Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japanese Physioal Therapy Assooiation理 学療 法 学
第
38
巻 第8号617
〜
619
頁(
2011
年)
神
経
理
学療法
研 究 部 会
ICF
を
基 盤
と した
中
枢神経疾
患 患
者
の
評
価
と
治
療
の
実 際
*石 田 利 江
* * ICF の概 念は ボバー
ス夫 妻が提唱 して いた 全 人的アプロー
チ であ り,
理 解 する こ と はできても,
忠 実に実 践 する に は セラ ピ ス トに相 当 な努 力 が 要 求 さ れる。
中枢 神 経の学 習 能 力 を考 慮 し た 長 期 的 な視 点から,
患 者や家 族 を 巾 心に学 習 を促 す た めの治 療,
白主 管 理 プロ グ ラム,
介 助 方 法,
タイム フ レー
ム,
そ れ ら を 含 め た環境 設定な ど,
広い 範 囲 に わ た る 援 助 が 必 要 と な る。
脳 科 学の分 野 で は 日々新しい 知 見 が 発表さ れ てい る が,
ま だ わ かっ てい ない こ と が多い 巾枢 神 経 系の機 能 を 理解す るこ と は 大 変難しい。
私た ち セ ラピ ス ト は患者の運動行動か ら 中 枢 神経 系の制 御 不 良の状 態を 理解し,
感覚
を通し て運動を学 習 する シ ス テムを利 用 し適 切 な運 動 感 覚 経験
を援
助し,
制 御機構
に変化 を起こすこ とを試み る職 種であ り治療 者である。ICF
の観 点から はBody functionfstructure を改 善 し
,
それ によっ てactivityを変 化 させ
,
学 習に効 率の よ い環 境 設 定 を行 うことが 必 要であ る。
同時に環 境か らの影 響 を調 整し,
機 能 を獲 得 するこ とが ま た中 枢 神 経系の制 御 能 力 を 改 善 する。一
人ひとり違 う 中枢 神 経 系の制 御 能力が障 害のた め に変化
し て し まう
。
これ を捉
え その 人に合 わせたよい 運動行 動
パター
ンへ つ なぐ
こと.
そ れを通
し 将 来 継 続し て 運動
が改 善 する よう
に学 習を方向
づける に は.
ハ ンズオンに よ る評
価 と問題点
の把 握
は必須
であるc機能獲 得
は代
償 運 動で あ るべ きで は な く,
患者
の主 要 問 題の解 決と そ れ に よ る 運動 行 動の質的 改善を め ざすべ きである。
以前の ICDH 時 代 にい つ まで もimpairmcnt
に ば か り 口を向 けて い ない で,
disability,
handicap を改 善し ようとい う風 潮 も あっ た が.
中 枢 神 経 系の障 害に対してはすべ てが 同 時に改 善 する ように考
え るべ きである。
脳の学 習の方 向 が 誤 り運 動 行 動が悪 化し.
将 来 活 動 を制 限 してし ま う問題 は そのま まにして,
活動
の量 を 増や すこ と,
そ れに合 わせた 環 境 設 定は学 習に適 切かどう
かを 考 え るべ きである。
ICF
評 価項 目 の多さ に惑わ さ れ る こ と な く,
患 者に必 要 な状 況,
環 境のなか,
個人の意思 決 定 が 尊 重 さ れ,
そ の人 らしく遇こすた め に は どの情 報,
評 価 をピッ クァッ プ し.
問 題 解 決に向かっ
て分 析 を深 め てい くかセ ラピ ス トの能 力が問 わ れ るこ と とな るu 運動
の質
の改 善を伴 う機 能獲 得,
活 動,
参加
の拡 大,
環境
の設定
,
こ れ らが 同 時に身 休 機 能の改 善 を さ ら *Thc Practice of the Assessmcnt and Treatment of Adults with
Neuエologiea」Condition Based on ICF * *
順 天 堂 大 学 医学 部 附 属 練 馬 病院 リハ ビ リ テ
ー
ショ ン科 (〒 177−
8521 東 京 都 練 馬区高野 台 3−
1−
10)Toshie 丁shida
.
PT :Rehabilitation Dcpartment ofJuntendo
University Ncrimu IIDspita⊥
キ
ー
ワー
ド:ICF.
評 価 と治 療,
中枢 神 経 疾 患 に 進 め る よ う に 計 画 さ れ る こ と が 工CF
の臨 床実践であると考 え る。
評 価 内 容 を 同 時に治 療 指 標と し て関 連づ ける た め に,
当 院 ではICF
を 基 盤とす るア セス メ ン トチャー
トを 利 用 して いる。 チャー
トは11
項 目か ら な り,
問 題 分 析 を深 め 適 切 な 治療 に 結 びつ く ように 構成さ れ てい る (図D 。
特にゴー
ル設 定は,
獲 得 する機 能の内 容を,
患.
者が どの ような状況 環境でどの くら い の量,
どの ような 内 容 で 行うか,
ま た 目 標 達 成 ま で の期間 は どの く らいか か る か,
な どσ)内 容を 具体的 に 設定す
る (図2
)
,
現 実 的なゴー
ルの具体 的 設 定は,
そ れ に合わ せ た問 題 分 析を容 易にする。 アセ ス メン トチャー
トを使 用し た外 来 患 者の治 療 を 紹 介 する。Assessment
Chart
1
.
全 体 的 印 象
2
,
活 動
と
参 加
、
制 限
3.
関 連 要 因 (
個 人 的
、
環 境
、
補
装
具 な ど)
4,
ゴ
ー
ル5
.
運 動 分
析
6
.
身 体 機 能
/
構 造
7
,
問 題 分 析
8.仮
説
9.
治 療 プ
ラ
ン10.
患 者
の潜 在 能 力
11.
効 果 判 定
図lIGF
を基 盤 とす
るアセス メ ン ト チャー
トの評価
項 凵Systematic
to
formulate
apart
term
goal
患者 が
、一
人で 状 況 は? 量「ま? 質は ? 自助 具 ? 期 間 ? できる,
見 守りで どこで ? どこま で? 努 力して スプ リント すべき、
成 功 す るぺ
き 少しの介 助で 多 くの介助で い つ ? どんな環 境 何回? どれ くらい 長 緊張 通 合 反 応 杖 手 す リ で? <? 同時 課 題 速 さ 関 連 したADL一
活動 図2 ゴー
ル設 定 N工 工一
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理学 療 法 学 第38
巻 第8
号脇講、
難
灘
B
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、,,uc,。re燕
NeurOmuscuiar status
POsture
and movementPosturaltone SensorY s セate Range of movement 亅eint alignment PaiRetc 4M 外来開 始 時 1YSM 外 来 継 続 淦 療 終 了 時 3Y 集中治療終了時
図
3
患 者の
3
年
聞の立位 姿勢
の変化
侍
島「
}
蓼 多 塾 1}
Movement
analVsis
問 題 となるcomponent 左 肩 申 帯 の 後 退 を 伴 う上 肢 の 全体的 属 曲 体 幹 屈 曲 骨 盤 の前傾、
右回旋 左股内旋、
膝 伸展、
足 内反、
底 屈 左 手把持 の た め に 必 要 な component 母 指外 転、
母 指と示指の ピンチ、
手 指の伸展 手 関 節の中間 位 安 定 屑 甲 帯のprotractionと上 肢の窯 間 支 持 体 幹 伸 展 骨盤の後傾と下肢 伸 展支 持 図4
開 封 動作と 立 位姿勢 問 題と な る運 動 要素
お よ び獲 得 すべき運 動 要 索 を 示し た.
症例紹 介:73
歳,
女 性.
診 断 名は右 放 線冠 ラ ク ナ梗 塞。
左 片 麻 痺。
発 症 は2008
年6
月4H
、
、
1
ヵ月 問 当 院 で 早 期治 療を 行い.
回 復 期 病 院 に て3
ヵ月 リハ ビ リ 継 続 し 臼 宅 退 院。
発 症 後4
ヵ月より1
年 聞,
当 院に て 週1
回40
分の外 来 治 療を継 続.
その後は目的に合わ せ て短 期集
申 治 療 を 行っ ている。 現在
発 症 か ら3
年が経 過し てい る。
当 院へ は車で通 院.
院 内は ご家
族の 見 守 りのもと杖歩
行を行っ て い る。 主婦で家事
のときに右手
で 左 手に物 をつ かませて補 助 手と して使 用 して い る。
断 続 的な外 来 治 療である が,
3
年 間の経 過 を患 者の立位 姿 勢の変 化と して 示 す (図3
)。
立位 姿 勢は よ り抗 重 力に,
対 称に改 善し てい る。
ゴ
ー
ル設定
:患者の ニー
ズ は料
理時
に立 位で袋
の開封
がで き ること。
現在
は は さ みを使
用し てい る。
ゴー
ル設 定 を,
家の シ ン ク に前
腕を よ りか け な が ら左 乎の ビンチ に よっ て袋 を保 持 し,
中身
が飛
び ださない ように開封 が 行 えること,
期 間 は 外 来 治 療5
回期問,
5
週 間 を設 定 し たn 運動分析:開封 動 作 時の立位は左 側 支 持が不 十 分 なため姿 勢 の非対称が 強い。
開封 時は左手が強 く握 りこ ん で袋の保 持が し づら く,
右 手で固定と開 ける動 作を行わ なけれ ば な らず 時 間が か か る。
開 封 動 作の問題 と なる運動 要 素は 左肩 甲 帯の後退 を 伴 う上肢の全 体 的 屈 曲.
体 幹屈 山 骨盤の鴕 傾,
右回旋 左 股 図5身
体
機 能の評 価 関 節内
旋,
足 関 節 内 反,
底 屈,
こ れ に対し,
目 的の左 手把持の た めに必要 な運 動 要 素は 左 母 指外 転,
母指示指の ピン チ,
手 指の伸 展 手 関節の中 間位 安 定 肩 甲 帯のプロ ト ラ クショ ンと ヒ肢の空間支 持 体 幹伸 展 骨 盤 後 傾と 下肢伸
展支 持を挙げ た 〔図4)。
こ の不 良 な 姿勢 運 動の原 因 と なる身体
状 況は,
両側の コアコ ン トロー
ルの不足 と左 支 持の低下.
こ れ を補 うた め の代 償 的 な 右 側の國定 と左 体 側,
上 肢の痙性
の発
達,
特
に 左支持
の 不足 を 代償す
る骨
盤の右回旋,
後
退 は左の肩 甲帯の後 退と強 く 結 びつ い てお り,
ヒ肢 機 能を直 接 阻 害して い る。
運 動の少ない 左体側 か ら 上肢に か けては ボデ ィ スキー
マが低 下して い る 〔図 5)e
治 療ではこ の身 体 機 能を改 善し な が ら,
左 手 把 持のた めの 運動 要 素を獲 得 すること が 必須と な る。
問 題 分 析 :問 題の 中心は 立位の姿勢 制 御の低 下,
こ のた めに 左 肩 甲帯の後 退 と上 肢の屈 曲 が 生 じてい る、
この状 態で の巧 緻 動 作,
開封 動 作 は 制 限 される。
さ らに努 力 的に行 う手 指 動作 は 肩甲帯 後退,
上 肢 屈 曲を増加さ せ 立位 姿 勢を 悪 化 さ せ る。
この ように機 能と姿 勢 制 御が お 互い に 悪化を進め てい る 状 況 が 見 ら れ る。
ま た 日 常 生 活の中 で 肩 甲 帯の後 退 を もっ と も 強 め てい る のは寝返 り,
起 きL
が り動 作で あっ た。
ベ ッ ド端を 右 手 で 引っ 張 り全身を そ ら せ て寝 返る た め 左肩 甲帯は強 く後.
退 し,
続 けて 右 下 肢を端
に引っ掛 けて起きL
が る た め体
は固定
さ れ 上肢の屈 曲は強ま る.
寝返 り,
起 き 上 が りの連続 動 作で肩 甲 帯 後退.
上 肢 屈 曲の痙性
は・
気
に増加す
る、
,
そこか ら 立 ち ヒが り,
シンク まで歩
行,
開封動 作と続 くた め,
動作
開 始 峙に は すでに不 良な 姿勢 制 御を とる状 態である。
仮 説 :.
上肢,
手 指 機 能を阻 害して いるのは姿 勢 制 御の不 良 もっ とも 異常 性が強 まる のは,
寝 返 り,
起 き上 が り動 作。
こ れ か ら連 続 して の機 能 が 開始さ れ る た め畏 常な開 始となる 今 回は寝 返 り,
起 き上 が り動作 を改 着 することで開 封 動 作 が獲 得 で き ると考 え る 良.
好 な 姿 勢 制 御が継 続 する学 習プ ラン (自主 管理,
トレー
ニ ング)が 必要と考 える.
治 療プラ ン ;
体
幹の回 旋 を利
用 し,
両側コ ア活動
の統 合 と右 側の過剰 固定
,
左側 痙性の軽 減 を同時に関る.
これを とお し て 坐位か ら 臥 位へ の従 重 カ コ ン トロー
ルを 学 習 す る (図6
)、
,
続 い て 臥 位 で 肩 甲 帯の 安 定 を 図 り 上肢の伸 展 を得る。
ヒ肢の空 間 支 持 と.
両 側 体 幹の 攴 持 を寝返 り動 作 を 通じて学習する (図7).
N工 工一
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Japanese Physioal Therapy AssooiationICF を基 盤 とした 中枢 神 経 疾 患 患 者の評 価と治 療の実 際