社交不安症の診断と評価
朝倉 聡
北海道大学保健センター・大学院医学研究科精神医学分野 要約 社交不安症(SAD)は,他者の注視を浴びる可能性のある社交場面に対する著しい恐怖または不安 を特徴とし,自身の振る舞いや不安症状を見せることで,恥をかいたり恥ずかしい思いをしたり,拒 絶されたり,他者の迷惑になったりして否定的な評価を受けることを恐れる病態とされる。DSM-5 では特定する病型に関する記述が変更されており,DSM-IVでは,多くの社交状況で著しい恐怖感, 不安感が出現し回避行動が多くなる全般性を特定することになっていたが,DSM-5では,行為状況 のみに状況が限定されるものをパフォーマンス限局型と特定することになった。また,「他者の迷惑 になるだろう」と恐れることが診断基準に加えられ,わが国の対人恐怖をSADとして診断する方向 となった。しかし,自己臭恐怖,醜貌恐怖が日本語名のまま他の特定される強迫症および関連症に分 類されることになったことは混乱をきたしやすい。SADの臨床症状評価尺度としてはLiebowitzSocial Anxiety Scale (LSAS)が使用されることが多く,その日本語版であるLSAS-Jは信頼性,妥当
性が検証され臨床試験にも使用されている。また,わが国の対人恐怖症状も含めて評価できる社交不 安/対人恐怖評価尺度(Social Anxiety/Taijin-kyofu Scale; SATS)も紹介した。
キーワード:社交不安症,対人恐怖,Liebowitz Social Anxiety Scale (LSAS),Social
Anxiety/Taijin-kyofu Scale(SATS)
【はじめに】
社交不安症(social anxiety disorder; SAD)は,
2013年に改訂された米国精神医学会による精
神疾患の診断・統計マニュアルであるDSM-5
(American Psychiatric Association, 2013)によ ると,他者の注視を浴びる可能性のある社交場 面に対する著しい恐怖または不安を特徴とし, 自身の振る舞いや不安症状を見せることで,恥 をかいたり恥ずかしい思いをしたり,拒絶され たり,他者の迷惑になったりして否定的な評価 を受けることを恐れる病態とされる。このため 社会的状況を回避することが多くなり日常生活 に大きな支障をきたすことになる。 SAD患者の不安や恐怖感の出現あるいは回 避の対象となる状況としては,人前で会話や書 字,公共の場所で飲食,あまりよく知らない人 との面談などが挙げられる。例えば,話をして いるときに声が震えたり顔が引きつったりして いると他の人に気づかれて恥ずかしい思いをす るのではないかと考えて非常に不安になる。ま た,手が震えていることに気づかれるのではな いかと心配になり,他の人がいるところでもの を食べたり,何かを書いたりすることを避ける こともある。試験など他の人から評価される状 況も苦手である。これらの状況では,ほとんど いつも不安症状を体験している。不安に伴う生 理的反応が現れやすく,紅潮,動悸,振戦,声 の震え,発汗,胃腸の不快感,下痢などが見ら れやすい。 SADは発症年齢が早く,75%程度の人は8∼ 15歳に発症するとされ(American Psychiatric Association, 2013),このため,児童青年期に おける不登校の要因としても重要と考えられ る。また,治療的な介入がなされないと長期間 持続し,後にうつ病性障害やアルコール依存な 特集:社交不安症 〈総 説〉
どの他の精神障害が併存してくることが多くな ることにも注意が必要である。ほとんどの例で
SADが先行して発症し,他の精神障害が併存し
てくると自殺企図の危険性が高まることなども
指摘されているため(Stein et al., 2001),SAD
の早期発見や早期介入の必要性が望まれている と考えられる。
SAD は,1980 年 に DSM-III(American Psychiatric Association, 1980)において,社交 恐怖(social phobia)としてその診断基準が 示されて以降,欧米では多くの研究が行われる ようになった。以前はまれな病態であるとの 認識であったが,大規模な疫学調査で高い生涯 有病率であることが示され,さらに社会生活上 の障害も大きいことが明らかとなり,SADは 「認識されず治療されなかった重大な障害」で あるという考えが一挙に広まった(American Psychiatric Association, 1994)。また,治療につ いては,薬物療法や認知行動療法などの精神療 法の有効性に関する研究も多く行われており, 臨床症状評価尺度も開発されている。わが国に おいては,現在SADの治療薬として選択的セ ロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin
reuptake inhibitor; SSRI) である fluvoxamine
とparoxetineが保険適応として認可されてい る。SADの日本語表記については,「社会不安 障害」とされていたが,2008年の日本精神神 経学会による精神神経学用語集より「社交不安 障害」と表記されることになった(日本精神神 経学会,2008)。また,DSM-5におけるsocial
anxiety disorder(social phobia)の日本語表記 は「社交不安症/社交不安障害(社交恐怖)」 となされることになった(日本精神神経学会, 2014)。 わが国においては,社交場面や対人交流場面 で強い不安感や緊張感が生じて日常生活に困難 をきたすSADと類似の病態について「対人恐 怖」として1930年代より研究がなされてきた。 対人恐怖という言葉は,精神医学用語としての みならず,一般社会でもよく使われるものに なっていると思われる。わが国での対人恐怖に ついての研究は,神経症と精神病の境界領域に 関わる精神病理学的検討や森田療法をはじめと する精神療法的介入など多岐にわたっている が,このような病態については他の国からの報 告は少なかった。このため,対人恐怖について は,わが国の社会文化的背景に密接に関連して 発症する文化結合症候群(ある地域,民族,文 化環境において発症しやすい精神疾患)と考え られることが多かった。しかし,DSM-III以降, 世界各国でわが国の対人恐怖と類似の病態であ ると考えられるSADが高頻度に発症している ことが明らかとなり,SADと対人恐怖の関係 についても議論がなされるようになってきてい る。 本稿では,SADの診断,臨床症状評価等に ついて,わが国の対人恐怖との関係も含めて概 説してみたい。 【SADの診断】 DSMにおけるSADの診断の変遷について整
理してみたい。DSM-III, DSM-III-R(American
Psychiatric Association, 1987) では SAD は
social phobiaという診断名であった。DSM-III
で,臨床症候群を表すI軸診断として診断基準 が示されたが,ここでは,人前で話をしたり,人 前で字を書いたり,会食をしたり,公衆トイレを 使用したりするような特定の社会的状況に対す る恐怖が強調されていた。主にある行為状況に 対する恐怖,不安症状が示されおり,単一恐怖 の一種という程度の認識であった。また,全般 的な社交的状況に対する恐怖症状あるいは回避 行動をとる症例はパーソナリティ障害を表すII 軸診断の回避性パーソナリティ障害に分類され ることになっていた。その後,診断基準が示さ れたことにより大規模な疫学調査(epidemiologic
catchment area; ECA)(Schneier et al., 1992)
などが行われ,SADは,典型的な発症年齢が
10歳代半ばと早く,有病率が高く,うつ病性
示された。さらにSAD患者は,特定の社会的 な行為状況のみならず多くの社交的状況で困難 をきたしており,学業や職業上また婚姻や日常 の社会生活全般に大きな障害をきたしているこ とが明らかとなってきた。 これらを踏まえ,DSM-III-Rでの大きな変更 点は,1つあるいは2つ程度の状況のみならず 多くの社交的状況で恐怖,不安症状や回避行動 を示す全般性の特定をすることになった点であ る。ここで,SADは非全般性と全般性の2つの 亜型に分類されることになった。 さらに,DSM-IVでは,人目に付く赤面,震 え,発汗などの不安症状を恐れることが診断基 準に明記されるようになった。社会的状況で出 現するこれらの不安症状をコントロールできな くなる経験にとらわれ,予期不安の悪循環に陥 り,このため他者からの注目や恥ずかしい振る 舞いをしてしまうのではないかということを恐 れることが示された。診断名も,social phobia
からsocial phobia (social anxiety disorder)と変 更された。
DSM-5においては,診断名はsocial anxiety disorder(social phobia)となり,SADが主な 診断名になった。また,恐怖する状況の多さは SADの重症度に関連する要因と考えられるた め全般性を特定するのではなく,人前で話をし たり演技をしたりする行為状況のみに状況が限 定されるものをパフォーマンス限局型と特定す ることになった。わが国の対人恐怖では,対人 交流場面での恐怖,不安症状を中心に考えられ ており,DSM-IIIのSADの診断基準が示され たときに,そこでは特定の行為状況における恐 怖感が主に指摘されていたため,対人恐怖と SADとの関係を考える場合に問題となってい た。DSM-5でパフォーマンス限局型を特定す る変更がなされたことにより,SADの中核群 をより対人恐怖に近い病態と理解できるように なると思われる。また,自分が恥をかかされた り,恥ずかしい思いをしたりすることを恐れる ことに加え,他者に迷惑をかけることを恐れる ことが記載された。他者に迷惑をかけることを 恐れる加害性については,特にわが国の対人恐 怖の研究で指摘されていた症状と考えられ興味 深い。自分の体から不快な臭いが出て周囲の人 に迷惑をかけているのではないか,自分の視線 がきつくて周囲の人に嫌な思いをさせているの ではないか,あるいは自分の外見が周囲の人に 嫌な印象を与えるのではないかなどのように, 対人性をもつ身体的欠点の存在を確信するとい う自己臭恐怖,自己視線恐怖や醜形恐怖など は,わが国では確信型対人恐怖として検討され てきた。これらの確信型対人恐怖とSADとの 関係を検討するうえで問題であった恐怖の不合 理性の認識は,必要とされなくなっている。さ らに,文化に関連する診断的事項として,「対 人恐怖症(例:日本と韓国の)という症候群は, しばしば,社会的評価への懸念によって特徴づ けられ,社交不安症の基準を満たしており,そ の人が他の人たちを不快にさせているという恐 怖と関連しており(例:私の視線が人々をいら だたせるので彼らは目をそらし私を避ける), この恐れは時に妄想的な強さで経験される。こ の症状はアジア以外の状況でも見られるかもし れない」と記載され,DSM-5はわが国の対人 恐怖をSADとして診断していく方向で考えら れており,対人恐怖は日本以外の文化圏にも存 在しうる可能性を示唆している。DSM-5の診 断基準の要点をTable 1に示す。
SADの研究が進むにつれ,DSM-IIIから
III-R, IV, 5へと,より病態の把握が洗練されてきて いる。さらに,今後,DSM-5により検討され ることになるとSADとわが国の対人恐怖との 関係についても明らかになってくる点が多いの ではないかと考えられる。 【SADの併存精神疾患】 SADの臨床では,併存精神疾患について考慮 することは重要である。米国で行われたNational Comorbidity Survey (NCS)による疫学調査で は,SAD患者1,077例の6割近くに併存精神疾
患が見られ,SAD以外の不安症が56%,うつ病
性障害が42%,アルコール依存が40%であっ
たという(Kessler et al., 1999)。
独 国 で の14∼24歳 の 若 年 者 の 一 般 人 口
2,548例を対象とし,34∼50カ月間前方視的
に 経 過 を 追 っ たEarly Development Stages of
Psychopathology Study(EDSP)によると,調
査開始時にSADの診断がなされた人は7.2%で あり,精神疾患の診断がなされなかった人に比 べ経過観察期間中に3.5倍うつ病エピソードを 経験していたという(Stein et al., 2001)。さらに 調査開始時にSADとうつ病性障害が併存してい る例ではSADが併存していないうつ病性障害の 例と比較し2.3倍うつ病期間の持続あるいは再発 が見られ,自殺企図は6.1倍見られた。このこ とから,SADはうつ病性障害の発症危険因子で あるだけではなく,うつ病性障害の経過の増悪 因子であることも指摘され,SADとうつ病性障 害の併存例には治療反応性や経過について慎重 な対応が求められると考えられる。さらに,併 存する抑うつ症状が双極性うつ病の可能性がな いかどうかも検討する必要がある。米国で行わ れた National Comorbidity Survey Replication
(NCS-R)においては,双極性障害に不安症は 74.9%併存し,その中でSADが37.8%と最も多 かったとされている(Merikangas et al., 2007)。 最近行われた, Achim et al. (2011)による52 の研究の4,032例を対象としたメタ解析の結果 では,統合失調症圏の疾患に対する不安症の併 存率は38.3%であり,その中でSADは14.9%と
Table 1 DSM-5によるSADの診断基準の要点(American Psychiatric Association, 2013)
A. 他者の注視を浴びる可能性のある1つ以上の社交場面に対する,著しい恐怖または不安。例として, 社交的なやり取り(例:雑談すること,よく知らない人に会うこと),見られること(例:食べたり 飲んだりすること),他者の前で何らかの動作をすること(例:談話をすること)が含まれる。 注:子どもの場合,その不安は成人との交流だけでなく,仲間たちとの状況でも起きるものでなけ ればならない。 B. その人は,ある振る舞いをするか,または不安症状を見せることが,否定的な評価を受けることにな ると恐れている(すなわち,恥をかいたり恥ずかしい思いをするだろう,拒絶されたり,他者の迷惑 になるだろう)。 C. その社交的状況はほとんど常に恐怖または不安を誘発する。 注:子どもの場合,泣く,かんしゃく,凍りつく,まといつく,縮みあがる,または,社交的状況 で話せないという形で,その恐怖または不安が表現されることがある。 D. その社交的状況は回避され,または,強い恐怖または不安を感じながら耐え忍ばれる。 E. その恐怖または不安は,その社交的状況がもたらす現実の危険や,その社会文化的背景に釣り合わな い。 F. その恐怖,不安,または回避は持続的であり,典型的には6カ月以上続く。 G. その恐怖,不安,または回避は,臨床的に意味のある苦痛,または社会的,職業的,または他の重要 な領域における機能障害を引き起こしている。 H. その恐怖,不安,または回避は,物質(例:乱用薬物,医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作 用によるものではない。 I. その恐怖,不安,または回避は,パニック症,醜形恐怖症,自閉スペクトラム症といった他の精神疾 患の症状では,うまく説明できない。 J. 他の医学的疾患(例:パーキンソン病,肥満,熱傷や負傷による醜形)が存在する場合,その恐怖, 不安,または回避は,明らかに医学的疾患とは無関係または過剰である。 該当すれば特定せよ パフォーマンス限局型:その恐怖が公衆の面前で話したり動作をしたりすることに限定されている場合
最 も 高 か っ た と い う。Edinburgh High-Risk
Studyにおいては,SAD症状は統合失調症の発
症の危険度を高める因子であることが指摘され ている(Johnstone et al., 2005)。SADの併存は 統合失調症の精神病症状の重症度とも関連が指
摘されており,SAD症状は妄想症状をより強
めるとされ(Lysaker et al., 2010),統合失調症
の経過に影響を及ぼし,日常生活能力の低下を もたらすという。
米国におけるNational Epidemiologic Survey
on Alcohol and Related Conditions(NESARC)
では,SADの生涯診断がなされる人の48%は
アルコール使用障害の生涯診断がなされたとさ れる(Grant et al., 2005)。SAD患者における
アルコール使用障害の12カ月有病率は13.1%
とされ,一般人口におけるアルコール使用障害
の12カ月有病率の8.5%と比較し高いとされる
(Grant et al., 2004)。また,SADを併存するア
ルコール使用障害では,SADを併存しないア ルコール使用障害と比較し,より重度のアル コール依存となりやすく,うつ病エピソードも 伴いやすく,社会的支援も受けにくいことが指 摘されている(Thevos et al., 1999)。 このように,SADは発症年齢が早く,その 後,他の精神疾患が併存してきやすいことが考 えられる。他の精神疾患が併存してくる前に SADに早期に介入し治療的対応を行うことは, SADに併存しやすい他の精神疾患の予防とい う観点からも重要と考えられる。 【わが国における対人恐怖】 対人恐怖は「他人と同席する場面で,不当に 強い不安と精神的緊張が生じ,そのため他人に 軽 されるのではないか,他人に不快な感じを 与えるのではないか,いやがられるのではない かと案じ,対人関係から身を退こうとする神経 症の一型」と定義されてきた(笠原,1993)。 このような病態については,わが国では多くの 報告が見られたが,DSM-IIIによるSADの診 断基準が提出される以前は他の国からの報告が 少なかったことから,特にわが国における社会 文化的背景が注目され,文化結合症候群とも考 えられていた。 その後,わが国では1960年代頃からは自分 の体から不快な臭いが出て周囲の人に迷惑をか けているのではないか,自分の視線がきつくて 周囲の人に嫌な思いをさせているのではない か,あるいは自分の外見が周囲の人に嫌な印象 を与えるのではないかなどのように自分の身体 的欠点が他人に不快感を与えていることを悩む 患者が注目されるようになった。これらは自己 臭恐怖や自己視線恐怖,醜形恐怖などと身体的 欠点の確信部位によって分類されて呼ばれてい たが,山下(1977)はこれらの患者を対人恐怖 定型例としてまとめ,その特徴として,自分の 臭いや視線,表情,容姿などについての対人性 をもつ欠点の存在,その存在に関する確信はき わめて強固であるという確信性,その欠点は相 手の行動などから直感的に感じとられるという 関係妄想性,この妄想体験は一定の状況内にと どまり,それ以上発展することはないという妄 想体験の限局性と生育歴や性格,状況要因など から症状形成が了解的に把握できるという了解 性を見いだしている。 さらに,わが国における対人恐怖と言う場合 でも,研究者によって用いられる概念,用語は 異なっていた(Figure 1)。山下は対人恐怖を対 人恐怖軽症例と対人恐怖定型例に2分したが, 1997年には操作的な国際分類も考慮しほぼ同 様な概念を緊張型対人恐怖と確信型対人恐怖と 呼び変えている(山下,1997)。笠原ら(1972) は対人恐怖を4群に分け,第1群:青春期とい う発達段階に一時的に見られるもの,第2群: 恐怖症段階にとどまるもの,第3群:関係妄想 性を帯びているもの(重症対人恐怖症),第4 群:前統合失調症症状,統合失調症回復期に見 られるもの,としている。植元ら(1967)は特 に妄想的確信をもっている患者に着目し,思春 期妄想症という名称を付けて研究している。 これらとDSM-5との対応を見ると,SADは
山下の緊張型対人恐怖,笠原らの第1群および 第2群にほぼ対応していると考えられる。ま た,自己臭恐怖や自己視線恐怖,醜形恐怖など の身体的欠点を妄想的に確信しているという山 下の確信型対人恐怖,笠原らの第3群の重症対 人恐怖症や思春期妄想症は,妄想性障害の身体 型,あるいは醜形恐怖症/身体醜形障害(body dysmorphic disorder; BDD)に 分 類 さ れ る こ とになると考えられる。DSM-5でやや混乱を きたしやすい点は,BDDが身体表現性障害か ら強迫症および関連症群に移り,自己臭恐怖 (jikoshu-kyofu),醜貌恐怖(shubo-kyofu)が 日本語名のまま他の特定される強迫症および関 連症として記載されたことである。BDDを強 迫関連症として検討していくのがよいか,ある いはSADに関連したものとして検討していく のがよいか診断学的にも議論がなされているが (Kelly et al., 2013),わが国では対人恐怖全体 を一臨床疾患と捉えたうえで亜型に分類するの が合理的であるとの考えが提案されている(笠 原,1995; 山下,1997)。 【SADと対人恐怖】 SADと対人恐怖の関係を考えるうえでは,自 己臭恐怖や自己視線恐怖,醜形恐怖などの確信 型対人恐怖がSADの精神病理と類似のものと して捉えられるかが問題になると考えられる。 他の国からの報告としては,米国から少数例な がらoffensive subtype of taijin-kyofu-shoとして
報告があり(Clarvit et al., 1996),韓国からは
自己視線恐怖を含め,わが国と同様の症例が存
在していることが報告されている(Lee, 1987)。
自己臭恐怖については,これと類似の病態が
olfactory reference syndromeとして報告されて
いることが散見される(Begum & McKenna,
2011; Phillips & Menard, 2011 )。Marks(1987)
は社交恐怖(social phobia)の鑑別診断として
醜形恐怖(dysmorphobia)を取り上げている
が,そ の 中 でdysmorphobic fear of body odor
として自己臭恐怖と類似の患者を記載してい る。この患者は,自宅近くの教会には行けず, わざわざ遠くの教会に出かけているとの記述が あり,わが国の対人恐怖研究において指摘され
ている家族などの親しい人や全く知らない人よ りも中間的な人間関係において恐怖症状が出現 しやすいことが英国の患者でも認められるのか
もしれない。また,米国の181例とわが国の
161例の一般の大学生に対し社交不安のスケー
ル(Social Phobia Scale; SPS, Social Interaction Anxiety Scale; SIAS)と確信型の症状を含む対人
恐 怖 の ス ケ ー ル(Taijin Kyofusho Scale; TKS)
を施行し両国間の社交不安の文化差を比較した 検討がある(Kleinknecht et al., 1997)。この検 討では,米国の大学生でSPSとTKSともに高 得点者は53%,SIASとTKSともに高得点者は 53%であり,わが国の大学生ではSPSとTKSと もに高得点者は54%,SIASとTKSともに高得 点者は50%であったという。米国の大学生で SADタイプの社交不安と確信型を含む対人恐 怖タイプの社交不安を併せ持つ人は合わせると 全体の8.8%であり,わが国の大学生では8.1% であった。このことから,米国とわが国のどち らの文化圏でも確信型を含む対人恐怖タイプの 社交不安を呈する人がいると考えられる。ま た,米国と韓国のDSM-IVで診断されるSAD 患者で確信型対人恐怖の症状の出現頻度を検討 した報告もなされている(Choy et al., 2008)。 この検討では,米国のSAD患者181例中,こわ ばった表情に関する恐怖が48.9%,臭いに関す る恐怖が32.4%,視線に関する恐怖が37.2%, 腸のガスに関する恐怖が44.2%,外見に関する 恐怖が37.6%認められ,これら5つの症状のい ずれかが認められるものは75%に及んだと報 告された。さらに,これらの症状により他人に 迷惑をかけているのではないかと考える加害性 を帯びる患者の割合も韓国の患者と比較しても 低くはなく,確信型対人恐怖の症状は米国の SAD患者の中でもさほど非一般的なものではな いとしている。徐々に他の文化圏においても, わが国で確信型対人恐怖として検討されていた 症例が存在する可能性が指摘されてきている が,さらなる比較文化的な検討は必要と考えら れる。 DSMでは,確信型対人恐怖の一部はBDDあ るいは妄想性障害の身体型と診断されてきた可 能性がある。欧米における近年のBDDの研究で は,身体的欠陥へのとらわれの強固さから妄想 的と考えられ,妄想型BDDといわれる患者が 48.7%に及ぶことが指摘されており,これらは 非妄想型BDDと比較して有病率,経過,合併精 神障害,精神科家族歴,治療反応性において大 きな差異は認められず,亜型に分類されると考 えられるようになっている(Simeon et al., 1995)。 米国のBDDとSADとの関係についての検討で は,BDDはSADの併存精神疾患としては4番
目に多いものとされ(Hollander & Aronowitz,
1999),時点併存率は8∼12% 程度と見られ
ている (Wihelm et al., 1997; Zimmerman &
Mattia, 1998)。一方,BDDにおいてのSADの時
点併存率は16∼69%程度と見られている(Veale
et al., 1996; Zimmerman & Mattia, 1998)。SAD
とBDDが併存していると診断される患者が, わが国の確信型対人恐怖と類似の臨床症状を呈 しているかどうかは興味がもたれるところであ る。 また,確信型対人恐怖の生物学的基盤を考え るうえで,薬物療法に対する治療反応性を検討 することも重要と考えられる。この病態に関し ては,わが国ではセロトニン再取り込み阻害薬 (serotonin reuptake inhibitor; SRI)が有効であっ
たとの報告が見られていた(朝倉ら,1998; 朝倉 ら,1999; Matsunaga et al., 2001)。また,確信型 対人恐怖の一部が分類されると考えられるBDD に対しての欧米の研究では妄想型を含むBDDの 29例に対し,SRIとしてclomipramineを使用 し,desipramineとの16週間の二重盲件クロス オーバー試験を行ったものがある(Hollander et al., 1999)。この検討では,妄想型を含めて もSRIはBDDに対し有効であったという。ま た,わが国で,Nagata et al. (2006)は22例の 確信型対人恐怖に対し12週間でSSRIである paroxetineのオープンラベル試験を行い有効性 が認められたと報告している。SADに対する
SSRIの有効性が欧米およびわが国においても 確立してきていることを考えると,確信型対人 恐怖についてもSADと類似のセロトニン系に 関する生物学的基盤が想定されるかもしれな い。 【臨床症状評価】
1. Liebowitz Social Anxiety Scale (LSAS) に よるSADの臨床症状評価 SADに対する評価者が臨床症状を評価する 尺度としては,LSAS(Liebowitz, 1987)が使 用されることが多い。LSASは,SAD患者が症 状を呈することが多い行為状況(13項目),社 交状況(11項目)の24項目からなり,それぞ れの項目に対して恐怖感/不安感と回避行動の 程度を0から3の4段階で評価する。DSM-III においてSADの診断基準が示されたときに重 点が置かれていた,人前で話をしたり,会食を したり,公衆トイレを使用したりするような行 為状況のみならず,注目を浴びたり,他人の意 見に賛成できないことを表明したり,人と目を 合わせたりするなどの社交状況についても評価 するように作成されており,症状出現状況とし て行為状況に偏らない評価尺度となっている。 LSASの評価は,過去1週間の症状を評価する ものとされ,項目にあたる状況を経験していな かった場合は,そのような状況に置かれた場合 を想像して回答してもらい評価することにな る。治療反応性の検討をおこなう場合は,項目 ごとの想定されている状況を一定にすることに 注意が必要である。例えば「人に姿を見られな がら仕事(勉強)する」の項目であれば,社長 や友人に見られながら仕事をすることはまれで あり,一般的に直属の上司の下で仕事をするこ とが多いと考えられる人であれば,治療経過を 通して一貫して上司の見ている状況で仕事をし ているときの症状を評価することにする。 わが国のSAD患者について検討することを 目的として,再翻訳の手続きを経てLSAS日本 語版(LSAS-J)を作成し,症例群30例,健常 対照群60例を対象として,その信頼性と妥当 性を検討してみた結果を見てみたい(朝倉ら, 2002)。Table 2にLSAS-Jを示す。症例群にお ける全項目のCronbachのα係数は0.95を示し, 内的整合性は保たれていると考えられた。健常 対照群において2週間の間隔をおいて2回施行 した場合の全項目の級内相関係数(intraclass
correlation coefficient; ICC)は0.92を示し再テ
スト信頼性も高いと考えられた。また,LSAS-J
は社会不安の自己記入式評価尺度であるSocial
Avoidance and Distress Scale (SADS)日本語版 と相関を示し,診察医が軽症,中等症,重症の
3段階に判定した臨床的重症度とも相関を示し
た。また,ROC曲線を作成しカットオフ値を
求めたところ42であった。LSAS-Jはわが国に
おけるfluvoxamine(Asakura et al., 2007; Asa-kura et al., 2014)とparoxetine(朝倉ら,2008)
のSADに対する臨床試験にも使用され,治療反 応性の評価にも適していることが示されている。 LSASは,比較的多くの状況を評価するよう に作成されているため治療初期に症状の出現状 況を確認していくときにも役立つと思われる。 面接場面では語られなかった不安感が高まる状 況が確認できたり,不安階層表などを作成する ときにも参考になると考えられる。また,評価 を得点として視覚化して確認しながら治療を進 めていくことは問題点を検討しそれを克服して いく方法を治療者と一緒に考えていく一助にも なると思われる。 2. 社 交 不 安 / 対 人 恐 怖 評 価 尺 度(Social Anxiety/Taijin-kyofu Scale; SATS)
SADの臨床症状評価尺度では,自己臭恐怖 や自己視線恐怖,醜形恐怖などのわが国にお いて確信型対人恐怖として検討されてきた症例 の症状評価には不十分な点があると考えられ る。このため,確信型対人恐怖を含め,その 臨床症状を評価する構造化面接によるSATSを 強迫症の臨床症状評価尺度であるYale-Brown
に考案した(Asakura et al., 2012)。 SATSでは,Y-BOCSと同様に最初に症状評 価リストを行い,不安感/恐怖感あるいは回避 行動の出現しやすい状況,恐怖感/不安感に関 連する身体症状,確信型対人恐怖の認知症状を 確認し,それらを標的症状リストにまとめる (Table 3)。その後,構造化された面接により 恐怖感/不安感(予期不安の程度,恐怖感/不 Table 2 Liebowitz Social Anxiety Scale 日本語版(LSAS-J)
恐怖感/不安感 回 避 0:全く感じない 0:全く回避しない(0%) 1:少しは感じる 1:回避する(1/3以下) 2:はっきりと感じる 2:回避する(1/2程度) 3:非常に強く感じる 3:回避する(2/3以上ま たは100%) 1.人前で電話をかける(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 2.少人数のグループ活動に参加する(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 3.公共の場所で食事をする(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 4.人と一緒に公共の場所でお酒(飲み物)を飲む(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 5.権威ある人と話をする(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 6.観衆の前で何か行為をしたり話をする(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 7.パーティーに行く(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 8.人に姿を見られながら仕事(勉強)する(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 9.人に見られながら字を書く(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 10.あまりよく知らない人に電話する(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 11.あまりよく知らない人達と話し合う(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 12.まったく初対面の人と会う(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 13.公衆トイレで用を足す(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 14.他の人達が着席して待っている部屋に入って行く(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 15.人々の注目を浴びる(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 16.会議で意見を言う(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 17.試験を受ける(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 18.あまりよく知らない人に不賛成であると言う(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 19.あまりよく知らない人と目を合わせる(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 20.仲間の前で報告をする(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 21.誰かを誘おうとする(P) 0 1 2 3 0 1 2 3 22.店に品物を返品する(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 23.パーティーを主催する(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 24.強引なセールスマンの誘いに抵抗する(S) 0 1 2 3 0 1 2 3 P:行為状況 S:社交状況
症状評価リスト リスト 1. 恐怖感 / 不安感および回避行動の出現する状況 / 場面 以下の項目ごとに恐怖感 / 不安感の有無と , 回避行動の有無を聞き ,「 あり 」 の項目に チェックマークを記入する 恐怖感 / 不安感 回避行動 □ □ 聴衆の前で話す □ □ 会議などで意見を述べる □ □ 相手に反対意見を述べる □ □ 自分より権威のある人と話す □ □ 異性と話す □ □ 人を誘う □ □ 相手の目を見て話す □ □ 知らない人の多い集まりに参加する □ □ 少人数のグループ活動や行事に参加する □ □ 他の人が集まっている部屋に入っていく □ □ 人に見られながら仕事や勉強をする □ □ 人に見られながら文字を書く □ □ 公共の場所で飲食をする □ □ あまりよく知らない人に電話をかける □ □ かかってきた電話に出る □ □ 注目を浴びる □ □ 他の人が乗っている公共の交通機関を使用する その他 , 恐怖感 / 不安感が出現し , 回避行動が起こりやすい社会的状況 , 対人交流場面があるかを聞き , あれば以下に記入する 。 リスト 2. 恐怖感 / 不安感で起こる身体症状 恐怖感 / 不安感で身体症状が起こるかを聞く 〔□ 症状が起こる □ 症状なし 〕 症状が起こる場合 , 以下のどれかを聞く ( 複数回答可 ) □ 体 , 表情がこわばる □ 体 , 手 , 足が震える □ 赤面する □ 息苦しくなる □ 多量に汗をかく □ 声が出にくくなったり , 震えたりする □ お腹が鳴ったり痛くなったりする □ 動悸がする □ 吐き気がする □ すぐに排尿したくなる リスト 3. 認知症状 最初に認知症状の有無を聞く 〔□ 症状あり □ 症状なし 〕 症状ありの場合 , 以下のいずれに該当するかを聞く 。 □ 自分の体の臭い ( 体臭 , ガスなど ) のために , 他の人に嫌な感じを与えていると思う □ 自分の視線が他の人に嫌な感じを与えていると思う □ 自分の外見が他の人に嫌な感じを与えていると思う □ 自分の表情が他の人に嫌な感じを与えていると思う □ 他の人の様子 ( 態度 , 仕草など ) 注 )で , 自分の体の臭い ( 体臭 , ガスなど ) のために他の人に嫌な感じを与 えているとわかる □ 他の人の様子 ( 態度 , 仕草など ) 注 )で , 自分の視線が他の人に嫌な感じを与えているとわかる □ 他の人の様子 ( 態度 , 仕草など ) 注 )で , 自分の外見が他の人に嫌な感じを与えているとわかる □ 他の人の様子 ( 態度 , 仕草など ) 注 )で , 自分の表情が他の人に嫌な感じを与えているとわかる ( 注 ) 他の人の様子とは , 顔をそむけたり , 鼻をすすったり , 咳払いをしたり , 席を立ったり , 窓を開けにいっ たりするような態度 , 仕草などのことである 。 標的症状リスト 標的症状は , 本尺度による評価を数値化して行うための標的となる症状である 。 治療開始に先立って , 症状評価 リストによりインタビューを行った結果を踏まえ , 項目ごとに最も重要な症状を以下にまとめること 。 まとめた 結果は患者に説明し確認すること 。 次回以降 , この評価尺度による評価に先立って必ずこの標的症状を確認させ , その変化を評価すること 。 不安感/恐怖感を強く感じる社会的状況/対人交流場面 1. 2. 3. 不安感/恐怖感で起こる身体症状〔□あり □なし〕 1. 2. 3. 回避する社会的状況/対人交流場面 1. 2. 3. 認知症状〔□あり □なし〕 1. 2. 3. 恐怖感 / 不安感 なし 軽度 中等度 重度 極度 予期不安の程度 0 1 2 3 4 恐怖感 / 不安感に伴う苦痛 0 1 2 3 4 恐怖感 / 不安感に対する抵抗 いつも抵抗 0 大抵は抵抗 1 少しは抵抗 2 躊躇するも屈服 3 完全に屈服 4 恐怖感 / 不安感に関連する身体症状 0 1 2 3 4 回避行動 なし 軽度 中等度 重度 極度 回避行動の程度 0 1 2 3 4 回避行動と苦痛 0 1 2 3 4 回避行動に対する抵抗 いつも抵抗 0 大抵は抵抗 1 少しは抵抗 2 躊躇するも屈服 3 完全に屈服 4 回避行動による社会的障害 0 1 2 3 4 認知症状 なし 軽度 中等度 重度 極度 確信の程度 0 1 2 3 4 関係念慮 0 1 2 3 4 加害性 0 1 2 3 4 認知症状に伴う苦痛 0 1 2 3 4 Ta bl e 3 社交不安 / 対人恐怖評価尺度 ( So ci al A nxiet y/ Ta iji n-ky of u S ca le: SA TS )
安感に伴う苦痛,恐怖感/不安感に対する抵 抗,恐怖感/不安感に関連する身体症状),回 避行動(回避行動の頻度,回避行動と苦痛,回 避行動に対する抵抗,回避行動による社会的障 害),認知症状(確信の程度,関係念慮,加害性, 認知症状に伴う苦痛)について0から4の5段 階で評価する。SATSをTable 3に示す。 確信型対人恐怖の患者15例を対象とし,信頼 性,妥当性の検討を行った結果では,SATSの Cronbachのα係数は0.97を示し,内的整合性は 高かった。SATS合計は恐怖感/不安感,回避 行動,認知症状の各項目と高い相関が示され, ICCによる10人の評価者でのSATS合計,恐怖 感/不安感,回避行動,認知症状の評価者間信 頼性も高く,再テスト信頼性も高く,Clinical
Global Impression (CGI)重症度評価とも相関 が見られた。 DSM-5では,SADにわが国の対人恐怖を含 めて考えられるようになってきており,確信型 対人恐怖の症状を含めて臨床症状を評価できる SATSは,今後,SADと対人恐怖との関係を検 討していくうえでも有用と考えられる。 【おわりに】 SADについて,わが国の対人恐怖を含めて, その診断,臨床症状評価等について概説してみ た。診断についてはDSM-5では,わが国の対人 恐怖はSADとして組み入れる方向で考えられて きている。今後,特に確信型対人恐怖が国際的 にどのような診断的位置づけになっていくか興 味がもたれる。SADの臨床症状評価としては LSASが使用されることが多く,その日本語版 であるLSAS-Jはわが国で行われたfluvoxamine とparoxetineによる薬物療法の臨床試験にも使 用され,治療反応性の評価にも適していると考 えられた。また,わが国の確信型対人恐怖の症 状も含めて評価できる臨床症状評価尺度として SATSを作成した。これは,今後,SADと対人 恐怖との関係を検討していくうえでも有用と考 えられた。 【文献】
Achim, A. M., Maziade, M., Raymond, E., Olivier, D., Merette, C., & Roy, M. A. (2011). How prevalent are anxiety disorders in schizophrenia? A meta-analy-sis and critical review on a significant association.
Schizophrenia Bulletin, 37, 811–821.
American Psychiatric Association (1980). Diagnostic
and Statistical Manual of Mental Disorders. (3rd
Ed.). Washington, D. C.: American Psychiatric As-sociation.
American Psychiatric Association (1987). Diagnostic
and Statistical Manual of Mental Disorders. (3rd
Ed.-revised). Washington, D. C.: American Psychi-atric Association.
American Psychiatric Association (1994). Diagnostic
and Statistical Manual of Mental Disorders. (4th
Ed.). Washington, D. C.: American Psychiatric As-sociation.
American Psychiatric Association (2013). Diagnostic
and Statistical Manual of Mental Disorders. (5th Ed.).
Arlington, V. A.: American Psychiatric Association.
朝倉 聡,築島 健,北川信樹,傳田健三,小山 司 (1998).薬物療法が有効であった中年期の自己臭 恐怖の2例 精神医学,40, 1111–1113. 朝倉 聡,築島 健,北川信樹,傳田健三,小山 司 (1999).自己臭恐怖の臨床的研究―25年前の症例 との比較から― 臨床精神医学,29, 313–320. 朝倉 聡,井上誠士郎,佐々木 史,佐々木幸哉, 北川信樹,井上 猛,傳田健三,伊藤ますみ,松原 良次,小山 司(2002).Liebowitz Sosial Anxiety
Scale(LSAS)日本語版の信頼性および妥当性の検
討 精神医学,44, 1077–1084.
Asakura, S., Tajima, O., & Koyama, T. (2007). Flu-voxamine treatment of generalized social anxiety disorder in Japan: A randomized double-blind, placebo-controlled study. International Journal of
Neuropsychopharmacology, 10, 263–274.
朝倉 聡,筒井末春,小山 司(2008).Paroxetine
塩酸塩水和物の社会不安障害に対する臨床評価― プラセボを対照とした二重亡検比較試験― 臨床 精神医学,37, 833–848.
Asakura, S., Inoue, T., Kitagawa, N., Hasegawa, M., Fujii, Y., Kako, Y., Nakato, Y., Hashimoti, N., Tanaka, T., Nakagawa, S., Kusumi, I., & Koyama, T. (2012). The Social Anxiety/Taijin-kyofu Scale (SATS): Development and psychometric
evalua-tion of a new instrument. Psychopathology, 45,
67–72.
Asakura, S., Koyama, T., Hosokai, T., Kawano, H., Kajii, Y. (2014). Post-marketing surveillance of flu-voxamine maleate used long-term in patients with social anxiety disorder in Japan. Drugs-Real World
Outcomes. 1, 7–19.
Begum, M., & McKenna, P. J. (2011). Olfactory refer-ence syndrome: A systematic review of the world
literature. Psychological Medicine, 41, 453–461.
Choy, Y., Schneier, F. R., Heimberg, R. G., Oh, K. S., & Liebowitz, M. R. (2008). Features of the offensive subtype of taijin-kyofu-sho in US and Korean pa-tients with DSM-IV social anxiety disorder.
Depression and Anxiety, 25, 230–240
Clarvit, S. R., Schneier, F. R., & Liebowitz, M. R. (1996). The offensive subtype of taijin-kyofu-sho in New York City: The phenomenology and treatment of a social anxiety disorder. Journal of Clinical
Psy-chiatry, 57, 523–527.
Grant, B. F., Dawson, D. A., Stinson, F. S., Chou, S. P., Dufour, M. C., & Pickering, R. P. (2004). The 12-month prevalence and trends in DSM-IV alcohol
abuse and dependence: United States, 1991–1992
and 2001–2002. Drug and Alcohol Dependence, 74,
223–234.
Grant, B. F., Hasin, D. S., Blanco, C., Stinson, F. S., Chou, S. P., Goldstein, R. B., Dawson, D. A., Smith, S., Saha, T. D., & Huang, B. (2005). The epidemiol-ogy of social anxiety disorder in the United States: Results from the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions. Journal of
Clinical Psychiatry, 66, 1351–1361.
Hollander, E., Allen, A., Kwon, J., Aronowitz, B., Schmeidler, J., Wong, C., & Simeon, D. (1999). Clomipramine vs. desipramine crossover trial in body dismorphic disorder. Archives of General
Psy-chiatry, 56, 1033–1039.
Hollander, E., & Aronowitz, B. R. (1999). Comorbid social anxiety and body dysmorphic disorder: Managing the complicated patient. Journal of
Clin-ical Psychiatry, 60 (Suppl. 9), 27–31.
Johnstone, E. C., Ebmeier, K. P., Miller, P., Owens, D. G., & Lawrie, S. M. (2005). Predicting schizophre-nia: Finding from the Edinburgh High-Risk Study.
British Journal of Psychiatry, 186, 18–25.
笠原敏彦(1995).対人恐怖と社会恐怖(ICD-10) の診断について 精神神経学経誌,97, 357–366. 笠原 嘉,藤縄 昭,関口英雄,松本雅彦(1972). 正視恐怖・体臭恐怖―主として精神分裂病との境 界例について― 医学書院. 笠原 嘉(1993).対人恐怖.加藤正明(編著)新版 精神医学事典 弘文堂.
Kelly, M. M., Dalrymple, K., Zimmerman, M. A., & Phillips, K. A. (2013). A comparison study of body dysmorphic disorder versus social phobia.
Psychia-try Research, 205, 109–116.
Kessler, R. C., Stang, P., Wittchen, H. U., Stein, M., & Walters, E. E. (1999). Life-time comorbidities so-cial phobia and mood disorders in the US National Comorbidity Survey. Psychological Medicine, 29,
555–567.
Kleinknecht, R. A., Dinnel, D. L., Kleinknecht, E. E., Hiruma, N., & Harada, N. (1997). Cultural factors in social anxiety: A comparison of social phobia symptoms and taijin kyofusho. Journal of Anxiety
Disorders, 11, 157–177.
Lee, S. H. (1987). Social Phobia in Korea. Proceeding of first cultural psychiatry symposium between Japan and Korea. East Asian Academy of Cultural
Psychiatry, 24–52.
Liebowitz, M. R. (1987). Social phobia. Modern
Prob-lems of Pharmacopsychiatry, 22, 141–173.
Lysaker, P. H., Salvatore, G., Grant, M. I., Procacci, M., Olesek, K. L., Buck, K. D., Nicolo, G., & Dimaggio, G. (2010). Deficits in theory of mind and social anxiety as independent paths to paranoid features in
schizophrenia. Schizophrenia Research, 124, 81–85.
Marks, I. M. (1987). Fears, Phobias and Rituals. New York: Oxford University Press.
Matsunaga, H., Kiriike, N., Matsui, T., Iwasaki, Y., & Stein, D. J. (2001). Taijin kyofusho: A form of so-cial anxiety disorder that responds to serotonin reputake inhibitors ? International Journal of
Neu-ropsychopharmacology, 4, 231–237.
Merikangas, K. R., Akiskal, H. S., Angst, J., Green-berg, P. E., & Hirschfeld, R. M., Petukhova, M., & Kessler, R. D. (2007). Lifetime and 12-month prev-alence of bipolar spectrum disorder in the National Comorbidity Survey Replication. Archives of
Gen-eral Psychiatry, 64, 543–552.
Nagata, T., van Vliet, I., Yamada, H., Kataoka, K., Iketani, T., & Kiriike, N. (2006). An open trial of paroxetine for the “offensive subtype” of taijin
kyo-fusho and social anxiety disorder. Depression and Anxiety, 23, 168–174. 日本精神神経学会(2008).精神神経学用語集改訂6 版 日本精神神経学会. 日本精神神経学会(2014).DSM-5精神疾患の診断・ 統計マニュアル 医学書院.
Phillips, K. A., & Menard, W. (2011). Olfactory refer-ence syndrome: Demographic and clical features of imagined body odor. General Hospital Psychiatry,
33, 398–406.
Schneier, F. R., Johnson, J., Hormong, C. D., Liebo-witz, M. R., & Weissman, M. M. (1992). Social Phobia: Comorbidity and morbidity in an epide-miologic sample. Archives of General Psychiatry,
49, 282–288.
Simeon, D., Hollander, E., Stein, D. J., Cohen, L., & Aronowitz, B. (1995). Body dysmorphic disorder
in the DSM-IV field trial for obsessive–compursive
disorder. American Journal of Psychiatry, 152,
1207–1209.
Stein, M. B., Fuetsch, M., Muller, N., Hofler, M., & Wittchen, H. U. (2001). Social anxiety disorder and the risk of depression: A prospective community study of adolescents and young adults. Archives of
General Psychiatry, 58, 251–256.
Thevos, A. K., Thomas, S. E., & Randall, C. L. (1999). Baseline differences in social support among treat-ment-seeking alcoholics with and without social
phobia. Substance Abuse, 20, 107–121.
植元行男,村上靖彦,藤田早苗,小笠原俊夫,鈴木 恒裕,青木 勝,土川隆史,大磯英雄(1967).思 春期における異常な確信体験について(そのI)― いわゆる思春期妄想症について― 児童精神医学 とその近接領域,8, 155–167.
Veale, D., Boocock, A., Gournay, K., Dryden, W., Shah, F., Willson, R., & Walburn, J. (1996). Body dysmorphic disorder: A survey of fifty cases. British
Journal of Psychiatry, 169, 196–201.
Wihelm, S., Otto, M. W., Zucker, B. G., & Pollack, M. H. (1997). Prevalence of body dysmorphic disorder in patients with anxiety disorders. Journal of
Anxi-ety Disorders, 11, 499–502.
山下 格(1977).対人恐怖 金原出版.
山下 格(1997).対人恐怖の病理と治療 精神科治
療学,12, 9–13.
Zimmerman, M., & Mattia, J. I. (1998). Body dys-morphic disorder in psychiatric outpatients: Recognition, prevalence, comorbidity, demo-graphic, and clinical correlates. Comprehensive
Diagnosis and Clinical Evaluation of Social Anxiety Disorder
Satoshi Asakura
Health Care Center and Department of Psychiatry,
Hokkaido University Graduate School of Medicine
Abstract
Social anxiety disorder (SAD) is characterized by fear of social situations involving performance, social interactions or being observed. In DSM-5, the “generalized” specifier in DSM-IV has been deleted and replaced with a “performance only” specifier. Taijin-kyofu (TK) in Japan is a sufficient criterion for SAD, because the definition of offence of others is added to fear of humiliating or embarrassing oneself. However, it is confusing that the Japanese terms of “jikoshu-kyofu” and “shubo-kyofu” are categorized
as other specified obsessive–compulsive disorder and related disorders. The Liebowitz Social Anxiety
Scale (LSAS) is a reliable, valid, and widely used scale that is the standard measure of SAD severity. The LSAS-Japanese version (LSAS-J) has been used in the clinical study of SAD in Japan. However, investigation of TK has been hampered by the lack of a measure for the assessment of TK symptoms in the LSAS. We thus developed the Social Anxiety/Taijin-kyoufu Scale (SATS) to rate the severity of the symptoms of SAD and TK.
Key Words: social anxiety disorder, Taijin-kyofu, Liebowitz Social Anxiety Scale (LSAS), Social Anxi-ety/Taijin-kyofu Scale (SATS)