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シャペロニンGroELの機能発現におけるドメイン構造変化の速度論的解析

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Academic year: 2021

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たに ぐち まさ あき 氏       名 谷 口 雅 昭 学 位 の 種 類

博士(工学)

学 位 記 番 号

甲第175号

学位授与年月 日

平成17年 3月18日

学位授与の要件

学位規則第4条第1項該当

学位論文題 目

シヤベロニンGroELの機能発現におけるドメイン構造変

化の速度論的解析

学位論文審査委員  (主査) 河田康志

(副査)

和泉好計  築瀬英司

溝端知宏

学位論 文 の 内 容 の 要 旨

生命の体を構成するタンパク質は,ユニークな立体構造を形成することで様々な機能を発揮す ることができる。新規に合成されたタンパク質がフォールディングする際,正しい立体構造の形 成を導く役割を持つ分子シャペロンと呼ばれるタンパク質が存在することが知られ,タンパク質 の一生に深く関わっていることが明らかになっている。この分子シャペロンの一種である大腸菌 由来のシヤベロニンGroELは,同一サブユニット7個がリング状に並び,更にこのリング2個が 背を向かい合わせた巨大な14量体のダブルリング構造を形成している。GroELは,リング内部 にできる巨大な空間に変性タンパク質分子を結合する。その後,ATPと補助シャベロニンGroES がGroELに結合することにより変性タンパク質はカプセル化され,、安全にフォールディングを完 了させる環境が整えられる。Gi・0乱は、数多くのコンフォメーション変化を引き起こすこと.で様々 なタンパク質のフォールディングを補助していることが知られている。しかしながら,GroELサ ブユニットを構成する3つのドメイン(ェカトリアル,インターメディエイト,アピカル)がど のような動きを見せるのか明らかになっていない。特に、変性タンパク質やGroES と結合する GroELアピカルドメインは,ÅTP結合から加水分解を生じるまでの間に大規模な構造変化を起こ しているとされ,シャベロニンGroELの分子メカニズムにおいて重要な役割を担ってヤ、ると考え られる。 本研究では,シヤベロニンGl・OELのアピカルドメインの構造変化を捉える目的で,蛍光プロー ブとして働くアミノ酸のトリプトファンを遺伝子変異置換により導入した変異体GI・oEL R231W を作成し,ストップトフローを用いて蛍光強度変化を指標とした速度論的な解析を行った。研究 の結果,以下のことが明らかとなった。 1.変異体GroELR231Wの特徴 ー 27 -

(2)

l 変異体GroELR231Wの基礎的な特徴を調べるため,様々な基質タンパク質のリフォールディング 実験を行った結果,非常に厳密にGroESとATPを要求する基質タンパク質めリフォールディング を補助することができ,野生塑GroELと同等の機能を保持していた。また,この変異体GroELは 大腸菌の生育を補助できたことから,メ乃Vル0においても野生型と同様に機能発現することが確認 できた。 2.ATP結合によって引き起こされるGroELの構造変化 蛍光ストップトフローによる測定を行ったところ,変異体GroEL R231WにおいてArPの結合に 伴いアピカルドメインの動きに由来する複数の蛍光強度変化を観測することができた。まず実験 開始直後に,非常に速い蛍光強度の増加(PhaseA),次に蛍光強度の減少(PhaseB),再びゆっく りとした蛍光強度の増加(PhaseC)が見られ,速度論的に3つの反応成分に分けることができた。 特にPhaseBで慮られる構造変化の見かけの反応速度定数は,様々なArP濃度での測定を行った ところ2つのシグモイド性を示すArP濃度依存性が確認された。これはPhaseBが,GroELのリ ング内及びリング問の協同的な構造変化を反映していると考えられた。更にGroES存在下では, GroESの結合を反映した新たな蛍光増加を観測することができた。Phase BとGroES結合による 蛍光増加との関係を調べたところ,両者ともGroELのアピカルドメインという共通の部位におい て起きている反応であると推定されたにも関わらず,互いに干渉し合わない,独立した現象であ ることが判明した。 3.シングルリング変異体Gl・OELSRl/R231Wが示す構造変化 シングルリング変異体GroEL SRlに対してR23‘1Wの蛍光プローブを導入し蛍光ストップトフロ ー解析を行ったところ,シングルリングにおいても同様に3つの反応成分を持つ蛍光強度変化が 観測された。更に,シングルリング変異体においてもGroESとの結合に由来する蛍光強度の増加 を観測することができた。再びPhaseBと-GroESとの結合に由来する蛍光強度の増加との関係を 調べたところ,互いに独立して起きていることが明らかとなり,GroESの結合機構の複雑さを示 唆する実験結果が得られた。興味深いことに,シングルリング変異体においてPhase Bで見られ る構造変化の見かけの速度定数のATP濃度依存性を調べたところ,2つのシグモイド性を示す ATP濃度依存性を保持していることが明らかとなり,このことから,GroELの4次構造を大規模 に変化させても、GroELのアピカルドメインの動きとGroELサブユニット同士の協同性に関する 性質は,ほとんど影響を受けないことが示された。 以上より本研究では、変異体GroELR231Wが,アピカルドメインに生じる様々な動きを捉えるこ とができる有効な変異体であることを示レ,更に非常に複雑なタンパク質であるシャベロニン Gl・OELの機能メカニズムを支える重要な構造変化に関する新たな知見を得ることに成功した。 - 28 -

(3)

論文審査の 結果 の 要 旨

分子シャペロンは生体内の様々な蛋白質の働きを構造的に維持する重要な蛋白質である。シヤ ベロニンGroEL/GroESは,大腸菌内に存在する主要な分子シャペロンである。GroELのアビカル ドメインは,基質蛋白質や補助シャベロニンGroESと結合しATP結合により大規模な構造変化を 起こす。GroELの機能発現機構を理解する上で重要なアピカルドメインの構造変化を捉える目的 で,蛍光プローブとしてトリプトファンを導入した変異体R231Wを作成し,ストップトフローを 用いて速度論解析を行い,以下のことを明らかにした。 1.変異体GroELR231Wの基礎的な特徴を調べるため,様々な基質蛋白質の再生実験を行った結果, 野生型GroELと同等の機能を保持していることが分かった。さらに,この変異体GroELは,大 腸菌の生育を補助できることから,ノ刀yルβにおいても機能発現することが確認できた。 2.蛍光ネトップトフロー実験から,ATPの結合に伴ったアピカルドメインの動きに由来する蛍光 変化(Phase A,BとC)を観測することに成功した。特にPhase Bの速度定数は,2つのシグ モイド性を示すATP濃度依存性が確認され,GroELのリング内及びリング間の協同的な構造変化 を反映していると考えられた。更にGroESの結合を反映した新たな蛍光増加を観測することが できた。PhaseBとGroES結合との関係を調べたところ,互いに干渉し合わない,独立した現象 であることが判明した。 3.シングルリング変異体GroELSRl/R231Wにおいても同様の蛍光変化が観測された。更に,GroES との結合に由来する蛍光増加も観測することができた。興味深いことに,シングルリングにお いてもPhase Bの2つのシグモイド性を示すATP濃度依存性を保持していることが明らかとな った。すなわちGroELの4次構造を大規模に変化させても,GroELのアピカルドメインの動きと サブユニット同士の協同性に関する性質は,ほとんど影響を受けないことが示された。 上記の結果は分子シャペロンの機能解析を行う上で非常に重要でかつ最初の知見である。よっ て,本論文は博士(工学)に値するものと判定する。 一 29 -

参照

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