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脱中心化は感情制御によっても高められるのか? -認知的再評価と気晴らしに焦点を当てて-

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-03 302

-脱中心化は感情制御によっても高められるのか?

―認知的再評価と気晴らしに焦点を当てて―

○小林 亮太、重松 潤、宮谷 真人、中尾 敬 広島大学教育学研究科 【目的】 日々の生活の中で,怒りや不安を抱くことは少なく ない。そうしたネガティブ感情を減少させることを感 情制御という。代表的な感情制御方略として,認知的 再評価 (reappraisal) と気晴らし (distraction) が 挙げられる。認知的再評価はネガティブな思考や状況 を別の視点から捉え直す方略であり,気晴らしは注意 をネガティブではない対象に移行する方略である (Gross, 2013)。この 2 つの方略は,ネガティブ感情 の緩和に有効であることが多くの研究によって示され ている (Webb et al., 2012)。また,こうした感情制 御はうつ病や不安障害などの精神障害の改善にも寄与 することが示されている (Aldao et al., 2010)。先 行研究では,感情制御がネガティブ感情の緩和や精神 障害の改善に繋がることが盛んに検討されている。そ して,感情制御が自身の他の能力や特性にも波及する ことついても少しずつ研究が積み重ねられている。た とえば,上出・大坊 (2011) は感情制御が社会的スキ ルを高めることを報告している。こうした感情制御の 他の能力や特性への影響に関して,感情制御が脱中心 化を高める可能性が示唆されている。脱中心化とは, 思考や感情を心の中で生じた一時的な出来事であると 認識した状態 (栗原他, 2010; Teasdale et al., 2002) であり,精神障害や精神的健康と強く関連する ことが明らかになっている。脱中心化は特に,マイン ドフルネストレーニングをする中で高まっていくと考 えられてきたものの,近年では,認知的再評価をする ことでも高められること,そしてそのことを介して精 神的健康が促進されることが報告されている (Hayes-Skelton & Graham, 2013)。このように感情制御が脱 中心化に波及することが示されているものの,先行研 究では,感情制御として認知的再評価のみしか取り扱 われていない。しかし,感情制御が脱中心化を高める のであれば,気晴らしにおいても,脱中心化を高める 効果が認められると考えられる。そこで,本研究で は,認知的再評価だけでなく,気晴らしも,脱中心化 を高めるか,そしてそのことを介して精神的健康に影 響を及ぼしているかを検討することを目的とし,質問 紙調査を実施した。 【方法】 参加者 大学生223名 (女性120名) が調査に参加し た。平均年齢は21歳 (SD = 1.59) であった。手続き  次の 3 つの尺度への回答求めた。( 1 ) 感情制御:認 知的再評価 (肯定的再評価因子) と気晴らし (肯定的 再 焦 点 化 因 子 ) を 行 う 傾 向 を 日 本 語 版Cognitive Emotion Regulation Questionnaire (Garnefski et al., 2001; 榊原, 2015) を用いて測定した。( 2 ) 脱 中心化:日本語版Experiences Questionnaire (Fresco et al., 2007; 栗原他, 2010) を用いて脱中心化傾向 を測定した。反すう因子は解析から除外した。( 3 ) 精 神 的 健 康: 抑 う つ 傾 向 を T h e C e n t e r f o r Epidemiologic Studies Depression Scale (Radloff, 1977; 島他, 1985) を用いて測定した。解析 統計解 析にはHAD (清水, 2016) を用いた。媒介分析の際の 間接検定には,ブートストラップ法 (標本数10000) を用いた。 【結果】 はじめに,各変数の平均値,および標準偏差を求め た。認知的再評価の平均値は3.36 (SD = 0.96) であ り,気晴らしの平均値は2.88 (SD = 0.92) であった。 脱中心化の平均値は2.95 (SD = 0.65) であり,抑う つの平均値は0.99 (SD = 0.57) であった。次に,感 情制御が脱中心化を促進するか,そしてその結果とし て抑うつ傾向が低下するかどうかを検討するために, 感情制御方略ごとに媒介分析を行った。認知的再評価 に関する媒介分析の結果 (Figure 1),認知的再評価 から脱中心化 (β = .52, p<.001),および脱中心化 から抑うつへのパス係数も有意であった (β = 23, p = .001)。認知的再評価から抑うつへのパス係数も有 意であった (β = -.26, p<.001)。その一方で,脱 中心化を媒介変数として投入した後の認知的再評価か ら抑うつへのパス係数は有意傾向であった (β = -.14, p = .055)。また,間接効果は有意であること が認められた (β = -.12, 95%信頼区間 = -.127, -.022, p = .009)。気晴らしに関する媒介分析の結果 (Figure 2),気晴らしから脱中心化へのパス係数は有 意であり (β = .36, p<001),脱中心化から抑うつ へのパスも有意であった (β = -.28, p<001)。気晴 らしから抑うつへのパスも有意であったが (β = -.17, p = .012),脱中心化を媒介変数として投入し た後のパス係数は有意ではなかった (β = -.06, p = .344)。また,気晴らしと脱中心化,抑うつについて は有意な間接効果が認められた (β = -.10, 95%信頼 区間 = -.109, -.029, p = .002)。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-03 303 -【考察】 本研究では,感情制御が脱中心化を高めるか,そし てその結果として精神的健康が促進されるかについて 検討を行った。媒介分析の結果,認知的再評価,およ び気晴らしを行うことで,脱中心化が高まることが明 らかになった。また,その感情制御による脱中心化の 促進によって,精神的健康が良好に保たれることも示 された。これまで脱中心化が,マインドフルネスに よって高められると考えられてきたが,本研究の結果 から,日常生活の中で感情制御を行うことが,脱中心 化を高める訓練となりうることが見い出された。脱中 心化は,うつ病などの精神障害だけでなく,主観的幸 福感とも結びついているため,感情制御を促進するこ とで,脱中心化が高まり,精神的健康だけでなく,幸 福感も向上していくと考えられる。本研究の結果,感 情制御が脱中心化にも波及していくことが示されたも のの,以下の 2 つの限界点が残っている。 1 つ目は, 本研究が横断調査であり,因果関係に関して結論を出 せない点である。そのため,今後は縦断調査を行い, 感情制御が脱中心化を促すのか,それとも脱中心化が 感情制御を促進するのかを検討する必要があるだろ う。 2 つ目は,感情制御の方略に関するものである。 本研究では,感情制御方略として認知的再評価と気晴 らしを取り扱った。これらはネガティブ感情の緩和に 有効な適応的な方略であるが,感情制御には,むしろ ネガティブ感情を高める不適応的な方略も存在する。 今後は,そうした不適応的感情制御についても目を向 け,脱中心化との関連を検討していく必要があるだろ う。

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