthin9cむ ‐diatoxannは 、LPSに よ っ て 誘 導 さ れ る 凡 ‐1p、 凡 ‐6COX2お よ iNOSの 耐 氷A発 現 を 、 コ ン トロ ー ル と 比 較し て 有 意 に 抑制 し た 。

  一 方 、 炎 症 反 応 は 、 急 性 炎 症 が 引 き 続 い て 慢 性 化 す る こ と が 多 い 。 炎 症 の 慢 性 化 を 促 進 す る 因 子 と し て 炎 症 に と も な っ て 過 剰 に 発 生 す る 活 性 酸 素 (02. 、H202、 .0H021) お よ び n汀 ‐ aな ど の 炎 症 性 の サ イ ト カ イ ン な ど が あ る 。 第4章 で は 、 ヒ ト 結 腸 癌 細 胞 株HT29 H202n江 ‐Qで 刺 激 す る と 炎 症 性 サ イ ト カ イ ン の 分 泌 が 高 ま る こ と か ら 、 誘 導 さ れ る 凡 ー8 IL1DCOX2mRNA発 現 に 及 ば すall‐ カ ・ ロ 珊 ‐a110xarltmn及 びau‐ ケ ロ 恥 ‐diatoXantMnの 抑 制 効 果 を 検討 し た 。 そ の 結果 、H202に よ り 誘 導さ れ る 凡 ‐1pmRNA発 現 量 が

an0. ロ 恥 ‐alloxanthin及 びall0ロ 恥 .diatoxanthin処 理 に よ り 顕 著 に 低 下 し た 。 更 に 、n汀 .aに よ り 誘 導 さ れ た 、 IL 1D及 び IL8mRNA発 現 量 に つ い て も allI抛 珊 − a110xantbin及 び all‐ ケ ロ 門 ざ ‐diatoxanthinは 抑 制 効 果 を 示 し た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 ホ ヤ 中 に 含 ま れ る カ ロ テ ノ イ ド が 慢 性 炎 症 に 関 わ る 癌 や そ の 他 の 生 活 習 慣 病 に 対 し て も 予 防 効 果 を 期 待 さ せ る 物 質 で あ る こ と を示 す も の で あ った 。

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  第5章 では、カ ロテノイ ドに共通 するイソ プレノイド構造を有した14種類の類縁化合物の 癌細胞に対する増殖抑制効果を調べた結果、phytolとzeaXanthmがHL−60細胞に対して顕著な 増殖抑制を示し、更にphytolはアポトーシス誘導能を示した。また、ph舛ol及びphy1二amcacid がRAW264.7細 胞 に 対し 炎 症性 サ イ トカ イ ン及 びiNOS、COX‐2のmRNA発 現を顕 著に抑制 する ことも明 らかにな った。本 研究では カロテノ イドに加え 、その類 縁化合物においても 癌 細 胞 に 対 す る 強 い ア ポ ト ー シ ス 誘 導 能 と 抗 炎 症 作 用 を 明 ら か に し た 。   本研究では、ホヤに含まれるんcoxanthinol及びha10cynmiaxanぬinの新たな機能性として癌 細 胞 に 対 す る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 能 を 明 ら か に し た 。 更に 、au‐01ロ 珊 ・anoXantMn、 a亅l‐加腦|matoxantbjn及びその9−cis−異性体が広く生活習慣病の予防効果が期待できる抗炎症 作用 を示し、 これが炎 症性サイ トカイン や炎症誘 導酵素の遺 伝子発現 に対する抑制効果を に起 因するこ とをはじ めて明ら かにした 。これら の成果は、 癌や炎症 予防の研究分野にお いて 重要な知 見になる とともに 、機能性 食品への 高度利用や 水産資源 の有効利用の分野に 新たな視点を与える意義深いものである。

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学位論文審査の要旨

主 査   教 授   宮 下 和 夫 副 査   教 授   高 橋 是 太 郎 副 査   准 教 授   細 川 雅 史

学 位 論 文 題 名

ホヤ由来カロテノイドの抗癌及び抗炎症作用の解明

  癌 は 日 本 人 の 死 亡 原 因 の 第1位 を 占 め 、 そ の 予 防 、 治 療 法 の 開 発 が 大 き な 課 題 と な っ て い る 。 カ ロ テ ノ イ ド は 、 抗 酸 化 作 用 、 免疫 賦 活 作用 等 を 示 すこ と が 報 告 さ れ て い る が 、 癌 の 予 防 効 果 に つ い て も 多 くの 疫 学 的研 究 が あ る。

本 研 究 で は 、 ユ ニ ー ク な 構 造 を も っ カ ロ テ ノ イ ド を 複数 含 み 資源 量 も 豊 富な ホ ヤ を 試 料 と し 、 癌 の 予 防 や 治 療 の 研 究 で 注 目 さ れ てい る ア ポト ー シ ス 誘導 効 果 を 示 す ホ ヤ カ ロ テ ノ イ ド に つ い て 検 討 し た 。 ま た、 癌 を はじ め 様 々 な生 活 習 慣 病 の 予 防 に っ な が る 抗 炎 症 効 果 を 有 す る カ ロ テノ イ ド の探 索 と そ の機 能 性 の 解 明 も 行 い 、 以 下 の よ う な 成 果 を 得 た 。

1. ホ ヤ カ ロ テ ノ イ ド の ヒ ト 白 血 病 細 胞 に 対 す る 増 殖 抑 制 効 果   ヒ ト 白 血 病 細 胞 株HL‑60細 胞 に 対 す る 増 殖 抑 制 を 示 す ホ ヤ カ ロ テ ノ イ ド と し て 、 フ コ キ サ ン チ ノ ー ル と ハ ロ シ ン チ ア キ サ ン チ ン を 見 出 した 。 こ れま で に 海 藻 に 含 ま れ る カ ロ テ ノ イ ド 、 フ コ キ サ ン チ ン が 、 ヒ ト 白 血病 細 胞 に対 し て 非 常 に 強 い 増 殖 抑 制 効 果 の あ る こ と が 報 告 さ れ て い る 。 フ コキ サ ン チン の 活 性 は 、 天 然 界 に 存 在 す る カ ロ テ ノ イ ド の 中 で も 最 も 強 い と され て い たが 、 フ コ キ サ ン チ ノ ー ル と ハ ロ シ ン チ ア キ サ ン チ ン の 増 殖 抑 制 作 用は フ コ キサ ン チ ン の そ れ よ り も 強 い こ と を 初 め て 明 ら か に し た 。

2.ホ ヤ カ ロ テ ノ イ ド の ア ポ ト ー シ ス 誘 導 作 用

  フ コ キ サ ン チ ノ ー ル と ハ ロ シ ン チ ア キ サ ン チ ン で 処 理 し たHL‑60細 胞 の 形 態 を 観 察 し た と こ ろ 、 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 に 特 徴 的 に み ら れ る アポ ト ー シス 小 体 に 加 え 、 ク ロ マ チ ン の 凝 集 と 細 胞 内DNAの 断 片 化 が み ら れ た 。 さ ら に 、 フ コ キ サ ン チ ノ ー ル と ハ ロ シ ン チ ア キ サ ン チ ン に よ る ア ポ ト ー シス 誘 導 機構 を 明 ら か に す る た め 、 ア ポ ト ー シ ス の 制 御 因 子 で あ るBcL‑2タ ン パ ク 質 を ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト 法 に よ り 解 析 し た 。 そ の 結 果 、 フ コ キ サ ン チ ノー ル と ハロ シ ン チ ア キ サ ン チ ン の い ず れ に お い て も そ の 発 現 量 が 低 下 し 、 特に 、 フ コキ サ ン チ ノ ー ル で 顕 著 な 低 下 が 見 ら れ た 。 こ の よ う に 、 ホ ヤ カ ロ テノ イ ド はBcL‑

2の 発 現 量 の 低 下 を 引 き お こ し 、 そ の 結 果 、 癌 細 胞 で み ら れ る ア ポ ト ー シ ス の 抑 制 を 解 除 す る こ と で 細 胞 死 を 誘 導 す る こ と を 明 ら か に し た 。 3. ホ ヤ カ ロ テ ノ イ ド の 各 種 癌 細 胞 に 対 す る 増 殖 抑 制 効 果   結 腸 癌Caco‑2、 乳 癌MCF―7、 前 立 腺 癌LNcap細 胞 に 対 す る フ コ キ サ ン チ ノ ー ル と ハ ロ シ ン チ ア キ サ ン チ ン 並 び に フ コ キ サ ン チ ン の 増 殖抑 制 能 およ び ア ポ ト ー シ ス 誘 導 能 を 評 価 し た 。 そ の 結 果 、 ど の 癌 細 胞 に 対 し て も 、

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(水産科学)の学位を授与される資格のあるものと判定した。

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参照

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