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空間的自己相関モデルにおける距離行列のべき数の推定と地価決定要因分析への応用

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Academic year: 2021

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空間的自己相関モデルにおける距離行列のべき数の推定と地価決定要因分析への応用

Estimation of the exponent of the distance matrix in a spatial autocorrelation model, and application to analysis of land prices

宮崎 公策 Kosaku Miyazaki

指導教官 樋口 洋一郎 Yoichiro Higuchi

The spatial weight matrix in the spatial autocorrelation model reflects the spatial interaction structure. In case spatial influence is based on the distance between the points, and the spatial weight matrix is composed of the exponent of the distance, the exponent indicates the strength of influence of neighboring points. This study aims to estimate the exponent of the distance in the weight matrix using Tokyo 23 ward land prices from 1984 to 2004, and to explain determinants of land prices with attention to the transition of spatial interaction structure and spatial influence.

Key Words: 空間的自己相関、空間的相互作用、空間波及、空間構造、地価

Spatial autocorrelation, Spatial interaction, Spatial influence, Spatial structure, Land prices

1.研究の背景と目的 (1)研究の背景 日本の地価は戦後経済成長とともに右肩上がりで上昇を 続け1980 年代から 90 年代初頭のバブル期に高騰した。こ の地価高騰はまず東京の都心部商業地で生じ、商業地から 住宅地へ、都心部から郊外へと波及していく様子が顕著に みられた。 しかしバブル崩壊以降地価は下落を続け、全国平均では 13 年連続で下落している。このような長期にわたる地価の 下落は過去に例がない。 だが近年では新たな一面もみられる。ここ数年東京都区 部やその周辺で下げ止まりの傾向があるものの、依然とし て下落が続いている地点は多く、地価の二極化、多極化が 進んでいる。これは近年ではバブル期のような地価の上昇 が期待できず、利便性や収益性といった個々の土地の価値 に基づいて地価を決定する傾向が強まったからだと考えら れる。 このような状況からみると、バブル崩壊直後の下落と最 近の下落の動向ではその特徴や要因が異なると考えられる。 バブル崩壊直後の下落は、ファンダメンタルズを超えて高 騰した地価が、利用価値を反映した適正な価格に戻る過程 で起きている面が強かった。しかし、近年の地価下落は社 会経済情勢による土地の需要構造の変化という構造的な面 が強くなっていると考えられる。 (2)研究の目的 バブル期の地価の波及から、地価の形成要因として空間 的な影響の存在が考慮される。しかし、バブル崩壊以降の 下落局面でも空間的な波及は存在するのかという疑問が生 じる。そこで地価の高騰が始まる1984 年から下落局面に至 る 2004 年までの地価を空間的な影響を推定することがで きる空間的自己相関モデルを用いて分析し、地価決定要因 とその変化を考察することが研究の目的の1点目である。 一方、空間的自己相関モデルでは空間的な影響の受け方 を表す空間構造を空間重み付け行列で表すが、重み付け行 列の構造によって推定結果が左右されるために適切な重み 付け行列を設定することが重要となる。しかし空間構造は 観測できない未知のものであるから空間構造の恣意性を排 除することができないという問題点がある。 空間分析において、多くの場合空間的な影響は距離との 関連が強いということが確認される。この観点から空間構 造が地点間距離に基づき、重み付け行列が地点間距離のべ き乗から構成されているとすると、そのべき数は近隣地点 の影響の重要性を規定することになる。そこで空間的自己 相関モデルの推定において、重み付け行列のべき数を直接 推定することで空間構造を探り出す手法を開発して地価分 析に応用する。そして地価における空間構造の変化を考察 し、同時にモデルの推定精度と利用価値を向上させること を研究の目的の2点目とする。 2. 既存研究の整理 (1)地価の空間的連関に関する研究 青山・廣瀬1)は対前年変動率などを空間波及要因として重 回帰モデルで推定し、空間波及の存在を実証した。内田・

(2)

[ ] ( ) ( ij) ij f d =⎡f d⎦ ⎣ ⎦=⎡dα⎤=Dα 安藤2)は地価に自然科学における熱伝導の拡散方程式を当 てはめて波及現象を捉えようとした。これに対し、肥田野 ら3)、高塚・樋口4)は青山5)によって展開された地価の空間 連関理論を踏まえ、空間的自己相関モデルによる推定を支

持している。またTakatsuka and Higuchi6)は地価の空間波

及を理論的に展開した。 重み付け行列は次のようにして作成する。 Ⅰ.元になる行列要素に関数 f を作用させる。 Ⅱ.対角成分が0 であるため、単位行列を加えて逆数をと り、単位行列を引いて対角成分を0 に戻す。 Ⅲ.Ⅱの行和をとり、それを対角成分に並べた行列の逆行 列をとる。 (2)空間的自己相関に関する研究 Ⅳ.ⅡにⅢを前から掛けて行和を1 にする。 Dow et al7)はシミュレーションにより最尤法のほうが最 小二乗法よりも望ましい推定量が得られることを示した。 また、Leenders8)は空間的自己相関モデルにおける重み付 け行列の重要性を主張している。 (2)推定方法 バイアスを避けるため推定には最尤法を用いる。重み付 け行列をべき乗のパラメータの関数としてみると、モデル は次のように表現できる。 3.空間的自己相関モデル ( ) Y =ρ αW Y+Xβ ε+ , ε~N(0,σ2I) (1)モデルと重み付け行列の作成 空間的自己相関モデルは通常の重回帰モデルに空間的自 己相関項を加えたモデルである。 この式から得られる対数尤度関数を各パラメータに関して 偏微分すると、説明変数のパラメータβ と誤差分散σ の22 つのパラメータは YWY+Xβ ε+

{

}

' 1 ' ˆ ( ) ( ) n X X X I W Y β =ρ Y:被説明変数(N× )1 Nはサンプル数 α

{

}

{

}

' 2 1 ' ' 1 ' ˆ ( ( ) ( ) ( ) ) n n n Y I W I X X X X n I W Y σ ρ α ρ α − ⎡ ⎤ = − X:説明変数(定数項を含む)(N×k) k は説明変数の数 W :空間重み付け行列(N×N) となり、空間的自己相関パラメータ

ρ

と重み付け行列のべ き乗のパラメータ

α

に帰着する。これらを対数尤度関数に 代入することで、空間的自己相関パラメータ

ρ

と重み付け 行列のべき乗のパラメータ

α

だけの集約対数尤度関数を作 る。得られた

ρ

α

の推定値から

β

σ

2の推定量を計算 することができる。 ρ :空間的自己相関パラメータ(スカラー) β :説明変数パラメータ(k×1) ε :撹乱項(N× )1 重み付け行列の(

i j

,

)成分は地点

j

の値が地点

i

の値に 影響を及ぼす割合である。対角成分は0 であり、行方向の 和は1 となるように確率行列化する。 (3)推定量の性質 ここで、重み付け行列が地点間距離のべき乗の逆数から 構成されているとする。このとき、べき数が大きい場合で は重み付け行列の行方向に関して近隣地点の要素が遠隔地 点の要素よりも相対的に高い値となるため、近隣地点の影 響がより強いということになる。したがって、重み付け行 列のべき数は空間的な影響における近隣地点の重要性を規 定することになる。

β

σ

2の推定量はそれぞれ不偏推定量、漸近的不偏推 定量であることが理論的に示される。

ρ α

,

の推定量に関し てはその性質を理論的に示すことが難しいため、シミュレ ーションを行い統計量の性質を確認する。シミュレーショ ンは次のように設定した。 Ⅰ.真のモデルをY =ρ αW( )Y+Xβ ε+ とおく。 Ⅱ . サ ン プ ル 数 に 対 し て , をそれぞれランダムに1回ずつ発生 させ、説明変数データとする。 N ) 1 ~ (100, 10) X N 2 ~ (100, 10 X N 地点間距離行列をDとし、行列要素に作用する関数をf とすると、重み付け行列は次のように定式化することがで きる。

(

)

{

}

(

)

{

1 / ( ) / ( ) n n n n n n W dg E f D I I e E f D I I − ⎡ ⎤ = + − + − n

}

Ⅲ.サンプル数Nに対してε~N(0, 1)を1回発生させ、撹 乱項とする。 Ⅳ . パ ラ メ ー タ を ρ =0.5 ,α =2.0 , β =0 1.0 ( 定 数 項),β =1 1.0,β =2 1.0と設定し、Ⅱ、Ⅲを用いてⅠの モデルから Y ={I−ρ αW( )} (−1 Xβ ε+ )により Y を算 出し、被説明変数データとする。 ここで、Inは対角要素が1 でその他の要素が 0 の単位行列 、E はすべての要素が1 の行列(N N en すべ ての要素が1 の列ベクトル(N 1

dg

ベクトルを行列の対 角要素に並べるオペレータ、

/

は行列の要素ごとの商をと る演算記号である。本研究では関数 (N×N) n × )、 は は )、 × f はべき乗の関数とし、 べき数

α

をパラメータとする。Dの(

i

,

j

)要素をd 、ij

[ ]

Ⅴ.ρ β α σ を最尤法で推定する。 , , , 2 Ⅵ.Ⅲ~Ⅴを500 回繰り返し、それらの平均値と標準偏差、 推定値が設定値から一定範囲内に含まれた回数を求め る。 で 要素ごとに作用することを表すと、

(3)

ここで、サンプルが観測される空間は正方形の格子状の 地域を想定し、観測地点は格子状の交点に規則正しく並ん でいるものとする。重み付け行列は地点間距離行列をもと に距離の2乗の逆数として作成した。 表-1 ρ とα のシミュレーション結果 ρ α 平均 標準偏差 誤差<0.2 誤差<0.1 平均 標準偏差 誤差<0.5 誤差<0.1 N=25 0.476 0.123 441 254 2.292 0.669 323 81 N=36 0.495 0.112 466 300 2.131 0.484 371 76 N=49 0.472 0.121 436 292 2.228 0.565 356 79 N=64 0.464 0.114 450 296 2.267 0.568 359 95 N=81 0.474 0.099 484 317 2.164 0.386 404 101 N=100 0.461 0.119 445 263 2.196 0.421 404 101 N=121 0.481 0.094 484 342 2.116 0.308 444 131 N=144 0.491 0.074 492 427 2.072 0.258 469 142 N=169 0.492 0.058 500 456 2.039 0.188 496 196 サンプル数が増加すると、ρ とα の推定値はそれぞれの 設定値0.5、2.0 の近傍になる回数が多くなり、標準偏差が 0 に近づく傾向が読み取れる。したがってρ とα の推定量 はともに一致性をもっていると考えられる。また、α の平 均値は設定値 2.0 に近づいているため、漸近的不偏性をも っていることも予想される。 4.地価決定要因分析 (1)使用データ 1984~2004 年の地価公示において東京都区部で地価が 継続して調査された商業地52、住宅地 252 地点を分析に用 いる。 被説明変数は地価(対数変換)であり、説明変数は最寄 り駅までの距離、最寄り駅から都心までの時間、都市ガス の有無、下水道の有無、地積、容積率、前面道路幅員、人 口密度、第2次産業従業者密度、第3次産業従業者密度を 用いた。 また、このサンプルでは商業地では全期間の全地点でガ ス、96 年以降の全地点で下水道、住宅地では 98 年以降の 全地点で下水道が完備されているため、該当する年で各変 数を除いて推定を行う。 (2)推定モデル モデルの有用性を検証するため重回帰モデル、空間的自 己相関モデル(重み付け行列所与)、べき数推定空間的自己 相関モデルで推定を行う。重み付け行列を所与としたモデ ルではその構成は距離の逆数、その2乗、3乗の3通りを 試した。 (3)商業地の推定 重回帰モデルの決定係数は全期間でおよそ 0.9 であり、 商業地では設定した属性要因の変数によって大部分が説明 できている。空間的自己相関モデルとべき数推定空間的自 己相関モデルの FIT(決定係数に相当する値)は、重回帰 モデルの決定係数よりわずかに上昇している。 それぞれのモデルのパラメータの符号と有意性はほぼ一 致しているため、以下ではべき数推定空間的自己相関モデ ルの推定結果をもとに考察する。 空間要因のρ とα に注目すると、1984~1987 年までと、 2000~2004 年までで有意なパラメータがみられるが、地価 のピークに差し掛かる 1988 年からその後の急落~低迷期 である 1999 年までは一貫して有意でないという結果であ った。商業地ではバブル期の地価高騰時に都心から郊外へ 地価が波及する過程で、属性要因の説明変数で測定可能な ファンダメンタルズ以外の空間的な影響が存在した。これ は適正な地価の水準から乖離したいわゆるバブルに相当す るものと考えられ、地価の上昇期待がさらに周辺の地価の 上昇期待を生んでいった波及構造を示している。1987 年に ρ の値は大きくなりα の値は小さくなっているが、これは 空間的な波及の影響が強まり、かつ広い範囲まで及んでい たことを示している。 しかしこのような構造が浸透すると、そもそも適正なフ ァンダメンタルズではなかった空間的な波及要因が土地の 売却益や賃貸料の上昇を考慮すると収益を生み出すファン ダメンタルズとして認識され、ファンダメンタルズ自体の 価値が増加する。この結果、1988 年ごろからは空間要因は 影響を潜め、変わってファンダメンタルズ自体が上昇する 地価を形成することになる。バブル崩壊後の下落局面では 表-2 商業地べき数推定モデル推定結果 パラメータ 寄与率 年 ρ α 駅距 都心 下水 地積 容積 道路 人口 2産 3産 空間 属性 FIT 1984 0.272 2.130

- -

+

-

+

- - -

+ 0.190 0.7130.903 1985 0.261 2.260

- -

+

-

+

- - -

+ 0.192 0.7200.912 1986 0.245 2.270

- -

+

-

+

- - -

+ 0.180 0.7340.914 1987 0.630 0.871

- -

+

-

+

- - -

+ 0.132 0.7690.901 1988 0.486 0.847

- -

+

-

+

- - -

+ 0.087 0.8340.921 1989 0.344 0.949

- -

+

-

+ +

- -

+ 0.074 0.8430.917 1990 0.292 1.045

- -

+

-

+

- - -

+ 0.074 0.8460.921 1991 0.161 1.866

- -

+

-

+

- - -

+ 0.092 0.8210.913 1992 0.117 1.936

- -

+

-

+

- - -

+ 0.069 0.8470.917 1993 0.082 2.069

- -

+

-

+

- - -

+ 0.052 0.8740.925 1994 -0.120 0.878

- -

+

-

+

- - -

+ -0.020 0.9610.940 1995 0.063 2.204

- -

+

-

+ +

- -

+ 0.042 0.8980.940 1996 0.062 2.040

- -

NA

-

+ +

- -

+ 0.040 0.8990.939 1997 0.075 2.178

- -

NA

-

+ +

- -

+ 0.051 0.8840.935 1998 0.091 2.299

- -

NA

-

+ +

- -

+ 0.065 0.8650.930 1999 0.105 2.335

- -

NA

-

+ +

- -

+ 0.077 0.8480.925 2000 0.132 2.370

- -

NA

-

+ +

- -

+ 0.098 0.8210.920 2001 0.170 2.471

-

+ NA

-

+ +

- -

+ 0.131 0.7840.915 2002 0.220 2.564

-

+ NA

-

+ +

-

+ + 0.173 0.7350.908 2003 0.268 2.653

-

+ NA

-

+ +

-

+ + 0.215 0.6850.900 2004 0.314 2.721

-

+ NA

-

+ +

-

+ + 0.253 0.6380.891 +、-はパラメータの符号 :5%水準有意

(4)

(4)住宅地の推定 地価の上昇が期待できなくなり、空間的な影響はほとんど ない。この傾向は日本経済が長期低迷する90 年代一貫して 続いている。 重回帰モデルの決定係数はすべての年でおよそ0.65 であ る。住宅地は商業地と比較して属性要因で説明できる割合 が小さく、属性要因の説明変数では住宅地の地価決定要因 を十分に説明できない。しかし、空間要因を加えた空間的 自己相関モデルとべき数推定空間的自己相関モデルでは FIT は 0.85 程度まで上昇する。 しかし2000 年以降は再び空間要因が有意となり始め、新 たな傾向が見られる。このころから東京都の地価では二極 化が進み、景気の回復とともに都心部などで土地取引が活 性化する状況がみられる。最近ではオフィス街に商業施設 が立地し、耐震性や防災性に優れて高度なIT 設備が利用で きる良質なビルに対するニーズが増加している。また、賃 料の下落に伴って同じコストでより条件の良いオフィスを 借りられるようになったため、企業が顧客への近接性や快 適な環境を求めて立地を変えられるようになった。このよ うな需要の変化が空間的に近いところに利便性や収益性の 高い土地を生み出し、推定結果の空間要因に影響したと考 えられる。近年では

ρ

α

の値がともに大きくなっている が、これは空間的影響の及ぶ範囲がより狭くなり、その狭 い範囲では相関が大きくなっていることを示している。 商業地同様、それぞれのモデルにおける属性要因のパラ メータの符号と有意性はほぼ一致しているため、以下では べき数推定空間的自己相関モデルの推定結果をもとに考察 する。 空間要因はρ ,α ともに全期間で有意であり、住宅地では バブル期をはさんで空間的な影響が一貫して存在し、FIT の上昇や寄与率からも地価の決定に大きく影響しているこ とがわかる。したがって、住宅地では常に周囲の地点の地 価を参照して地価が決定されるというメカニズムが働いて いるといえる。また、α の推定値は 1.5~2.3 の範囲で安定 しており相対的に商業地よりも小さいから、住宅地では広 い範囲の地点の地価まで参照していることになる。商業地 では利便性や収益性はその土地の属性や周辺の環境によっ て大きく左右されるため、距離が離れていて共通性のない 地点の地価はあまり参考にされなかった。一方住宅地では 利便性は考慮されるだろうが居住目的であるなら収益性は あまり考慮されず、収益還元的な価値はあまり考えられな その他のパラメータをみると、容積率と第3 次産業従業者 密度がほぼ全期間で正に有意である。容積率は土地の高度 利用、第3 次産業は都市の活性化による集客力の増加が見 込まれともに収益性につながると考えられるから、正の影 響は妥当である。最寄り駅までの距離は負に有意な期間が みられるが有意でない期間が多く、都心までの時間や前面 道路幅員も有意ではない。商業地ではこれらの要因以外の ほうが重視されることがわかる。 表-3 住宅地べき数推定モデル推定結果 パラメータ 寄与率 年 ρ α 駅距 都心 ガス 下水 地積 容積 道路 人口 2産 3産 空間 属性 FIT 1984 0.875 2.027

- -

+

-

+ + + +

-

+ 0.577 0.2790.856 1985 0.865 2.076

- -

+

-

+ + + +

-

+ 0.584 0.2770.860 1986 0.879 2.151

- -

+ + +

-

+ +

-

+ 0.627 0.2510.878 1987 0.915 2.058

- -

+ + +

-

+ +

-

+ 0.690 0.221 0.911 1988 0.897 1.758

- -

+ + +

-

+ +

-

+ 0.543 0.3250.868 1989 0.901 1.706

- -

+ + + + +

- -

+ 0.497 0.3590.855 1990 0.935 1.647

- -

+ + + + +

- -

+ 0.485 0.3610.846 1991 0.934 1.660

- -

+ + + + +

- -

+ 0.472 0.3660.838 1992 0.919 1.671

- -

+ + + + +

- -

+ 0.439 0.3890.828 1993 0.868 1.743

- -

+ + + + +

- -

+ 0.417 0.4100.827 1994 0.846 1.727

- -

+ + + + +

- -

+ 0.390 0.4220.812 1995 0.901 1.660

- -

+ + + + +

- -

+ 0.413 0.3990.813 1996 0.916 1.645

- -

+ + + + +

- -

+ 0.427 0.3870.814 1997 0.931 1.651

- -

+

-

+ + +

- -

+ 0.451 0.3670.818 1998 0.946 1.650

- -

+ NA + + +

- -

+ 0.481 0.3460.826 1999 0.961 1.697

- -

+ NA + + +

- -

+ 0.538 0.3140.851 2000 0.964 1.758

- -

+ NA + + +

- -

+ 0.583 0.2890.872 2001 0.952 1.857

- -

+ NA + + +

- -

+ 0.614 0.2710.885 2002 0.949 1.921

- -

+ NA + + +

- -

+ 0.638 0.2540.892 2003 0.948 1.950

- -

+ NA + + + +

-

+ 0.649 0.2440.894 2004 0.946 1.963

- -

+ NA + + + +

-

+ 0.654 0.2400.894 -1 0 1 2 3 4 5 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 rho alpha 図-1 商業地空間要因のパラメータ -20% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 残差 属性要因 空間要因 図-2 商業地の要因別寄与率 +、-はパラメータの符号 :5%水準有意

(5)

b r W :商業地から住宅地への重み付け行列(Nb×Nr) い。したがって地価決定においてはファンダメンタルズの 評価よりも周辺の地価を参照して地価を決定するというプ ロセスがとられやすいと考えられる。 r b W :住宅地から商業地への重み付け行列(Nr×Nbb N は商業地のサンプル数、Nrは住宅地のサンプル数 b X :商業地の説明変数 Xr:住宅地の説明変数 その他の変数では、最寄り駅までの距離、都心までの時 間、地積、前面道路幅員、第3 次産業従業者密度が全期間 で有意であり、商業地とは影響する要因に違いがあること がわかる。全体的にみると、住宅地の地価決定要因は商業 地と比較して安定しており、特に空間要因が大きく影響し ていることがわかる。 b β :商業地の説明変数パラメータ r β :住宅地の説明変数パラメータ このモデルでは、商業地、住宅地それぞれの空間的自己 相関パラメータと、商業地から住宅地、住宅地から商業地 への波及を表す空間的パラメータの計4つの空間的パラメ ータがある。これに伴い空間波及構造を表す重み付け行列 も、商業地、住宅地それぞれの重み付け行列と、商業地か ら住宅地、住宅地から商業地への空間波及構造を表す重み 付け行列の計4つを作成する。 0 0.5 1 1.5 2 2.5 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 rho alpha 図-3 住宅地空間要因のパラメータ 用途間波及を考慮したモデルは同時決定であるために本 来なら商業地と住宅地を同時方程式として推定すべきであ るが、推定を簡単にするためにWrb rY ,Wbr bYXと同じ 説明変数、ρrbbrをそれらのパラメータとみなして商 業地、住宅地を別々に推定した。ここで、 , のべ き数は前章までの推定結果からあらかじめ2 として与え、 , に関してはべき数まで推定した。 r b W Wb→r b W Wr 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1984 1986 1988 199 0 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 残差 属性要因 空間要因 図-4 住宅地の要因別寄与率 商業地では住宅地からの空間的な影響がほぼすべての年 で有意であるという結果になった。住宅地地価の寄与率は それほど高くはないものの、商業地では同じ商業地の地価 よりもむしろ住宅地の地価に影響を受けるという結果であ る。 (5)用途間波及のモデル化と推定 同じ用途内での地価の波及だけでなく商業地から住宅地、 住宅地から商業地といった他の用途への地価の波及も考え ることができる。 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 b b b b b r r r r r b b r b r b b r b r r b b r r Y W Y Y Y Y W Y Y W W Y X X ρ ρ ρ ρ β ε β → → → → ⎛ ⎞ ⎛ ⎞⎛ ⎞ ⎛ ⎞ ⎛ ⎞ = + ⎜ ⎟ ⎜ ⎟⎜ ⎟ ⎜ ⎟ ⎜ ⎟ ⎝ ⎠ ⎝ ⎠ ⎝ ⎠ ⎝ ⎠ ⎝ ⎠ ⎛ ⎞ ⎛ ⎞ ⎛ ⎞ ⎛ ⎞ + ⎜ ⎟+ ⎜ ⎟ ⎝ ⎠ ⎝ ⎠ ⎝ ⎠⎝ ⎠ ⎛ ⎞ ⎛ ⎞ + ⎟ ⎜ + ⎝ ⎠ ⎝ ⎠ 商業地の地価に空間的自己相関がみられないのは個々の 土地の利便性や収益性を厳しく評価されるために地域内で の差が大きいためだと考えられる。一方住宅地の地価は商 業地に比べて同じ地域内での差がそれほどなく空間的に安 定している。このとき、ある地点の地価の水準を決定する 際に地域内での差が大きい商業地よりも、安定した住宅地 の水準を参照することは十分考えられる。つまり、住宅地 の地価は商業地の地価水準の決定にとって重要な指標とな っている。 r Y Y 住宅地では商業地からの空間的な影響は1984~1987 年 でのみ有意であるという結果であった。これはバブルの初 期に都心部商業地の地価の高騰が周辺の住宅地に波及した とする状況を的確に表している。しかしその後住宅地では 商業地からの影響はみられなくなり、住宅地内での相互作 用だけが存在している。住宅地においても地価の差が大き い周囲の商業地よりも同じ住宅地内の地価が地価を決定す る際の指標となっていることがわかる。 b Y :商業地地価 Yr:住宅地地価 b ρ :商業地空間的自己相関パラメータ r ρ :住宅地空間的自己相関パラメータ (6)モデルの比較 b r ρ :商業地から住宅地への空間的パラメータ r b ρ :住宅地から商業地への空間的パラメータ 推定したモデルの説明力を比較するため、尤度比検定を 行った。重回帰モデルとべき数推定空間的自己相関モデル の尤度比検定の結果、5%有意水準で商業地では空間的自己 b W :商業地の重み付け行列 r W :住宅地の重み付け行列

(6)

相関が有意である1987、2003、2004 年で空間的自己相関 を取り入れることが説明力を改善させていたが、その他の 年では重回帰モデルでも同等の説明力が得られるという結 果であった。一方住宅地では全期間で空間的自己相関を取 り入れることが説明力を改善させていた。 表-4 商業地用途間波及モデル推定結果 パラメータ 寄与率 年 ρ α 住地 駅距 都心 下水 地積 容積 道路 人口 2産 3産 商空間 住空間 属性 FIT 1984 0.227 2.387 +

- -

-

-

+

-

+

-

+ 0.170 0.050 0.691 0.912 1985 0.213 2.515 +

- -

-

-

+ +

- -

+ 0.166 0.054 0.702 0.922 1986 0.177 4.491 +

- -

-

-

+ +

- -

+ 0.156 0.062 0.710 0.928 1987 0.060 6.031 +

- -

+

-

+ +

- -

+ 0.050 0.117 0.771 0.938 1988 0.045 2.084 +

- -

+

-

+ +

- -

+ 0.029 0.054 0.857 0.940 1989 0.047 2.100 +

- -

+

-

+ +

-

+ + 0.030 0.047 0.857 0.933 1990 0.043 2.022 +

- -

+

-

+ +

-

+ + 0.026 0.045 0.865 0.936 1991 0.048 7.973 +

-

+ +

-

+ +

-

+ + 0.040 0.045 0.848 0.933 1992 0.037 8.231 +

-

+ +

-

+

- -

+ + 0.031 0.037 0.863 0.930 1993 0.026 2.438 +

-

+ +

-

+

- -

+ + 0.018 0.029 0.886 0.933 1994 -0.020 3.895 +

- -

+

-

+

- - -

+ -0.010 0.013 0.944 0.941 1995 0.030 2.434 +

- -

+

-

+ +

-

+ + 0.021 0.017 0.907 0.944 1996 0.021 2.288 +

- -

NA

-

+ +

- -

+ 0.015 0.017 0.915 0.946 1997 0.032 2.450 +

- -

NA

-

+ +

- -

+ 0.023 0.018 0.902 0.943 1998 0.042 2.652 +

-

+ NA

-

+ +

- -

+ 0.032 0.021 0.885 0.938 1999 0.038 2.784 +

-

+ NA

-

+ + +

-

+ 0.030 0.029 0.876 0.935 2000 0.042 2.970 +

-

+ NA

-

+ + + + + 0.034 0.038 0.860 0.933 2001 0.073 3.136 +

-

+ NA

-

+ +

-

+ + 0.061 0.044 0.824 0.929 2002 0.117 3.290 +

-

+ NA

-

+ +

-

+ + 0.100 0.049 0.774 0.923 2003 0.167 3.393 +

-

+ NA

-

+ +

-

+ + 0.144 0.052 0.721 0.916 2004 0.215 3.381 +

-

+ NA

-

+ +

-

+ + 0.184 0.053 0.670 0.908 また、重み付け行列を所与としたモデルとべき数推定モ デルを検定すると、商業地では空間要因の有意でなく寄与 率が低い期間が多いため、べき数の違いによる差はほとん どない。住宅地では空間要因の影響が大きく、重み付け行 列の構造によって結果が左右されやすいため、多くの場合 べき数まで推定したモデルの説明力のほうが優れている。 また、用途間波及モデルとべき数推定モデルの検定では、 商業地ではほぼ全期間で用途間波及モデルが優れていた。 住宅地では商業地からの影響がみられたバブル期の初期で のみ用途間波及モデルは優れているが、それ以外では住宅 地内の空間的自己相関モデルで十分である。 5. 結論と今後の課題 (1)結論 商業地において空間的自己相関は地価高騰が始まるバブ ルの初期と近年にのみみられるが、住宅地からの空間的な 影響がほぼ全期間で存在し、周囲の住宅地地価が地価を決 定する際の指標の1つとなっている。住宅地において空間 的自己相関は全期間で存在し、地価決定に大きく影響して いる。また、商業地からの空間的な影響は地価高騰が始め るバブル期の初期にのみ存在していた。 +、-はパラメータの符号 :5%水準有意 表-5 住宅地用途間波及モデル推定結果 パラメータ 寄与率 年 ρ α 商地 駅距 都心 ガス 下水 地積 容積 道路 人口 2産 3産 住空間 商空間 属性 FIT 1984 0.864 2.042 +

- -

+

-

+ + + +

-

+ 0.573 0.028 0.259 0.741 1985 0.855 2.091 +

- -

+

-

+ + + +

-

+ 0.579 0.027 0.257 0.743 1986 0.866 2.172 +

- -

+ + + + + +

-

+ 0.621 0.021 0.237 0.763 1987 0.875 2.121 +

- -

+ + + + + +

-

+ 0.671 0.040 0.204 0.796 1988 0.871 1.786 +

- -

+ + + + + +

-

+ 0.534 0.026 0.311 0.689 1989 0.887 1.716 +

- -

+ + + + +

- -

+ 0.492 0.018 0.347 0.653 1990 0.929 1.647 +

- -

+ + + + +

- -

+ 0.482 0.015 0.351 0.649 1991 0.929 1.660 +

- -

+ + + + +

- -

+ 0.470 0.015 0.355 0.645 1992 0.919 1.672 +

- -

+ + + + +

- -

+ 0.439 0.009 0.380 0.620 1993 0.872 1.736 +

- -

+ + + + +

- -

+ 0.417 0.011 0.399 0.601 1994 0.854 1.717 +

- -

+ + + + +

- -

+ 0.392 0.009 0.413 0.587 1995 0.904 1.659 +

- -

+ + + + +

- -

+ 0.415 0.005 0.394 0.606 1996 0.916 1.645

- - -

+ + + + +

- -

+ 0.427 -0.000 0.387 0.613 1997 0.931 1.651

- - -

+

-

+ + +

- -

+ 0.451 -0.000 0.368 0.632 1998 0.947 1.650

- - -

+ NA + + +

- -

+ 0.481 -0.000 0.346 0.654 1999 0.960 1.699 +

- -

+ NA + + +

- -

+ 0.538 0.004 0.310 0.690 2000 0.961 1.761 +

- -

+ NA + + +

- -

+ 0.582 0.011 0.281 0.719 2001 0.944 1.869 +

- -

+ NA + + +

- -

+ 0.612 0.014 0.261 0.739 2002 0.937 1.941 +

- -

+ NA + + +

- -

+ 0.634 0.017 0.243 0.757 2003 0.932 1.978 +

- -

+ NA + + + +

-

+ 0.645 0.020 0.232 0.768 2004 0.927 1.996 +

- -

+ NA + + + +

-

+ 0.649 0.021 0.227 0.773 また、商業地、住宅地ともにバブル期の地価高騰が進む 中で空間的な影響が及ぶ範囲は広まったが、最近では狭い 範囲で空間的な影響が大きくなっていることがわかった。 (2)今後の課題 重み付け行列において近接性の要素とそれに作用する関 数形の他の可能性を検討すること、用途間波及の空間的自 己相関モデルの推定方法、サンプル数とサンプル間の距離 による影響について今後研究が必要である。 1) 青山吉隆・廣瀬義伸 (1992)「土地制度と地価の空間波及」土木計画学研究、 15-2,117-12 2) 内田隆一・安藤朝夫 (1996)「東京圏における地価変動の時空間波及-拡散モデル による実証分析」不動産学会誌、11-2,37-48 3) 肥田野登:山村能郎・樋口洋一郎 (1995)「ネットワーク自己相関モデルを用いた 首都圏における地価動向モデルの構築」日本不動産学会誌、9-2,53-63 4) 高塚創・樋口洋一郎 (1996)「空間的自己相関分析手法を用いた地価の空間的連関 に関する統計的検証」地域学研究、26-1,139-152 5) 青山吉隆 (1991)「地価の動的・空間的連関構造に関する基礎的研究」土木学会論 文集、25-4-14,127-133

6) Takatsuka,H and Higuchi,Y (2001) “A present-value model of real estate with interneighborhood dependency of income”, Journal of Real Estate Finance and Economics, 23-1, 47-76

7) Dow,M, Burton,M and White,D (1982) “Network autocorrelation:A simulation study of a foundational problem in regression and survey research” Social Networks, 4, 169-200

8) Leenders,R (2002) “Modeling social influence through network autocorrelation: constructing the weight matrix” Social Networks, 24, 211-247

参照

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