• 検索結果がありません。

ユズ台およびカラタチ台温州ミカンの生理生態学的比較に関する研究 V 幼木における新梢ならびに果実内肥料要素吸収量の季節的変化-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ユズ台およびカラタチ台温州ミカンの生理生態学的比較に関する研究 V 幼木における新梢ならびに果実内肥料要素吸収量の季節的変化-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

119

ユズ台およびカラタチ台温州ミカンの

生理生態学的比較に関する研究

Ⅴ 幼木における新棺ならびに果実内肥料要素

吸収盈の季節的変化

井 上

宏,高 島

理 Ⅰ緒 ロ カンキツに限らず,多くの果樹において肥料要素の吸収が台木によって左右されることはよく知られている事実で ある.従来,1ユ・ズ台温州ミカンは一・般にカラタチ台温州ミカンより薬にマグネシウム欠乏症が発生しやすいといわれ ている(2・5). 筆者らはユズ台およびカラタチ台温州ミカンの幼木を用い,それらの新梢ならびに果実内の肥料5要素の吸収盈の 季節的変化を観察することにより,ユ・ズ台でマグネシウム欠乏症が発生しヤすい理由を含めて,結実を始めた幼木期 の南台の栄養生理的特性を明らかにしようとして本実験を計画した. ⅠⅠ実験材料および方法 本実験は香川大学農学部構内のほ場においてコンクリートポット(内径66cm,探さ55cm)栽植の7年生ユズ台お よびカラタチ台温州ミカン(杉山系)の結実樹を用いて行をった.すなわち,1966年6月16日から12月1日にかけて, 各月の1日と16日に着果および無着果の新棉(春棺)を各台5樹から合計10本ずつ採取して,薬・枝・果皮および果 肉に分けて,生体重を測定し,後直ちに乾燥して乾物重を求めたぃ それらの乾物試料は粉砕して,N・P・K・Caお よびMgの定量を行なった.分析方法にはNはガンニング氏変法,Pはモリブデン青試薬を用いる光電管比色計法, K・Caは炎光光度計法,Mgはドータイト法を用いた. 肥料要素含意は乾物%で表示し,新棉1本あるいは果実1個あたりの乾物重から,それぞれの要素吸収盈を簸出し た.試料の採取にあたっては,新梢の英数は5枚のものを,果実は同時に測定した標準樹の果実の果径に近いものを 選んで,なるべく採取誤差を少をくするよう留意した.試料を採取しなかった標準樹3樹の平均1果あたり英数はェ・ ズ台で40枚,カラタチ台で27枚であり,果実収盈は1樹あたりそれぞれ2.9kgおよび7.6kgであった. 供試樹は1鉢1本格え.で,年間1樹あたりN180g,P205和g,K2080gを春・夏・秋に分けて施肥した.また,2 月には晋土石灰を150g施用した..実験終了時の12月上旬には南台ともマグネシウム欠乏症はみられなかった. 実験年度の薪芽期は台木によって変らず,開花期も南台とも5月26EIであった.なぁ 試料採取開始時の6月16日 に牲,春梢の伸長はすでに停止していた. ⅠⅠⅠ実 験 結 果 1.乾 物 重 時期毎に採取し,供試した新棉1本あたりおよび果実1個あたりの乾物重の季節的変化は第1図のとおりである. 新栴では着果新棉が無着果新棺にくらべ,シー・ズンを通じて乾物垂がやや少をく,この傾向はカラタチ台よりユズ 台で大であった.新棉の乾物重は6月中旬から12月にかけて,わずかに増加の傾向を示したが,採取誤差がかなりみ られた.果実の乾物重は果実肥大にともをって著しく増大して成熟にいたったが,その傾向は台木によって変わず, どの時期にもほぼ同じ乾物重を示した. 2.肥料要素含童

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(2)

香川大学農学部学術報告 月 日 2 1・1 1・ 116 1 1・1 7 8 8 9 9 10 10

16 1 16 1 16 1 16

第1図 乾物重の季節的変化 新柄は菜と枝に,果実は果皮と果肉に分け,それぞれの肥料要素含盈を測定した. (i)N N舎監の季節的変化は第2図のとおりである

9 10 1112 6 7 8 9 10 1112月

161 1 1 1 1 1161 1 1 1 1 1日

第2図 N含盈の季節的変化 葉では6月中旬以後のN含立の増減は枝や果実ほど著しくをかった.無着果英(無着果新梢の秦)ではカラタチ 台でユズ台より9月中旬ごろまでにやや高く,以後はゃや低くなった… 着果斐(着果新栴の薬)ではユズ台で9月ご ろ,カラタチ台で10月ごろ高くなり,以後低くなった.無着果発と着果粟の比較ではユズ台で9月ごろ後者が前者よ り高くなったほかは,無着果葉が着果薬よりヤや低い傾向を示した..−・方,カラタチ台では無着果葉が着果秦より10 月を除いて常に高かった1. 着果枝では6月中旬よりシーズンがすすむにしたがって南台とも著しく低下したが,無着果枝では8月中旬に最高 を示し,以後は低下を示したい 台木の間で含盈の差は認められをかった. 果実では果皮および果肉とも肥大がすすむにしたがって低下を示した.また,それぞれの時期の含最も南台ではと んど変らなかったが,ユズ台の果皮で成熟期間際の含盈の低下の程度がやや少なかった. (ii)P P含盈の季節的変化は第3図のとおりであるい

(3)

121 月 日 12・1 1 1・1 10・1 9 ■1 8・1 7●1 6 6・1 2 1・1 1 1・1 10・1 9・1 8・1 7・1 6・16 第3図 P含畳の季節的変化 菜では6月中旬から7月にかけて含盈が著しく低下したが,以後はほとんど変らをかったい 無着果其の含盈が着果 菓より高く,その差はカラタチ台で著しかった、.着果菓では台木間に合盈の差はあまりなかったが,無着果菓でカラ クチ台の含量がシ・−・ズンを通じてやや高かった 枚では,薫と同様に6月中旬から7月中旬にかけて含盈の低下をみたが,その後はほとんど変らなかった..このシ ーズン初期の低下の程度は鰊着果放で着果枝より少をく,7月中旬以降は無常来校で着果枝より含塵が高かった.こ れらの傾向および各時期の含盈は台木によって変らをかった. (iii)K K含盈の季節的変化は第4図のとおりである

12 6 7 8 9 10 11 12月

1161 1 1 1 1 1日

1 1・1 0 1・1 9●l 00・1 7・1 6 6・1 第4図 K含盈の季節的変化 薬では6月中旬から7月にかけて低下するが,8月から9月に−・時高くをり,以後再び低下を示した.着果糞で7 月申は無着果弟より低い傾向にあった.8月中旬以後はカラタチ台では着果による菜内含盈の低下を認めたが,ユズ 台では10月中旬以後はむしろ着果薬で高かった小 者果,飯箸果菜ともカラタチ台でユズ台より含急が幾分高い傾向に あった1、 枝ではシーズンがすすむにしたがって著しく低下したが,ユズ台では着果により変らず,カラタチ台では7月から 10月まで着果枝で恋着果皮より含盈が低かった.台木間で此軟すると,カラタチ台の無着果枝で7月から10月の間, ユズ台のそれより舎監が高い傾向を示したが,着果枝では差がみられなかった.. 果皮では,果実肥大にともなって含盈は著しく低下し,台木によって同時期の含盈に差は認められをかった.果肉

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(4)

122 では南台とも9月上旬に含盈が最高とをる山を示したが,その山はカラタチ台で高かった. (iv)Ca Ca含意の季節的変化は第5図のとおりである 香川大学農学部学術報告 9・l ︵=0・1 7・1 6 6・1 10 11 12 6 7 8 9・l 10・1 1・1 1 12・1 月 日 1 1 1 161 1 第5図 Ca含盈の季節的賓化 英では6月中旬から次第に含盈を高め,8月中下旬に最高に達した1.その後はゃヤ低くをったが,12月にかけて8 月の最高値に回復した.着果による含盈の低下がシ・−ズンを通じて認められた 無着果枝の含盈はシーズンの進行とともに著しく高くをり,12月までその傾向が続いたが,着果枝では6月中旬よ り12月までほとんど変らず一・定の値を示した 果皮では6月中旬から7月中旬にかけて,著しい含盈の低下をみたが,その後は次第に高くをり9月中旬から11月 にかけてゆるやかな山を示して後,再び果実の成熟期に向って低下したい 一・方,果肉では成熟度がすすむにしたがっ てわずかに低くなった. 以上の薬・枝および果実にみられた舎監の季節的変化は台木によって変らなかった. (Ⅴ)Mg Mg含盈の季節的変化は第6図のとおりである 6、7 8 9 10 1112 6 7 8 9 10 1112月

161 1 1 1 1 1161 1 1 1 1 1日

第6図 Mg含盈の季節的変化 ユズ台の無着果葵では7月中∼8月上旬に,着果糞では8月中∼9月中旬にそれぞれ合盈が最高になり,以後次第 に低下したが,果実の成熟直前にまた高くをった.8月上旬から11月にかけて無着果秦で着果葉より含盈が低下した. カラタチ台の薬では6月中旬からわずかに増加し,8月上中旬に最高に達した後は,再びゆるやかに低下した.11月

(5)

第24巻第2号(1973) 123 になって着果菜では著しく,無着果菓ではわずかに増加した小 平均してみて,10月上旬からユ㌧ズ台でカラタチ台より 着果,知者果菜とも含盈が低くなった. 枝でほ無着果枝でシ1−ズンがすすむにしたがって増加し,着果枝では逆の傾向を示したが,着果枝での舎監の減少 はユズ台で著しく,10月中旬に最低と覆った. 果皮では果実発育とともに含盈が高まったが,果肉ではほとんど変らをかった。ユズ台の果皮の成熟期に向っての 含盈の増大は,カラタチ台より著しく,含盈そのものもユ・ズ台で高かった.果肉の含盈は,各時期とも台木で変らな かった. 3= 肥料要素吸収畳 前述の乾物重と肥料要素含急から着果および鰊着果新梢(集と枚を含む)1本あたりと果実1個あたりの肥料要素 吸収量を算出し,ユ・ズ台およびカラタチ台でそれらの季節的変化を比較してみた. (i)N N吸収盈の季節的変化は第7図のとおりである.

16 116 116 116 116 116 1E】

第7図 N吸収盈の季節的変化 無着果新梢では6月上旬からユ㌧ズ台で11月上旬まで,カラタチ台で9月中旬まで,着果新棺ではユ・ズ台で8月上・ 中旬まで,カラタチ台で10月上旬まで増加し,以後はわずかに減少した..全体的にみて,無着果新柄が着果新棺より 吸収盈が大であった.また,無着果新栴の各時期の吸収塵はほとんど台木間で羞がみられをかったが,啓果新梢では カラタチ台の吸収盈がユズ台のそれより大であった. 果実の吸収盈は前述の乾物蛮の季節的変化と同様に果実の発育にともなって急激に増加の傾向を示したが,台木間 では吸収盈にほとんど差がをかった. (ii)P P吸収盈の季節的変化は第8図のとおりである巾 新棉では6月中旬より12月にかけて着果および無着果新梢ともわずかに増加の傾向を示した.無着果新梢ではユズ 台で,着果新棺ではカラタチ台で吸収盈がやや多かったが,いずれの台木も着果新棉で無着果のものより少をかった. 果実ではその肥大にともをい著しく吸収盈を増大Lたが,カラタチ台でユ・ズ台より,いずれの時期にもごくわずか に多かった. (iii)K K吸収盈の季節的変化は第9図のとおりである.. 南台とも無着果新棉で着果新梢より吸収盈が多い傾向を示し,6月中旬よりわずかに増加を続けてユズ台は11月上 旬に,カラタチ台は9月中旬に最高とをった.以後はわずかに減少した..着果新棉でも6月中旬より増加を続けたが,

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(6)

香川大学農学部学術報告

6 7 7 8 8 9 9 10 10 11′1112月

16 1 16 1 16 1 16 1 16 1 16 1日

第8図 P吸収盈の季節的変化 O ︵U O gO m25 0 10 15 2 1 6 1 1 1・1 〇.6 11 10・1 6 9・1 9●1 6 8・1 8−1 6 7・1 7−1 6 6・1 第9図 K吸収盈の季節的変化 ユズ台で8月中旬,カラタチ台で9月中旬に最高を示し,以後は減少した… したがって,吸収盈の山はカラタチ台で は着果の有無にかかわらずほぼ同じ時期に,・ユ・ズ台では着果斯棺でかなり早い時期(8月中旬)に,無着果新梢では 遅い時期(11月上旬)にあって,ユズ台で着果の影響が早くでることを示した.台木間の比較では,無着果新棺でほ とんど差がをく,着果新梢ではユズ台で少をかった. 果実の吸収盈は肥大がすすむにしたがって急激に増大して成熟期にいたった.果実の発育初期を除きいずれの時期 にも吸収盈はカラタチ台がまさった, (iv)Ca Ca吸収畳の季節的変化は第10図のとおりである.. 新梢では6月中旬より8月中旬までは吸収盈が増加し,以後はあまり変化しなかったが,ユズ台の着果新杓を除き,

12月上旬にわずかに減少した、細君果新梢では台木間にあまり差はみられをかったが,着果新梢では8月中旬以降,

ユズ台で著しく少をくなった.全体的にみて,ユズ台の吸収史はカラタチ台より少なかった. −・方,果実の肥大にともをって果実内の吸収塁は著しく増大したが,台木による差は認められをかった・ (Ⅴ)Mg Mgの吸収盈の季節的変化は第11図のとおりである.

(7)

125

9 9 10 10 111112月

1 16 1 16 1 16 1【]

6 8・1 ︵=0・1 6 7・1 7・1 6 6・1 第10図 Ca吸収量の季節的変化 第11図 Mg吸収盈の季節的変化

新梢で軋シーズンの進行にともなってわずかに吸収丑は増加を続けたが,ユズ台の着果新梢で10月中旬に一・時減

少をみた.着果新楠では南台木とも無着果新梢より−・般に吸収盈が少なく・カラタチ台では9月中旬に,ユズ台では

10月中旬にその差がもっとも若しかった・台木間の比較で軋無着果新杓では8月から10月にかけて,着果新杓では

10月中旬以降ユズ台でカラタチ台より吸収盈が著しく減少した・

果実では両台とも果実発育にともなって吸収盈の増加をみたが,ユ・ズ台の増加の程度が若しかった・

ⅠⅤ 考 察 1.新棺および果実内の肥料要素吸収と台木の相違 ヵラタチ台温州ミカン成木の季節的養分吸収を新杓および果実内の肥料3要素吸収放でみた佐藤ら(4)の報告による

と,Nは6月に最高の山が,次いで9月に第二の山があり・Pは5月に最高とをり,その後3成分申最も遅くまでか

をりの吸収を示したぃまた,Kは6月に佼高とをり,その後果実の肥大期にかをりの吸収があったとしている1・筆者

らの本実験では6月中旬以前の成硫を得ていないが,カラタチ台での結果は佐藤らの成撥とほほ一哉した・

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(8)

126 香川大学農学部学術報告 ここで,本実験成放から考えられるユズ台の肥料吸収上の特性をカラタチ台とくらべてみると次のようになる. (i)果実のN吸収盈には台木による差はみられないが,新楯では着果により吸収盈がかなり減少し,果実に近い樹 体の他の部分からNを吸収することを示す。また,果皮のN含盈の成熟直前の減少割合がカラタチ台より低い. (ii)果実のP吸収急に性差はみられないが,新棺では着果による吸収盈の低下がカラタチ台より著しい.(iii)新 梢の着果によるK吸収盈の低下は他の要素ほど著しくなく,果実内のK吸収量はカラタチ台より著しく少をい.この 傾向は成熟期に向うほど著しい.(iv)新棺内のCa吸収盈は着果によってカラタチ台より著しく影響をうけ低下す るが,果実内の吸収盈には差がない.(可 新梢には全体的にカラタチ台よりMg吸収盈は少なく,また果実の成熟 期前には着果による吸収盈の低下が著しい.果実内には成熟約1カ月前からカラタチ台より多盈に吸収される. 2.台木によるマグネシウム欠乏症発生の難易 ユ・ズ台温州ミカンの旧薬でカラタチ台のそれよりマグネシウム欠乏症が発生しやすい原因について佐藤ら(8)は,直 径39cmの鉢に3年生から5年生まで3カ年間,南台木の温州ミカンを栽培して,土壌へのMgの施用と結実の有 無が南台のマグネシウム欠乏症発生におよぽす影響を調べた..その結果,(i)樹体内(とくに旧秦)のK含盈が高い ためMgの菓への移行が困難であること,(ii)ユズ台のMg要求盈が大きいため葉から果実へ移行するMg盈の多 いことの二つが考えられる,と述べている.ただし,ユズ台温州ミカンにおいて結実によりマグネシウム欠乏症が促 進される理由については明らかにしなかった. 佐藤ら(さ)の実験と筆者らの本実験は樹令・樹勢・鉢の大きさなどが異なり直接比較することはできない.事実,筆 者らの成項ではユズ台はカラタチ台にくらべて薄成りであったにもかかわらず,新杓および果実内のK含盈がカラ クチ台よりユズ台で低く,逆の傾向を示した… また,本実験ではユズ台でも旧薬にマグネシウム欠乏症は認められず, その菓分析成艇もをくて,ユズ台で欠乏症の発生しやすい理由を厳密に検討することはできない..強いて,本成療の 範囲内で考察すると,上記(i)の理由を骨定できないにもかかわらず,(ii)についてはそのまま理由としてあげること ができる‖ すなわち,(i)果実の発育にともなってユズ台の果実のMg吸収盈がとくに果皮でカラタチ台より著しく 増大する..(ii)それを補うために,着果新棉・無着果新棉・旧菓その他の部分からMgが果実へ・移行する. したがって,多盈に結実した場合にはユ・ズ台でカラタチ台より旧菓のMgが欠乏しやすくなるのであろう廿 また, 果実が成熟期に近づいてなお果皮が発育しヤすい環境条件が与えられた場合には,Mgの果実内要求盈が大となり, マグネシウム欠乏症の発生が多くをるのではないかと考える… 本実験は幼木での試験成兢で,ユ・ズ台の新杓および果実内のK含盈はカラクチ台より低かった..−・方,徳島県果 樹試験場の県下のユズ台温州ミカン成木での葉分析調査(¢)ではユズ台の菓内K含意がカラタチ台より高いことが報 告され,また前述の佐藤ら(8)の幼木の成績でも樹体の各部分のK含盈がユズ台で高いい 筆者らが以前発表した砂耕 試験成鮨(1)によると,砂耕液中のNが80ppm以上の場合には薬内K含意がユズ台で高く,80ppm以下ではカラタ チ台で高かった.この成績からみて1ユズ台温州ミカンの菜内K含急がカラタチ台より常に高いとはいえず,この 関係は樹勢や施肥盈によって左右されるとも考えられる.、これらのことから,ユ・ズ台温州ミカンにマグネシウム欠 乏症が発生しやすい原因は,単に樹体内のKとMgの関係にとどまらず,Nを含めたより複雑な関係をも含んでい るとみなければならない. Ⅴ 摘 要 1.鉢植の7年生のユズ台およびカラタチ台温州ミカン樹を用い,新梢(春梢)および果実内の肥料要素吸収盈の 季節的変化を観察した. 2.着果新棺,無着果新梢の1本あたり,および果実1個あたりの乾物重覆らびにそれらの季節的変化は台木によ ってほとんど変らなかった. 3.N,PおよびCaの新梢内の吸収盈は着果により減少した.この傾向はユズ台で著しかったu 果実内のこれら の要素の吸収盈は台木によって変らをかった.着果による新棺のK吸収盈の低下は他の要素ほど著しくなかったが, ユズ台の果実内のK吸収盈はカラタチ台のそれより著しく少なかった巾 ユズ台の新栴のMg吸収盈はカラタチ台よ り少なく,また果実の発育液盛期には着果による吸収盈の低下が著しかった.成熟期に向って果実とくに果皮による Mgの吸収が,ユズ台で大となった.

(9)

127 第24巻第2号(1973) 文 献 (4)佐藤公一・,石原正義,栗原昭夫:農技研報告 E6,161−198(1958). (5)田中彰一;東近農試園芸部将別報告1,48−63 (1960). (6)徳島県果樹試験場:昭和31年皮徳島果就業務報 告,43−49(1958). (1)井上 宏,大沢季義,山下 泉:香川大学農学 部学術報告22(2),92−100(1971). (2)佐藤公一・:園芸全編,166,東京, 養覧堂 (1959). (3)佐藤公一・,石原正義,長谷嘉臣:園芸試験場報 告A2,29−46(1963).

COMPARATIVE PHYSIOLOGY AND ECOLOGY ON

THE GROWTH OF SATSUMA ORANGE TREES ONJUNOS

AND TRIFOLIATE ORANGE ROOTSTOCKS

VnSeasonalChangesontheNutrientAbsorptlOn

intheSpringShootsandFruitsonYoung−Trees

HiroshiINOUE and Osamu TAKASHIMA

SⅦmmary

l.Thee鮎ctsofrootstocksandseasonon N,P,K,CaandMgabsbrptlOninthebearing,

non−bearingsprlngShoots)andfiuitswereobserved)uSlng7−year・−OldSatsumaorangetreeson

Junos(Cilrusjuno5SIEBleXTANAKA)andtrifbliateorange(Ponciru5trybliataRAF・)rootstocks・

2.SeasonalchangeSindryweightofabearing,nOn−bearingshoot,andahitoftreesonJunos

rootstock were almost the same as those of trifoliate orange rootstock throughout the season.

3.AmountsofN,PandCaabsorbedbyanon−bearingShootweremoreabundant thanth−

oseofabearingShootwiththedevelopmentof丘uits”Thistrendwassigni丘cantonJunosthan

ontrifoliateorangerOOtStOCk・However,theiramountsabsor・bedbyafiuitwerenotdifftrent

betwecn trees on the both rootstockslPotassiumabsorption by a shoot wasslightlylowered

with丘uiting,WhilethatofafhitonJunoswasmuchlowerthanontrifo1iateoranger?OtStOCk・

ShootsonJunosabsorbedlowerMgthanthoseoftrifo1iateorangerOOtStOCkIncr.easlngamO−

untofMgina丘uitonJunoswasmorerapidthanthoseoftrifbliate orange rootstock asthe

丘u昭matur・eS.

(昭和47年10月31日 受理)

参照

関連したドキュメント

そこで生物季節観測のうち,植物季節について,冬から春への移行に関係するウメ開花,ソメ

[r]

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7

社会学研究科は、社会学および社会心理学の先端的研究を推進するとともに、博士課