受 理 日:2017 年 3 月 2 日 Social Psychology. 2017, Vol. 56, No. 2, 195–206
DOI: 10.2130/jjesp.si3-9
〔資 料〕
接近・回避コミットメントが恋愛関係における
感情経験に与える影響
―行為者-パートナー相互依存性調整モデル(
APIMoM)による検討―
1)古 村 健太郎
新潟大学 要 約 本研究では,恋愛関係への接近・回避コミットメントが恋愛関係における感情経験に与える影響を検討し た。異性愛カップル91 組を対象とした質問紙調査によって得られたペアデータを用い,個人内過程,個人 間過程,パートナー調整効果を検討するため,行為者-パートナー相互依存性調整モデル(actor-partner interdependence moderation model: APIMoM)による分析を行った。その結果,個人内過程において,男女 ともに,個人の接近コミットメントが感情バランスをポジティブにした。また,接近コミットメントが弱い 場合に,回避コミットメントが感情経験をネガティブにした。個人間過程では,男性の接近コミットメント が女性の感情経験をポジティブにした。さらに,パートナー調整効果については,男性の接近コミットメン ト×女性の回避コミットメントが男性の感情経験と関連し,女性の接近コミットメント×男性の回避コミッ トメントが女性の感情経験と関連した。これらの結果について,接近・回避コミットメントが促進しうる行 動や相互作用の観点から考察を行った。 キーワード: コミットメント,接近・回避コミットメント,調整効果,行為者-パートナー相互依存性調整 モデル 問 題 「関係を維持しようとする動機づけや意思」であるコ ミットメント(Lydon, Burton, Menzies-Toman, 2005)は, 親密な関係の維持に寄与する様々な活動を促進する (Cate, Levine, & Richmond, 2002; Rusbult & Agenw,2010)。例えば,コミットメントは,恋愛関係で生じた 出来事に対する感情反応を方向づける。Finkel, Rusbult, Kumashiro, and Hannon(2002)は,コミットメントが強 い人ほど,恋人が関係規範に違反した状況でネガティブ
感情が生起しにくいことを明らかにした。また,夫婦を 対象としたTran and Simpson(2009)は,コミットメン トが強い人ほど,二者間の問題解決場面でポジティブ感 情が生起しやすいことを明らかにした。これらの知見は, コミットメントが恋愛関係で生じた出来事に対するポジ ティブな感情反応を増やし,ネガティブな感情反応を減 じさせることを示している。加えて,コミットメントに よる感情反応の方向づけが繰り返されれば,似たような 場面で似たような感情反応が生起しやすくなり,恋愛関 係における感情反応がパターン化されていく(Rusbult 著者連絡先 e-mail: [email protected] 1)本論文の執筆にあたり松井豊教授(筑波大学)にご指導いただき,髙本真寛氏(横浜国立大学)にご助言い ただきました。また,調査の実施に際し,藤桂准教授(筑波大学)にご協力いただきました。データの収集 および整理に関して,筑波大学心理学類の城間益里さん,成田蘭さん,那須昂生さん,寺下魁さんにご協力 いただきました。記して感謝申し上げます。
& Van Lange, 2003)。そのため,コミットメントの強さ は,恋愛関係における全体的な感情経験をよりポジティ ブなものにすると考えられる。 これまで,コミットメントは一次元構造の構成概念 として捉えられることが多く,感情経験との関連もその 枠組みで検討されてきた。このような一次元構造で測定 されるコミットメントは全体的コミットメント(global commitment; Johnson, 1999)と呼ばれる。一方で,コミッ トメントには複数のタイプが存在しており,それぞれが 関係性や関係維持に異なる影響を与えることも明らかに されてきた。例えば,Adams and Jones(1999)は,それ までの研究を概観し,コミットメントには自発的に関係 を深化させようとするタイプのコミットメントと,終結 コスト(関係を終結させる際に生じるコスト)の高さに よって非自発的に関係を維持せざるを得ないタイプのコ ミットメントが存在しており,それぞれが関係良好性や 関係内での行動に異なる影響を与えることを主張した。 実際,前者のタイプは関係満足度の高さや建設的な葛藤 対処方略と関連するのに対し,後者のタイプは関係満足 度の低さや破壊的な葛藤対処方略と関連することが明ら かにされている(Ho, Chen, Bond, Hui, Chan, & Friedman, 2012; Roloff, Soule, & Carey, 2001)。しかし,このような コミットメントのタイプ分類は,その基準が明快ではな いと指摘されることがある(Frank & Brandstätter, 2002)。 この分類基準の問題点を解決する枠組みの一つとして, 接近・回避コミットメント(Frank & Brandstätter, 2002; Strachman & Gable, 2006)が存在する。接近・回避コミッ トメントは,動機づけの基本分類からコミットメントを 接近次元と回避次元に分類するモデルであり,分類基準 の明確さや動機づけ理論との親和性の高さが評価されて いる(Fincham & Beach, 2010; Rusbult, Coolsen, Kirchner, & Clarke, 2006)。接近コミットメントは「関係継続と関 連する報酬への接近目標」と定義され,関係の良好さや 自発的な関係維持と関連する。一方,回避コミットメン トは,「関係崩壊と関連する罰からの回避目標」と定義 され,終結コストの高さや関係継続への義務感と関連す る。なお,接近コミットメントは,全体的コミットメン トと概念的に大きく重複しているため高い相関を示すの に対し,回避コミットメントは全体的コミットメントと の重複が小さいため弱い相関しか示さないことが明らか になっている(古村,2014)。以上を踏まえれば,接近・ 回避コミットメントを導入することによって,コミット メントが感情経験を方向づける過程をより精緻化できる と考えられる。 以上の背景から古村(2016)は接近・回避コミットメ ントと感情経験の関連を検討し,以下の3 点を明らかに した。第1 に,接近コミットメントの強さは,ポジティ ブ感情の高さやネガティブ感情の低さと関連した。第2 に,回避コミットメントの強さは,ポジティブ感情の低 さやネガティブ感情の高さと関連した。第3 に,回避コ ミットメントとポジティブ感情およびネガティブ感情の 関連は,接近コミットメントによって調整されていた。 具体的には,接近コミットメントが弱い場合にのみ,回 避コミットメントの強さがポジティブ感情の低さやネガ ティブ感情の高さと関連していた。このような接近コ ミットメントの調整効果は,関係良好性の高い場合には 終結コストが意識されないため,コミットメントの終結 コストと関連する側面が関係性に影響を与えないのに対 し,関係良好性が低い場合には終結コストが強く意識さ れるため関係性に影響を与えるというJohnson(1999) やLevinger(1999)の主張と整合していた。すなわち, 関係の良好さと関連する接近コミットメントが強い場合 は,終結コストと関連する回避コミットメントが感情経 験に与える影響が示されないのに対し,接近コミットメ ントが弱い場合は,回避コミットメントの感情経験への 影響が顕著になっていた。 しかしながら,古村(2016)には,恋愛関係の相互依 存性が考慮されていない問題点が存在する。恋愛関係 は,二者が互いに影響を与え合う相互依存的な関係であ り(Rusbult & Van Lange, 2003),恋愛関係で生じる現象 のより深い理解のためにはペア単位のサンプリングに よってペアデータを収集し,恋愛関係の相互依存性を考 慮した適切な分析を行う必要がある(浅野・五十嵐, 2015)。また,Wiegel(2008)が個人のコミットメント がその個人のコミットメント表出行動を引き起こすこと で恋人の関係性評価や関係内での経験に影響を与えるこ とを明らかにしたことを踏まえれば,個人の接近・回避 コミットメントが恋人間の相互作用に影響を与えること で,その恋人の感情経験と関連する個人間過程の存在が 推測される。加えて,Wickham and Knee(2012)は,ペ アデータを用いて個人の変数とその恋人との変数の交互 作用を検討することによって,二者の相互依存性をより 深く検討できると論じている。しかし,古村(2016)で 得られた結果は,個人単位のサンプリングに基づく結果 であり,個人間過程や個人の変数とその恋人の変数の相 互作用を検討できていない。以上を踏まえれば,古村 (2016)で得られた結果は,ペアデータを用いて恋愛関 係の相互依存性を考慮した分析によって改めて検討する ことで,より精緻化されると考えられる。 ペアデータを収集した場合の相互依存性を考慮した
代表的な分析方法としては,行為者-パートナー相互依 存性モデル(actor-partner interdependence model: APIM; Kenny, Kashy, & Cook, 2006)が存在する。しかし,古村 (2016)のモデルは接近コミットメントと回避コミット メントの交互作用をモデルに含んでおり,APIM に交互 作用項を投入する必要がある。APIM に説明変数間の交 互作用項を含んだ分析方法としては,Garcia, Kenny, and Ledermann(2015)によって提案された行為者-パート ナー相互依存性調整モデル(actor-partner interdependence moderation model: APIMoM)がある。Figure 1 に APIMoM のモデルを示す。APIMoM は,目的変数の相互依存性 を以下の四つの効果によって分解する。第1 と第 2 の効 果は,APIM と同じく,個人の説明変数と個人の目的変 数との関連を示す行為者効果(パスa1,a2)と個人の説 明変数とその恋人の目的変数との関連を示すパートナー 効果(パスp1,p2)である。第3 の効果は,行為者効果 あるいはパートナー効果に対する調整変数(M1, M2)で ある。この際,自分自身の行為者効果やパートナー効果 を調整する変数は行為者調整変数(actor moderator)で あり,その主効果(パスam1,am2)がモデルに含まれる。 加えて,パートナーの行為者効果やパートナー効果を調 整する変数はパートナー調整変数(partner moderator) であり,その主効果(パスpm1,pm2)がモデルに含ま れる。第4 の効果は,行為者効果やパートナー効果と調 整変数の交互作用である。交互作用には,行為者効果が 行為者調整変数によって調整される行為者-行為者調整 効果(actor-actor moderation;パスaam1,aam2),行為 者効果がパートナー調整変数によって調整されることを 示す行為者-パートナー調整効果(actor-partner moder-ation;パスapm1,apm2),パートナー効果が行為者調 整変数によって調整されるパートナー-行為者調整効果 (partner-actor moderation;パスpam1,pam2),パートナー 効果がパートナー調整変数によって調整されることを示 すパートナー-パートナー調整効果(partner-partner moderation; パ スppm1,ppm2) が あ る。 こ の よ う に APIMoM は,行為者効果とパートナー効果,調整変数 からの主効果の8 つのパス,4 つの交互作用からの 8 つ のパスが想定される複雑なモデルである。このような複 雑なモデルを推定する場合,交互作用の検定力が小さく なり第二種の過誤が生じやすくなるため,有意性検定の みに注目し,有意ではない交互作用を削除すると重要な 情報が見落とされる恐れがある(Garcia et al., 2015)。こ のような情報損失を避けるため,APIMoM は,交互作 用に関して理論的に想定しうる複数のモデルを推定し, それらの中から最も適合度のよいモデルを採択していく (詳細な手順は結果に記載している)。 APIMoM は,恋愛関係における相互依存性を行為者 効果とパートナー効果によって分離するだけではなく, それらの交互作用を検出することができる分析方法であ る。したがって,ペアデータを用いて,接近コミットメ Figure 1 本研究の APIMoM のモデル図
Note.行為者効果:a1とa2,パートナー効果:p1とp2,行為者-行為者調整効果:aam1とaam2,行為者-パートナー 調整効果:apm1とapm2,パートナー-行為者調整効果:pam1とpam2,パートナー-パートナー調整効果: ppm1とppm2
ントと回避コミットメントおよびそれらの交互作用と感 情経験の関連を検討した古村(2016)を再検討するのに 適切な分析方法と考えられる。そこで本研究は,ペア単 位のサンプリングによって収集したペアデータに対して APIMoM による分析を行う。この際,APIMoM が複雑 な分析であることを考慮し,感情経験は感情バランス (e.g., Uchida, Kitayama, Mesquita, Reyes, & Morling,
2008)を用いて測定する。感情バランスは,ポジティブ 感情の得点からネガティブ感情の得点を減じることで算 出される指標であり,感情経験がどの程度ポジティブな ものかを測定することができる。 予測される結果は,以下の通りである。まず,古村 (2016)の結果が再現され,個人内過程において行為者 効果と行為者-行為者調整効果が示されることが予測さ れる。具体的な仮説は以下の通りである。 仮説1 個人の接近コミットメントは,個人の感情バ ランスと正の関連を示す。 仮説2 個人の回避コミットメントと個人の感情バラ ンスとの関連は,個人の接近コミットメントによって調 整される。すなわち,接近コミットメントが弱い場合に のみ,回避コミットメントは感情バランスと負の関連を 示す。 次に,パートナー効果に関しては,以下のような予測 がなされる。上述のように,接近コミットメントは,全 体的コミットメントと大きく重複する概念である(古村, 2014)。そのため,全体的コミットメントが促すポジティ ブな関係維持活動は,接近コミットメントによっても促 進されると考えられる。したがって,Tran and Simpson (2009)で示されたように,個人の接近コミットメントは 恋人の感情経験をよりポジティブにすると推測される。 一方,回避コミットメントは,恋人の感情経験のポジ ティブさを低めると推測される。Burke and Segrin(2014) は,関係崩壊を避けようとするコミットメントを強く感 じている人が孤独感を抱きやすいことを明らかにし,そ の理由が関係維持行動の少なさにあると考察している。 また,恋人からの拒絶を避けようとする回避目標は,相 手への攻撃的行動や自己防衛的行動を促すことが明らか になっている(Downey, Freitas, Michaelis, & Khouri,1998; Murray & Holmes, 2011)。恋人からの拒絶の一種に関係 崩壊があることを踏まえれば,これらの知見は,関係崩 壊を避けようとする動機づけの強さがポジティブな関係 維持行動を促進するのではなく,むしろ関係崩壊や恋人 からの拒絶を引き起こす行動を促してしまう可能性を示 している。したがって,回避コミットメントは,関係崩 壊を避けようとするコミットメントであるにも関わら ず,攻撃的行動や関係性を悪化させるようなネガティブ な行動を引き起こし,回避コミットメントは,恋人の感 情経験をよりネガティブにすると推測される。以上より, パートナー効果に関して,以下の仮説を設定する。 仮説3 個人の接近コミットメントは,その恋人の感 情バランスと正の関連を示す。 仮説4 個人の回避コミットメントは,その恋人の感 情バランスと負の関連を示す。 最後に,接近コミットメントの調整効果である,行為 者-パートナー調整効果,パートナー-行為者調整効果, パートナー-パートナー調整効果については,APIMoM が交互作用に関して理論的に想定しうる複数のモデルを 比較する分析方法であることを踏まえ,仮説は設定せず, 探索的に検討していく。 方 法 調査参加者 関東の大学に通う大学生402 名に質問紙を配布し,恋 愛カップル91 組から回答を得た。平均交際期間は 14. 8 ヶ 月(SD=12. 21),男性は平均年齢 21. 6 歳(SD=2. 63), 女性は平均年齢20. 7 歳(SD=1. 45)であった。 調査実施方法と倫理的配慮 大学の講義時間中に,本人用の質問紙と封筒および相 手用の質問紙と封筒を配布し,本人用の質問紙への回答 を求めた。この際,倫理的配慮についての説明を紙面な らびに口頭で行った。倫理的配慮の内容は,無記名調査 で回答が任意であること,回答の拒否や中止は自由であ り,そのことによる不利益が生じないこと,質問紙への 回答をもって同意したとみなすことであった。本人用の 質問紙への回答が終わった後,その質問紙を本人用封筒 に厳封し,調査実施者へと提出した。手元に残った相手 用の質問紙と封筒は,調査参加者が持ち帰り,恋人に回 答してもらうように教示した。恋人が回答する際は,話 したりせず一人で回答すること,回答した質問紙は自ら の手で封筒にいれ厳封するよう教示した。回答した後に 厳封された質問紙は,本人と恋人どちらも一緒に翌週以 降の授業で回収箱に投函する形で回収した。 質問紙構成 (1)接近・回避コミットメントを測定するため,古村 (2014)の接近・回避コミットメント尺度を用いた。接 近コミットメント(「これからも◯◯さんと楽しい思い 出を作りたいから」など)と回避コミットメント(「今 まで関係に費やしてきた時間や努力を無駄にしたくない
から」など)が各9 項目で構成されている。7 件法(「1. 全く当てはまらない」から「7.非常にあてはまる」)で 回答を求めた。(2)恋愛関係における感情経験を測定す るため,立脇(2007)の異性交際中の感情尺度を用いた。 恋人に対するポジティブ感情(「好き」,「尊敬」など) とネガティブ感情(「辛い」,「面倒」など)を経験する 頻度を尋ねる各10 項目で構成されている。5 件法(「1. 全く感じない」から「5.いつも感じる」)で回答を求め た。本研究では,ポジティブ感情得点からネガティブ感 情得点を減じ,感情バランス得点を算出した。 結 果 以降の分析にはR3. 2. 4 を用いた。また,交互作用が 示された場合の単純傾斜検定は,接近コミットメントの 平均+1SD を接近コミットメントが強い場合,接近コ ミットメントの平均–1SD を接近コミットメントが弱い 場合とした。 記述統計量 本研究で用いた変数のw 係数を算出した結果,十分 な内的一貫性が確認されたため,各変数の平均値を算出 した。各変数の記述統計量および相関係数をTable 1 に 示す。各変数のカップル間の相関は,接近コミットメ ン ト がr=.38(p=.00),回避コミットメントが r=.33 (p=.00),感情バランスが r=.38(p=.00)であった。 APIMoM によるモデル選択 接近・回避コミットメントと感情バランスの関連を検 討するため,接近コミットメントを調整変数,回避コ ミットメントを説明変数,感情バランスを目的変数と し,Garcia et al.(2015)の手順にしたがい APIMoM を 実施した。分析にあたり,接近コミットメントと回避コ ミットメントの得点は全体平均によるセンタリングを 行った(Garcia et al., 2015; Kenny et al., 2006)。APIMoM は飽和モデルを含むモデル比較を行うため,サンプルサ イズ調整済みBIC(sample size adusted beysian information criteria;以下,SABIC とする)によるモデル比較(Garcia et al., 2015),および尤度比検定によるモデル比較を行っ た。SABIC は,その値が小さいほどモデルがデータに 適合していると判断する。一方,尤度比検定は比較する モデル間のc2値および自由度の差を算出し,その差が 有意でなければ,等値制約を課したモデルを採択する。 APIMoM による分析は大きく 3 ステップに分かれて いる(詳細はGarcia et al., 2015 を参照)。以下では,ステッ プごとに結果を記述する。なお,Table 2 には本研究で 比較する全てのモデルの等値制約の条件とそのモデルの 適合度を記載した。 ステップ1 調整効果に男女による違いがあるかを検 討するため,交互作用項からのパスに男女間の等値制約 を課さないモデル(Model 1)と等値制約を課すモデル (Model 2)を比較した。その結果,SABIC は Model 2 が 低く,尤度比検定においてもモデルに差がなかった (Dc2(4)=3. 17, p=.53)。したがって,本研究のモデルの 調整効果に男女の差がないと判断し,以降の分析では, 4 つの調整効果それぞれで男女間に等値制約を課した。 ステップ2 ステップ 2 では,行為者効果やパートナー 効果,調整効果に関する最良のモデルを検討するため, Garcia et al.(2015)で挙げられている,(1)調整効果に 関する4 パターン(Table 2 の Model 3 から Model 6)で 最も適合度の高いモデルを選択した後,(2)行為者効果 とパートナー効果に関する4 パターン(Table 2 の Model 7 から Model 10)から最も適合度の高いモデルを選択し, これらのモデルから良好なモデルを検討した。
分析の結果(Table 2),(1)では,Model 3 と Model 6 のSABIC が,ほぼ同じ値で小さかった。また,(2)では, Model 7 の SABIC が最も小さかった。そこで,Garcia et al.(2015)にしたがい,Model 3 と Model 7 を組み合わ せ たModel 12,Model 6 と Model 7 を 組 み 合 わ せ た Model 13 を検討した。 ステップ3 ステップ 3 では,ステップ 2 で選ばれた モデルを,(1)パス係数に制約を課さないモデル(Model Table 1 各変数の記述統計量 1. 2. 3. 4. 5. 6. 男性 1. 接近コミットメント ― 2. 回避コミットメント –.05 ― 3. 感情バランス .71 –.33 ― 女性 4. 接近コミットメント .38 –.11 .32 ― 5. 回避コミットメント –.08 .33 –.02 –.02 ― 6. 感情バランス .46 –.23 .38 .67 –.23 ― w .81 .86 ― .88 .74 ― M 5. 48 3. 22 2. 24 5. 78 3. 17 2. 51 SD 0. 81 1. 20 0. 98 0. 83 0. 99 0. 82 Note.男性 91 名,女性 91 名,相関係数の値が |.17| 以上 は5% 水準で有意。感情バランスは,ポジティブ感情から ネガティブ感情を減じて算出した。男性のポジティブ感情 はw=.84,男性のネガティブ感情は w=.79,女性のポジティ ブ感情はw=.78,女性のネガティブ感情は w=.80 であった。
1)よりも適合度が高いこと,(2)調整効果のパス係数 を0 に固定するモデル(Model 11)よりも適合度が高い こと,(3)他のモデルよりも適合度が高いこと,(4)採 択したモデルの調整効果のパス係数が有意であることを 基準に,最終モデルの適切性を判断する。Model 12 と Model 13 は(1)の基準を満たしていなかった。この場合, Garcia et al.(2015)は,等値制約の少ないモデルを選択 することを推奨しているため,Model 2 を最終モデルと して採択した。 パス係数の詳細と単純傾斜の検定 最終モデルであるModel 2 のパス係数について,目的 変数ごとに結果を述べる(Table 3)。 男性の感情バランス 男性の感情バランスは,男性の 接近コミットメントと正の関連を示し,男性の回避コ ミットメントと負の関連を示した。すなわち,行為者効 果(am1とa1)が示された。したがって,男性において 仮説1 が支持された。一方,女性の接近コミットメント および回避コミットメントとは関連を示しておらず, パートナー効果(pm1とp1)は示されなかった。 男性の接近コミットメントと男性の回避コミットメン トの交互作用項からのパスが有意であり,行為者-行為 者調整効果(aam1)が示された。そこで,単純傾斜検 定を行った(Figure 2a)。その結果,男性の接近コミッ トメントが弱い場合は,男性の回避コミットメントと感 情 バ ラ ン ス が 負 の 関 連 を 示 し た(b=–0. 41, SE=.07, p=.00)。一方,男性の接近コミットメントが強い場合 には,男性の回避コミットメントと男性の感情バランス の関連は示されなかった(b=–0. 12, SE=.08, p=.12)。 したがって,男性において仮説2 が支持された。 Table 2 本研究における各モデルの等値制約とモデル適合度
aam pam apm ppm c2 df p SABIC
Model 1 制約を課さないモデル ― ― ― ― 2148. 18 Model 2 交互作用が男女で等値のモデル a b c d 3. 17 4 .530 2145. 93 Model 3 行為者調整モデル a b 0 0 9. 65 6 .140 2149. 70 Model 4 パートナー調整モデル 0 0 a b 15. 06 6 .020 2155. 12 Model 5 カップル調整モデル a b a b 14. 66 6 .023 2154. 71 Model 6 対比調整モデル a –b a –b 8. 42 6 .209 2148. 47 Model 7 行為者モデル a 0 b 0 7. 31 6 .293 2147. 36 Model 8 パートナーモデル 0 a 0 b 14. 89 6 .021 2154. 94 Model 9 カップルモデル a a b b 13. 13 6 .041 2153. 18 Model 10 対比モデル a –a b –b 12. 25 6 .057 2152. 30 Model 11 交互作用項を 0 に固定するモデル 0 0 0 0 20. 13 8 .010 2157. 47 Model 12 Model 3+Model 7 a 0 0 0 11. 20 7 .130 2149. 90 Model 13 Model 6+Model 7 a 0 –a 0 10. 02 7 .187 2148. 72 Note.Garcia et al.(2015)を参考に作成した。同じアルファベット間には等値制約を課し,0 はパス係数を 0 に固定したことを表す。いずれも男女で等値制約を課している。ただし,Model 1 は等値制約を課さないモデ ルのため男女に等値制約を課していない。また,同じアルファベットで異なる符号がついているものは,値は 同じであるが符号が異なることを意味する。各モデルの概要は以下のとおりである。Model 3 は行為者調整効 果のみが示されるモデル,Model 4 はパートナー調整効果のみが示されるモデル,Model 5 は行為者効果とパー トナー効果それぞれが行為者調整効果とパートナー調整効果に同じように調整されるモデル,Model 6 は行為 者効果とパートナー効果それぞれが行為者調整効果とパートナー調整効果に同じように調整されるが,その方 向性が異なるモデルである。Model 7 は行為者効果のみが調整されるモデル,Model 8 はパートナー効果のみ が調整されるモデル,Model 9 は行為者効果とパートナー効果に対する行為者調整効果が同等であり,行為者 効果とパートナー効果に対するパートナー調整効果が同等であるモデル,Model 10 は行為者効果とパートナー 効果に対する行為者調整効果が同等であるが,その方向性が異なり,かつ,行為者効果とパートナー効果に対 するパートナー調整効果が同等であるが,その方向性が異なるモデル,Model 12 は行為者効果に対する行為 者調整効果のみが示されるモデル,Model 13 は行為者効果に対する行為者調整効果とパートナー調整効果の 値は等しいが,その符号が異なるモデルである。また,モデル適合度について,Model 1 は飽和モデルのため, SABIC 以外の適合度は算出されない。本文中の尤度比検定は,Model 1 と Model 2,Model 2 と Model 12, Model 2 と Model 13 の比較を行った。
加えて,男性の接近コミットメントと女性の回避コ ミットメントの交互作用項からのパスが示され,パート ナー-行為者調整効果(pam1)が示された。単純傾斜 検定の結果(Figure 2b),男性の接近コミットメントが 弱い場合,女性の回避コミットメントと男性の感情バラ ンスは正の関連を示した(b=0. 19, SE=.07, p=.01)。一 方,男性の接近コミットメントが強い場合,女性の回避 コミットメントと男性の感情バランスは関連を示さな かった(b=–.05, SE=.09, p=.61)。 女性の感情バランス 女性の感情バランスに対して は,女性の接近コミットメントおよび回避コミットメン トからのパスが有意であり,行為者効果(am2とa2)が 示された。すなわち,女性の接近コミットメントと感情 バランスは正の関連を示し,女性の回避コミットメント と感情バランスは負の関連を示した。したがって,女性 において仮説1 が支持された。一方,男性の接近コミッ トメントは女性の感情バランスと正の関連を示し,パー トナー効果(pm2)が示された。 また,女性の接近コミットメントと女性の回避コミッ トメントの交互作用項からのパスが有意であり,行為者 -行為者調整効果(aam2)が示された。そこで,単純 傾斜検定を行った(Figure 2c)。その結果,女性の接近 コミットメントが弱い場合は,女性の回避コミットメン ト と 感 情 バ ラ ン ス が 負 の 関 連 を 示 し た(b=–0. 38, SE=.09, p=.00)。一方,女性の接近コミットメントが強 い場合には,女性の回避コミットメントと感情バランス の関連は示されなかった(b=–0. 09, SE=.07, p=.19)。 したがって,女性において仮説2 が支持された。 加えて,女性の接近コミットメントと男性の回避コ ミットメントの交互作用項からのパスが示され,パート ナー-行為者調整効果(pam2)が示された。単純傾斜 検定の結果(Figure 2d),女性の接近コミットメントが 弱い場合,男性の回避コミットメントと女性の感情バラ ンスは関連を示さなかった(b=0. 10, SE=.07, p=.21)。 一方,女性の接近コミットメントが強い場合,男性の回 避コミットメントと女性の感情バランスは負の関連を示 した(b=–.14, SE=.06, p=.02)。
Table 3 感情バランスに対する APIMoM の結果(採択したモデル= Model 2)
目的変数 男性 感情バランス 女性 感情バランス 説明変数 label b SE p label b SE p 主効果 男性 接近コミットメント am1 0. 83 0. 08 .000 pm2 0. 25 0. 08 .001 男性 回避コミットメント a1 –0. 26 0. 06 .000 p2 –0. 02 0. 05 .599 女性 接近コミットメント pm1 0. 05 0. 08 .540 am2 0. 54 0. 08 .000 女性 回避コミットメント p1 0. 07 0. 07 .295 a2 –0. 23 0. 06 .000 交互作用 男性 接近コミットメント ×男性 回避コミットメント aam1 0. 18 0. 06 .001 ppm2 0. 10 0. 05 .067 女性 接近コミットメント ×女性 回避コミットメント ppm1 0. 10 0. 05 .067 aam2 0. 18 0. 06 .001 男性 接近コミットメント ×女性 回避コミットメント pam1 –0. 15 0. 06 .009 apm2 –0. 01 0. 06 .908 女性 接近コミットメント ×男性 回避コミットメント apm1 –0. 01 0. 06 .908 pam2 –0. 15 0. 06 .009 r SE p 感情バランスの残差級内相関 –0. 01 0. 03 .743 R2 .66 .58
Note.行為者効果:a1とa2,パートナー効果:p1とp2,行為者-行為者調整効果:aam1とaam2, 行為者-パートナー調整効果:apm1とapm2,パートナー-行為者調整効果:pam1とpam2,パートナー -パートナー調整効果:ppm1とppm2。採択したModel 2 は,交互作用項からのパス係数それぞれに 男女間で等値制約(aam1=aam2, apm1=apm2, pam1=pam2, ppm1=ppm2)を課したモデルである。
考 察 本研究は,ペアデータを用いて,接近・回避コミット メントと感情経験の関連を検討するため,APIMoM に よる分析を行った。 接近・回避コミットメントと感情バランスとの関連に ついて,男女ともに行為者効果が示された。すなわち, 男女ともに個人の接近コミットメントが強いほど,その 個人の感情経験がポジティブであり,個人の回避コミッ トメントが強いほど,その個人の感情経験がポジティブ ではなくなっていた。また,男女ともに行為者-行為者 調整効果も示された。すなわち,男女ともに,個人の接 近コミットメントが弱い場合にのみ,個人の回避コミッ トメントが強いほど,その個人の感情経験はポジティブ ではなくなっていた。したがって,男女ともに仮説1 と 仮説2 は支持された。これらの結果は,古村(2016)を 再現しており,接近コミットメントが強い場合には終結 コストが意識されないため,回避コミットメントが恋愛 関係における感情経験に与える影響が顕著にならず,接 近コミットメントが弱い場合には終結コストが意識され るため回避コミットメントの影響が顕著になると解釈で きる。 一方,パートナー効果は,女性でのみ示された。具体 的には,女性の接近コミットメントも回避コミットメン トも男性の感情バランスとは関連していなかったのに対 し,男性の接近コミットメントが強いほど,女性の感情 経験はポジティブであった。したがって,仮説3 が女性 でのみ支持された。 Figure 2 単純傾斜検定の結果 Note.(a)男性の接近コミットメント×男性の回避コミットメントの交互作用(行為者-行為者調整効果)。(b)男 性の接近コミットメント×女性の回避コミットメントの交互作用(パートナー-行為者調整効果)。(c)女性 の接近コミットメント×女性の回避コミットメントの交互作用(行為者-行為者調整効果)。(d)女性の接近 コミットメント×男性の回避コミットメントの交互作用(パートナー-行為者調整効果)。
パートナー効果の男女差は,コミットメントと関係維 持行動の関連の男女差に起因する可能性がある。Ogolsky and Bowers(2012)は,関係維持行動についてのメタ分 析を行い,コミットメントと恋人への気持ちの表明や対 話のような関係維持行動の関連の効果量が,女性よりも 男性で大きいことを明らかにした。また,Ogolsky and Bowers(2012)は,男性よりも女性が,恋人の関係維 持行動を認知しやすいことを明らかにしている。すなわ ち,コミットメントの強い男性は,女性に対して気持ち の表明や対話を行いやすく,また,女性はそれらの行動 を認知しやすいと考えられる。さらに,相羽(2010)は, 関係継続に関する問題状況で恋人から気持ちを素直に伝 えられることが,女性にとって恋人への愛情を高めるも のであることを明らかにした。一方,男性では,このよ うな関連は示されなかった。以上を踏まえれば,接近コ ミットメントが強い男性は,女性に対して気持ちの表明 や対話を行いやすく,それによって女性は恋人である男 性に愛情を感じやすいと推測される。そのため,男性の 接近コミットメントが女性の感情経験をポジティブにさ せたのであろう。しかし,感情バランスがポジティブ感 情からネガティブ感情を減じた指標であることを踏まえ れば,男性の関係維持活動が愛情のようなポジティブ感 情を増加させただけではなく,不安のようなネガティブ 感情を減少させた可能性も考えられる。今後,ポジティ ブ感情やネガティブ感情だけではなく,愛情や不安など 感情の種類を踏まえた検討も必要である。 加えて,男女ともに回避コミットメントから感情経験 へのパートナー効果が示されなかった結果について,回 避コミットメントの促進する関係維持活動が必ずしも恋 人に直接的に働きかける行動ではない可能性が考えられ る。問題部分で述べた回避目標によって引き起こされる ネガティブな行動の多くは,恋人との葛藤場面において 検討されていた(e.g., Downey et al., 1998)。一方,本研 究のように具体的な相互作用の場面を特定しない場合に は,日常的に葛藤を回避するような,恋人に直接的に働 きかけない行動が反映されていた可能性がある。葛藤を 回避する行動は相手に認知されにくい(Overall, Sibley, & Travaglia, 2010)ため,回避コミットメントの行為者 効果が示されたのに対し,パートナー効果は示されな かったと推測される。 最後に,男女ともにパートナー-行為者調整効果が示 された。具体的には,男性において,女性の回避コミッ トメントと男性の感情バランスの関連が,男性の接近コ ミットメントによって調整されており,男性の接近コ ミットメントが弱い場合には,女性の回避コミットメン トが強いほど,男性の感情経験がポジティブであった。 一方,男性の接近コミットメントが強い場合,女性の回 避コミットメントと男性の感情バランスとの関連は示さ れなかった。対して,女性において,男性の回避コミッ トメントと女性の感情バランスの関連は,女性の接近コ ミットメントによって調整されており,女性の接近コ ミットメントが弱い場合,男性の回避コミットメントと 女性の感情経験の関連は示されなかった。一方,女性の 接近コミットメントが強い場合,男性の回避コミットメ ントが強いほど,女性の感情経験はポジティブではな かった。 パートナー-行為者調整効果は,恋人の回避コミット メントと自分の感情経験の関連が,自分の接近コミット メントによって調整されることを示す。個人のコミット メントが,その個人のコミットメント表出行動を引き起 こすことで,その恋人の関係性評価や関係内での経験に 影響を与えること(Wiegel, 2008)を踏まえれば,恋人 の回避コミットメントの強さによって引き起こされる行 動の影響が,自分の接近コミットメントによって調整さ れる過程が推測される。自分の接近コミットメントの強 さによって恋人の行動の影響が異なる原因の一つとし て,コミットメントが生じさせる関係内での出来事に対 するポジティブな認知バイアスや評価バイアスが考えら れる。先行研究では,全体的コミットメントが強い人ほ ど恋人からの暴力行為を冗談と認知しやすく(Arriaga, 2002),葛藤の程度を小さく見積もり(Menzies-Toman & Lydon, 2005),自分たちの関係を他の関係よりも高く評価 する(Martz, Verette, Arriaga, Slovik, Cox, & Rusbult, 1998) ことが明らかにされていた。接近コミットメントと全体 的コミットメントが大きく重複する概念である(古村, 2014)ことを踏まえれば,本研究の結果も接近コミット メントが恋人の行動の認知や評価にバイアスを生じさせ た可能性が考えられる。しかし,男性の接近コミットメ ントが弱い場合にのみ,恋人の回避コミットメントが感 情経験をポジティブにする結果は,先行研究で示された ポジティブな認知バイアスや評価バイアスとは整合しな い結果であった。同様に,女性の接近コミットメントが 強い場合にのみ,恋人の回避コミットメントが感情体験 をネガティブにする結果も,ポジティブな認知バイアス や評価バイアスが生じておらず,先行研究とは整合しな い結果であった。今後は,回避コミットメントが,恋人 に対するどのような行動を生じさせるのかも踏まえなが ら,接近コミットメントが引き起こす認知バイアスや評 価バイアスを詳細に検討し,全体的コミットメントを用 いた先行研究の異同を検討していく必要があろう。
本研究の意義と今後の課題 本研究の意義は,多くの先行研究で一次元構造として 扱われてきたコミットメントを接近コミットメントと回 避コミットメントに分類し,それらの交互作用や二者間 の交互作用(パートナー-行為者調整効果やパートナー -パートナー調整効果)を検討した点にある。複数のタ イプのコミットメントについて,その影響を検討した先 行研究であるBurke and Segrin(2014)は主効果のみの 検討から,個人のコミットメントがパートナーの感情経 験に与える影響が個人内過程に限定されることを示し た。しかし,本研究の結果を踏まえれば,個人のコミッ トメントがパートナーの感情経験に与える影響は,個人 のタイプの異なるコミットメントの交互作用,あるいは, 個人のコミットメントとパートナーのコミットメントの 交互作用によって規定される可能性を指摘できる。異な るタイプのコミットメントや恋愛関係にある二者のコ ミットメントが,相互に関連しながら関係内での感情経 験が規定されることを示した本研究は,恋愛関係におけ るコミットメントの研究に新しい視点を提供しうると考 えられる。 最後に,本論文の課題を二点挙げる。第一に,接近・ 回避コミットメントが促進する行動を考慮した検討を行 い,接近・回避コミットメントと感情経験の関連を媒介 するかを検討する必要がある。この際,質問紙による測 定だけではなく,実際の会話場面や問題解決場面の観察 などの行動測定を行うことが望まれる。第二に,パート ナー調整効果について,より詳細な検討が必要である。 この際,上述した認知バイアスや評価バイアスを考慮し た検討を行う以外にも,二者の関係性や個人特性,勢力 関係など複数の視点から検討を行い,知見を精緻化して いくことが望まれる。 引用文献 相羽美幸(2010).大学生の恋愛における問題状況と恋 愛スキルの構造 筑波大学大学院人間総合科学研究 科博士論文(未公刊)
Adams, J. M., & Jones, W. H. (1999). Interpersonal com-mitment in historical perspective. In J. M. Adams & W. H. Jones (Eds.), Handbook of Interpersonal
Com-mitment and Relationship Stability (pp. 3–33). New
York: Plenum.
Arriaga, X. B. (2002). Joking violence among highly com-mitted individuals. Journal of Interpersonal Violence,
17, 591–610.
浅野良輔・五十嵐祐(2015).精神的健康・幸福度をめ
ぐる新たな二者関係理論とその実証方法 心理学研 究,86, 481–497.
Burke, T. J., & Segrin, C. (2014). Bonded or stuck? Effects of personal and constraint commitment on loneliness and stress. Personality and Individual Differences, 64, 101–106.
Cate, R. M., Levin, C. L., & Richmond, L. S. (2002). Premarital relationship stability: A review of recent research. Journal of Social and Personal Relationships,
19, 261–284.
Downey, G., Freitas, A. L., Michaelis, B., & Khouri, H. (1998). The self-fulfilling prophecy in close relation-ships: Rejection sensitivity and rejection by romantic partners. Journal of Personality and Social Psychology,
75, 545–560.
Fincham, F. D., & Beach, S. R. H.(2010). Of memes and marriage: Toward a positive relationship science.
Journal of Family Theory and Review, 2, 4–24.
Finkel, E. J., Rusbult, C. E., Kumashiro, M., & Hannon, P. A. (2002). Dealing with betrayal in close relation-ships: Does commitment promote forgiveness? Journal
of Personality and Social Psychology, 82, 956–974.
Frank, E., & Brandstätter, V. (2002). Approach versus avoidance: Different type of commitment in intimate relationships. Journal of Personality and Social
Psy-chology, 82, 208–221.
Garcia, R. L., Kenny, D. A., & Ledermann, T. (2015). Moderation in the actor-partner interdependence model. Personal Relationships, 22, 8–29.
Ho, M. Y., Chen, S. X., Bond, M. H., Hui, C. M., Chan, C., & Friedman, M. (2012). Linking adult attachment styles to relationship satisfaction in Hong Kong and the United States: The mediating role of personal and structural commitment. Journal of Happiness Studies,
13, 565–578.
Johnson, M. P. (1999). Personal, moral, and structural commitment to relationships: Experiences of choice and constraint. In J. M. Adams & W. H. Jones (Eds.),
Handbook of Interpersonal Commitment and Relation-ship Stability (pp. 73–84). New York: Plenum.
Kenny, D. A., Kashy, D. A., & Cook, W. L. (2006). Dyadic
Data Analysis. New York: The Guilford Press.
古村健太郎(2014).恋愛関係における接近・回避コミッ トメント尺度の作成 パーソナリティ研究,22,
古村健太郎(2016).恋愛関係における接近・回避コミッ トメントと恋愛関係における感情経験,精神的健康 の関連 心理学研究,86, 524–534.
Levinger, G. (1999). Duty toward whom? Reconsidering attractions and barriers as determinants of commit-ment in a relationship. In J. M. Adams & W. H. Jones (Eds.), Handbook of Interpersonal Commitment and
Relationship Stability (pp. 37–52). New York: Pleum.
Lydon, J. E., Burton, K., & Menzies-Toman, D. (2005). Commitment calibration with the relationship cognition toolbox. In M. W. Baldwin (Ed.), Interpersonal Cognition (pp. 126–152). New York: Guilford Press.
Martz, J. M., Verette, J., Arriaga, X. B., Slovik, L. F., Cox, C. L., & Rusbult, C. E. (1998). Positive illusion in close relationships. Personal Relationships, 5, 159–181. Menzies-Toman, D., & Lydon, J. E. (2005).
Commitment-motivated benign appraisals of partner transgressions: Do they facilitate accommodation? Journal of Social
and Personal Relationships, 22, 111–128.
Murray, S. L., & Holmes, J. G. (2011). Interdependence
Mind: The Dynamics of Close Relationships. NewYork:
The Guilford Press.
Ogolsky, B. G., & Bowers, J. R. (2012). A meta-analytic review of relationship maintenance and its correlates.
Journal of Social and Personal Relationships, 30, 343–367.
Overall, N. C., Sibley, C. G., & Travaglia, L. K. (2010). Loyal but ignored: The benefits and costs of constructive communication behavior. Personal Relationships, 17, 127–148.
Roloff, M. E., Soule, K. P., & Carey, C. M. (2001). Reasons for remaining in a relationship and responses to rela-tional transgression. Journal of Social and Personal
Relationships, 18, 362–285.
Rusbult, C. E., & Agnew, C. R. (2010). Prosocial
motiva-tion and behavior in close relamotiva-tionships. In Prosocial
Motives, Emotions, and Behavior: The Better Angels of Our Nature (pp. 327–345). Washington DC: American
Psychologist Association.
Rusbult, C. E., Coolsen, M. K., Kirchner, J. L., & Clarke, J. A. (2006). Commitment. In A. L. Vangelisti & D. Perlman (Eds.), The Cambridge Handbook of Personal
Relationships (pp. 615–635). Cambridge University
Press.
Rusbult, C. E., & Van Lange, P. A. M. (2003). Interdepend-ence, interaction, and relationships. Annual Review of
Psychology, 54, 351–375.
Strachman, A., & Gable, S. L. (2006). Approach and avoid-ance relationship commitment. Motivation and
Emo-tion, 30, 117–126.
立脇洋介(2007).異性交際中の感情と相手との関連性 心理学研究,78,244–251.
Tran, S., & Simpson, J. A. (2009). Prorelationship mainte-nance behaviors: The joint roles of attachment and commitment. Journal of Personality and Social
Psy-chology, 97, 685–698.
Uchida, Y., Kitayama, S., Mesquita, B., Reyes, A. J., & Morling, B. (2008). Is perceived emotional support beneficial? Well-being and health in independent and interdependent cultures. Personality and Social
Psy-chology Bulletin, 34, 741–754.
Wickham, R. E., & Knee, C. R. (2012). Interdependence theory and the actor-partner interdependence model: Where theory and method converge. Personality and
Social Psychology Review, 16, 375–393.
Weigel, D. J. (2008). A dyadic assessment of how couples Indicate their commitment to each other. Personal
Influence of approach-avoidance commitment on emotional experience in romantic relationships:
From the perspective of actor-partner interdependence moderation model (APIMoM)
Kentaro Komura (Niigata University)This study examined the influence of approach-avoidance commitment on emotional experience in romantic relationships. Ninety-one heterosexual couples participated in a questionnaire survey. Actor-partner interdependence moderation model (APIMoM) was used for analyzing intrapersonal process, interpersonal process, and partner moderation effect. Results indicated that for the intrapersonal process, when approach commitment was weak, avoidance commitment was negatively associated with it. For the interpersonal process, men’s approach commitment was positively associated with women’s emotion. In the partner moderation effect, interaction between men’s approach commitment and women’s avoidance commitment was associated with men’s emotion; and interaction between women’s approach commitment and men’s avoidance commitment was associated with women’s emotion. These results were discussed from the perspective of behavior and interaction caused by approach-avoidance commitment.
Key Words: relationship commitment, approach-avoidance commitment, moderation effect, actor-partner