香川大学農学部学術串良告
落差工の水理学的特性に関する研究
(そ の1) 井 筒 勝 彦 70 ま え が き 水路がある山定のこう配で設置されるとき,土地の急傾斜部分を調整するために段落を設けるが,この段落部紅設 ける構造物を落差エと呼ぶ.広義の落差エにほ急流工(Chutes)を含むが,この研究Klおいては落下水脈(nappe) を形成する場合のみ取り扱うことに・する. simpleな落差工は上流側取付水路(上流水路),落差取静水池,下流側取付水路(下流水路)などから成るが, 今まで多く設計されてせた落差エの中にはこれらの各部にかなりの問題を含んでいることが明らかに・なったので,初 めに.水理学的な基礎実験を行った. また落差エの中にも種々なtypeのものがあり,一例として∴昆野県南安盈郡の鳥川沿岸にある三段落差工の水理模 型実験を応用的研究として行ったが,この研究についてほ次号に発表する予定である. 基礎的研究に.おける水理実験に際して農林省農業土木試験場水理部節二研究室の御好意で同室の設備を使用させて いただき,種々便宜を賜わったことに.対し謝意を表する..また仝研究を通じて.御指導を賜わった内藤利点教授,山本 光男助教授,細野正夫技官に対し深謝するものである. Ⅰ 落差エの基礎的研究 落差エにほ地形や水路の特性などによって種々のtypeのものもあるが,既存の設計基準によって設糾された完全 な通気落下水脈を有する落差工に,おいて−はnappeの水平到達距離が設計値よりはるかに大きく,静水池内のenergy の減勢も不十分であるため十分機能を果\していないものが多い. これらの問題を究明するために.上流水路,nappe,静水池について,基礎的な水理実験を行った。上流水路に・おい て:ほ落口水深を中心に,nappeに.おい{:はnappeの形状やenergyについて,静水池において−はnappe噴流の減勢効 果に.ついて実験と解析を行った. (1)実 験 装 置 実験装置は詔盛及び整流部,鋼製取付水路,可変こう配水路,静水槽,排水路等から成り,可変こう配水路は鋼製 で片面ガラス張り,幅占0の朋,高さ占ロc椚, 長さ108眈沼であり,こう配は0から約 1/50(落ロにおいで約200タ乃∽の範囲)ま で変化させ得る. 可変こう配水路内に設けた消波装置は板 を水面に接するようにし,水位の変動に・応 じて調節も可能である. 上流水路の水深測定はpoint gaugeを使 用し,落口近傍の水面追跡はpoint gauge を台木に取り付け,台木を移動しつつ測定 した. 上流水路における流速測定はpitot管を 用いて測定した. nappe形状測定には900の範囲で測定方 向を変化させ得る農土試型斜面用point 下ig1 実 験 装 置gaugeを使用した.nappeの流速水頭やnappe噴流の減勢状態の観測紅は可変方向型pitot管を斜面用point gauge に.setして行った. 実験の条件として上流水路こう配は1/700,1/1000,1/2000の.5種類,流盟はるOJ/5βC,50J/ぶgC,15J/ざβC,一部 5J/ざβCの5∼4種類を与えた..上流水路の粗皮係数ほ0・012であった. (2)上 流 水 路 a)溝 口 水 深 従来からの設計基準による港口水深は限界水深と等し いとしているが,岩崎1),菊間2)の実験の結果,落口水 深は限界水深よりかなり小さい値であることが確かめら れている.この関係を確認するために.港口水深の測定を 行った.その結果はFigい2のように.なり次の関係を得 た小 m 6 4 3 2 1
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10em
7 5 ノわ=0い724加 カ〃;落口水深 カc;限界水深 従って落口の平均流速ほ限界流速より58%も速くなるこ とになるが,実際に.nappeほ限界流速で計辞したよりも 約40%前後遠くまで到達している. また落口水深と単位幅当りの流患qの関係ほ(1)式と流こ れの連続の式などから曾=1,148J音如÷
・…(2) 4 となる. × 1/700 Figい2 落口水深と限界水深 ● 1/100q 0 1/200d との関係 2u エ=∵7、/′芯 ̄‘
b)限界水深の起きる場所 鉛直段落紅おいて:上流水路の流れが常流であれば,明 らかに限界水深は落□より上流側に存在する・ⅤいT−、仔 Chow$)は港口より5加∼4カc上流に限界水深が起きる と述べているが,本実験の水面形追跡の結果,Fig,5を 得た”この図の横軸のLは落口よりCOntrOIsectionまで の距離である e)落口近傍の流速分布とemergy 落口近傍の鉛直流速分布をpitot管を用いて追跡した 結果,Fig.4を得た..測点a,d,e,f,g,hの落口 からの距離は各々アロc椚,40c沼,50¢∽, 20c研,10¢刑,4c研であるが,落口紅近ず 5 10 15 20 25cm エ ×1/700 Figl5 限界水深とその起る場所:壬莞333 くに従い低部の流速増加が著しく,るOJ/5βC の場合は特にそれが顕著に表われ平行流に おける流速分布曲線と比較すれば非常な差 異が見受けられる. また,流量一定の水路におけるSpeCific energyはCriticalsectionで最小となるこ とほよく知られている.これを落口附近に 適用するとCriticalsectionから落ロに近ず くに従って徐々にspecific energyは増加 することに.なる(このとき落口のSpeCific ene工gyは1.る8加となる)が,これは明ら 流 速 C†%ec Fig..4 落口近傍の流速分布香川大学農学部学術報告 72 かに不合理である.すなわち,落口附近の流れほ平行流ではなく流線は鉛適面に湾曲し,このような場合は水圧ほ静 水圧分布をしていないことが認められている4).本実験の場合はCOnVeX CuIVeであるため,圧力水頭は静水圧よ り小さい値を示した.従って流速水頭が増加しても圧力水頭は減少するので,落口のSPeCific,energyは上流側の SpeCific energyより増加することはない. (3)N8ppe 8)Nappeの形状観測 nappeの形状が果して従来から用いられて来た放物体の運動方程式と・−・致するかどうかを確認するために,naPpe の形状観測を行た.i面nappe観測には通常の水面測定用point gat]geの針を長くして,下面nappeには:大型のhook を作成しで各々斜面用point gaugeに取り付けて使用した..上面nappeと下面nappeを図示してその中心線を中心 nappeとした 観測点ほrlaPpeの中央とそれから左右15cmの点 の5点を選んだ b)Nappeの形状実験式 nappeの形状観測値を無次元化して両対数グラフ にプロットする(Fig.8∼Fig・・10)と直線状を呈 した.その図から得た式は次の通りである. 上面nappeの形状実験式 586牒 下面nappeの形状実験式 06 , 岩 中心nappeの形状実験式 …即
意=1,477(惹+O1242)
′5) Fig。5 Nappeの縦断図(60Z/SeC) Figl7 Nappeの縦断図(151/SeC) Fig一占 Nappeの縦断図(5ロJ/5gC).4 5 6 8
1
▲U ︵U ■U O
% 3 456 81000 1 0−2 03040506081 2
%
1 102 030405060。81 2 3 4 56 810 ラ有Fig”8 上面nappeの形状 Figい9 下面nappeの形状
X;naPpeのⅩ軸座標(下流方向Plus) γ;nappeのy軸座標(重力方向♪/〝∫) H;Criticalsectionに.おけるSPeCific energy Fig・8∼Fig.10に.おける実験値ほ.γ/茸く0.5,.ガ/好く1…0 の範囲で偏差が大きいが,これほ対数グラフのため誤差 が拡大されて表現されているためである. る)放物体の運動方程式の展開 nappeの水平到達距離を求めるために従来から使用さ れてきた放物体の運動方程式は 2 3 4 56 810 g;重力の加速度 g;落下時間 紺;落ロに.おける平均流速(従来は〝(・を用いていた) である (61式と(7)式からfを消去すれば ユ〟 Fig..70 中心nappeの形状
山−
=ガーカ0=好一0い48引曾=0517ガ 18〉式に(9)式を代入して無次元化すれば 0500 −㌃=1458し㌃ト01242) となる”上式ほ実験式と比較するために.展開した中心nappeの形状理論式である d)実験式と理論式との比較 実験式(5)と理論式㈹は同じ形に展開することができたが,係数と指数においてわずかに差異が認められる。 理論式はある物体が水平方向に少¢なる速度で発射されたときの運動方程式であり,空気抵抗などを全く無視した 理想状態で導かれたぃ しかし,nappeは物体ではなく流体であり,落ロの流速分布も均一・ではなく,落口附近の水面香川大学農学部学術報告 74 形や流速分布を考慮した落ロの流線は水平方向ではなく,ある僻角(α)で飛び出している.このことはnappeの縦 断図(Fig.5∼Fig小7)を参照すれば明らかなように・,理論式の中心nappeは落□の近くでは実測のnappeより上 把出ている. また,初速慶び∂なる物体が府角(α)で発射されたとき(6)式と(7)式は .ガ=別婚以柑α ・γ=ぴ♂gS如+gヂ2 となり,ニ式から才を消去すれば g∬2 γ=.別柏朋α+ 2が02c¢g2α となる・α=0のとき(水平方向に翻されたとき),(13)式は・γ=器となり,0くa<900のとき,・ガfα碩>0, _
撃L>阜空
となる.すなわち,α=0のときと0くαく90◇のときと比較すれは,水平距離方の如何なる値 2机渚“s2α′ 2ぴ♂2 に対してこも落下距離.γは□<αく900のときの方が大に.なる.換言すれば,水平方向で発射された場合と僻角(α)で 発射された場合の二つの放物体の軌跡は交差することほありえない.しかし,Fig.5∼Fig7に示したように中心 nappeはある点で交差する.これほ色々なfactoI■が考えられるが,理論式の初速皮相ほ平均流速であり,式に紺を 代入することは薄口断面の総てこの点紅おいてニ〃〃なる流速を持つこ.とを意味する しかし,実際の落口の流速分布は均一Lではなく,nappeの形状を決定する中央部の流速は平均流速よりかなり速 いり この影響が現われているものと考察される. e)Nappeの突込み角 Fig.11のように、βはnappeが水中に.質入するときの角度であるが, ♂ほ減勢効果紅かなりの影響を及ぼサー.例えば突込み角が小さいとき ほ減勢効果が少なく,下流水路の流れを不安定に.する原因になるとき もある..しかし,♂は落下距離や流畠などの関数であるため複雑であ るが,】円g1腋示したよう紅才α〝β=意であるから次式によって容 易に瀞出できる. (5)式を微分すると …3 窓=0呵昔) (1亜 となる f)Nappeのenergy・Ⅰ鵬S nappeの上面と下面は共紅大気把接しているため,Bernou11iの定 理の圧力水頭の項を無視できると仮定すれば,Be工nOl111iの定理は 〝 Fig.11nappeの突込み角∬=一十Z
となるから,基準線からの距離Zとその位暦の流速水頭さえ測定すれは,nappeのenergylineを描くことは可能に なる. 前節で述べたように.nappeほ位置に.よって角度は変化するため,方向を自由に・変えることができる可変方向pitot 管を使用して流速を測定した” nappeの流速が2.5m/SeC∼5・5m/SeCに・達するとpitot管の周辺に.空気連行が激しくなり,nappeの厚さも浮くなる ためわずかのnappeの振動にもpitot管は空気中に露出し計測は困難に.なった 計測の結果,energylineは1爪5hcの附近ではぼ水平となったため,nappeのenergy−lossは無視しでも差し支え ない(Fig.5∼Fig”7参照)。しかし,nappeが長い空間を落下するとき,nappeは空気を大畠に・含み,更に,進むと水 滴化するが,このような場合にはもちろんeneIgy・lossは無視できない小 以上の結果,(5)式と摘式からnappeの流速を界出することほ容易である(4)静水中のnappe二次元噴流の減勢効果 落差エの静水池常おける水深決定の客観的資料を得るために, nappeが静水中に、入ってからの減勢状態を究明した. 上流水路こう配り700,1/1000,1/2DOO,流盈占OJ/5♂C,50 J/∫eC,15J/ざβC・,落下距離5種類,計27種類の条件の下で実験 を行った. 静水中に入った噴流は周囲の静水と混合して段階的に減勢さ れ拡散してゆく.nappe噴流の場合に.おいても理恵的な場合に 近い結果が得られた.理想噴流の四領域ほFig..12のよう紅な るが,本実験の範囲では」)zoneは顕著に.現われなかった.A ZOneの中心部ははとんど減勢されない状態であり,C zoneに 入って−から初めて:明確な減勢効果を観測することが出来る.B ZOneほA zoneとC zoneとの遷移領域と考えられるu 従っ
これ以下はC zoneに・おける減勢効果について考えることにし た 二次元理想噴流の減勢に/ついてはTollmienが次のような公 式を提唱しているn Tollmien公式 尤 Fig.12 理想噴流の四領域
08 0 6 0 4 0 30 20 10 8 65 4 3 2 32 1
∬ 少〝Zα.ガ ハ’−l(;.. ぴ∽α.方;噴流中心線上の速度 叩;噴流が静水中に、入る直前の速度 ∬;噴流方向に沿った水面よりの距離 び∂;噴出幅 ∬;定数 ㈹式を平方すると と,OJ〃〝∫ が2∽α∬ 2g g2 はⅥ が02 ぴ〃2  ̄ ∬ 2g 頂 となり,ぴ2椚α,ガ/2g,少∂2/ggは各々む沼α・方,ぴ∂の速度 水頭であり, ぴ2∽α∬/2gん2/2g をy,∬/ゐを又と おくと(y,ズは共に無次元盟である) ガ Fig.15 ニ次元噴流の減勢 となる‖ yを縦軸,ズを横軸にh取った両対数グラフはFig…15となり,はぼ直線状を呈した付 この直線の式ほ となり,麒値を求めると∬=1・90となり,(16)式に代入すると 二∴− −. となる. ニ次元噴流の減勢についての比較実験式を上げると安芸(周一・)のものがある.、 この式は本実験値の上限となる−7る 香川大学農学部学術報告 参 考 文 献 (4)Ⅴ.T..CHOW:OPEN−CI王ANNELHYDRAULICS, 28−54,New York,McGRAW・HILL(1959) (5)岩崎敏夫,千秋信一・:静水申紅落下する水流の実 験,土木学会誌,38−6,155■7−540(1955) (6)佐藤清一・,細井正延:噴流に関する研究(1),土木 研究所報告6ト4,(1951) (1)岩崎敏夫:段落水流の水理現象紅関する実験的考 察,土木学会誌,38・膿6,241−2舶(1955) (2)菊間武男:落差工紅関する水理模型実験報告,≡屠 大学農業土木研究報告,4,(195■7) (3)Ⅴ,.T.CHOW:OPEN−CHANNEL HYDRAULICS, 45,New York,McGRAW−HILL(1959)
Studies on the hydraulic characteristics of the drop struCtureS
・卜
KatsuhikoIzursu
Sllmmary For satisfactory performance,the structures must drop the water within their own confines
and dischargeit downstreanin sucha manner as tocauseminimum oflocallyintesified erosion.Many
types of drop$truCtureS have been constructed for variety of topographyand chaIaCteristics of chazIZlels
Butthey have not functioned well,aSthe droplengthin practiceis muchlonger thanin the design
and the energy of nabbe does not dissipate enoughin the stilling basin,Making hydraulic experiments
Of the drop structures,the authorinvestigated these problems
In the first place,heinvestigated the hydraulic characteristics of the dI・Op StruCtureS With the simble nabbC,Which was aerated at theback ofit,aS a fundam占ntalstudy、:Ee confirmed that the depthof the drop wallsection was not equalto the criticaldepth and that the energy・lossof the na如ecould been neglected.Then he obtained the e如erimentalformula of the shapes of the naPbe,aS follows
O 581
一意=1朋(÷」一0・242)
and tried to co皿PaIeit with tIle theoreticalformula.Itis
0500
意=1‖458(昔−+0い242)
DiffeIentiating(1),the fo1lowing equation was obtained,.Itis
076S
窓=01批(意)
Whichistocalculatethe angle oithe nabbeeasilywhenit just entersintothe stilling basin,.And then he studied the energy−loss of the slユbmeIged nappein the second dimension