肢体不自由児療育の歴史的変遷と小児理学療法士専門職への課題
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(2) 790. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 図 1 小児理学療法士専門職の課題. きたい」と話された。そのとき小児分野の理学療法士は全国で. 在能力を最大に引き出すことができ,困難そうな動作をたやす. 275 名しかいなかった。17 年後の 1990 年には 405 名まで増え. くし,発達未経験項目を減少でき,本人や家族があきらめてい. たが,全体数から見れば微々たる数字に過ぎない。このボバー. た機能や行動を可能にし,重力や慣性などの物理的要因(人を. ス 8 週間講習会を終了した頃,NHK でドキュメンタリー番組. 物体化)に打ち克ち,脳性まひ児を人間(子ども)らしくする,. 「明日への記録」が放映され,脳性まひにも 0 歳からの早期発. 技能と知識を手にしている。知識として中枢神経系の構造的組. 見・早期治療が可能であることが紹介された。番組を視聴した. 織化(神経解剖学,神経生理学,システムコントロール,の有. 家族が連れてこられた 17 歳の少女に衝撃を受けた。身体の向. 機的理解)脳障害範囲把握(病因理解,MRI,CT 読影解釈な. きを変えること,座位姿勢を保持すること,手足を動かすこと. ど),神経可塑性の基礎研究と臨床知識,モーターコントロー. の自発性がまったく見られず,脊柱は著しい捻転側彎,四肢に. ル理論,モーター学習理論,健常児と障がい児の発達モデル,. 強い屈曲拘縮を示されていた。父親から少女の成長を記録され. (発生学 胎児運動分析も含む)などを教授するが,各技能と. ていた 8 ミリ映画を貸し出してもらって観察した。幼少時には. 結合し実践に直結させる考え方を例示している。受講後も考え. 良好な座位バランスや両手動作を示されていたから,2 度目の. 続け,子どもやご家族とよいエピソードを積み重ね,やはり子. 衝撃を受けた。幼少時の良好な機能は,なぜに失われてしまっ. どもはあどけなく可愛らしい,無限の可能性を秘めているとい. たのだろうか? と考え,障がいが重度化しないように予防策. う実感を寄せられる。小児リハビリテーション特に脳性まひの. に全力を尽くす小児セラピストになろうと強く決意した。担当. 治療は,甚だ困難で近寄りがたい,はじめから敬遠してしまっ. 児の中から,超早期治療成果を検証するモデルを設定した。出. ている若い理学療法士がいるならば,それでは専門職として興. 生時の核黄疸顕著で強度の反り返りが激しい生後 6 ヵ月のジス. 味深々たる人の潜在能力を見逃してしまう,それはネガティブ. トニックアテトーゼ児に,1 回 60 分の外来個別治療を週 3 回 3. キャリアだ,子どもやご家族とともに,心豊かに広がるポジ. 年間継続した。この経過と 9 年後の結果を理学療法学第 12 巻. ティブキャリアの積み重ねを勧めたい(図 1)。. 第 6 号で発表した。数回の単独入園,定期的な外来 PT,OT. 臨床像が大きく変化した脳性まひ児を正しく評価・治療する. を彼の 30 歳過ぎまで継続した。流暢な会話,歩行器歩行,お. には,最近の科学知識収集が必要である。しかも,脳科学の進. 箸で食事可能,ワイシャツのボタン操作を,次々に獲得された。. 歩は著しいので常に更新してゆかねばならない。しかし評論家. 主治医からはジストニックアテトーゼの従来の予後を覆す,画. 的な知識偏重ではなく,技能とよいキャリアの積み重ねと結合. 期的な治療成果と評価された。その他の実践成果も幾度か本学. して,調和のとれた臨床実践家が望まれる。. 会で発表し,詳細を理学療法学に掲載した. 1–6). 。しかし,道義. 的に非治療例などのコントロール群設定が難しく,脳性まひ症 状の多様性もあり,客観的治療効果判定までには至っていな い。これからの者も含めた測定・データ化技能向上の課題であ る。客観的データ提示による論文執筆も重要であるが,これに 費やす労力よりも講習会などで,小児リハビリテーションの魅 力を共有し,その輪を広げることに,精力を注いできた。直接 に手を取り互いを了解できた PT,OT,ST は,今までに 1,500 人を超える。筆者の試行錯誤を整理し,脳性まひ児治療に新た に加わる後進たちには,陽性思考の臨床推論循環実践法を,教 授している。トレーニングを受けたセラピストは,子どもの潜. 文 献 1) 紀伊克昌:脳性麻痺療育体系の 20 年の歩みと今後の課題.理学療 法学.1985; 12: 411–417. 2) 紀伊克昌:脳性麻痺に対する早期治療.理学療法学.1986; 2・3: 203. 3) 紀伊克昌:中枢神経系疾患患者に対する運動療法技術の発展.理 学療法学.1995; 22: 336–340. 4) 紀伊克昌:近年の premature baby(未成熟児)に求められている 新たな理学療法展開.理学療法学.2003; 30: 154–157. 5) 紀伊克昌:ボバース概念における検証作業.理学療法学.2007; 34: 345–348. 6) 紀伊克昌:脳性麻痺の評価と治療─臨床推論の例示─.理学療法 学.2012; 39: 219–221..
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