平成 29 年度博士後期課程学位論文
空気粘性とエッジの非線形復元力を 考慮したスピーカの振動音響解析
渡邉 光春
群馬大学大学院 理工学府
理工学専攻 知能機械創製理工学領域
目 次
第1章 序論 ... 1
1-1 研究背景 ... 1
1-2 スピーカの動作原理 ... 2
1-3 スピーカの一般的な周波数特性予測に関して ... 3
1-4 スピーカのひずみについて ... 4
1-5 音響伝搬における空気粘性の影響 ... 5
1-6 研究目的 ... 6
第2章 非線形バネで支持された振動板の有限要素法による解析 ―振動板の2次ひず みの低減技術- ... 7
2-1 緒言 ... 7
2-2 シミュレーションモデル ... 8
2-3 基礎式 ... 10
2-3-1 非線形集中バネ(振動板のエッジの復元力特性)の離散化方程式 ... 10
2-3-2 振動板(円板モデル)の離散化方程式 ... 12
2-3-3 振動板(円板モデル)と集中バネとを連結した系の離散化方程式 ... 13
2-3-4 モード減衰の近似計算 ... 13
2-3-5 基準座標への変換について ... 16
2-4 FEMシミュレーション ... 18
2-4-1 計算条件 ... 18
2-4-2 固有値解析 ... 18
2-4-3 非線形過渡応答解析 ... 22
2-4-4 周期加振解析 ... 28
2-4-5 ボイスコイル部加振 ... 36
2-4-6 ボイスコイル部加振 非線形応答解析 ... 37
2-4-7 エッジ違いのスピーカのひずみ率測定結果 ... 50
2-5 結論 ... 51
第3章 空気粘性を考慮した有限要素解析 ... 53
3-1 緒言 ... 53
3-2 基礎式 ... 55
3-3 理論概要 ... 57
3-4 エネルギー式の定式化... 60
3-4-1 ひずみエネルギー𝑼 ... 60
3-4-2 運動エネルギー 𝑻 ... 75
3-4-3 ポテンシャルエネルギー𝑽... 76
3-4-4 粘性エネルギー𝑫 ... 76
3-4-5 運動方程式導出 ... 84
3-4-6 プログラムのための定式化 ... 87
3-5 3次元音場での粒子速度と密度... 90
3-6 音響管の理論式 ... 93
3-7 FEM Simulation ... 94
3-7-1 Simulation Model ... 94
3-7-2 Simulation 結果 ... 95
3-8 イヤーシミュレータの実測とシミュレーション ... 100
3-9 結論 ... 103
第4章 結論 ... 105
参考文献 ... 107
謝 辞 ... 111
1
第 1 章 序論
1-1 研究背景
音響変換機,いわゆるスピーカは,ホームオーディオ,車載用,テレビ,パソコン,
携帯電話,ヘッドホン,イヤホンなど様々な製品に必要不可欠なものである.また,
電車,駅,公共施設や災害用の連絡スピーカなどインフラとしても必要なものである.
スピーカの駆動方式の種類はいくつか種類があるが,もっとも世の中で普及,使用 されている駆動方式はダイナミック型と言われるものである.また,ホームオーディ オ用の一般的なスピーカのスピーカユニットと一般的なイヤホンに入っているスピー カユニットは大きさが全く違うが駆動方式は同じである.
近年,テレビ,パソコン等は急速に薄型軽量化となり,スマートフォンなどの新し い製品も生み出されている.また自動車も同様に軽量化を促進している動きがある.
そのためスピーカも薄型,軽量化を求められている.その上,とても狭いスペースに 収めなければならないことも多く,周りの部品との隙間や取り付け方法により,音響 調整が難しくなる.さらに,小型化した上で,大きなスピーカユニットと同程度の音 量を求められることもある.そのため,振動板の振幅を大きくしなければならない.
所望の特性を得るために,最近ではシミュレーション(CAE)を使った特性予測や 解析,最適化などの手法を使うことも多くなっている.
スピーカのシミュレーションによる特性予測,最適化は,磁気の非線形な部分,電 気と構造,または音響と構造の連成など電気-機械-音響が絡む様々な要素があり,完全 な特性予測は出来ていないと言える.
スピーカにおけるシミュレーションでの問題点はいくつかある.本研究では2つの 問題点に注目した.
一つはスピーカの振動板が大きな振幅となった時の振幅や,振動部の傾きなどによ る振動板のひずみについての非線形のシミュレーションとその低減方法.
二つ目として,スピーカを小型化,省スペース化した際の音響伝搬における空気粘 性と熱減衰の影響を考慮に入れたシミュレーションである.
2
本章ではまず,スピーカの動作原理について説明し,特性予測についての過去の研 究を記述する.その後,本研究の焦点であるひずみと空気粘性の説明を行い,最後に 目的を述べる.
1-2 スピーカの動作原理
一般的な外磁型スピーカの構成を以下の図1-1に示す.ヨークと呼ばれる凸型の土 台にドーナツ型の永久磁石(マグネット)が接着されている.その上にプレートが接着 される,真ん中にはボイスコイルがヨークの突起部分とプレート,マグネットの間の 隙間に収まる.ボイスコイルは,紙や樹脂で作られたボイスコイルボビンと呼ばれる ものに巻かれている,ボイスコイルには,振動を支えるためのスパイダー,あるいは ダンパーと呼ばれる部品が付いている.ボイスコイルの先にはスピーカの音を出す肝 となる振動板が取り付けられており,その外周にはエッジと呼ばれる,振動板の動き を制御,支えるための部品が取り付けられている.振動板,エッジ,スパイダー,ボイ スコイルを合わせて,振動系部品と呼ぶ.プレートにはスピーカ全体の支えとなるフ レームが接着されている.スピーカの基本的な構成は以上である.
図1-1.ダイナミックスピーカの断面図
マグネット ボイスコイル
スパイダー(ダンパー)
フレーム
振動板(コーン)
端子
エッジ(サラウンド)
3
マグネットとヨークには磁界が生じており,ボイスコイルを貫いていている.ボイ スコイルに電流を入力すると,フレミングの左手の法則より,磁界の影響を受け,力 が生じ,振動板とエッジ,スパイダー,ボイスコイルが一体となって動く,音楽信号 などの交流信号が入力されることによって,プラス,マイナスの向きに交互に電流が 流れるため,力の生じる向きが変化することにより振動となる.振動板が前面の空気 を押し出す,あるいは引き込むことにより,空気中に振動が伝搬し,音波となって音 が生じる.以上が簡単なスピーカの原理である [1] [2] [3].ダイナミック型のスピーカ 以外にはコンデンサ型や圧電型といったスピーカがあるが,一般的にダイナミック型 が使用される.
1-3 スピーカの一般的な周波数特性予測に関 して
スピーカの周波数特性予測は電気.機械,音響系を電気回路で表した等価回路が良 く用いられる.等価回路はOlsonやBeranekが詳細にまとめている [3] [4].近年はスピー カの開発、設計では質量、スティフネス、機械抵抗の値が細かく示されているThiele Smallパラメータ(T/Sパラメータ)と呼ばれるパラメータから計算されることが多い [5]
[6] [7].このパラメータはスピーカを等価回路に置き換えた時の各部品の質量やバネ成 分などのパラメータをまとめたものを指す.スピーカでは良く知られた方法である.
この等価回路を解き出力値を得る.最近では,振動板の大振幅の場合を考慮した
Klippelの測定計算も知られてきている [8].振動系のパラメータを非線形等価回路定数
とした研究もある [9].これらの方法に関しては,スピーカがピストンモーションを行 うごく低域周波数だけに適用でき,高次モードや後に説明するひずみが生じる場合は 適用することが難しい.
また,Poldyはスピーカから発展し,ヘッドホンやイヤホンの特性予測に関して記述
している.狭い,空間やスリットに関して減衰を含んだ等価回路パラメータとして表 わしている [10].
4
1-4 スピーカのひずみについて
スピーカは,動作原理で説明したように振動系部品が振動することにより,音とし て放射される.振動系部品が常に上下に同じ距離で一定に動くことが理想である.し かし,様々な原因により,振動系部品が一定に動作しない場合があり,そのことによ り,入力に対して,振動,または音に余計な成分が入ってしまう.これをひずみと呼 ぶ,基本的にスピーカのひずみはいくつか種類がある.1つ目は高調波ひずみと呼ばれ るものである.ある周波数の正弦波を入力した時に出力波に入力した周波数以外に生 じる2倍,3倍・・・n倍の正弦波を第n次高調波ひずみと呼ぶ.スピーカに加えられる電 気信号に対し,振動板を駆動する力が比例しなくなる駆動力の非直線性,駆動力に対 し振動板の振幅が比例しなくなる振動支持系の非直線性により発生する. 2つ目は混 変調ひずみと呼ばれるものである.異なる2つの周波数成分が同時にスピーカに入力さ れた時,2つの周波数の和や差,又はそのn倍数の和や差の周波数成分がf2の近傍に現 われる.これを混変調ひずみという.混変調ひずみは(i)(ii)に分けられる.(i)振動板の 移動によるが音源の駆動力に伴うドップラー効果に起因するよる周波数変調ひずみ (FM変調),(ii)低い周波数f1の影響で高い周波数が変調を受けたような形になる振幅変 調ひずみ(AM変調)である.高調波ひずみ,混変調ひずみ,いずれもJIS C5532で測定方 法が規定されている [11].3つ目は過渡ひずみである.入力を入れた時に,振動板が動 くまで,または信号が止まる際には入力と出力に差ができ,その差によるひずみを過 渡ひずみと呼ぶ.4つ目は位相ひずみである.基本音に対する倍音成分があわさり複合 音となる.倍音成分の位相が変化することにより,複合音の成分が変化する.これを 位相ひずみと呼ぶ.また,振動板の跳躍現象によりひずみが生じることも報告されて いる [12].
以上のようにスピーカで発生するひずみはいくつか種類があるが,スピーカでは,
高調波ひずみが問題とされることが多い.スピーカのひずみの低減に関しては沢山報 告がある.Novakらはスピーカの非線形調波振動に関して,振動板の速度を測定しフィ ードバックすることで非線形ひずみを低減している.しかしこの方法だと,一点で観 測して制御しているので振動板全体に適用することは難しい [13].ニコラスらはスピ ーカの振動板を円板と円環の組み合わせに置き換えて,幾何学的非線形性を考慮した 振動解析を行っている [14] [15] [16].これは振幅が大きい場合に,曲げ変形と面内変 形の連成に基づいて発生する張力を考慮するものである.この場合は振動板およびエ ッジ部は平板となっており,振動板の復元力の正方向と負方向の非対称性の影響によ る二次ひずみは想定されない.スピーカの非線形ひずみを低減させる研究もいくつか
5
ある.クリッペルやGreinerのようにスピーカ前面に加速度計やマイクなどのセンサを 設置し,その信号よりフィードバック回路を用いて電気的にひずみの低減を行うとい う方法が多く見られる [17] [18].電気的にひずみを低減するものは多く見られ,機械 的な低減方法は少ない.本研究は機械的なひずみ低減方法に着目する.
1-5 音響伝搬における空気粘性の影響
スピーカは動作原理で説明したようなユニット単体で動作をするが,基本的にユ ニット単体で使用することは少ない,スピーカシステムでは,木箱や樹脂の箱に取り つく.ヘッドホンやイヤホンでは,樹脂や金属などのケースに取りつく.車載の場合 はドアに取り付くことが多い.取り付くものや場所により,周りの空間から影響を受 けスピーカの音圧特性が変化する.いわゆる,ヘルムホルツ現象などによって,共振 などが起きる.スピーカの周りが大きな空間であればそれほど特性に影響は起きな い.しかし,ヘッドホンなどの狭い空間やスマートフォンや車載の隙間など,狭い空 間については影響を大きく受ける.狭い隙間(スリット)や細い管となるところは空 気粘性の影響が大きい.また熱による減衰も起きる.このような,スリットや細管な どが入り組んだ空間の音響特性は予測が難しい.狭い空間における空気粘性の音への 影響についての研究は以前から報告がいくつかある.円筒管内の音響伝搬に関するキ ルヒホッフ理論 [19]は,粘性と熱的効果を一般的に記述している.この理論は応用面 で複雑である.音響基礎式に関しては円形断面でない場合,解くのが非常に困難な可 能性がある.粘性と熱的効果を独立して扱った単純化モデルがZwikker &Kostenによ り円形断面の場合について構築された [20].可聴周波数におけるこのモデルの有効性 は後にTiJdemanやKergomard,Stinsonにより証明された [21] [22] [23].このモデルに 関して,スリットや円形断面を持つ円筒管の粘性効果を記述する際に用いられる.ま た,Biotは円管での周波数の影響を含んだ粒子速度分布を示した [24] [25].Ida Reyt らはレーザードップラー振動計を使い,管内の速度分布を視覚的に捉えている [26].
VeltmanやAtalla,,Yamamotoはスリット,角管,円管における粘性の影響の違いをそ れぞれの場合について,整理しまとめている [27] [28] [29] [30].
これらの研究により狭い隙間や細い円管等の粘性による影響は明らかになった.直 線的な隙間や円管を計算することは可能となる.しかし,スピーカの取り付け場所や ヘッドホンやイヤホンは本来直線的な隙間や円管だけではない.隙間の長さや,円管 の径が連続的に変化する場合もある.変化する隙間や円管に対して理論的に計算する
6
ことは難しい.本研究では隙間が複雑な形状の場合に着目する.
1-6 研究目的
第2章で振動板のエッジの非線形復元力特性を考慮に入れた非線形振動解析を行う.
これより,スピーカの二次ひずみの低減方法について記述する.有限要素でモデル化 した振動板の周縁に非線形バネを設置した.このバネはスピーカの部品ではエッジの 部品となる.周縁のバネは線形複素バネと二次および三次の非線形バネで表現した.
エッジの形状による非線形ひずみの低減効果について非線形応答解析により検討する.
周縁部の円周に取り付けた二次の非線形バネの符号を変化させて振動解析を行い,二 次ひずみへの影響を明らかにする.
第3章で,空気粘性の影響について記述する.圧縮性粘性流体として空気粘性によ る減衰を考慮した粒子速度未知数とした有限要素の定式化を行う.定式化した式を用 いて,簡単な細管モデルを用意し,FEMシミュレーションを行う.これと音響管内の 音圧分布の空気粘性を考慮した理論値と比較する.複素密度,複素音速を用いて,音 圧を未知数としたFEMによる計算も行う.以上の3つの解析結果を比較し,提案する空 気粘性を定式化したシミュレーションの妥当性を検証した.さらに,一般的にイヤホ ン,ヘッドホンの測定やダミーヘッドの耳に取り付いているイヤーシミュレータのモ デルを使用して,解析結果の検証を行った.
第4章にまとめを記述する.
7
第 2 章 非線形バネで支持された振 動 板 の 有 限 要 素 法 に よ る 解 析
―振動板の 2 次ひずみの低減技術-
2-1 緒言
本章では振動板の周縁に非線形複素バネ複数設置し,非線形複素バネの設置方法に よる二次ひずみの低減効果を調べた.三次ひずみの低減に関しては考慮していない.
振動板が振動した際に発生する二次ひずみの低減を目的としている.振動板とその周 縁にバネをもつものの一例としてはスピーカが上げられる.スピーカはダイヤフラム とその周縁部に振動板の動きを調節するためのエッジと呼ばれる部品が付いており,
このエッジが非線形複素バネに相当すると考えられる.(例として挙げたスピーカには 振動系にコイル部を支持するダンパー(スパイダー)という部品も付いており振動を 調節する役割を担っているが,エッジの影響について着目しているので,このダンパ ーは考えていない.)従来から非線形ばねを用いた系の振動の特性の研究は行われてい る.例えば,近藤らは Beamを連結した構造について非線形支持をし,その強制振動に ついて,高速な安定判別法を提案している [31].Shawらはビームの両側の端を単純に 支持し,その中央を非線形集中ばねで支持した系について非線形モーダル解析を行っ ている [32].一方,山口らはブロック状の構造物を,線形の有限要素を使い.弾性体 でモデル化した.それを非線形集中ばねで支持した系の連成振動の解析を行っている [33] [34] [35].山口らの解析では,応答の高速演算法を提案している.線形固有振動形 に対応する基準座標を導入することにより実現した.この方法を拡張し,粘弾性ブロ ックに線形ヒステリシス減衰を復元力に与えた1個の非線形集中ばねが接続し,その 定式化を行っている [36].笹島らはイヤホン振動板の振動特性に関して非線形バネを 用いて検討している [37].また,スピーカに注目した非線形振動解析の研究も従来か ら行われている.Novak らはスピーカの非線形調波振動に関して,振動板の速度を測 定しフィードバックすることで非線形ひずみを低減している.しかしこの方法だと,
一点で観測して制御しているので振動板全体に適用することは難しい [13].Nicholas らはスピーカの振動板を円板と円環の組み合わせに置き換えて,幾何学的非線形性を 考慮した振動解析を行っている [16] [15] [14].これは振幅が大きい場合に,曲げ変形 と面内変形の連成に基づいて発生する張力を考慮するものである.この場合は振動板
8
およびエッジ部は平板となっており,振動板の復元力の正方向と負方向の非対称性の 影響による二次ひずみは想定されない.スピーカの非線形ひずみを低減させる研究も いくつかある.Klippel や Greiner のようにスピーカ前面に加速度計やマイクなどのセ ンサを設置し,その信号よりフィードバック回路を用いて電気的にひずみの低減を行 うという方法が多く見られる [17] [18].
本研究では有限要素でモデル化した振動板の周縁にバネを設置した.周縁のバネは 線形複素バネと二次および三次の非線形バネで表現した.形状による非線形ひずみの 低減効果について非線形応答解析により検討する.周縁部の円周に取り付けた二次の 非線形バネの符号を変化させて振動解析を行い,二次ひずみへの低減効果を明らかに した.
2-2 シミュレーションモデル
本研究におけるシミュレーションモデルを図2-1に示した.振動板を単純な円板と し,その周縁部に64個の非線形複素バネを等間隔で設置している.非線形複素バネは,
解析メッシュモデルの節点がある位置に取り付けられる.
非線形バネは線形バネと異なり2次の非線形項に関しては方向が存在し,バネの方 向により異なった振る舞いとなる.図 2-1 のように円板の周縁に非線形バネの一端が 取り付けられる.バネのもう片方の端部は動かないように固定されている.非線形複 素バネは第2節で説明する復元力が方向によって変わる.図2-1のUpと書かれた方向 に取り付けたバネの復元力は図 2-3 の実線(Up)である,以降このバネをバネ(Up)と 記述する.図 2-1 のDownと書かれた復元力は図 2-3の破線(Down)である.以降この バネをバネ(Down)とする.バネ(Up)とバネ(Down)は偶数次のバネ定数の符号が逆に なっている.このことから非線形バネ(Up)と非線形バネ(Down)を混合することにより 2次等の偶数項の非線形ひずみが低減されるはずである.
シミュレーションモデルはまず円周に取り付くバネの全部を非線形バネ(Up)にし たモデル,円周の 1/2 バネ(Up),残り1/2 バネ(Down)にしたモデル,同様に1/4,1/8,
1/16,1/32,1/64ごとに非線形バネのUp, Downが入れ変わるモデルを用意した.
図2-2 にスピーカの場合の例を示した.図2-2(a)が全て Upのモデルに相当し図2-
2(b)が全てDownのモデルに相当すると考えられる.図2-2(c)や2-2(d)はUpとDownが
混在したモデルと考えられる.
9 Diaphragm
Surround
(b) Down-roll Surround (a) Up-roll Surround
(c) Corrugation Surround (d) Corrugation Surround
図2-2. スピーカエッジの種類
図2-1. 振動板と非線形バネについて.
Size ϕ93 mm
t=0.5mm(thickness)
Diaphragm
Up Down
Excitation point and
Observation point
x = 0 mm y = 21.6 mm z = 16.5 mm
x z y
For example Loudspeaker
Diaphragm
Surround (Nonlinear spring) Nonlinear
spring
10
2-3 基礎式
2-3-1 非線形集中バネ(振動板のエッジの復元力特性)の離散化
方程式
バネ(Down)の場合を考える.非線形ばねと振動板の円板モデルが繋がる節点aにお ける x方向変位をUaxと置く,この時,バネによる節点力Rax_downが次式で与えられる 場合を考える.
. (2-1) バネ(Up)の場合,節点力Rax_upはが以下のようになる.
. (2-2)
式(2-1)の関係を行列式として表わすと次式となる.
, (2-3)
上式のr,Us, , はそれぞれ
, (2-4)
, (2-5)
,
(2-6)
, (2-7)
3 3 2 2
1 ax ax ax
down
ax γU γ U γ U
R _
αx αx
αx up
αx
γ U γ U γ U
R
_
1
2
3d U r γ 1 s
R
ax_down, R
ay_down, R
az_down
Tr
ax ay az
Ts
U , U , U
U
0 0 0
0 0 0
0
1 0
1
γ
γ
2U
ax2γ
3U
ax3, 0 , 0
Td
11 -8
-6 -4 -2 0 2 4 6 8
-8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8
R
αx[N ]
U
αx[mm]
Up Down Linear
ただし,Ray_down=Raz_down=0, 1は複素定数である.
式(2-2)に関して,式(2-7)は式(2-7’)のようになる
, (2-7’)
本稿におけるγ1の値はγ1 = 0.29(1 + 0.01j),Re(γ1) = 0.29 [N/mm]とした.γ1の復元力 には,虚部にエッジ部のヒステリシス減衰を考慮した.実際のスピーカの数値を参考 に調整した [13].
γ
2U
ax2γ
3U
ax3, 0 , 0
Td
図2-3. up- and down-springsの復元力
γ1 = 0.29[N/mm]
γ2 = 0.29[N/mm2] γ3 = 0.29[N/mm3]
-0.4 -0.2 0 0.2 0.4
-8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8
R
αx[N ]
U
αx[mm]
Up Down Linear
※原点近傍拡大図
12
2-3-2 振動板(円板モデル)の離散化方程式
振動板となる円板モデルは三次元の有限要素で分割する.円板モデルには微小変形 を仮定し,通常の線形三次元有限要素を使用する.すなわち,要素内部における変位 ベクトルUbをUb = {Ux, Uy, Uz}Tとおき,形状関数NT と節点変位ベクトルUeを用いて Ubを次式のように近似する.
, (2-8)
本報告では非適合モードを考慮したアイソパラメトリックソリッド要素で円板を モデル化した [38].
応力ベクトルσとひずみベクトルεとの関係は次式となる.
, (2-9)
Dはポアソン比とヤング率の関係で構成される.ひずみベクトル εとUbとの関係 は 次式となる.
, (2-10)
(2-11)
これら,式(2-7)~式(2-10)を用い要素のポテンシャルエネルギーV,およびひずみエ ネルギーU,運動エネルギーTを求める.そのエネルギーにラグランジュの方程式を用 いると,振動板となる円板モデルの離散化方程式は以下の式で表わされる.
(2-12) e
T
b
N U
U
D
e
b
BU
AU
, AN B ,
A T
x z
y z x y
z y x
0 0
0 0 0
0 0
0 0
e e e e
e
M U K U
F
13
2-3-3 振動板(円板モデル)と集中バネとを連結した系の離散
化方程式
x方向の非線形集中バネによる節点力,すなわち式 (2-3) のrを円板モデルとバネ の接合している節点αの節点力に加える.以上により全系の離散化方程式が得られる.
(2-13)
式(2-3)におけるF は節点力ベクトル,K は複素剛性行列,Mは質量行列,Uは全 系の変位ベクトルである.𝐝̂は𝐝 ̅を全系の大きさに変換したベクトルである.
2-3-4 モード減衰の近似計算
モード減衰の近似式を導くために,モードひずみエネルギー法 [39]を全要素の材料 損失係数が異なる一般化した条件に拡張して適用する.式(2-12)で非線形復元力項,
外力項を0とする.U = ϕexp(jωt)を仮定すると,次式の複素固有値問題の式となる.
(2-14)
ここで,Meは要素質量行列,KReは要素剛性行列の実部を表わしている.(ω(i))2は 複素固有値の実部,ϕ(i)は複素固有モード,(i)はi次の振動モードを表している. は モード損失係数である.またemaxは要素の数を表しており,材料減衰ηe, (e = 1, 2, 3,…..,
emax)に関して,全要素の中で最大となるηをηmaxとする.このηeとηmaxの関係を以下
のβeを用いて表す.
d ˆ KU U M
F
K
M
0
max1
1 2
1
e
e
i i e tot Re
e jη ω
jη
14
(2-15)
ηmax<<1 と仮定して,微小量 μ=jηmaxを導入する.これらを用いて式(2-14)の解を展
開すると次式のとなる.
i
i μ
i μ
i ,...2 2 1
0
(2-16)
4 2 ,...2 4 2 2 2
0
2 i i i
i
(2-17) i 1 i 3 3 i 5 5 i 7 7 i ,...
jtot (2-18)
ただし,βe≦1であり,ηmaxβe<<1が成り立つことから,μβeもμと同様に微小量とな る.ϕ(i)0, ϕ(i)1, ϕ(i)2…,(ω0(i)
)2, (ω2(i)
)2, (ω4(i)
)2,…およびη1(i), η3(i), η5(i)…..,は,いずれも実数 とする.
さらに,これらの式(2-16)~式(2-18)を式(2-14)に代入しμ0とμ1の量でまとめると.
μ0に関しては
max
1
0 2
0 e
e
i e i
Re
M 0
K
(2-19)
μ1に関しては
1
max
e ee
β
η
β η ,
15
(2-20)
さらに式(2-19)と式(2-20)を整理すると,以下の式を得る
max e
e i e e i
tot η S
η
1
(2-21)
ただし,
max
1
0 0
0 0
e
e
i Re iT i
Re iT i
S
e K K
(2-22)
であり,i次の振動モードで変形した条件での各要素のひずみエネルギー分担率である.
ϕ(i)0 は実固有モードで式(2-19)から求めることができる.同時に式(2-19)から共振周波 数 ω(i)/2π
ω0(i)/2π を求めることができる.式(2-21)からモード損失係数 ηtot(i)は材料減 衰 ηeとひずみエネルギー分担率 Se(i)との積について,全要素に対する和から近似計算 をすることが可能である.ここで,ηeSe(i)は各要素の散逸エネルギーの分担量に相当す る.モード損失係数ηtot(i)への影響が大きい場合は,分担量が大きな要素となる.なお,この減衰特性の近似計算に関しては,著者らが粘弾性体と弾性体を組み合わせたもの と同様な形式である [40] [41].実験と理論解は微小な変形条件で行われた.
max
1
max
1
1 2
0 0
2 0 e
e
e e
i e i Re i
e i i i Re
eK M K M 0
16
2-3-5 基準座標への変換について
式(2-12)に示した物理座標系における運動方程式では自由度が大きい.そのため,
直接の計算では膨大に時間がかかってしまう.そこで,自由度を縮小するために式(2- 12)に基準座標を導入する.これは線形固有振動モードに対応する.ただし,線形固有 モード ϕ(i)はϕ(i)0であり,ϕ(i) ≅ ϕ(i)0と近似できるとする.この ϕ(i)0に対応する基準座 標biを導入する.変位{u}に関してbiを用いて以下の式で表現できる.
1
0
1
i
i i i
n b
u ~ ~
(2-23)
ただし,
1 , 1 ,
0 0
i i
i i i
m
n n
~
, 1
0 0 0
0
i T i i T im
i ~
~ M M
である.
式(2-23)を式(2-13)へ代入しϕ(i)0の直交性を利用して整理すると,基準座標系におけ る全系の離散化運動方程式として次式が得られる.
i i j k
i l k j ijkl k
j k
ijk i i
i i toti i
i b b b D b b E bb b P
b
M ~ ~ ~ 2~ ~ ~ ~ ~ ~~ ~ ~ 0
(2-24) ただし
17
α
αkx αjx αix k i ijk i
n n γ n
D ~ ~ ~ ~
2
α
αlx αkx αjx αix l k i
i
ijkl
n n n
γ n
E ~ ~ ~ ~ ~
3
f
~
iTi
i
n
P
0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ,
~
3iz 3iy 3ix 2iz 2iy 2ix 1iz 1iy 1ix
i , , , , , , , ,
0
また,ϕαixは振動板となる円板モデルと非線形集中バネの接合節点αにおけるx方 向のi次固有ベクトルϕ~(i)0の成分である.
式(2-24)は線形固有振動系に対応した基準座標である についての非線形連立三次 常微分方程式である.なお,式(2-24)に出てくる右辺第二項の減衰項であるが,定式化 のプロセスで式(2-21)と同様の形式を得ることができる.よって,スムーズに式(2-24) にモード損失係数ηtot(i)を導入できる.
また,ηtot(i)は微小変形条件のひずみエネルギーから式(2-21)を用いて求めている.基 準座標 に関して,式(2-24)を用いると,物理座標における離散化方程式(2-13)に比べて,
大幅に計算で必要となる自由度を削減することが可能である.後述である計算例では 約5000自由度であるが,基準座標においては40自由度程度の計算となる.
18
2-4 FEM シミュレーション
2-4-1 計算条件
計算条件を示す.ヤング率は1.82×107 [kPa],密度5.44×10-7 [kg/mm3],ポアソン比 0.29 である.また,取り付けた1次のバネ定数は0.29[N/mm],2 次の非線形バネ定数
は 0.29[N/mm2],3 次の非線形バネのバネ定数は 0.29[N/mm3]である.減衰定数は𝜂𝑠=
0.01.以上の条件で固有値解析を行った後,非線形応答解析を行う.
2-4-2 固有値解析
応答解析をする準備として,固有値解析を行い,固有モードを求めた.図3に結果 を示す. 1次の共振周波数は161Hzとなった.2次モード以降は図に示した通りであ る.人間の可聴帯域,すなわちスピーカの有効帯域は 20~20kHzまでである.その周 波数帯域内のモード数は34モード存在する.本研究の解析モデルに関しては,解析規 模の関係上10kHz程度が限界であるので高い周波数のモードの掲載は割愛する.モー ド1~3は振動板が剛体振動し,周縁のバネが変形する.これらのモード減衰は周縁部 の減衰値0.01に近くなっている.モード4から振動板の弾性変形が現れる.モード減 衰は,エッジの減衰0.01 と振動板の材料減衰値0.001 の中間の値となる.さらに高次 モードになるにつれて周縁のバネの影響が小さくなり,モード減衰は振動板の材料減
衰0.001に近くなる.
19
MODE1 161 [Hz]
MODE2 229 [Hz]
MODE3 229 [Hz]
3 299 .
0
e
tot(a) mode1
(b) mode2
1 0 98 e
2η
tot.
2 299
0
e
ηtot .
(c) mode3
MODE4 1182 [Hz]
4 015e2ηtot .
(d) mode4
MODE5 1210 [Hz]
5 215
0
e
η
tot.
(e) mode5
20
MODE9 4406 [Hz]
MODE6 1932 [Hz]
6 0 11 e
2η
tot.
(f) mode6
MODE7 2743 [Hz]
7 0 11 e
2η
tot.
(g) mode7
MODE8 2743[Hz]
8 0 11 e
2η
tot.
(h) mode8
9 0 10 e
2η
tot.
(i) mode9
MODE10 4500 [Hz]
10 0 10 e
2η
tot.
(j) mode10
21
MODE11 4837 [Hz]
11 210 0
e
η
tot.
(k) mode11
MODE12 4970 [Hz]
12 0 10 e
2η
tot.
(l) mode12
MODE13
7730 [Hz]
13 0 10 e
2η
tot.
(m) mode13
MODE14 7765 [Hz]
14 210
0
e
η
tot.
(n) mode14
MODE15
7779 [Hz]
15 0 10 e
2η
tot.
(o) mode15
MODE16 7807 [Hz]
16 210 0
e
η
tot.
(p) mode16
図2-4. 固有値解析結果
22
2-4-3 非線形過渡応答解析
固有値解析の結果を元に,振動板と非線形バネの基本的な動作を観測するために非 線形過渡応答解析を行いまとめた.加振点の位置については,半径方向の振動の節や 山とならないよう,中心と半径を整数に分割する点は避け,1点を選んだ.図2-1の座 標が書いてある位置が加振点である.入力は半三角波パルスとした.パルスの最大値 FをF = 0.98[N], 9.8[N], 49.0[N], 98.0[N].と変化させて与え時刻歴波形を求めたパルス
幅は [sec]とした.時間波形の周波数分析をした.その時の FFT ポイント数は
4096でサンプリング周期は [sec]とした.以上よりシミュレーション結果を図2- 5に示す.
まず全て Up 方向に非線形バネを取り付けたモデル(All Up)に注目する.横軸は周 波数,縦軸は変位のフーリエスペクトルであり,dBで示している.グラフから入力が
0.98[N]と小さい場合にはまだ 2 次,3 次のひずみは出てこない.入力が 9.8[N]以上に
なると2次,3次と非線形ひずみが顕著に現れている.入力がF=49.0[N]を超えてくる と高周波数領域で波形が大きく乱れる.
非線形バネを円周の半分 Down にしたモデル(half)に注目すると,非線形ひずみの 低減効果はあまり見られない.入力F=98.0[N]の結果を見ると,600[Hz]~1[kHz]付近で はむしろひずみが増えてしまう結果となっている.
次に,非線形バネを1/4毎にUpとDownを逆にしたモデル(quarter)に注目すると,
入力F=9.8[N]の時点で全てUp方向に非線形バネを取り付けたモデルと差が出ている.
周波数 320[Hz]および 460[Hz]付近に現れているピーク(f=160[Hz],f=230[Hz]の2 次ひ
ずみと考えられるひずみ)が低減していることがわかる.低減のレベルは入力が大きく なるとより顕著となることが分かった.
1/8 毎に非線形バネの Up とDownを交互に取り付けたモデルに注目する.F=9.8[N]
では 200[Hz]から 1[kHz]付近の 2 次の非線形ひずみに関して,ほぼキャンセルされて
いる.F=49.0[N],98.0[N]においても1/4の時よりさらに200[Hz]~800[Hz]付近のひず みが大幅に改善されている.
さらに1/8よりも多く分割した1/16~1/64に関してはグラフを見る限りでは1/8か ら大幅なひずみ低減効果の向上は見られない.つまり,実際の設計を考えた場合に1/8 の分割数が機械振動という観点から見れば最適であると言える.ただし強度の面など から考えた場合にはさらなる分割による効果が得られる可能性はある.
23 (a) All Up
(b) Half (1/2) -100
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60
10 100 1000
Fourie r Spectr um of Displace ment [dB]
Frequency[Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60
10 100 1000
Fourier Sp ec trum of Displacement [dB]
Frequency[Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
24 (c) Quarter (1/4)
(d) 1/8 -100
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60
10 100 1000
Fourier Sp ec trum of Displacement [dB]
Frequency[Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60
10 100 1000
Fourier Sp ec trum of Displacement [dB]
Frequency[Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
25 (e) 1/16
(f) 1/32 -100
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60
10 100 1000
Fourier Sp ectr um of Disp lace ment [dB]
Frequency[Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60
10 100 1000
Fourier Sp ec trum of Displacement [dB]
Frequency[Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
26 -100
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60
10 100 1000
Fourier Sp ec trum of Displacement [dB]
Frequency[Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
図2-5.シミュレーション結果. (過渡応答)
(g) 1/64
27
-60 -40 -20 0 20 40 60
10 100 1000
F o uri er spectrum o f D is pl a cem ent [dB]
Frequency[Hz]
All_Up 1/16
図2-6 は2次ひずみの低減の様子をわかりやすくするために,入力 F=98.0[N]の時
のAll_Upと1/16のみを比較した.図2-6を見るとAll Upに比べ,1/16の2次ひずみ
が低減している.特に300[Hz]から1[kHz]の範囲で大幅にひずみが改善されている.さ
らに約390[Hz]付近では1次と2次が加算された結合調波が現れているが,これもスペ
クトルが大幅に低減している.
図2-6.All-up と 1/16の結果比較. (過渡応答) Mode1: 161 Hz
Mode2: 229 Hz Approx. 460 Hz
Approx. 322 Hz the secondary strain
the secondary strain
Mode1+Mode2: 390 Hz combination note
28
2-4-4 周期加振解析
前述の過渡応答解析では,入力がインパルス入力であるため全周波数帯域が応答と して出力されてしまう.そのため,どのモードの周波数が他の周波数の応答に影響を 与えているのかが分かりにくい.そこで,過渡応答解析と同様のモデルについて周期 加振を行った場合の応答を観測し,ひずみと高次モードとの関係を明確にする.
加振周波数は1次モード周波数の9割,144.9[Hz]で加振した.入力の大きさは過渡 応答解析と同様の加振力で行い,観測点も加振点と同様の節点である.
シミュレーション結果を図 2-7 に示す.まず F=0.98[N]の時を比較すると,All Up は入力周波数の2倍,3倍,4倍の周波数にピークが立つことが分かる.次にhalfに関
してはAll Upとほぼ変わらない結果となっており,二次ひずみの低減効果はあまりな
いと言える.バネの正負のピッチが 1/4以上になると 2 次のひずみとさらにその4次 のひずみが徐々に低減している.1/64にいては,2 倍と 4 倍の高調波ひずみはほぼキ ャンセルされている.しかし1/16は低減効果があまり得られない結果となった.原因 については究明中である.また図 2-7(a-2~g-2)は周期加振の時間波形である.時間波 形からも波形のひずみとエッジの種類の関係は同様のことが言える.
29
(a-1) 周波数スペクトラム All up
(a-2)時間波形 All up
-40 -20 0 20 40 60 80
20 200 2000
Fourier Spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
Time domain of Displacement [mm]
Time [s]
F=0.98[N] F=9.8[N] F=49.0[N]
30
-40 -20 0 20 40 60 80
20 200 2000
Fourier Spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
Time domain of Displacement [mm]
Time [s]
F=0.98[N] F=9.8[N] F=49.0[N]
(b-1) 周波数スペクトラム1/2
(b-2)時間波形 1/2
31
(c-2) 時間波形 1/4
(c-1) 周波数スペクトラム 1/4
-40 -20 0 20 40 60 80
20 200 2000
Fourier Spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
Time domain of Displacement [mm]
Time [s]
F=0.98[N] F=9.8[N] F-49.0[N]
32
(d-1) 周波数スペクトラム 1/8
(d-2) 時間波形 1/8
-40 -20 0 20 40 60 80
20 200 2000
Fourier Spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
Time domain of Displacement [mm]
Time [s]
F=0.98[N] F=9.8[N] F=49.0[N]
33
(e-1) 周波数スペクトラム 1/16
(e-2) 時間波形 1/16
-40 -20 0 20 40 60 80
20 200 2000
Fourier Spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
Time domain of Displacement [mm]
Time [s]
F=0.98[N] F=9.8[N] F=49.0[N]
34
-40 -20 0 20 40 60 80
20 200 2000
Fourier Spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
(f-1) 周波数スペクトラム 1/32
(f-2) 時間波形 1/32
-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
Time domain of Displacement [mm]
Time [s]
F=0.98[N] F=9.8[N] F=49.0[N]
35
(g-1) 周波数スペクトラム 1/64
(g-2) 時間波形 1/64
図2-7. シミュレーション結果. ( 周期加振)
-40 -20 0 20 40 60 80
20 200 2000
Fourier Spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
Time domain of Displacement [mm]
Time [s]
F=0.98[N] F=9.8[N] F=49.0[N]
36
2-4-5 ボイスコイル部加振
ここまでは,振動板のある一点を加振し,1点の応答を観測してきた.実際の音響 変換機はボイスコイルに電流が流れ,マグネットからの磁束との相互作用で振動する.
その動力を振動板,エッジに伝え振動する.そのため,実際はボイスコイル部分を加 振し な く ては な ら ない . そ こで ス ピ ーカ の 一 般的 な ボ イス コ イ ル径 で あ る直 径
φ20[mm]のボイスコイルを想定し,前述のモデルのメッシュを切りなおした.図2-8に
そのメッシュモデルを示す.メッシュモデルのボイスコイル部分にあたる φ20[mm]の 円は 24点の節点で示されており,この24点を同時に加振することでボイスコイルを 加振していることに相当する.
まず,最初の1点加振を行ったとき同様に固有値解析を行った.その結果点加振を 行ったときと同様の固有値を得ることができた.
ボイスコイル位置
円形に配置される 24 節点が加振点
図2-8. ボイスコイル位置加振のメッシュモデル
ボイスコイル
37
2-4-6
ボイスコイル部加振 非線形応答解析以上のような条件で,前述のシミュレーションと同様に過渡応答と周期加振応答解 析を行った.入力の節点が24点であることから,1点を加振した時と同様の入力値を それぞれの節点に入力してしまうと,出力値が大きくなってしまう.入力値はそれぞ れの節点に対して1点を加振した時の1/24の入力値を入力した.また観測する節点は,
過渡解析,周期加振解析とほぼ同じ位置での節点を選んだ.
まず,過渡応答の出力結果を図 2-9 に示す.ボイスコイル位置を加振した場合,1 点を加振した時とは違い,円形にZ方向に入力が入るため,mode2,mode4のような傾 モードがあまり表れていない.ALL-UPの結果を見てみるとmode1の2倍,3倍,4倍 といったひずみが低い周波数では支配的である.それとは対照的に,バネの方向が半 分ずつ違う half(1/2)はボイスコイル位置加振をした場合でも mode2,mode4 のピーク は入力が少し大きくなると表れてくる結果となっている.そのためAll-up よりもむし ろひずみが多く含まれるので2次ひずみの低減効果にはならない.
1/4の結果を見ると,1次モードの 2 次ひずみである322[Hz]のピークが抑えられ,
4次のひずみのピークは消えていることがわかる.
1/8になると入力を多少大きくしても 2次ひずみもほぼ消えていることがわかる.
1[kHz]以下の周波数においては1/8以上UpとDownのピッチを増やしても,1点加振
同様ほぼ変化がないことが分かった.1[kHz]以上になると1/8ピッチのひずみが一番低 減されている.
38 (a)All up
(b)Half (1/2)
-120 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60
20 200 2,000
Fourier spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-120 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60
20 200 2,000
Fourier spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
39 (c)Quarter (1/4)
(d)1/8
-120 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60
20 200 2,000
Fourier spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-120 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60
20 200 2,000
Fourier spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
40 (e)1/16
(f)1/32
-120 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60
20 200 2,000
Fourier spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]
-120 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60
20 200 2,000
Fourier spectrum of Displacement [dB]
Frequency [Hz]
F=98.0[N]
F=49.0[N]
F=9.8[N]
F=0.98[N]