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看護者の腰痛予防のためのボディメカニクス自己学習支援システムの開発 : ボディメカニクス活用動作の自己チェックシステムの試作と評価

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Academic year: 2021

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(1)人 間看 護 学 研 究. 論. 5. 27-37(2007). 27. 文. 看護 者 の腰 痛予 防 の ための ボデ ィメカ ニ クス 自己学習支援 システ ムの開発 ボディメカニクス活用動作の自己チェックシステムの試作 と評価 一 伊丹. 君 和1)、 安 田. 寿 彦2)、 大 槻. 幸 範2)、 豊 田 久 美 子1)、 石 田. 英 實'). 1)滋賀県 立大 学人 間看護 学 部 2)滋賀 県立 大学工 学 部 研究の背景. 高 齢 社 会 とな り医 療 ・介護 現 場 で の 腰 痛 問 題 が 益 々深 刻 化 す る こと が予 測 さ れ る。 そ の よ. うな 中 、 我 々 は看護 者 の 腰 痛 発 症 を 予 防 す る方 法 と して 、 看 護 動 作 時 の ボ デ ィメ カ ニ ク ス活 用 が 有 効 で あ る こ とを 検 証 して きた 。 しか し、 ボ デ ィ メ カニ クス はそ の効 果 を充 分 に理 解 した上 で実 際 に 自 ら が 技 術 を 習 熟 し実 践 で きな けれ ば 活 か され ず 、 自己 の 看 護 動 作 を客 観 的 に 評 価 し、 個 々 の学 習 者 に応 じて知 識 お よび 技 術 習 得 す る こ とが重 要 で あ る。 研 究 目的 本 研 究 で は、 自己 の 看護 動作 を 客 観 的 に評 価 す る と と も に腰 痛 予 防 の た め の ボ デ ィメ カ ニ ク ス 活 用 とい う観 点 か ら自己学 習可 能 な 「ボ デ ィ メ カニ クス 活 用動 作 の 自己 チ ェ ック シ ス テ ム」 を試 作 し、 看 護 学 生 を 被 験 者 と して シス テ ム評 価 実 験 お よび 調 査 を 行 つ た。 それ らの結 果 を もと に、 シス テ ム の 有 効 性 お よ び学 習 効 果 の 有 無 に つ い て 検討 した 。 方法. 1.シ. ステ ムの 試 作. 今 回 試 作 した 「ボデ ィ メ カニ ク ス活 用 動 作 の 自 己 チ ェ ック シス テ ム」 は、. 被 験 者 の 片 側 の 足 首 ・膝 ・股 関 節 お よ び 腰 部 に装 着 した 関 節 角 度 の デ ー タ と、 両 側 の腰 部 脊 柱 起 立 筋 お よ び 片 側 の 大 腿 四 頭 筋 に装 着 した 筋 電 計 の デ ー タを コ ン ピュ ー タ に取 り込 み、 画 面 土 に動 作 時 の姿 勢 、 関 節 角 度 お よ び筋 電 図 波 形 、 腰 部 負 担度 の グ ラ フを 描 画 し自 己 チ ェ ックで き る も ので あ る。 さ ら に、 計 測 デ ー タの 保 存 ・再 生 機 能 を 搭 載 し、 自己 学 習 を 実 現 す る た あの 機 能 を備 え た。 2.シ. ス テ ム の評 価 方 法. シス テ ム の有 効 性 お よ び学 習 効 果 の有 無 につ い て評 価 す るた め寸2006年1月. 以 下 の実 験 お よび調 査 を実 施 した。1)看 作 成)Jを. 、. 護 学 生2名 を被 験 者 と して 「ベ ッ ドメ ーキ ング(三 角 コ ー ナ ー. 実 施 し、 シス テ ムか ら得 られ る デ ー タを 対 象 と して シス テ ム評 価 実 験 を行 つた。 実 験 は 、 ボ. デ ィ メ カ ニ ク ス活 用 の 有 無 お よ び ベ ッ ドの 高 低 に よ る腰 部 負 担 の 違 い をみ る た め4パ タ ー ン条 件 設 定 し た 。2)看. 護 学生22名 を対 象 と して 、 実 験 で 得 られ た デ ー タを も と に再 生 した表 示 画 面 を用 いて ボ デ ィ. メ カ ニ ク ス活 用 の 模 擬 授 業 を 実 施 し、 シス テ ムの表 示 機 能 お よ び学 習 効 果 につ いて の調 査 を実 施 した。 結果. 1.シ. ステ ム評 価. シス テ ム表示 画 面上 に 被 験 者 の 看 護 動 作 時 の姿 勢 、 関 節 角 度 、 筋 電 図 波 形 、. 腰 部 負 担 度 を リア ル タイ ムま た は再 生 して 顕 著 に示 す こ とが で き、 シ ス テ ムの 有 効 性 が 認 め られ た 。 し か し、 調 査 結 果 よ り、 表 示 機 能 の評 価 で 平 均2.90点 と低 値 の もの もあ り、 「数 値 の表 示 の意 味 が わ か ら な い 」 な どの 意 見 も得 られ た。 2.シ. ス テ ムを 用 い て の学 習効 果. 「ボデ ィメ カ ニ クス 活 用 の 理 解 度 」 につ いて5段 階 評 定 した 結 果 は. 平 均4.05点 で あ り、 「シス テ ムを 用 い て 自 己 の動 作 を 評 価 し学 習 した い か 」 で は平 均4.09点 と高 得 点 が 得 られ た が 、 実体 験 した2名 の 得点 は よ り高 く、 シス テ ム を 用 いて 自 己 チ ェ ックす る こ と によ っ て よ り 高 い学 習 効 果 が 得 られ る こ とが 示 唆 さ れ た。 結 論 本 シス テム に よ って、 自己 の看 護 動 作 を ボ デ ィメ カ ニ クス の 観 点 か ら客 観 的 に評 価 で き、 シ ス テ ム の有 効 性 が認 め られ る と と もに、 ボ デ ィメ カ ニ クス活 用 につ い て 学 習 効 果 が 得 られ た 。 今 後 の 課 題 と して 、 シス テ ム表 示 ・自己学 習 機 能 の改 良 の必 要 性 が示 唆 され た。 キ ー ワー ド. 2006年9月30日. 受 付 、2007年1月9日. 連絡 先:伊. 君和. 住. 丹. 滋 賀県立大学人間看護学部 所:彦 根 市 八 坂 町2500. e-mail : k-itami@nurse.usp.ac.jp. 受理. ボデ ィメカニクス、 腰 痛 予 防 、 自 己学 習 支 援.

(2) 2 8. 伊丹君和、安田寿彦、大槻幸範、豊田久美子、石田英賞. 1 .緒 言 今や「国民病J ともいえる腰痛である 1)が、自常的に 腰部に負担がかかる仕事、即ち看護や介護、養護や保育 などの仕事に従事する者や、長時間の座位をとる運転手 などが抱える腰痛は「職業性腰痛」ともいわれ、離職者 防止の観点からも重要な問題となっている 2)3)0 さらに、高齢社会は医療や介護の現場における腰痛問 題を益々深刻化させることが予測される。看護師および 介護へルパーや看護助手などの介護職が日々実施してい るベッドメーキングや体位変換、車椅子移乗などの日常 生活援助は、前傾姿勢やひねり姿勢、持ち上げ動作、左 ンバランスな筋活動や静的な動作など、腰椎や椎間 板、腰部筋へ過度の負荷がかかる援助動作が多く、それ を行う看護師および介護職の「職業性腰痛」の出現率は. 。. ¥4)5). 平成 6年には労働省より「職場における腰痛予防対策 指針Jが公表されているものの、医療・介護現場におい て腰痛対策に取り組む職場は少ないヘ現在,藤痛発症 を予防する方法として、腰痛体操などによる腹筋や背筋 の筋力強化、軟性コルセット着用による腰部筋の補強、 援助支援機器など、各分野からの考案・開発が進みつつ あるが、実際の産療・介護現場で活用されている例は少 ない 7)8〉0 そのような中、簡便かっ確実に腰痛発症を予 防する方法として、看護・介護作業時のボディメカニク ス活用が推奨される 9)0 ボディメカニクスは、物理学と力学の諸原理を利用し た経済効率のよい動作とされ、この活用により動作を行 う者の身体負担を軽減させることが実証されつつある 10)0 しかし、ボディメカニクスは看護師または介護職など、 それを実践する者自身がその技術を習熟しない限り現場 で活かすことはできなし 1。我々が以前、看護師および介 護職を対象に行った調査においても、ボディメカニクス に関する認知度は経験年数が高くなるほど低くなり、現 場で日常生活援助を行う頻度が高い介護ヘルパーや看護 助手などの職種でその認知度が低いことを認めている ω。 また、医療・介護の現場における看護・介護作業時のボ ディメカニクス活用状況を明らかにした研究は殆どなく、 調査によって約半数の者は忙しさや人員不足などを理由 にボディメカニクス活用が殆どできていないことを明ら かにした ω。このような現状の中、看護や介護の仕事に 従事する者に対する「腰痛予防のためのボディメカニク ス活用 j についての具体的な教育支援が必要と考えてい る 。 看護基礎教育におけるボディメカニクス教育に関する 研究もみられるようになったが、南ら∞による写真とグ ループ指導を用いた教授法によるものや、土井ら附 よる三次元動作解析装置を用いた動作分析からの指導に. よるものなど、教育的アプローチの有効性を考察してい るものにとどまっている。ボディメカニクスは、その効 果を充分に理解した上で、実際に自らが技術を留熟し実 践できなければ活かされない。客観的に自己の動作を評 価し、個々の学習者に応じてボディメカニクスの知識お よび技術の習得を行うことが重要と考えるが、現在その ようなボディメカニクス活用の評倍・学習システムは確 立されていない。 そこで本研究では、自己の看護動作を客観的に評価す るとともに腰痛予防のためのボディメカニクス活用とい う観点から自己学習可能な「ボディメカニクス活用動作 の自己チェックシステム Jを試作し、看護学生を被験者 J を実 として「ベッドメーキング(三角コーナ一作成 ) 施し、システム評価実験および調査を行った。それらの 結果をもとに、システムの有効性、および学習効果の有 無について検討するとともに、今後の課題を明らかにす る 。. l l . 研究方法 1.システムの開発 1) iボディメカニクス自己学習システム j 全体の概要 ボディメカニクスは、その効果を充分に理解した上で、 実際に自らが技術を習熟し実践できなければ活かされな い。看護師の腰痛がいまだ改善されない現状では、自己 の動作を客観的に評価するとともに、個々の学習者に応 じてボディメカニクス学習を支援するシステムの開発が 急務であり、図 1に示す「ボディメカニクス自己学留シ ステム j 構築と開発を進めている O 看護学生のみならず、 看護および介護の仕事に従事する者全てが、腰痛予防の ためのボディメカニクス活用について背熟し、実践の中 で具体的に活用できる自己学習可能な「ボディメカニク ス自己学留システム」を開発普及していくことは、看護 基礎教育の向上のみならず、実際の医療や介護現場にお ける看護師と介護職の生涯教育にも貢献できる O 今回試作したボディメカニクスを活用した動作の自己 チェツクシステムは、システム全体の中では自己の看護 動作を客観的に評価判定する部分であり、その判定結果 および個々の学留者の基礎的知識や、腰痛の有無などに 基づいて個別学習へと進む予定である。以下に、「ボディ メカニクス活用動作の自己チェックシステム Jの概要に ついて説明する。 2) iボディメカニクス活用動作の詣己チェツクシステ ム」の概要 今回試作した「ボディメカニクス活用動作の自己チェツ クシステム Jは、被験者の片側の足首・膝・股関節およ び腰部に装着した関節角度計からのデータと、両側の鞍 部脊柱起立筋および片側の大腿四頭筋に装着した筋電計 からのデータをコンビュータに取り込み、その画面上に.

(3) 29. 看 護 者 の 腰 痛 予 防 の ため の ボ デ ィメ カ ニ ク ス 自 己学 習 支 援 シ ス テ ムの 開 発. 図2. ②. 図1. 「ボ デ ィメ カ ニ ク ス 自 己学 習 シ ス テム 」 全 体 の 概 要. デ ー タ取 得 の た め の セ ンサ ー装 置. ハ ー ドウ ェ ア の 構 成 次 に 、 ハ ー ド ウ ェ ア の 構 成 を 示 す 。 ノ ー ト型 パ ー ソ ナ. ル コ ン ピ ュ ー タ は 、 関 節 角 度 ア ナ ロ グ計 測 シ ス テ ム か ら の角 度 情 報 と筋 電 計 か らの筋 電 情 報 、 ま た は、 フ ァイ ル. 動 作 時 の姿 勢 、 関節 角 度 お よ び 筋 電 図 波 形 、 腰 部 負 担 度. に 保 存 さ れ た 角 度 情 報 と 電 圧 情 報 を 取 り込 み 、 画 面 上 に. (上 体 が 前 傾 した と き に腰 部 に 加 わ る負 担 度 の近 似 値 的. グ ラ フ ィ ッ ク ス お よ び 文 字 に よ り 計 測 結 果 を 表 示 す る。. 測 定 値)の グ ラ フを描 画 し、 自己 チ ェ ックで き る もの で あ る。 さ らに、 計 測 デ ー タの 保 存 再 生 機 能 を搭 載 し、 自. じ た ア ナ ロ グ 電 圧 値 と し て 出 力 さ れ る。 ま た 、 筋 電 計 の. 己学 習 を実 現 す るた め の 機 能 を 備 え た。. 筋 電 情 報 は 高 周 波 成 分 か ら な る ア ナ ロ グ電 圧 値 と し て 出. な お、 本 シス テ ム は学 生 自 らが 自 己 の看 護 動 作 を実 際 に姿 勢 と筋 活 動 に 注 目 しな が らチ ェ ック し学 習 す る とい. 力 さ れ る 。 こ れ ら の ア ナ ロ グ電 圧 値 情 報 は情 報 毎 に. う新 規 性 の高 い シス テ ムで あ る。. 応 す る チ ャ ン ネ ル の ピ ン に 接 続 す る。 ア ナ ロ グ 電 圧 値 情. ① デ ー タの 取 得 お よ び補 正. 報 は 端 子 台 か ら ケ ー ブ ル を 通 り、 パ ラ レル1/Oの. 関節 角 度 アナ ロ グ計 測 シス テ ム の角 度 情 報 は角 度 に応. BNCコ. ネ ク タ か ら 出力 され 、 端 子 台 上 で そ れ ぞ れ に対. 入 力ポー. 関 節 角 度 の 検 出 用 セ ンサ ー と して 、DKH社 製の Flexible Goniometer Systemの 中 で 関 節 角 度 ア ナ ロ グ. トを 介 して コ ン ピ ュ ー タ に 送 ら れ る 。. 計 測 シス テ ム を 使 用 した。 足 首 用 と してSG110/A、 膝 お よ び 股 関 節 用 と してSG150を 各 部 位 の 外 側 に装 着 、 腰. ピ ュ ー タ 内 部 で 角 度 お よ び 筋 電 情 報 と して 数 値 化 処 理 が. ア ナ ロ グ 情 報 はA/D変. へ と 出 力 さ れ る 。A/D変. 100B型 を使 用 した 。. に68点 端 子 台(lnterface社. 角度 値 の デ ー タ補 正 を行 うた め に、 被 験 者 の 直 立 状 態. 出 して ゴ ニ オ メ ー タの 出力 値 を実 際 の90度 の 角 度 を 確 認 しな が ら補 正 を行 った。 足 首 は静 止 姿 勢 の と りや す い30 度 に固 定 し実 測 値 を確 認 して デ ー タ補正 を 行 っ た。. 換 処理後 、 コ ン. な され 、 さ らに画 面 へ の 出力 の た め の 処理 が され て 画面. 部 の ひ ね り用 と してQ150を 腰 部 中央 に装 着 し計 測 を行 っ た。 また 、 リア ル タイ ム計 測 に は4chア ナ ロ グ ア ンプK. 時 を0点 と した後 、 被 験 者 の身 長 に合 わ せ て適 度 な 高 さ に 調 節 しな が ら座 位 と し、 股 関 節 と膝 の 直 角 状 態 を 作 り. 換 器 でA/D変. ドCBI-3133Bを. ブ ル(lnterface社. 換 器 に はlnterface社. のPCカ. ー. 使 用 す る。 配 線 の着 脱 を容 易 にす る た め のTRM-3100)を. のCAB-2901)に. 使 用 し、 ケ ー. よ っ て 端 子 台 とPC. カ ー ドを 接 続 す る。 ③. プ ロ グ ラム の概 要 フ゜ロ グ ラ ム はMicrosoft. Visual. C++6.0を. 使 用 して. 作 成 した。 本 シ ス テ ム で は 、 電 圧 情 報 は50[msec]の. 間 に1chか. ら. を使 用 し、. 4chま. で の 関 節 角 度 ア ナ ロ グ計 測 シス テ ム の 出 力 と、. グ ラ ン ド リー ドに はR200を 用 い た 。 被 験 筋 と して は 、. 5chか. ら7chま. 看 護 動 作 時 の ボ デ ィメ カ ニ クス 活 用 状 況 を把 握 す る た め に腰 部 脊 柱 起 立 筋 と大 腿 四 頭 筋 を 選 択 した(図2参 照)。. 変 換 さ れ、 プ ロ グ ラ ム 内 で そ れ ぞ れ決 あ られ た変 数 に格. ま た 、 サ ンプ リ ン グ周 波 数 は 機 器 の 能 力 上 、 今 回 は20. 納 さ れ る 。 こ こ ま で の 処 理 が こ の プ ロ グ ラ ム 内 で のA/. Hzと した が 、 筋 電 計 単 独 の 実 測 値 と の比 較 確 認 を 行 い. D変 換 処 理 で あ る 。. 同 様 の傾 向 は得 られ て お り、 デ ー タ を採 用 す る こ と と し た。. ④ 座 標 等 の 算 出 お よ び 描 画 処 理(図3参. 筋 電 計 はDKH社. 製 のEMGア. ンプSX230型. で の筋 電 計 の 出 力 を順 に取 得 す る。 こ. れ ら の 電 圧 情 報 はA/D変. A/D変. 換 器 に よ って デ ジ タ ル 情 報 に. 照). 換 によ って デ ジタル値 とな った電圧情 報 の 中.

(4) 3 0. 伊丹君和、安田寿彦、大槻幸範、豊田久美子、石昌英賓. wxg. 図 4 腰部負担度(腰部にかかる前傾姿勢角によって決 まる負担度の近似的測定値)の計算方法 図 3 開発したシステムが動作中の描画画面例 で、関節角度アナログ計測システムの電圧情報に関して は、角度変化量(単位はラジアン [ r a d J ) に計算される。 算出された関節角度アナログ計測システムの角度変化量 [ r a d Jおよび筋需計の電圧値 [ V Jを用いて、画面上のグラ フィクスをリアルタイムに描顧するために必要となる座 標値の計算を行なう。 -動作時の姿勢(ヒ卜の絵) 人体の描画は簡略化するた め、足部、足首部、下腿部、大腿部、頭部および胴体 部の計 5ヵ所のパーツで構成した。関節角度アナログ 計測システムから空間内の絶対座標を取得することが 不可能であるため、足部および足首部の描画部分を固 定し、足首部と下腿部との聞の関節点を基準点として 足首の角度から下腿部と大腿部との聞の関節点(膝) の鹿標を算出し、次に膝の座標を基準点として、膝の 角度および位置から大腿部と胴体部との聞の関節点 (股関節)の座標を計算した。その後、股関節の座標 を基準点として頭部の中心点の座標を計算することに よって、動作時の姿勢をヒトの絵の動きとしてリアル タイムに描画した。 関節角度(角度メータ) 角度メータは腰部の前傾角 度(垂線に対しての胴体部の角度)とひねり角度、膝 の屈曲角度の 3つの角度をヒトの絵とは別にメータと して表示するものである O また、データ取得が始まる と、各メータの下に角度が数値でもリアルタイムに表 示されるようにした。 ・筋電図波形グラフ 筋電図波形グラフは筋電計の出力 鐘の時間的変化をリアルタイムに表示するグラフであ る 。 ・腰部負担度(近似的測定値)グラフ 腰部負担度グラ フは、垂線に対する鯛体部の角度および被験者の身長 と体重から算出する腰部への負担度を上体が前傾した ときに生成されるモーメントを計算してその時間的変 化を表示するグラフである O 本システムは、上体に作 用する外力を無視することが可能な動作にのみ適用可. 能であり、上体の重量に腕の重量は含んでおらず、手 に作用する外力は考慮していない。そのため、あくま で腰部に加わる負担度の近似的な測定値であり、正確 に測定するためには「手に作用する外力の大きさと方 向J 腕の形体Jを測定する必要がある O 【上体が前傾したときに生成される腰部に加わる腰部負 担度(近似的測定値)の計算方法】 腰の関節には、上半身の重心による負担がかかると考 える。本システムでは腕の姿勢は考窟せず、上半身の重 心に上半身の体重(雲量)が集中しているとした。上半 身には全体重の 4 0 %が集中している。上半身の長さは身 長の 4 9%であり、上半身の中点に重心があると考えた。 被験者の全体重の 4 0%を [ k g J、 重 力 加 速 度 を い 9 . 8 ) [m/s2J 、身長の 4 9 %を [mJ、水平からの上半身の角度 r a d Jとして腰部にかかる負担度を表すと、 [N.mJ を [ となる(図 4参頬)。 ⑤ファイル入出力処理 今回作成したシステム(プログラム)の最大の特長は、 被験者が岳己学習できるシステムであるということであ るO 被験者が自己学習を行なうためには、被験者自身が 自分の行なった看護動作を後から見直す必要があり、リ アルタイムでの計測表示だけでは自己学習は国難である O そこで、このシステムを告己学習に役立てるための機能 として、ファイル入出力機能を搭載した。これによって、 いったん計測データを保存すれば、後から自分の動作を 見誼すことができ、自己学習につながる O. r. 2 .r ボディメカニクス活用動作の自己チヱツクシステ ムj の評価方法 2 0 0 6年 1月、看護学生を対象として、今回試作した 「ボディメカニクス活用技術自己チェツクシステム j を 用いて腰部負担がかかりやすいと予測する「ベッドメー J を取り上げ、評価実験を キング(三角コーナ一作成 ) 実施した。その後、そのデータを用いて模擬授業を行う とともに調査を実施し、システムの有効性および学習効.

(5) 31. 看 護 者 の腰 痛 予 防 の た め の ボ デ ィメ カ ニ ク ス 自 己学 習 支 援 シス テ ム の 開発. 評 価 実 験 の た あ、 験者 側 が セ ンサ ー装 着 お よ び シ ス テ ム. 果 の有 無 につ いて の検 討 を行 った。. た 者 の み と し、 研 究 参 加 に 同 意 し た 後 で も い つ で も 辞 退. 操 作 と な った が、 本 来 は被 験 者 で あ る学 習 者 お よ び共 同 学 習 者 自身 が装 着 操 作 して 評 価 ・学 習 す る シス テ ム と な. 可 能 で あ る こ と。 ま た、 プ ライバ シー の保 護 に つ い て も. る。. 文 書 と口頭 で 伝 え た。. ま た、 シス テ ム を装 着 し自己 チ ェ ック した被 験 者 にお いて も、 実 験 後 再 生 画 面 を 用 いて ボ デ ィメ カ ニ ク ス活 用. な お、 倫 理 的 配 慮 と して、 対 象 は研 究 の趣 旨 に 同 意 し. 1)シ ス テ ムの 評 価 実 験 ・被 験 者. 動 作 に つ い て の 確 認 後 、 調 査 を実 施 した。 調 査 内 容 は、. 被 験 者 は、 作 業 ベ ッ ドの 高 さ と 身 長 と の 比 率 お よ び 倫 理 的 配 慮 か ら 、 身 長160cm、 cm、. 体 重66. Okgの. 体 重57. Okgお. 男 子 看 護 学 生 計2名. よ び 身 長180. と した。 な お、. 被 験 者 は学 内演 習 にお い て、 ボ デ ィメ カニ クスお よ び ベ ッ. 1)看 護 実 習 時 の ベ ッ ド調 節 の 有 無 、2)看 護演 習時の ボ デ ィ メカ ニ クス活 用 の 有 無、3)シ ス テ ムの表 示 機 能 、 4)ボ. デ ィメ カ ニ クス 活 用 の 理 解 度 、5)シ. ドメ ー キ ン グ技 術 は 既 修 済 み で あ る 。. の 意 見 と した。. ・実 験 内 容. 2)シ ス テ ム を用 い て の 模 擬 授 業 お よ び調 査 ・対 象. 実 験 は、 ボデ ィ メ カ ニ ク ス の活 用 の有 無 お よ び ベ ツ ド の 高 さ の 高 低 に よ る 腰 部 負 担 の 違 い を デ ー タ上 示 しや す. ス テ ムを 用. いて 自 己 の動 作 を評 価 し学 習 した いか 、6)シ. ス テ ムへ. タ ー ン を 設 定 し た 。 取 り上 げ た 看. 対 象 は、 研 究 の趣 旨 に 賛 同 した看 護 学 生22名 と した。 1)の 実 験 で得 られ た デ ー タを も と に再 生 した表 示 画面. 護 動 作 は 、 動 作 時 に 腰 部 に 負 担 が か か りや す い ベ ッ ドメ ー. を 用 いて 、 実 験 実 施 の 後 日、 ボ デ ィ メ カ ニ ク ス活 用 の模. キ ン グ(三. 擬 授 業 を実 施 し、 シス テ ムの 表 示 機 能 お よ び学 習 効 果 に つ いて の調 査 を実 施 した。 ・模 擬 授 業 の 内容 '. い と考 え る以 下 の4パ. 角 コ ー ナ ー 作 成)と. の 高 さ は51.7cmと. した。 な お、 低 い ベ ッ ド. した が 、 これ は看 護 現 場 に お け る 成. 人 ベ ッ ドの 平 均 の 高 さ で あ る15)。ま た 、 至 適 ベ ッ ドの 高 さ は 今 回 の 被 験 者 の 場 合 で は72.Ocmで /身. 長 比 を45%と. あ り 、 ベ ッ ド高. し て 算 出 した'6)。. 実 験 で 得 られ た デ ー タを も と に再 生 した表 示 画 面 を用 いて ボ デ ィメ カ ニ クス 活 用 の 模 擬 授 業 を実 施 した。 時 間. い ベ ッ ド ・非 ボ デ ィ メ カ ニ ク ス 活 用. は約40分 で あ り、 研 究 の 経緯 説 明 お よ び デ ー タを も とに. 実 験 ②:低. い ベ ッ ド ・ボ デ ィ メ カ ニ ク ス 活 用. 実 験 ③:至. 適 ベ ッ ド ・非 ボ デ ィ メ カ ニ ク ス 活 用. 実 験 ④:至. 適 ベ ッ ド ・ボ デ ィ メ カ ニ ク ス 活 用. 再 生 した表 示 画 面 の4パ ター ンを 提 示 説 明 し、 パ ワ ー ポ イ ン ト2台 を使 用 して実 施 した 。 ・評 価 方 法 ・内容. 実 験 ①:低. 模 擬 授 業 の終 了 後 、 シス テ ムの 表 示 機 能 お よ び学 習効 果 につ いて の調 査 を実 施 した 。 調 査 内 容 は、1)と と した。. 同じ. なお 、 評 価 は5段 階評 定 で 実 施 し、 集 計 後 、 既 習 の ボ デ ィ メ カ ニ ク ス活 用 に つ い て の 浸 透 度 、 シ ス テ ム の 有効 〈 ゆ 実験①. (C)実. 験③. (b)集 猷②. 性 お よ び学 習 効 果 の有 無 に つ いて の 検 討 を 行 った。. 〈d)集赦④. 皿.. 研 究結 果. 1.シ. ス テ ム評 価. 1)シ. ス テ ム の有 効 性. 被 験 者2名 図5. シス テ ム評 価 実験 の様 子. の う ち1名(男. 子 看 護 学 生A、2回. 生、. 身 長160cm、 体 重57kg)の 実 験 結 果 につ い て 、 本 シス テ ム を用 い て取 得 さ れ た4種 類 の 実 験 デ ー タ の シス テム. ・評 価 方 法 ・内 容. 画 面 を図6に 示 した。 各 図 は、 各 実 験 終 了 時 の筋 電 図波. シス テ ム評 価 実 験 の様 子 を図5に 示 す。 評 価 方 法 と し て は、 シ ス テ ム画 面 上 に被 験 者 の看 護 動 作 時 の姿 勢 、 関. 形 グ ラ フ お よ び腰 部 負 担 度 グ ラ フを 示 す と と もに、 各動. 節 角 度 、 筋 電 図 波 形 、 腰 部 負 担 度 を リア ル タイ ム ま た は. び そ の と き の各 関節 の 角 度 メ ー タ表 示 を示 して い る。. 再 生 時 に表 示 す る こ とが で き る か を、 上 記4パ. タ ー ンの. 作 に お い て特 徴 的 な姿 勢(ス. テ ィ ック ピク チ ャー)お よ. 尚 、 今 回 は腰 部 の筋 肉 の 活 用 状 況 に明 らか な左 右 差 が. 設 定 によ る デ ー タ比 較、 お よ び看 護教 員 が 被験 者 の ボ デ ィ メ カ ニ ク ス活 用動 作 の有 無 を チ ェ ッ クす る こと によ って、. 認 め られ な か った た め 、 筋 電 計 の デ ー タと して取 得 して い る3種 類 の デ ー タの 中 か ら、 大 腿 部 の筋 電 計 の デ ー タ. シス テ ムの 有 効 性 を評 価 す る。 な お、 今 回 は シス テ ムの. と腰 部 の筋 電 計 の 片方 の デ ー タ を画 面 に 出力 した。.

(6) 3 2. 伊丹君和、安田寿彦、大槻幸範、豊田久美子、石田英貫. r. 111J}慨. 11/. J. 一 命v w. J. r④ ⑦. 首. 足. 部. 足. 腿 下. 動部 の服 部決 拘一. 試部 併隣. kH. 部 顔. 度、. 。. 宍令. す. /fy¥. 制令::﹂ア. 日川皮¥一ノ. hF. 十人角﹃ト. 百鯨ひ. VVJJJP. 11F. 前/一¥. 腰、. : & 9 月 ,. 側代. 人目絵I 右向苦}の. 。:頭部 -:1 同体部…:湘都….下腿部ー:脂足. H~バ…|. しヶプ~~....I 6 引N m J. 日4 1 N m l. 実験①の接面画面. 人の絵{右司苦)の説明. 。 潤Eー:脹体部一決服部…:下腿部一:足苔・足. 実融@の描磁圃箇. 63芯. 人の絵[右向き)の説明. 。潤~-:I母体制ー.大腿部…:下腿部一足首足. ⑦①④. 同一│ │. 同酬恥. レ 三. . . ごし. l r つ」. … │. 7 目N m J. 実験@の措画面面. 6 4 J N m J. 実.@の描画冨面. 圏 6 実験① ④の描闇闇面(被験者 A). 表 1 各実験における前傾角度と膝の屈曲角度 前傾角度 (平均値). 膝の屈鹿角度 (平均値). 被験者A 被験者自 0. 被 験 者A 被験者 B. 0. 143. 0. 78. 0. 実験①. 68. 62. 実験②. 43. 0. 42. 実験③. 42. 0. 46. 0. 166. 実験④. 4 1. 0. 32. 0. 116. 0. 0. 120 0. 93. 0. 139. 0. 120。. 0. 実験①の結果:低いベッド・非ボヂィメカニクス活用 上半身がかなり大きく前傾していること、膝をあまり 曲げていないことがわかる。また、大腿部と腰部の両方 の筋肉ともあまり使われていないことがわかる。 実験②の結果:低いベッド・ボディメカニクス活用. 上半身の前傾が抑えられていること、膝の毘曲が大き いことがわかる。また、大腿部の筋肉はよく使われてい て腰部の筋肉もある程度使われていることがわかる。 実験③の結果:至適ベッド・非ボディメカニクス活用 膝をあまり屈曲せず前傾姿勢をとっている様子がわか る。また、大腿部の筋肉はあまり使われず、腰部の筋肉 がよく使われていることがわかる。 実験④の結果:歪適ベッド・ボヂィメカニクス活用 膝が屈曲しており、上半身はあまり前傾していないこ とがわかる。また、大腿部の筋肉はよく使われていて、 捜部の筋肉はあまり使われていないことがわかる O このほか、表 1に各実験の動作中における前傾角度 (垂線に対する上半身の角度)の平均値と膝の屈曲角度 の平均値を示した。なお、データは看護動作開始から終 までとし、時間平均値を算出したものである。今回提 0 示した被験者Aの場合、前傾角度が 4 1 と最も低いのは 実験④の至適ベッドでボディメカニクスを活用している 場合であり、前傾角度が最も高いのは実験①の低いベッ.

(7) 看護者の腰痛予防のためのボディメカニクス自己学習支援システムの開発. ドでボディメカニクスを活用していない場合であった。 0. 一方、膝の屈曲角度が 7 8 と最も低かったのは実験②の 低いベッドで、ボデ、ィメカニクスを活用している場合であっ た 。 また、これらの結果は、被験者B (男子看護学生 2回 生、身長 1 80cm、 体 重 6 6 k g ) においても同様の傾向が 得られた。 2)システムの表示機能評価 システムの表示機能についての調査結果を 5段階評定 した結果を示す。最も高得点を得たのは、動作時の姿勢 を「ヒトの絵」としてスティックピクチャーとして表示 したものであり、 5点満点で平均3 .9 5: t0 .9 0 点であった。 次に、筋電図波形をリアルタイムにグラフとして表示し たもので平均 3 . 5 0士1.3 0点、同様に腰部負担度グラフの 3 . 4 1士O .9 6点であり、関節角度などを「メータ」表示し .9 5土1.2 1点であった。 たものは得点が低く 2 また、自由意見では、「大きな関節毎に色を変えであ 簡単な絵でわかりやすい JI 具体 るのでわかりやすい JI 的な数値があるのでわかりやすい」といった意見もみら れたが、「数値の表示の意味がわからない JI 数値の評価 モーメントの 基準がないと見ただけではわからない JI 意味がわからない Jなどの意見も得られた。 2 . システムを用いての学習効果 「ボディメカニクス活用の理解度」について 5段階評 定した結果は、平均 4 .0 5土 0 . 6 5点であり、「システムを . 0 9 用いて自己の動作を評価し学習したいか」では平均 4 土1.0 6点と高得点が得られたが、実体験した 2名の結果 をみると「システムを用いて自己の動作を評価 L学習し たいか」では 2名とも 5点、「ボディメカニクス活用の 理解度」においても平均 4 . 5 0点と再生画面を見た学生よ りも高い得点であった。 このほか、「看護演習時のボディメカニクス活用の有 無」では、「活用した JI やや活用した」者が 8 1 .8 %と高 い一方で、「看護実習時のベッド調節の有無」では、「行っ やや行った」が 3 6 . 4 %と低い傾向にあることが示 たJI された。. I V . 考察 本研究では、自己の看護動作を客観的に評価するとと もに腰痛予防のためのボディメカニクス活用という観点 から自己学習可能な「ボディメカニクス活用動作の自己 チェツクシステム」を試作し、看護学生を被験者として J を実施しシス 「ベッドメーキング(三角コーナ一作成 ) テム評価実験および調査を狩った。それらの結果をもと に、システムの有効性および、学習効果の有無について検 討するとともに今後の課題を明らかにする。 1.システムの有効性. 3 3. システム評価実験において、システム画面上に被験者 の看護動作持の姿勢、関節角度、筋電図波形、腰部負担 度をリアルタイムまたは再生時に明確に表示することが できるかを、 4パターンの設定によって比較検討し、シ ステムの有効性について評価した。 実験①は、ベッドの高さも低くボディメカニクス活用 していない設定としたが、実際の看護現場でのベッドメー キングを再現したともいえる。システムによって取得し 画面上に表示されたデータをみると、前傾角度の平均が. 6 8 であり他と比較して最も高いことが動作時の姿勢を 示す「ヒトの絵Jの前傾度合いをみても一目瞭然といえ 0. る。また、腰部にかかる負担度を算出しグラフとして表 示したが、①の場合が最も高い値となっており、腰部に かかる負担の大きさが裏付けられた。しかし、筋電図波 形グラフをみると、①では腰部、大腿部の筋電図波形振 幅が小さく、筋活動が少ないという結果となっていた。 ベッドが低くボディメカニクスを活用していない場合、 ①での動作姿勢のように膝を屈曲せず大きく前傾してい , ' ¥ 。 こ る棒立ち状態での看護動作となっている場合が多 ¥ のような姿勢で静止してベッドメーキングなどの動作を 行うと、筋肉での活動の範囲を超えて靭帯や椎間板など に負荷がかかることになり、このことが続くと深刻な腰 痛症となることが予測される m。したがって、今回の実 験①で得られたデータは、現在の看護現場で職業性腰痛 の要因となっている看護動作の現状をシステム画面上に、 看護動作時の姿勢、関節角度、筋電図波形、腰部負担度 として明確に表示したものともいえ、看護動作時にリア ルタイムにシステム画面上に表示するだけではなく、再 生して何度も自己の動作を確認することが可能であり、 システムの有効性とともに被験者への学習効果および学 習教材としても有効であると考えられた。 一方、同様にボディメカニクスを活用していない設定 20 となりボディメカニクス の実験③では、前傾角度は 4 を活用している場合と殆ど変わらない結果であった。ボ ディメカニクスを活用しているがベッドの高さは低;い実 験②と腰部負担度を比較しても大きな差は認められず、 5%に調節することの重要 ベッドの高さを至適な身長比 4 性が確認された。しかし、今回の看護学生への調査結果 においても、「看護演習時のボディメカニクス活用の有 無」では、「活用した JI やや活用した」者が 8 1 .8%と高 い一方で、「看護実習時のベッド調節の有無Jでは、「行っ やや行った」が 3 6 .4%と低い傾向にあることが示 たJI されており、看護動作時にベッドを自己の身長に合った 高さに調節することの意義が十分に理解されていないこ とが明らかとなり、学内演習の見直しおよび看護者の腰 痛予防のためのボディメカニクス自己学習支援システム の開発の必要性を再確認した。 また、実験④は至適なベッド高、かっボディメカニク.

(8) 3 4. スを活用している設定であり、看護動作時に腰部負担が 最も少ないと予測していたが、前傾角度の平均では 4 10 と最も低く、腰部負担度においても最も低値であり、こ のことが確認された。また、④ではボディメカニクスを 活用しているために大腿部の筋肉を活用し腰部の負担が 軽減されていることが、筋電図波形グラフにおいても示 されていた。 以上、システム評価実験結果の比較検討を行ったが、 ボディメカニクス活用およびベッドの高さ調節の有無に よって腰部への負担が異なることを、システム画面上に 表示された被験者の看護動作時の姿勢、関節角度、筋電 悶波形、腰部負担度によって、リアルタイムまたは再生 時に確認でき、本システムを「ボディメカニクス活用動 作の自己チェックシステム」として活用することは有効 であると考えられた。 2 . システムを用いての学習効果 ボディメカニクスはその効果を充分に理解した上で実 際に告らが技術を留熟し実践できなければ活かされず、 客観的に自己の動作を評価し、個々の学習者に応じてボ ディメカニクスの知識および技術の習得を行うことが重 要と考える。今回、「ボディメカニクス活用動作の自己 チェツクシステム Jを実際に体験して自己の動作を客観 的に評価した学生は、再生したシステム箇面を見ただけ の学生よりも「システムを用いて自己の動作を評価し学 習したいか Jの設問および「ボディメカニクス活用の理 解度Jにおいて高い得点であり、システムを実際に活用 することの学習効果の高さが示唆された。 また、再生した表示歯面を用いてボディメカニクス活 用の模擬授業を実施した結果、「ボディメカニクス活用 の理解度」については 5段階評定で平均 4 . 0 5点、「シス テムを用いて自己の動作を評価し学習したいか」では平 均4 . 0 9点と高得点が得られ、実体験には及ばないも学内 演習時などにおいてボディメカニクス活用についての学 習教材として有効に活用できると考えられた。 3 . 今後の課題 システムの表示機能については、動作時の姿勢を「ヒ トの絵」としてスティックピクチャーとして表示したも のは 5点満点で平均 3 .9 5点であったが、関節角度などを 「メータ」表示したものは得点が低く 2 .9 5点であり、表 示方法については今後の検討課題を残すこととなった。 また、評価基準を示すことや、わかりやすい説明を補足 することなどの必要性を求める意見があり、自己学習シ ステムとしての導入にあたって改良を加えていく必要性 が示唆された。 また、本システム実験においてはチャンネル数の関係 で、上半身の姿勢についてはー箇所の角度のみの測定と なったが、看護動作時に「背を丸めた J場合にもうー箇 所上部の角度測定が必要であると考えられる。今後、こ. 伊丹君和、安田寿彦、大槻幸範、豊田久美子、石田英賞. のことについても考慮して姿勢把握が行えるよう設定し ていきたい。. v .. 結語. 今回、自己の看護動作を客観的に評価するとともに腰 痛予防のためのボディメカニクス活用という観点から自 己学習可能な「ボディメカニクス活用動作の自己チェツ クシステム」を試作し、その有効性と学習効果について 確認できた。しかし、今後の課題として、システム表示・ 自己学習機能の改良とともに、システムの汎用性・操作 の簡便性について検討していくことも必要であり、動作 負担に伴う腰痛に錨む多くの人々に活用可能なシステム の早期完成に近づけていきたい。. 謝辞 本研究の実施にあたりご協力いただきました皆様、お よび実験機器使用にあたりご協力をいただいた(株)ディ ケイエイチ社様に深謝致します。 本研究は、平成 1 7 " " 1 9 年度文部科学省研究費基盤研究 1 7 5 9 2 2 1 7 伊丹)により実施した。 (C) (. 文献 1)厚生労働省:平成 1 6 年度国民生活基礎調査の概況、 2 0 0 5 . 2)北西正光,名島将浩:看護従事者における腰痛の疫 学的検討,日本腰痛誌, 1(1 , ) 1 3 1 6, 1 9 9 5 . 3)甲田茂樹,久繁哲徳,小河孝則,他:看護婦の腰痛 症発症にかかわる職業性要因の疫学的研究,産業医 3 3,410-422, 1 9 91 .. 4) P h i l i pH a r b e r .E l i z a b e t hB i l l e t,MaryCutowski, 他:O c c u p a t i o n a lLow BackPainI nH o s p i t a l o u r n a lo fO c c u p a t i o n a lM e d i c i n e,2 7 Nurses, J (7 ),518-524, 1 9 8 5 . 5) D .A.S t u b b s,P .W.B u c k l e,M.P .Hudson,P .M R i v e r s, 他 Back p a i ni nt h en u r s i n gP r o f e s s i o n, ERGONOMICS,2 6(8 , ) 7 5 5-7 6 5, 1 9 8 3 . 6)労働省労働衛生課:職場における腰痛予防対策マニュ 9 9 6 . アル,中央労働災害防止協会, 1 7)井上剛伸, G e o f fF e r n i e and P .L .Santaguida: 介助用リフト使用時の腰部負担,バイオメカニズ 1 5, 2 4 3-2 5 4, 2 0 0 0 . 8)安田寿彦,林琢磨,伊丹君和,田中勝之,他:自 “. 立支援型移乗介助ロボットの研究, 日本機械学会福 祉工学シンポジウム, 2 1 3 ω 2 1 6, 2 0 0 5 . 9)師岡孝次:看護セミナーボディメカニクス一作業の 動作と姿勢の工学的基礎,クリニカルスタディ, 1.

(9) 看護者の腰痛予防のためのボディメカニクス自己学習支援システムの開発. (1 , ) 4 9 5 6, 1 9 8 0 . 1 0 )伊丹君和,藤田きみゑ,寄本明,古株ひろみ,横井 和美,藤迫奈々重,田中智恵,久皆島美紀子,北村 隆子,森下妙子:看護作業姿勢からみた腰部負担の 少ないベッドの高さに関する研究(第 2報)一作業 時における教員・学生間のボディメカニクス活用の 比較分析一,滋賀県立大学看護短期大学部学術雑誌,. 5,39-44,2 0 01 . 1 1 ) 久留島美紀子,伊丹君和,藤田きみゑ,他:看護・ 介護作業時のボディメカニクス活用状況に関する一 考察,滋賀県立大学看護短期大学部学術雑誌, 7,. 9 0-9 6,2 0 0 3 . 1 2 ) 南妙子,岩本真紀,近藤美月,他:ボディメカニ クス教育方法に関する検討-写真とクリレープ指導を 用いた教授法の評価,香川医科大学看護学雑誌, 6 (1 , ) 2 73 5,2 0 0 2 . 1 3 ) 土井英子,石本惇江,椋代弘:ボディメカニクス. 3 5. 習得における視聴覚教育方法に関する検討一動作解 析装置を用いたベッドメーキング動作の分析,新見 公立短期大学紀要, 2 , 1 7 58 2,2 0 0 D . 1 4 ) 淘江七海子,堀 美紀子,他:看護基礎教育におけ るボディメカニクスに関する研究ーベッドメーキン 也. グ特の動作分析を通して一,. 2 日本看護学会誌, 1. (1 , ) 6 8 7 6,2 0 0 3 . 1 5 ) 藤田きみゑ,横井和美,古株ひろみ,伊丹君和,他: 看護作業姿勢と腰部への負担に関する研究,滋賀県 9 9 9 . 立大学看護短期大学部学術雑誌, 3, 1-7, 1 1 6 )伊丹君和,藤田きみゑ,寄本明,他:看護作業姿 勢からみた腰部負担の少ないベッドの高さに関する 研究,滋賀県立大学看護短期大学部学術雑誌, 4, 2 1 2 7,2 0 0 0 . 1 7 ) HAROLD PORTNOY 他 Electromyographic. Studyo fP o s t u r a lMusclesi nVariousP o s i t i o n s 2 2-126,1 9 9 0 . andMovements,1.

(10) 3 6. 伊丹君和、安田寿彦、大槻幸範、豊田久美子、石田英賓. (Summary) D e v e l o p m e n to faSystemt oS u p p o r tS e l f l e a r n i n g o fBodyM e c h a n i c sf o rN u r s e st oP r e v e n tBackP a i n -D e v e l o p m e n ta n dV a l i d a t i o no faS e l f c h e c k i n gS y s t e mo f M o v e m e n t i m p l e m e n t i n gB o d yM e c h a n i c s K I M I W AI T A M , ) ! J T O S H I H I 五o YASUDA2),Y U K I N O R IO T S U K I2), 五U M I K OTOYODN), H I 訪 日M II S H I D A l ) School of Human Nursing , The University of Shiga Prefecture. 1 ). School of Engineering , The University of Shiga Prefecture. 2). Background Witht h ea g i n go fs o c i e t y,t h ep r o b lem o fl o w e r back p a i ni nm e d i c a l and n u r s i n g c a r ee n v i r o n m e n t si sbecomingi n c r e a s i n g l ys e r i o a v ei d e n t i f i e dt h a tt h ei m u s .I nr e s p o n s e, weh p l e m e n t a t i o n o f body m e c h a n i c s d u r i n g c a r e g i v i n gp r o c e d u r e sr e p r e s e n t sane f f e c t i v eway o fp r e v e n t i n g back p a i ni nn u r s e s . However, body m e c h a n i c sc a n n o tb ef u l l ye f f e c t i v eu n l e s s n u r s e sr e c o g n i z e and a c q u i r et h es k i l l so fmovement t o implement body m e c h a n i c s and l e a r n how t oa p p l yt h o s es k i l l s when a c t u a l l yc a r i n g ti si m p o r t a n tf o rn u r s e st oe v a l u f o rp a t i e n t s .I a t eo b j e c t i v e l y how t h e y move when c a r i n g and t ol e a r nanda c qu i r et h eknowl e d g eands k i l l so f bodym e c h a n i c sa c c o r d i n gt oi n d i v i d u a lr e q u i r e m e n t s . Purpose Thep u r p o s eo ft h es t u d ywast od e v e l o p as e l f l e a r n a b l e" s y s t e mf o rs e l f c h e c k i n g moveot h a tany ment-implementingbodym e c h a n i c s ",s i n d i v i d u a lwhoa p p l i e st h esystemc a no b j e c t i v e l y e v a l u a t et h e i r movements when g i v i n gc a r e and s u b s e q u e n t l yp r e v e n tback p a i n by implementing r s i n gc o u r s es t u d e nt s were body m e c h a n i c s . Nu u s e df o re x p e r i m e n t a la p p l i c a t i o n and v a l i d a t i o n h eu s e f u l o ft h es y s t e m . Basedont h er e s u l t s,t n e s sandl e a r n i n ge f f e c t so ft h esystemwered i s c u s s e d . Methods 1 .System d e v e l o p m e n t : The " s y s t e mf o r s e l fc h e c k i n g movement -implement i n g body mec h a n i c s " was d e v e l o p e ds ot h a tu s e r so ft h es y s tem c o u l ds e l f c h e c k by l o o k i n ga tv i d e o images. o i n ta n g l e sandEMG,andt h e o ft h e i rp o s t u r e,j lumbarl o a d Cmomento ft h ej o i n ta sd e t e r m i n e d bya n g l eo fa n t e v e r s i o no ft h eb o d y )d i s p l a y e don t h e computer s c r e e nd u r i n g movements. Comp u t e r images were g e n e r a t e d by i n p u t t i n gd a t a onj o i n ta n g l et a k e nfromt h eu n i l a t e r a la n k l e, k n e e, h i pj o i n t and l o w e r back and EMG d a t a t a k e n from b i l a t e r a le r e c t o rs p i n a em u s c l e s and t h eu n i l a t e r a lb i c e p sf e m o r i sm u s c l e .I na d d i t i o n, t h esystemi n c l u d e das t o r a g eandp l a y b a c kf u n c t i o n sf o r measurement d a t at of a c i l i t a t eu s e r l e a r n i n gfromwatchingt h ei m a g e s . 2 . System v a l i d a t i o n : To v a l i d a t et h e system h ef o l l o w i n ge x p e r i m e n t and l e a r n i n ge f f e c t s, t and i n v e s t i g a t i o n were performed i n January ) Two n u r s i n gc o u r s es t u d e n t sp e r f o r m e d 2 0 0 6 .1 " b e d making C t r i a n g l ec o r n e rs e t t i n g ) " and d a t a o b t a i n e d from t h e system was s u b j e c t e dt ot h e system v a l i d a t i o ne x p e r i m e n t . T h i se x p e r i m e n t was d e s i g n e dt ob e performed under 4 d i f f e r e n t s e t so fc o n d i t i o n st o compare lumbar l o a dw i t h o rw i t h o u tt h ea p p l i c a t i o no fbodym e c h a n i c sand w i t hb e d so fd i f f e r e n th e i g h t .2 )A t o t a lo f2 2 n u r s i n gc o u r s es t u d e n t sp a r t i c i p a t e di n a model c l a s sl e s s o nf o rbodym e c h a n i c sa p p l i c a t i o nu s i n g imagesr e p l a y e db a s e dond a t ao b t a i n e dfromt h e h ed i s p l a yf u n c t i o no ft h es y s e x p e r i m e n t, andt temandl e a r n i n ge f f e c tweree v a l u a t e d . .System v a l i d a t i o n : Images o fp o s t u r e, R e s u l t 1 j o i n ta n g l e,EMGwavesandlumbarl o a dd u r i n g c a r e g i v i n gmovementso ft h es u b j e c twerec l e a r l y.

(11) 看護者の腰痛予防のためのボディメカニクス自己学習支援システムの開発. d i s p l a y e di nr e a lt i m eo rp l a y b a c kont h es c r e e n and v a l i d i t yo ft h e system was c o n f i r m e d . The r e s u l t so fe v a l u a t i o ni n d i c a t e d, however, t h a t … somee v a l u a t i o ni t e m ss c o r e da slowa s2 .9 0p o i n t s,withcommentss u c ha s" 1don o tu n d e r s t a n d whatt h ed i s p l a y e dnumbersm e a n " . 2 . Learninge f f e c t so ft h es y s t e m : Thel e a r n i n ge f f e c t so ft h esystemweree v a l u a t e du s i n ga 5p o i n ts c a l e . Means c o r ewas4 . 0 4f o r" U n d e r s t a n d i n gt h ei m p o r t a n c eo fa p p l i c a t i o no f body .0 9f o r" l n t e n t i o nt oe v a l u a t e m e c h a n i c s ", and 4 and l e a r ns e l f movement u s i n gt h es y s t e m " . S c o r e sf o rt h e s ei t e m s by t h e 2s t u d e n t s who. 3 7. a c t u a l l ye x p e r i e n c e da p p l i c a t i o no ft h e system n d i c a t i n gt h a tt h el e a r n i n ge f weree v e nh i g h e r,i f e c t s with s e l f c h e c k i n gu s i n gt h e system a r e l i k e l yt ob eh i g h . Conclusion Usingt h esystem,s e l f m o v e m e n twas s u b j e c t i v e l ye v a l u a t e d from t h ep e r s p e c t i v eo f body m e c h a n i c s . The u s e f u l n e s so ft h e system wasv a l i d a t e dandl e a r n i n ge f f e c t sf o ra p p l i c a t i o n o f body m e c h a n i c s were i d e n t i f i e d . The import a n c eo fimprovingt h esystemd i s p l a yandl e a r n i n gf u n c t i o na r es u g g e s t e da sf u t u r ei s s u e s . KeyWords bodym e c h a n i c s ;backp a i np r e v e n t i o n ; s e l f l e a r n i n g.

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参照

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