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Dual-energy CT の臨床 腎 泌尿器領域を中心に 神戸大学医学部附属病院放射線科 ( 前住友病院放射線科 ) 髙橋 哲 Genitourinary Applications of Dual-energy CT Department of Radiology,

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Academic year: 2021

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Satoru Takahashi

はじめに

 2 セットの管球・検出器を搭載した dual source CT (DSCT)の登場によって,日常臨床で応用可能な dual

energy imagingが始まって 6 年が経過した.DSCT も selective photon shieldによる,より精度の高いエネル ギー分離のできる第 2 世代へと進歩した1).さらに反 応速度が早くアフターグローの短い検出器を用いて, 1セットの管球・検出器で管電圧を高速にスイッチング しながらデータを収集する機器も登場し,dual energy imagingはより広がりを見せている.とはいうものの dual energy撮影が可能な CT 機器は通常の近年普及の 著しい multi-slice CT と比べて高価であり,普及してい る台数も限られる.そのため実機に触れたことのない大 多数のものにとっては,dual energy CT によって何が可 能となり何に応用できるのか,臨床ルーチンに応用する 方法があるのか,明瞭なイメージを持ちにくいというの が現実と思われる.

 また上述のように dual energy imaging が可能な臨床 機には現在大きく 2 種類があり,それぞれで解析法や 表示法が異なることも,dual energy imaging を理解す るにあたっての混乱の原因となっていると思われる.   本 稿 で は 第 一 世 代 の DSCT で あ る SOMATOM definitionを筆者が以前勤務していた一般的な市中病 院が導入し,dual energy CT をどのように活用してきた かを紹介することで,dual energy CT の臨床応用の実 例を提示する.一民間病院での経験に過ぎず,教育病 院や大病院ではないため,むしろ一般的な病院での dual-energy CTの応用の可能性について,イメージを 持っていただきやすいのではないかと考える.またこれ に先だって,われわれが使用している SOMATOM defi-nitionに用いられている dual energy 解析法に基づい て,dual energy imaging の原理を概説したい.なお,

本稿の画像はすべて住友病院におけるものであること をお断りしておく.

1.Dual energy imaging とは

 Dual energy imaging とは,異なったエネルギーで撮影 された 2 種類のデータから,各組織の X 線吸収係数の 違いに基づいて組織性状の推定を行う手法である.わ れわれの施設で使用していた DSCT 機器では,各 X 線 管の管電圧を 140 kVp と 80 kVp として撮影した 2 種類 の再構成された画像データを用いて,対応する各画素の 管電圧による CT 値の変化・シフトに基づいて組織性状 を評価し,2-material および 3-material decomposition 法 の大きく 2 種類の解析法が提供されている.Dual ener-gy解析を理解するにあたって,同一ピクセルの 140 kVpでの CT 値と 80 kVp での CT 値をプロットしたグ ラフを考えると理解しやすい(Fig. 1).このプロットを踏 まえながら,dual energy 解析の主な二つ,2-material お よび 3-material decomposition 法を概説する. 1-1 2-material decomposition 法  2-material decomposition 法では,造影剤と石灰化な ど,単一管電圧での撮影では同様の CT 値を示して区 別のつかないものを,管電圧の違いによる CT 値の変化 の違いから区別するものである.80 kVp と 140 kVp の 際に CT 値がどのように変化するか,そのシフト率は物 質によって特有であり,同じ物質は上述のプロット上で 特有の分布を示す.この 2 物質の分布間に CT 値のシ フト率に基づいた分離線を引き,物質を弁別する方法 が 2-material decomposition 法である(Fig. 2).この方法 では CT 値の分布がいかに分離するかが,弁別の精度 に関わる.そのため部分容積効果や線質硬化など CT 値に影響を与えるアーチファクトが小さく,またノイズ

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も少ない状態がより望ましい.したがって,より薄いス ライスで線量が高いほど精度が改善することが期待さ れるが,被ばくの増加を防ぐため,低線量でも低ノイズ となるような画像再構成法が望まれる.さらに 2 群のプ ロット上での分布の違いが大きいほど弁別は正確となる が,この差異はエネルギーの違いに依存するため,撮 影 X 線のエネルギー差を大きくすることで,より分離し やすくなる.すなわち 100 kVp と 140 kVP の組み合わ せよりは 80 kVp と 140 kVp の組み合わせの方が望まし い.しかし低電圧画像は十分な線量でないとノイズが 大きくなってしまうため,画像再構成法の工夫のほか, selective photon shieldによって高電圧側の X 線のエネ ルギースペクトラムにおける低エネルギー成分を抑える ことで,より精度の高いエネルギー分離を得る方法も試 みられている1)  このような 2-material decomposition 法の臨床応用と しては,造影剤と石灰化を区別することで,動脈硬化 による強い石灰化や,骨を CT angiography から容易に Fig. 1 Dual-energy CTを理解するにあたって管電圧と各ピクセル CT 値の関係 同一断面を 140 kVp と 80 kVp で撮影したものを,対応する各ピクセルの CT 値をプ ロットしたもの.一定の傾向でプロットが集簇しているのがわかる.

Fig. 2 2-maerial decomposition法の原理

尿酸結石とそれ以外の石灰化結石とをスキャンしたものを 140 kVp と 80 kVp での CT 値でプロットしたもの.石灰化結石と尿酸結石はそれぞれ異なった集簇をみるため, 両者の間に分離線をひくと尿酸結石と石灰化結石を弁別することができる.

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取り除く方法や2),石灰化結石と尿酸・非石灰化結石を 区別する方法などが考えられる3) 1-2 3-material decomposition 法  3-material decomposition 法は,造影剤と軟部組織, 脂肪あるいは空気などの 3 種類の物質の混合比を求め る方法である.この場合,特有の CT 値シフトを示す物 質が解析の鍵となり,ヨードやキセノンなど造影剤が用 いられる.例えば腹部実質臓器などの CT 値は,造影 剤が存在しない状態では各ピクセルにおける脂肪と軟 部組織の比率に相関した値を示すと考えられ,プロット 上では軟部組織の分布と脂肪の分布を結ぶ直線上に, その比率に合わせて存在すると考えられる.ここにヨー ド造影剤が存在すると,ヨードに特有の CT 値のシフト が生じ,各ピクセルの CT 値はプロット上で偏位する (Fig. 3).この際,ヨードの CT 値シフトの傾きは撮影条 件から既知であるため,このシフトの程度は,各ピクセ ルに存在するヨード量に比例する値として計算が可能と なる.各ピクセルの CT 値におけるヨード造影剤成分の 寄与のみを抽出した画像は「ヨード分布画像」として造 影剤の分布を鋭敏に示す指標となる.逆に造影後の CT 値のプロットから,ヨードの寄与を取り除いた軟部組織 と脂肪の比率を算出することもでき,これによる「仮想 非造影画像」を作成することもできる(Fig. 4).

 3-material decomposition 法 の 精 度 は 2-material decomposition法と同様の因子の影響を受けるため, 2-material decomposition法で解析を担保するに必要と される同様の対応が求められている.さらに 3 物質間の 差が大きいほど解析が正確となるため,通常の造影検 査であれば,線質硬化アーチファクトを来さない限り は,造影剤の濃度が高い方が望ましい.  このような 3-material decomposition 法の応用として は,ヨード分布画像を見るために,肺梗塞に伴う肺血 流の低下 ・ 欠損域を検出したり(Fig. 5)4),脳出血と造 る造影剤の量に相関している.

Fig. 4 Virtual non-contrast画像

3-material decomposition法によっ て,造影後の 80 kVp と 140 kVp で 撮影された画像から,ヨード成分 を取り除いた virtual non-contrast 画 像が作成される.

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影される腫瘤成分の鑑別を行ったりする応用がある.ま た仮想非造影画像は,造影後の 1 相撮影が行われるこ との多いスクリーニング検査において,偶然発見された 副腎や腎,肝の腫瘤性病変の単純 CT での CT 値の推定 をして鑑別に役立てたり5),CT urography において尿路 に排泄された造影剤を取り除くことで(Fig. 6),結石の 検出をはかったりする応用が報告されている6) 1-3 Composite image  140 kVp など高エネルギーの画像では軟部組織間の コントラストは低いが検出器に到達するフォトンは多く 信号雑音比は高い.一方 80 kVp など低エネルギー画 像では,特に造影剤による CT 値の上昇によってコント ラストが向上するがノイズの多い画像となる.実際に はこれらの画像を一定の比率で加算することで,通常 の CT 撮影で用いられている 120 kVp 相当のコントラ ストを示す画像が再構成される.この両者の加算比率 を調節することで,造影コントラストを変えることも可 能となる(Fig. 7).  このような dual energy CT の特徴を生かして,診療 Fig. 5 肺塞栓症症例におけるヨードマップ解析 肺実質に分布した造影剤のヨードマップ 像が,造影 CT 画像に重ね合わせられて いる.右肺中葉に造影剤の分布しない肺 塞栓による血流低下域が見られる.

Fig. 6 CT urographyにおける virtual non-contrast 解析 CTUの排泄相では,尿路に排泄された造 影剤によって尿管結石を確認することはで きないが,virtual non-contrast によって尿 路の造影剤は取り除かれ,尿管結石が単 純 CT と同 様 に 明 瞭 に 描 出 され て い る (→).

Fig. 7 Composite imaging

140 kVpで撮影された画像(左上)と 80 kVp で撮影された画像(右下)に対して,それぞ れの比率を変化させたもの.80 kVp の成 分が増えるに従って,造影剤のコントラス トが強まっている.

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上の疑問や要求に対して,どのように応えることができ るか,泌尿器領域での臨床応用を中心に紹介する. 2.Dual energy CT の臨床応用の実際 2-1 尿路結石の解析  尿路結石症は年間罹患率が 10 万人あたり 134 人,生 涯罹患率が男性で 7 人に 1 人,女性で 15 人に 1 人とい う比較的頻度の高い疾患である.結石の治療方針は, 尿路閉塞を来して水腎症となっているか,自然排石の 期待できる位置,大きさであるか否かによって大きく異 なり,保存的治療で自然排石を待つか,結石除去,破 砕といった積極的治療を行うかに大別される.尿路結 石はその主成分によって,いわゆる X 線非透過性であ る石灰化結石(シュウ酸カルシウム,リン酸カルシウ ム,炭酸リン灰カルシウムなど)と,X 線透過性結石で ある尿酸結石などに分けられる.尿酸結石は尿路閉塞 を来していなければ,薬剤による溶解療法を適応できる ため,体外衝撃波による破砕などで治療される石灰化 結石と鑑別することができれば,患者への侵襲を小さく することができる.この石灰化結石と尿酸結石の鑑別 における 2-material decomposition 法の有用性は高く, 部分容積効果の影響のない範囲であれば小さな結石に も有効であり,比較的線量が低くノイズがやや多い画 像でも解析は可能である(Fig. 8).  腎疝痛や血尿など尿路結石が臨床的に疑われる症例 では,低線量ヘリカル CT による結石の検出が標準的な 診断法となってきているが,これを dual energy CT で行 えば,結石の存在,部位,大きさの診断のみならず,化 学組成の鑑別まで可能となり,尿路結石の診断に対す る画像診断を一期的に行うことができる. 2-2 ヨード分布画像  悪性腫瘍治療前スクリーニングや経過観察目的など の CT 検査では,造影のみで撮像することが多い.これ らの検査で主たる対象臓器である肝・腎臓では,充実性 病変であれば肝転移や腎細胞がんなど有意な病変であ る可能性が高くなる(Fig. 9).その一方でこれらの臓器 で最も頻度の高い占拠病変は嚢胞であるため,嚢胞か 否かという診断が占拠性病変の評価の第一歩としてき わめて重要である.肝や腎の嚢胞には出血を伴うことが あり,単純に水の吸収値を示さないからといって充実性 病変であるとは限らず,造影剤投与前後における CT 値の変化によって造影効果を判断する必要がある.し かしながら造影前 CT が必要となると,単純に撮影相が 増え,被ばくの増加に直結する.これらの検査が適応 される患者群は,原発性肝がんの危険因子を持ってい たり,肝転移を来す可能性のある担がん患者であった りするなど,長期にわたり,CT による経過観察が必要 となることの多いものとなる.特に肝細胞がんのように 多相ダイナミック撮影を基本とする検査では,造影前1 相を省略できれば,総じて被ばくを低減させうる.また 腎臓では,嚢胞を取りかこむ腎実質が強く造影されると

Fig. 8 尿路結石に対する 2-material decomposition 解析と撮影 線量 低線量ではノイズは多くなるが,尿酸結石と石灰化結 石の鑑別が可能である. Fig. 9 ヨードマップにおける造影効果の判定 図左の右腎上極にみられる結節はヨードマップに よって造影剤の分布が認められ(矢頭),充実性腎腫 瘤であることがわかる.一方図右の腎腫瘤はヨード マップにて造影剤の分布が見られず(矢印)嚢胞と診 断できる.

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pseudo-enhancementと呼ばれる線質硬化に起因する CT値の増加が見られ,単純 CT との比較があっても充 実性病変との鑑別が難しくなる場合もある.  このような場合でも,ヨード分布画像を用いれば,対 象となる病変に造影剤が分布しているか否かを,造影 剤投与後のみの撮像から,より正確に評価することが できる. 2-3 仮想非造影画像  造影後のみの画像では,画像上の低吸収域や高吸収 域が,造影剤の分布の違いによって生じたコントラスト なのか,元々の実質の濃度が異なっていたのかの判断 に困ることがある.不均一な脂肪浸潤による低吸収や focal spared areaによる相対的高吸収域などが,それに

あたるが,造影後のみの撮影においても,仮想非造影 画像で実質の濃度に不均一があるか否かを参照し, ヨード分布像による造影効果の均一性を評価すること で診断することができる(Fig. 10).  非機能性副腎腺腫は,スクリーニング撮影などで偶 然発見されることの多い病変である.一方,副腎は転移 を来す臓器としても知られており,担がん患者の全身検 索の際に発見されると,転移との鑑別が治療方針決定 上求められる.副腎腺腫は脂質を含有することが特徴 であり,単純 CT での CT 値が 10 HU 未満,あるいは造 影では造影剤投与 15 分後の wash-out が 40%以上など の診断基準がある.偶発腫として発見された場合,こ れらの診断基準を適応するためには何らかの追加撮影 を必要としていた.仮想非造影画像における HU 値は,

Fig. 10 脂肪肝症例における 3-material decomposition 法の応用

造影後 CT において,胆嚢床は周囲肝実質と比べて相対的に高吸収を示 している[(a)矢印].これは脂肪肝による肝実質濃度が全体的に低下する 中で,focal spared area として胆嚢床の脂肪浸潤が弱く,もともと相対的 に高吸収を示しているのか,あるいはこの部位が周囲より強く造影されて いるのか,造影後のみの撮影では判断できない.3-material decomposition によって作成された virtual non-contrast 像(b)では,胆嚢床が周囲より相 対的に高吸収を示しており,脂肪肝の focal spared area であることがわか る.なお同時に作成されたヨードマップ像(c)では肝実質のヨード分布は 均一であり,特に強く造影される領域はないこともわかる.

(a) 造影 CT

(b) Virtual non-contrast (c) ヨードマップ

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単純に 120 kVp で撮像した際の CT 値に置き換わるもの ではないが,脂質を含有する病変であるか否かの参考 になる.  仮想非造影画像では,このような充実性病変の造影 効果や CT angiography での動脈の造影など CT 値が数 百 HU 程度までの造影効果は良好に除去することがで きる.一方,最近,肉眼的血尿の診断や尿路上皮腫瘍 の検出に応用が広がっている CT urography では,尿路 に排泄される造影剤の吸収値は 1000 HU を越えること もある.このように強く造影された尿路内の陰影欠損と して,尿路上皮腫瘍を検出するのであるが,肉眼的血 尿の最も頻度の高い原因は実は結石であり,尿路結石 の確認は不可欠である.そのため腫瘍検出を目的とす る CT urogaraphy においても,単純 CT による結石の評 価が求められることになる.仮想非造影画像は CT 値が 120 kVpで 1500 HU 相当の造影剤であれば,良好に造 影剤を取り除くことができ(Fig. 11),仮想非造影画像に よって単純 CT なしで結石の検出が可能となることが期 待される.  実際の CT urography に仮想非造影画像を適応したと ころ,検出された結石は通常の排泄相 CT urography で は 5/32 個であったとものが,仮 想 非 造 影 画 像 では 16/32個を検出することができた(Fig. 12).しかしなが ら半数の結石は検出できなかったこととなる.特に,骨 (a) 1500 HU の造影剤 (b) virtual non-contrast a b

Fig. 12 CT urographyに対する virtual non-contrast の応用

CT urography排泄相(a)にて,腎盂腎杯は造影剤に満たされており,結石の 検出は困難である.しかしながら,virtual non-contrast 法(b)では尿路の造影 剤は取り除かれ,腎結石を明瞭に確認できる(矢印).

(a) CT urography 排泄相 (b) virtual non-contrast 法

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盤内など線質硬化の影響を受けやすい領域で,対象が 小さな結石の検出を目的とする限りは,現時点では単純 CTを仮想非造影画像に置き換えることは難しいようで ある(Fig. 13). 2-4 至適コントラスト画像  われわれが使用している第一世代の DSCT 機器では 140 kVpと 80kVp の二つの管電圧画像の組み合わせで dual energy imagingを行っているが,前述のごとく管 電圧が低いほどヨード造影剤のコントラストが強くな る.通常は 120 kVp 画像相当のコントラストを得るた め,80 kVp 画像と 140 kVp 画像とを 3 対 7 で混合した 画像を用いるが,管電圧の低い 80 kVp 画像の比率を高 めると, 造影剤のコントラストが上昇し,結果としてよ り少ない造影剤でも高い造影コントラストを得ることが できる.高齢者や腎機能低下症例では, 低管電圧画像 の割合を高めて造影剤のコントラストを上げることで, 最終的には 造影剤の減量を図ることができる可能性が ある(Fig. 14). 3.Dual energy CT の将来展望 3-1 ハードウエアの進歩  われわれが使用している機器は第一世代の DSCT で あったため,dual energy imaging の精度にはまだ不完

全な部分があったが,第二世代の DSCT ではよりエネ ルギースペクトラムの分離が良好となり,dual energy imagingの精度は飛躍的に高まっている.さらに逐次近 似法などに基づくさまざまな画像再構成の進歩によっ て,低線量でもノイズの少ない画像が得られるように なってきており,これが画質の向上のみならず,dual energy imagingの精度の向上にも寄与することが期待さ れている. 3-2 解析ソフトウェアの進歩

 2-material decomposition と 3-material decomposition を同時に適応することは現在の解析ソフトウェアではで きない.これを同時に行う 2-pass dual energy analysis に よって,例えば CT urography において,排泄相の CT urographyの画像から結石を検出し,さらにその結石の 化学組成を診断することができる可能性があり,シーメ ンス社と共同で検討を進めている.  このようなハード,ソフト両面での進歩によって,さ らに多くの情報を低侵襲・低線量で得ることができるよ うになることが期待される. まとめ

 躯幹部の dual energy imaging は特殊な検査ではな く,臨床に寄与する多くの付加情報を供せる機能を備

Fig. 13 CT urographyに対する virtual non-contrast の限界

単純 CT において右尿管口部に微小な結石が認められる[(a)矢 印].こ の 結 石 は CT urography 排 泄 相 に 対 す る virtual non-contrast画像では,ビームハードニングアーチファクトもあり認 識不可能である.

(a) CT urography 排泄相 (b) virtual non-contrast 法

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えている.画像データが大きく,現在は特殊な解析用の ワークステーションを必要とするが,当初の三次元画像 がそうであったように,技術の進歩によってより読影現 場に近づいたプロトコル化,ルーチン化が進むと思われ る.今後は dual energy を応用した被ばくの低減や造影 剤の減量など,診断能を保ちつつ侵襲の小さな検査の 実現に,積極的な応用が期待される.

Fig. 14 Composite imageと造影剤の減量の可能性

造影剤の投与時間,遅延時間を同一にして撮影された造影腹部 CT に て,120 kVp にて通常量の造影剤を投与した(a)と比べて,造影剤量を 3/4とした(b)では 80 kVp の重み付けを大きくすることで,造影剤の コントラストをむしろ強めることができている. (a) 120 kVp 撮影,造影剤 600 mgl/kgBW (b) 80 kVp:140 kVp=8:2,造影剤 450 mgl/kgBW a b 参考文献

1) Qu M, Ramirez-Giraldo JC, Leng S, et al. Dual-energy dual-source CT with additional spectral filtration can improve the differentiation of non-uric acid renal stones: an ex vivo phantom study. AJR Am J Roentgenol 2011; 196: 1279-1287.

2) Watanabe Y, Uotani K, Nakazawa T, et al. Dual-energy direct bone removal CT angiography for evaluation of intracranial aneurysm or stenosis: comparison with conven-tional digital subtraction angiography. Eur Radiol 2009; 19:

1019-1024.

3) Graser A, Johnson TR, Bader M, et al. Dual energy CT char-acterization of urinary calculi: initial in vitro and clinical experience. Invest Radiol 2008; 43: 112-119.

4) Sueyoshi E, Tsutsui S, Hayashida T, et al. Quantification of lung perfusion blood volume (lung PBV) by dual-energy CT in patients with and without pulmonary embolism: prelimi-nary results. Eur J Radiol 2011; 80(3): e505-e509.

5) Neville AM, Gupta RT, Miller CM, et al. Detection of renal lesion enhancement with dual-energy multidetector CT. Radiology 2011; 259: 173-183.

6) Takahashi N, Vrtiska TJ, Kawashima A, et al. Detectability of urinary stones on virtual nonenhanced images generated at pyelographic-phase dual-energy CT. Radiology 2010;

Fig. 2  2-maerial decomposition 法の原理
Fig. 4  Virtual non-contrast 画像
Fig. 6  CT urography における virtual non-contrast 解析 CTU の排泄相では,尿路に排泄された造 影剤によって尿管結石を確認することはで きないが,virtual non-contrast によって尿 路の造影剤は取り除かれ,尿管結石が単 純 CT と同 様 に 明 瞭 に 描 出 され て い る (→).
Fig. 10  脂肪肝症例における 3-material decomposition 法の応用
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