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不安定性原理の研究における諸問題(2・完)-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

不安定性原理の研究における

諸問題(

2

・完)

I 序 II ハロッドの不安定性原理における諸問題 III 不安定性原理の基本的分析方法 IV 主要な動学的変数としての成長率概念

篠 崎 敏 雄

V 不安定性原理における動学的均衡の概念(以上,本誌第60巻第1号〕 VI 主要な動学的変数としての成長率決定の関数 刊 不 安 定 性 成 立 の た め の 条 件 VIII時の遅れの取り扱い IX期待の取り扱い X 物価の取り扱い XI 結び(以上,本巻本号〉

V

I

主要な動学的変数としての成長率決定の関数 前述のようにハロッドは,主要な動学的変数として,所得または産出高の成 長率を選んだが,それを決定する関数の式を明示的に示したわけで、はなし、。し かし,最初に資本の過不足の無い状態を暗黙のうちに仮定して,必要な投資〈正 当化される投資〉に対する現実の投資の過不足,言い換えれば必要資本係数

γ

σ

に対する現実資本係数

C

の大小関係が,所得または産出高の成長率を調節せし める, という考え方を示している。その場合ノ、ロッドは,少なくとも初期にお いては,

C

~き Cr を投資の過不足(したがって資本の過不足〉を表すと同時に,

(2)

-2- 第60巻 第2号 288 財の供給超過または需要超過をも表すと考えていた。そこで,たとえば

t-l

期 において

C

r

>

c

t

ー1であれば,それを

t-l

期における投資不足(したがって資 本不足)と見て,その結果企業家の注文(投資〉の増加率が増大され,それを 通じて次の t期において所得または産出高の成長率

G

tが増大するという考え 方が示されている。他方,同じ

C

r

>

C

tー1を,

t-l

期の財の生産不足と見て, その結果次の t期において財の生産の増加率Gが増大させられるという考え 方も述べられている。前者の見方には,資本の過不足が投資の成長率を調節せ しめるという,一種の投資関数が含まれていると考えることが出来る。後者の 見方を発展させたものとしては,

W J

ボーモルのモデルや,

s

.

.

s

.

アレグサン ダーのモデルがある。 ところで,ハロッドにおいては,初期時点における資本ストッグの過不足の 無い状態を仮定し,投資の過不足による投資の調整の決意と資本支出との聞に, 暗黙のうちに時の遅れを仮定している。これに対し

H

ローズは,初期時点か ら存在している資本不足

V

という概念を導入し,また投資決意と資本支出と の聞に時の遅れが無いというモデ、ルによって,保証成長均衡の安定性を主張し た。ローズが,資本不足

V

や,その変化率

V

という概念を導入して不安定性 原理の分析を行ったことは理論の精密化ではあるが,投資決意、と資本支出との 聞の時の遅れを排除したことには問題がある。 ローズは,財の需給が継続的に一致していると仮定するモデ、/レと,この仮定 を外したモデルとについて述べている。財の需給の一致を仮定したモデノレにお いて,次の投資関数を示している。

(1) cf. R F.Harrod, Domar and Dynamic Economics, Economic ]ournal, Sept, 1959, p川

453

(2) W..J Baumol, Economic Dynamics an Introduction, 3rd ed., 1970, pp. 46-9 (山田 勇・藤井栄一訳『経済動学序説J,昭31,52-3ベージ〉。

(3) S.. S. Alexander,“Mr Harrod's Dynamic Model, Economic ]ournal, Dec, 1950, pp 729-31. 詳しくは,次のところを参照されたし、。篠崎敏雄『不安定性原理研究序説J,香JII

大学経済研究叢書1,昭62,94-100ベージ。

(4) cf. Harrod,“Domar and Dynamic Economics,"pp.. 458-9

(5) この関数は成長率決定の関数ではないが,次のネノレソンのそデノレにおいては,成長率決定 の関数の中に組込まれている。

(3)

289 不安定性原理の研究における諸問題(2・完〕

-3-!=CrY+kV

k>O

1(

7

)

ここでIは事前的投資である。ローズは投資決意と資本支出との聞の時の遅れ を排除しているので,この

I

は同じ期間(または時点)の産出高の増分

Y

と資 本不足 Vによって決定されるということである。そしてこの投資関数を用い て,保証成長均衡が安定であることを証明しようとしている。 このローズの投資関数については,置塩教授から,事前的投資(計画投資〕

I

が,同じ期間(または時点〉の産出高の増分や資本不足によって決定されると いう想定が,背理的であることについて批判がなされている。 R.R.ネルソンは,このローズの投資関数の投資の性格について,ローズがこ れを計画投資としているのに対して,彼はこれを「望まれる投資」として区別 している。たまたまローズが,資本不足が同じ期間内に調節されるという時の 遅れのない想定をしているので,計画投資が望まれる投資に一致しているとい うことである。ネルソンはこのローズの投資関数を批判すると共に,他方では, ローズが資本不足 Vやその変化率 Vとし、う概念を導入したことを評価し,そ の方向で分析を発展させようとしている。 ネルソンは rハロッドのモデノレにおいては,諸計画は産出高または投資の意 図される成長率によって為される」としている。そして彼自身は,諸問題が産 出高の意図される成長率

Y/Y

によって行われるという特化の下に,次のよう な方程式を示している。

d

/

d

t

(

)=/[CrY+kV-SY]

;f'>O,

/(0)=0 (1 これを変形すれば次のようになる。

d/dd

¥

~)

Y

J

=

-

1

/

J

L

C

'-'7 L ¥

r

y

(

Y C

-

;

.

)+kvl

r

J

'

"

'

Y

J

(19)

(6) cf. H. Rose,“The Possibility of Warranted Growth," Economic ]ournal, June, 1959,

pp.319-20. 篠 崎 r;;r;安定性原理研究序説J,108-111ベージ参照。

(7) 置 塩 信 雄 現 代 経 済 学J,筑摩書房,昭52,97ページ。

(8) R.R.Nelson,“A Note on Stability and the Behavior Assumptions of Harrod-Type Model," Economic ]oumal, June, 1961, p..342

(4)

-4ー 第60巻 第2号 290 なお 、 町 、 、 ‘ ‘ a ' ' ' ' S

c

y

Y

/ ' ' l E 、 、

Y

C

一 一

V

(20) この(18)式は徴分方程式の形で表されているが,投資不足(または生産不足)

[CrY+kV-sY]

による産出高成長率の調整の決意、と,実際の産出高の成長率 の調整との聞に時の遅れを読み取ることが出来る。また,諸計画が投資の成長 率

1

/

1

によって行われるとL、う特化の下に同じような形の方程式を作れば,そ の時には, ローズの言う「投資決意と資本支出との聞の時の遅れ」を読み取る ことが出来る。 また,主要な動学的変数を資本蓄積率とする場合の投資関数としては,たと えば置塩教授のものがあり,これは財の需給一致の均衡な仮定している。 ['+1

1

~ニ:;

+F(

ふ ) 似 )

K

t

+

l

Kt

F

(l

)=O

,F'>O

ただし ,Oは生産設備の稼働率である。ここで,必要資本係数(平均概念〉を酌, その逆数(正常な産出高資本比率〉を0,そして現実の資本係数(平均概念)を α とすると,生産設備の稼働率

δ

は次のようになる。

δ = Y = Y = α γ

一 一 一 一Y

α

7

σ

K K

α γ K α

2) ここでσKは,与えられた資本ストック(生産設備

)K

が正常に稼働した時の 産出高である。そこで稼働率は,正常に稼働した時の産出高に対する現実の産 出高の比率ということである。それゆえ,現実産出高 Y が σK~こ一致する時の 稜働率を正常稼働率と定義すると,その値は1ということである。そして,

δ =

1

の時,資本ストックに過不足は無く,

δミ1

の時,資本ストックの不足または ( IO)

V

==Cγ

Y-K

.

.

.

.

V

==

CrY-K

==

CrY-sY

==

C

r

Y

(

¥Y

エ-

C

n

r

J

(10財の需給が不一致の場合については,次のところを参照されたし、。積極信雄.rR Harrod

の動学再考J.国民経済雑誌,第150巻第6号.1984年12月.18-20ベージ。 (I2) 霞 塩 現 代 経 済 学J.79ページ。

(5)

291 不安定性原理の研究における諸問題(2・完〉 -5 過剰があるということである。また凶式において,稼働率がめ

Y!K

に等しいと いうことは,稼働率が必要な資本ストッグと現実資本ストックとの比率をも表 すということである。資本係数(平均概念〕という概念について言えば,必要 資本係数酌と現実資本係数との比率ということにもなる。 このようにして制式に還って言えば,そこでは資本設備の過不足に応じて, 資本蓄積率が調節されるということが示されている。そして,資本設備の過不 足の発生と新投資の支出との聞の,時の遅れが明示されていることに注意すべ きである。 二階堂教授は「新古典派的成長のハロッド的病理学 滑らかな要素代替の無 (3) 関係J(1980)という論文で,均斉成長の安定性いかんの問題や,それに関連し て,ハロッドの不安定性原理についても論じている。そして rノ、ロッド的情況」 と呼ぶ固定要素比率(固定係数〉モデルにおいて,主要な動学的変数としての 意図される資本蓄積率の変化率決定の方程式を次のように示している。 (IjK)ニ φ(λμ) 一

l

(1

一一

min[aK

U U Ul U.L1.., ,

b

U.l

L

...J

]

J

_

a _ Jm.UinJ.U l U[α

K

.Ll..,, U

b

L

.l....J

]

J )

¥

ω

一 ¥

sK

K

,'-"

K

J

φ

1.

>

0,φμ<0

ここでαは資本の可能的な平均生産性,すなわち,利用可能な労働量からの制 約が無いとして,資本

1

単位当たりに平均して生産可能な産出高である。そこ で

αK

は,資本ストック

K

から生産可能な純産出高である。また

b

は労働の可 能的な平均生産性である。それゆえ

bL

は,労働量Lから生産可能な純産出高 である。 また

A

は市場の需要・供給の情況を表す変数であり,次の通りであるo

A

1 min[aK

b

L

]

_

L!s-min[aK

b

L

]

一一一一

-sK

K

K

制 凶式の一番右の辺を見れば分かるように,λは,有効需要

I

/

s

が可能的な純産出 (13) H.. N ikaido,“日arrodianPathology of Neoclassical Growth: The lrrelavance of Smooth Factor Substitution," Z eiおじhr~β für NatiOnaloぬonomie,VoL 40, 1980

(6)

-6- 第60巻 第2号 292 高

min[aK

b

L

]

を越える超過額と,資本ストック K との比率である。そこで, , 1

>

0

は需要が純産出高の可能水準を超過している状態であり ,,1

<

0

は需要 がそれに不足している状態である。 そして μは,現存資本がどれほとや未利用のままであるかを示す変数であり, 次の通りである。 m

in[aK

bL]

_ aK

-min[aK

b

L

]

= α .

1..1..1..1..1..1.Llk..t r..;.'V L J J .I.J..U.L.l.T

'

7

L N.L,.1. U L J J (25)

K

K

側式の一番右の辺を見れば分かるように, μは,資本ストック

K

から生産可能 な純産出高

αK

が可能的な純産出高

min[aK

b

L

]

を越える超過額と,資本ス トック

K

との比率である。もし

α

K > bL

であれば

μ>0

であり,これは現存 資本が一部未利用の状態にあることを示す。また

aK

bL

であれば

μ=0

と なり,現存労働量が資本に対して相対的に過剰であるか,またはちょうど適切 な量だけ存在しているのであり,現存資本ストックは完全に利用されているこ とを示す。 ところで,この二階堂教授の方程式闘の特徴は,生産係数の厳しい固定性を 仮定していることと,市場の需要・供給の情況を表すAを導入していることで ある。 A.W フィリップスは,前述のように,.正常能力産出高の成長率」という概 念を,主要な動学的変数として使っている。しかし,資本ストック K'Vこ対する 正常能力産出高

Y

nの比率を一定としているので,その限りにおいては,正常能 力産出高の成長率は資本蓄積率の値に等しい。そして,その資本蓄積率を決定 するものとしての,次のような投資関数を示している。

1 ( NA

¥N =(一一一寸)

{βG+γ(x-

l)

+

ρ

(c-r)} 側 K

¥D+NAJ

ここで,,, β,1 γ,およびρは正の定数であり ,

N

は正の整数である。また,

D

d

/

d

t

δ

は企業家の期待する成長率であり ,Xは正常能力産出高に対する 現実産出高の比率である。また,Cは正常能力産出高における資本の限界生産性

( NA

\N ,~ r; であり ,

r

は利子率である。そして{一一一一一)は,

G

x

およびrの変化に対

¥D

NAJ

する

I/K

の反応における,指数的に分布した時の遅れを表す演算子である。 N

(7)

293 不安定性原理の研究における諸問題(2・完) -7ー

=

1の時は単純指数ラグの場合であり,その演算子は(rA-ー)となる。また,

¥D+A

J N孟2の時は多重指数ラグの場合である。 次に,制式の右辺の中括弧の中味について考えてみよう。そこで先ず,その 第I項

sG

について考えてみる。 Gは前に述べたように,企業家の期待する成 長率である。企業家達は,需要や産出高が時聞を通じて増加することを期待し, 資本と期待される需要または産出高との間の望ましい関係を維持するように投 資を行うと考えられる。

3

は,その期待成長率と意図される資本蓄積率との聞の 関係を示す係数である。フィリップスは,

s

の値をOと1との間にあると考えて いるが,これはやや消極的な企業家の態度を示すものと考えられる。ケインズ の言う血気 animalspiritsについて標準的な場合を考えれば,単純化として

3

=

1を仮定す}ることも出来ょう。し、ずれにせよ,このβGという項が意図される 資本蓄積率を基本的に決定している。 次に,右辺の中括弧の中の第

2

項について考えてみよう。前述のように,X

Y/Yn

は正常能力産出高に対する現実産出高の比率である。それゆえ,

x-1

~ Oは,それぞれ,正常能力産出高に対して現実産出高が,大き過ぎたり,ちょう ど等しかったり,小さ過ぎたりする場合を示す。また,ある与えられた現実産 出高 Yをちょうど完全能力産出高に等しくするような資本ストックを,望ま れる資本ストック

K*

とし,一定と仮定した必要資本係数〈平均概念〉めの逆 数を

ν

とすると次式が得られる。

K*

=

αγ

Y

=

Y

/

ν

7) また,現実資本ストック

K

とそれに対応する正常能力産出高

Y

nとの聞には次 の関係があると考えられる。

Y

n =

K/

αγ=νK それ故, (27)式と側式とから次の関係が得られる。 x

=

Y/Yn

=

K*/K

(28) (29) そこで,

x-1

O

はそれぞれ,現実産出高にとって,資本不足,資本の過不足 (

14) A.

w

.

.

PhiJlips,“A Simple Model of Employment, Money and Price in a Growing Economy,"Eヒonomica,November, 1961, p.363

(8)

-8- 第60巻 第2号 294 の無い状態,および資本過剰を表していると考えることも出来る。また γは調 整係数であり ,

y(x-

l)は,資本ストックの過不足が意図される資本蓄積率を調 整せしめるその影響を表す項である。この項は,ハロッドの不安定性原理にとっ て,最も重要な項である。 次に,側式の右辺の中括弧の中の第3項について考えてみよう。前述のよう に, cは正常能力産出高における資本の限界生産性であり ,rは利子率である。 またρは調整係数である。正常能力産出高において資本の限界生産性と利子率 が等しい(c=r)ならば不均衡は無く,この項の投資への影響は無い。しかし, C

r

の時には不均衡がある。そこで,

c

>

r

の場合には投資を増大させる力 が働き

c

r

の場合には投資をその分だけ減少させる力が働く。第

2

項は投 資決定の加速度原理を表し,第

3

項は利潤極大化原理を表すものと考えること が出来る。 そこで,制式全体の仕組について考えてみよう。先ず,意図される資本蓄積 率は期待成長率 Gによって基本的に決定される。そして,資本ストックに過不 足があれば第

2

項によってその調整が図られる。また,正常能力産出高におけ る資本の限界生産性と利子率が等しくないという不均衡があれば,第

3

項にお いてそれの調整が図られる。そしてこれらの諸要因が,指数的に分布した時の 遅れを伴って,意図される資本蓄積率を決定するということである。 しかしここには,企業家による期待成長率 Gがどのようにして決定されるか という問題が残っている。フィリップスはこのことについても述べている。彼 は,産出高の期待成長率

δ

は,主として過去の現実成長率 G(

=

DY/Y

=

D

l

o

g

Y)に依存すると考え,その聞に次のような単純指数ラグを仮定している。 (30) ここでqは,期待が現実産出高の変化率における変動に対し調整される速度を 表す。そして,甲がゼロに限りなく近づいた時の極限において,

δ

は定数とな る。この Gは, (30)式の特殊な場合である。 ( J日 cf.ot..ci,t. p..363 ただし原文では, Gはg,Gはyと表されている。

(9)

295 不安定性原理の研究における諸問題 (2・完〕 -9-ところで,このような内容を持った投資関数(26)式の特徴は, (1)指数分布ラグ を持っていること, (2)期待成長率を考慮していること, (3)資本ストックの過不 足の調整は必ずしも 1期間で行われるものではないこと, (4)加速度原理だけで なく利潤極大化原理をも用いていること等である。 またA センは,前述のように不安定性原理の分析において,主要な動学的変 数として所得または産出高の期待成長率を用いている。そして,不均衡があっ た場合のその調整について,次のような関数を示している。 Gt

=

Gt-l+II(Gt-l-Gト 1) (31)

λ>0

この式の意味するところは次の通りである。もし t-1期において現実成長率が 期待される成長率に一致していれば,t-1期の期待成長率は t期においても維 持される。そして, Gt-l>

δ

ト 1であれば,t-1期において現実成長率が期待 される成長率を越えているのであるから ,

t

期において期待成長率は上方に調 整される。

G

t-1く

δ

ト lの場合にはその逆である。この期待成長率決定の関数 は,期待成長率そのものの調整を含んでいる。そして,それはフィリップスの 関数には無い部分である。

V

I

I

不安定性成立のための条件 不安定性原理における不安定性が成立するための条件については,ハロッド の「動学理論における一論J(1939)の原稿を回って,ケインズとハロッドとの 聞で遣り取りされた往復書簡の中で論じられたことは,前に述べた通りである。 ケインズが主張した条件は,必要資本係数が限界貯蓄性向よりも大きいという ことであった。またノ、ロッドの条件は,現実成長率が保証成長率からたとえば 上方に議離して大きくなった場合,その増大率が貯蓄率の増大率より大きいと いうことであった。また,ハロッドの条件の方がより動学的であり,明快であ ることについても述べた。 次に, H.,ローズの「保証成長の可能性J(1959)という論文で述べられている ( J

(10)

-10- 第60巻 第2号 296 不安定性の条件について考えてみよう。彼は次のように言っている。「不安定性 定理は,企業家の意志決定 decision-makingについてなされた明示的な諸仮定 に依存するものではなくて,投資決意と資本支出との聞の暗黙のうちに仮定さ れた時の遅れに依存する。そして,この時の遅れは取り除かれるが他の諸仮定 が保持される時,不安定性は消滅する。」ここには,投資決意と資本支出との聞 の時の遅れが,不安定性のための必要条件であるということが示されている。 もっと詳しく述べれば次の通りである。たとえば t-1期に資本不足があること が判明したとする。企業家達はその不足を解消するため,余分の投資または投 資の増加率を決意したとする。そして,その投資支出(資本支出〉が実際に現 れるのが同じ t-1期であるならば不安定性は生じない。しかし,その支出がた とえば

1

期遅れて t期に現れる時にのみ,不安定性が生じるというのである。 そしてこれに関連してローズは,ハロッドがその理論において, この時の遅れ の存在を否定しているとして批判する。しかし,ハロッド自身はその時の遅れ の存在を否定しないということを強調している。 ところで, A.W.フィリップスも,正常能力産出高の成長率(したがって資本 蓄積率)の恒常状態解の安定性および不安定性の条件について述べている。こ れについて考えてみよう。 まず,利子率 rと期待成長率

δ

を不変と仮定する。そして ,N

=

1

とすると, (26)式は次のようになる。

I λ

一=一一一一{sG+γ(x-1)+ρ(C-r)}

K D+A

(32) ところでフィリップスは,資本ストック Kに対する正常能力産出高

Y

nの比率 νを一定とする。すなわち

Y

n

=

ν

K

~ νは産出・資本比率であり,必要資本産出比率(平均概念〉の逆数である。ここ で,正常能力産出高の成長率を.Yn,資本ストックの成長率

(DK/K)

をgと表す (J司印 cit,p..314 (

(11)

297 不安定性原理の研究における諸問題(2・完) -11ー と,仮定により次のようになる。 .Yn

=

g (3心 また,意図される資本蓄積率と現実の資本蓄積率とが等しいとすると,次式の ようになる。

I

/

K

=

g

さらに乗数理論により,次式が得られる。 Y

=

I/s (36) そこで,正常能力産出高に対する現実産出高の比率x(

=

Y/Yn)は,側式, (35) 式および(36)式から,次のようになるo x = Y/Yn=g/Sν また,制式と(37)式とから,次式が得られる。 Yn = sνz

(38) ここで倒式にかえり,これを今得られた(34)式,側式, (37)式および側式を使っ て変形する。先ず,開式は側式により次のようになる。

=

g

=

D!A

{ 必 叫 一 1 ) 叫 -

r)} ム(D+A)g=A{βδ+y(x-l)+ρ

(

c

-

r

)

}

= Aγ:x+A{βδ-γ+ρ(ι-r)}

G

ω

側4心)式より

(D

A

川川)汐.Yn .人.¥.

(D

十A)汐.Yn

Aγ:x= A{βδ

γ+ρ(c

r)

}

G

仰側7り)式と(側3紛心式とカかミら

(D+A)'yn-Aγ??=λ{βδ -y+ρ

(

c

-

r

)

}

¥{D

+A(l一γ/sν)}Yn= A{βδ-γ+ρ(c-

r

)

}

また,側式により

{D

+A(l-γ

'

/

s

ν)}x=A{βδ-γ+ρ (c

-r)}/s

ν

0) (39)式は,

D

とYn以外のものをすべて定数とすると ,Ynを変数とし,定係数 A(l一γ

'

/

s

ν)と定数項A{βδーγ+ρ

(

c

-

r

)

}

とを持った

1

階線型徴分方程式で

(12)

-12 第60巻 第2号 298 ある。その確定解は次の通りである。 Yn(t)

=

Yns+ {Yn(O)-Yns}exp{一λ(1-

y

/

s

ν) t} (41) ただし Ynsは側式の恒常状態解であり,次の通りとなる。 Yns

s

νβδ-γ+p(c-r) sν一γ 付

D

また側式は.xを変数とし,定係数A(1-y/S)))と 定 数 項A{βδ-γ+ρ(c -r}

}

/

s

νとを持った,

1

階線型微分方程式である。この確定解は次のようにな る。 x(t)ニ Xs

+

{x(O)-xs}exp{ -A(l一γ

/

)

t

}

ただし Xsは仰)式の恒常状態解であり,次の通りとなる。 Xs

=

J

l

.

.

G-y+

ρ(c -

r

)

sν-y (43) (44) ところでフィリップスは, これらのは1)式と側式とについて,恒常状態または 「成長均衡」の径路の安定性または不安定性の問題を取り扱うのであるが, こ れはハロッドの保証成長均衡の不安定性の問題に当たる。フィリップスは, と くに安定性または不安定性のための条件について次のように述べている。「仏1) と仰とから,我々は一定の利子率を持つ体系は,もし γ

<

s

ν

ならばその場合に のみ安定であるだろう。

y>

sνで以て,その恒常状態または「成長均衡」径路 からの現実産出高のいかなる話離も,その径路から離れての一層の累積的な運 動に導くだろう。」 このことを,まず仏1)式について考えてみよう。正常能力産出高の成長率(し たがって資本蓄積率〉についての方程式(41)式は次のとおりであった。 Yn(t)

=

Yns+{Yn(O)-Yns}exp{-A(l-

r

!

s

ν)t} 41() なおYnsは Yn(t)の恒常状態解である。この式から直ちに分かるように,Yn(O) -Ynsキ

O

として,恒常状態解の安定のための条件はA(1-

y

/

s

ν)

>

0

というこ とである。この時,

e

を底とする指数関数の指数部分は負となり ,

t

の増大と共 (1骨原文では(17)と(18)である。

(13)

299 不安定性原理の研究における諸問題(2・完〕 -13-に右辺第

2

項の僧は次第に小さくなり

O

に収赦する。そこで ,A

>

0

r

>

0

, s > 0,ν>0として,この収数が生じるための条件,すなわち恒常状態解 Yns の安定のための条件は,

r

<

sν ということである。

y

は制式や倒式にも現れて いるように, また前に説明しているように,正常能力産出高からの現実産出高 の霜離(または資本ストッグの過不足〉の調整の,その調整係数である。その 値が大きいほど調整の速度は早し、。 y=

l/T

とすると,この諦離を表す倒式の (x-l)を

T

期間かかって解消しようとする企業家の調整態度を示す。また S は平均貯蓄性向, νは資本ストックに対する正常能力産出高の比率であり,必要 資本係数(平均概念)の逆数である。 また逆に,正常能力産出高の成長率の恒常状態解.Ynsからの Ynの初期の霜 離の値が時間の経過と共に次第に大きくなるとし、う不安定性のための条件は,

r>

sν ということである。 Sとνの値が与えられたとすると,この均衡が安定 か不安定かということは,企業家の資本ストッグについての不均衡の調整の態 度を表す, γの値次第だということである。すなわち,不均衡に対する企業家の 調整の速度がある臨界値よりも大きいこと,言い換えれば,

T

の{直がある臨界 値以下であることが不安定性の条件である。λの値は安定・不安定の条件には無 関係である。 なおフィリップスは,この場合の数値例として,期間の単位を

1

年とし,

s

0

.

1

,ν =

0

.2

5

としている。この場合の安定条件は

γ<

0

.

.

0

2

5

,すなわち T

>

4

0

年ということである。もし

s

=

0

..2としても ,

T

>

2

0

年となり,このモデルに 関する限り,安定性の条件は満たされ難し、と言える。 以上のように,成長均衡の安定または不安定のための条件を求めて,安定か 不安定かの判断をする方法以外に,位相図を用いて安定・不安定の判断をする 方法も行われている。

(21) たとえば次の諸文献がある。

RR

Nelson,“A Note on Stability and the Behavior Assumptions of Harrod-Type Model," Economic Journal, June, 1961 H Nikaido, “Harrodian Pathology of Neoclassical Growth: The lrrelavance of Smooth Factor Substitution,"Zeitschrift fur Nationalδkonomie, V 01 40, 1980. 置塩信雄現代経済

学J,筑摩書房,昭52。鴇田忠彦マクロ・ダイナミックス一一現代インフレーションの基

(14)

-14 第60巻 第2号 300

V

I

I

時の遅れの取り扱い 第 II 節でも述べたように,ハロッドは『動学的経済学序説~ (1948)において, 不安定性原理の不安定性は,時の遅れの効果とは全く関係が無いと言っている。 これに対して H ローズは,ハロッドの不安定性原理は投資決意と資本支出と の聞の暗黙のうちに仮定された「時の遅れ」に依存するが,ハロッドはこれを 認めないとして批判をするのである。 ローズはこの問題について次のように言っている。「私は前節で,ハロッドが その遠心力を,投資決意の産出高の最近の趨勢および資本の過不足に対する依 存ということに帰せしめたことを述べた。今や,この依存はそれだけで不安定 なのではなく,ハロッドの理論の彼の定式化に暗に含まれている,投資決意と 資本支出との聞の時間的間隔と結合して作用せしめられる時に,そうなるのだ ということが示されるだろう。それゆえ,不安定性は『時の遅れの効果とは無 関係である』というのは実情ではない。」このようにして, ローズは, このこと をはっきりと示すために,時の遅れがあると仮定する場合と無いと仮定する場 合との,二つに分けて考察をなしている。 ローズは,時の遅れが含まれている場合として,次の式の場合を挙げる。 d(J/I) _ ,j" Y ¥ と 辻 止 ム

=

k(Cr一一一

s

)

Q

m

dt ¥ / ここで

I

は事前的投資,kは正の定数,

Cr

は必要資本係数である。これは,ロー ズがハロッド、の不安定性原理を説明するために示した式で、あさ?この式は次の ようなことを示す。企業家は今日の支出すなわち

sY

に等しい事後の投資と, 資本必要の経常的増加CrYとを〈いずれも所得

Y

との比率で〉比較すること によって,将来の資本支出はどれだけであるべきかを今日決定するということ

側 RF.. Hanod, Towards a均rnamicEconomics, 1948, p.86

(

2) Rose3 ,'‘The Possibility of.,"p.319

制 ローズの(8)式に当たる。ただし記号法は変えてある。 cfRose,“The Possibility of.,"p

(15)

301 不安定性原理の研究における諸問題(2・完) -15-である。将来あるべき資本支出は,具体的には,投資の成長率の調整という形 で示されている。また,同じような言い方をするとすれば,今日の資本支出は, 過去の投資決意によって決定されるのである。ここには,投資決意と資本支出 との聞に,はっきりと時の遅れがある。 しかしローズは,現在の資本支出は現在の出来事によって影響を受けるとい うモデルを作る。すなわち投資決意と資本支出との聞に時の遅れが無いと仮定 するのである。彼はこのモデノレにおいて,第

V

I

節の(I7)式のような投資関数を示 す。そして,保証成長均衡が安定であることを論証しようとしている。しかし, この投資関数に含まれている想定が背理的であるとして,置塩教授から批判を 受けたことは,第

V

I

節で述べたとおりである。 またハロッド自身は,ハロッドの理論が時の遅れの存在を含んでいることを 彼が否定するというローズの批判に対し,否定はしないということを強調して いる。ハロッドは,資本不足(または過剰〉が生じたその同じ期間に,それに 対する調整が行われるというローズの考え方を否定して,次のように言ってい る。「もし人々が,ある一定の日に,またはより現実的にはある一定の月に,現 在の水準での生産 turnoverを最も都合よく遂行するために必要なもの,固定資 本にせよ流動資本にせよ, より少ない資本を持っていることを見出すならば, その月のうちにそれを矯正することは何も出来なし、。彼らがなし得ることは, 余分の注文をすることか,または彼ら自身の生産を増大させることである。不 安定性原理の本質は,このことが次期において資本をより不足せしめるであろ うということである。人々が一定の短期において,彼らが必要とするどのよう な資本も,固定資本であれ流動資本であれ,その期間においてある行動をとる ことによって持つことが出来るという考え方は,受入れ難い。」ハロッドはこの ように述べて,不安定性原理に対するローズの批判に答えている。 このノ、ロッドの新しい見解を見ると,彼が『動学的経済学序説~ (1948)で述 べた「この種の不安定性は時の遅れの効果とは全く関係が無く,・'''....Jという 自由 Harrod,“Domar and","p,459 側 Harrod,To仰 7ゐ, p 86,

(16)

16- 第60巻 第 2号 302 言葉と比較する時,事実上,表現に修正があることは明らかである。しかし前 にも述べたように,ハロッドの以前の言葉は,不安定性が生じる最も基本的な 原因は,時の遅れとは異なる別の事だということを強調したものだと考えられ る。それにもかかわらず,ハロッド自身も認めているように,不安定性原理の 成立にとって, ローズの言う投資決意、と資本支出との聞の時の遅れは必要であ ると思われる。 そして,この種の時の遅れは連続分析においても表現出来ないことはないが, 期間分析においてより明らかに示すことが出来る。たとえば置塩教授によって 示された,第VI節の(21)式はその例である。

I

X

期待の取り扱い 第

1

1

節でも述べたように,ハロッドはその不安定性原理において,期待の役 割について少なくとも明示的には何も述べていなし、。これはハロッド自身が明 言 し て い る よ う に , 正 当 化 さ れ る 投 資

j

u

s

t

i

f

i

e

d i

n

v

e

s

t

m

e

n

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(必要な投資

r

e

q

u

i

r

e

d

i

n

v

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s

t

m

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t)や望まれる貯蓄

d

e

s

i

r

e

ds

a

v

i

n

g

を重視し, ミルダールの 定義した事前的投資や事前的貯蓄の概念を相対的に軽視したことと関係がある と考えられる。ハロッドはその著『貨幣~ (1969)において次のように言ってい る。「上記において私は,必要資本・産出高比率に対応して,望まれる貯蓄およ び必要な投資という概念を使った。これらはともに,時々,事後的貯蓄および 事後的投資と異なるであろう。私の概念は, ミルダーノレの定義した事前的貯蓄 および事前的投資の概念と同じではない。……事前的諸概念はきわめて貴重な 概念であって,私はそれらが完成された動態経済学の理論の中で演じるべき重

) R F7 .. Harrod, Money, 1969, pp.. 194-5(塩野谷九十九訳貨幣一一歴史・理論・政策』 東洋経済新報社,昭49,232-3ベージ〉。 側 G.Myrdal, MonefaηEquilibrium, 1939, pp.45-7(傍島省三訳貨幣的均衡論J,昭18, 54-7ベージ〉。 白 骨 Harrod, Money, pp.. 194-5(邦訳, 232-3ベージ〉。 側 原訳では「要求される資本・産出高比率」となっているが,訳語統ーのため変更した。 (3]) 原訳では「欲求される貯蓄」となっていたが,訳語統一のため変更した。 (32) 原訳では「要求される投資」となっていたが,訳語統ーのため変更した。

(17)

303 不安定性原理の研究における諸問題(2・完〕 17-要な役割をもっていることに疑いをもってはいない。しかし,それらは私の中 心的な命題には関係がないのである。」このようにハロッドは,事前的貯蓄や事 前的投資の概念が重要であることを認めつつも,彼の動学の中心的な命題(た とえば不安定性原理の命題〉には関係がないとして,望まれる貯蓄や必要な投 資に対してそれらを相対的に軽視している。ところが,事前的貯蓄や事前的投 資は期待ということと結びついており,事前的概念の軽視は期待ということの 軽視と結び付くと考えられる。このようにして,ハロッドの動学の中心的な命 題の一つである不安定性原理において,事前的概念が関係を持っていないとい うことは,期待ということも用いられないことに繋がると考えられる。このこ とは第l次接近としては許されるのかも知れないが,単純化に伴う非常に大き な犠牲であると思われる。 企業家が投資の成長率または資本蓄積率,さらには産出高の成長率を決定す るのはもちろん事前的概念についてであり,その際それらは,基本的には将来 についてのいろいろな期待に基づいて行われると考えられる。そしてその場合, 企業家の期待のたて方や期待に基づく行動の型には,ケインズの言う血気ani

-mal

spiritsの大きさが影響を与えると思われる。他方,企業家等が不均衡を認 識し,それに対する成長率の調整を行おうとする時には,事後的概念が重要で あると思われる。ハロッドは,基本的な成長率の決定と,不均衡に対する成長 率の調整のうち,後者をとくに重視しているのだと考えられる。 ところで,不安定性原理に関連して期待の問題を取り扱った研究としては, たとえば

A W

フィリップス,

A

.

セン,

S.M

ファザリ,足立教授等のものが ある。 フィリッフ。スは前述のように,その投資関数の自変数のーっとして,企業家 の期待成長率を考えている。(26)式または倒式の

δ

がそれである。そして意図さ

ω

印 cit,pp. 194-5(邦訳, pp.232-3)

(34)J M Keynes, The Collected Writings of John Maynard Keynes, Volume VII, The General Theory 01 Employment Interest and Monの"1973, p 161

(18)

-18- 第60巻 第2号 304 れる資本蓄積率は,この期待成長率を基本にして,資本ストックの過不足を表 す (x-l)と,正常能力産出高における資本の限界生産性と利子率との差である (c-r)による調整で決定される。不均衡に対する調整を表す項は,事前的概念 でなく事後的概念が用いられている。そして,期待成長率

δ

は,これも前に述 べたように,主として過去の現実成長率に依存するとして,その聞に(30)式に示 されたような単純指数ラグを仮定している。

A

センは前述のように,期待成長率を主要な動学的変数として不安定性原理 を展開している。彼は ,t期の産出高の期待される需要を Xtとし,それと t-l 期の現実産出高

Yt

-

1との関係で ,

t

期の期待成長率を

δ

t

Xt-Y

ト,

l/Xt

と して定義している。そして,期待を明示的に考慮

l

して,期待成長率との関係で 保証成長率概念を説明している。さらに彼は,(31)式のような適応的期待接近に 基づく期待成長率調整の関数を示している。このようにしてセンは,現実成長 率,期待成長率および保証成長率の三つの成長率の聞の関係によって,保証成 長均衡の不安定性の問題を説明している。センの不安定性原理の特徴は,この ように期待成長率そのものを主要な動学的変数としていることと,期待成長率 の決定にあたって適応的期待接近の方法がとられていることである。 S.Mファザリは rケインズ,ハロッドおよび合理的期待革命J(1985)とい う論文で,ハロッドの不安定性原理と合理的期待分析との関係について論じ, 独自の新しい形の不安定性原理を展開している。ところで,期待としづ概念を 不安定性原理において用いる場合,前述のフィリップスやセンのようなハロッ ドの追随者ほ,成長均衡の不安定性を主張している。これに対し合理的期待学 派は逆に均衡の安定性を主張している。ところがファザリは,行為者が合理的 に期待をすると仮定しても,不安定性原理はなお妥当することを示そうとして いる。 ファザ、リは,主要な動学的変数として,需要の期待成長率を用いる。そして

(36)S M. Fazzari,“Keynes, Harrod, and the Rational Expectations Revolution," ]our

(19)

305 不安定性原理の研究における諸問題 (2・完〉 7'A 9 第

V

節で説明したように,

F

ハーンの合理的期待均衡

(

R

E

E

)

の定義に従って, 自己の合理的期待均衡概念を述べている。また,その具体的な均衡値としては, 恒常状態 steady-stateでの成長率を考えている。この合理的期待均衡はハログ ドの保証成長率に当たるが,ファザリは,分権的 decentralized市場経済におい ては,この均衡が不安定であることを論証している。ファザリの分析は一応合 理的期待接近の形をしている。しかし,彼の示したエラーに対する行為者の期 待の反応の仕方は,事実上適応的期待接近の反応の仕方と本質的に同じである。 したがって,期待成長率についての均衡が不安定であるという同じ結論が出て 来ても不思議ではなし、。ただ合理的期待接近の形式をとっているところが新し (38) く,興味深いということである。 足立英之教授は,第V節で述べたように,その著『経済変動論.s(1982)にお いて,独自の「期待成長率」とし、う概念を定義し,均衡成長の安定性如何の分 析に用いている。この期待成長率は r資本係数が適正値

c

r

のとき企業者が望 む成長率」であり,厳密に言えば,前述のフィリップス,センやファザ、リのよ うな,文字通りの期待成長率とは異なる。また,足立教授の成長率は資本蓄積 率を表すことにも注意すべきである。 足立教授の「期待成長率」の概念は,前にも触れたように, N..カルドアの「期 待成長率 expectedrate of growthJ等の概念の影響を受けていると解される。 カルドアは,期待成長率について次のように言っている。「投資の成長率に対す る,それ故全体としての産出高の成長率に対する一番もっともらしい説明は, 企業家達としての需要の成長の期待である。そしてそのことは,ある経済は, その経済の実業家達が成長すると期待する率で成長しそうだということを示 す。」これは,ある経済の投資したがって産出高の成長率は,その経済の企業家

) F7 .H Hahn, Money and Insation, 1983, pp. 3-4

(38) ファザりの学説については,次の論文でも取り扱っている。佐藤良一 r合理的期待と資 本制経済の不安定性J,宮大経済論集, 32巻 2号, 1986年11月。 自由 足 立 英 之 経 済 変 動 の 理 論 』 日 本 経 済 新 聞 社 , 昭57,200ページ。 ω1) N.Kaldor,“Mr.. Hicks on the Trade Cycle

Eωnomic1ournal, Dec., 1951 刷 足 立 経 済 変 動 の 理 論J,200ベージ参照。 (42) Kaldor,“Mr Hicks on.,"p.842

(20)

-20ー 第60巻 第2号 306 達ないし実業家達の期待成長率によって決まるということである。この場合足 立教授は,このカルドアの期待成長率は r企業者の「血気」の強さを反映する 成長率」であるとしている。もちろん成長率の期待を形成する際,いろいろな 過去の経験に基づく情報を利用して行うわけであるが,結果として出来上がる 期待には

r

血気

a

n

i

m

a

ls

p

i

r

i

t

s

J

の大きさが影響を与えるということである。 たしかにその通りであるが, さらにその期待成長率に基づいて,企業家達が投 資の成長率や産出高の成長率, または資本蓄積率を決定する際にも r血気」の 大きさが反映されるということも考えられる。足立教授はこのことも含めて考 えているものと思われる。このようにして足立教授は,企業家達は期待成長率 に一致した資本蓄積率を望むと考え,とくに r資本係数が適正値

c

r

のとき企 業家達が望む成長率」を「期待成長率」と呼んだのである。 ところで足立教授は, この企業家達の成長期待を決定する一つの要因として の「血気」の状態を表現するものとして r長期期待成長率」とし、う概念も用い ている。足立教授は次のように言う。「企業者が成長期待の形成の基礎とする要 因としては,次のニつが挙げられる。第ーは,過去における企業者の経験であ り,第ニは,将来の見通しに関して企業者の抱く楽観あるいは悲観の状態,す なわちケインズが「血気」と呼ぶところのものである。一…このような企業者 の「血気」の強さを表現するため,われわれは「長期期待成長率」という概念 を導入し,これを

g

e

と表示する。長期期待成長率

g

e

とは,代表的企業者が経 済の循環的変動を貫ぬいて長期趨勢として支配すると期待する成長率であると 定義しておこう。」そして,この長期期待成長率の数値の取り扱いとしては, r

g

e

は客観的状況の変化の影響を受けて変化するかもしれないが,さしあたり は相当期間にわたって一定とみなすことのできるパラメターであると仮定す る」としている。しかし,足立教授はさらに進んで,長期期待成長率の修正過 程についても考察している。すなわち r企業者の期待が一定方向に偏りをもっ 側 足 立 経 済 変 動 の 理 論 ゎ 200ページ。 刷 向 上 書 , 206-7ベージ。 相日 向上書, 207ベージ。

(21)

307 不安定性原理の研究における諸問題 (2・完〉 -21ー という状態が長期にわたって続くならば,企業者は長期期待そのものを現実に 近づけるように徐有に修正するかもしれなし、」としている。そして,このよう な長期期待の修正過程のもとで,体系が不安定であることを論証している。

X

物価の取り扱い ハロッドはその経済動学の分析において,価値を財貨の量で測り,基本的に は数量分析を行っている。このことは,不安定性原理の分析においても同じこ とである。ただ,インフレーションの問題を重視して取り扱っている『経済動 学~ (1973)においては,不安定性原理と物価の関係への配慮を示しているとこ ろがあることは,第

I

I

節でも述べたとおりである。しかし,本格的に物価の変 動を取り入れた不安定性原理の分析は,全く行っていない。 これに対し,たとえば

s

.

.

s

アレグサンダーは iノ、ロッド氏の動学モテ、ル」 (1950)で「安定させるもの stabiliserとしての価格」とし、う表題の下に, この 問題を取り扱っている。まずアレクサンダーは次のように言う。成長率がある 与えられた最初の率から上昇する時には,消費と投資の支出がその期間または 以前の期間に生み出された所得(したがって産出高)を超過するが故にそうな るのである。「しかし,増大する支出はより大きな生産を呼び起こすのと同じく, 諸価格を高める傾向があると想定せよ。諸価格が上昇す}る時,一定の支出の増 大は生産における比例以下の増大を誘い出す。そこで,それに相応してより小 さな量:の新投資が必要とされるだろう。」この後半の部分は,物価が上昇すれ ば,実質需要の増大は,名目需要の増大ほどにはないので,生産量の増大のた めの新投資の必要は,名目需要の増大に対しその分だけ小さいということであ る。続いてアレグサンダーは次のように言う。「結果として,上昇する諸価格は, 祖母 同上書, 213ベージ。 ( め しかし,足立教授も説明しているように,この不安定性は,体系の趨勢的成長率の保証成 長率からの議離に関する不安定性であって,ハロッドの不安定性原理のそれとは別のもの で あ る 。 足 立 経 済 変 動 の 理 論J,213ベージ参照。 臼 曲 cf. Harrod, Towards.., pp 28-34.. 側 Alexander,“Mr..Harrod's Dynamic Model,"p..737

(22)

-22 第60巻 第2号 308 所得の成長率における逃げ去る動きを停止させ,それをほどよい成長率に安定 化させるかも知れない。あるいは恒常的に成長する代わりに,所得を循環的に 振動させることさえあるかも知れない。」 アレクサンダーはこのように述べ,若干の分析の後,次のような結論を述べ ている。「しかし,保証成長率が存在するかどうかは,いろいろな型の支出のタ イミングと大きさ,および諸価格の動きに依存する。同様に,支出のタイミン グと大きさは,ほどよい

moderate

保証成長率が,ハロッドの意味において安定 でないだろうようなものであると信ずることがもっともらしく思われるけれ ど,なおその不安定性は,もし買手が価格水準の上昇に比例的に彼らの支出を 直ちに増加させることが出来ない,または増加しないならば,価格伸縮性によっ て和らげられるであろう。」このようにアレグサンダーは,物価変動の影響を考 慮に入れる場合,不安定性原理は大よそ成立すると考えられるが,その場合で も,不安定性の鋭さが減じられる可能性があることについて主張するものであ る。 また, A. センは,その編著である『成長経済学~ (1970)において,不安定性 原理に物価変動の問題を考慮に入れることの必要性について述べている。 彼は,前述のように「期待成長率」とL、う概念を用い,また物価を不変とし た彼独自の不安定性原理を展開した後,現実の需要が期待需要を越える時, モ デ、ルの補足が必要で、あることについて述べている。「もし現実の需要

Y

tが期待 需要

X

tに足りないならば,能力は不完全利用されているであろうから,あま り問題はないであろう。しかし

Y

tが,それについてちょうど十分な能力が創り 出されたその期待需要を超過するならば,いかにしてこの現実の需要は対処さ れるだろうか

?J

センはこの問題について,先ず現存の在庫品のはき出しによ る対処を行うとし、う仮定について述べている。しかし,現実需要成長率の保証 側 匂 cit,p 737. ( 51)印 cil,p.739 問 A Sen(ed), Growth E.じonomic:s.Seleιted Readings, 1970 (53) 期待される需要に合わせて生産の能力が作り出されるという考え方に基づいている。 倒 印 cit,p.13

(23)

309 不安定性原理の研究広おける諸問題(2・完〕 23-成長率からの累積的な上方への議離が続いて,在庫品が無くなってしまえばど うなるかとし、う問題がある。 そこでセンは,現実需要が期待需要を超過し供給の能力に対して需要が超過 する時には,価格水準の予期しない上昇が生じて,それにより対処されるとい う代替的な仮定を行う。そして次のように言う。「そこで,価格水準は成長期待 が保証されなければ予期されたものとは異なるだろうということを除けば,期 待された販売は,常に結局は実現される。そこでハロッドのそデノレは,累積的 なインプレーションと累積的なデフレーションとの聞のナイフの刃のバランス の一つであるだろう。」センの言おうとしていることは次のようなことである。 ハロッドの不安定性原理は価格不変という仮定の下に展開されているが,期待 成長率と現実成長率が保証成長率から上方に議離した場合,現実の需要が供給 の能力を超え,結局は物価は上昇せざるを得ない。そこでセンは,ハロッドの モデルの仮定をゆるめて物価の変動を認め,物価変動を考慮した不安定性原理 を示唆する。しかし,セン自身はその場合の具体的な理論を示しているわけで はなし、。 アレクサンダーもセンも, ともに不安定性原理に物価変動とし、う要素を導入 することを考えている。しかし,センの特徴は,その場合にも期待成長率とい う概念を考え,期待ということを重視していることである。 ハロァドは物価変動を考慮しないそテ、ルにおいて不安定性原理を説明してい る。しかし,第

1

次接近としてはそれでも良いかも知れないが,モデルをより 現実的にして不安定性原理を取り扱う時には,物価変動の問題をぬきにして論 ずることは出来ない。そして,物価変動を考慮、に入れた不安定性原理の分析は, より詳細に行う必要がある。また,物価変動についてのヴィクセル流の累積過 程の分析との関係も,明らかにすることが必要であろう。 ( 5日印刷cil, p..14

(24)

-24ー 60巻 第2 310 }日結び 以上のようにして,先ずハロッド自身の不安定性原理に含まれている,注目 すべきいろいろな問題点について明らかにし,続いてそれら問題点毎に,その 後の不安定性原理の研究者達が,それらについてどのように研究を進めて来た かについて詳細に論じた。その場合,各々の研究者の諸仮定や用いている諸概 念,取り扱い方法等がかなり異なっている。そこで,これらの聞の関係を明ら かにすることにも力を注いだ。そうするうちに,ハロッド自身の不安定性原理 の分析のモデルの特徴や問題点も,より鮮明に浮かび、上がって来ている。 ハロッドのモテ、ルの基本的な特徴で、あり,また最も重要な問題点の一つは, (ミルダールの定義した)r事前的投資」や「事前的貯蓄」の概念を使っていな いことだと考えられる。第

I

X

節でも述べたように,ハロッドは彼独自の概念で ある必要な投資(正当化される投資〉や望まれる貯蓄,それに事後の投資や貯 蓄の概念は使用している。しかし,事前的投資や事前的貯蓄の概念は,彼の中 心的な命題には関係がないとして使用していなし、。事前的投資や事前的貯蓄の 概念は「期待」ということと密接な関係を持っている。したがって,このこと は,彼が不安定性原理の分析において期待という概念を使っていないことと関 係がある。また事前的投資は意図される投資である。そこで事前的投資の概念 を使っていないことは,ハロッドの企業家の意図する成長率の取り扱いが不十 分であり,ひいては,保証成長率が均衡概念との関係で弱点を持っていること とも関連している。さらに言えば,ハロッドの考えている投資関数は,投資の 過不足(したがって資本の過不足〉があった場合,それに対し投資の成長率や 所得〈または産出高〉の成長率をどのように調整す"るかということは示してい るが,投資の過不足(したがって資本の過不足〉が無い場合に,何が投資の成 長率や資本の成長率を決めるかということについては基本的な説明が欠けてい る。これも,事前的投資の概念を相対的に軽視し,使用していないことと繋が りがある。 また,ハロッド以外の研究者について言えば,ハロッドの望まれる貯蓄率 Sd

(25)

311 不安定性原理の研究における諸問題(2・完) -.25 -の 概 念 を あ ま り 用 い て い ず , 用 い ら れ て い て も , 必 ず し も ハ ロ ッ ド -の 意 図 に 合 致 し て い な い よ う に 思 わ れ る 。 こ の こ と の 一 つ の 理 由 は , ハ ロ ッ ド の こ の 概 念 をモデルで取り扱うことが,困難であることであると考えられる。 今後の不安定性原理!の研究としては,インフレーションとの関係の研究や多 部 門 分 析 を 一 層 押 し 進 め , ま た 実 証 的 研 究 も 行 う こ と が 必 要 で あ る と 考 え ら れ る。 参 考 文 献 C1] 足立英之『経済変動の理論』日本経済新聞社,昭57。

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n

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参照

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