急性期病院におけるリハビリテーション専門職配置の効果
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(2) 256. 理学療法学 第 43 巻第 3 号. 図 1 ADL 維持向上等体制加算の概要 厚生労働省作成の ADL 維持向上等体制加算の概念図である.急性期病棟におけるリハビリテーション専門職 の配置に対する加算方法,取り組み内容,アウトカム評価のまとめである.. ビリテーション病棟への移行を促進する目的で急性期病. 算定要件として,退院または転棟時の ADL(Barthel. 棟にリハビリテーション専門職を配置することが必要で. Index にて評価)が入院時と比較して低下した患者の割. ある. 10). といわれ,機能や ADL の早期回復,廃用予防. 合 が 3 % 未 満 で あ る こ と, 院 内 で 発 生 し た 褥 瘡. などのリハビリテーション効果を高めることができる。. (DESIGN-R 分類 d2 以上)を保有している入院患者の. また,リハビリテーション専門職の病棟配置において. 割合が 1.5%未満であることがアウトカム評価として導. 「専任」とは当該業務を行う間は責任をもって担当する. 入された. 13). 。ADL 維持向上等体制加算の基本的な考え. ことであり, 「専従」とは当該医療機関が当該業務を行. として,(1)疾患別リハビリテーションの非該当者に対. う間,専らその業務に従事し他の業務には従事しないこ. して入院中の ADL 低下等を予防し,早期在宅復帰を促. と. 11). と定義されている。 「専任」では他の病棟での業. 進する。(2)多職種協働,安全管理,廃用・褥瘡予防,. 務を兼任することができるが, 「専従」となれば他の病. 患者・家族との情報共有がキーワードとされている。ま. 棟での業務を兼務することはなく,その病棟での業務に. た,この加算は疾患別リハビリテーションの単位数に縛. 専念できる。リハビリテーション専門職の病棟配置にメ. られないため,今までの疾患別リハビリテーションの延. リットはあるが,日本リハビリテーション医学会の急性. 長ではなく,予防の概念を含んだ新たな働き方が求めら. 期リハビリテーション実態調査ワーキンググループの報. れており. 告. 12). によると,平均リハビリテーションスタッフ数. (100 床あたり)は急性期病院で理学療法士 2.8 人,作業. 14). ,病棟医師や看護師に対して,どのように. してリハビリテーションに対する理解を深めてもらう か,その方法を確立していくことも必要となる. 15). 。. 療法士 1.3 人,言語聴覚士 0.8 人,回復期病院で理学療. 当院では 2013 年度に理学療法士を専任配置,2014 年. 法士 19.9 人,作業療法士 13.9 人,言語聴覚士 5.5 人であ. 度に ADL 維持向上等体制加算算定とともに理学療法士. り,急性期病院で働くリハビリテーション専門職は少な. を専従配置した。理学療法士を専従配置したことで入院. く,マンパワー不足もあり多くの診療科・病棟をもつ総. 直後から理学療法士が患者評価を実施でき,それまでの. 合病院において専従配置はあまり行われていなかった。. 疾患別リハビリテーションの延長ではなく,ADL 維持. 急性期リハビリテーションの発展として 2014 年度の. 向上を目的とした多職種連携,予防理学療法など患者の. 診療報酬改定により,急性期病棟におけるリハビリテー. 退院後の生活を見据えた患者マネジメントの実践が可能. ション専門職の専従配置に対する評価として「ADL 維. となった。リハビリテーション専門職を病棟に配置した. 持向上等体制加算」が新設された(図 1)。この加算の. 効果を ADL 能力,在院日数,自宅復帰率などを指標と.
(3) 急性期病棟におけるリハビリテーション専門職配置の効果. 表 1 当該病棟の概要. 257. ン専門職を配置する必要性が高い病棟として選択され. 診療科. 呼吸器内科. た。また,リハビリテーションの内容としては関節可動. 病床数. 60 床. 域練習,筋力強化練習などの床上に留まらず,立位・歩. 入院患者の平均年齢. 68 歳. 行練習など離床を積極的に実施した。. 看護配置基準. 7 対 1 入院基本料. 2013 年 5 月 21 日より,理学療法士(経験年数 11 年目,. 疾患内訳. 肺がん,慢性閉塞性肺疾患, 肺炎,気胸,呼吸不全など. 認定理学療法士)1 名,作業療法士(経験年数 5 年目)1. 平成 25 年度実績. 名の計 2 名を専任配置した。そして 2014 年 4 月 1 日よ り ADL 維持向上等体制加算を算定し,専任配置してい た理学療法士を同病棟に専従配置,またそのサポートと. 表 2 対象の基本属性 対照群 症例数(例) 平均年齢(歳) 性別 男:女(例). して作業療法士 1 名を引き続き専任配置した。具体的な. 専任群. 専従群. 取り組みとして病棟朝のカンファレンスに参加し新規入. 44. 79. 83. 院患者や状態変化者の把握をした。病棟昼のカンファレ. 74.2 ± 12.1. 70.3 ± 10.3. 76.4 ± 8.8. ンス参加により,病棟看護師と「している ADL」と「で. 34:10. 54:25. 62:21. きる ADL」についてや,そのゴールなど密な情報共有 を実施し,疾患別リハビリテーション実施担当者とのパ イプ役として必要な情報をタイムリーに伝達した。また,. して検討した。 リハビリテーション専門職病棟配置の経緯. 病棟医師で行われる教授回診に参加することで病棟医師 と安静度や全身状態の確認,治療方針の統一などの情報 を共有し,病棟と効率的連携が図れるように努めた. 16). 。. 当院はリハビリテーション科を含む診療科 37 科,許 可病床数 1,505 床(一般 1,454 床,精神 51 床:2014 年 4. 2.方法. 月 1 日現在)の特定機能病院であり,多くの診療科,病. 1)理学療法業務,2)患者動向,3)スタッフの意識. 床数を有しており充実した多職種連携には,多くの人と. 調査の 3 つの項目に対して調査検討した。. の連携や広い空間をカバーする情報伝達が必要になると. 1)理学療法業務. 考えられる。2014 年度は常勤の理学療法士 50 名,作業. 専従群で病棟配置された理学療法士 1 日の業務の変化. 療法士 29 名,言語聴覚士 13 名が在籍し,各診療科から. を把握し,取り組み内容を明確化することで,各群間で. 依頼のあった患者に対してリハビリテーションを提供し. のその内容・時間配分について検討した。. ている。また,2010 年より ICU に理学療法士を専任配. 2)患者動向. 置,2011 年度より SCU に理学療法士,作業療法士を専. 疾患別リハビリテーション実施者において当院リハビ. 任配置し超急性期のリハビリテーション充実を図った。. リテーション部の患者データベースより後方視的に調査. 対象と方法. した。調査項目は在院日数,入院からリハビリテーショ ン 開 始 ま で の 日 数, リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 実 施 日 数,. 1.対象. Functional Independence Measure( 以 下,FIM) に つ. 当院急性期一般病棟である呼吸器内科病棟(表 1)に. いてリハビリテーション開始時と終了時の総合計,FIM. おいて疾患別リハビリテーション実施者(死亡退院を除. 利得(退院時 FIM −入院時 FIM) ,FIM 効率(FIM 利. く)を対象とした。リハビリテーション専門職を病棟配. 得 / リハビリテーション実施日数) ,在宅復帰率等とし. 置する以前の 2012 年 4 月 1 日∼ 9 月 30 日の 6 ヵ月間に. た。リハビリテーション実施割合として,各群で 7 月の. 当該病棟へ入棟した患者 44 例を対照群,病棟に専任配. 1 ヵ月間に入棟していた患者のうち疾患別リハビリテー. 置した 2013 年 6 月 1 日∼ 11 月 30 日の 6 ヵ月間に当該. ションを実施していた患者の割合を毎日調査した。また,. 病棟へ入棟した患者 79 例を専任群,病棟に専従配置し. 専従群において ADL 低下率,褥瘡発生率を調査した。. た 2014 年 4 月 1 日∼ 9 月 30 日の 6 ヵ月間に当該病棟へ. 3)スタッフの意識調査. 入棟した患者 83 例を専従群とした(表 2)。当該病棟の. リハビリテーション専門職配置の効果検証のため,ア. 疾患分類は,肺がん,慢性閉塞性肺疾患,肺炎,気胸等. ンケート調査をリハビリテーション専門職の専従配置後. が多く,なかでも肺がんはもっとも多くの割合を占めて. の 2014 年 8 月に実施した。対象はリハビリテーション. いる。当該病棟は高齢化率が高くリハビリテーション実. 専門職を配置している呼吸器内科病棟に所属する医師. 施率が低いため,充実したリハビリテーションが提供で. 13 名,看護師 16 名の病棟スタッフ計 29 名,当院リハ. きていない可能性があった。病棟との連携強化を図り質. ビリテーション部に所属する理学療法士 38 名,作業療. の高い医療を提供するために,専従のリハビリテーショ. 法士 26 名,言語聴覚士 9 名の計 73 名とした。病棟スタッ.
(4) 258. 理学療法学 第 43 巻第 3 号. 表 3 各期間での取り組み. 区分 担当患者 担当療法士 患者,病棟スタッフと連携 カンファレンス参加. 対照群. 専任群. 専従群. 病棟兼任. 病棟専任. 病棟専従. 制限なし. 当該病棟中心. 当該病棟のみ. 疾患別リハ. 疾患別リハ+病棟担当. 病棟マネジメント. 担当患者のみ. 当該病棟の疾患別リハ実施者. 病棟患者全員. なし. 毎日朝・昼. 毎日朝・昼,退院調整, ADL 向上等を随時相談. ・疾患別リハの実施 ・日々のリハ記録 ・患者,家族へ情報提供 取り組み内容. ・疾患別リハ実施 ・日々のリハ記録 ・患者,家族へ情報提供 ・カンファレンス参加 ・病棟と情報共有,記録. ・患者,家族へ情報提供 ・カンファレンス参加 ・病棟と情報共有,記録 ・カンファレンス開催 ・定期的な ADL 評価 ・ADL 指導 ・安全管理 ・指導内容の記録. フにはリハビリテーション専門職配置における効果につ いての質問を中心とし,リハビリテーション部のスタッ フには病棟専従者が病棟との連携でどのような役割を望 むかを質問し,専従配置による役割の明確化をめざし た。質問内容は,(1)病棟の専従配置についてどのよう に思うか,(2)病棟の専従配置前後においてリハビリ テーションへの意識に変化があったかどうか,(3)病棟 専従者に望むのはどのような点か,とした。質問は項目 の選択とその項目を選択した理由の複数回答可能な設定 とした。質問内容を紙面にて配布し,無記名回答後に回 収,集計した。 3.統計学的分析 対象群,専任群,専従群の各群間で比較を行った。統 計手法としては,在宅復帰率,疾患別リハビリテーショ. 図 2 各群での療法士の一日のスケジュール変化 当院のリハビリテーション専門職における一日の平均勤務時 間はお昼休憩を除いて 8 時間(480 分)である.各群におい てリハビリテーション専門職の一日の勤務内容の時間配分を 示す.臨床業務は疾患別リハビリテーションを算定する時間, 電子カルテ業務は電子カルテの記載,閲覧する時間,病棟業 務は病棟に在中し病棟スタッフとの情報共有など連携をとる ための時間である.. 2 ンを実施していた患者の割合は χ 検定を用い,FIM 開. 始時と終了時の総合計,FIM 利得,FIM 効率は MannWhitney U 検定,在院日数,入院からリハビリテーショ. 減少し,病棟業務時間が対照群,専任群,専従群の順に. ン開始までの日数,リハビリテーション実施日数は等分. 増加した。専任群では病棟において担当以外の疾患別リ. 散 の 場 合 は Tukey HSD 法, 等 分 散 で は な い 場 合 は. ハビリテーション実施者の把握や情報共有のためのカン. Games-Howell 法を用いた。有意水準は 5%とした。. ファレンスなど病棟業務が導入されており,専従群では 入棟時の ADL 評価,担当以外の当該病棟患者全体の患. 4.倫理的配慮. 者・家族との情報共有,病棟スタッフとの情報共有のた. 本研究の得られたデータの管理は連結可能匿名化し,. めのカンファレンス開催が増加したため病棟業務時間は. 匿名データ本体はセキュリティー対策を十分に行ったコ. さらに長くなった。専従群では疾患別リハビリテーショ. ンピュータ上でのパスワード管理を行い,個人情報が特. ン実施の担当者になることは少なく,病棟全体を把握す. 定できないように配慮した。. ることに努めた。情報収集・共有のためのカルテ閲覧,. 結 果. 記載時間が増加したため,電子カルテ業務は大幅に増加 した。また,専従群では ADL 維持向上を目的としてい. 1.理学療法業務. たが,ADL 練習に特化ではなく,患者個別の理学療法. 各群での取り組み内容の違いを表 3 に示した。病棟専. 評価より必要に応じて関節可動域練習,筋力増強練習な. 従者の 1 日のスケジュール(図 2)では臨床業務時間が. ど機能的な介入も実施した。終末期の患者については疼.
(5) 急性期病棟におけるリハビリテーション専門職配置の効果. 259. 表 4 各群での結果. リハ実施割合(%). 対照群. 専任群. 20.3. 41.6 *. 平均在院日数(日). 44.8 ± 34.8. *. 14.3 ± 15.5. 28.6 ± 18.7 **. 11.2 ± 14.5 *. リハ実施日数(日). 50.4 *. 37.5 ± 27.3 **. 入院からリハ開始までの日数(日). 専従群. 5.0 ± 4.3 *. 30.5 ± 24.2. 25.3 ± 21.0. 23.6 ± 16.2. 81.8. 87.3. 90.4. リハ開始時 FIM 運動項目合計(点). 53.7 ± 22.5. 59.2 ± 23.4. 51.2 ± 24.9. リハ開始時 FIM 認知項目合計(点). 29.8 ± 7.8. 31.1 ± 6.3. 29.3 ± 6.5. リハ終了時 FIM 運動項目合計(点). 66.6 ± 21.1. 71.0 ± 20.7. 65.9 ± 24.0. リハ終了時 FIM 認知項目合計(点). 30.1 ± 7.7. 31.6 ± 6.2. 30.1 ± 7.9. リハ開始時 FIM 総合計(点). 83.5 ± 27.8. 90.3 ± 27.4. 80.3 ± 30.4. リハ終了時 FIM 総合計(点). 96.7 ± 26.4. 102.7 ± 25.1. 96.0 ± 29.4. FIM 利得(点). 13.2 ± 17.4. 12.4 ± 16.2. 15.5 ± 20.9. FIM 効率(点 / 日). 0.49 ± 0.66. 0.60 ± 0.95. 0.63 ± 0.83. 在宅復帰率(%). * p<0.01 ** p<0.05 平均値±標準偏差. 痛緩和のためのリラクセーション実施,家族とのかかわ. 「よかった」を合わせると 100%であった。よかった点. りなどを重視した。カンファレンス開催として退院に関. について 50%以上であった項目は,病棟医師では,リ. するカンファレンスを開催し,理学療法士も退院調整に. ハビリテーションの内容が把握しやすい 84.6%,情報共. かかわったり,リスク管理や病棟での ADL 向上に関す. 有がしやすい 76.9%,ADL 能力が把握しやすい 69.2%,. るカンファレンスを開催した。. 廃用による体力低下の減少 61.5%,在宅へ向けた指導が しやすい 61.5%であった。また,病棟看護師では,情報. 2.患者動向. 共有がしやすい 75.0%,リハビリテーションの内容が把. 病棟全体の患者のうちリハビリテーションを実施して. 握しやすい 56.3%,ADL 能力が把握しやすい 56.3%,. いる患者の割合は対照群より専任群にて有意に増加し,. ADL 能力の回復が早い 50.0%であった。リハビリテー. 専任群より専従群にて有意に増加した。疾患別リハビリ. ション専門職からは全体で「とてもよい」19.7%, 「よい」. テーション実施者において,在院日数と入院からリハビ. 62.1%であった。よかった点について 50%以上であった. リテーション開始までの日数は専従群が対照群,専任群. 項目は,病棟との連携がとりやすくなったが 60.0%で. と比して有意に短かった。在宅復帰率は介護施設入所も. あった。質問(2)配置前後においてリハビリテーショ. 含めて対照群 81.8%,専任群 87.3%,専従群 90.4%と在. ンへの意識に変化があったかという問いでは全体の. 宅復帰の割合が対照群と比較して専任群,専従群の順に. 75.9%がリハビリテーションに対する認識に変化があっ. 有意差はみられなかったが増加した。FIM 総合計の開. たと答えた(図 3)。質問(3)病棟専従者に望むのはど. 始時,終了時では有意差はみられなかったが,FIM 利. のような点かでは,理学療法士は病棟医師との情報共有. 得は対照群,専任群と比較して専従群では高くなり,. におけるパイプ役が 26.3%,作業療法士は病棟看護師と. FIM 効率は対照群,専任群,専従群の順に高い値を示. の情報共有におけるパイプ役が 38.5%,言語聴覚士では. した(表 4)。また,病棟全体の患者において,ADL 維. 病棟看護師との情報交換におけるパイプ役が 50.0%との. 持向上等体制加算算定後の専従群では 2014 年 10 月 1 日. 回答がそれぞれもっとも多かった(図 4)。その理由と. の時点までで ADL 低下率が 2.1%,2014 年 10 月 1 日の. して理学療法士はリスク管理や治療方針を加味して早期. 時点で褥瘡発生率 0%であった。. 離床,ADL 向上をめざすため,医師から医学的情報収 集をしたいのであり,作業療法士はしている ADL とで. 3.スタッフの意識調査. きる ADL の乖離を埋められるため,言語聴覚士では食. 質問(1)病棟配置についてどのように思うかという. 形態や姿勢が病棟に周知しやすくなるため,病棟看護師. 問いでは病棟医師,看護師からは「とてもよかった」と. から日常の状況を聞きたいとの回答があった。また,臨.
(6) 260. 理学療法学 第 43 巻第 3 号. 図 3 アンケート結果 アンケートの対象は病棟スタッフとして病棟医師,看護師,療法士としてリハビリ テーション専門職である理学療法士,作業療法士,言語聴覚士とした.. 図 4 アンケート結果 アンケートの対象は療法士としてリハビリテーション専門職である理学療法士,作 業療法士,言語聴覚士とした.. 床に対してリスク管理や ADL 向上のためのアプローチ. たリハビリテーション開始について,病棟主治医と直接. 方法の指導を受けられてよかったと若手のリハビリテー. 相談できることがリハビリテーション実施割合増加に寄. ション専門職から回答があった。. 与したと考えられた。また,専従群では当該病棟へ入棟. 考 察. 時に ADL 評価を実施するため専任群よりも入院直後の ADL 状況がより詳しく把握でき,機能・能力の回復ま. 対照群,専任群,専従群の各群間でリハビリテーショ. たは予防が必要であるのかが ADL を含む理学療法評価. ン実施患者割合は有意差がみられ,専任群よりも専従群. により明確になった。入棟時の評価から疾患別リハビリ. の方がリハビリテーション実施割合は高かった。また,. テーションの必要性が感じられた場合には,病棟主治医. 専従群と対照群,専従群と専任群の比較では入院からリ. と適宜相談し,疾患別リハビリテーションへ早期に移行. ハビリテーション開始までの日数,在院日数にて有意に. できた。早期にリハビリテーションが開始できたことで. 短縮していた。専任群・専従群では朝のカンファレンス. 廃用症候群の予防,二次合併症の予防となったこと,病. に参加し,新規入棟患者の情報収集をすることでリハビ. 棟医師・看護師と退院に関するカンファレンスの開催時. リテーション実施の必要性を入院早期から把握でき,ま. に身体機能,生活能力を詳細に評価や帰結予測できる理.
(7) 急性期病棟におけるリハビリテーション専門職配置の効果. 261. 学療法士が情報提供したことが,在院日数の短縮,在宅. 把握し,発信することが求められ,コミュニケーション. 復帰率向上の傾向につながった。そのような効果がみら. 能力,情報処理能力が必要である。また,経験の豊かさ. れた要因のひとつとして,専従群では疾患別リハビリ. や見識の深さといった素養が大切になる. テーション実施による単位時間に捕われなくなったこと. ている。さらに,若手のリハビリテーション専門職から. で対照群,専任群よりも病棟業務の時間を多く確保で. は臨床に対してリスク管理や ADL 向上のためのアプ. き,病棟全体の患者の把握に努め,病棟スタッフや患. ローチ方法の指導を受けられてよかったとの回答があっ. 者・家族との連携に時間を費やすなど患者マネジメント. た。病棟スタッフとカンファレンスなどを通じて情報共. の促進がみられたことが挙げられた。病棟での滞在時間. 有が図れたことで急性期病棟において状態変化時の最新. が長くなり,病棟スタッフとの連携もとりやすくなった. 情報が常に収集でき,若手にはその情報を専従者からリ. ことから病棟主治医の治療方針や患者の状況の変化もす. ハビリテーション時に配慮すべきリスクも踏まえて説明. ぐに把握でき,病棟専従者から疾患別リハビリテーショ. していたことでリスク管理が十分に図れていた。また,. ン担当者に対して速やかに情報伝達できた。各群におい. 当院において理学療法士,作業療法士の病棟配置によ. て FIM 効率で有意差はみられなかったが対照群,専任. り,疾患別リハビリテーション実施患者の割合が増加し. 群,専従群の順に改善傾向であったことより,早期にリ. た。しかし日本リハビリテーション医学会の急性期リハ. ハビリテーションを開始できたことで廃用予防となり,. ビリテーション実態調査ワーキンググループの報告によ. 在院日数短縮によって一日あたりの ADL 改善率に変化. ると,リハビリテーション科医師のいない急性期病院で. があったと示唆された。. はリハビリテーション専門職の人員配置はさらに少な. アンケート調査より,病棟スタッフからは情報共有が. く. しやすくなった,リハビリテーションに対する認識が変. 施割合増加に十分な対応ができない可能性もあり,急性. 化したとの回答があり,リハビリテーションの理解度が. 期病院においてリハビリテーション専門職の人員確保は. 向上していた。リハビリテーション専門職からは病棟医. 重要である。. 師,看護師とのパイプ役として役立ったとの回答が多. ADL 維持向上等体制加算におけるアウトカム評価と. かったことから,多職種連携が重要であると考えられ. して ADL の低下率 3%未満とあり,当院でも基準を満. る。多職種連携を実施するうえで急性期病棟の特性とし. たしているが当該病棟の疾患分類をみると,肺がん,慢. て, 平 均 在 院 日 数 13 日 前 後 を 想 定, 病 床 数 は 35 万. 性閉塞性肺疾患,間質性肺炎,急性肺炎,気胸等が多く,. 17). 14). ともいわれ. 12). ,病棟配置により疾患別リハビリテーションの実. といわれており,その機能は高度急性期的な要素. なかでも肺がんはもっとも多くの割合を占めている。そ. から回復期的要素までもがあり,理学療法士においても. の中には肺がんのステージⅣで終末期の患者や慢性閉塞. 17). 性肺疾患,間質性肺炎の急性増悪により重症化した患者. 今回の結果から急性期リハビリテーション実施にあた. もみられ,原疾患の進行によりリハビリテーション専門. り,人工呼吸器管理中の高度急性期にある患者から,. 職が関与しても ADL 維持向上が困難な場合がある。そ. ADL 向上し社会復帰をめざす患者まで多岐にわたり,. れは,ADL 低下率に大きく影響し,ADL 維持向上等体. それを短期間で対応しなければならないことがわかっ. 制加算におけるアウトカム評価の ADL 低下率は疾患内. た。一般急性期病棟のスタッフはリハビリテーションに. 訳に大きく左右されると考えられる。よって,終末期,. 精通していない場合が多く,そのスタッフと他職種連携. 進行性の疾患,超急性期の状態不安定な患者などではア. を実施するには,高いコミュニケーション能力をもつリ. ウトカム評価について考慮される必要がある。また,. ハビリテーション専門職を病棟配置する必要があり,専. ADL 向上ばかりに目を向けるのではなく褥瘡発生率な. 従者の選定基準は今後の課題と考えられる。急性期病棟. どにも気を配り,自己では十分な活動ができない患者に. の業務は緊急入院や患者の急変などで繁忙度が高く,話. 対して病棟と連携したポジショニング指導や栄養状態,. しかけるタイミングや内容を簡潔にまとめられる能力が. マットレスの種類などを考慮,患者・家族を含めた精神. 求められるとも感じている。また,生命予後に悪影響を. 的援助も重要である。チーム医療とは「医療に従事する. 及ぼさないためのリスク管理の実践や疾患別リハビリ. 多種多様な医療スタッフが,各々の高い専門性を前提. テーション実施時間以外での転倒予防ができる経験や知. に,目的と情報を共有し,業務を分担しつつも互いに連. 識が必要であり,自宅退院者が多いことから退院後の生. 携・補完し合い,患者の状況に的確に対応した医療を提. 活を見据えた能力や参加を考慮した帰結予測の実施が必. 供すること」といわれている. 要と考えられる。さらに,疾患別リハビリテーションは. 予防の概念を含んだ ADL 維持向上等体制加算の算定に. 他のリハビリテーション専門職が実施しているため,自. よる病棟専従の効果は大きいと考えている。. 床. 高度急性期から回復期までの対応能力が求められる. 。. 分の担当以外の患者の最新の ADL 状況を常に把握しな ければならない。よって専従者には多くの情報を理解・. 10). 。以上より多職種連携,.
(8) 262. 理学療法学 第 43 巻第 3 号. 結 論 2014 年度の診療報酬改定により ADL 維持向上等体制 加算が新設され,予防という取り組みをしっかり根づか せることが,今後の医療にとって重要である。よって, 急性期病棟での予防の知識をもつリハビリテーション専 門職が活躍することはとても有効なものになる. 18). とい. われている。今回の取り組みを通じて,急性期病棟にお いてリハビリテーションへの理解度が向上し,入院早期 からリハビリテーション開始,在院日数短縮などの効果 が明確になった。よって,急性期病棟にリハビリテー ション専門職を配置することは病棟医師,看護師と情報 共有を密に行え,廃用予防,二次合併症予防を行いなが ら在院日数短縮が図れるといった治療の効率化に繋がる と示唆された。今後急性期リハビリテーションの発展の ためにも,この ADL 維持向上等体制加算を利用した新 たな働き方を確立していく必要がある。今後さらに取り 組み内容の指標を明確にし,疾患別リハビリテーション 実施患者に限らず病棟全体の患者における ADL 維持向 上などの能力面や自宅復帰率向上による社会参加の効果 などを検討していきたいと考えている。 文 献 1)Barnett K, Mercer SW, et al.: Epidemiology of multimorbidity and implications for health care, research, and medical education: a cross-sectional study. Lancet. 2012; 380: 37‒43. 2)Boyd CM, Ladefeld CS, et al.: Recovery of activities of daily living in older persons. JAMA. 2010; 304: 1919‒1928. 3)Brown CJ, Roth DL, et al.: Trajectories of life-space mobility after hospitalization. Ann Intern Med. 2009; 150: 372‒378. 4)才 藤 栄 一: 高 齢 社 会 と リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 医 療.THE BONE.2012; 26: 21‒27.. 5)Landefeld CS, palmer RM, et al.: A randomized trial of care in a hospital medical unit especially designed to improve the functional outcomes of acutely ill older patients. N Engl J Med. 1995; 332: 1338‒1344. 6)Cunliffe AL, Gladman JR, et al.: Sooner and healthier; a randomized controlled trial and interview study of an early discharge rehabilitation service for order people. Age Ageing. 2004; 33: 246‒252. 7)青山 誠:急性期理学療法の未来図.理学療法学.2011; 38: 603‒604. 8)影近謙治:大学病院における取り組み―病棟ユニット制, 365 日リハビリテーション.総合リハ.2014; 42: 211‒218. 9)平田和彦,伊藤義広,他:病棟専従理学療法士配置によ る効果の検討.国大法人リハコ・メディ会誌.2010; 31: 20‒22. 10)厚生労働省医政局・チーム医療の推進に関する検討会; チ ー ム 医 療 の 推 進 に つ い て,2010.http://www.mhlw. go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319-9a.pdf.(2015 年 3 月 30 日 引用) 11)月 刊 保 険 診 療 編 集 部;Part3 新 点 数 Q & A 総 ま と め (下).月刊保険診療.2010; 65: 40‒63. 12)小山照幸,八木麻衣子,他:日本リハビリテーション医学 会研修施設における療法士数の実態調査.Jap J Rehabili Med.2014; 51: 405‒407. 13)厚生労働省:平成 26 年度診療報酬改定の概要 2014 年 3 月 19 日.http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou12400000-Hokenkyoku/0000039378.pdf(2015 年 3 月 30 日 引用) 14)日本理学療法士協会:急性期病棟への理学療法士の配置に ついて(ADL 維持向上等体制加算について 2014 年 3 月 20 日.http://www.japanpt.or.jp/00_jptahp/wp-content/ uploads/2014/03/kyuseiki_pt_haichi3.pdf(2015 年 3 月 30 日引用) 15)秋月玲子:診療報酬改定にみる今後のリハビリテーショ ン.総合リハビリテーション.2014; 42: 959‒964. 16)平野明日香,加藤正樹,他;急性期病棟における療法士専 従の効果と役割.理学療法ジャーナル.2015; 49: 521‒527. 17)半田一登:大きく変化する医療環境に適合した人材育成. 総合リハ.2014; 42: 943‒948. 18)半田一登:特集 平成 26 年診療報酬改定.日本理学療法 士協会広報誌 笑顔をあきらめない.2014; 16: 2‒7..
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