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妊娠12~18週の時点で禁煙している妊婦の産後4か月までの動機づけ面接法MI(Motivational Interviewing)による禁煙維持への支援

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Academic year: 2021

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妊娠12~18週の時点で禁煙している妊婦の産後4か月までの動機づ

け面接法MI(Motivational Interviewing)による禁煙維持への支援

The effect of MI (Motivational Interviewing) in preventing smoking relapse

among women at 4 months postpartum who quit smoking during

the 12th to 18th week of pregnancy

神 山 とき江(Tokie KAMIYAMA)

*1

小 林 康 江(Yasue KOBAYASHI)

*2 抄  録 目 的 妊娠をきっかけに禁煙を開始した妊婦で妊娠12~18週の時点で禁煙を継続している妊婦に動機づけ 面接法(Motivational Interviewing:以下MI)を行うことは,産後4か月まで禁煙を維持し,他の通常の ケアと比較して自信度を高めることを検証すること。 対象と方法 対象者は,X県内の7施設に通院する12~18週の時点で禁煙を開始している妊婦とした。非無作為化 比較対照試験を用いた。介入群38名に対して,妊娠22~27週,妊娠34~37週,出産後退院時,産後1 か月,産後4か月の計5回,MIによる禁煙維持支援を実施した。比較群19名は,通常行われている禁煙 支援を受けた。主要評価項目は,妊娠22~27週と産後4か月に呼気中CO測定,副次評価項目は,妊娠 12~18 週と産後 4 か月に禁煙の重要度と自信度の得点の把握を行った。データ分析は,χ2 検定を, Wilcoxonの符号付順位検定,効果量を行った。本研究は,倫理審査委員会の承諾を得て実施した。 結 果 対象者追跡率は介入群55%,比較群追跡率89%であった。対象者の特性については,家族形態のみ両 群間に有意差があり,他の項目では有意差はなかった。禁煙維持できたのは,介入群21名中17名,比 較群15名中12名であり,χ2 独立性の検定p=.63で有意差はなかった。介入群,比較群それぞれの同一 群の自信度の得点の差は,介入群p=.002で有意差があった。効果量はr=−.68で大の効果量を確認でき た。比較群p=.06で有意差はなかった。効果量はr=−.48で中程度の効果量が確認できた。 結 論 MIによる妊娠をきっかけに禁煙した妊婦の禁煙維持へは効果はなかった。その一方で,MIは禁煙を 維持するという自信を高める効果を示した。 キーワード:禁煙維持,妊婦,動機づけ面接法,非無作為化比較対照試験 2017年4月12日受付 2017年10月27日採用 2017年12月22日公開

*1富士吉田市立病院(Fujiyoshida City Hospital)

*2山梨大学大学院総合研究部(University of Yamanashi, Graduate Faculty of Interdisciplinary Research)

(2)

Abstract Purpose

This is to verify that if the motivational interviewing (hereafter referred as to “MI”) is applied to pregnant women who gave up smoking due to pregnancy and had maintained non-smoking for 12-18 months post-pregnancy, it maintains their non-smoking until four months after childbirth comparing with other normal care and it increases their self-confidence.

Subjects and Method

The subjects were the women who were visiting seven medical facilities regularly and gave up smoking 12-18 weeks after pregnancy. A randomized controlled trial was used for the survey. The support for maintaining non-smoking by MI was conducted to the intervention group of 38 subjects 22-27 weeks after pregnancy, 34-37 weeks after pregnancy, when they were discharged from hospital after delivery, a month after delivery and four months after delivery, five times in total. The comparison group of 19 subjects received no-smoking support that is normally practiced. The primary evaluation item was the measurement of CO concentration in exhalation conducted 22-27 weeks after pregnancy and four months after delivery, and the secondary evaluation items were the importance of non-smoking and self-confidence conducted 12-18 weeks after pregnancy and four months after delivery and scores were grasped. Anχ2 test, Wilcoxon signed rank test, and effect size were used for data analysis. This research was con-ducted with the approval of an Ethics Committee.

Results

Subject tracking rate of the intervention group was 55% and that of comparison group was 89%. Regarding the characteristics of the subjects, there was a significant difference in family structure only between both groups and there was no significant difference in other items. The number of subjects who were able to maintain non-smoking were 17 out of 21 from the intervention group and 12 out of 15 from the comparison group. Theχ2 test for in-dependence was p=.63, so there was no significant difference. As for the differences in the scores for confidence of the intervention group and comparison group, the difference of the intervention group was significant at p=.002, and a great effect size of r=−.68 was confirmed. The difference of the comparison group was p=.06, so there was no significant difference, and a moderate effect size of r=−.48 was confirmed.

Conclusion

Conducting MI for the women who give up smoking during pregnancy was not effective in their maintaining non-smoking. Meanwhile MI showed an increased effect to their confidence in maintaining non-non-smoking.

Key words: maintain non-smoking, pregnancy, motivational interviewing, non-randomized controlled trial

Ⅰ.諸   言

成人女性の喫煙率は 9.6% で横ばいを呈し,年代別 では,20~40 歳台の生殖年齢の 10 人に 1 人の女性が 喫煙をしている状況である(厚生労働省,2016)。20 歳~30歳台の女性の喫煙は,妊婦の喫煙につながる。 妊娠中の喫煙の影響は,異常妊娠及び異常分娩の危険 性など母体側への影響と,低出生体重児の出生,乳幼 児突然死症候群の発生,喘息様疾患の罹患への危険 性,行動上の問題,5歳前後までに肥満となる危険性 など胎児側への影響が知られている(Batech, Allen Merritt, Chinnock, 2013;Robinson, Bulsara, Li, J, et al. 2010;鈴木・安藤・近藤他,2012;高野・橋本・川俣 他,2012)。このように妊娠中の喫煙は,妊婦のみな らず子どもの将来にまで影響を及ぼすものとなり禁煙 は妊婦にとって重要な課題となっている。 妊娠から産後にかけての喫煙状況をみると,妊娠を きっかけに禁煙する妊婦は,67~87%であり,禁煙し た 50% が出産後 6 週後に,67% が出産後 1 年後に再喫 煙の経過をたどるとされている(池田・原田・兼高 他,2009;吉見,2008,Hauge, Torgersen & Vollrath, 2011;Polanska, Hanke, Jaakkola, et al. 2011)。産後再 喫煙と関連する因子として,配偶者や同居人の喫煙し ている家庭喫煙環境や母乳栄養でないことまた,禁煙 する前の喫煙本数や禁煙開始の時期も関連することが あがっている(坂東・山川・吉田,2009;松村・濱野 ・ 谷 口, 2008; Graham, Sherburne Hawkins, Law, 2010; Polanska, Hanke, Jaakkola, et al. 2011; Gyll-strom, Hellerstedt, Hennrikus, 2012)。妊娠から産後に かけての喫煙状況の把握,産後再喫煙と関連する因子 の把握から禁煙支援への意義は深い。

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Interviewing:以下 MI)がある。循環器病の診断と治 療に関するガイドラインによる禁煙ガイドライン (2010 年改訂版)において禁煙に向けてのアプローチ としての一つの方法としてレベルB(無作為臨床試験 でいくつか支持する効果が得られているが,対象とな る研究の数が少ない)を示している。そして,妊婦に おいても MIの妊婦の禁煙支援の介入において有効性 を 示 し て い る(Karatay, Kublay, & Emiroglu, 2010; Ruger, Emmons, Hammond, et al. 2008)。しかし,禁 煙の維持に対するMI の有効性に関する研究は見当た らない。そこで,MI が禁煙を維持して行こうとする 妊婦に対して効果があるか仮説を立てた。 妊娠をきっかけに禁煙する機会を逃さずに禁煙が維 持できるように支援することは,女性の一生の健康を 維持する上でも重要な機会と考える。また,産後も禁 煙が維持できるよう看護を提供することは,子育てを 行う母親が将来のある子どもの健康を安全に守ること ができ,また自らの健康を意識しながら生活できるこ とに繋がると考える。女性の一生の健康を支援する助 産師として,この節目を母子ともに大切に受け止め禁 煙維持を支援していくことは意義が深いと考える。

Ⅱ.研 究 目 的

妊 娠 を き っ か け に 禁 煙 を 開 始 し た 妊 婦 で 妊 娠 12~18週の時点で禁煙を継続している妊婦にMIを行 うことは,産後4か月まで禁煙を維持し,他の通常の ケアと比較して自信度を高めることを検証すること。

Ⅲ.用語の操作的定義

禁煙維持とは,産後 4 か月の時点で呼気中 CO が 7ppm以下尚且つ,産後 4 か月までの禁煙の自己申告 があった場合をいう。 自信度とは,禁煙ができると感じる度合いをいう。 重要度とは,禁煙することが必要と感じる度合いを いう。

Ⅳ.研 究 方 法

1.研究デザイン 妊 娠 を き っ か け に 禁 煙 を 開 始 し た 妊 婦 で 妊 娠 12~18週の時点で禁煙を継続している妊婦にMIによ る禁煙維持への支援を実施した群を介入群とし,MI を実施しない群を比較群として設定した2群間を比較 する介入研究であり,非無作為化比較対照試験デザイ ンである。割り付け方法としては,分娩件数が両群で 均等になるように,研究施設毎に2群に割り付けた。 2.研究対象 1)研究対象施設 X県内の 7 施設とした。これら 7 施設では,喫煙妊 婦への保健指導は同等の内容で医師及び助産師が適宜 実施している。介入群は,A 診療所とB 病院,B 病院 がオープンシステムで受け入れている4診療所,比較 群は,C病院であった。妊娠をきっかけに禁煙してい る妊婦に対しては,7 施設とも禁煙者としてみなし, 禁煙指導は行っていない。一方喫煙妊婦に対しては, 全施設,妊婦健診時助産師が禁煙に対する保健指導を 行っていた。喫煙妊婦に対する保健指導は,妊娠初期 に指示的に妊婦の禁煙の重要性,夫の喫煙を含めた受 動喫煙の影響などを説明し,妊娠中の喫煙を止めるよ うにうながした。妊娠経過中は,喫煙の有無を問いな がら喫煙中の場合には,その都度禁煙を指示的に促す 指導を行っていた。喫煙本数の減少や禁煙できた場合 には承認し,継続を促していた。産後の保健指導は, 母乳移行の危険性,児への受動喫煙への影響,生活習 慣病への影響,育児をしていく上での褥婦の健康の必 要性などを退院時,1か月健診時に説明し禁煙を指導 していた。 2)対象者 (1)組み入れ基準 妊娠初期,喫煙経験のある妊婦を抽出し,妊娠 12~18週の時点で禁煙を開始している妊婦とした。 (2)除外基準 喫煙者,妊娠12~18週前の転院希望者,自然流産, 人工流産,妊婦健康診査の予約をしていない者,研究 承諾を得る週数に会えなかった者とした。 3)リクルート方法 妊娠初期,喫煙経験のある妊婦の抽出を研究対象施 設に依頼した。抽出された妊婦に対して妊娠 12~18 週時,禁煙の有無を確認し,禁煙している妊婦に対し て研究について口頭と文書で説明を行い,研究参加の 意志を確認し同意を得た。介入群のリクルート期間 は,2015年2月~2016年1月まで実施した。比較群の リクルート期間は,2015年4月~2016年2月まで実施 した。

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3.介入方法 1)MIについて MIは,クライエントの両価性な感情に働きかけて, 内発的な動機づけを引き出し,より良い選択が自ら行 える行動変容に向けて働きかける面接方法である。両 価性の感情において良い選択に向かう変化への動機を 構築するためには,重要度を認識し理解すること,さ らに変化への自信を深めることが必要となる(William & Stephen 2002/2012, pp.74-75)。本研究においては, たばこへの依存をもつ禁煙をした妊婦及び褥婦の「吸 いたい気持ちがある一方で吸わない方がよい」という 両価性の気持ちに対して,「吸わない方がよい」変化に 着目し,働きかけ,対象者自身が,禁煙維持への重要 度を高め,吸わないでもいられる変化への自信を深 め,吸わないでい続ける行動変容に導くこととした。 2)介入内容 介入群は,妊娠 22~27 週,妊娠 34~37 週,出産後 退院時,産後 1 か月,産後 4 か月の 5 回 MI を実施し, 計 10 か月間を要した(図 1)。MI の面接では,禁煙維 持を指示することではなく,対象者の「吸わない方が よい」という思いを引き出せるような開かれた質問や 聞き返しを行った。開かれた質問は,「禁煙をこのま ま続けられたらどんないいことがあるか」「今,ある いは 5 年後,10 年後に自分にとって重要なことは何 か」などを質問しながら対象の思いを整理していく。 聞き返しは,オウム返しのような単純な聞き返しと対 象者の感情や行動,価値観に繋がることに関連させる 複雑な聞き返しがある。聞き返しを行うことで,対象 者からは重要性を示す言葉や変化への自信を示す言葉 が引き出されていく。この引き出された言葉が増える ことで,両価性が深まり,片方の「吸いたいときもあ る」という思いは違うことに気づくことになる。その 後は,禁煙維持を実行する意志を表明することで,具 体的な方法へ繋がっていく状況となる。 初回の面談である妊娠22~27週では,喫煙の害(妊 娠中,産後を含め成人期以降の害)と禁煙のメリット について,受動喫煙について知識の導入を行った。妊 娠34~37週では,母乳育児の重要性と喫煙への影響, 受動喫煙の子どもへの影響についての知識の導入を 行った。分娩後退院時では,知識の再確認として母乳 育児の重要性と喫煙への影響,受動喫煙の子どもへの 影響についての知識の導入を行った。産後 1 か月で は,育児相談を実施した。両群共通して内容として, 妊娠 12~18 週では,対象者の基本情報と自信度と重 要 度 を 質 問 紙 と 聞 き 取 り に よ り 把 握 し た。 妊 娠 22~27 週では,呼気中 CO 測定を実施した。産後 4 か 月では,呼気中CO測定を実施した。加えて禁煙継続 の有無の聴取と自信度と重要度を質問紙と聞き取りに 䠖 ⬺ⴠ ௓ ධ ⩌ ẚ ㍑ ⩌ 䝸䜽䝹䞊䝖 ◊✲䛾ᢎㅙ ㉁ၥ⣬䞉⪺䛝ྲྀ䜚 ⮬ಙᗘ䞉㔜せᗘ䛾ᢕᥱ MI䛾ᐇ᪋ ࿧Ẽ୰CO ᐃ MIᐇ᪋ MIᐇ᪋ MIᐇ᪋ MIᐇ᪋ ㉁ၥ⣬䞉⪺䛝ྲྀ䜚 ⮬ಙᗘ䞉㔜せᗘ䛾ᢕᥱ ࿧Ẽ୰CO ᐃ ࿧ Ẽ ୰ CO 8pp m ௨ ୖ 䝸䜽䝹䞊䝖 ◊✲䛾ᢎㅙ ㉁ၥ⣬䞉⪺䛝ྲྀ䜚 ⮬ಙᗘ䞉㔜せᗘ䛾ᢕᥱ ࿧Ẽ୰CO ᐃ ㉁ၥ⣬䞉⪺䛝ྲྀ䜚 ⮬ಙᗘ䞉㔜せᗘ䛾ᢕᥱ ࿧Ẽ୰CO ᐃ ࿧ Ẽ ୰ CO 8pp m ௨ ୖ ⮬ᕫ ⏦࿌ 䞉 ࿧Ẽ ୰ CO8 ppm ௨ୖ ⮬ᕫ ⏦࿌ 䞉 ࿧Ẽ ୰ CO8 ppm ௨ୖ ึデ᫬ 12䡚18㐌 22䡚27㐌 34䡚37㐌 ศፔᚋ ㏥㝔᫬ ⏘ᚋ1䛛᭶ ⏘ᚋ4䛛᭶ ᪋ タ 䛷 䛾 ㏻ ᖖ 䜿 䜰 ᪋ タ 䛷 䛾 ㏻ ᖖ 䜿 䜰 図1 研究実施手順

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より把握した。 3)MIの妥当性

動機づけ面接治療整合性尺度第 3 版(Motivational Interviewing Treatment Integrity3,以下 MITI3)にて 行った(原井,2014)。MITI3 は,MI をどの程度上手 く行えているかを構造的に自己評価でき,MI を活用 する者の自己研鑽の手段ともなりうるものである。 MIのレベルは,動機づけ面接の初学者であっても到 達可能なレベルとして 1.0以上になるようにした。本 研究における面接時間は,一人当たり平均 33 分間で あり,平均総面接平均のMITI3は,3.4(閉じた質問と 開かれた質問,単純な聞き返しと複雑な聞き返しの対 比を得点化した平均)であり,十分に MI の面接がで きていることを示した。 4.データ収集 1)データ収集期間 2015年2月~2016年12月まで行った。 2)データ収集項目 基本情報は,妊娠 12~18 週では年齢,出産回数, 婚姻状況,職業,学歴,家族形態,喫煙開始年齢,喫 煙本数,喫煙期間年数,禁煙開始週数,禁煙をした理 由,経産婦の場合児の栄養方法を確認した。また, パートナーの年齢,喫煙状況,禁煙への協力内容を, さらに家族の喫煙者を把握した。産後4か月では禁煙 維持の有無,児の栄養方法,パートナーの禁煙への協 力の有無について収集した。収集方法は,質問紙と聞 き取りであった。収集場所は,面接室や対象者の自 宅,人の少ない待合の隅において収集した。 メインアウトカムは,産後4か月の時点での禁煙維 持である。主要評価項目は,産後 4 か月の呼気中 CO 値が7ppm以下尚且つ禁煙の自己申告,副次主要評価 項目は,産後4か月の自信度と重要度を測定した。 サンプルサイズは,過去の MI による研究(Bredie, Fouwels, Schippers, et al. 2010)を も と に 算 出 し た。 MI面接群の禁煙成功率は 26%,MI 非実施群では 7% から推定して,検出力を80%,有意水準を0.05とし算 出した。各群59名,合計118名が研究対象者として必 要となった。20% の脱落率を勘案し,各群 70 名を必 要数とした。研究対象地域の妊婦喫煙率 13% と研究 協力施設の年間分娩件数からデータ収集には約 22 か 月間が必要と見込まれた。 データ解析は,統計ソフト SPSS ver.24 を使用し, 有意水準は5% とした。グループ間の差を検定するた めに,χ2 検定,Wilcoxon の符号付順位検定,Mann-Whitneyの U 検定,Wilcoxon の符号付順位検定より出 された検定量をZに変換して効果量を求めた。 3)データ収集用具 (1)呼気中 COは,マイクロCOモニター(マイクロ メディカルリミテット社)を使用し測定した。喫煙し ていない状況の値は7ppm以下である。妊娠22~27週 と産後4か月の2回測定した。測定は,研究者が行い, 測定方法の統一を図った。 (2)妊娠12~18週,産後4か月に禁煙維持に対する 自信度と重要度の得点と理由の把握を行った。質問紙 での自信度と重要度は,重要性と自信についての認識 を知るための「変化の重要性と自信」の測定として 0~10までの数字の並んだ,リッカート尺度を使って 聞 き 取 り を 行 っ た(加 濃 ・ 磯 村 ・ 稲 垣 他, 2010; William & Stephen 2002/2012, pp.72-73)。 自 信 度 は, 「禁煙すると決めたとして,成し遂げる自信はどのく らいありますか」,重要度は,「禁煙することはどのく らい重要だとお考えですか」と主観的表現を用いて質 問を行った。重要度の得点の理由は,対象者が提示し た得点の理由を聞いた。自信度の得点の理由は,対象 が提示した得点より低い得点ではない理由,対象者が 示した得点が 8 点とした場合,6 点ではなく 8 点とし た理由を聞いた。低い得点を提示することでその得点 の差の理由は,禁煙維持をしていこうとする前向きな 考えを引き出す聞き返しの面接へのつながり,理由の 内容は禁煙維持できているという自信につながってい く。このため妊娠12~18週と産後4か月の得点の意味 するものは,重要度は,禁煙維持の重要度を確認でき るもの,また自信度は,自信度を上げるために MIを 効果的に実施するための情報を得るためのものであ る。 5.倫理的配慮 参加は自由意思に基づくもので,拒否しても不利益 を受けない権利,同意後の撤回も可能であること,情 報の処理は,個人が特定できないようデータ化して処 理し匿名を厳守することなど説明し書面での参加の同 意を得た。また,途中,喫煙移行時には,禁煙に向け ての支援を行った。面接時には,妊婦,褥婦の体調を 観察しながら実施した。本研究は山梨大学医学部倫理 委員会(承認番号 1302)並びに研究協力施設の倫理審 査委員会及び施設長の承諾を得て実施した。

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Ⅴ.結   果

1.研究対象者数と追跡率 本研究は,妊娠をきっかけに禁煙を始めた妊婦を非 無作為割り付けにより介入群と比較群に分けて行った 対照研究である。図2フローチャートに示す通り,研 究参加について,介入群では,介入の実施が 2016 年 12月までに産後 4 か月を迎える 82 名中,研究の組み 入れ基準に合致し,研究参加に同意が得られた 38 名 (46%)を割り付けた。比較群では,介入の実施が介入 群と同様の期日となる 33 名中,研究参加に同意が得 られた 19 名(58%)を割り付けた。実施後,介入群は 脱落人数 6 名(参加辞退,呼気中 CO8ppm 以上,連絡 不能),除外人数 11 名(転院,切迫早産,前置胎盤, 産後精神的不安定,産後うつ)であり,追跡できたの は,21名であった。追跡から除外された人数4名(喫 煙の自己申告,呼気中CO8ppm以上)であった。比較 群は,除外人数 2 名(切迫早産)であり,追跡できた のは,17 名であった。追跡から除外された人数 5 名 (連絡不能,参加辞退,呼気中 CO8ppm 以上)であっ た。追跡率は介入群55%,比較群89%であった。禁煙 維持できたのは,介入群17名,比較群12名であった。 参加者のリクルート期間は介入群 2015 年 2 月 16 日~2016 年 1 月 4 日 ま で, 比 較 群 2015 年 4 月 24 日~2016年2月16日まであった。追跡期間は2015年4 月 22 日~2016 年 12 月 21 日まで,比較群 2015 年 6 月 2 日~2016年10月26日まであった。 2.対象者の特性 表1に示す通り,介入群と比較群では,家族形態に 有意差があった(χ2 =6.29, df=1, p=.014)。その他の項 目では両群,有意差はなかった。 3.禁煙維持について 介入方法に従って産後禁煙維持できていたのは,介 入群21名中17名,比較群17名中12名であった。禁煙 維持の介入群,比較群の関連について χ2 の検定を 行ったところ有意な差はなかった(χ2 =.005, df=1, p=.63)。また,調査済み残差による頻度の差も見ら れず,関連性を表わす連関係数 ϕ=.012 であった。こ の結果,介入群と比較群の禁煙維持において有意差は なかった。

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表1 対象者の特性 n=57  平均±標準偏差/(最小値~最大値)/人(%) 介入群(n=38) 比較群(n=19) 検定量 P 値 年齢(歳) 29.4±5.5(21~39) 28.1±5.5(19~39) .015 .98d 0.015 出産回数 初めて 27(71) 17(89) 2回目 8(21) 2(11) 2.857 .24b 3回目 3(8) 出産週数 39.2±1.1(37.0~41.4) 39.5±0.9(37.3~40.5) 263 .40a 出生体重 3211±301.0(2508~3726) 3019±326.4(2376~3638) 1.129 .26d 婚姻状況 未婚 2(6) 0 有配偶者 26(68) 15(79) 1.338 .51b 未婚姻後婚姻 10(26) 4(21) 家族 核家族 33(87) 11(58) 6.029 .014b* 多世代家族 5(13) 8(42) 職業 主婦 15(39) 8(42) 正社員 14(37) 7(37) 3.072 .56b パート 8(21) 3(16) 自営業 1(3) 1(5) 学歴 中学 4(10) 1(5) 高校 19(50) 10(53) 専門学校 2(6) 4(21) 5.48 .24b 短大 8(21) 1(5) 大学 5(13) 3(6) 喫煙開始年齢 18.4±2.5(13~25) 19.3±1.8(13~22) 284 .16a 喫煙本数 14.8±5.8(5~30) 12.4±4.9(5~20) 278.5 .14a 禁煙開始週数 6.4±2.5(4~15) 6.6±2.4(4~14) 305.5 .33a 家族の喫煙 あり 34(89) 17(89) .000 .66c なし 4(11) 2(11) 家族の喫煙者 複数回答 夫 32 14 実父 8 5 兄弟 9 5 義父 6 1 義母 3 1 実母 2 4 その他 3 2 なし 2 2 多世代家族の喫煙 あり 5(100) 8(100) パートナーの年齢 31.3±7.9(17~54) 31.6±7.3(19~48) −0.139 .89d パートナーの喫煙 あり 32(82) 14(74) なし 5(13) 5(26) 1.924 .38b NA 1 パートナーの禁煙への協力(複数回答)   自分の前では吸わない 21 13   換気扇の下で吸う 7 0   外で吸う 5 1   家の中では吸わない 2 1   本数を減らした(産後4 か月) 2(4) 1   禁煙を一緒に始めた(産後 4 か月) 1(2) 1 妊娠をきっかけに禁煙した理由   胎児への影響を考えて 25(65) 9(47)   妊娠による影響 11(29) 10(53) 5.946 .20b   自分の身体によくない 1(3)   お金のことを考えて 1(3)

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介入群において再喫煙にいたった時期は,4 名中 3 名が産後2ヶ月であった。再喫煙に至った理由は,妊 娠期より抱えていた社会的問題(義父母との関係,夫 との関係,夫の育児への参加)が原因となり,夫との 喧嘩が発端と回答した。また,産後における介入内容 での産後のタバコ以外のストレス発散方法について は,「買い物にいく」「その場にいない」「吸わないよう に頑張る」「見ないようにする」「育児をする」と回答 した。 4.自信度と重要度の得点の差について 1)自信度の得点の差について 副次主要評価項目である自信度の介入群と比較群の 2群間の自信度の得点の差は,図 3 に示す通り,介入 群と比較群の介入前は p=.27 であり,介入後は p=.82 であった。一方,介入群の介入前後の自信度の得点の 差は,p=.002 であった。効果量は r=−.68 で大の効果 量を確認できた。比較群の介入前後の自信度の得点の 差は p=.06 であった。効果量は r=−.48 で中程度の効 果量が確認できた。 介入後の自信度の得点理由の中に禁煙維持ができそ うと考える変化への自信を示す言葉の割合は,介入群 21名中 12 名(57%),比較群 17 名中 6 名(35%)であっ た。介入群の方が,禁煙維持ができそうと考える自信 を示す言葉の割合が多かった。内容としては,「今ま で吸わないでいられたので吸わないでいられそう」 「吸いたいという気持ちがない」「タバコに全く興味が なくたった」「タバコに頼らなくてもいらえるように なった」などがあった。 2)重要度の得点の差について 重要度の介入群と比較群の2群間の重要度の得点の 差は,介入群と比較群の介入前はp=.14であり,介入 後はp=.62であった。介入群の介入前後の重要度の得 点の差は,p=.10 であった。効果量は r=−.36 で中程 度の効果量を確認できた。比較群の介入前後の重要度 の得点の差は p=.19 であった。効果量は r=−.33 で中 程度の効果量を確認できた。介入群,比較群それぞれ の同一群の重要度の中央値は 10 点であり,禁煙維持 の重要度は理解していることを示した。両群ともに, 介入群では,介入後の重要度を示す言葉として「子ど ものため」8件,「自分の健康」5件,「健康のため」5件, 「受動喫煙などの周りへの影響」3件「お金がかかる」2 件,「禁煙にメリットがある」1件であった。比較群で は,「子どものため」5 件,「健康のため」5 件,「自分の 健康」2 件,「受動喫煙などの周りへの影響」1件「お金 がかかる」1 件であった。このように重要度を示す言 葉については介入群,比較群ともに同様の理由が上 がった。 0 2 4 6 8 10 12 ዷፎ12㐌 ⏘ᚋ4䛛᭶ ዷፎ12㐌 ⏘ᚋ4䛛᭶ ௓ධ⩌⮬ಙᗘ ẚ㍑⩌⮬ಙᗘ

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:Monn-whitney᳨ᐃ 図3 自信度の得点の差の比較

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Ⅵ.考   察

1.妊婦の禁煙維持に対する MI の限界から考える禁 煙維持支援の在り方 産後4か月までの禁煙維持については有意な差は得 られなかった。本研究の介入群の禁煙成功率は 45%, 比較群の禁煙維持成功率は63%よりサンプルサイズを 計算すると,各群 120 名の合計 240 名が必要となる。 さらに,対象者の追跡率は,介入群55%と低く,結果 の信頼度が低くなった。また,MIによる禁煙維持介入 については,喫煙している対象に対する MIに有効を 示した先行文献では面接と面接の間隔は,最大1か月 であった(Karatay, Kublay & Emiroglu, 2010)。妊婦の 禁煙維持介入における面接間隔理由は,産後1か月は 健診があること。産後4か月は母親としての自信を得 ていく段階となり,子どもの成長や自分の成長に自信 をもち,母親であるという実感を得ていく(鈴木・小 林,2009)。このため,育児を行う母親としての行動 において,喫煙をすることよりも禁煙することが母親 として育児を行う上では大切と自覚が図れることから であった。しかし,産後は,身体的にも精神的にも変 動する時期であることからも,産後の面接間隔を検討 することが必要と考える。産後に向けての介入内容と しては,妊婦の置かれている社会的環境を踏まえて, 医療者が対応できる社会資源の活用や外部との連携を 密にすることが必要と考える。また,禁煙維持できて いることの体験を重視することや禁煙維持するための 対象者にあった対処行動は何かを妊娠中に一緒に話し 合っておくことで,このまま禁煙ができるかもしれな い自信につなげていくことが大切と考える。先行文献 においても,個人の持つ信念や自信をもつことが禁煙 を達成するために大切と述べており,本研究と同様の 考えとなった(Karatay, Kublay & Emiroglu, 2010)。

今回,禁煙維持への行動変容には至らなかった。 William & Stephen(2002/2012, p.36)によると MI は, すべての問題行動やカウンセリングに効果的な特効薬 であると主張しているわけではなく,他のカウンセリ ング技法とともに使える一つの方法と考えられると述 べている。また,どのような対象者に,MI の効果が 最大か,または最小かについてはまだわかっていない ことが多いと述べている。つまり MIは発展途上のも のであり,本研究のように禁煙への重要性が高い妊婦 の場合には,MIのみの面接法だけでは十分と言えず, 他の面接手法による介入も必要と考えられる。 妊婦が禁煙を維持できるよう支援することは,女性 の健康を守る助産師にとって重要な役割である。施設 における妊婦の禁煙支援の多くは,喫煙者に向けて行 われている。妊娠をきっかけに禁煙している妊婦は, 支援の対象外となっているのが現状である。人間の行 動は,行動を促す事柄やきっかけによる「誘発要因」 ではなく,行動した結果による本人が感じる事柄であ る行動結果により変化し,定着する(中島,2010)。 妊婦は妊娠をきっかけに禁煙行動に容易に移行する (池田・原田・兼高他,2009;吉見,2008,Hauge, Torgersen & Vollrath, 2011;Polanska, Hanke, Jaakko-la, et al. 2011)。助産師として禁煙できたことでよし とするのではなく,禁煙維持している対象者に起きて いる身体的,精神的な変化を引き出すことが出産後も 禁煙を維持していく行動につながると考えられる。妊 娠をきっかけに禁煙でき,禁煙維持していることにも 着目し関わりを持つことは,ひいては将来の女性の健 康への一助につながると考える。 2.妊婦の禁煙行動の特徴 本研究において禁煙の重要度については,両群の得 点に差がなかったことやその理由の内容に変化もな かったことから,禁煙することの重要性を認識してい ることがうかがえる。妊婦の禁煙行動の理由として は,「子どものため」が両群ともに多数をしめていた。 文献による禁煙行動理由としては,胎児への影響」 「前回の妊娠で胎児への影響があり罪悪感があるため」 等がある(田中・小林,2011)。禁煙の自信度につい ては,妊婦自身が妊娠により子どもを守ろうとする母 親としての役割から決意している行動の現れがきっか けとなる。これは,比較群にも関連しており胎児への 影響として禁煙の重要性を認識した禁煙行動や禁煙を 維持できている体験から,このまま禁煙を続けていけ そうと感じる度合いがあがり,効果量が中となったと 考える。一方で,介入群は効果量が大を確認できた。 効果量とは,「効果の大きさ」のことを指し,実験的操 作の効果を示し,サンプルサイズによって変化するこ とのない,標準化された指標である(水本,2008)。 MIを通して禁煙維持をする重要性の動機を構築する ことができ,さらに指示的な関わりではなく,開かれ た質問や聞き返しを通して受容的応答を行った。その 結果,このまま禁煙維持できるかもしれない変化の言 葉が増え,対象者自身に禁煙を維持していこうとする 変化への準備ができたと考える。

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産後再喫煙に至った状況では,妊娠中から存在して いる生活上の不安や不満などが産褥期にも継続され, 再喫煙の引き金になっていた。このことから,妊娠中 に産後の再喫煙への予測することが必要であった。つ まり,妊婦の禁煙維持は,妊婦自身が安心して穏やか に妊娠,出産,育児ができる環境を助産師としてとも に作っていく,その延長上にあると考える。 3.本研究の限界と今後の課題 本研究の結果,MI は禁煙維持支援に効果を示さな かった。しかし,禁煙維持の妊婦に対して介入群の自 信度の得点が上がり,効果量が大の効果量の確認がで きた。MI は,本来行動変容をしたいが,その重要度 の認識が低い対象者の重要度を高めることに有効性を 発揮している面接法である。今回の対象のように,す でに重要度が高い対象者の場合には,いかに対象者の 感情や行動,価値観に触れることができるような関心 を注ぎ,このまま禁煙維持していけると思える深い自 信を持つことができるMIの技術の鍛錬が求められる。 また,妊婦健診の機会を通して産後の予測ができるよ うな関わりの場の確保が必要と考える。MI において も介入群の自信度の得点の差に有意な差が検出された ことと,効果量が大の効果量の確認ができたことによ り,妊婦の禁煙維持に対して MIを用いる意義もある と考える。妊娠がきっかけの禁煙維持に向けての介入 研究は見当たらず,本研究の結果が妊婦の禁煙維持の 支援として役立つことは明確であると考える。

Ⅶ.結   論

MIは妊娠をきっかけに禁煙した妊婦の禁煙維持に 効果はなかった。その一方で,MI は禁煙を維持する という自信を高める効果を示した。 謝 辞 本研究に同意し快くご協力いただきました対象の皆 様,本研究の主旨をご理解くださりご協力をいただき ました施設の皆様に心より感謝申し上げます。また, MIについてご指導いただきました松尾邦功先生に感 謝申し上げます。 なお本研究は,山梨大学大学院医学工学総合教育部 修士論文の一部を加筆・修正したものである。また, 平成 28 年 1 月 31 日,社会福祉法人恩賜財団母子愛育 会 愛育研究所 周産期コメディカル研究助成事業の 研究助成の支援を受け実施したものである。 利益相反 本研究は利益相反に関する開示事項は無かった。 文 献

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参照

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