CANCER
6
(1997)
,p.27-31
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高知県四万十川河口域における工ビ柴浸漁について
内田圭一 ・東海
正
柴浸i
組、は,雑木を束ねたものを水中に浸けて,i
去であ り,陥葬漁具の一つである . この柴浸漁は河川湖 沼などの淡水魚介類を 対 象として操業され,高知 県の四万十川下流でも夏期のテナガエビ漁を中心 にカニ,ウナギを対象とした柴浸漁が現在も周年 を通して行われている . 柴浸漁のように内水面漁 業には,単純素朴で材料も簡単なものが多 く,そ の多くが原始古代来の漁法であり,大部分は東南 アジアの漁法に似ている( 秋山 ら,1981;
岡山県 農林水産科,1975).
機 械化 や大型化 が進んだ近 代的な漁法と 比較 して ,柴浸漁は以下の点でも興 味が持たれる. まずi
魚、具の材料は天然のものであ るため,環境中で分解しやすい. また操業時に餌 も使わないので水質への影響も少ない. 旋網や ト ロール網などが魚群をー網打以にするのとは異な り,柴浸i
件、は資源量に応じた漁獲量をあげる. こ れらの点で,自然に優しい漁法であるとも 言 える . 本報特は,1994
年の7
月に四万十川河口域で行っ た聞き取り調査を基に ,テナガエピ柴浸漁をまと めたものである. 漁 具 漁JL
の材料となる木はシイ ,ヤマモモ, ヒノキ などの雑木である. 材 料 に適している木とは,対 象魚介類が入り込み易いように小枝が多く ,広 が りすぎずに, のである. ヤマモモは枝が広がりすぎてしまい , 逆にヒノキは枝が布、集しすぎてIl
jj( 間が少ないため にシイが最も良いとさ れる. 漁J:L
の作り方は次の 通り である . 1 ) 前11となる少し太 めの枝を I 本選び, これに枝K ei ichi U C III DA. Tadashi T O K A I: B r u sh shelter fi shery for crane river p r a w n in the S him anto riv er estuary. Iくouchi 縄となるひもを掛ける( 図 1 ). このとき,大き く広がっている枝の付け根部分には ,広がりを抑 えるために切れ込みを入れる .
ーヘミ二一
〆
広がりを抑えるために切れ込みを入れる 図 1 . 柴の輸の作り方 2 ) 校全体を束 ねるためのひもを 2本並べ, その 上に枝を並べていく (同2 ). このひもを並べる 間隔( 同中の a ) を広くとりすぎると ,縛 ったと きに枝の広がりが思くなる . 枝の束が崩れないよ うにするために足で 押 さえつけながら ,枝を起し ていく . 約半分( 15-20
本) の枝を並べ終わ った 時点で,その中心部分に 1)で、作 った 制11となる枝 を置き残りの校をよ止す. 3 ) 校の数が十分になったら ,最初 に並べておい た2本のひもで全体を縛る. このときの結び目は , 繰り返しの操業で校が水を含んで柔らかくなるな どして柴が緩んできたときに ,操業中でも簡単に28
高知県凶万十J11i"J口域におけるエビ柴r
:l:.i,仙、について 図2. 枝の束ね方. 柴の広がりは 2 本の紐の間隔 a で決まる 縛りWf
せるように ,引Wio
き結びにしておく. 結び 終わった後,残 った 隙tIJ¥に枝を詰める作業( 目 詰 めと 呼ばれ る) を行う . 操業方法 設置方法 通常1
本の幹縄に3 - 4
尋( 約5 - 7
m ) 間 隔で 7 柴がつなげられ, 川 の流れやi;':
と平行に設 置される( 同 3 ). この 一連の漁11を現地ではシ ハイと呼ぶ. 1シハイにつなぐ柴の数は ,基本的 水 面 j克子( ブロック ) 図3.
柴の設置方法 に一度に船に桁める柴の数である. シハイの両端 には沈子としてコンク リートブロックが,浮子と して約2
m の竹がつながれている. また,岸辺の 好漁場となる"i
には ,一本浸と呼ばれるlji独の柴 を設置することもある- i
.
魚、業者φが所不jする柴の 数は,約300
柴(40
シハイ ) で,約1
週間かけて!
I
I
民次揚げていく. 台風や大下i
l
などで,河川の流量が大幅にJlf
加す るおそれがある場合には ,あらかじめ柴を除上に 妨げたり,流れの緩やかな場所へ移動する. 操業手順 1 からi
手寸こ,幹縄,枝縄を手繰り 1柴づっ揚げ、 ていく . 2 ) 柴を 水1(l ii i l : くまで揚げ,そ の下にたも網を人 れ,柴とたも網を 一緒に引き錫げる( 図4). 縁をテコの支点にして柴全体を水而 に上げ,柴を 軽く揺すり漁獲物を網の 中に落とす( 閃5) . 3 ) 網の中に必ちた漁獲物をかごに移し,幹縄を 手繰り次の柴に移動する . その │杭 防 げ て 尻 い た 柴は ,校の広がっている方が深い方をli
lJ
くように 水中へ戻す. 柴の浸抗日数は ,通常約1週間程j主であるが, うこともある. 1 日に取り倣う柴の数は, 50柴( 約 7 シハイ) 程I
主である . 新しい柴は,使い初めてから20
日間ほどするとI
政Ij:-J
が多くな 者151主新 しい校や笹などを 付 け起 していく 季節別漁場と対象漁獲物 操業を行う流域は通年を通 して変わらないが, って異なる. る. このW¥"HJJ
は梅J:l:i
や台風等の明水の前後によっ て .I魚、挫されるエビの種類が異なる. ここでは1994
年7
月の台風による増水の前後に派集された で 水 錫 げ さ れ る 税 は ミ ナ ミ テ ナ カ エ ビ M a crob内回圭一 ・ 東 海 正
29
図4.
柴の揚け、方. 水面まで上が って来た柴を, 直径1 m
図5.
漁獲方法. 船縁で柴を軽く揺 すり,網の中に漁 程の大きなたも網で,下から支えるように船縁を 獲物をふるい落とす 支点、にして揚げる T;'j;JくfiIJm
水後 表1 テナガエビ盛漁期である7月 (1994年) に採集されたエビ類 学 名 テナガエピ科 A lphcidac M a cγobγachium fonnose叫se ミナミ テナガエビ 一一一 スジエピ Pαlaem凹1l地ucidells一一寸
シラタエビ 一一一一一一一 Pαlaemon orienlis クルマエピ科 P cnaeid ac クルマエビ科の一司重 - Pel国 自lS sp テyポウエピ科 A lphcidae テyポウエピ 一一一一一一 A lthells b陀vicrislallls イソテ7ポウエピ 一一 A lthells lobidens テナガエビ科 A lpheidac ミナミテナガエピ Macrobrachium fo門nosense「
Macrobrachillm ja仰1l1Cl川 一一一一 Palaelllon仰 cidells一一寸
ヌマエビ科 Atyidac ヒメヌマエピ 一一一一一 C a rid口田senalirostris 地 方 名 シラサ (地新きの雌) ゴゴセ (白色個体) ホンコゴセ (糸色例 体) マエピ ッチエピ ヤマトテナガエピ ヤンチャエピ (雄) ヤマトテナガエピ コoコ事七 (白色個体) ホンゴゴセ (茶 色 個 体) ミゾレヌマエピ ー一一一 Ca ridilla lellcosticla 一一一一ー サエピ γa ch i u m formosense, ヒ ラ テ テ ナ ガ エ ビ Macrob rachium jatoniculI!, ス ジ エ ビ Palaem o n orientis だけ で あ り , こ れ ら 以 外 は 商 品 川
fr!j
が 無 い た め に そ の 場 で 投 楽 さ れ る . 城 に 定ft
し て い る 中 型 の ミ ナ ミ テ ナ ガ エ ピ ( 会 長 約5 cm) で あ る . こ の 時期jは水深1 .5 - 2 .5 m 付近 を 中 心 に 柴 を 設 問 し て い く .4
月に, jI1f
口 か ら ほ ぼ 川 じ 距 離 を 遡 っ た 水 深 の 異 な る 2地 点 で 採 集 し た , 襟 本 の 体 長 結l成 を 比 較 す る (同6 ). ス ジ エ ビ は 汽 水 を 好 む た め , 塩 水 棋 の 影 響 を 受 け る 深 い 泰 先 か ら 人 梅 の 頃 の 主 な 漁 獲 物 は , ス ジ エ ビ , 小 型 の ミ ナ ミ テ ナ ガ エ ビ , シ ラ サ と 呼 ば れ る 河 口30 2S0 200 150 100 50 尾
。
数 200 150 100 50。
10 IS 20 2S 体 長(m m) 水深1.5 m 水深2 .5 m 30 . テナガエビ 亡 コ ス ジ エ ピ 図6 . 水深の違いによるエビ類体長組成の違い ところに生息し,また小型のミナミテナガエビは, 上肘の淡水に生,口、する 同6
か ら 柴 の 設 置 場 所 や 水深 によって点、獲されるエビの種類が変わること がわかる . 標 本 か ら , そ れ ぞ れ の 全 長 平 均 は ス ジ エヒカ<22mm, ミナミテナガエビが19.5mmで、ありこ の 時 期 は , 全 体 に ス ジ エ ビ の 方 が 大 き い こ と も わ かる.4
毎雨から干火口にかけてはミナミテナガエヒを士ナ っ て 河川 水 が 増 大 す る と , そ れ に 合 わ せ て 上 流 域 か ら 産 卵 の た め に ミ ナ ミ テ ナ ガ エ ピ が 大量に下っ てくる (大 野ら, 1977), 7 月の増水前には, ミ 3S ナ ミ テ ナ ガ エ ピ や ス ジ エ ビ の 他 に シ ラ タ エ ビ , ク ルマエピ科テ ッポウエピ科 が 採 集 さ れ た (表1 ) . これに対して , 増 水 後 に は ミ ナ ミ テ ナ ガ エ ビ が 卓 越 し , そ の 他 に も 淡 水 性 の ヌ マ エ ピ 科が 採 集 さ れ た. この時期にi
魚j聾されるミナミテナガエピはほ 表2 1994年 7 月に柴浸漁で採集された魚類 科 ウナギ科 A n月uilliclcl ac ナマズ科 Siluricl ac ヨウジウオ科 Sy ngnalhicl ac シマイサキ科 T crapon イソギンポ科 B lenniid ac ハゼ科 G o b iid ae アイコ手│ カワノ、ギ科 ニザダ イ科 Si郎lnid ac 肘lonacanlh idac Acanlhuridac シ ・ リ , fe ウナギ 111l,lfllilla ja仰 Il!ca ナマス Silllru s asotllsヨウシウオ Syllglla 1 Ilolls fasciolαtocets コトヒキ T eratoll ( Teratoll ) jarbllα
シマ イサキ Teratoll (RhYllocotelales ) 0λyrltyllchlls トサカギンポ OlllobrallchllS
fi
αsciolatocets ミミズハゼ Luciogobills gllttallls タネハゼ Cα11α,lfoallbillS tegαS川 町 カワアナゴ Eleotris 0λycethalα チチブモドキ Eleotris acallthoto川G サツキハゼ ParioglosslIs d Ollti クロミナミハゼ A附 OIlSlIIelα1I0cetllallls ジュスカケハゼ C ll QellO,lfobillS 1α即 日マハゼ 11叩Iltho,lfobillS fla t'Il叩llltS
アシシロハ七、 I1cαIltllo,lfobillS laclites ヒナハゼ R引li,lfebills bikolallus
フタスジノオfリハゼ 11 cell tro,lfobIl/s 1II010alll/S ヨシノポリ R h ulO,lfollills brullll円IS
チ チ ブ Tridellti,lfer obscllrlls アイゴ科のがJIf.(I,
アミメハギ モアイテングハギ
Si,lfαIl IlS sp
RlIllarills ecrodes ,Vaso fa,lfeJI i
内田圭一 ・東 海 正 3 1 とん ど が抱卵した雌で,雄のj魚、獲は極め て少ない. ミナミテ ナガ、エビ は , 増 水 で 河川 水が塩水棋より も卓越して塩分が下がると,水深に関わらずいた る 所 で 漁 獲 さ れ る が, 塩 分 の 増 加 と 共 に , そ れ に 合 わ せ て 淡水 の 流 れ る 浅 場 に 移 動 し な がら上流 域 に 移 動 し 始 め る . そ の た め こ の 時 期 の 柴 は , 干 潮 時 に は 干 上 が る よ う な 浅 瀬 か ら 水 深 2 m 程 を 中 心 に設置される . 晩 夏 か ら 秋 に か け て は , 下 り ウ ナ ギA刊g uilla Japon化
a
を主に 対 象 と す る の で,柴 は 急 に深くな るような場所を 中心 に,エピを対象とした水深よ りも深いとこ ろへ設置さ れ る . ま た , 冬 場 に モ ズ クガニを 対 象と する 季節も ,下り ウナギと同様に やや深いところを 中心に操業を行 う. 参 考 の た め に , テ ナ ガ エ ピ 漁 の 最 盛期 でもある 1994年7
月の 1 ヶ月間に,こ の柴浸潟、によって採 集 さ れ た , 魚 類 9 科 22種 (うちハゼ科 13種 ) を表 2に示す. 謝 辞 本研 究 に お け る現 地 調 査 の │祭に ,御協力くださ いました 川首相日lの宮村 忠実氏をはじめとする 四万 十 川 観 光 開 発 株 式 会 社 ・船 舶 観 光 部 の 皆 様 仁 滞 在 期 間 中 , 多 大 な 御 支 援 を 下 さ い ま し た 松 浦 進 氏に深く感謝する . また四万十 川 に 閲 す る 資料を 提 供 し て 下 さ っ た 高 知 大 学 農 学 部 の 山 岡 耕 作 教 綬 , 襟 本 │日l
定 の 御 指 導 い た だ き ま し た 東 京 水 産 大 学 資 源 育 成 学科 の 波 遺 精一教 授, 海洋科学技 術 セ ンター特別研究員の土田真二博士に, Iザく 御礼 申 し上げます. 参 考 文 献 秋山高志 ・4
本 英夫 ・前村松夫 ・三浦=t-
:
ー・森 杉夫, 1981. 図録1 1漁村生活史辞典.1 84-85 pp .,柏書房 株 式会社,東京. 藤野隆博, 1972. 日本の淡水エピ類の分類と見分けブj .ature Stud y, 18 : 53 -58.
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