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表 -2 コマツナ植栽実験のまとめ プランタ 1 プランタ 2 備考 土壌の放射性 Ci(134,137) 濃度 (a) Bq/kg ( 検出限界 17.7Bq/kg) Bq/kg ( 検出限界 19.8Bq/kg) 原土は, 茨城県南部の住宅の庭土や側溝に堆積した土 土壌の

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1.はじめに

東日本大震災により発生した津波が福島第一原子力 発電所を襲ったことにより,発電所の機能が損なわれる とともに,放射能汚染が福島県を中心に広域に拡散した。 こうした放射能汚染土の除染対策として農地の場合,農 業機械を利用し表面汚染土を除去する方法(表土剥ぎ取 り),表層土壌と土壌深層とを混合させ(反転耕)放射能 濃度を縮減させる方法がある。さらにゼオライトを放射 性物質の吸着材として土に散布し,植栽した作物へ土壌 中の放射性セシウムが移行することを抑制する方法もあ る。これら対策の有効性を確認するため,実際の汚染され た耕地での表土剥ぎ取り・反転耕・ゼオライト散布それ ぞれの効果を検証した。特にゼオライトについては,通 常の粒子状だけでなくスラリー状のゼオイライトも使用 し,屋外実験だけでなく室内実験においてもその効果を 調べた。

2.ゼオライト

ゼオライトをスラリー化したゼオライトスラリーと一 般に土壌改良資材として使用されている粒子状ゼオライ トの比較を表-1に示す。このゼオライトは,土壌中に添 加されることによりその土壌に植栽した作物への放射性 セシウムの移行を抑制することが知られている1)。ゼオラ イトをスラリー化することで比表面積が大きくなり吸着 性能が高まることが期待される。ここでは初めに室内植 栽実験にて,ゼオライトスラリーの効果を確認した。次に 圃場実験にて粒子状ゼオライトとゼオライトスラリーの 効果を比較した。

3.室内植栽実験

3.1 実験方法

茨城県内の民家の庭等から採取した放射性セシウム濃 度 5,000-7,000Bq/kg の土壌に保水・排水性改良剤や鹿沼

1.

はじめに

東日本大震災により発生した津波が福島第一原子力発 電所を襲ったことにより,発電所の機能が損なわれるとと もに,放射能汚染が福島県を中心に広域に拡散した。こう した放射能汚染土の除染対策として農地の場合、農業機械 を利用し表面汚染土を除去する方法(表土剥ぎ取り),表 層土壌と土壌深層とを混合させ(反転耕)放射能濃度を縮 減させる方法がある。さらにゼオライトを放射性物質の吸 着材として土に散布し,植栽した作物へ,土壌中の放射性 セシウムが移行することを抑制する方法もある。これら対 策の有効性を確認するため,実際の汚染された耕地での表 土剥ぎ取り・反転耕・ゼオライト散布それぞれの効果を検 証した。特にゼオライトについては,通常の粒子状だけで なくスラリー状のゼオイライトも使用し,屋外実験だけで なく室内実験においてもその効果を調べた。

2.

ゼオライト

ゼオライトをスラリー化したゼオライトスラリーと一 般に土壌改良資材として使用されている粒子状ゼオライ トの比較を表-1に示す。このゼオライトは,土壌中に添 加されることによりその土壌に植栽した作物への放射性 セシウムの移行を抑制することが知られている1)。ゼオラ イトをスラリー化することで比表面積が大きくなり吸着 性能が高まることが期待される。ここでは初めに室内植栽 実験にて,ゼオライトスラリーの効果を確認した。次に圃 場実験にて粒子状ゼオライトとゼオライトスラリーの効 果を比較した。 3.

室内植栽実験

3.1 実験方法

茨城県内の民家の庭等から採取した放射性セシウム濃 度 5,000-7,000Bq/kg の土壌に保水・排水性改良剤や鹿沼 土を添加した土を用意した。これをプランターにいれ,ゼ オライトを濃度 1%(W/W)で添加したものと添加しないも

ゼオライトスラリーによる植栽土壌改良の試み

~放射能汚染土の除染対策とその効果~

池田穣

*

秋田宏行

*

・木川田一弥

** 東日本大震災の津波被害による福島第一原子力発電所からの放射能汚染への対策が福島県を中心に課題となっ ている。ここでは汚染された土壌へゼオライトを添加することによる作物への放射性物質の移行抑制の効果を粒子 状,スラリー状それぞれのゼオライトについて調べた。また表土剥ぎ取り・反転耕による農地の除染効果も確認し た。ゼオライトの放射性物質移行抑制効果については室内試験にて野菜類への,福島県の農地にて米への放射性セ シウムの移行係数をそれぞれ調べた。その結果,野菜類については移行率が 45~60%低減し抑制効果が確認でき たが,米についてはその移行係数自体が低いため抑制効果は確認できなかった。 キーワード: ゼオライト,ゼオライトスラリー,放射性セシウム,移行係数,空間線量率,表面汚染密度 *技術本部 環境開発部 **技術本部 先端技術研究部 安藤ハザマ研究年報(2013.12)

論 文

表-1 粒子状ゼオライトとゼオライトスラリー 農業資材用粒子状ゼオライト ゼオライトスラリー 概観 粒径 1~2mm 5μ m セシウム吸着に必要な散布量 特徴 土壌改良資材として,保水性・保肥性を高めるために従来より使用されている(散布量200~500kg/10a)。 スラリー状なのでハンドリングがよい。また比表面積が大き いので吸着性能に優れる。水溶液中のセシウムは,pHに関 らずほぼ100%除去できる。 1000kg/10a以上(福島県農林水産部指針2) 表-1 粒子状ゼオライトとゼオライトスラリー 安藤ハザマ研究年報 Vol.1 2013 論 文 *1 環境開発部 *2 先端技術研究部

ゼオライトスラリーによる植栽土壌改良の試み

~放射能汚染土の除染対策とその効果~

池田 穣

*1

・秋田宏行

*1

・木川田一弥

*2 東日本大震災の津波被害による福島第一原子力発電所からの放射能汚染への対策が福島県を中心に課 題となっている。ここでは汚染された土壌へゼオライトを添加することによる作物への放射性物質の移行 抑制の効果を粒子状,スラリー状それぞれのゼオライトについて調べた。また表土剥ぎ取り・反転耕によ る農地の除染効果も確認した。ゼオライトの放射性物質移行抑制効果については室内試験にて野菜類への, 福島県の農地にて米への放射性セシウムの移行係数をそれぞれ調べた。その結果,野菜類については移行 率が 45 ~ 60%低減し抑制効果が確認できたが,米についてはその移行係数自体が低いため抑制効果は確 認できなかった。 キーワード:ゼオライト , ゼオライトスラリー , 放射性セシウム , 移行係数 , 空間線量率 , 表面汚染密度

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土を添加した土を用意した。これをプランターにいれ,ゼ オライトを濃度 1%(W/W)で添加したものと添加しないも のにそれぞれコマツナ,カラシナの種子を植栽した。温 度 22 度,光量約 100μE/m2/hour,明暗周期 18:6 の人工気 象下で 38-52 日栽培した。途中追肥を行い,適宜間引き を行った。蒔種前の土壌の放射性セシウム(134,137) 濃度(a)と栽培後の茎・葉に含まれる放射性セシウム (134,137)濃度 (b) をそれぞれ測定し,移行係数 (b/a) をもとめた。

3.2 結果と考察

表-2にコマツナ,表-3にカラシナそれぞれの実験 条件と結果を示す。また写真-1にプランタ内でのコマ ツナ,カラシナの状況をそれぞれ示す。栽培後のコマツ プランタ① プランタ② 備考 土壌の放射性Ci濃度(a) 原土は,千葉県の住宅の庭土 土壌の体積 土壌改良後の体積 土壌改良の方法 「イージーソート」:クレアテラ製 ゼオライトスラリー添加濃度 1%(W/W) 0 カラシナ栽培環境条件 ・深さ2cm,3列で各列11個の植穴を両プランタに設けカラシ ナの種を各植穴に2種づつ蒔種 育成期間 1/31発芽,2/8,2/28, 3/5間引き 育成38日後のカラシナ茎・葉の放射性Ci (134,137)濃度(b) 287.45Bq/ kg (検出限界8.0Bq/kg) 764.05Bq/ kg (検出限界7.65Bq/kg) 移行係数(b/a) 0.058 0.15 資料4)ではカラシナの移行係数2.2が報告されている。 土壌は不明。 4954Bq/kg(検出限界15.6Bq/kg)  2012年1月27日~2012年3月16日(49日間) 温度:22度湿度:50%(なりゆき) 光:130μE/㎡/s,18時間明:6時間暗 元肥:硝酸カルシウム N100mg/500g,リン酸ニ水素カルシウム P2O5 100mg/500g 追肥:10日に1回元肥の1/10の濃度の液肥を適量添加 7.42L(35cm×26.5cm×8cm) 「イージーソート 」(保水・排水性改良剤)・鹿沼土各10%(V/V) 土壌の体積 土壌改良後の体積 土壌改良の方法 「イージーソート」:クレアテラ製 土壌水分 33.7% 29.5% 飽和透水係数1.0×10-6m/s,有効水分134L/m3, pH(H2O)6.2,EC 0.20dS/m,CEC 21.1cmol(+)/kg ゼオライトスラリー添加濃度 1%(W/W) 0 コマツナ栽培環境条件 深さ2cm,3列で各列15個の植穴を両プランタに設けコマツ ナの種を各植穴に2種づつ蒔種 「ハイポネックス」:ハイポネックジャパン製 家庭園芸用肥料 育成期間 12/8発芽,12/23間引き 育成52日後のコマツナ茎・葉の放射性Ci (134,137)濃度(b) 20.97 (検出限界3.2Bq/kg) 38.89 (検出限界3.1Bq/kg) 移行係数(b/a) 0.0031 0.0055 コマツナの放射性セシウム移行係数としては、黒ボク土で の栽培で0.00263)などの値が報告されている。 2011年12月5日~2012年1月26日(52日間) 温度:22度 湿度:50%(なりゆき) 光:100μE/㎡/s、18時間明:6時間暗 元肥:「ハイポネックス」(NPK他含有肥料)500倍希釈,各プランタ に500ml 追肥:10日に1回元肥の1/10の濃度の液肥を適量添加 「イージーソート 」(保水・排水性改良剤)・鹿沼土各10%(V/V) 表-3 カラシナ植栽実験まとめ

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ナ , カラシナの茎・葉への放射性セシウム(134,137)の移 行係数はそれぞれ 0.0031 ~ 0.0055,0.058 ~ 0.15 であっ た。従来の値では, 黒土に植栽したコマツナで 0.0026 が 報告3)されており今回の実験の値とオーダーは等しい。ま たカラシナで 2.2 という値が報告4)されているが,この 植栽土壌の性状は不明であるため,参考にはならないと 思われる。いずれにせよゼオライトスラリーを植栽土壌 へ添加することにより,図-1に示すように放射性セシ ウムの移行率が 45 ~ 60%低減することが確認できた。

4.圃場実験

4.1 実験方法

ゼオライトスラリーの効果を実際の圃場で確認するた め福島県郡山市の水田において圃場実験を行なった。ゼ オライトによる放射性セシウム吸収抑制実験のほか,福 島県農林水産部の指針2)に沿い農業機械を用いた表土剥 ぎ取り・反転耕という農地除染実験も含め以下の手順で 行った。 1)表土剥ぎ取り:ターフストリッパー(写真-2 ①) により表土剥ぎ取りを行ない,土壌が乾燥した場合と湿 潤である場合の施工性を比較するとともに,表土剥ぎ取 り前後の農地の放射能濃度を測定した。 2)ゼオライト散布:バックホウによる整地後,ゼオライ トスラリーと粒子状ゼオライト(径 2mm と 5mm)をそれぞ れ散布した区域および散布しない区域に分けた(写真- 2 ② , ③)。 3)反転耕:プラウにより反転耕(耕深 15cm と 30cm)を 行い土壌が乾燥した場合と湿潤である場合,それぞれの 施工性を確認するとともに,反転耕前後の農地の放射能 濃度を測定した。その後ブルドーザー,ロータリーにより 整地した(写真-2 ④)。 4)稲の作付・収穫:整地後田植えを行い,稲を生育させ 秋にゼオライト添加の有無などにより区分けしたそれぞ れの区域で稲を一部収穫し放射性セシウム濃度を分析し た。図-2に圃場でのゼオライト散布と反転耕による農 地の区割りを示す。

4.2 結果と考察

農地除染実験における圃場の平均的な空間線量率と表 件と結果を示す。また写真-1にプランタ内でのコマツナ, カラシナの状況をそれぞれ示す。栽培後のコマツナ,カラ シナの茎・葉への放射性セシウム(134,137)の移行係数 はそれぞれ 0.0031~0.0055,0.058~0.15 であった。従来 の値では, 黒土に植栽したコマツナで 0.0026 が報告3) れており今回の実験の値とオーダーは等しい。またカラシ ナで 2.2 という値が報告4)されているが,この植栽土壌の 性状は不明であるため,参考にはならないと思われる。い ずれにせよゼオライトスラリーを植栽土壌へ添加するこ とにより,図-1に示すように放射性セシウムの移行率が 45~60%低減することが確認できた。

4.圃場実験

4.1 実験方法

ゼオライトスラリーの効果を実際の圃場で確認するた め福島県郡山市の水田において圃場実験を行なった。ゼオ ライトによる放射性セシウム吸収抑制実験のほか,福島県 農林水産部の指針 2)に沿い農業機械を用いた表土剥ぎ取 り・反転耕という農地除染実験も含め以下の手順で行った。 1)表土剥ぎ取り:ターフストリッパー(写真-2 ①)により表 土剥ぎ取りを行ない,土壌が乾燥した場合と湿潤である場合の施 工性を比較するとともに,表土剥ぎ取り前後の農地の放射能濃度 を測定した。 2)ゼオライト散布:バックホウによる整地後,ゼオライトスラリ ーと粒子状ゼオライト(径2mm と5mm)をそれぞれ散布した区域お よび散布しない区域に分けた(写真-2 ②,③)。 3)反転耕:プラウにより反転耕(耕深 15cm と 30cm)を行い土壌 が乾燥した場合と湿潤である場合,それぞれの施工性を確認する とともに,反転耕前後の農地の放射能濃度を測定した。その後, ブルドーザー,ロータリーにより整地した(写真-2 ④)。 4)稲の作付・収穫:整地後田植えを行い,稲を生育させ秋にゼオ ライト添加の有無などにより区分けしたそれぞれの区域で稲を一 部収穫し放射性セシウム濃度を分析した。図-2に圃場でのゼオ ライト散布と反転耕による農地の区割りを示す。

4.2 結果と考察

農地除染実験における圃場の平均的な空間線量率と表 面汚染密度を図-3に示す。また土壌の飽和透水係数は 2.2×10-6m/s,有効水分は 111L/m3,pH5.7(24.4℃),電 安藤ハザマ研究年報(2013.12)

写真―1 蒔種後47 日のコマツナ(左)と蒔種後49 日のカラシナ(右) 図-1 コマツナ(左)とカラシナ(右)の移行率 件と結果を示す。また写真-1にプランタ内でのコマツナ, カラシナの状況をそれぞれ示す。栽培後のコマツナ,カラ シナの茎・葉への放射性セシウム(134,137)の移行係数 はそれぞれ 0.0031~0.0055,0.058~0.15 であった。従来 の値では, 黒土に植栽したコマツナで 0.0026 が報告3) れており今回の実験の値とオーダーは等しい。またカラシ ナで 2.2 という値が報告4)されているが,この植栽土壌の 性状は不明であるため,参考にはならないと思われる。い ずれにせよゼオライトスラリーを植栽土壌へ添加するこ とにより,図-1に示すように放射性セシウムの移行率が 45~60%低減することが確認できた。

4.圃場実験

4.1 実験方法

ゼオライトスラリーの効果を実際の圃場で確認するた め福島県郡山市の水田において圃場実験を行なった。ゼオ ライトによる放射性セシウム吸収抑制実験のほか,福島県 農林水産部の指針 2)に沿い農業機械を用いた表土剥ぎ取 り・反転耕という農地除染実験も含め以下の手順で行った。 1)表土剥ぎ取り:ターフストリッパー(写真-2 ①)により表 土剥ぎ取りを行ない,土壌が乾燥した場合と湿潤である場合の施 工性を比較するとともに,表土剥ぎ取り前後の農地の放射能濃度 を測定した。 2)ゼオライト散布:バックホウによる整地後,ゼオライトスラリ ーと粒子状ゼオライト(径2mm と5mm)をそれぞれ散布した区域お よび散布しない区域に分けた(写真-2 ②,③)。 3)反転耕:プラウにより反転耕(耕深 15cm と 30cm)を行い土壌 が乾燥した場合と湿潤である場合,それぞれの施工性を確認する とともに,反転耕前後の農地の放射能濃度を測定した。その後, ブルドーザー,ロータリーにより整地した(写真-2 ④)。 4)稲の作付・収穫:整地後田植えを行い,稲を生育させ秋にゼオ ライト添加の有無などにより区分けしたそれぞれの区域で稲を一 部収穫し放射性セシウム濃度を分析した。図-2に圃場でのゼオ ライト散布と反転耕による農地の区割りを示す。

4.2 結果と考察

農地除染実験における圃場の平均的な空間線量率と表 面汚染密度を図-3に示す。また土壌の飽和透水係数は 2.2×10-6m/s,有効水分は 111L/m3,pH5.7(24.4℃),電 安藤ハザマ研究年報(2013.12)

写真―1 蒔種後47 日のコマツナ(左)と蒔種後49 日のカラシナ(右) 図-1 コマツナ(左)とカラシナ(右)の移行率 図-1 コマツナ(左)とカラシナ(右)の移行率 写真-1 蒔種後 47 日のコマツナ(左)と蒔種後 49 日のカラシナ(右) 安藤ハザマ研究年報 Vol.1 2013

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面汚染密度を図-3に示す。また土壌の飽和透水係数は 2.2 × 10-6m/s,有効水分は 111L/m3,pH5.7(24.4℃),電 気 伝 導 度 (EC)0.05 dS/m, 塩 基 交 換 容 量 (CEC) は 17.0 cmol(+)/kg であった。圃場の空間線量率は平均 0.68μSv/ h,表面汚染密度は 380cpm 程度であった。土壌の放射性セ シウム(134+137)濃度は,表土剥ぎ取り前(Ⅰ)の 4 点 の平均が 3,665Bq/kg であった。施工前(表土剥ぎ取り前) からターフストリッパーによる表土の剥ぎ取り(Ⅱ),そ の後のバックホウによる整地(Ⅲ)までは,空間線量率 (H=1m で測定),表面汚染密度(H=1cm で測定)ともほと んど変化がなかった。これは圃場が昨年作付けされてお り,土壌の表層部分がすでに均質化(耕起)されているた めと考えられる。なお整地後(ゼオライト散布前)(Ⅲ) の土壌の放射性セシウム(134+137)濃度は, 4 点の平均 で 2,813Bq/kg であった。反転耕(Ⅳ)を行うことにより, 空間線量率,表面汚染密度とも低下した。反転耕の深さを 気 伝 導 度 (EC)0.05 dS/m , 塩 基 交 換 容 量 (CEC) は 17.0 cmol(+)/kg であった。圃場の空間線量率は平均 0.68μSv/h, 表面汚染密度は 380cpm 程度であった。土壌の放射性セシ ウム(134+137)濃度は,表土剥ぎ取り前(Ⅰ)の 4 点の 平均が 3,665Bq/kg であった。施工前(表土剥ぎ取り前) からターフストリッパーによる表土の剥ぎ取り(Ⅱ),そ の後のバックホウによる整地(Ⅲ)までは,空間線量率 (H=1m で測定),表面汚染密度(H=1cm で測定)ともほと んど変化がなかった。これは圃場が昨年作付けされており, 土壌の表層部分がすでに均質化(耕起)されているためと 考えられる。なお整地後(ゼオライト散布前)(Ⅲ)の土 壌の放射性セシウム(134+137)濃度は, 4 点の平均で 2,813 Bq/kg であった。反転耕(Ⅳ)を行うことにより,空間線 量率,表面汚染密度とも低下した。反転耕の深さを 30cm に設定した際に低減効果が著しい(空間線量 25%減,表面 汚染密度 32%減)ことから,昨年の耕起が 15cm 以浅であ

安藤ハザマ研究年報(2013.12) 図-2 実験圃場の区割り

ターフストリッパーによる表土剥ぎ取り

② ゼオライト粒子散布

③ ゼオライトスラリー散布

④ プラウによる反転耕

写真-2 圃場実験の手順 気 伝 導 度 (EC)0.05 dS/m , 塩 基 交 換 容 量 (CEC) は 17.0 cmol(+)/kg であった。圃場の空間線量率は平均 0.68μSv/h, 表面汚染密度は 380cpm 程度であった。土壌の放射性セシ ウム(134+137)濃度は,表土剥ぎ取り前(Ⅰ)の 4 点の 平均が 3,665Bq/kg であった。施工前(表土剥ぎ取り前) からターフストリッパーによる表土の剥ぎ取り(Ⅱ),そ の後のバックホウによる整地(Ⅲ)までは,空間線量率 (H=1m で測定),表面汚染密度(H=1cm で測定)ともほと んど変化がなかった。これは圃場が昨年作付けされており, 土壌の表層部分がすでに均質化(耕起)されているためと 考えられる。なお整地後(ゼオライト散布前)(Ⅲ)の土 壌の放射性セシウム(134+137)濃度は, 4 点の平均で 2,813 Bq/kg であった。反転耕(Ⅳ)を行うことにより,空間線 量率,表面汚染密度とも低下した。反転耕の深さを 30cm に設定した際に低減効果が著しい(空間線量 25%減,表面 汚染密度 32%減)ことから,昨年の耕起が 15cm 以浅であ

安藤ハザマ研究年報(2013.12) 図-2 実験圃場の区割り

ターフストリッパーによる表土剥ぎ取り

② ゼオライト粒子散布

③ ゼオライトスラリー散布

④ プラウによる反転耕

写真-2 圃場実験の手順 図-2 実験圃場の区割り 写真-2 圃場実験の手順

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30cm に設定した際に低減効果が著しい(空間線量 25%減, 表面汚染密度 32%減)ことから,昨年の耕起が 15cm 以浅 であったものと考えられる。 反転耕の後,ブルドーザによる整地(Ⅴ),トラクタロー タリーによる耕うん・均平化(Ⅵ)を行った。このとき空 間線量率には大きな変化がないが,表面汚染密度は徐々 に高くなっている。これは反転して汚染のない土壌が表 面に露出した後,整地・耕うんにより徐々に汚染された部 分の土壌と混合されたためと考えられる。この最終時点 の土壌の放射性セシウム(134+137)濃度は, 4 点の平均 で 1,719Bq/kg であった。 その後圃場には水を張り田植えを行ない,2012 年 9 月 に図- 2 に示す A,B,C,D の各地点において一部分稲刈りを 行なった(写真-3)。 収穫した稲穂は脱穀後,籾摺りを行い玄米にし玄米の 放射性セシウムの分析を行った。その結果を表-4に示 す。どの区画の玄米の濃度も N.D.(未検出)だった。ちな みに一般食品の放射性セシウム濃度の基準値は 100Bq/kg (厚生労働省 2012 年)であり,玄米の放射性セシウム濃 度は食品として問題ない。分析における検出限界は 1.25 ~ 1.37Bq/kg であり,土壌の放射性セシウム(134+137) 濃度の平均が約 1,700Bq/kg であることから,この場合玄 ったものと考えられる。 反転耕の後,ブルドーザによる整地(Ⅴ),トラクタロータリー による耕うん・均平化(Ⅵ)を行った。このとき空間線量率には大 きな変化がないが,表面汚染密度は徐々に高くなっている。これは 反転して汚染のない土壌が表面に露出した後,整地・耕うんにより 徐々に汚染された部分の土壌と混合されたためと考えられる。この 最終時点の土壌の放射性セシウム(134+137)濃度は, 4 点の平均で 1,719 Bq/kg であった。 その後圃場には水を張り田植えを行ない,2012 年 9 月に図 2 に示 すA,B,C,D の各地点において一部分稲刈りを行なった(写真-3)。 収穫した稲穂は脱穀後,籾摺りを行い玄米にし玄米の放射性セシウ ムの分析を行った。その結果を表-4に示す。どの区画の玄米の濃 度も N.D.(未検出)だった。ちなみに一般食品の放射性セシウム濃 度の基準値は100Bq/kg(厚生労働省 2012 年)であり,玄米の放射 性セシウム濃度は食品として問題ない。分析における検出限界は 1.25~1.37Bq/kg であり,土壌の放射性セシウム(134+137)濃度の 平均が約 1,700Bq/kg であることから,この場合玄米の移行係数は 0.001 以下であることが示唆される。水田の土壌から玄米への放射性 セシウムの移行係数としては平均 0.005(最大 0.02,最小 0.0005) という値が報告3)されており,今回の値と概ね整合性がある。

5. おわりに

ゼオライトによる野菜の放射性セシウム吸収抑制を室 安藤ハザマ研究年報(2013.12)

図-3 各作業ステップにおける空間線量率と表面汚染密度の変化(測定8 点の平均値) 」写真-3 圃場の状況;2012 年7 月24 日(左),2012 年9 月25 日(右) ったものと考えられる。 反転耕の後,ブルドーザによる整地(Ⅴ),トラクタロータリー による耕うん・均平化(Ⅵ)を行った。このとき空間線量率には大 きな変化がないが,表面汚染密度は徐々に高くなっている。これは 反転して汚染のない土壌が表面に露出した後,整地・耕うんにより 徐々に汚染された部分の土壌と混合されたためと考えられる。この 最終時点の土壌の放射性セシウム(134+137)濃度は, 4 点の平均で 1,719 Bq/kg であった。 その後圃場には水を張り田植えを行ない,2012 年 9 月に図 2 に示 すA,B,C,D の各地点において一部分稲刈りを行なった(写真-3)。 収穫した稲穂は脱穀後,籾摺りを行い玄米にし玄米の放射性セシウ ムの分析を行った。その結果を表-4に示す。どの区画の玄米の濃 度も N.D.(未検出)だった。ちなみに一般食品の放射性セシウム濃 度の基準値は100Bq/kg(厚生労働省 2012 年)であり,玄米の放射 性セシウム濃度は食品として問題ない。分析における検出限界は 1.25~1.37Bq/kg であり,土壌の放射性セシウム(134+137)濃度の 平均が約 1,700Bq/kg であることから,この場合玄米の移行係数は 0.001 以下であることが示唆される。水田の土壌から玄米への放射性 セシウムの移行係数としては平均 0.005(最大 0.02,最小 0.0005) という値が報告3)されており,今回の値と概ね整合性がある。

5. おわりに

ゼオライトによる野菜の放射性セシウム吸収抑制を室 図-3 各作業ステップにおける空間線量率と表面汚染密度の変化(測定8 点の平均値) 」写真-3 圃場の状況;2012 年7 月24 日(左),2012 年9 月25 日(右) 写真-3 圃場の状況;2012 年 7 月 24 日(左),2012 年 9 月 25 日(右) 図-3 各作業ステップにおける空間線量率と表面汚染密度の変化(測定 8 点の平均値) 安藤ハザマ研究年報 Vol.1 2013

(6)

6

米の移行係数は 0.001 以下であることが示唆される。水田 の土壌から玄米への放射性セシウムの移行係数としては 平均 0.005(最大 0.02,最小 0.0005)という値が報告3) されており,今回の値と概ね整合性がある。

5.おわりに

ゼオライトによる野菜の放射性セシウム吸収抑制を室 内植栽実験では,コマツナとカラシナを用いて確認する ことができた。また圃場実験では表土剥ぎ取り・反転耕に よる除染効果を検証することができた。しかしながら圃 場へのゼオライト散布による稲の放射性セシウム移行抑 制効果は検証できなかったものの移行係数は十分小さく 食品として問題はなかった。 なお圃場実験においてご協力いただいた株式会社椎根 建設の椎根和芳社長をはじめ関係者の方々に謝意を表し ます。 参 考 文 献 1) 後藤逸男,槁本大,近藤綾子,土壌・天然ゼオライト・ 植物中におけるセシウムの挙動,農業及び園芸,Vol.86,  N0.10, 2011 2) 農作物の放射性セシウム対策に係る除染及び技術対策 の指針 第 1 版,福島県農林水産部,2012 3) http://www4.pref.fukushima.jp/nougyou-centre/, 福島県農業総合センター,2011 4) 原子力エネルギー関連施設安全評価研究ユニット,生物 圏評価のための土壌から農作物への移行係数に関する データベース,2009

Effect of Decontamination of Planting Soil Using Zeolite Slurry That Inhibits Transition of Radioactive Cesium from Soil to Plant Bodies

Yutaka IKEDA, Hiroyuki AKITA and Kazuya KIKAWADA

The accident of Fukushima Daiichi nuclear energy plant by the tsunami resulting from the Great Eastern Japan Earthquake in 2011 caused radiation contamination of cultivated fields in Fukushima Prefecture. Some decontamination techniques such as surface soil grab, deep cultivation, and adding zeolite to the soil were tested in the rice fields of Fukushima Prefecture. Zeolite is usually used in the form of particles. It inhibits the transition of radioactive cesium from soil to plant bodies. Here, zeolite slurry was also used. The inhibition effect of the zeolite slurry was checked not only in the field but also in a laboratory experiment using some vegetables. The laboratory test results proved the effect of decontamination for vegetables; however, the field test showed uncertainness owing to the low passage coefficient of rice. 内植栽実験では,コマツナとカラシナを用いて確認するこ とができた。また圃場実験では表土剥ぎ取り・反転耕によ る除染効果を検証することができた。しかしながら圃場へ のゼオライト散布による稲の放射性セシウム移行抑制効 果は検証できなかったものの移行係数は十分小さく食品 として問題はなかった。 なお圃場実験においてはご協力いただいた株式会社椎 根建設の椎根和芳社長をはじめ関係者の方々に謝意を表 します。 参 考 文 献 1)後藤逸男,槁本大,近藤綾子,土壌・天然ゼオライト・植物中 におけるセシウムの挙動, 農業及び園芸, Vol.86, N0.10, 2011 2)農作物の放射性セシウム対策に係る除染及び技術対策の指針 第 1 版,福島県農林水産部,2012 3)http://www4.pref.fukushima.jp/nougyou-centre/ ,福島県農業総合セン ター,2011 4)原子力エネルギー関連施設安全評価研究ユニット,生物圏評 価のための土壌から農作物への移行係数に関するデータベー ス,2009

Effect of Decontamination of Planting Soil Using Zeolite Slurry Which Inhibits Transition of Radioactive Cesium from Soil to Plant Body

Yutaka IKEDA, Hiroyuki AKITA, Kazuya KIKAWADA

The accident of Fukushima Daiichi nuclear energy plant by the tsunami resulting from the Great Eastern Japan Earthquake in 2011 caused the radiation contamination on the cultivated field at Fukushima prefecture. Some decontamination techniques such as surface soil grab, deep cultivation and adding zeolite into the soil were tested in the rice field at Fukushima prefecture. The zeolite is usually used in the form of some particle. It inhibits the transition of radioactive cesium from soil to the plant body., Here the zeolite slur ry was also used. The inhibition effect of the zeolite slurry was checked not only in the field but also in a laboratory experiment using some vegetables. As a result, the laboratory test proved the effect of decontamination about vegetables, however, the field test showed the uncertainness owing to the low passage coefficient of rice.

安藤ハザマ研究年報(2013.12)

Bq/kg)

A

ゼオライトスラリー

N.D.

1.25

B

ゼオライト

5 号

N.D.

1.32

C

ゼオライト

2 号

N.D.

1.29

D

無散布(コントロール)

N.D.

1.37

参照

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