Title
反復利用を考慮した広域水田用水量に関する研究( 内容と審
査の要旨(Summary) )
Author(s)
SUOZHU
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第747号
Issue Date
2020-09-18
Type
博士論文
Version
ETD
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/79666
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。[13] 氏 名(本(国)籍) SUOZHU (中華人民共和国) 学 位 の 種 類 博士(農学) 学 位 記 番 号 農博甲第747 号 学 位 授 与 年 月 日 令和2年9月18日 研 究 科 及 び 専 攻 連合農学研究科 生物環境科学専攻 研究指導を受けた大学 岐阜大学 学 位 論 文 題 目 反復利用を考慮した広域水田用水量に関する研究 審 査 委 員 会 主査 岐阜大学 教 授 西 村 眞 一 副査 岐阜大学 准教授 伊 藤 健 吾 副査 静岡大学 教 授 今 泉 文 寿 副査 農研機構 准教授 安瀬地 一 作 副査 岐阜大学 助 教 乃 田 啓 吾
論 文 の 内 容 の 要 旨
本論文は以下の二つの内容に大別される. 一番目の研究では,戦後,米の増産とその後の過剰生産と生産調整政策,混住化の進展 が水田面積と作付面積の減少をもたらしたが,それに対応した水田用水量の減少が見られ ない現状について,既往の研究成果を体系的に整理することによって考察した.水田作付 面積は1975 年では 271.9 万 ha から 2016 年の 147.8 万 ha と約 46%まで減少したにも 関わらず,水田用水量は1975 年の 560 億m3から2016 年の 538 億m3と約5.6%の減少 に留まっている.このような背景から,用排水分離,乾田化,大区画化,パイプライン化 などの圃場整備,田畑輪換や直播栽培など栽培方式の変化,都市化に伴う水田面積の減少, 農家戸数の減少と農家の高齢化,集団営農による農地利用集積などの社会環境の変化など, 様々な要因が水田用水量に与える影響について考察した.その結果,用排水分離,乾田化, 田畑輪換,直播栽培,都市化については,圃場単位用水量や配水管理用水量の増加,反復 利用水量の減少など明らかに用水量を増大させる要因が支配的であることを明らかにし た.一方で,パイプライン化については配水管理用水量が減少するものの地区内での反復 利用が不可能になること,大区画水田では減水深の減少が予想されるものの初期用水量が 増加することなど,水田用水量に与える影響が不明確であることも明らかにした. 二番目の研究は,広域水田地区を対象に,都市化に伴う水田面積の減少が広域水田用水 量と配水管理用水量に与える影響を分析した.当地区は一級河川に設置した頭首工から取 水し,広域水田地帯に用水を供給している.都市近郊に位置するため宅地化の進行が著し く,急激な人口増加により近年水田面積が減少している.解析では,用排水系統をもとに 灌漑地区をブロック分割し,CB法によって用水の反復利用の構造を表現し,各ブロック の減水深から元杁必要水量(以下,「元杁必要水量」と称す)を求め,頭首工からの実績取水量との差を配水管理用水量と仮定した.具体的には,1978 年と 2016 年における実績 の最大取水量を元杁必要水量と配水管理用水量に分離し,さらに,元杁必要水量を蒸発散 量と還元水量(水田から浸透して排水路に還元する水量)の2成分に分離した.その結果, 水田作付面積が1978 年の 2921.2ha から 2016 年の 1342.3ha まで減少したことによって 元杁必要水量は12.42m3/s から 5.28m3/s まで減少するが,実績取水量は 16.51m3/s から 11.60m3/s と大きな変化はなく,配水管理用水量は 4.09m3/s から 6.32m3/s と大きく増加 している.当地区の幹線水路は部分的にパイライン化あるいは用排分離が行われているも のの,幹線から分水する支線・末端水路は用排兼用のままであり,元杁必要水量に上乗せ して取水する配水管理用水に加えて,水田からの還元水も配水管理用水として機能してい ることが考えられる.そこで,両年における配水管理用水量と水田からの還元水量の合計 を計算すると,8.51m3/s,7.93m3/s となり,ほぼ同量の用水が配水管理用水として機能し ていることが明らかになった.以上の結果から,用排兼用の水路組織では,水田面積が減 少しても配水管理用水の減少は少なく,理論的には減少した水田面積の蒸発散分の水量は 減じることができても,従来通り末端圃場まで用水を過不足無く配水するには,減少した 水田面積の還元水量を配水管理用水量として上乗せする必要があることを明らかにした.
審 査 結 果 の 要 旨
申請者SUOZHU は,第二次世界大戦後に我が国で実施された圃場整備等が水田用水量 や水田地帯の水需要構造に与える影響要因を過去の多数の研究成果を体系的に整理する ことによって明らかにした.また、都市近郊に位置する広域水田地帯を対象に精密な現地 調査を実施し,水需要構造をモデル化することによって,水田作付面積の減少が配水管理 用水量に与える影響要因を定量的に解明した.以上の研究成果は,今後の水田灌漑計画の 策定に際して,極めて重要で斬新な知見を提供している. 基礎となる学術論文 1)鎖柱,千家正照,乃田啓吾,安瀬地一作,小竹翔大:都市化に伴う水田面積の減少が 広域水田用水量と配水用水量に与える影響,日本雨水資源化システム学会誌,印刷中 2)Suozhu, Marju Ben Sayed, Masateru Senge:The Impact of variousenvironmental changes surrounding paddy field on its water demand in Japan, Reviews in Agricultural Science, in press