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公企業料金の理論と実践 (〔東洋大学〕経済学部創設30周年記念号) 利用統計を見る

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公企業料金の理論と実践 (〔東洋大学〕経済学部創

設30周年記念号)

著者

山谷 修作

雑誌名

経済論集

5

1

ページ

p107-162

発行年

1980-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00005489/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

公企業料金の理論と実践

山 谷 修 作 日 次 はじめに 第l'節 平均費用原理と限界費用原理 1. 伝統的料金原理 2. 限界費用原理 第2節 限 界 費 用 原 理 の 問 題 点 1. 損失補填の問題 2. 次善問題 3. その他の問題点 第3節 二 部 料 金 第4節 差 別 料 金 第5節 長期限界費用料金設定 第6節 ピークロード・プライシγグ 1. ピークの存在とその平準化 2. ピークロードの料金設定 3. 設備調整のメカニズム 4. ピークロード・プライシングのメリット 5. ピークロード・プライシングの実践 第7節 公 企 業 とX非効率 第8節 公 企 業 料 金 と 所 得 分 配 結 韮ロp は じ め に ヨーロ γパの先進諸国をはじめ,今日世界的に公益事業は中央または地方 政府の公企業として経営されるケースが多くみられる。公益事業のカテゴリ ーに含まれる電力,カ守ス,鉄道,水道,電信電話などの産業は尾大な設儲投 資を必要とするため,同一地域で複数の企業が競争すれば企業の最適生産水

(3)

準以下の需要しか得られず,規模の経済性を追求できないことになる。これ は,国民経済的にみれば,過剰投資が行なわれていることを意味

L

,資源の 浪費にほかならない。安価で良質なサーピスを消費者が享受できるためにも, これらの産業には独占性を付与し,政府が料金を規制することが望ましい。 かくして,公企業・公益事業サーピスの料金は消費者米価や社会保険診療報 酬などの生活必需財・サーピスの料金とともに公共料金として国会議決,政 府決定・政府認可などの形で規制の対象とされている。したがって,政府は 資源配分の適正化や所得分配の公正といった経済政策目的に照らして,これ らの料金の決定に関与することも可能である。本稿は,主として資源配分効 率と所得分配の公正に重点を置きつつ,理論的に望ましい公企業・公益企業 料金について考察L,あわせて実践面での動向についても検討を加えようと するものである。なお,以下では公企業・公益企業料金を,たんに「公企業 料金」と総称することにしよう。 第

1

節 平 均 費 用 原 理 と 限 界 費 用 原 理 1. 伝統的料金原理 公企業においては,料金は伝統的に財・サーピスの生産・供給に要する総 費用を料金収入でカパーしうるように,すなわち原価補償的に決定されてい る。このような原価補償主義(Ratesas昌wholeshould cover costs as a whole) にたった料金原理はフルコスト原理にほかならず,ここにおいてもし料金差 別がなされないとすれば,供給費用の総額である「総括原価」を販売量で除 して料金を求める,いわゆる平均費用料金設定原理(平均費用原理)を意味す る。今日,わが国および諸外国の公企業は圧倒的にこの料金設定原理を採用 しているのが実情である。 この料金設定原理による料金算定基準には主として公営公益企業で採用さ れる費用積上げ方式と,主として民営公益企業に適用される公正報酬原則 (またはレートベース方式)とがある。費用積上げ方式とは,事業の遂行に要す る原価を基礎にして,その原価を補償する収益を料金収入の算定基準にする やり方をいし、,次式で示される。 1) 料金算定基準の詳細な検討については,細野日出男(1975Jを参照されたL。、

(4)

総括原価=営業費十減価償却費+支払利子 料金は総括原価を販売量で除して求められる。なお,事業が民営の場合に は,上式の右辺に税金および利潤をプラスして総括原価が算定されることに なるつ公営の場合には一般に利潤は認められないが,公共的必要余剰をも総 括原価の算定に加算して,公営企業が施設拡張のための投資を行ないやすく すべきであるとの見解があり,現に電電公社ではこのやり方がとられている。 資源配分上の見地からみても,公共部門において公共的必要余剰を認めない 場合には,

i

民間部門と比べて資金の機会費用がそれだけ過小評価され,公営 企業の部門に過大な資源が流入する可能性」が指摘されよう。 さて,このような費用積上げ方式では,供給に要した費用をすべて料金収 入で回収しうるために経費を節減する努力が損われ,安易な経営をもたらし やすい欠点がある。そこで,経営インセンティープにある程度配慮した料金 算定基準として,アメリカで開発された公正報酬原則が民営公益企業では導 入されている。 公正報酬原則の考え方は,公衆の便益のために使用されている公益企業の 事業財産の公正価値に対して公正報酬を得させ,これと営業費とで公益企業 の総収入を評価しようもいうものである。 クレメンズ (E.W. Clernens)によ れば次の算式で示される。

R=E

(V-D)

Xr ここで

R=

料金総収入

E=

広義営業費(減価償却費および税金を含む), 2) 公共的必要余剰とは,公営企業施設の新設,拡張のための費用等に充当されるベ き余剰部分であり,公営企業が毛士会の要請に応えて健全な発展をとげて行くために これを認めるべきであるとの意見がある。詳しくは,西川義朗(1975J第6章を参 照されたい。 3) 岡野行秀(1970AJ116ページ。 4) しかし,一般的な意味での利潤は,公営企業には不要である。根岸隆教授は公営 企業が手IJi簡をあげることに反対して次のように述べておられる。「危険負担に対す る報番Hである利潤は,公共性が強いサーピスを独占的に供給する事業体にはもとも と不要なものである。ただ他産業において,危険負担に対する報酬を超える利潤が 存在するならば,資源配分上のパランスをとるために公共事業体にもある程度の事 業報酬を認め,それを料金に算入すべきであろう J((1972・4J120ベージ)。 5) Clemens, E.W. (1950J p.127,邦訳上巻 202ベージ。

(5)

v=

建設当初の新財産の公正価値

D=

財産価値の減価額

r

=

報酬率であり, V一Dはレートベースと呼ばれる。料金は上式を適用して得られる総収入を 販売量で除して求められる。 上式におし、て最も困難な問題は報酬率の決定であろう。公正報酬率の決定 基準として有力なものに相応利潤基準と資本コスト基準とがあ

2

。前者にお いては,一般利子率と当該事業のリスクとが報酬率決定の主要因とされる。 公益企業にあってはリスクは他産業に比べて著しく小さいと考えられるもの の,全く存在しないわけではない。かりに公益企業にリスグが存在しないと すれば,公正報酬率は国憤のような最も確実な証券の利子率に等しくなるで あろう。しかし,ある程度のリスクは存在するため,公正報酬率は一般利子 率 む リスクに対する報酬である利潤率とを複合したものとして決定をみる べきものとされる。 これに対して,資本コスト基準にあっては,公益企業が競争的資本市場に おいて必要な資本の調達をなしうるようにその各種資本の調達コストを認め てやるという考え方をとる。いま,長期負債50%,優先株式15%,普通株式 35%という資本構成をもっ公益企業について,各資本コストがそれぞれ 4.5 %, 5.5%, 11%であるとすれば, 総資本コストは次のような算定式により 6.925%に決定される。 資本構成 各資本コスト 各合成コスト 長期負債 50% X 4.5% - 2.25% 優先株式 15% X 5.5% ニ 0.825% 普通株式 35% X 11.0% 3.85% 投下資本総額 100% 総資本コスト 6.925% 6) 公正報酬俸の決定基準については,邦詩文献では,浜田純一(1975)に詳しい。 7) 公益企業において考えられるリスグとして北久一教授tお代替事業からの競争 (たとえば, 熱需要をめぐるガス対電気, 貨物輸送需要をめぐる鉄道対トラックの 各競争), 料金規制jによる料金改訂の遅れ, 特定地域における人口および産業の衰 退,天災による財産の破湊,技術進歩にともなう事業財産の陳腐化,争議による営 業の停止などをあげておられる((1974)204ベージ)。 8) 資本コスト基準では資本調達に要した費用を報酬率の決定基準にするけれども, 過去の配当率は過去の料金収入に依存するから,料金設定のためには循環論にな る,との指摘が藤井弥太郎教授によりなされている((1974B)139ページ)。

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アメリカの公益企業料金規制jにおいては,第1次的基準として資本コスト 基準が採用されており,総資本コストに若干の余裕部分がプラスされて公正 報酬率が決定されているといわれる。その場合,相応利潤基準は公正報酬率 の上限を決定するための高IJ次的基準として併用されている。一方,わが国の 料金規制jにおいては,過去の実績,市中金利,全産業の利潤率などを勘案し て報酬率を決定するのが実情であるといわれ, 電気事業の8%,定期航空, タクシーの10%など,当の事業の諸条件に応じて決定されている。 公正報酬原則では,事業報酬を支払利子,株式配当金,内部留保分などの 諾項目へ配分する決定が企業の自主性に委ねられているため,事業報酬がこ れらの諸項目にあらかじめ個別的に算入される費用積上げ方式に比べて経営 インセンティープを促進する機能をある程度備えているといえる。公正報酬 原則を採用している場合には,経営効率を高めれば内部留保または配当を増 加する余地が与えられており,とくに企業の資本構成の適正化や財務の健全 性をはかるうえでこのましいといえる。 公正報酬率規制の問題点として,いわゆるアパーチ=ジョンソン効果 (A J effect)が指摘される。これは,規制下での公益企業は効率的経営によって ではなく,過剰投資や兼業部門への進出によってレートベース (V-D)を膨 張させて利潤を増大させる効果をもっというものである。このような効果が 規制当局の厳格な監視により排除されねばならぬことはし、うまでもない。と はいえ,公正報酬率規制のもとでの企業の行動は,無規制のときよりも料金 は低く,供給量は増加するため望ましいといえよう。 第1図において

AC

M Cはそれぞれ公企業の平均費用曲線と限界費 用曲線であり

AR

M Rはそれぞれ平均収入曲線と限界収入曲線である。 いま,当の公企業が無規制下で私企業と同様に利潤極大化行動 (ARニM C ノレーノけをとるものとすれば,料金は O P,! 供給量は OQl に決定されるで、 あろう。独占下における企業の利潤極大化行動はきわめて高い料金ときわめ 9) 藤井弥太郎[1974A)200ベージ。 10) 井上薫[1979)93-94ベージ,根岸哲(1976)183ベージ,日本開発銀行[1970) 16-17ベージ。

11) アパーチ=ジョンソン効果については, Averch, H. and Johnson, L.L.CDec. 1962)のほか, Kahn, A.E. [1971)を参照されたL。、

(7)

第1図 平均費用原理と限界費用原理 料金 AC P31一一一一一一一一

-

f

'MC

Ql Q2 て小さな供給量をもたらすことにより,長方形 P1GHEの面積に相当する 極大独占利潤を実現する。しかし,政府規制はこのような企業の利潤極大化 行動を許容せず

AR=AC となる均衡点 Iにおいて料金 O P2,供給量 OQ2 を決定させるであろう。

このような平均費用原理のメリットは次の2つの点に見出せよう。第 lに, 収支均衡が可能である。料金 O P2(=平均費用)で OQ2だけ供給する場合の 料金収入 (OP2XOQ2) は PzIQzOで,ちょうど総費用に等しい。第2に,受 益者負担の原則を貫ける。サーピス供給に要した総費用を受益者が自ら負担 することは,公平性の観点から望ましいといえる。 しかし平均費用原理については次のような問題点が指摘される。第1に, 平均費用原理は限界費用料金設定原理(限界費用原理)による場合に比べ,資 源配分効率において劣る。第1図において,限界費用原理 (AR二M Cルーノレ) は料金 O P3と供給量 OQ3を決定するが, このとき平均費用原理によるよ りも IKLだけ消費者余剰が大となる。したがって,効率的な料金は平均費 用に等しい O九ではなく,限界費用に等しい O Psである。第2に,平均 12) 今井賢一教授はかつて,平均費用原理には「企業の独立採算性を維持するとL、 う消極的な点を除いては積極的な意義を見出しえないJ((1956・2J143ベージ)と して,この原理を批判された。

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費用原理による場合,国鉄にみられるように,個別原価を反映しない総合原 価主義がとられ, 内部補助 (cross-subsidization)が行なわれやすく,望まし くない所得再分配が発生することになる。このほか,費用逓減の場合には, 限界費用原理の場合よりも料金水準が高くなり,低所得者の需要を満たしえ なくなるおそれがあることも指摘されている。 かくて,資源配分効率の最適化を政策目的と

L

た場合,現行の平均費用原 理は放棄され,限界費用原理が採用されるべきであるということができるつ しかし,公企業の一般的な生産・供給条件と考えられる,平均費用が逓減し ている局面では,限界費用は平均費用を下回るため,公企業に損失が発生す る。第l図において,単位損失額はJKであるから,総損失額は長方形 FJ KP3の面積に等しい。このように,費用逓減下では効率的な料金政策を採用 すると公企業に損失を生じるとしみ政策のジレンマに逢着せざるをえず,現 行の公企業料金に限界費用原理が採用され難L、理由のひとつともなっている。 2. 限界費用原理 1844年に発表されたフランスの鉄道技師デュプイ(J.Dupuit)の論文(18 44J以来,近代経済学において古くから提唱されてきた料金設定の原理は限 界費用原理である。ホテリング (H. Hotelling)によれば,有料橋の事例jを用 いたデュプイの立論は次のように説明される。いま,当の橋がすでに建設さ れており,通行需要が他のサーピスに対する需要からは独立的であり,また 通行による橋の損耗費用の増加分,すなわち限界費用がゼロであると仮定す る。第2図において,縦軸に料金,横軸伝通行量をとれば,橋のサービスに ついての需要曲線は DD'として措かれる。この橋の通行を無料とすれば, 13) 内部補助の慣行が利益をもたらすことは稀であり, 国鉄の場合のように,収益 的な輸送が競争的な代替輸送機関に奪われる事態を加速し,補助のための源泉が失 われるにつれ,運賃を値上げする必要をもたらす。まさに,シャープ (M.Sharp) が指摘するごとく「下降中のユレベーターを歩いてのぼる試みにも似たシステム であるJ((1973J p.183)。 14) 中桐宏文(1975)211ベージ。 15) Hotelling

H. CJu!y 1938J

pp. 260-263. 16) 需要曲線DD'は,料金を無料にしたとき各通行需要者が橋の通行に認める価値 額を高い方からj煩に左から右へ配列したものと考えることもできょう。したがって,

(9)

料金

第2図 デュプイの有料橋ケース それにより社会全体が受ける利 益,すなわち社会的余剰は

DD'

O の面積で表わされる。 しか るに,この橋の通行を有料にし, 料金

OP

を徴収するとすれば, 通行需要は

OQ

に減少するから 社会的余剰は

MD'Q

だけ小さ い

DMQO

となる。そのうち,

PMQO

は料金徴収者(橋の所有 者〕の料金収入(生産者余剰)で Q D' 通行量 あり

DMP

が通行者の利益 (消費者余剰)である。 かくて,施設の利用による損耗が小さし限界費用を無視しうる場合には, 料金を無料にすべきであるとし、う結論が得られる。ただし無料化により通 行需要が増加しすぎて混雑が生ずる場合には,通行の快適性が損われるため, この混雑費用(二社会的限界費用)に等しい通行料金を課することが望ましい。 一般的にし、って,公企業施設の運転については,無視しえない限界費用が 発生すると考えられるから,ホテリングにしたがえば,公企業はその供給す るサーピスについてこの限界費用に等しい料金を課すべきであるということ になる。ところで,長距離パス事業において,乗車需要が増加して現に保有 するパスだけでは物理的にすべての需要を満たすことが不可能となった場合 を想定しよう。まず考えられることは,もっと大型の車両に取り換えるな り , 新たにもう l台購入して需要に応ずることであろう(長期分析)が, こ こでは設備規模を一定とした短期的な対応に限定しよう。その場合,過大な 需要量を限られた供給量に一致させる仕方としては,先着順や予約などもあ ろうが,最も望ましし、方法はホテリングによれば,需要量が供給量に等しく なるまで料金を引き上げることだとされる。なぜなら,高い料金を支払う用 意のある需要者は,このパス輸送に対して大きな価値を認めており,社会的 余剰は極大となるからである。 たとえば

Qに配列された需要者の認める通行価値額は M Qであり,料金がM Q を上回らない限り彼は料金を支払って橋を通行することを選ぶであろう。

(10)

第3図において

OQ

,を設備 容量 (capacity)白いっぱいでの供料金也、 給量

P1YXを限界費用曲線

D Dを需要曲線としよう。ノミス輸送 の供給量が

OQ

,に限定されてい るとすれば,限界費用曲線は供給 量

OQ

,に至ると, これ以上の供 Pl 給が物理的に不可能となって限界 費用が無限大になることを反映し て垂直に上昇する。このようなケ

第3図 地 代 的 料 金 D Qc 供給量 ースで、は,OQ,を超過する需要量を OQ,に等しく調整させるべく,それま で限界費用 OP

に等しかった料金を OPzに引き上げ, この高料金を支払 う用意のある需要者だけをパスに乗せることが望ましい。このような設備容 量の限度を超過する需要がある場合に課すべき高料金のうち限界費用を上回 る

P

1

P

2の部分は,供給量に限りある土地の価格である地代の決定と似た性 格をもつことから「地代的料金J(rentaI charge)と呼ばれる。このような料 金を課しでも資源配分効率は決して損われない。 消費者余剰 DXPzと生産 者余剰 PZXYPl との和である社会的余剰は最大となるからである。なお, 地代的料金は第6節で論ずる,設備規模を一定とした場合のピークロード・ プライシングと考え方を等しくする。 第

2

節 限界費用原理の問題点 1. 損失補涯の問題 公企業は巨大で不可分な固定設備を必要とし費用逓減の特性をもつため, その設備の供給能力の限度内で操業する場合には,限界費用は平均費用を下 回る。したがって,限界費用に等しい料金を課すると料金総収入は総費用を カバーできず損失が発生する。ホテリングは,平均費用に等しいところまで 料金を引き上げて収支均衡をはかるのでは,同額の消費税を公企業の供給す るサーピスに課することと同じ効果をもち,資源配分効率を阻害するから望 ましくないとし,資源配分効率を損うことの少ない所得税,相続税,土地税 などの直接税により公企業のこのような損失を補填することが社会的厚生の

(11)

D

。 用 す 財 い 摘 川 る 採 生 般 つ 指 す を 発 一 に が 張 理 に の と 点 主 原 業 府 こ 題 と 用 金 政 る 聞 い 費 公 を す な し 界 り 失 填 う ま 限 よ 損 補 よ 望 ' に の て の 。 ら し と 上 つ 次 則 う か か こ 務 よ ' よ 点 し る 財 に は き 観 す る 政 て で F U M 第4図 需要の大小と企業の採算性 料金 AC 第 Iに,資源配分をゆがめる こ と な く 公 企 業 の 損 失 を 補 填 す る た め の 最 善 の 方 法 は , 定 額 税 ( Iump-sum tax)収 入 を も っ て そ の た め の 財 源 と す る こ と で あ る が , 現 代 の 税 制 に お い て は定額税はその逆進性のゆえにほとんど採用されるところとはなっておらず, 17) ホテリングの主張は,平均費用逓減を前提としたが, かりに需要が増大して最 適操業水準(平均費用最低点)を超えて供給量が増加されるとしたらどうか。平均 費用曲線は上昇に転じ,そのとき限界費用曲線は下方から平均費用曲線の最低点と 交差し,これを上回って上昇するであろう。このような平均費用逓増の局面で限界 費用に等しい料金を設定すれば,限界費用と平均費用との差額(単位あたり)に供 給量を乗じた額だけの手IJi筒が公企業に発生するから,この利潤は平均費用逓減の局 面とは逆に政府の一般財政に納付すべきことになる。 第4図において需要 DIDlが小さいときには,平均費用Q

Fは限界費用に等し い料金 OPm

を上回っているため企業の総収入 Pm

EQ10は総費用 Pa1FQ10を カパーできず

PalFEPmlだけの企業損失が生ずる。これは,たとえば鉄道の閑 散線などにみられる状況であり,平均費用逓減のケースである。企業損失部分は一 般財政からの補助金でまかなわれることになる。 つぎに,同じ設備容量のもとで需要が増大し

D2D2に需要曲線がシフトしたと しよう。この場合には限界費用に等しい料金 OPm2は平均費用 Q2G を上回ってい るため,企業の総収入 Pm2HQ20は総費用 Pa2GQ20をカパーして余りあり利潤 Pm2HGPa2が発生する。なお,この利潤を消費者に還元すベく料金を引き下げる ことは望ましくない。一般財政に納付して納税者に還元すべきである。このような 状況は,たとえば鉄道の過密線などにみられ,平均費用逓増のケースである。企業 採算性と資源配分効率の要請がともに満たせる。 18) この問題については,肥後和夫教授が本稿とは若干異なる見地から指摘されて いる((l977AJ83ページ〕。

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これによって十分な財源を確保することは現実性に乏しい。それゆえ,これ を補充するために所得税が必要とされるであろう。所得税はたしかに負担の 公平性とし寸見地からは望ましいといえるが,労働と余曜の選択の限界条件 をゆがめるとし寸資源配分上の非効率を生じさせる。この非効率は賃金に対 して労働供給が弾力的なほど大となろう。 第2に,公企業が供給するサーピスをすべての国民または住民が消費する のであればともかく,そうでない場合には,一般納税者から消費者への実質 的な所得分配は負担の不公平をもたらすであろう。公企業の供給するサーピ スについては,私的受益者がその消費による便益の大部分または全部を享受 L,社会的便益はほとんど存在しないといわれる。公企業が供給するサーピ スの消費によって直接の受益者だけでなく,社会全体が便益を受けるという のでなければ,一般財政による損失補填は,私的な消費者に有利な所得の再 分配と資源配分上のゆがみをもたらずであろう。 第3に,限界費用原理を採用することにより公企業に発生する損失が巨額 な場合,これを補助するために政府は,さもなければ他の用途,たとえば社 会保障の充実のために用いたであろう資金を投入するかもしれない。この場 19) Henderson, A.M. (1947) p. 229; Reed, P.W. (1973) pp.20-21もこの点を 指摘している。人頭税は資源配分上は中立的であるけれども,公平の見地から一般 に受け入れられないのである。 20) 労働供給が固定されているときには, 累進所得税は定額税に等しく,相対価格 を変化せしめないという意味で中立的である。だが,このような仮定は定額税が可 能であるという仮定同様に非現実的であろう。 Dロe,].F. and Friedlaender, A.F. (1977) p.87n.7. なお,ポンプライト (].C.Bonbright)は,ホテリングとは逆に,直接税ではな く売上税のような広汎に実施される消費税に,補助のための財源を求めることを推 奨する。それによれば,消費税を用いることにより,広く経済の諸部門にわたって 財・サーピスの価格と限界生産費とのギャップをわずかに拡大させることと引換え に,公企業部門の料金と限界費用との大きなギャップの縮小が可能になるとされる ([1961)p. 399)。 しかし, 消費税のほうが資源配分の援乱効果が大きいことは確 かであれわれわれはこの見解には賛成できなし、。 21) あるサーピスの消費者を補助するために社会全体が負担を負わされるべきでは ないと, Wilson, T. CDec. 1945)は指摘している (p.459)。 22) Herber, B.P. (1979) pp. 278-279.

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合に,後者の恩恵を受ける人々の所得水準が公企業サーピスの消費者のそれ よりも低いとすれば,このような補助は所得分配上望ましくないといえよう。 第4に,独立採算制を放棄して政府の財政補助に依存するとなれば,公企 業の財務上の損失が効率的な経営によるものか非効率な経営によるものかの 区別ができないために,財務規律が損われ費用最小化努力も怠慢となり,ひ いては放漫経営がもたらされ,あるいは従業員の士気が低下することにもつ ながる危険性がある。とくに,限界費用原理による場合,限界費用の算出自 体がきわめてむずかしいことも,このような危険性を増幅することにつなが ると思われる。 さて,公企業の限界費用原理による損失に対する財政補助には以上述べた ような問題点が指摘できるのであるが,それでもなおかつ一般財政による損 失補填の考え方(ホテワング命題)を支持する議論が経済学者の聞に根強く存 在十る。その1つは,限界費用原理の採用によって生産量が増加することに よって社会が受ける経済的厚生の増大は財政補助による納税者の負担を上回 るから,財政による公企業の損失補填は認められるというものである。その 2は,伊東光晴教授のように,公企業の損失に対する政府補助は無原則に実 施すればたしかに放漫経営につながるかもしれないが,補助金を固定費用部 分のみに限定すれば必ずしも公企業の費用最小化努力を損うものではない, とする主張である。また,岡野行秀教授も「生産がもっとも効率的に遂行さ れたときに生ずる損失額が正確に算定され,その額にかぎって補填を行なう のであれば,経営の効率は低下しないはずである」との見解にたって,一般 財政による損失補填が必ずしも公企業の経営効率の低下をもたらすものでな いとされる。この2つの主張は相当の説得力をもっており,一般に受け入れ られるところとなっている。 だが,このような主張をいっそう推し進めて,第 3iこし、わゆる「固定設備 公共財論」が存在する。公企業の固定設備が国民または住民全体の共同の生 活手段であって,すべての人々に限界費用に等しい料金で利用可能な機会を 提供しうる点(非排除性)に着目すれば,これは一種の公共財であると考えら れるから固定費用は政府の一般財政によって補助し,運営費用のみを消費 23) 伊東光晴(1973・9J62ベージ。 24) 岡野行秀(1969・10J 15ページ。

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量に応じて消費者が料金とLて支払うべきであるとL、う考え方がこれである。 しかL,国民または住民全体の共同の生活手段で、あるものがすべて公共財で あるとは限らないであろう。公企業の供給するサーピスは公共財ではなく私 的財なのである。 Lたがって,この論は受け入れ難いものである。最後に, 損失補助による所得再分配効果を積極的に評価する議論がある。公企業の供 給するサーピスは住民生活にとって不可欠のものであり,水道事業を考えれ ばわかるように,その利用者はほとんど納税者であり,しかも租税体系は所 得税の場合累進課税体系であるため,このような所得再分配は望ましい方向 にあり公正の原則に合致する,というものである。だが,この議論もただちに は受け入れ難い。納税者から利用者への所得再分配は,利用者が低所得層に 限定されるという非現実的なケースを除いて,やはり同所得水準の人々の間 において利用者だけが得をするとし、う水平的不公平の問題を生ずるであろう。 2. 次 善 問 題 近代経済学において,限界費用原理に対する最も説得力ある批判は次善論 (second best theory)によるものであろう。独占の程度が顕著な不完全競争の 世界においては,経済における諸価格は一般に限界費用を上回っている。こ のような環境のもとで公企業の料金を限界費用に等しく設定すれば,経済の 残余の部分に比べて公企業サービスに対する需要が過大となり,資源の浪費 を招くことになる。それゆえ,他産業,とくに公企業サーピスについて代替 および補完財・サーピスを供給する産業の価格が限界費用を上回るのに応じ て,公企業部門の料金も限界費用を上回るべきである。具体的には,代替お よび補完財・サーピスの価格の限界費用との話離率を代替住または補完性の 程度でそれぞれプラス・マイナスに加重ア均して公企業サービス料金の限界 費用との訴離率を求めなければならない。このような経済においては,平均 25) 水野正一(1976J 173-174ページ。 26) 山田浩之(1973・2)57-58ページ。山田教授は,利用可能性を公共財としてとら える見解は公共財の概念とシピルミニマムとを混同していると批判される。 27) 永井進(1976・3)59ベータを参照されたい。また,根岸隆[1973J70-72ページ を参照されたい。 28) 公企業の次善問題を考察したものに, Rees, R. (Aug. 1968)がある。

(15)

費用原理が限界費用原理に資源配分効率面で劣るとは必ずしもいえなくなる。 3. その他の問題点 限界費用原理については,以上のほかにも次のような批判が提起されてい る。まず, リトル(1.M.D.Little)により,限界費用原理は損失をもたらすの で投資の事後的な評価を提供しえないのに対して,平均費用原理は公企業の 設備容量が拡張されるべきかどうかについて事後的なチェックを提供するた め,限界費用原理よりもこのましいとする主張がなされている。また,ポン プライトからは,限界費用原理の最大の欠陥として, (短期〕限界費用が大幅 に変動する点が指摘されている。公企業の設備は不可分割性 (indivisibili ty) を有するため,設備容量が手詰りになると〔短期〕限界費用は大幅に上昇す ることになる。このような変動性の大きな〔短期〕限界費用に等しくなるよ うに頻繁に料金を改定することは実際には不可能であるとされる。そのほか, 限界費用の算出が事実上きわめて困難であることなども指摘されている。 かくて,コース(R.H.Coase),グラーフ(J.de V. Graaf) をはじめ,わが 国の熊谷尚夫教授,貝塚啓明教授など,限界費用原理に批判的な論者も少な くない。 第

3

節 二 部 料 金 初期の限界費用原理は,デュプイの有料橋の例示にみられるごとし限界 29) Little, 1. M.D. (1960) pp.182-183. 30) Bonbright, ].C.(1961) p. 396.なお, ポンプライトは短期限界費用料金設定 に対して 5つの批判点を指摘している。 Ibid.,pp. 395-399を参照されたし、。 31) ヴィックリー (W.Vickrey)によれば,限界費用ヵ:急激に変動するとしても限 界費用原理は固守さるべきであるとされる (CJune1948) p.238)。

32) Coase, R.H. (Aug. 1946) pp. 181-182; Graaf, J.de V. (1964) p. 155,邦訳 195ベージ,熊谷尚夫(1964)247ベージ,貝塚啓明(1977)51ベージを参照され たい。とくにグラーフは,限界費用原理が厚生上の見地から正当化される以前に満 たされねばならない諸条件があまりにも制限的であり,実際にはまず満たされそう にもない点を指摘して,それでもなおこの原理が主張されるのは,大多数の経済学 者がこの原理を有効にするために必要とされる仮定についていかに無知で怠ったか を示す以外の何物でもないとして,この原理を手厳しく批判している。

(16)

費用を固定費用を除く費用部分についてのみ考慮した。しかL,費用逓滅状 態において,単純な限界費用原理を採用すれば,料金収入はフルコストをカ ノミーしないため企業損失が発生し,ひいては公企業の長期的な投資計画をゆ がめることになろうっすなわち,サービス供給のための適切な長期的資源配 分を実現できなくなるのこのような問題に対するソルーションとして考えら れたのが二部料金制である。二部料金は,サーピスを利用する機会の提供に ついて課せられる固定料金(基本料金) と, 実際に需要された量について課 せられる従量料金(度数料金)とからなる。普通, 固定料金は固定費用に対 応せしめられるが,従量料金は限界費用と関連せしめられるので,二部料金 制は限界費用原理の1適用伊!といってよい。 二部料金は尾大な固定施設を必要とする電力,電話,ヵース,水道において 一般に採用されてし、る。これらの産業ではサーピスが直接家庭や事業所に電 線,電話線,ガス管,水道管で直結されており,当のサーピスの消費者を確 定できるので,クラブ会員券に相当する固定料金を徴収可能である。しかし, 交通のように消費者と管路で直結されていなし、産業については,消費者の利 用可能性を確定できないため,二部料金は不向きである。 二部料金の原理は次のよう である。第5図において

D 料 金lD

D

'

は 需 要 曲 線

AC

MC

はそれぞれ平均費用曲線と限 界費用曲線である。いま単純 な限界費用原理を適用すると, 日 料金 OP2,供給量 OQ2とな るが,平均費用が

OF

であ るため長方形FHIP2により 表わされる企業損失が発生す

る。そこで,限界費用に等し 第5図 二部料金と数量差別 MC D' 供給量 い従量料金O九と,料金収入が長方形 P1EGP2をカバーするような固定料 金とからなる二部料金制を採用すれば

P1EGP2>FHI.九 と な る か ぎ り 固 定料金はこの企業損失部分を消費者余剰DIP2からすべて回収するであろう。 33) Herber, B.P.(1979Jp.279.

(17)

122 従量料金収入P2IQ20は可変費用を,また固定料金収入は固定費をそれぞれ カバーするものとされる。二部料金を採用したときの供給量は OQ2で,こ れは単純な限界費用原理のときと等しく,平均費用原理のときの OQ

より も大きいため,望ましいといえる。社会的余剰 (DEP

十EIG)についても, 消費者余剰P

EGP2が固定料金収入として企業に回収されるため,限界費用 原理のとき (DIP2)よりは小さいとはし、え,平均費用原理のとき (DEP,)に 比べて EIGだけ大きくなる。 二部料金制のメリットは,次の3点に要約できょう。第 I点として,いま 述べたように二部料金制は,可変費用部分については従量料金を設け限界費 用料金設定により平均費用料金設定のときよりも供給量を増大させて資源配 分効率を高め,固定費用部分については固定料金を設けてこれを回収するこ とにより政府補助の必要をなくする。第2点として,二部料金制は,単純な限 界費用原理によるよりも公企業の経営の安定に寄与する。大量の非常に耐用 年数の長い固定設備が必要とされる場合には,企業は投下した資本を回収し えなくなるリスグを負担する。企業がそれから身をまもる最良の方法は,各 消費者に対して前金で容量費用 (capacitycost)部分の支払L、を要求すること であろう。もし全体としての消費者が固定設備の総費用を支払うならば,こ のリスクは霧散するであろう。第3点として,企業が考える需要促進的メリ ットがある。とくに電力産業の料金政策は伝統的に二部料金制の「需要促進 的

J

(promotional)なメリットに重点を置いてきたとし、われる。一般に,固定 料金は消費者が得る最大供給率にもとづいてある期間について設定されるが, これは固定設備についてこれまでに生じた最大需要を反映するであろう。一 方,電力量についてとられる低料金は需要の増加を促進させるものと期待さ れている。というのも,電力をもっと消費すべしとの決定は限界料金にもと づいてなされるからである。固定料金が設けられると,企業は消費者の自が 34) 実際には,二部料金を採用している公企業において, 施設費があまりに巨額な ため固定料金収入で固定費用を十分にカバーしえず,従量料金収入によってその一 部をカパーすることもありうる。 35) Reed, P.羽T.(1973)p.30. 36) 二部料金制の需要促進的メリットについては, Ibid., pp. 25-28に詳しいので参 際されたい。

(18)

確実に限界での消費に向けられることを期待する。少なくとも固定料金の負 担期間,あるいは消費者が当のサーピスを全部または一部保留するか否かを 決心するまでの間,固定料金は忘れ去られる傾向がある。かくて,需要は従 量料金にもとづいて増加し, しかもこの短期的な需要の拡大は長期的なそれ へと転換されるであろう。そしてその場合には固定料金の引き上げが可能と なるが,この引き上げは増加した需要を満たすために必要な資本設備の追加 を反映するものとして正当化されうる。これが電力経営者による「需要促進 的」料金の考え方である。 なお,二部料金制は,固定料金の対象となるサーピス部分については必需 性が強く,従量料金の対象となるサービス部分については需要の料金弾力性 が大きいサービスに適しているとされる。また,限界費用に等しい料金によ って生ずる企業損失が小さく,利用者の多いときには固定料金収入が少なく てすむので,この料金が低所得層の利用を不可能にすることは少ない。 以上のようなメリットにもかかわらず,二部料金については次のような問 題点、が指摘されている。第 1点として,固定料金が高い場合は,これを負担 37) たとえば,電力負荷は電灯とともに開始されたが,低い限界料金は家庭電気器 具等についての消費の拡大を促進してきた。このような負荷の平準化は所与の資本 設備のよりインテンシープな利用を可能にする。 38) 中桐宏文(1975J211ページ。

39) Musgrave, R.A. and Musgrave, P.B. (1976) p.696.

40) 二部料金の問題点については, Lewis, W.A. (1949J pp. 54-58, pp. 67-68に 詳しい。それによれば,二部料金の「危険性は企業が消費者余剰のすべて(第5図 でD1P2)を吸収しようとするかもしれぬことであれその場合には,二部料金は 最も完全な形の差別となり,最大限の搾取が可能となるJ(p.67)とされる。ルイ スは,このような料金設定の利用による消費者搾取に対する公衆の主たるセーフガ ードは競争であるという (p.69)。しかし,わが国のように制度的に独占が形成さ れている場合には,十分な審査能力を備えた規制機関(たとえば,アメリカの公益 事業委員会のような)の設置が望まれる。 また, Due, ].F. and Friedlaender, A.F. (1977)も,二部料金制の妥当性は固 定料金が消費者余剰にアプローチする程度に依存するとし,固定料金がすべての利 用者に対して同額とされるならば,ある人々が固定料金を上回る消費者余剰を享受 する反面,料金が限界費用に等しければ利用したはずの.ilJjの人々が排除されること になるから,固定料金が各利用者の消費者余剰に応じて課せられるのでなければ,

(19)

できない低所得層,あるいは少量消費者の利用を排除することになり,最適 な利用が達成されなくなるおそれがある。第2点として,利用者に同一額の 固定料金を課するため逆進的な性格をもっており,所得分配上望ましいとは いえない。第3点として,ひとたび電話線や管路で直結された利用者の設備 の利用可能性に対する需要はきわめて非弾力的なため,固定料金の引き上げ が企業にとって容易であり,企業のリスク負担が利用者に転嫁されやすい。 これは,企業にとっての経営安定化のメリ y トが逆に消費者にとってはデメ リットとなりうることを物語るものである。第4点として,二部料金制は固 定費用を回収する方法としてはすぐれているかもしれないが,配分する方法 としては必ずしも適切ではない。公企業の施設はシステム・ピーク需要に応 じて拡張されなければならないのであるから,二部料金制の固定料金のよう にすべての利用者に均分に負担させるのではなしそれを生じさせる利用者 にそのときの需要量に応じて容量費用を負担させるほうが望ましいのである。 このような問題点に対するソルーションは何か。第1点および第2点につ いては,固定料金を大量消費者に高く少量消費者に低く設定することが考え られる。たとえば,電灯では契約電流別,電話では住宅用・事務用の別で基 本料金(固定料金)を異ならせている。こうした方法て。消費者に異なる固定料 金の支払いを要求することは正当であろう。なぜならば,少量消費者は大量 消費者ほどには容量費用を発生させないからである。第3点については,料 二部料金が平均費用料金設定よりもベターであるとはいし、難¥", と批判している (p.87)

41) この点に関しては, Reed, P.W. (1973J p.29の議論を参照されたい。また,ル イスも,固定料金が少量消費者を排除しないための方策として,イギリスにおける 事例をひいて,家屋の地方税査定額 (rateablevalue),部屋数などの指標に応じて 固定料金を異ならせることをあげている。さらにルイスは,二部料金の全面的な適 用に対する代替方式として,少量消費者には二部料金の従量料金よりも幾分高い従 量料金のみを設定し,大量消費者にだけ二部料金を適用することにより少量消費者 の排除を回避することを指摘している (Lewis,W.A. (1949J p.61)。わが国の加入 電話の料金についても,昭和54年 3月に完全自動化が達成される以前には,定額料 金制と二部料金制とに分かれており,定額料金制は加入者数が比較的少ない手動交 換局の加入電話に適用され,加入者は同一局内の通話については通話数に関係なく 一定の月額を支払うものとされていた。なお,公衆電話の料金には完全な従量料金 制力漕用されてし、る。

(20)

金引き上げを認可するさいに主務省庁や消費者が適正な引き上げか否かを議 密に審査する制度の確立が考えられる。それによって,固定料金の安易な引 き上げを厳しくチェッグすべきであろう。第4点についての最善の理論的ソ ノレーションは,異なる時間帯に異なる料金を課するピークロード・プライシ ングを採用することであろう。しかし,消費量の測定費用が非常に高くつく 等でピークロード・プライシングが実施困難な場合には,やはり二部料金制 は次善のソルーションというべきであろう。 第

4

節 差 別 料 金 公企業の限界費用料金設定による損失の政府補填がこのましくないとされ た場合でも,平均費用料金設定によるよりはわずかしか資源配分効率を損わ ずに利用者からフルコストを回収する方法としては二部料金制のほかに,鉄 道などで古くから用いられてきた差別料金制がある。一般に,消費者の支払 い意志に応じて,同じ費用で供給されたサーピスについて複数の料金を課す ることを差別料金制とL、う。公企業が1種類のサービスを単一料金で供給す るとすれば,収支均衡条件を満たすために平均費用に等しい料金水準を設定 しなければならない。だが,公企業が複数のサーピスを供給する場合,ある いはサーピスをいくつかの異なる地域または消費者群に対して供給する場合 には,等しい費用で供給できるサーピスについてそれぞれ複数の異なる料金 を課して,全体としての収入で全体としての費用をまかなうことが可能であ る。その場合,料金差別の基準は需要の料金弾力性である。すなわち,需要 42) 二部料金とピークロード・プライシングとの詳細なメリットの比較については, Lewis, W.A. (1949Jpp.54-55を参照されたい。その結論としてノレイスは,需 要と供給にピ-~ iJ;‘存在する場合の費用配分の方法としてi主,適切に構成された二 部料金はオフピ-~消費を滅返させる単一の非差異料金よりもすぐれているが,ピ ークロード・プライシングには劣る,と述べている。 43) 需要の料金鍔力性の決定要因としては,①当のサーピスの必需性の程度,②当 のサーピスへの支出額が家計支出や企業の製品価格中に占める割合,③代替財・サ ービスの価格や品質,などが考えられる(日本開発銀行(1970・8J12ベージ参照)。 一般に,公企業が供給するサーピスの必需性は大であれまた独占供給される場合 が多いことから,公企業サービスについての需要の料金弾力性はかなり小さいと考 えられる。

(21)

の料金弾力性が相対的に小さな需要者に対しては高い料金を,それが相対的 に大きな需要者に対しては低い料金を課することによって収支均衡の制約下 でも社会的余剰の極大化をはかることができる。差別料金はたとえば,鉄道 では通勤・通学定期運賃の差,国鉄旅客の普通・グリーン料金の差,国鉄貨 物運賃の等級,航空ではファースト・エコノミーのクラス料金の差,水道・ 電力では家庭用・業務用の料金単位の差,また電話では住宅用・事務用の基 本料金の差や交換局規模の相違による基本料金の差などにみられる。 クレメンズが指摘するように,公企業の料金差別は通常,需要者種別 (cu -stomer classes),供給地域 (geographicalareas),または同じ需要者が受ける異 なる供給単位 (differentunits of output taken by the same customer)の聞に差別 を設けることにより実施される。前の2つの差別形態はピグー (A.C.Pigou) により第3扱の差別と呼ばれたものであり, 3番目の差別形態は第2級の差 別と呼ばれたものにほかならない。ピグーによれば,差別料金は差別の完全 さの程度により 3級に分けられる。第 1級の差別は,各消費者の需要価格に 等しい料金を課して消費者余剰をすべて料金収入として汲み尽すもので,完 全差別とも呼ばれる。ただし,この種の差別を実施するには,各消費者の需 要価格を企業が正確に把握しうることが前提となり,実際には実行不可能で ある。第2級の差別は,各消費者の需要量をいくつかのプロッグに分割して それぞれに異なる料金を課するもので,数量差別とも呼ばれる。また,その ような料金はブロ y グ(区画)料金と名づけられている。第3扱の差別は, 供給市場をいくつかに分割L,各小市場ごとに異なる料金を課するもので, 市場差別とも呼ばれる。なお,企業が料金差別を実施するにはし、くつかの条 44) Boiteux, M. CJan. 1956Jはこのことを数学的に証明している。 45) とはいえ, 公企業に無制限な料金差別が認められているわけではない。電気事 業法(第19条4項)やガス事業法(第17条4項)には「特定の者に対して不当な差 別的取扱いをするものでないこと」という規定がある。それが料金政策について意 味するところは必ずしも明確ではないが,北久一教授によれば, I同一種類の同じ条 件の需要者に対しては,常iこ一律に同じ料金を適用すべきことす意味するJ([1974J 118ページ)とされる。 46) Clemens, E.W. CDec. 1941] p.801. 47) Pigou, A. C.[1952J邦訳第2巻 279-280ページ。

(22)

{牛が満たされていなければならない。第1に,他の競争的供給者が高い料金 の市場に参入できないように,市場が独占かそれに近い状態にあることが必 要である(独占市場の条件)。 第2に, 財・サーピスの転売が不可能なことが 必要である(転売不可能の条件)。 第3に, 消費者を需要の料金弾力性の異な るいくつかのグループに分割できることが必要である(需要者分割の条件〕。 第1の条件は,公企業はしばしば独占供給を行なっているので満たせること が多い。第2の条件についても,公企業が供給するサーピスは即時財として の性格をもっているため,満たせることが多い。第3の条件は,数量差別を 実施する場合には必要条件とはならないが,市場差別を実施するためには必 要条件となる。需要者分割を行なうには,消費者の需要の料金弾力性または 負担力を把握しうることが条件となる。 きて,このような条件が満たされたとして,まず数量差別の原理から解明 していこう。いま, 2段階の数量差別を実施することにより収支均衡を達成 しつつ社会的余剰の極大化を図るものとしよう。第5図において, OQlの 供給量プロyグには平均費用に等しいOP1の料金を,これを超えるQIQ2の 供給量プロ yグには限界費用に等

L

い OP2の料金をそれぞれ課する逓減料 金制を採用することにより, 収支均衡と社会的余剰の増加

(

E

I

G

の面積)を ともに達成できる。しかも, このときの供給量 OQ2は限界費用原理による 場合のそれに等しい。このような料金はガス事業において広く採用されてい る。また,国鉄の長距離逓減運賃制や電話料金の距離別時間差法も一種のプ ロyグ逓減料金である。しかし,このような料金制に対してはただちに次の ような批判が提起されるであろう。第1に, OQlの供給量ブロッグでOP1 の料金を支払えない消費者を排除することになる。第 2に,所得水準の低い 層ほど消費量が小さいと考えられ,また消費量が少ないほど需要が必需的な 性格をもつため,低所得層に対する料金を高くすることによって大量に消費 する高所得層の料金を低くするとLろ側面があり逆進的となる。第3に,省 エネルギーの観点からは,消費量を増加させるほど平均料金が低くなる逓減 48) 差別料金を実施するための条件については, Clemens, E. W. (1950J pp. 253-254,邦訳上巻 389-392ベージおよび奥野信宏(1976Jに詳しい。 4 .9) 電話料金の距離JJIJ時間差法とは,遠距離になるほどI通話の料金10円で通話で きる秒数を短縮する制度のことである。

(23)

料金は資源の多消費をもたらすのでこのましくない。ナショナノレ・ミニマム と省エネルギーを理念とするこのような批判が近年とみに高まってきたため, 後述のように,最近わが国の電気料金および水道料金においては逓減制が露 止されて逆に逓増制が導入された。また,ガス料金も今回の料金改正にあた り,従来の逓減制を蕗止することになった。 つぎに,市場分割を行なう第3扱の差別に移ろう。いま,電力を供給する 独占的公企業が供給市場中の消費者群を住宅用と産業用という 2つの別個の 種別に分割しうると仮定しよう。住宅用需要を第6A図の需要曲線 DID/に より,また産業用需要を第6B図の需要曲線D2D

z

'

Vこより表わす。両需要曲 線の勾配から,住宅用需要の料金弾力性は1よりも小であり,産業用需要の それは1よりも大であることがわかる。いま均一料金 O Poを課すると住宅 用需要量は OQ1' 産業用需要量は OQ2である。そのとき企業の総電力供給 量は OQl十OQ2' 料金収入は POFQ10+POGQ20 である。 ここで差別料金 を適用L, 住宅用には均一料金よりも高い O P1

産業用には均一料金より も低い O P2の料金を設定すれば,住宅用の需要量は OQ1'へ減少するが, 産業用の需要量は OQ2'Vこ増加し,総需要量 OQ/+OQ2'は明らかに増加す る。また,住宅用の料金収入 P1EQ1'O も産業用の料金収入九HQ2'Oも均 一料金のときに比べて増加し したがって総料金収入 P1EQ/O十九H Q

z

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O 第 6函 市 場 差 別 料金 ~Dl A 料金 B D2 D~

供給量

(24)

も増加する。かくて,市場差別は公企業施設の稼働率を高めて平均費用を低 下させることをねらいとして,あるいは収支均衡を達成すべく増収を意図す る目的で利用される。わが国における典型的な適用例は国鉄の貨物運賃等綾 である。現在,国鉄の貨物賃率は 3等級に分類されており,量の割合に価格 の高い商品については運賃負担力があるとみなされて高い運賃率が適用され てい之。これは鉄道運賃において古くから採用されてきた,いわゆる負担力 主 義 (charging-what-the-traf五c-will-bear-principle)にほかならない。鉄道に おける負担力主義は輸送する貨客の運賃負担カの大小に応じて運賃を課する 方式であり,一種の差別料金制である。負担力主義は電話の基本料金にも採 用されており,負担力のある事務用は住宅用よりも高く定められ,また交換 局の規模が大となるほど高料金が適用されている。 ところで,上述の議論は収支均衡条件を設定した場合の最適な料金政策と 50) 市場差別についてのこのような分析は, Davidson, R.K. (1955J pp. 39-43に 詳しい。邦語文献では岡野行秀(1970J 139-142ページが参考になる。 51) 国鉄の貨物等級は昭和20年には12等級で最高等級と最低等級の賃率比は 5.21倍 であったが,現在では独占力の低下によって3等級となり,最高等級と最低等級の 賃率比も1.24fきにすぎない(藤井弥太郎(1977J172ページ)。下表は現行の国鉄 の寧扱い貨物運賃等級表より放粋して作成したものである。 等級│運賃率│ 輸 送 品 目 の 傍j 自動車,機械,鉄管,貴金属,美術品,毛織物,清酒,…・・・ 石炭,石油,セメント, りんご,農機具, ピーノレ,…… 砂手11,石灰石,米,麦,生野菜,醤油,サイダー,・ 注)運賃率はl等級を 100とした場合の指数て・ある。 52) 公益事業論においては伝統的に, 料金決定原理として 2つの全く異なる考え方 が存在する。ひとつはいわゆるサーピス費用原理 (cost-of-serviceprinciple)と呼 ばれ,これによれば公企業サーピスの料金設定は供給費用にもとづくべきであると される。純粋な平均費用料金設定はこの原理に依拠するものに他ならない。これに 対して,いまひとつのサーピス価値原理 (value-of-serviceprinciple)によれば, 消費者が公企業サーピスに認める価値にもとづいて料金を課するべきものとされ る。鉄道論における負担力主義は,このサーピス価値原理と考え方をほぼ等しくす るものである。 53) わが国の単独電話の基本料金は現在次表の還りである。

(25)

130 して差別料金を考えたものであったが,それとは若干別の観点,すなわち政 府が限界費用料金設定による損失をカパーするために資源配分に中立的な税 を課することができない場合における公企業の最適料金政策として差別料金 をとらえたものに BaumolW. and BradfordD. (June1970Jがあ

2

。 そ れによれば,公企業は需要の弾力性の大きさと反比例して限界費用を超える 料金を課することによって長期費用をカパーすべきであるとされる。公企業 により供給されるサーピスに対する需要がきわめて非弾力的で、ある場合には, 限界費用を上回る料金を設定しでもほとんど供給量は減少しなL、から,消費 者余剰の損失もわずかである。これに対Lて,需要が非常に弾力的である場 合には,限界費用を少し上回った料金の設定は供給量の大幅な減少, したが って消費者余剰の大きな損失および資源の不適正な配分をもたらしうる。そ れゆえ,公企業サーピスに対する需要の弾力性が大きいほど,限界費用から の議離は小さくなければならない。ただ,このような料金政策には所得分配 上の問題がともなうであろう。すなわち,低所得層は公企業サーピスの必需 部分のみを消費すると考えられ, しかも他の代替サーピスを選択する余地も 限定されるため,当の公企業サービスへの依存度が高く,需要の料金弾力性 は高所得層よりも小さいと考えられるからである。そうであるとすれば,需 要の料金弾力性の大きさと反比例した料金設定は低所得層に高料金,高所得 層に低料金を課することになれ所得分配上の見地からは望ましくないとい えよう。 加 入 電 話 数

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1 800未満

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2 800"-'8,000未 満 1,700 1,200 3 8,000"-'50,000未 満 2,000 1,400 4 50,000"-'400,000未満 2,300 1,600 5 400,000以上 2,600 1,800 54)また, Due, J.F. and Friedlaender, A.F.[1977) pp. 87-88も参照されたい。

(26)

5

節 長 期 限 界 費 用 料 金 設 定 これまでの議論は設備規模を一定とした短期分析であったが,ここで,設 備規模を拡張しうる長期分析にはいろう。公企業はそのサーピスに対するシ ステム・ピーク需要に応じて,長期的には設備容量を拡張しなければならな し、からである。 長期限界費用とは,設備容量をそのときどきの需要量に応じて適切に拡張 させながら生産量を増加していくときの追加費用である。別なし、L、方をすれ ば,長期限界費用とは運営費の追加分である限界運営費用に,設備容量の 拡張に要する費用の追加分で、ある限界容量費用を加えたものである。設備規 模を変化させうる長期分析においては,短期分析において一定とされた設情 建設に要する費用も可変的であるとみなされるため,固定費用と可変費用と いう費用概念の二分法は意味をなさなくなり,費用はすべて可変費用となる。 短期限界費用と長期限界費用との関係はつぎのように説明できょう。短期 限界費用は設備容量が手詰まりになると急激に上昇する傾向がある。それは, いかに余分に労働力または原材料を使用しようと,設備の容量を拡張するこ となしには供給量を増加することが物理的に不可能な点にやがて到達するか らである。このように, 通常短期限界費用 (SRMC)は容量費用その他の長 期費用を含まないとしろ事実を反映して長期限界費用 (LRMC)を下回るも のの,ひとたび設備容量が手詰まり になるや,下方から LRMC曲線を カット

L

,これをはるかに上回って言 上昇する。第7図は長期平均費用逓 減下でのSRMC

LRMCおよび長 期平均費用 (LRAC)の関係を簡単 化して示したものである。料金を 第7図 長期平均費用逓減下の短期 および長期限界費用 LRMCに等しくすることは公企業 O 供給量 の収支均衡化を不可能にするであろう。なぜなら,費用逓減下では LRAC は LRMCに次第に接近するけれども,つねに LRMCを上回るからであ る。 LRMCvこ等しい料金は長期的不経済を反映して LRMCが LRACと 等しくなるときにのみ公企業の収支均衡要求を満たすにすぎない。また,料

(27)

金を

SRMC

に等Lくするならば,公企業が設備容量目いっぱいで操業する ときを除いて,料金収入は総費用を償わないであろう。 ところで,公企業が最適な設備計画を実施しており,つねに需要に適合し た設備規模が実現されているものと仮定すれば,短期限界費用と長期限界費 用とは一致し, したがって両者にもとづく料金は等しくなる。いま第8図に おいて,所与の需要が需要曲.線 D1Dlで表わされるとき,短期限界費用曲線

SRMC

との交点 E で料金

OP

,J 供給量 OQlが決定される。このとき E点 は

LRMC

曲線上の点であると仮定しよう。さて,つぎに需要の拡大にとも ない需要曲線が D2D2へシフトしたとすると,設備容量を一定とした場合に 第 8函 短期限界費用と長期限界費用の一致 料金 D2

供 給 量 は均衡点はFとなり,料金

OP/

供給量

OQ/

が決定される。 しかし,公 企業が需要に合わせて設備容量を適切に拡張しうるものとすれば,均衡点は

LRMC

曲線が

D

2

D

2曲線と交差する G点となり,この場合の短期限界費用 曲線は設備拡張のための費用を反映して,この点を通過する新たな

SRMC

2 曲線となる。かくて, 設備調整後の均衡料金および供給量はそれぞれ

OP

2 および

OQ2

に決定される。このように,公企業の最適投資政策を仮定した ときには短期限界費用と長期限界費用は等しくなり,短期限界費用料金設定 は同時に長期限界費用料金設定となるので,両者の間にはもはや何ら矛盾は 存在しなくなるのである。 55) Boiteux, M. [1949) translated p.70.

(28)

ところで,もし実際に使用中の設備の容量が適切ではないとしたら,この 設備を最適水準にすべく拡張または縮小するに必要な措置がとられている期 間,料金は短期限界費用に等しく設定されるべき?か否かとし寸問題が提起さ れよう。理論的に考えれば,当該設備が現在の状態のままで最適に利用され るようにするために,料金はつねに短期限界費用に等しくなるように調整さ れねばならない。しかし,これでは設備容量が調整されるのにともなって料 金が大幅に変動することを余犠なくされよう。第8図における

R

から

P/

への大幅な料金上昇,そして設備調整後の P/から Pzへの下落はこれを物 語っている。料金を安定させることが望ましいとの見地にたって,ボワトー (M. Boiteux)は設備容量が適切でない場合に追求すべき適切な料金政策とし て,当該設備の容量が実際に適切であると仮定した場合の短期限界費用に 等しく料金を設定することを主張する。換言すれば,料金は通常は長期限界 費用に等しく設定されるべきでゑって,その瞬間において料金が短期限界費 用に等しいか否かは問題ではない。 さて,いまもしも第8図における均衡点Gを,短期平均費用曲線の包絡線 として描かれる長期平均費用曲線 LRACの最低点が通過するものとすれば, 第9図に示されるように,供給量OQzに対応する短期平均費用曲線SRACz を含

Z

,4つの費用曲線

SRMCz, LRMC

SRACz, LRACは均衡点Gに 第 9図 収支均衡と資源配分効率の同時達成点 料 金 Dl D2 'LRAC

最適供給量 56) Meek, R.L. (Ju!y 1963J pp.223-224. 57) 需要量に応して設備規模を最適にするということは,平均費用が最小になるよ うに設備規模を拡張することにほかならない。

(29)

おいてすべて均等となる。これは,長期的に規模に関して収穫一定となった ときの状態にほかならない。このような状態において長期限界費用に等しい 料金を設定すれば

LRMC=LRACであるから公企業に損失が発生するこ とはなく,収支均衡が達成され,同時に資源配分効率も最適となる。しかし, OQ2より小さな供給量OQlに見合う需要D1D1しかない場合には,公企業 は〔長期J費用逓減下で操業することになり,長期限界費用料金設定を採用 しでも損失(斜線部分 P/'HEP1の面積で示される)を生ずることになる。 で1お長期限界費用料金設定のメリットは何か。すでに述べたように,そ の第l点として与えられた需要につし、て最適規模の設備容量に導くこと,第 2点として料金が安定的となること,があげられる。とくに,長期限界費用 は需要の変化に対して短期限界費用よりも安定的で、あるため,短期限界費用 料金設定を採用するときのように頻繁に料金を変更する必要がない。 しかし,長期限界費用料金設定については, 設備に分割不可能性 (indivi・ sibility)があって限界的に設備を拡張しえない場合には,設備についての長 期限界費用といったものは存在せず,無意味であるとの批判がなされる。公 企業においては巨大かつ不可分な固定施設がシステマチックに連結してサー ピス供給が行なわれているのであるから,この批判の説得力は否定しがたい。 とはいえ,長期限界費用概念に基礎を置くピークロード・プライシングを次 節で考察する場合には,長期限界費用がもっこの欠陥はとりあえず等閑に付 して置くことにしよう。 58) ポンプライトも料金安定化のために,変動の激しい短期限界費用にではなく長 期限界費用に等しい料金の設定を推奨している (Bonbright,].C.[1961]pp.400 -401)。彼はまた,長期限界費用料金設定を伝統的な平均費用原理による場合の収支 均衡条件からあまり隔たることのない料金原理であるとも考えているようである。 59) Sharp, M. [1973J p. 176.中I11公一郎教授も「純理論的には,長期限界費用は 設備の能力を,それぞれの産出量に対して最適となるように,完全に対応させてい く場合における限界産出量の費用であれ極言すれば,分析目的のために導入され たフィグションであるともいえる J([1975J 41ページ)として,その仮定の非現実 性を指掃されている。

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