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「伊勢物語」を用いたアクティブ・ラーニングの実践

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Academic year: 2021

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『伊勢物語』を用いたアクティブ・ラーニングの実践

―平成 27 年度「古典文学」の報告―

道園 達也

The Practice of Active Learning Using “The tales of Ise”

-A Report of “Classical Literature”-

Tatsuya Michizono*

It is a report of the practice of active learning using “The tales of Ise” in “Classical literature”. Members of a class made material, and reported it based on this material. And they discussed. The characteristic of “The tales of Ise” is that “Uta” asks a story and a story decides meaning of “Uta”, and the stories using “Uta” are arranged. Members of a class made “Uta” and story using “Uta”. And they arranged stories using “Uta”. As survey results we found out that active learning is effective, but correspondence with targets of a subject is insufficient. It is necessary to improve the targets and methods.

キーワード:古典文学,伊勢物語、アクティブ・ラーニング Keywords:Classical Literature, The Tales of Ise, active learning

. はじめに

本校が掲げる「熊本高専の学習・教育目標―本校が育成 する人材像―」(以下「学習・教育目標」と略記)は次のと おりである。 (1)日本語及び英語のコミュニケーション能力を有 する技術者 (2)ICT に関する基本的技術及び工学への応用技術を 身に付けた技術者 (3)各分野における技術の基礎となる知識と技能及 びその分野の専門技術に関する知識と能力を持ち、 複眼的な視点から問題を解決する能力を持った技術 者 (4)知徳体の調和した人間性及び社会性・協調性を 身に付けた技術者 (5)広い視野と技術のあり方に対する倫理観を身に 付けた技術者 (6)知的探究心を持ち、主体的、創造的に問題に取 り組むことができる技術者 以上、6項目の目標にサブ項目を配置し、それらの達成 を目指したカリキュラムを整備している。 また、本校八代キャンパスではカリキュラムの実効性を 高めるために、平成 26 年度に「八代キャンパスの教育改 善に関する提言書 『教える』から『学ぶ』への転換」が まとめられた。そこでは、e-Learning、自学自習支援、ICT 教育、英語教育、国際化教育などに関する具体的な提言が なされている。そのキーワードのひとつがアクティブ・ラ ーニングである。アクティブ・ラーニングは近年、教育現 場への導入が推進されている(1)。また、古典文学に関す る実践事例も蓄積されつつある(2) 本稿は「古典文学」において『伊勢物語』を用いたアク ティブ・ラーニングの実践報告である。「古典文学」は「経 済学」「日本現代文学」「哲学」「歴史と文化」「社会と法」 とともに「学習・教育目標」(4)「知徳体の調和した人間 性及び社会性・協調性を身に付けた技術者」のサブ項目1 「広い視野で物事を考えることができる」に対応してい る。「古典文学」の役割は古典文学を題材に「広い視野で 物事を考えることができる」ようにアクティブ・ラーニン グの手法を活用することである。「広い視野で物事を考え ること」を、どのように把握するかという問題はよりよい 教育手法を導入するために改めて検討する必要がある。今 回は人間と、その価値観、および言葉の多様性を受容し、 自分なりに考えることとしておく。

. 平成 27 年度「古典文学」の報告

2.1 科目概要 「古典文学」は本科5年次前期開講の選択必修、学修単 * 共通教育科(八代キャンパス) 〒866-8501 熊本県八代市平山新町 2627 Faculty of Liberal studies,

2627 Hirayama-Shinmachi, Yatsushiro-shi, Kumamoto, 866-8501, Japan

論 文

参考文献 (1) 知恵蔵 2015 の解説. 青少年の進路指導に関わる新しい教育概念。1970 年代初 めに当時の米国連邦教育局長官マーランドがcareer education という言葉で提唱した。中央教育審議会(中教審) が99 年に、「学校教育と職業生活との円滑な接続を図る ため、望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や 技能を身につけさせると共に、自己の個性を理解し、主 体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」として 提言し、政策的に推進されることとなった。概念として は進路指導と基本的違いはないが、文部科学省内に設け られたキャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力 者会議が2004 年 1 月に発表した報告書によると、「従来 の進路指導に比べてより広範な活動」を展開すること、 また、専門的な知識・技能の習得に重点を置いた従来の 職業教育を反省して、働くことや専門的知識・技能の習 得の意義を理解させることが狙いとされ、小学校から始 めることとされている。 ( 新井郁男 上越教育大学名誉教/2007 年) http://kotobank.jp/word/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83 %AA%E3%82%A2%E6%95%99%E8%82%B2 (2015.9.6 閲覧) (2)小学校・中学校・高等学校キャリア教育推進の手引 http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/21career.shiryou/honbun/ koumoku/1-05.pdf. (2015.9.20 閲覧) (3) 「社会的・職業的自立、社会・職業への円滑な移行に 必要な力」について~「今後の学校におけるキャリア教 育・職業教育の在り方について(平成23年1月中央教 育審議会答申)」における提言~ http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/047/si ryo/__icsFiles/afieldfile/2012/09/12/1325670_02.pdf (2015.9.20 閲覧) (4) 「公開トーク番組~ゲストの話を聴こう~」、「面接で よくある質問に答える」授業風景は、教員のインタビュ ーとともに、「授業支援スキル向上支援ツールのICT 共 有」(JSPS 科研費 23531035 助成事業)によって、web 配 信ビデオ動画となっている。 01 授業風景 https://drive.google.com/file/d/0BzIG4CXaptDZZ2hoYWcxajFURjg/view?usp= sharing インタビューで述べられている手法と対応付けて、右上 に授業の流れの中の、どの部分なのかを表示。授業中に 発揮されている、「スキル」や「こだわりポイント」を解 説付きで下に表示。 02 インタビュー(概要と手法) https://drive.google.com/file/d/0BzIG4CXaptDZLUhXaGN5MnhfUkE/view?usp =sharing 適宜、ポイントをテロップ表示。 03 インタビュー(活性化の工夫) https://drive.google.com/file/d/0BzIG4CXaptDZaEV6RGdac3N5enM/view?usp =sharing 04 インタビュー(効果と課題) https://drive.google.com/file/d/0BzIG4CXaptDZb3hsQnZLak5PUTQ/view?usp= sharing

(5) John D. Krumboltz (原著)、Al S. Levin (原著)、花田光 世(翻訳)、大木紀子 (翻訳)、宮地夕紀子 (翻訳):「その幸 運は偶然ではないんです!」ダイヤモンド社 (2005)

(2)

の文献である。 井筒雅風・樺島忠夫・中西進共編『21 新国語総合ガイ ド』二訂版(京都書房、2009・1) 室伏信助「物語(源氏物語以前)」(木村正中編『中古 日本文学史』有斐閣、1979・11/1997・12、14 刷) 加藤周一『日本文学史序説』下(筑摩書房、1975・2/ 1992・4、24 刷) 授業担当者の解説の後、くじ引きで受講生が担当する章 段を決めた。 2回目は授業担当者が発表資料(例)を作成し、資料作 成や口頭発表の注意点を説明した。発表資料は授業方針に 示したとおり「本文」(底本は岩波文庫)、「現代語訳」、「課 題設定と考察」、および参考文献で作成した。資料はWebclass で発表の2日前までの提出を指示した。 3回目から7回目、および 10 回目から 14 回目は各担当 者が作成した資料に基づき、口頭発表を行い、授業担当者 がコメントした。ディスカッションは4名の発表者それぞ れに3~4名を、くじ引きで割り振って行った。ディスカ ッション終了後は発表者に議論の内容を簡単に報告しても らった。1コマ90 分の内訳は口頭発表とコメントが1人あ たり10~15 分程度、ディスカッション 10 分程度、報告が 10 分程度であった。 授業担当者によるコメントは、音読の誤り、本文引用の 不備の指摘や課題設定と考察の不明瞭な点の確認が多かっ た。 7回目の「『古今和歌集』と『伊勢物語』」は中間試験後 の2巡目への展開と、アクティブ・ラーニングへの接続を意 識して授業担当者が行った解説である。『古今和歌集』に業 平作として収載された歌と、その歌を用いた『伊勢物語』 二、四、五、九、十七、十九、二十五の各段を比較する資 料を作成・配付して歌物語の特質を検討し、「歌が物語を求 め、物語が歌の意味を定める」という点について解説した。 8回目と16 回目は本校八代キャンパスの学事日程に合わ せて定期試験を実施した。定期試験は記述式とした。授業 担当者による解説、および受講生の発表とディスカッショ ンの論点を踏まえて以下の設問とし、教科書と発表資料の 持込可とした。 中間試験の設問は次のとおりである。 一、『伊勢物語』は「「みやび」(優雅なふるまい)の精 神を基調とし」た物語、また「愛とみやびの物語」と される。『伊勢物語』における「みやび」とは、どのよ うな「ふるまい」だと思うか、今回の範囲(一段~二 十六段)内の段に触れつつ、あなたの意見を述べよ。 二、今回の範囲内で、「をとこ」の歌の中から優れてい ると思う歌を一首選び、選択理由を説明せよ。 三、今回の範囲内で、隣り合う二つの段を任意に選び、 その関係について、あなたの意見を述べよ。 四、『古今和歌集』の在原業平の歌を用いた『伊勢物語』 の各段(二、四、五、九、十七、十九、二十五)から 一つの段を選んで、両者の比較によって明らかとなる 『伊勢物語』の特質について説明せよ。 中間試験の設問一は1回目、設問四は7回目の説明内容 を踏まえたもの、設問二と設問三は受講生の発表とディス カッションにおいて言及された論点から出題したものであ る。配点は各25 点とした。 期末試験の設問は次のとおりである。 一、今回の範囲(二十七段~六十二段)内には、極端 に短く、断片的と言うべき段が含まれる(五十一~五 十七段など)。それらの段は、どのような表現効果を有 していると思うか、意見を述べよ。 二、『伊勢物語』の魅力は「歌が物語を求め、物語が歌 の意味を定める」ところにあるとした場合、次に問題 となるのは、そのようにして生まれた複数の段を、ど のように配列するかということである。配列するとい う表現行為の面白さや難しさについて、意見を述べよ。 三、隣り合っていない複数の段に取り上げられている モチーフ(色好みの女、蛍、贈り物としての衣服など) のうち、一つを選び、その描かれ方について、意見を 述べよ。 期末試験の設問一と三は受講生の発表とディスカッショ ンにおいて言及された論点から出題したもの、設問二は次 に紹介するアクティブ・ラーニングの内容を踏まえたもの である。配点は設問一と二が30 点、設問三が 40 点である。 設問三は出題を予告し、事前に『伊勢物語』を読み返し、 準備しておくよう指示した。章段の内容を踏まえた組み換 えの作業が必要であり、難易度が高いと判断したためであ る。 記述式の評価基準は、設問との対応、文のねじれ・誤字 脱字の有無である。中間試験は最高点95 点、最低点 67 点、 平均86.5 点、期末試験は最高点 98 点、最低点 67 点、平均 86.1 点の結果であった。 総合評価は定期試験の点数を60%に換算し、発表 20%と 課題 20%を合算した。発表および課題には全受講生が十分 に取り組んでくれたので差はつけなかった。受講生数が 17 名と少人数であったことも有意義であったと考えられる が、一人一人の受講生の意欲的な参加を同様に評価したた めである。その点については、17 回目の授業で説明した。 2.3 アクティブ・ラーニングの実践 学生による資料作成、口頭発表、ディスカッションもア クティブ・ラーニングである。それに加えて、今回工夫した のは前記スケジュールのうち、9回目「短歌をつくる」と、 14 回目「歌をつくり、物語をつくる」、および 15 回目「物 語を配列し、歌物語をつくる」の取り組みである。 9回目の「歌をつくる」では中間試験の答案返却と解説 の後、受講生に短歌をつくってもらった。 1)それぞれ1首ずつつくり、短冊に書く(無記名)。 2)授業担当者が回収し、短冊に通し番号を振る。 3)受講生は手元の用紙に通し番号を記入。 4)短冊を回覧し、手元の用紙の該当箇所に転記。 5)良いと思う歌を2首ずつ選び、発表。 位科目である。1コマ 90 分×15 回、自学自習を含めて計 45 時間で2単位。平成 27 年度の受講生は 17 名である。以 下、シラバスの記載内容を摘記して、「古典文学」の概要 を紹介する。 教科書:『伊勢物語』大津有一校注(岩波文庫) 参考書:『伊勢物語全訳注』上下・阿部俊子訳注(講談 社学術文庫)、『新版伊勢物語付現代語訳』石田穣二 訳注(角川ソフィア文庫)、『伊勢物語』永井和子訳 注(笠間文庫) 科目概要:古典文学に表現された人間の知を読み解き たい。人生や社会、自然に対する思想と感性は、共 通性と差異によって〈いま・ここ〉に生きる私たち の姿を照らし出してくれる。今年度は『伊勢物語』 を精読することで、その一端に触れたい。 授業方針:『伊勢物語』を精読する。学生は本文と現代 語訳、および課題設定と考察の資料を作成、口頭発 表を行う。その後、参加者全員によるディスカッシ ョンを行う。古文への抵抗感をやわらげ、その世界 が身近に感じられるように配慮したい。 平成 27 年度は『伊勢物語』を取り上げた。自学自習時 間の確保と確認を意図して、学生に資料の作成と口頭発表 を課した。資料には担当する章段の現代語訳を載せるよう にしたが、「古文への抵抗感をやわらげ」るために、古語 辞典を引いて訳すのではなく、上記参考書の現代語訳を参 照・活用してよいこととした。本キャンパスでは1、2年 次の必修科目「国語」において検定教科書を用いて古文を 学習する機会を設けている。しかしながら、助動詞を含め た古典文法の習得や古語の学習が不十分であるため、参考 書を活用して現代語訳することとし、「古文への抵抗感」 を軽減したいと考えたためである。 達成目標: Ⅰ.歴史的仮名遣いの古文を音読できる。 Ⅱ.参考書を活用し、古典文法の基礎を踏まえ、古文 を現代語訳できる。 Ⅲ.自ら課題を設定し、自分なりに考察できる。 Ⅳ.提示された論点を整理し、ディスカッションでき る。 Ⅴ.課題に対して、主体的に取り組むことができる。 評価方法及び総合評価:定期試験60%、発表 20%、課20%で算出された点数が 60 点以上であること、ま た、課題が 8 割以上提出されていること。以上、2 つの条件を満たすことで合格とする。期末において、 以上の条件を満たさない場合は、再試験等を実施す ることもある。 科目概要と授業方針に基づき、達成目標を5つ設定した。 達成目標Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳは発表と課題に対応し、達成目標 Ⅴは課題の8割以上の提出を求めたことに対応している。 定期試験は中間と期末と2回実施し、主に達成目標Ⅳの提 示された論点の整理に対応している。 表1 平成27 年度「古典文学」スケジュール 前期 木・1 内容 1回 4/9 文学史の「伊勢物語」(道園) 担当決め 2回 4/16 一(道園) 3回 4/23 二・三(A)四(B) 五(C)六(D) 4回 4/30 七・八(E)九(F) 十・十一(G)十二・十三(H) 5回 5/14 十四・十五(I)十六(J) 十七・十八(K)十九・二十(L) 6回 5/21 二十一(M)二十二(N) 二十三(O)二十四(P) 7回 5/28 二十五・二十六(Q) 『古今和歌集』と『伊勢物語』(道園) 8回 6/4 中間試験 9回 6/11 試験返却・解説 歌をつくる(全員) 10 回 6/18 二十七・二十八・二十九(A) 三十・三十一・三十二(B) 三十三・三十四・三十五(C) 三十六・三十七・三十八(D) 11 回 6/25 三十九(E)四十(F) 四十一・四十二(G) 四十三・四十四(H) 12 回 7/2 四十五・四十六(I) 四十七・四十八・四十九(J) 五十・五十一・五十二(K) 五十三・五十四・五十五(L) 13 回 7/9 五十六・五十七(M)五十八(N) 五十九(O)六十・六十一(P) 14 回 7/16 六十二(Q) 歌をつくり、物語をつくる(全員) 15 回 7/23 物語を配列し、歌物語をつくる(全員) 16 回 7/28 期末試験 17 回 8/6 試験返却・解説 学生アンケート 2.2 スケジュール 平成27 年度「古典文学」のスケジュールを表1に示した。 実際には就職活動等に伴う公欠により、予定日とは別の日 に発表した受講生もいたが、今回は当初の予定表を掲げた。 1列目は授業回数、2列目は日付を示した。3列目は内容 の概略を示した。漢数字は教科書の岩波文庫版『伊勢物語』 の章段番号、( )内のアルファベットは受講生を示してい る。たとえば、受講生Aは「3回/4/23/二・三」と「10 回/6/18/二十七・二十八・二十九」を担当したことを示す。 1回目は「文学史の『伊勢物語』」と題して授業担当者(道 園、以下同じ)が解説した。配付資料に引用したのは以下

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の文献である。 井筒雅風・樺島忠夫・中西進共編『21 新国語総合ガイ ド』二訂版(京都書房、2009・1) 室伏信助「物語(源氏物語以前)」(木村正中編『中古 日本文学史』有斐閣、1979・11/1997・12、14 刷) 加藤周一『日本文学史序説』下(筑摩書房、1975・2/ 1992・4、24 刷) 授業担当者の解説の後、くじ引きで受講生が担当する章 段を決めた。 2回目は授業担当者が発表資料(例)を作成し、資料作 成や口頭発表の注意点を説明した。発表資料は授業方針に 示したとおり「本文」(底本は岩波文庫)、「現代語訳」、「課 題設定と考察」、および参考文献で作成した。資料はWebclass で発表の2日前までの提出を指示した。 3回目から7回目、および10 回目から 14 回目は各担当 者が作成した資料に基づき、口頭発表を行い、授業担当者 がコメントした。ディスカッションは4名の発表者それぞ れに3~4名を、くじ引きで割り振って行った。ディスカ ッション終了後は発表者に議論の内容を簡単に報告しても らった。1コマ90 分の内訳は口頭発表とコメントが1人あ たり10~15 分程度、ディスカッション 10 分程度、報告が 10 分程度であった。 授業担当者によるコメントは、音読の誤り、本文引用の 不備の指摘や課題設定と考察の不明瞭な点の確認が多かっ た。 7回目の「『古今和歌集』と『伊勢物語』」は中間試験後 の2巡目への展開と、アクティブ・ラーニングへの接続を意 識して授業担当者が行った解説である。『古今和歌集』に業 平作として収載された歌と、その歌を用いた『伊勢物語』 二、四、五、九、十七、十九、二十五の各段を比較する資 料を作成・配付して歌物語の特質を検討し、「歌が物語を求 め、物語が歌の意味を定める」という点について解説した。 8回目と16 回目は本校八代キャンパスの学事日程に合わ せて定期試験を実施した。定期試験は記述式とした。授業 担当者による解説、および受講生の発表とディスカッショ ンの論点を踏まえて以下の設問とし、教科書と発表資料の 持込可とした。 中間試験の設問は次のとおりである。 一、『伊勢物語』は「「みやび」(優雅なふるまい)の精 神を基調とし」た物語、また「愛とみやびの物語」と される。『伊勢物語』における「みやび」とは、どのよ うな「ふるまい」だと思うか、今回の範囲(一段~二 十六段)内の段に触れつつ、あなたの意見を述べよ。 二、今回の範囲内で、「をとこ」の歌の中から優れてい ると思う歌を一首選び、選択理由を説明せよ。 三、今回の範囲内で、隣り合う二つの段を任意に選び、 その関係について、あなたの意見を述べよ。 四、『古今和歌集』の在原業平の歌を用いた『伊勢物語』 の各段(二、四、五、九、十七、十九、二十五)から 一つの段を選んで、両者の比較によって明らかとなる 『伊勢物語』の特質について説明せよ。 中間試験の設問一は1回目、設問四は7回目の説明内容 を踏まえたもの、設問二と設問三は受講生の発表とディス カッションにおいて言及された論点から出題したものであ る。配点は各25 点とした。 期末試験の設問は次のとおりである。 一、今回の範囲(二十七段~六十二段)内には、極端 に短く、断片的と言うべき段が含まれる(五十一~五 十七段など)。それらの段は、どのような表現効果を有 していると思うか、意見を述べよ。 二、『伊勢物語』の魅力は「歌が物語を求め、物語が歌 の意味を定める」ところにあるとした場合、次に問題 となるのは、そのようにして生まれた複数の段を、ど のように配列するかということである。配列するとい う表現行為の面白さや難しさについて、意見を述べよ。 三、隣り合っていない複数の段に取り上げられている モチーフ(色好みの女、蛍、贈り物としての衣服など) のうち、一つを選び、その描かれ方について、意見を 述べよ。 期末試験の設問一と三は受講生の発表とディスカッショ ンにおいて言及された論点から出題したもの、設問二は次 に紹介するアクティブ・ラーニングの内容を踏まえたもの である。配点は設問一と二が30 点、設問三が 40 点である。 設問三は出題を予告し、事前に『伊勢物語』を読み返し、 準備しておくよう指示した。章段の内容を踏まえた組み換 えの作業が必要であり、難易度が高いと判断したためであ る。 記述式の評価基準は、設問との対応、文のねじれ・誤字 脱字の有無である。中間試験は最高点95 点、最低点 67 点、 平均86.5 点、期末試験は最高点 98 点、最低点 67 点、平均 86.1 点の結果であった。 総合評価は定期試験の点数を60%に換算し、発表 20%と 課題 20%を合算した。発表および課題には全受講生が十分 に取り組んでくれたので差はつけなかった。受講生数が 17 名と少人数であったことも有意義であったと考えられる が、一人一人の受講生の意欲的な参加を同様に評価したた めである。その点については、17 回目の授業で説明した。 2.3 アクティブ・ラーニングの実践 学生による資料作成、口頭発表、ディスカッションもア クティブ・ラーニングである。それに加えて、今回工夫した のは前記スケジュールのうち、9回目「短歌をつくる」と、 14 回目「歌をつくり、物語をつくる」、および 15 回目「物 語を配列し、歌物語をつくる」の取り組みである。 9回目の「歌をつくる」では中間試験の答案返却と解説 の後、受講生に短歌をつくってもらった。 1)それぞれ1首ずつつくり、短冊に書く(無記名)。 2)授業担当者が回収し、短冊に通し番号を振る。 3)受講生は手元の用紙に通し番号を記入。 4)短冊を回覧し、手元の用紙の該当箇所に転記。 5)良いと思う歌を2首ずつ選び、発表。 位科目である。1コマ 90 分×15 回、自学自習を含めて計 45 時間で2単位。平成 27 年度の受講生は 17 名である。以 下、シラバスの記載内容を摘記して、「古典文学」の概要 を紹介する。 教科書:『伊勢物語』大津有一校注(岩波文庫) 参考書:『伊勢物語全訳注』上下・阿部俊子訳注(講談 社学術文庫)、『新版伊勢物語付現代語訳』石田穣二 訳注(角川ソフィア文庫)、『伊勢物語』永井和子訳 注(笠間文庫) 科目概要:古典文学に表現された人間の知を読み解き たい。人生や社会、自然に対する思想と感性は、共 通性と差異によって〈いま・ここ〉に生きる私たち の姿を照らし出してくれる。今年度は『伊勢物語』 を精読することで、その一端に触れたい。 授業方針:『伊勢物語』を精読する。学生は本文と現代 語訳、および課題設定と考察の資料を作成、口頭発 表を行う。その後、参加者全員によるディスカッシ ョンを行う。古文への抵抗感をやわらげ、その世界 が身近に感じられるように配慮したい。 平成 27 年度は『伊勢物語』を取り上げた。自学自習時 間の確保と確認を意図して、学生に資料の作成と口頭発表 を課した。資料には担当する章段の現代語訳を載せるよう にしたが、「古文への抵抗感をやわらげ」るために、古語 辞典を引いて訳すのではなく、上記参考書の現代語訳を参 照・活用してよいこととした。本キャンパスでは1、2年 次の必修科目「国語」において検定教科書を用いて古文を 学習する機会を設けている。しかしながら、助動詞を含め た古典文法の習得や古語の学習が不十分であるため、参考 書を活用して現代語訳することとし、「古文への抵抗感」 を軽減したいと考えたためである。 達成目標: Ⅰ.歴史的仮名遣いの古文を音読できる。 Ⅱ.参考書を活用し、古典文法の基礎を踏まえ、古文 を現代語訳できる。 Ⅲ.自ら課題を設定し、自分なりに考察できる。 Ⅳ.提示された論点を整理し、ディスカッションでき る。 Ⅴ.課題に対して、主体的に取り組むことができる。 評価方法及び総合評価:定期試験60%、発表 20%、課20%で算出された点数が 60 点以上であること、ま た、課題が 8 割以上提出されていること。以上、2 つの条件を満たすことで合格とする。期末において、 以上の条件を満たさない場合は、再試験等を実施す ることもある。 科目概要と授業方針に基づき、達成目標を5つ設定した。 達成目標Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳは発表と課題に対応し、達成目標 Ⅴは課題の8割以上の提出を求めたことに対応している。 定期試験は中間と期末と2回実施し、主に達成目標Ⅳの提 示された論点の整理に対応している。 表1 平成27 年度「古典文学」スケジュール 前期 木・1 内容 1回 4/9 文学史の「伊勢物語」(道園) 担当決め 2回 4/16 一(道園) 3回 4/23 二・三(A)四(B) 五(C)六(D) 4回 4/30 七・八(E)九(F) 十・十一(G)十二・十三(H) 5回 5/14 十四・十五(I)十六(J) 十七・十八(K)十九・二十(L) 6回 5/21 二十一(M)二十二(N) 二十三(O)二十四(P) 7回 5/28 二十五・二十六(Q) 『古今和歌集』と『伊勢物語』(道園) 8回 6/4 中間試験 9回 6/11 試験返却・解説 歌をつくる(全員) 10 回 6/18 二十七・二十八・二十九(A) 三十・三十一・三十二(B) 三十三・三十四・三十五(C) 三十六・三十七・三十八(D) 11 回 6/25 三十九(E)四十(F) 四十一・四十二(G) 四十三・四十四(H) 12 回 7/2 四十五・四十六(I) 四十七・四十八・四十九(J) 五十・五十一・五十二(K) 五十三・五十四・五十五(L) 13 回 7/9 五十六・五十七(M)五十八(N) 五十九(O)六十・六十一(P) 14 回 7/16 六十二(Q) 歌をつくり、物語をつくる(全員) 15 回 7/23 物語を配列し、歌物語をつくる(全員) 16 回 7/28 期末試験 17 回 8/6 試験返却・解説 学生アンケート 2.2 スケジュール 平成27 年度「古典文学」のスケジュールを表1に示した。 実際には就職活動等に伴う公欠により、予定日とは別の日 に発表した受講生もいたが、今回は当初の予定表を掲げた。 1列目は授業回数、2列目は日付を示した。3列目は内容 の概略を示した。漢数字は教科書の岩波文庫版『伊勢物語』 の章段番号、( )内のアルファベットは受講生を示してい る。たとえば、受講生Aは「3回/4/23/二・三」と「10 回/6/18/二十七・二十八・二十九」を担当したことを示す。 1回目は「文学史の『伊勢物語』」と題して授業担当者(道 園、以下同じ)が解説した。配付資料に引用したのは以下

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日にアンケートを実施した。内容は達成目標に対する自己 評価、および『伊勢物語』と授業での取り組みに関する質 問である。回答者数は1名欠席のため、16 名である。 まず達成目標に対する自己評価結果を表2にまとめた。 1列目は達成目標の番号に対応する。内容は既に紹介して いるので表中には省略した。2列目から5列目の最上段の 数字は「4」が「十分できた」、「3」が「できた」、「2」 が「できなかった」、「1」が「まったくできなかった」で ある。2段目より下は達成目標毎の回答者数を示した。6 列目はその平均である。 目標Ⅰの古文の音読は発表時に指摘する程度で、重点的 に練習する時間を設けなかった結果であろう。目標Ⅱの現 代語訳は参考書を活用してよいという点が、実際には参考 書のうちいずれかの現代語訳をそのまま引用する学生がほ とんどだったので、「できる」という自己評価に結びつかな かったものと考えられる。目標ⅢとⅣの考察やディスカッ ションは『伊勢物語』が題材であり、難しさを感じた学生 が多かったようである。そのうち、目標Ⅱ、Ⅲ、Ⅳについ ては「2」つまり「できなかった」という回答が見られる。 改善を要する点である。 目標Ⅴは「十分できた」という自己評価が10 名であり、 平均も「3.63」と5項目の中でもっとも高い。発表資料を提 出しなかったり、うまく話せるかどうかは別にしてディス カッションに参加しなかったりした受講生はいなかった。 受講生の良好な取り組みの結果である。 『伊勢物語』に関する質問について表3にまとめた。質 問は「『伊勢物語』の魅力を自分なりに理解できましたか」 である。結果は「十分できた」が9名、「できた」が7名で あり、「できなかった」、「まったくできなかった」の回答者 はいなかった。もし受講生それぞれが『伊勢物語』の魅力 を自分なりに感じられたとすれば、授業担当者として喜ば しい限りである。 次に授業での取り組みに関する質問は「歌を作ったり、 その歌を用いて歌物語を作ったりしたことについて感想を お書き下さい」で、自由記述での回答である。そのうち、 いくつかを紹介する。用字等は原文のままである。 ・歌をつくるのはむずかしく、また、その歌を用いて 歌物語をつくるのもむずかしかったです。しかした のしかったので、またやってみたいと思いました。 このように歌や物語をつくるのは難しいが、楽しかった、 面白かったという感想が多い。否定的な意見はなかった。 ・普段はあまり身近なものではない歌に触れられる良 い機会でした。他の人が何を考えているのか、すこ しだけのぞけた気がして楽しかったです。 ・自分の作った歌を読んでもらったとき、自分の思っ たのとは違う解釈をした人もいて、1つの歌でも、 人それぞれの解釈があるのかと思った。 ・自分の書いた歌を使って他の人が物語を作ることに よって、違った視点から歌がかいしゃくされていて、 おもしろかったです。 表2 達成目標に関する自己評価 達成目標 4 3 2 1 平均 Ⅰ. 5 11 0 0 3.31 Ⅱ. 7 8 1 0 3.38 Ⅲ. 5 10 1 0 3.25 Ⅳ. 6 7 3 0 3.19 Ⅴ. 10 6 0 0 3.63 表3 『伊勢物語』に関する自己評価 4 3 2 1 平均 魅力の理解 9 7 0 0 3.56 ・短時間で歌を作ることは難しいと分かった。自分の 歌をつかって他人が歌物語をつくると、歌の意味が 変化していて面白いと思った。 ・自分の作った歌を他人が物語にすることで自分の意 図とは別の形に変わった点がおもしろかった。 ・歌をつくることも作者の考えを知る上で、良いと思 ったが、その後の歌物語をつくり、配列するという のは、人によっての捉え方が全く違うことが鮮明に 分かり、物語の授業をする上で、とても勉強になり ました。 ・日頃歌を作ることがあまりないので、歌を作ること は難しかった。しかし、皆の歌を読むことは、新鮮 で楽しかった。また物語を作ることは、いろいろな 考えを聞くことが出来、楽しかった。 ・最初は、古典が苦手で自分には向いていないと思っ ていたけど、歌物語の構成を考えていく上で、頭の 中で様々なストーリーを想像することができて、す ごく楽しかったです。 ・歌や歌物語を作ることの難しさ、面白さを体験する ことができ、伊勢物語の作られ方についてより知る ことができたと思う。 本報告の「はじめに」で述べたように、「古典文学」の役 割は、古典文学を題材に「広い視野で物事を考えることが できる」ようにアクティブ・ラーニングの手法を活用するこ ととした。また「広い視野で物事を考えること」は人間と、 その価値観、および言葉の多様性を受容し、自分なりに思 考することとした。その上で自由記述の感想を見直すと「他 の人が何を考えているのか」、「人それぞれの解釈」がある こと、「違った視点から歌がかいしゃく」されること、他人 の物語によって「歌の意味が変化」し、「自分の意図とは別 の形に変わった」こと、「人によっての捉え方が全く違う」 こと、また「いろいろな考えを聞くことが出来」たなどの 点に触れ、しかもそれらが肯定的に捉えられている。その ような感想は人間と、その価値観の多様性に関わると考え てよいであろう。「様々なストーリーを想像すること」とは 配列の作業に関する感想だと思われるが、これも言葉の多 様性に触れていると考えられよう。「伊勢物語の作られ方」 6)授業担当者が集計し、結果を公表。 句会の方式を参考に歌を作成し、その場の秀歌を選ぶと いう作業である。当日は大雨により公共交通機関が遅延し たため3名欠席、また出席者のうち 1 名はその場で歌をつ くることができなかった。歌をつくった受講生が13 名、そ れに授業担当者の歌1首を加えて14 首となった。そのうち 得票数が多かったのは次の歌である。( )内の数字は得票 数である。 ・夏の雨決まって届くメロンたち 恋しくなるのは祖父の声(7) ・点々と雨傘さして花のよう 学校前で閉じていく花(6) ・風が吹き揺れる青葉に田の水面 夕暮れ空の色を写して(5) ・ぱっとさす傘の中でも雨に濡れ それでも前に一歩踏み出す(4) ・ざーざーと空暗くして降る雨は テスト返しの私の心(2) ・梅雨の時期辺りに響く大合唱 カエル・雨粒・雷の声(2) その他、得票数1の歌は4首、0の歌は4首であった。 14 回目と 15 回目は連続した取り組みである。14 回目は 授業担当者が授業を振り返りつつ、『伊勢物語』の特質を 「歌が物語を求め、物語が歌の意味を定める」ことと「物 語の配列」にあるとした。その上で、以下の取り組みが『伊 勢物語』の表現行為を疑似体験し、その特質をよりよく理 解するためであることを説明した。 1)それぞれ1首ずつつくり、短冊に書く(無記名)。 2)授業担当者が回収し、受講者に引いてもらう(自 分の歌を引いた場合は、引き直す)。 3)その歌を用いて物語をつくる。 15 回目は、それらの物語を資料にまとめ、配付した。授 業担当者が感想を交えずに音読した後、それらの物語を、 どのように配列するかを考えてもらった。それぞれのアイ デアがまとまった頃、くじ引きで3~4人のグループに分 かれ、配列の仕方について意見交換した。 そのようにしてつくられた歌と物語は授業担当者にとっ ても楽しく、おもしろいものばかりであった。本報告では、 そのうち、いくつか紹介する。 14 回目につくられた歌「地震にも雨や風にも火災にもど れにも強いセキスイハイム」は、つくった本人も冗談半分 であったようだし、その歌を引いた学生も当初は物語をつ くるのに悩んでいたようである。 ①ある所に、ある夫婦がいました。その夫婦には、子 供が生まれ、家を買う事にしました。そこで、住宅展 示場へ出かけてみましたが、なかなか気に入る物件が ありません。あきらめて帰ろうとした時、明るいセー ルスマンの声が聞こえてきました。 地震にも雨や風にも火災にも どれにも強いセキスイハイム 夫婦は、子供のために安心できる家が欲しいと思っ ていたので、セキスイハイムに頼み、家を建ててもら いました。そして、いつまでも幸せに暮らしました。 物語の担当者は歌を生かす物語をうまくつくったと思 う。歌をつくった学生も驚いたようであった。 ②7月上旬、ある少年がいた。一生続くかと思われた 雨がようやく止み、晴々とした気持ちで登校していた 少年だが、あまりの暑さに汗を吹き出しながら、 梅雨明けて傘は閉じられ日が射して これから雫肌つたいける とよんだ。なんだか昔の人みたいだなと笑いながら、 夏への期待に胸をふくらませ、歩くのだった。 ③昔、空想の世界を夢見た、想像力豊かな男がいた。 毎日お経のような話をする先生の話を聞きすぎて、あ る時、ふと思って、 時間飛べる能力手にした授業中 今日もまた無意識まぶた閉じる と、心の中で歌を詠み、深い眠りについた。ふと目が 覚めると、自分は母に抱き上げられていた。 ④梅雨の終わり、ある学生が授業を受けていた。クー ラーをつけているが、教室はじめじめしていて気分が あがらなかった。そんな中、前期末のテスト日程が発 表され、学生は勉強しなくては思い、ゆううつになっ た。 明日こそ勉強するぞと計画を 立て続けること一週間 学生はきちんと勉強をしたのだろうか。 ⑤男がいた。その男、七月の初めに離れた女と再会す る約束をしていた。その日までに他の女と関係を持た ず、女のことだけを思いながら暮らしていた。約束の 日になり、女がなかなか来ないので詠んだ歌、 待ちわびた再会の日を迎えたが 雲がかくした星が成す川 結局、女はその日訪れなかった。 ②は「ける」の使い方がおかしいが、歌を詠むという行 為を「なんだか昔の人みたいだな」とする自意識によって 物語として成立している。また、③は「想像力豊かな男」 が「深い眠り」から「覚める」と、「母に抱き上げられてい た」という結末が「男」の想像力の所産でありつつ、語り の想像力でもあるという点で魅力的である。また、④のよ うに学生生活や季節感を取り入れたもの、⑤のように『伊 勢物語』の書き方を意識して、まとめたものなどもあった。 15 回目は、それらの配列に取り組んだ。詳細は省くが、 物語の配列は人それぞれであり、まったく同じにはならな かった。 なお、以上の作業すべてに授業担当者も参加した。 3. アンケート調査の結果 以上の取り組みについて、期末試験の答案返却と解説の

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日にアンケートを実施した。内容は達成目標に対する自己 評価、および『伊勢物語』と授業での取り組みに関する質 問である。回答者数は1名欠席のため、16 名である。 まず達成目標に対する自己評価結果を表2にまとめた。 1列目は達成目標の番号に対応する。内容は既に紹介して いるので表中には省略した。2列目から5列目の最上段の 数字は「4」が「十分できた」、「3」が「できた」、「2」 が「できなかった」、「1」が「まったくできなかった」で ある。2段目より下は達成目標毎の回答者数を示した。6 列目はその平均である。 目標Ⅰの古文の音読は発表時に指摘する程度で、重点的 に練習する時間を設けなかった結果であろう。目標Ⅱの現 代語訳は参考書を活用してよいという点が、実際には参考 書のうちいずれかの現代語訳をそのまま引用する学生がほ とんどだったので、「できる」という自己評価に結びつかな かったものと考えられる。目標ⅢとⅣの考察やディスカッ ションは『伊勢物語』が題材であり、難しさを感じた学生 が多かったようである。そのうち、目標Ⅱ、Ⅲ、Ⅳについ ては「2」つまり「できなかった」という回答が見られる。 改善を要する点である。 目標Ⅴは「十分できた」という自己評価が10 名であり、 平均も「3.63」と5項目の中でもっとも高い。発表資料を提 出しなかったり、うまく話せるかどうかは別にしてディス カッションに参加しなかったりした受講生はいなかった。 受講生の良好な取り組みの結果である。 『伊勢物語』に関する質問について表3にまとめた。質 問は「『伊勢物語』の魅力を自分なりに理解できましたか」 である。結果は「十分できた」が9名、「できた」が7名で あり、「できなかった」、「まったくできなかった」の回答者 はいなかった。もし受講生それぞれが『伊勢物語』の魅力 を自分なりに感じられたとすれば、授業担当者として喜ば しい限りである。 次に授業での取り組みに関する質問は「歌を作ったり、 その歌を用いて歌物語を作ったりしたことについて感想を お書き下さい」で、自由記述での回答である。そのうち、 いくつかを紹介する。用字等は原文のままである。 ・歌をつくるのはむずかしく、また、その歌を用いて 歌物語をつくるのもむずかしかったです。しかした のしかったので、またやってみたいと思いました。 このように歌や物語をつくるのは難しいが、楽しかった、 面白かったという感想が多い。否定的な意見はなかった。 ・普段はあまり身近なものではない歌に触れられる良 い機会でした。他の人が何を考えているのか、すこ しだけのぞけた気がして楽しかったです。 ・自分の作った歌を読んでもらったとき、自分の思っ たのとは違う解釈をした人もいて、1つの歌でも、 人それぞれの解釈があるのかと思った。 ・自分の書いた歌を使って他の人が物語を作ることに よって、違った視点から歌がかいしゃくされていて、 おもしろかったです。 表2 達成目標に関する自己評価 達成目標 4 3 2 1 平均 Ⅰ. 5 11 0 0 3.31 Ⅱ. 7 8 1 0 3.38 Ⅲ. 5 10 1 0 3.25 Ⅳ. 6 7 3 0 3.19 Ⅴ. 10 6 0 0 3.63 表3 『伊勢物語』に関する自己評価 4 3 2 1 平均 魅力の理解 9 7 0 0 3.56 ・短時間で歌を作ることは難しいと分かった。自分の 歌をつかって他人が歌物語をつくると、歌の意味が 変化していて面白いと思った。 ・自分の作った歌を他人が物語にすることで自分の意 図とは別の形に変わった点がおもしろかった。 ・歌をつくることも作者の考えを知る上で、良いと思 ったが、その後の歌物語をつくり、配列するという のは、人によっての捉え方が全く違うことが鮮明に 分かり、物語の授業をする上で、とても勉強になり ました。 ・日頃歌を作ることがあまりないので、歌を作ること は難しかった。しかし、皆の歌を読むことは、新鮮 で楽しかった。また物語を作ることは、いろいろな 考えを聞くことが出来、楽しかった。 ・最初は、古典が苦手で自分には向いていないと思っ ていたけど、歌物語の構成を考えていく上で、頭の 中で様々なストーリーを想像することができて、す ごく楽しかったです。 ・歌や歌物語を作ることの難しさ、面白さを体験する ことができ、伊勢物語の作られ方についてより知る ことができたと思う。 本報告の「はじめに」で述べたように、「古典文学」の役 割は、古典文学を題材に「広い視野で物事を考えることが できる」ようにアクティブ・ラーニングの手法を活用するこ ととした。また「広い視野で物事を考えること」は人間と、 その価値観、および言葉の多様性を受容し、自分なりに思 考することとした。その上で自由記述の感想を見直すと「他 の人が何を考えているのか」、「人それぞれの解釈」がある こと、「違った視点から歌がかいしゃく」されること、他人 の物語によって「歌の意味が変化」し、「自分の意図とは別 の形に変わった」こと、「人によっての捉え方が全く違う」 こと、また「いろいろな考えを聞くことが出来」たなどの 点に触れ、しかもそれらが肯定的に捉えられている。その ような感想は人間と、その価値観の多様性に関わると考え てよいであろう。「様々なストーリーを想像すること」とは 配列の作業に関する感想だと思われるが、これも言葉の多 様性に触れていると考えられよう。「伊勢物語の作られ方」 6)授業担当者が集計し、結果を公表。 句会の方式を参考に歌を作成し、その場の秀歌を選ぶと いう作業である。当日は大雨により公共交通機関が遅延し たため3名欠席、また出席者のうち 1 名はその場で歌をつ くることができなかった。歌をつくった受講生が13 名、そ れに授業担当者の歌1首を加えて14 首となった。そのうち 得票数が多かったのは次の歌である。( )内の数字は得票 数である。 ・夏の雨決まって届くメロンたち 恋しくなるのは祖父の声(7) ・点々と雨傘さして花のよう 学校前で閉じていく花(6) ・風が吹き揺れる青葉に田の水面 夕暮れ空の色を写して(5) ・ぱっとさす傘の中でも雨に濡れ それでも前に一歩踏み出す(4) ・ざーざーと空暗くして降る雨は テスト返しの私の心(2) ・梅雨の時期辺りに響く大合唱 カエル・雨粒・雷の声(2) その他、得票数1の歌は4首、0の歌は4首であった。 14 回目と 15 回目は連続した取り組みである。14 回目は 授業担当者が授業を振り返りつつ、『伊勢物語』の特質を 「歌が物語を求め、物語が歌の意味を定める」ことと「物 語の配列」にあるとした。その上で、以下の取り組みが『伊 勢物語』の表現行為を疑似体験し、その特質をよりよく理 解するためであることを説明した。 1)それぞれ1首ずつつくり、短冊に書く(無記名)。 2)授業担当者が回収し、受講者に引いてもらう(自 分の歌を引いた場合は、引き直す)。 3)その歌を用いて物語をつくる。 15 回目は、それらの物語を資料にまとめ、配付した。授 業担当者が感想を交えずに音読した後、それらの物語を、 どのように配列するかを考えてもらった。それぞれのアイ デアがまとまった頃、くじ引きで3~4人のグループに分 かれ、配列の仕方について意見交換した。 そのようにしてつくられた歌と物語は授業担当者にとっ ても楽しく、おもしろいものばかりであった。本報告では、 そのうち、いくつか紹介する。 14 回目につくられた歌「地震にも雨や風にも火災にもど れにも強いセキスイハイム」は、つくった本人も冗談半分 であったようだし、その歌を引いた学生も当初は物語をつ くるのに悩んでいたようである。 ①ある所に、ある夫婦がいました。その夫婦には、子 供が生まれ、家を買う事にしました。そこで、住宅展 示場へ出かけてみましたが、なかなか気に入る物件が ありません。あきらめて帰ろうとした時、明るいセー ルスマンの声が聞こえてきました。 地震にも雨や風にも火災にも どれにも強いセキスイハイム 夫婦は、子供のために安心できる家が欲しいと思っ ていたので、セキスイハイムに頼み、家を建ててもら いました。そして、いつまでも幸せに暮らしました。 物語の担当者は歌を生かす物語をうまくつくったと思 う。歌をつくった学生も驚いたようであった。 ②7月上旬、ある少年がいた。一生続くかと思われた 雨がようやく止み、晴々とした気持ちで登校していた 少年だが、あまりの暑さに汗を吹き出しながら、 梅雨明けて傘は閉じられ日が射して これから雫肌つたいける とよんだ。なんだか昔の人みたいだなと笑いながら、 夏への期待に胸をふくらませ、歩くのだった。 ③昔、空想の世界を夢見た、想像力豊かな男がいた。 毎日お経のような話をする先生の話を聞きすぎて、あ る時、ふと思って、 時間飛べる能力手にした授業中 今日もまた無意識まぶた閉じる と、心の中で歌を詠み、深い眠りについた。ふと目が 覚めると、自分は母に抱き上げられていた。 ④梅雨の終わり、ある学生が授業を受けていた。クー ラーをつけているが、教室はじめじめしていて気分が あがらなかった。そんな中、前期末のテスト日程が発 表され、学生は勉強しなくては思い、ゆううつになっ た。 明日こそ勉強するぞと計画を 立て続けること一週間 学生はきちんと勉強をしたのだろうか。 ⑤男がいた。その男、七月の初めに離れた女と再会す る約束をしていた。その日までに他の女と関係を持た ず、女のことだけを思いながら暮らしていた。約束の 日になり、女がなかなか来ないので詠んだ歌、 待ちわびた再会の日を迎えたが 雲がかくした星が成す川 結局、女はその日訪れなかった。 ②は「ける」の使い方がおかしいが、歌を詠むという行 為を「なんだか昔の人みたいだな」とする自意識によって 物語として成立している。また、③は「想像力豊かな男」 が「深い眠り」から「覚める」と、「母に抱き上げられてい た」という結末が「男」の想像力の所産でありつつ、語り の想像力でもあるという点で魅力的である。また、④のよ うに学生生活や季節感を取り入れたもの、⑤のように『伊 勢物語』の書き方を意識して、まとめたものなどもあった。 15 回目は、それらの配列に取り組んだ。詳細は省くが、 物語の配列は人それぞれであり、まったく同じにはならな かった。 なお、以上の作業すべてに授業担当者も参加した。 3. アンケート調査の結果 以上の取り組みについて、期末試験の答案返却と解説の

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平成27年度「日本現代文学」における授業の工夫

―『となりのトトロ』から『絶歌』まで―

池田 翼

Devises on Contemporary Japanese Literature Classes at 2015

-From “ My Neighbor Totoro” to “Zekka”-

Tsubasa Ikeda*

Abstract: For National Institute of Technology students, the Japanese contemporary literature is the field of difficult to make an interest. Because we gather students interested in science and technology system, it is no wonder, but since I open a course in a subject, I collect their interest and must provide learning to deepen a thought. In this report, I write down result and the reflection point of various devises went in Contemporary Japanese Literature Classes that I opened a course in 2015.

キーワード:日本現代文学,国語授業

Keywords:Contemporary Japanese Literature, Japanese Classes

. はじめに

本稿では、平成27年度に開講した「日本現代文学」と いう授業の中で、理系の学生に「文学」に興味を持っても らい、学びを深めてもらうために筆者が行った工夫とその 成果・反省点について記す。 高専生にとって、日本現代文学は関心の向きにくい分野 である。以前行った本学3年生対象のアンケートでは、1 週間の読書量が0~30分であるとの回答が半数を超えて いたし、授業中に学生に質問してみると、村上春樹は知っ ているが村上龍は誰も知らない、太宰治は聞いたことがあ るが三島由紀夫は聞いたこともない、という反応である。 高専のカリキュラム上国語を含む文系科目が少なく、そ もそも理工系に関心がある学生を募っているので無理もな いが、当校が掲げる学習・教育到達目標に沿って「日本現 代文学」という科目を開講している以上、彼らの関心を集 め、思考を深める学びを提供しなくてはならない。 そのために平成27年度「日本現代文学」では、学生の 関心を引きそうなトピックを盛り込みながら、半期の授業 を組み立てた。また、この科目は学修単位であるため、学 生の自学自習時間を確保するとともに、主体的な学びを促 すよう心掛けた。本稿において、具体的にどのような工夫 を試みたかを概説しつつ、また、それらは有効だったか・ 有効ではなかったかを、授業者の感触と学生の反応を根拠 にしつつ報告する。

. 授業の概要

この科目は、5年生全学科対象の前期開講選択必修科目 である。科目概要は、「日本現代文学を中心にした作品の読 解を通して、文学作品の基本的な「読み」の方法を身に着 ける。また、多様な作品の鑑賞を通して、文学的思考の涵 養や人間の多様性への理解を目指す。」とし、シラバス上の スケジュールを表1のようにした。受講者は48人だった。 また、当科目は学修単位であり、自学自習を含めて45 時間の学習時間を確保し、2単位を認定することになる。 そのため、全10回の小レポートを課したうえで、8割以 上の提出がなければ単位の認定は不可とし、成績の4割に ついてはレポートの成果によって評価を行った。 * 共通教育科 〒866-8501 八代市平山新町 2627 Dept. of Liberal Studies,

2627 Hirayama, Yatsushiro-shi, Kumamoto, 866-8501, Japan

論 文

授業項目 1 文学とは何か 2 戦前の日本文学(1) 3 戦前の日本文学(2) 4 戦前の日本文学(3) 5 戦後~昭和期の日本文学(1) 6 戦後~昭和期の日本文学(2) 7 戦後~昭和期の日本文学(3) 8 〔中間試験〕 9 平成期の日本文学(1) 10 平成期の日本文学(2) 11 平成期の日本文学(3) 12 ゼロ年代以降の日本文学(1) 13 ゼロ年代以降の日本文学(2) 14 ゼロ年代以降の日本文学(3) 15 日本現代文学まとめ 〔前期末試験〕 表 1 シラバス記載の授業項目 への言及は、今回の取り組みが『伊勢物語』の表現行為と、 その特質を理解するためであるという授業担当者の意図を うまく汲んでくれた感想である。

. 今後の課題

今回の取り組みを振り返って、アクティブ・ラーニング が受講生の積極的な参加を促し、「学習・教育目標」の達 成に貢献する手法であることは確認できた。しかし、科目 の達成目標との有機的関連性については不十分だと言わ ざるをえない。特に達成目標2「参考書を活用し、古典文 法の基礎を踏まえ、古文を現代語訳できる」、達成目標3 「自ら課題を設定し、自分なりに考察できる」、達成目標 4「提示された論点を整理し、ディスカッションできる」 は「できなかった」という回答があった。達成目標と教育 手法の見直しが必要である。 (謝辞)17 名の受講生に心から感謝したい。受講生の積極 的な参加によって授業担当者も『伊勢物語』の魅力を感じ つつ、楽しく作業に取り組むことができた。重ねて御礼申 しあげる。 (平成27 年 9 月 25 日受付) (平成27 年 11 月 25 日受理) 参考文献 (1) 「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向 けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大 学へ~(答申)」中央教育審議会、平成24 年 8 月 28 日 (2) 日本文学アクティブ・ラーニング研究会「古典文学を アクティブ・ラーニングでまなぶ 和歌を演じるワ ークショップ」,リポート笠間,58,pp.5-8(2015)

参照

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