• 検索結果がありません。

学級内における人間関係の生成モデル

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学級内における人間関係の生成モデル"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-MPS-121 No.14 2018/12/18. 学級内における人間関係の生成モデル 吉田. 達矢†1. 穴田 一†1. 概要:昨今の小・中・高等学校においていじめは,生徒同士の暴力や自殺につながることもあるため,社会問題とな っている.教師による適切ないじめ対策行動がいじめを減らすと考えられるが,実際の教育現場においていじめ対策 行動の有効性を確認する際,長期間にわたる観測を行う必要がある.そのため,いじめ対策行動の有効性を確かめる 目的で,学級の数理モデルが研究されている.先行研究では,生徒が学級内の生徒の中から会話相手を,他の生徒と 趣味嗜好の中から話題対象をそれぞれ選択して会話行い,会話相手と話題対象に対する好感度を変化させることを繰 り返す事で人間関係を形成する学級モデルとなっている.ところが,先行研究では考慮されていない重要な要素が数 多くあり,現実を表し切れていない.そこで本研究ではそれらの要素を考慮した学級モデルを構築し,その有効性を 確認した. キーワード:いじめ,学級,シミュレーション,ハイダーの認知的均衡理論,マズローの欲求階層説. A Model of Classroom Community Forming TATSUYA YOSHIDA†1 1. はじめに 昨今の小・中・高等学校において「いじめ」が大きな問. HAJIME ANADA†1 対象に対する好感度を変化させる.これらを繰り返すこと で人間関係を形成する学級モデルとなっている. 2.1 ハイダーの認知的均衡理論. 題となっている.平成 29 年度に行われた文部科学省の調. ハイダーの認知的均衡理論では,自分,他者,話題対象. 査[1]によると,小・中・高等学校及び特別支援学校におけ. の 3 者間の関係に注目しており,自分から他者,自分から. る「いじめ」の認知件数は 323,808 件で,増加する傾向に. 話題対象,他者から話題対象に対する関係をそれぞれ正(好. ある.さらにいじめは生徒同士の暴力や自殺に繋がること. 意的な関係)負(敵対的な関係)で表す.それら 3 つの関. もあるため,早急に解決する必要がある.教師による適切. 係の積が正の時を均衡状態と呼び,自分はこの状態を維持. ないじめ対策行動がいじめを減らすと考えられるが,実際. しようとする.また,それらの積が負の時を不均衡状態と. の教育現場においていじめ対策行動の有効性を確認する際,. 呼び,均衡状態になるように自分から他者,話題対象に対. 長期間にわたる観測を行う必要がある.そのため,いじめ. する関係を改めるという理論である.. 対策行動の有効性を確かめる目的で,学級の数理モデルが. 2.2 マズローの欲求階層説. 研究されている[2][3].. マズローの欲求階層説は,人間の基本的欲求を 5 つのカ. 先行研究[2][3]は,生徒が学級内の生徒の中から会話相手. テゴリーに分類し,そのカテゴリーを階層化したものであ. を,他の生徒と趣味嗜好の中から話題対象を選択して会話. る.マズローは,この 5 つのカテゴリーを最も低次の生理. を行い,会話相手と話題対象に対する好感度を変化させる. 的欲求から,安全と安心の欲求,所属と愛の欲求,承認の. 事を繰り返す事で人間関係を形成する学級モデルとなって. 欲求,そして最も高次の欲求である自己実現の欲求まで段. いる.. 階的に位置付けた.また,人間はより低次の欲求から顕在. ところが,先行研究では考慮されていない重要な要素が 数多くあり,現実を表し切れていない.そこで本研究では. 化し,それがある程度満たされることで,次の欲求が顕在 化すると論じた[5].. それらの要素を考慮した学級モデルを構築し,その有効性 を確認した.. 2. 既存研究. 3. 提案手法 生徒は他の全生徒と趣味嗜好に対する好感度,座席の情報. 先行研究の学級モデル[2][3]は,ハイダーの認知的均衡理. を保持している.生徒は各生徒に対する好感度と座席の情. 論[4]に基づき,モデル化している.このモデルでは生徒が. 報をもとに会話相手を選択する.その後好感度をもとに,. 学級内の生徒の中から会話相手を選択する.その後,他の. 他の生徒と趣味嗜好から話題対象を選択し,会話を行う.. 生徒と生徒以外の話題から話題対象を選択して,会話を行. その後ハイダーの認知的均衡理論に基づき会話相手と話題. い,ハイダーの認知的均衡理論に基づき,会話相手と話題. 対象に対する好感度を変化させる.全生徒が会話を繰り返. †1 東京都市大学 Tokyo City University.. ⓒ2018 Information Processing Society of Japan. 1.

(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-MPS-121 No.14 2018/12/18. すことで,人間関係を形成するモデルである.. ℎ(𝑖, 𝑢) =. 3.1 生徒が所持している要素. 𝑖 𝑖 (𝑙𝑖𝑢 + 𝑙𝑢𝑖 )+2 4. 𝑖 生徒は,席情報と他の生徒,趣味嗜好に対する好感度𝑙𝑢𝑥. ここで𝑑𝑖𝑠𝑡(𝑖, 𝑢)は生徒 𝑖 と生徒 𝑢 の席の距離,𝑐 は席の. (生徒 𝑖 が考える生徒 𝑢 から対象 𝑥 に対する好感度)を. 重み,𝑚 は生徒の総数を表す.ℎ(𝑖, 𝑗) の第 1 項は生徒 𝑖 が. 所持している.ただし,相手の事を正確に把握できないた. 好意を寄せている生徒,第 2 項は生徒 𝑖 に好意を寄せてい. 𝑖 ≠ 𝑙 𝑢 となる.ここで,趣味嗜好には注目を浴びや め,𝑙𝑢𝑥 𝑢𝑥. る生徒を選びやすくなる事を表した項である.また,昼食. すい趣味嗜好があり,その趣味嗜好に関しては好きな生徒. 時間は会話相手を座席の距離が√2以下の生徒のみに限定. もいれば,無関心な生徒もいると考えられる.よって各生. して𝑐 = 0とし,昼休み時間は会話相手を全生徒を対象とし. 徒の 𝑛 個の趣味嗜好の内 𝑠 個を注目を浴びやすい趣味. て𝑐 = 0とする.. 嗜好として設定し, 𝑠 個の内 1 つを好きな趣味嗜好,他の. (ⅱ)話題対象の選択. 1 つを無関心な趣味嗜好とする.好きな趣味嗜好に関して は好感度の絶対値が大きくなる様に設定し,無関心な趣味 嗜好に関しては好感度の絶対値が小さくなる様に設定する. 3.2 時間割と会話相手の選択 各生徒は授業間の休み時間と昼食時間,昼休み時間に会 話を行う.実際の学級では 1 日に授業間休み時間は 10 分. 生徒 𝑖 が生徒 𝑢 との会話において,話題対象 𝑥 を選択 する確率𝑟𝑖𝑢 (𝑥)は次式で表す. 𝑖 𝑖 | |𝑙𝑖𝑥 +𝑙𝑢𝑥. 𝑟𝑖 (𝑥) =. (2). 𝑖 𝑖 ∑𝑚,𝑛 𝑘∈𝐷|𝑙𝑖𝑘 +𝑙𝑢𝑘 |. 確率𝛼 (𝛼 > 0.5)で趣味嗜好(𝑚)を選択. 𝐷={. 確率(1 − 𝛼)で 生徒(𝑛)を選択. で 5 回,昼食時間は 40 分,昼休み時間は 20 分であるのが. ここで,𝑛 は趣味嗜好の総数を表し,𝛼 は趣味嗜好を選ぶ. 一般的である.1 日の時間割の様子を図 1 に示す.1 回の会. 確率である.実際に話題を選ぶ際,会話相手の嗜好も考慮. 話時間を 5 分と仮定すると授業間の休み時間は 2 ターン,. 𝑖 𝑖 すると考えられるため,𝑙𝑖𝑥 と 𝑙𝑢𝑥 の和の絶対値を用いる. 昼食時間は 8 ターン,昼休み時間は 4 ターンとなり,1 日. 事で生徒 𝑖 と生徒 𝑢 が共に好き,共に嫌いなものに対し. は 22 ターンとなる.生徒は月に 20 日登校すると仮定し,. て話題を選択しやすくなるように設定した.ただし,趣味. 1 ヶ月を 440 ターンとする.会話相手を選択する際,授業. 𝑖 嗜好に関しては共に好きな対象を話題に出すと考え,𝑙𝑖𝑥 >. 間の休み時間は時間が短いため,席の近い生徒を会話相手. 𝑖 > 0の趣味嗜好のみ話題に選択するように設定した. 0, 𝑙𝑢𝑥. に選びやすくする.昼食時間は席を移動せず食事を行うた. また,共に好きな趣味嗜好の話題がない場合,生徒を話題. め周囲の生徒に限定して会話相手を選択し,昼休み時間は. に選択する様に設定した.. 時間が長いため,席の位置に関わらず会話相手を選択する.. (ⅲ)人間関係の更新 (ⅰ)で会話相手,(ⅱ)で話題対象を選択した後,好感度を更 新する.生徒 𝑖 から生徒 𝑢 及び話題対象 𝑥 に対する好感 𝑖 𝑖 度変化量∆𝑙𝑖𝑢 ,∆𝑙𝑖𝑥 は次式で表される.. 𝑖 ∆𝑙𝑖𝑢 =. 𝑖 𝑖 (∆𝑙𝑖𝑢,1 + ∆𝑙𝑖𝑢,2 ). 𝑖 ∆𝑙𝑖𝑥 =. 図 1:1 日の時間割. 𝑖. (3). 𝑖. (4). 𝑒 𝑘|𝑙𝑖𝑢 | 𝑖 ∆𝑙𝑖𝑢,1 𝑒 𝑘|𝑙𝑖𝑢 |. 𝑖 ここで,1 は間接変化,2 は直接変化を表しており,∆𝑙𝑖𝑢,1 ,. 3.3 モデルの流れ 初期設定で生徒の好感度,席情報を決定する.全生徒が. 𝑖 𝑖 ∆𝑙𝑖𝑥,1 は間接変化の変化量を表し,∆𝑙𝑖𝑢,2 は直接変化の変化量. 時間割に応じて,会話相手,話題対象を選択し,会話を行. を表している.𝑘 は変化量の変わりづらさを表している.. い,人間関係を更新するまでを 1 ターンとする.以下の(ⅰ). 現実では好きな度合い,嫌いな度合いが強ければ好感度は. ~(ⅲ)に 1 ターンの流れを示す.. 変化しづらいと考えられるため,それを 𝑘 で表し,好感度. (ⅰ)会話相手の選択. の絶対値が大きければ変化量が小さくなるように設定して. 会話相手選択の際,生徒は自分が好きな生徒と自分の事. いる.ただし,趣味嗜好に対する印象は変わりづらいと考. を好きな生徒を優先的に選ぶ.休み時間において生徒 𝑖 が. えられるため,本モデルにおいて趣味嗜好に対する好感度. 生徒 𝑢 を会話相手とする確率𝑞𝑖 (𝑢)を次式で定義する.. は変化しないものとし,話題対象𝑥が趣味嗜好の場合,話題. 𝑐 1 ) 𝑑𝑖𝑠𝑡(𝑖, 𝑢) 𝑞𝑖 (𝑢) = 𝑐 1 ∑𝑚 𝑘=1 (ℎ(𝑖, 𝑘) × (𝑑𝑖𝑠𝑡(𝑖, 𝑘)) ). 対象𝑥の変化量は 0 とする.. ℎ(𝑖, 𝑢) × (. (1). 間接変化は,ハイダーの認知的均衡理論に基づき,会話 相手と話題対象について話すことにより自分から会話相手 に対する好感度と自分から話題対象に対する好感度を変え る.会話相手と話題対象の好感度を更新する際,話題対象. ⓒ2018 Information Processing Society of Japan. 2.

(3) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-MPS-121 No.14 2018/12/18. になった生徒から会話相手に対する意見も採用するとし, 𝑖 𝑖 𝑖 𝑖 𝑖 𝑖 {𝑙𝑖𝑢 ,𝑙𝑖𝑥 ,𝑙𝑢𝑥 }または{𝑙𝑖𝑢 ,𝑙𝑖𝑥 ,𝑙𝑥𝑢 }の. 2 つの好感度の組み合. 度を[-0.1,0.1]の一様乱数で設定する.また,趣味嗜好に対 する好感度において,注目を浴びやすい趣味嗜好𝑠 = 5とし,. わせから無作為に選択して好感度を変化させる.また,話. 好きな趣味嗜好においては,平均 0.6,標準偏差 0.1 の正規. 題対象𝑥が生徒以外の時は,話題対象から会話相手に対す. 乱数,無関心な趣味においては,平均 0.0,標準偏差 0.1 の. 𝑖 𝑖 𝑖 }を用いる.ここ る好感度は存在しないため, {𝑙𝑖𝑢 ,𝑙𝑖𝑥 ,𝑙𝑢𝑥 𝑖 𝑖 𝑖 }の好感度の組み合わせを例に挙げて好感 では {𝑙𝑖𝑢 ,𝑙𝑖𝑥 ,𝑙𝑢𝑥. 正規乱数,その他の趣味嗜好においては,平均 0.0,標準偏. 度変化を説明する.3 つの好感度が均衡状態の場合次式を. メータを用い,実験を行った.図 2 で最終ターン時におけ. 用いて好感度変化量を求める.. る 1 人当たりの生徒に対する好感度分布を比較した.. 𝑖 𝑖 𝑖 𝑖 𝑖 𝑖 ∆𝑙𝑖𝑢,1 = 𝜈1 (𝑠𝑖𝑔𝑛(𝑙𝑖𝑥 𝑙𝑢𝑥 )√|𝑙𝑖𝑥 𝑙𝑢𝑥 | − 𝑙𝑖𝑢 ). (5). 𝑖 𝑖 𝑖 𝑖 𝑖 𝑖 ∆𝑙𝑖𝑥,1 = 𝜈1 (𝑠𝑖𝑔𝑛(𝑙𝑖𝑢 𝑙𝑢𝑥 )√|𝑙𝑖𝑢 𝑙𝑢𝑥 | − 𝑙𝑖𝑥 ). (6). 差 0.3 の正規乱数で設定した.以下の結果では表 1 のパラ. 表 1:実験に用いたパラメータ シミュレーションターン. 15840 ターン(3 年間). 試行回数. 50. 生徒の数:𝑚. 30. 趣味の数:𝑛. 10. 友人閾値. 0.4. 席の重み. 2.4. ここで,𝜈1 は間接変化による変化量の重みを表し,均衡状. 好感度の取りうる値. [-1,1]. 態を維持しようとする.次に 3 つの好感度が不均衡状態の. 好感度の変化しづらさ:𝑘. 5.0. 間接変化の重み:𝜈1. 0.1. 1 (𝑧 > 0) 𝑠𝑖𝑔𝑛(𝑧) = { 0 (𝑧 = 0) −1 (𝑧 < 0). 場合は次式を用いて好感度変化量を求める. 𝑖 ∆𝑙𝑖𝐴,1. =. 𝑖 𝑖 𝑖 𝑖 𝜈1 (𝑠𝑖𝑔𝑛(𝑙𝑖𝐵 𝑙𝑢𝑥 )√|𝑙𝑖𝐵 𝑙𝑢𝑥 |) 𝑖 ∆𝑙𝑖𝐵,1 =0. (7) (8). 直接変化の重み:𝜈2. 0.5. 好感度を近づける重み:𝜈3. 0.2. 好感度を近づけた際の誤差:𝜀. [-0.5,0.5]の一様乱数. ここで,𝐴, 𝐵は無作為にどちらかを生徒 𝑢 ,もう片方を話. 友人閾値. 0.4. 題対象 𝑥 とする.不均衡状態の時は,均衡状態に近づけ. 趣味嗜好を選択する確率:𝛼. 0.9. 𝑖 𝑖 るように 𝑙𝑖𝑢 ,𝑙𝑖𝑥 のどちらか片方の好感度を維持し,もう. 片方の好感度を変化させる. 直接変化は,相手から自分に対する好感度を読み取り, 自分から会話相手に対する好感度を変化させると仮定し, 次式を用いて好感度変化量を求める. 𝑖 𝑖 𝑖 ∆𝑙𝑖𝑢,2 = 𝑣2 (𝑙𝑢𝑖 − 𝑙𝑖𝑢 ). (9). ここで,𝑣2 は直接変化による変化量の重みである.相手の 好感度に近づける好感度変化を表している. また,会話を行う度に相手の思っていることを理解する 𝑖 と考えられるため,会話を行う度に 𝑙𝑢𝑥 を次式で更新する.. 𝑖 𝑖 𝑖 } ∆𝑙𝑢𝑥 = 𝑣3 {(𝑙𝑢𝑥 + 𝜀) − 𝑙𝑢𝑥. (10). ここで,𝑣3 は実際の会話相手から話題対象に対する好感度. 図 2: 各生徒の好感度分布. に近づける度合いを表し,𝜀 は好感度を理解する際の誤差. 図 2 より,少し嫌いな生徒よりも少し好きな生徒が多い結. を表している.. 果になり,凄く好きな生徒や凄く嫌いな生徒を確認するこ. 𝑖 𝑙𝑖𝑢 が友人閾値以上の時,生徒 𝑢 を友人とみなし生徒𝑖. から生徒𝑢に対し友人リンクを張る.. とができた. 実際の学級においても,少し嫌いな生徒よりも,少し好 きな生徒が多いと考えられ,凄く好きな生徒や,凄く嫌い. 本モデルでは,全生徒が(i)~(ⅲ)を行う事を 1 ターンと し,それを一定回数繰り返す.また教師は 1 ヶ月に 1 回無 作ために席替えを行う.. 4. 結果 提案モデルの妥当性を確かめる.初期設定として,初対 面の生徒に対する印象は薄いものとし,生徒に対する好感 ⓒ2018 Information Processing Society of Japan. な生徒がいると考えられるため,提案モデルは現実に近い 学級モデルであると考えられる. また,どのような生徒が友人同士になっているのかを確 認した所,友人同士の趣味の相関が 0.33 と弱い相関がみら れた.実際の学級においても趣味の合う者同士が友人同士 になると考えられるため,現実に近い学級モデルであると 考えられる.. 3.

(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 提案モデルにおいて,どのように友人関係が広がってい っているかを確認するために,図 4 で,初期ターンから 3 ヶ月の座席の距離ごとの友人の推移を確認した.. Vol.2018-MPS-121 No.14 2018/12/18. 5. 考察 図 2 において,凄く好きな生徒や,凄く嫌いな生徒が確 認できた理由を考える.式(6),(7)を用いて好感度の更新を 行う際,話題対象 𝑥 の好感度の絶対値が大きい時,生徒に 対する好感度の絶対値が大きくなる.ところが,趣味嗜好 の好感度を各生徒の好感度よりも大きく設定し,趣味嗜好 に関する好感度を変わらなくしている上,式(2)により,話 題対象に選択する確率が高くなっているため,生徒に対す る好感度の絶対値が大きくなっていると考えられる.この ことを確認するために,趣味嗜好を選択する確率の考慮の 有無による,最終ターン時の生徒に対する好感度分布を図 4 に示す.. 図 3:座席の距離ごとの友人の割合の推移 上図は,赤の生徒を中心にしたときの座席の位置と色の 関係を表しており,青が座席の距離 1 の生徒の位置,橙 色は座席の距離√2の生徒の位置,黄緑色は座席の距離 2 以上の生徒の位置を表している.下図は距離ごとの友人 の割合推移を表しており,横軸は時間,縦軸は各座席の 距離において,どれだけの割合で友人になっているかを 表す割合を百分率で表している.青いグラフは座席の距 離 1 の友人割合の推移,橙色のグラフは座席の距離√2の 友人割合の推移,黄緑色のグラフは座席の距離 2 以上の 生徒の友人割合の推移を表している. 図 3 より,初期ターンから 1 ヶ月の間において座席の近い 生徒程友人になりやすい結果となった.また,1 ヶ月,2 ヶ 月の時に席替えを行っており,その結果,各座席の距離毎 の友人の割合推移が均されているが,ターンが経過するに つれ,友人の割合が上昇し,全体的にグラフが右肩上がり になっている.これは,席替えを行っても席替え前に出来 た友人関係が続き,席替えした先で新たに友人を作ってい る様子を表している.実際の学級においても,座席の近い 生徒程友人になりやすく,席替えしても友人関係が続き, 席替えした先で新たに友人を作ることで,友人関係が広が る考えられるため,現実に近い学級モデルであると考えら れる.. 図 4: 趣味嗜好を選択する確率の考慮の有無による 生徒の好感度分布の比較 横軸は好感度,縦軸は人数を表しており,黒色は趣味嗜 好を話題に出す割合を考慮しなかった場合の好感度分 布を表しており,赤色は,趣味嗜好を話題に出す割合を 考慮した提案モデルの好感度分布を表している. このことから,趣味嗜好の好感度の絶対値を大きくし,変 化しなくしたこと,式(2)より趣味趣向を選択する確率を高 くしたことによるものであることがわかる. また図 2 の結果より,現実に近い学級モデルであるとい う根拠として,マズローの欲求階層説における「所属と愛 の欲求」を挙げる. 「所属と愛の欲求」とは,人は集団から 認められることを望み行動する欲求である.提案モデルで は会話相手に認めてもらうために,話の合う話題を振りや すくしており,結果として,少し嫌いな生徒よりも少し好 きな生徒の数が多く,各生徒は集団から望まれている状況 になっていると考えられる.このことから,提案モデルで は集団から望まれている状況を再現できたと考えられるた め,マズローの欲求階層説を根拠として挙げた.. 6. 今後の課題 3 者間の好感度が不均衡状態における好感度変化量の式 (7),(8)において,乱数で好感度を変化しないもの決定して いるが,実際の学級では思い入れの強いような凄く好きな ものや,凄く嫌いなものほど変化しないと考えられる.そ のため,好感度の絶対値が大きいほど,変化しないように. ⓒ2018 Information Processing Society of Japan. 4.

(5) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-MPS-121 No.14 2018/12/18. 設定したい. また,現在の学級モデルでは,孤立者以外のいじめの定 義をしていない.さらに,友人リンクによるネットワーク の解析が出来ていない. そこでまず,いじめの定義の検討を行う,そして,友人 リンクによるネットワークの解析を行い,より現実に近い 学級モデルを構築し,いじめを減らすいじめ対策行動を考 えていきたい.. 参考文献 [1]. 文部科学省: 平成 28 年度「児童生徒の問題行動 等生徒指導上の諸問題に関する調査」における 「いじめ」に関する調査について http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/10/__icsFi les/afieldfile/2017/10/26/1397646_001.pdf.. [2]. 田中恵海,高橋謙輔,鳥海不二夫,藤原俊治:学 級のいじめ問題を題材とする工学的シミュレー ションとその課題,情報処理学会論文誌数理モデ ル化と応用 vol3 No.1 pp98-108(Jan.2010),2010.. [3]. 吉田達矢,穴田一: 趣味嗜好の偏りを考慮した 学級モデル 2018 年度人工知能学会全国大会(第 32 回),4J1-05,2018.. [4]. 太田垣瑞一郎:現代心理学,八千代出版,1988.. [5]. 伊藤隆一,千田茂博,渡辺昭彦:現代の心理学, 金子書房,2003.. ⓒ2018 Information Processing Society of Japan. 5.

(6)

参照

関連したドキュメント

の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減

「新老人運動」 の趣旨を韓国に紹介し, 日本の 「新老人 の会」 会員と, 韓国の高齢者が協力して活動を進めるこ とは, 日韓両国民の友好親善に寄与するところがきわめ

・ 化学設備等の改造等の作業にお ける設備の分解又は設備の内部 への立入りを関係請負人に行わせ

彩度(P.100) 色の鮮やかさを 0 から 14 程度までの数値で表したもの。色味の

なお、保育所についてはもう一つの視点として、横軸を「園児一人あたりの芝生

られる。デブリ粒子径に係る係数は,ベースケースでは MAAP 推奨範囲( ~ )の うちおよそ中間となる

告—欧米豪の法制度と対比においてー』 , 知的財産の適切な保護に関する調査研究 ,2008,II-1 頁による。.. え ,

2013