Title
Multipotency of Melanoblasts Isolated From Murine Skin
Depends on the Notch Signal( 要約版(Digest) )
Author(s)
渡邉, 奈月
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(再生医科学) 甲第1021号
Issue Date
2016-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/54568
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Repository(Form4)学位論文要約
Extended Summary in Lieu of the Full Text of a Doctoral Thesis
甲第
1021 号
氏 名:
Full Name渡 邉 奈 月
Natsuki Watanabe
学位論文題目
:
マウス色素芽細胞の多能性は Notch シグナル経路に依存するThesis Title Multipotency of Melanoblasts Isolated From Murine Skin Depends on the Notch Signal
学位論文要約:
Summary of Thesis メラノブラストは,皮膚上皮や毛包に存在するメラノサイトの前駆細胞であり,増殖分化を行うことによ って成熟したメラノサイトを皮膚や毛包に供給する役割を果たしている。メラノブラストは,生体内ではメ ラノサイト系譜のみへ分化することから,生理的条件下では単能性を有する細胞であると考えられている。 一方,近年の研究によって,メラノブラストを単離して生体外で培養することにより末梢神経細胞やグリア 細胞にも分化することが示されており,メラノブラストが環境の変化に応じて可塑性を発揮し多能性を獲得 することが明らかにされている。このように,環境変化によって細胞が可塑的にその特性や振る舞いを変化 させる能力は,細胞が持つ本質的な特性の一つであり,さまざまな疾患の進行や癌の悪性化をドライブする 主要な原動力となっている。しかし,細胞が可塑性を獲得する仕組みについては十分に理解されておらず, その仕組みを解明することは今後の生命医科学の重要な課題となっている。本研究ではメラノブラストをモ デル系として用いて,メラノブラストが多能性を獲得するために必要な環境因子を解明することを目的に研 究を行った。 【対象と方法】 本研究では,マウス ES 細胞を分化誘導して作製したメラノブラスト,およびマウス胎児皮膚上皮から単 離したメラノブラストを用いて,それぞれの多分化能について検討を行った。これらのメラノブラストを得 るために,Sox10 遺伝子座に IRES-Venus 遺伝子をノックインした(Sox10-IRES-Venus)ES 細胞,およびSox10-IRES-Venusノックインマウスを使用した。いずれについても,フローサイトメーターによって Sox10 陽性 Kit 陽性(Sox10+/Kit+)細胞を単離することによって得られた純化したメラノブラストを使用し,以下
に示した実験を行った。培養によって得られたコロニーについて,抗 Neuronal Class III β-Tubulin(TuJ1) 抗体および抗 Glial Fibrillary Acidic Protein(GFAP) 抗体を用いて細胞免疫染色を行うことによって末梢 神経細胞やグリア細胞への多分化能を評価した。 ① 従来の研究によって,メラノブラストを骨髄由来線維芽細胞株である ST2 細胞と共培養を行うことにより, メラノブラストが多能性を獲得することが示されている。本研究では,ST2 細胞との共培養に加え,胎児 繊維芽細胞(MEF)との共培養,および ST2 細胞の培養上清を用いた培養を行い,メラノブラストの分化能 に及ぼす影響について検討を行った。 ② 生体内においてはメラノブラストの増殖分化はケラチノサイトによって制御されている。そこで,培養メ ラノブラストに対するケラチノサイトの作用を明らかにするために,ケラチノサイト共存下で ST2 細胞と の共培養を行い,メラノブラストの分化能について解析を行った。 ③ Notch シグナルは細胞間相互作用を担う主要なシグナル系である。ST2 細胞との共培養における Notch シ グナルの役割を明らかにするために,Notch シグナルの Loss-of-function および Gain-of-function 解析 を行った。Loss-of-function 解析は Notch シグナル阻害剤である DAPT を共培養系に添加することによっ て行い,Gain-of-function 解析はアデノウイルスを用いて恒常的活性型 Notch1 レセプターをメラノブラ ストに過剰発現させることによって行った。これらの処理により,メラノブラストと ST2 細胞の共培養系 において,Notch シグナルを阻害もしくは活性化させた後に,メラノブラストの多分化能について評価を 行った。
【結果】 ① MEF との共培養を行ったところ,メラノブラストは多能性を示すコロニーを形成しなかった。また,ST2 細胞の培養上清を MEF との共培養系に添加した場合であっても多能性コロニー数が増加することは認め られなかった。これらの結果より,メラノブラストが多能性を獲得するためには,ST2 細胞との直接的な 細胞間相互作用が必要であることが示された。 ② ケラチノサイト共存下で ST2 細胞とメラノブラストとの共培養を行ったところ,メラノブラストの多能性 は著しく低下した。また,このような培養を行うとメラノサイトを主体とするコロニーが多数検出され, ケラチノサイトがメラノブラストの単能的な分化を誘導する作用を持つことが示唆された。以上の結果よ り,メラノブラストが単能性または多能性のどちらを獲得するかは環境側の因子によって決定されている ことが明らかになった。 ③ Notch シグナルを阻害すると,ST2 細胞との共培養によって起こるメラノブラストの多能的分化は有意に 低下した。また,メラノブラストにおいて Notch シグナルを恒常的に活性化させると,MEF との共培養条 件下においても多能性を示すコロニー形成が認められるようになったが,そのコロニー数は,ST2 細胞と の共培養によって得られる多能性コロニー数と比して,有意に減少していた。以上の結果より,メラノブ ラストが多能的分化能を獲得するためには,Notch シグナルを介する細胞間相互作用が必要であることが わかった。しかし,Notch シグナルの活性化だけでは多分化能を誘導するには不十分であり,さらなる因 子が関与している可能性が示された。 【考察】 本研究から,メラノブラストの単能的もしくは多能的な分化能は,環境側の作用によって決定されること がわかった。また,メラノブラストが多能的な分化を行うためには,Notch シグナルが必須な役割を演じて いることが示された。これらの結果より,メラノブラストの可塑性の制御に Notch シグナルが重要な役割を 果たしていることが示唆された。今後の研究によって,Notch シグナルによる細胞の可塑性制御の分子的詳 細が解明されることが期待される。 本研究では,メラノブラストにおいて Notch シグナルを恒常的に活性化させただけでは,メラノブラスト が多能性を獲得するには不十分であることが示された。このことは,Notch シグナル以外にもメラノブラス トの多能性に寄与する因子が存在することを示唆しており,メラノブラストの多能性に関与する因子のさら なる探索が必要であると思われる。 本研究によって,細胞の可塑性を促し多能性を誘導するための手法として,細胞を元来とは異なる環境に 暴露することの有効性が示された。このような手法は,人為的な遺伝子操作を介さずに細胞の多能性を誘導 する新たな方法論を確立するための途を拓くものである。 【結論】 本研究により,本来単能性であるメラノブラストは,ST2 細胞との直接的な細胞間相互作用によって,そ の特性が可塑的に変化し多能性を獲得することが示された。また,外部環境によって細胞の可塑性を制御す る仕組みの一端に Notch シグナルが関与していることが明らかになった。