• 検索結果がありません。

中学校の美術教育を活性化するためのプロジェクト研究-滋賀県中学校美術教育連盟との連携研究を通して

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中学校の美術教育を活性化するためのプロジェクト研究-滋賀県中学校美術教育連盟との連携研究を通して"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

新関 伸也

Shinya NIIZEKI

滋賀大学

堤 祥晃

Yoshiaki TSUTSUMI

大津市立志賀中学校

-滋賀県中学校美術教育連盟との連携研究を通して-

Project Study for Activating the Art Education of Junior High School

Through Research Cooperation with the Junior High School Art Education

Federation of Shiga

<キーワード> 美術科、研究会、授業観察、生徒の主体的活動、授業改善 1.はじめに (1)問題の所在 滋賀県中学校美術教育連盟(以下、滋賀中美連)は、 県内中学校美術科教員の指導力向上をはかる目的と して、毎年、授業研究会や各種研修会を行っている。 2005年度から「ねらい、造形、材料」の3つの要素 を適切に組み合わせ、その「授業で何をどこまで指導 するのか」という視点と題材のねらいを明確にして、 授業を組み立てる研究実践を積み重ねてきた。 また、2009年度からは「生徒の学びを通して見る、 その授業の意味」という研究テーマのもと、指導者側 からの視点だけでなく、学習者である生徒の立場から 授業改善を進めている。それぞれの題材や授業が生徒 にとって「どの様な意味を持つのか」ということを中 心に据えて、授業中の生徒の様子を根拠に分析しなが ら、研究協議を行ってきた。 これまでの成果を踏まえて、現在、滋賀中美連の授 業研究会では、教師の指導法や発問、授業の展開ばか りに注目するのではなく、生徒の活動を観察していく 中で授業の意味を探り、授業改善につなげるというス タイルで研究をすすめている。 しかし、生徒の観察を主体に授業を分析するという 参観方法が美術教師間に定着しているとは言いがた く、「生徒のどの様な活動の中にどの様な学びが生ま れるのか」、さらに「生徒の学びを最大限引き出す為 にはどの様な手立てがあるか」について、深く追求す るまでには至っていない現状にある。 (2)目的 本研究では、2014年度までの取り組みから、さら に踏み込んだかたちで「生徒がどの様な活動の中で、 何を学んでいるのか」に着目し、そこから「生徒の学 びを最大限に引き出すことのできる授業の組み立て」 について研究を進め、県内美術科教員の意識改革を進 め、授業改善につなげることを目的とした。 さて、美術科の授業の一般的な構成は、導入には じまり活動、成果物と表すことができる(図1.)。過 去の授業や研究会をふり返ってみると、作品やワーク シートなどの成果物を中心に授業を評価することが多 かったことは否定できない。しかし、本当に学びのあ る授業では生徒の学びは活動そのもの中で培われてい ると考える。 つまり、完成作品の仕上がりは充分とはいえない生 徒であっても、制作活動で試行錯誤する中で発見や感 動、発想の広がりを得られるのであれば、美術科の目 指すべき「学び」の有り様だといえる。このような「学 び」は、作品やワークシートだけを教師が見ているだ けでは理解できない部分が多く、授業研究会などの場 では、生徒の活動の様子を深く観察することが必要不 可欠である。 図1. 美術科の授業の一般的な展開 (3)研究の方法 滋賀中美連では、毎年6月と10月に公開授業を伴う 授業研究会、8月に研修会、1月に研究大会(公開授業、 研究協議、講演又は研修)という4つの大きな活動を 行っている。 これらの活動の中で、授業者、参観者、研修企画 という3つの視点から研究の方法を整理し、2013 ~ 2015年末の2年間の実践内容について記述する。なお、 2015年度においても同一の研究目的に基づいて研究 を継続している。 ①授業者の視点 授業者は授業のねらい(何を学ばせる授業なのか) を明確にした上で、表現や鑑賞の活動を通じて、生徒

(2)

の学びを最大限引き出せるように、内容、材料、道具、 活動の形態、授業展開などを具体的に吟味して授業を 構成していく視点である。 そのために、従来の授業で一般的な授業展開(図2. -図A)ではなく、研究会での公開授業では、「素材 との出会い」から始まるような授業(図2.-図B)を 意図して題材開発を行う。 ②公開授業参観者の視点 授業研究会では、参観者は生徒の活動の中にどのよ うな学びがあるのかを丁寧に観察する。そして、観察 した生徒の活動を根拠にして、題材は適切であったか、 授業の組み立てはどうであったかを考えていく。その ために、参観者は特定の生徒を観察し、1時間の授 業で生徒がどの様な活動をして、そこにどんな学びが あったのか、という視点で参観できるようにする。 また、研究協議においては、その授業の中であった 「事実」をもとに話し合いを行うようにし、「生徒の学 び」を軸にした意見交換やアドバイスができるよう心 がける。 ③研修企画の視点 研修会では、主に知識や技法を習得するような内容 ではなく、「素材に触れ、活動する中で学びや発見を 得られるような授業」を実際に体験してもらうような 内容のものや、「授業づくり」について少人数グルー プで検討するような内容のものを取り入れる。また、 参加者が受け身ではなく主体的に参加できるような工 夫を考える。 図2. 美術科の授業展開例 2.実践研究と内容(2013 ~ 2014年度)  【2013年度】 (1)授業研究会  日時:2013年6月25日(金)、場所:甲賀市立水口中学校 ①公開授業 ・ 題材名:『カミワザ・アートを体感しよう~鑑賞・ 新たな視点を求めて~』(A表現(1)(3)、B鑑賞) ・授業者:倉狩幸喜 教諭(甲賀市立水口中学校) ・学年:1年 〈授業の概要〉 ハサミで色画用紙を自由な形に切ってつくった作品 を天井から、つり下げ、鏡を使ってのぞくことで見え る『天地が逆転した作品』を鑑賞する。鏡を使用する ことで、日常の景色と異なった視点で鑑賞し、美術的 なものの見方や感じ方を広げることをねらいとした。 また、後に扇風機を使用して風になびく作品を鑑賞す ることで、作品から受ける印象の違いを感じさせ、表 現の良さや美しさ、面白さなどを味わわせる。 ②研究協議 (生徒観察を主体とした意見) ・ はじめは具体物に興味を持っていた生徒が、鏡を使っ てからは棒状のものに興味を持ち、作品に対する違 う価値が生まれた。 ・ 最初は言葉の形容詞が「かわいい」などの身近な形 容詞だったが、鏡を見た時のつぶやきでは言葉の幅 が広がった。視点を変えると、表現の幅も広がる、 見方が変わる。 ・ 始めから意欲的に参加していた生徒Aは、作品の真 下に行ってじっと上を見ていた。鏡を持った瞬間か ら教室内をずっと歩き回り、鏡を揺らすなどの工夫 も見られた。感想には「天井を歩いているみたい」 と書いており、最後は作品の中に入り込んでいた。 ・ 驚きの連続で1時間楽しんでいた。扇風機をかける ことに跳びあがった生徒がいた。素直に感情を出せ る雰囲気がよい。 図3. 天井から吊した《カミワザ・アート》作品 (2)夏季研究会  日時:2013年8月12日(月)、場所:滋賀県立近代美術館 ①ワークショップ(14:40 ~ 15:30) ・内容:墨を使った造形表現の可能性 ・ 講師:松崎としよ、山本あずみ、山口佳子(NPO法人[墨 アートプロジェクト]) 〈ワークショップの概要〉  活動の中に発見や気づきがあり、それが学びに繋 がっていくというスタイルの授業を教員に体験しても らうことをねらいとして、ワークショップを実施した。 講師は「墨アートプロジェクト」を主宰する松崎とし

(3)

よ先生である。前半部で墨の持つ特性や偶然性によっ て生まれる美しさや面白さを体験する活動を行った (図.4)。後半では、中学校の授業で行うためにはどの 様な工夫ができるか、など「授業づくり」についてグ ループで協議した。 〈参加者アンケート〉 ・ 墨を適当に使って描くというのではなく、“墨” の持 つ特性や基本的な表現から教えていただけので、た いへん面白く、また、感動できました。 ・ 墨について特徴を知れました。また、体験に終わら ず授業へのフィードバックを考える時間があったこ とが、今後に活かせる時間となりました。 ・ 墨の世界を楽しませていただきました。身近な材料 で、いろんな表現・発見がありました。 ・ 墨を使った授業は、準備・後片付けなど、授業しに くい要素もあるが、それを上回る魅力を感じた。こ れから展開していく要素がたくさんある、可能性の ある題材だと思う。 ・ 通常の教科書には見られない珍しい技法を学べたこ とで、教材作りの幅が広がったように思う。墨は書 道でしか使ったことがなく固いイメージがあった が、このように固定観念を外し自由に楽しむことが できる教材はとても魅力があると感じました。 図4. 墨による様々な描き方 (3)滋賀県中学校美術教育研究大会  日時:1月17日(金)、場所:彦根市立南中学校 ①公開授業(9:50 ~ 10:40) ・題材名:「シャガールの世界を味わおう」(B鑑賞) ・授業者:横田つかさ 教諭(彦根市立南中学校) ・学年:1年 〈授業の概要〉  シャガールの作品を鑑賞し、作者の心情や思いを探 る活動を通じて、自分なりの価値基準で自信をもって 発表したり、他の人の感じ方を尊重したりできる資質 を養うことを目的とした。また、見方や考え方を深め るための手がかりとして、グループで交流して作品か ら物語を考えるという手法をとった(図5.)。 ②研究協議(10:50 ~ 12:00)  (生徒観察を主体とした意見) ・ 柔軟性があり建設的な話し合いがなされていた。物 語を作る際、参観者の一言「向きを変えて見てもい いよね」に反応し、より活発な意見交流ができてい た。ある女子生徒が「ベートーベンの運命に合うよ ね」と言い続けていた。 ・ Hグループ参観。進行役の男子生徒と活発に意見を 言う女子生徒の2人を中心に話が進んでいった。「ブ ランコにのっている」「これサーカスやん」とつぶ やいていた。徐々に細部に目を向けて発見すること を楽しんでいた。一番の発見は作品上部に少しだけ 見える黄色を見つけたこと。かなり上の方にチラッ とだけ黄色があり、あとは深い水の色というイメー ジから、深海に差し込む光を想像してタイトルを「深 海のサーカス」にまとめていた。 ・ Bグループの様子を見ていると、提示の仕方や内容 が合っていなかったように思う。全てについて考え なければならないと感じてしまう。1年生というこ ともあり、グループで物語をつくる前に、指導者と 学級全体とで十分にやりとりをして耕す活動をもっ としたほうがよかった。乱暴に好き勝手な意見を出 していてはいけないなと感じさせるのもよい。 ・ 授業の流れがとてもよかった。まず個人の活動から 入る。そこからグループでの交流になり、また個人 へ戻る。いきなりグループから入ると発言できる子 ばかり発言して話し合いにはならない。発言できな い生徒はそこで自分の思考を止めてしまう。完全な お客さん状態になり、できない生徒がこぼれていく。 だからこそ、自分の見方感じ方を持たせる手立てや 時間の確保が大事になってくる。 図5. シャガールの絵の鑑賞 ③講演(12:50 ~ 14:30) 「育成する資質や能力と学習内容との関係を明確にし た授業つくり」 講師:東良雅人(文部科学省教科調査官・美術) 〈講演の概要〉  教科調査官の立場から、中学校学習指導要領(美術 科)の内容を具体的にわかりやすく解説いただいた。

(4)

その中で、全国の実践例などを交え、「授業づくり」 のポイントについて講話があった。 〈参加者アンケート〉 ・ 「やるべきこと」「やりたいこと」「やれること」を 日頃しっかり考えて授業ができているかを自分でふ り返ってみると、なかなか満足にはできていないこ とが心にささりました。その他にも、美術科におけ るなくてはならない大切なことを多く伝えていただ き、明日からの授業もより良いものにしていきたい と感じました。 ・ 生徒がつくりたいと感じられる「原動力」に気づけ るようにしたい。今日の講演を自分の学校でどう活 かしていけるか、再考したい。 ・ 「すべての子どもたちは豊かな存在である」それを さらに広げ、深めてやれる授業を今後も目指したい と思いました。大変参考になりました、ありがとう ございました。多くの指導例もとても良かったです。 ・ 納得!!お話はわかりやすく、写真や動画もあり、良 かったです。最近は言語活動をよく言われるので、 そればかりに目がいっていた気がし、それが目的に ならないようにと言われてはっとした思いです。 【2014年度】 (1)授業研究会  日時:2014年6月24日(火)、場所:草津市立老上中学校 ①公開授業 ・ 題材名:「和紙のよさを見つけよう~工芸品から学 ぶ~」(B鑑賞) ・授業者:阿部節子 教諭(草津市立老上中学校) ・学年:3年  〈授業の概要〉  普段何気なく使っている「紙」という素材に注目し、 和紙を用いた工芸品や資料を見て、和紙の機能性や美 しさについて考える鑑賞題材である。和紙には繊維の 長さからくる強度や、美しい透過性、温かみなど他の 紙には見られない特徴がある。そのような特性を生か し作られた障子や傘、扇子、提灯、行灯、熨斗、紙器 などから機能性や美しさを味わい、和紙の特性や加工 の工夫、風合いなど紙の魅力を再発見し、現代におけ る紙のデザインや素材の可能性に興味をもたせること をねらいとしている。 ②研究協議  (生徒観察を主体とした意見) ・ 子どもたちは興味を持って主体的に鑑賞していた。 提示したアイテムが魅力的だったので、生徒の興味 関心は高かった。 ・ 解説や説明文を提示したことでわかりやすかった半 面、それが正解だと感じさせ、自らの発想で鑑賞し ようとする力をそいでしまったのではないか。 ・ ワークシートがわかりやすく、生徒が取り組みやす かった半面、誘導的になっていたのではないか。 (2)夏季研究会 日時:2014年8月11日(月)、場所:大津市立瀬田北中学校 ①実践交流会(12:30 ~ 16:30) 〈研修の概要〉 優秀な生徒の作品だけを見ていても授業の全体像は 見えこない、課題のある生徒、苦手意識のある生徒の 作品にこそ授業改善のヒントがあるはずという考えの もと、原則1クラス分全員の作品(未完成の作品等が あっても、セレクトせずに持ってくる)を持ち込んで 意見交流するというルールの研修を行った(図6.)。 また、活発な話し合いを促すために、少人数グルー プに分かれて意見交換を行った。 〈参加者アンケート〉 ・ 普段、見ることがない他の先生方の実践が見られる のは貴重、1クラス分ということで得意な生徒から そうでない生徒までなど、全体を見渡して意見交流 ができるので良い。 ・ 先生方の生の姿が見られた様で、嬉しく思います。 その中で、「こんな生徒には、こういう風に言うと るで」という話が聞けたので、それが一番の収穫か なと感じました。 ・ 作品展では見られない作品を見せていただくことが できたことと、その作品に取り組まれた先生の考え なども聞くことができて、とても新鮮でした。色々 な意見や質問を聞く中で、発想の幅を広げすぎず、 課題のねらいを明確に絞って生徒に与えた方が、生 徒にとっても取り組みやすいということを確認する ことができました。 ・ 先生方にご指導いただき、自分には思い浮かばなかっ た点や、新たな視点を身につけることができました。 今後の授業展開にさらなる工夫が必要だと思いまし た。いい刺激となり勉強になりました。有り難うご ざいました。 図6. 夏季研究会での生徒作品鑑賞 (3)授業研究会  日時:2014年10月28日(火)、場所:大津市立堅田中学校 ①公開授業 ・ 題材名:「この粘土、すごい!~触りながら、新し

(5)

くて不思議な形を生み出そう~」(A表現(1)) ・授業者:松原圭子 教諭(大津市立堅田中学校) ・学年:2年 〈授業の概要〉  自由度が高く形成しやすい粘土を使用し、触ったり、 学び合ったりする中で試行錯誤をさせ、表現の可能性 を探る授業である(図7.)。具体的なテーマを与えずに、 素材と触れ合う中で新たな発想を生み出し、抽象的な イメージ表現へ発展させることを目標としている。 ②研究協議  (生徒観察を主体とした意見) ・ 8班を見ていた。道具を一通り使っていた。形とい うより模様をつけて楽しんでいた。「25分あるし、 色々やっていこう」と声をかけあっていた。しばら くすると道具にあきて、手でこねていた。それぞれ の制作物をみながら「それかわいい」「それ気持ち 悪い」「それいいな」ということを言い合っていた。 台の上にのせる時に「立体感がないなぁ」と言って いた。周りと見比べながら作業ができていた。 ・ 抽象という意味は難しい。抽象的とは本質的という こと。あいまいなものは抽象的とは言わない。生徒 の中には何をしたらいいのか分からない子もいた。 指導案の本時の展開の指導上の留意点にある「のび る」「うすくなる」などはこちらが言って伝えるの ではなく、生徒が発見し発言できる授業にできたら 良かったのではないか? ・ もし、自分が授業をするのであれば「○○星にいる、 みたことのない生き物のつのやヒレ、うろこなどを 作らしていく」などの工夫をしたかと思う。 ・ 最初の例など教師が説明しすぎていたのではないか。 もっと生徒にゆだねても良かった。 ・ 考えのかたまった生徒も、となりの生徒の作品をみ ながら学んでいた様子があった。4人組での授業を 私も行いたい。2班の生徒は男子ばかりであったが、 意欲的に取り組めていた。私なら道具を後から渡し たかもしれない。最後作品を提出するときに、「ぼ くらの班は立体的じゃないなぁ」と言っていた。 (4)滋賀県中学校美術教育研究大会 日時:2015年1月16日(金)、場所:草津市立高穂中学校 ①公開授業(9:55 ~ 10:45) ・ 題材名:「高穂中学校に美術館がやってきた!~現 代陶芸を見る~」(B鑑賞) ・授業者:笹山留衣 教諭(草津市立高穂中学校) ・学年:2年 〈授業の概要〉  現代陶芸作家笹山忠保氏の実物作品を鑑賞し、良さ や美しさを探っていく。見方や考え方を深めるための 手がかりとして、スケッチやグループ交流をして考え させ、自分なりの見方を持つとともに、他人の見方を 尊重できる資質を養うことを目的とした(図8.)。 ②研究協議(10:50 ~ 12:00) (生徒観察を主体とした意見) ・ 生徒達が作品に触れ、生き生きしている様子が印象 的でした。笹山先生による作品との出会わせ方が生 徒達をそうさせたのだと思います。本物に触って感 じるということの魅力、そして授業をステップアッ プさせていく難しさを感じました。 ・ 父が造形作家!それを生かさない手はないです。生 徒達はいい体験ができました。笹山先生にしかでき ない授業です。こういうのを“出会い”と言うのでしょ う。本物に勝るものはないです。 ・ 笹山先生お疲れ様でした。〝本物〟を観る、触る鑑 賞の授業はとても魅力的で、本物でしか味わえない、 気がつけないこともたくさんあり、今日の子どもの 様子からそれが感じとれました。直接たたく→空洞 の音を聞く→穴を探すといった、本物を前にしない と味わえない体験ができたのではと思います。 ・ 他校の先生の授業や生徒の反応を見る機会が少ない ので、とても貴重な時間でした。本物の美術作品を 前にすることで、徐々に生徒のつぶやきや会話が作 品の細かいところにまで着目したものになっていっ ていたのが印象的でした。 ・ 「よさや美しさ」という文言など、ワークシートの 内容は少し誘導的だったのではないか。 ・ 最後に作家の言葉を伝えたが、そこは子ども達の意 見をまとめる時間にした方が良かった。 図8. 笹山忠保氏の陶芸作品を鑑賞する生徒 図7. 粘土に触れる生徒

(6)

③講演(13:00 ~ 14:30) ・演題:「わかる!できる!うれしい!美術の授業」 ・講師:清田哲男(岡山大学大学院教育学研究科講師) 〈講演の概要〉  清田哲男先生が中学校・高等学校教員だった頃の実 践をもとに、生徒が興味関心を持って主体的に取り組 める授業づくりのアイデアについての講話をしてもら いました。具体的な授業の話だけでなく、自分の授業 を分析する方法や美術の授業で養いたい能力など、幅 広い内容の講演でした。 〈参加者アンケート〉 ・ 「ピタゴラスイッチ」など身近なものを例えにして、 とても分かりやすく面白い講演でした。特に枝雀さ んの規準を元に、自分の授業がどんなバランスなの か考える方法これから使って行きたいです。そのよ うな「楽しい」授業ができるよう、様々な持ちネタ を持っていきたいです。 ・ すごく楽しかったです、具体的な生徒とのやりとり や授業の考え方など勉強になりました。今回の話を 持ち帰り、今後の授業に生かしたいと思います。 ・ もう少し時間が欲しかったです、いい話だっただけ に、わかりやすく、日ごろやっていることの意味を 考えさせられました。 3.考察 本研究では、授業研究会の場で生徒の活動の様子を 深く観察することが必要不可欠であるという考えのも と、教師が特定の生徒に着目して参観できるような取 り組み方法を模索してきた。一例として、あらかじめ 参観グループを指定したり、事前に趣旨を伝えたりと いった方法をとったが、当初はなかなか定着が難し かった。 その理由として、教師の中に公開授業は教師の指導 方法や題材の内容を見に行くものという意識が強く、 生徒の活動の姿を見に行くという感覚を持っている教 師は、少ないためであると考えた。そのような状況の 中では、生徒観察を促すだけでは教師の意識を変える ことは難しいため、研究協議の中で生徒を観察するこ との意味や面白さを体験してもらう必要があると考え た。そこで公開授業では、観察した生徒の様子を撮影 して、その写真を交えて紹介し、試行錯誤の様子、新 しい発見の瞬間などを話すようにした。それらのこと を何回か繰り返すうちに、同じように生徒の様子を話 してくれる教員が現れ、観察の仕方や観察の楽しさを 理解する教師が、少しずつ増えてくるようになった。 生徒の学びを最大限引き出す手立てについては、研 究協議の中で触れられることもあったが、そもそも授 業のねらい(目標)があいまいな場合があり、議論が 充分深まらないことも、たびたびであった。 これらは「美術の目的は作品を作らせること」とい う意識で授業を行っている教員が未だ多いことや「生 徒の学び」を中心に授業を組み立てるという意識が充 分持てていないことが原因と考えられた。 今後も公開授業における指導案検討を丁寧に行い、 「何を学ばせる授業なのか」を明確にしていく必要が ある。 4.成果と課題 「中学校美術教育活性化プロジェクト」と題した本 研究の大きな成果として、公開授業の授業研究会にお いて「観察した生徒の活動を根拠にして発言する」と いうスタイルが定着し、授業で起こった出来事、つま り事象にもとづいて考察する授業研究に変化してきた 点である。このことは、県中美連のこれまで継続的に 研究を積み重ねてきた研究会の成果の一つである。 かつて滋賀中美連の研究協議では、論点が定まらず に、各自が思い思いの感想や意見を述べていた感があ り、協議の場で研究テーマとは直接関係のない話題に なることも多かった。この点においては、研究を進め る上で必要となる土台が構築されてきたといえる。 また、研究会に参加する教員の視点が「どう教える か」ではなく「どう学ばせるか」にシフトしてきてお り、教師目線ではなく、学習者、つまり生徒目線で授 業をとらえることができる教員が多くなった証左でも ある。このことは、滋賀県内の美術教員の資質向上を はかるうえで大きな前進である。 しかし、一方で県教育美術展をはじめ各種展覧会に 出品される実践を見てみると、従来と変化のない作品 主義の実践や、教師が指示・段取りをして誘導するよ うな作品を見ることが多い。このように、作品展は授 業実践の過程の産物というよりも、作品としての完成 度にあり、出展作品は別物とする捉え方があることも 否定できない。 今後、研究会を通した研修等で教員各自の授業実践 を振り返る機会をつくるなど、生徒を主体にした「授 業づくり」を複数の教員で検討するような取り組みを 増やしながら、県内中学校の美術教師の力量を高めて いきたいと思っている。 【参考文献】 ・ 大橋功、新関伸也、松岡宏明、藤本陽三、佐藤賢司、 鈴木光男、『美術教育概論(改訂版)』、日本文教出版、 2009年 ・ 奥村高明、『子どもの絵の見方-子どもの世界を鑑 賞するまなざし-』、東洋館出版社、2010年 ・ 文部科学省、『中学校学習指導要領解説 美術編』、 日本文教出版、2008年

参照

関連したドキュメント

大学は職能人の育成と知の創成を責務とし ている。即ち,教育と研究が大学の両輪であ

プログラムに参加したどの生徒も週末になると大

工学部の川西琢也助教授が「米 国におけるファカルティディベ ロップメントと遠隔地 学習の実 態」について,また医学系研究科

⑹外国の⼤学その他の外国の学校(その教育研究活動等の総合的な状況について、当該外国の政府又は関

私は昨年まで、中学校の体育教諭でバレーボール部の顧問を務めていま

C :はい。榎本先生、てるちゃんって実践神学を教えていたんだけど、授

小・中学校における環境教育を通して、子供 たちに省エネなど環境に配慮した行動の実践 をさせることにより、CO 2

わな等により捕獲した個体は、学術研究、展示、教育、その他公益上の必要があると認められ