1/3
論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨の公表
学位規則第 8 条に基づき、論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を公表する。
○氏名 土屋 吉史(つちや よしふみ)
○学位の種類 博士(スポーツ健康科学)
○授与番号 甲 第 1105 号
○授与年月日 2016 年 3 月 31 日
○学位授与の要件 本学学位規程第 18 条第 1 項 学位規則第 4 条第 1 項
○学位論文の題名 一過性の運動に対するイリシンの分泌応答に関する研究
○審査委員 (主査)後藤 一成(立命館大学スポーツ健康科学部准教授)
真田 樹義 (立命館大学スポーツ健康科学部教授)
橋本 健志(立命館大学スポーツ健康科学部准教授)
石井 直方(東京大学大学院総合文化研究科教授)
<論文の内容の要旨>
イリシンはおもに骨格筋から産生される新規の生理活性物質(マイオカイン)であり、
代謝活性の低い白色脂肪細胞の褐色化を誘導する役割が注目されている。本論文では、ヒ トを対象に一過性の運動に対するイリシンの分泌動態を、5つの研究課題を通して検討した。
その結果、有酸素性運動を用いた研究課題では、高強度(最大酸素摂取量の 80%に相当す る運動強度)の有酸素性運動が低強度(最大酸素摂取量の 40%に相当する運動強度)の有 酸素性運動に比較してイリシンの分泌応答の亢進に有効であること(研究課題 1)、中強度 の有酸素性運動であっても十分な運動時間(120分間)を設けることでイリシンの分泌応答 は亢進することが明らかになった(研究課題 2)。また、下肢筋群における伸張性筋活動を 強調した下り勾配での30分間の走運動は、水平面での走運動に比較してイリシンの分泌応 答を亢進させることから、筋収縮様式の相違もイリシンの分泌増大に影響すると考えられ た(研究課題4)。全身の筋群に対する 8種目のレジスタンス運動を用いた研究課題では、
運動終了 1 時間後に血中イリシン濃度の有意な上昇が認められ、その際の分泌応答は有酸 素性運動に比較して有意に大きいものであった(研究課題 3)。一方で、片脚の大腿四頭筋 への電気刺激を用いた低強度(最大随意収縮の 25%)による筋収縮では、イリシンの分泌 応答は増大しなかった(研究課題 5)。したがって、レジスタンス運動では運動強度や動員 筋量もイリシンの分泌応答に影響するものと考えられた。
2/3
これらの研究結果から、一過性の運動はイリシンの分泌応答を増大させること、特に、
高強度での有酸素性運動や全身の筋群に対するレジスタンス運動、中強度で長時間の有酸 素性運動後に、血中イリシン濃度は大きく上昇することが明らかになった。したがって、
本研究は、イリシンの分泌応答の増大に有効な運動条件や分泌増大に影響する要因を提示 したものと考えられる。
<論文審査の結果の要旨>
本論文は、一過性の運動がイリシンの分泌応答に及ぼす影響を検討したものであり、
特に、下記の点を高く評価できる。
1.近年発見された生理活性物質であるイリシンに焦点をあて、様々な条件設定での運動 に対する分泌応答の様相を明らかにした点から学術的意義および新規性に優れること。
2.関連する先行研究の調査が十分になされており、問題の所在が明確に記述されている こと。
3.5つの研究課題を通して研究方法が適切であり、得られたデータの妥当性および信頼 性が高いこと。
4.各研究課題から得られた知見が適切に考察されており、論文全体を通して完成度が高 いこと。
5.研究成果が2編の国際誌に掲載されていること。
以上の審査結果から、審査委員会は本論文が博士学位を授与するにふさわしい研究であ るとの結果に至った。
<試験または学力確認の結果の要旨>
本博士学位請求論文に関して、2016 年 1 月 27 日(水)12 時 50 分〜13 時 40 分にかけて インテグレーションコア 2 階大会議室において公聴会を実施し、続いて、13 時 45 分より 14 時 20 分まで同場所にて口頭試問を行った。公聴会において申請者は出席者の質問に対 して十分な回答と説明を行い、本研究の意図、成果について参加者の理解は深まったもの と評価できる。審査委員 4 名で行った口頭試問においては、この分野における研究能力な らびにその基礎となる豊かな学識について確認し、その上で論文の新規性・独創性を高く 評価することができた。
本学位申請者は、本学学位規程第 18 条第 1 項該当者であり、論文内容、公聴会ならびに 口頭試問の質疑応答を通じて、十分な学識を有し、課程博士学位に相応しい学力を有して いることを確認した。
3/3
以上の諸点を総合し、本学位申請者に対して、博士(スポーツ健康科学 立命館大学)の 学位を授与することを適当と判断した。