不登校経験者の学校復帰への促進要因と復帰による影響の検討

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− 81 − 不登校経験者の学校復帰への促進要因と復帰による影響の検討 人間教育専攻 臨床心理士養成コース 冨 賀 香 帆 1.問題と目的 不登校への対応の広がりは,今日,特に盛ん になっているところである。文部科学省、(2009) が実施している施策により,スクールカウンセ ラーの設置が推進され,学校側も保健室など特 別の場所に登校させて指導にあたるなど,さま ざまな対応がなされている。にもかかわらず, 不登校児童・生徒数は平成

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年から依然横ば い,むしろここ数年は増加しているといってよ い状態である。不登校児童生徒への支援・対応 が依然として求められ続けていること,また, 不登校児童生徒数と同様に,支援を必要として いる人たちも変わらず存在し続けているという 実情が表れているといえよう。 松坂 (2010)は「不登校の最中にあった時に は言葉にで、きなかった感情や自身の状態を,そ の後の経験によって獲得した言語によって説明 されるという点は,援助者による援助効果を向 上させる上で有益な情報となり得るJと述べ, 当事者に聞くことの意義について語っている。 同じ流れの中,文部科学省 (2011)は「不登校 の未然防止や不登校児童生徒への必要な支援の 在り方等を検討する上での基礎資料とするため, 不登校経験者の状況を把握する必要がある (2011) Jとしづ理念のもと,不登校の追跡調査 研究会を設置している。以上のことから,不登 指導教員 中津郁子 校経験者への研究・調査は,これからを生きる 不登校児童生徒に対しても有益であると考えら れる。これらの理由から,本研究では不登院経 験者を対象として学校復帰の促進要因と復帰に よる影響を検討した。

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対象と方法 小学校

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年生 中学校

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年生までの聞に不登 校経験がある者

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名(男性

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名,女性

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名)を 対象とし,半構造化面接を行った。面接をスム ーズに進めるため,事前に調査内容に関連した 内容のアンケートに回答していただき,その後, 約

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時間の半構造化面接を実施した。支援のあ り方をより深く考察するため,不登校経験者が 「実際に受けた支援」と「受けたかった支援」 の2つを

KJ

法にならった方法で、まとめ,考察 した。

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結果と考察 「復帰の促進要因Jと「復帰することの影響J については多くの語りに共通して相生する要素 を抜き出し,考察した。「不登枕怪験者が求める 不登校支援Jは,より理解しやすい形にし新 たな発見を得るために

KJ

法にならった方法を 用いて支援のあり方を考察した。その結果,復 帰の促進要因は①受容的な前生・場②考え方の 変化③エネルギーの充足の3つで、あった。次に, 復帰することの影響には①周囲が変化する②考

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− 82 − え・気持ちが変化するとし、う 2つの変化が荊生 していた。これらのほかに不登校経験者は多く の場合不登校から復帰することに関してポジテ ィブな印象を抱いているということが明らかと なった。しかし不登協怪験者にとっての復帰 の影響とはあくまで、もニュートラノレな状態への 回帰によるものであり,得るというよりも取り 戻すとし、う意味合いが強く感じとれるというこ とも同時に判明した部分である。 不登校経験者が「受けた支援Jと「受けたか った支援」との比較からは,やはり不登校経験 者が求めていた支援とはあらゆる形の受容であ ることがわかった。それは「学校に行かなくて もいいよ!と言ってくれる人に傍にいてほしかっ たJIひとりひとりを見てほしかった」という語 りで、もって表現されていた。また,学校外の機 関に求められていたものも「受容的であることj で、あったことから,現在・これからの不登校支 援体制が一番に目指すところは受容的であるこ とといえよう。 不登校経験者は復帰に対しポジティブな印象 を持っているとは前述したところであるが,同 時に「普通に学校に通ってるだ、けだ、ったらでき なかった経験がでLきたJI一つの経験値にはなっ たのかなとは思う」というような不登校に対す る価値の発見そして「逆に不登校にならんか ったらきっともたなかったと思う。不登校にな ったからこそ出会った人とか,出会った本とか, チャンスとか,ご、縁があったなあと,思うよJIあ のまま学校に行き続けてたら自殺してたと思い ます」というように不登校としづ経験が現在の 自身にとって欠かすことのできない時間で、あっ たことも示された。これらのことから,すべて の子どもを不登校にしないこと,あるいはすべ ての不登校児童生徒を学校や社会に復帰させる ことは不可能であると同時に支援とならず,支 援者は不登校をしたくない子どもが不登校にな らないで済むように努力をすべきということで ある。異なる見かたをすれば,不登校という状 態をとらなければならない状況にある子どもか ら不登校を奪うことは支援にならないどころか, 命を奪ってしまう危険性すらはらんでいるとい えるのだ。

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今後の課題 はじめに,調査者がインタピュアーとして未 熟なために語り手の思いを充分にくみ取れなか ったとし、う点が本研究の第一の乱題である。 こ の不足を補うためには, 一度ではなく数回の面 接を行うこと,また,調査者がインタピュアー として経験を積み挑むなどすれば,ある砲支は 補うことが可能であろう。 次に調査対象者の偏りについて挙げる。調査 対象者の年齢がほぼ同年代となってしまったこ と,そして,本研究の調査対象者が比較的社会 適応水準が高いことから,研究データの偏りが あるものと思われる。このことから,本研究で 得られた結果は不登校の児童・一生徒にすべて共 通するわけではなく,限られた範囲での結果と なっている。 最後に,本研究では不登校経験者の語りから 不登校児童・生徒にとってよい支援となるため の要素を見出してきたが,実際に支援に応用す るなどの効果検討はできていなし、。今後はこれ らの課題を解決し,より実践に近し、かたちで、の 不登校研究へと活かされることが期待される。

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