Title
Na^+, K^+‐ATPaseの活性調節因子に関する薬理学的研究(
内容の要旨 )
Author(s)
石塚, 宣彦
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 乙第006号
Issue Date
1996-09-20
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1990
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与 の 要件 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞 石 塚 宣 彦 (静岡県) 博士(獣医学) 獣医博乙第6号 平成8年9月20日 学位規則第4粂第2項該当 Na十,K十-ATP a s eの活性調節因子に関する 薬理学的研究 主査 岐 阜 大 学 教 授 大 橋 副査 帯広畜産大学 教 授 西 村 副査 岩 手 大 学 教 授 小 林 副査 東京農工大学 教 授 小久江 副査 岐 阜 大 学 教 授 武 脇 法 数 男一義 秀 昌 晴 栄 論 文 の 内 容 の 要 旨 Na十ポンプの括牲調節物質とその調節作用機序について、Na十ポンプ電流、Na十,Kt-ATPaseの種々のアイソフォームを含む酵素標品のATPase活性、摘山心房標本の強心作用な どを指標にして検討した。 ラット単離心筋細胞をWholecellPa(ChClampにより膜電位同定し、細胞外K+濃度を0か ら15mMに急激に短時間変えることにより外向き膜電流を分離記録し、ウアパインや Vanadate感受性、細胞外K+濃度及び細胞内Na+濃度依存性、膜電位依存性からNa◆ポンプ の活性化による電流であることを確認した。Na+ポンプ電流の細胞外K十濃度に対する‰.5 値は2.7mMであり、細胞内Na+濃度に対するK。.5値は6.1111Mであった。ウアパインによ る濃度一抑制曲線は二つのシグモイド曲線の和関数の曲線に適合させることができ、高感受 牲成分のK。.5値は1.0±0.7巨M(M±SE,n=5-6)で全電流の32±11%を占め、低感受性の 成釧ま‰.5値が44.0±13.7巨Mであった。この浪度一抑制関係は細胞内Na十濃度には影響さ れなかった。Na十ポンプ電流は強い温度依存性(Ql。>3)を示し、K十の代わりにCs十を用いて も1/2の輸送効率で電流を発生させた。10巨MIsoprotereI101は細胞内Ca2+濃度に拘わらず Na+ポンプ電流に影響を及ぼさなかったが、電位依存性Ca2十チャンネルを通して流れるCd2+ 感受性の電流は同じβアドレナリン受容体刺激によって2倍に増大された。 100/LMVanadaLeを含む電極内液を用いると、細胞外K+濃度をOmMから15mMに増加さ せることにより発生するNa十ポンプ電流はピークに達した後、指数関数的な減衰を示した (時定数:2.46±0.18秒)。この減衰速度は電極内液のNa◆濃度及び細胞外K+濃度には依存し ていなかった。Vanadaleによる抑制が定常状態に達してから細胞外K◆濃度を0に戻すと、指 数関数的時間経過で抑制から回復し、その時定数は2.49±0.82秒で、抑制発現時の特定数 との間に有意差はなかった。Vanadaleを含まない電極内液を用いて細胞外液中のNa+濃度を OmMに変えてもNa+ポンプ電流は対照とはとんど変わらなかったが、100/LMVanadateを含
-169-む電極内液を用いた場合にはNa+ポンプのピーク電流は細胞外Na+濃度をOnlMにしてから の時間に依存して抑制された(特定数106.6±16.7秒)。 Na・,K・-ATPaseを抑制することが知られているブタの十二指腸由来のSPAl-1について抑 綱作用の特徴、強心作用およびNa+ポンプ電流に対する作用を調べた。SPAト1は由来 する種、組鰍こ拘わらず酵素活性を抑制したが、作用力価において酵素標品間差異はなく IC5(牒は10∼20pMであった。ラットのQl,α2及びα3アイソフォーム間でSPAl-1に対す る感受性には2.5倍の差しかなかったが、ウアパインに対してはα.と叫アイソフォーム間 で200倍以上の差があった。SPAト1による酵素抑制は既に報侍されいるようにNa十濃度依 存性で、100.ⅥMでピークに達した。SPAト1の濃度一抑制関係のⅠ-Iillプロット解析で直線 の傾きが1以上であったが、正の協同性については確証できなかった。この酵素抑制作用 は可逆的であった。SPAl_1の酵素抑制作用は分子内のs-S結合とは無関係であると考えら ゎた。ラット摘山左心房標本の収縮力はSPAト115巨Mで適用してもほとんど影響を受けな かった。Na・ポンプ電流は5巨MSPAl-1を細胞外牲と細胞内性に適川しても影響を受けな かった。 結論として、次の点が明らかとなった。 1)ラットの単一心室筋細胞上に二種のNa+,K+-ATPaseアイソフォームが存在し、ウアパイ ンに低親和性のα1アイソフォームと考えられるものが全体の約70%を占めている。両アイ ソフォームの糾胞内Na十に対する親和性は15∼100JTIMの濃度幡囲ではとんど差がない。 2)少なくともラットの心室筋では、Na十ポンプ活性はβアドレナリン受容体を介する調節を 受けない。 3)ラットの心室筋におけるVanada(eによるNa+ポンプの抑制は擬-一次速度諭に従ってお り、細胞内のNa+には依存しないが細胞外のK+とNa+の両方に依存している。このことは ValladaleによるNa+ポンプの抑制は単純なPosトAlbersモデルでは説明し難いことを示唆し 4)SPAl-1はNa・,K・-ATPaseをその由来する種や臓器あるいはアイソフォームに依存 しないではぼ同じIC5。値で抑制する。Na十と競合括抗するようにその抑制機序はウ アパインとは明らかに違っている。 審 査 結 果 の 要 旨 Na+.K+-ATPaseはNa+とK+の能動輸送を担っているばかりでなく、それにより 維持されるNa十濃度勾配を駆動力とする活動電流の発生やイオン交換系を介してCa2十や H十の細胞内濃度の調節などにも重要な働きを果たしている。
本論文は、単離したラット心室筋細胞からYhole cellpatch cla叩法によりNa+ポン プ電流を記録して同ポンプの性質とホルモンや神経伝達物質による生理的な活性調節の可 能性について検討すると共に、P型ATPaseの特異的な阻害薬であるバナジン酸の抑制 作用機序に関してもPost-Albersモデルに基づく動的な解析を行っている。次いでラット の諸組織から調製したα1、α2あるいはα3のアイソフォームを含有する辞素標晶の ATPase活性を指棲にして、アイソフォームのウアパイン感受性の相違から生理的役割 を推測している。最後に、内因性Na十.K+一ATPase阻害物質として注目されている SPAIについてアイソフォーム間で感受性に差があるかを上述の酵素棲晶のATPa8e 活性で調べると共に、Na+ポンプ電流と摘出心房組織片における発生張力に対する増強作
-170-用についても検討している。 その結果、以下のことが明かにされている。すなわち、①単一のラット心室筋細胞上に 二種のNa+・K+-ATPaseアイソフォームが存在し、ウアパインに低親和性のalアイ ソフォームと考えられるものが全体の約70%を占めている、②Na+ポンプ電流から察 すると、両アイソフォームの細胞内Na+に対する親和性は15∼100mMの濃度範囲 でほとんど差がない、③少なくともラットの心室筋では、Na+ポンプ活性はβアドレナリ ン受容体を介する調節を受けない、④ラット心室筋におけるVanadateによるNa・ポンプの 抑制は擬一次速度論に従っており(時定数:2・46±0・18秒)、細胞内のNa・には依存し ないが細胞外のK+とNa+の両方に依存しており」VanadateによるNa・ポンプの抑制 は単純なPost-Albersモデルでは説明し難い、⑤SPAト1はNa+.K+-ATPaseを その由来する種や臓器あるいはアイソフォームに依存しないでほぼ同じIC5。値で抑制す る、⑥Na+が括抗するようにその抑制機序はウワパインとは明らかに違っている。 以上の成績は、Na+ポンプ、特にラット心室筋Na+ポンプの性質と活性調節因子に関 して新しい知見を提供しており、心臓に作用する薬物の作用機構を理解する上で極めて有 用である。一方、アイソフォーム発現の組織間差異の生理的或いは病態的意義の解明やア イソフォームに特異的に作用する新薬の開発など今後の発展が期待される。 審査委貞は、平成8年9月9日に審査委旦会を開催し、提出された学位論文について慎 重に審査して岐阜大学連合獣医学研究科の学位論文としてふさわしいことを認めた。