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土壌汚染地の制度的管理と土地利用転換 ―東京都の事例― 利用統計を見る

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(1)

土壌汚染地の制度的管理と土地利用転換 ―東京都

の事例―

著者

高浜 伸昭

著者別名

TAKAHAMA Nobuaki

雑誌名

東洋大学大学院紀要

56

ページ

161-174

発行年

2020-03

URL

http://doi.org/10.34428/00011767

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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土壌汚染地の制度的管理と土地利用転換

1.はじめに

近年の産業構造の転換に伴い、工場閉鎖後の跡地が大規模な商業施設や住宅用地へ転換さ れる事例が増加している(近藤, 2017)。工場跡地では過去に使用した有害物質による土壌汚 染が判明する事例が多く、再開発の妨げになることがある。米国では1980年に制定された 「包括的環境責任対処・補償・責任法(CERCLA)」により汚染サイトの所有者などの潜在 的責任当事者に厳格な浄化責任が課せられたことから、都市部においてブラウンフィールド 問題が生じた(黒坂, 2009)。ブラウンフィールドとは土壌汚染の存在やその可能性により土 地の再利用が停滞する土地とされ(US EPA, n.d.)、米国における土壌汚染対策は、環境問 題の解消に加え、地域経済の活性化のための政策と位置付けられている(Winson-Guideman et al., 2004)。 水質や大気といった拡散性の環境問題は、発生源に対する排出規制により人の健康被害を 防止する。一方、蓄積性の環境問題である土壌汚染は、汚染事実を把握し、事後的な対策に より暴露経路を遮断することが重要となる。市街地を含む一般の土地における土壌汚染の調 査および対策について、2002年に土壌汚染対策法が公布され2003年より施行された(以下 「土対法」、施行年により区別する際は「2003年法」という)。土対法における汚染対策は、 有害物質の人への暴露経路の遮断するための措置を基本とし、原則として汚染の浄化は要求 しない。 しかしながら、リスク管理法としての土対法の趣旨は一般の人々に十分に理解されていな い(浅野, 2018)。2003年法の施行後は、清浄な土地を求める不動産市場の要請から、判明し た土壌汚染について割高な掘削除去による措置が広く実施されることとなった(大塚, 2009)1。そのため、掘削除去に要する費用を負担できない汚染地が未利用となるなど、我が 国においてもブラウンフィールドの発生が懸念される事態となった(土壌汚染をめぐるブラ ウンフィールド対策手法検討調査検討会, 2007)。

土壌汚染地の制度的管理と土地利用転換

―東京都の事例―

経済学研究科経済学専攻博士後期課程1年

高浜 伸昭

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2003年法の施行後に増加した掘削除去を抑制するため、2010年から施行された改正土対法 (以下「2010年法」という)では「制度的管理の明確化」が図られた(大塚, 2009)。制度的 管理とは、土地の利用に応じた対策基準の設定や汚染度に応じた土地利用規制によって、人 が汚染物質に晒される可能性を最小限に抑える行政的または法的な非工学的手法とされる (US EPA, 2018)。制度的管理に基づき土壌汚染地の状況を継続的に管理することで、掘削 除去など重機を用いる工学的手法に比べ、低コストで人の健康被害を防止することが可能と なる。2010年法における制度的管理の明確化では、2003年法において単一で管理されていた 区域を、健康被害が生じるおそれに応じて、摂取経路の遮断や汚染の除去等の対策が必要な 「要措置区域」と、対策が不要な「形質変更時要届出区域」に分化した。このうち形質変更 時要届出区域は、汚染地の形質の変更を事前届出制とすることで、汚染が存在しても土地の 利活用が可能であることを法制度において明確にしたものである(大塚, 2009)。 形質変更時要届出区域において掘削除去が抑制されれば、ブラウンフィールドの発生が防 止され、地域経済の活性化につながると考えられる。しかしながら、先行する米国に比べ、 我が国では土壌汚染対策の規制が土地利用に与える影響に関する実証研究はきわめて少な い。米国ではCERCLA制定後のブラウンフィールド問題を解消するため、州レベルの Voluntary Cleanup Programs(VCPs)による自主的な土壌汚染地の浄化が進められている (US EPA, 2017)。VCPsでは、土地利用に応じた浄化基準を定めることにより汚染物質の残 置を認め、またプログラムに基づく対策を完了した土地について、事業者が行政から土壌汚 染を理由に訴追されるリスクから守る責任保護制度が導入された(黒坂, 2003)。米国の実証 研究では、プログラムに参加する土地の特徴(Alberini, 2007)や参加前後の土地利用の変 化(Wernstedt et al., 2013)、再開発事業者の意識調査(Alberini et al., 2005)などにより、 VCPsがブラウンフィールドの活性化に寄与していることが示されている。 一方、土対法については法学の論考が中心であり(例えば高橋, 2002、大塚, 2017、浅野, 2018)、形質変更時要届出区域は、立法や行政の担当者が期待するリスク受容の概念を明確 化したものとなっている。土対法の目的は人の健康の保護であり、土地取引に対する配慮は 一定の限度にとどまっている(大塚・北村, 2006)。制度的管理には、不動産市場における土 壌汚染のリスク受容の概念を変化させる機能が期待されており(赤渕, 2015)、その導入効果 の検証には、形質変更時要届出区域の土地利用を把握することが有効と考えられる。区域の 土地利用について、高浜・川瀬(2019)は、2003年度から2014年度までに東京都内で指定さ れた全ての区域を対象とした分析を行っているが、形質変更時要届出区域を対象として土地 利用の状況を明らかにした分析は、筆者の知る限り存在しない。 本稿の目的は、形質変更時要届出区域の指定状況と土地利用の関係を明らかにすること で、制度的管理に基づく汚染地管理の状況を検証することである。その内容は、2010年法施 行以降の2010年度から2014年度までの東京都内で指定された区域のデータを用いて、掘削除

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土壌汚染地の制度的管理と土地利用転換 去の実施と区域指定後の土地利用転換の関係を明らかにする点で新規性がある。本稿は次の ように構成される。第2節では土対法の概要を説明する。第3節では使用するデータを示し、 第4節において分析を行い、第5節で考察を加える。第6節はまとめである。

2.土壌汚染対策法の概要

2.1 目的および制度 図1は土対法の概要を示したものである。法の目的は、土壌汚染状況の把握と土壌汚染に よる人の健康被害の防止に関する措置を定めることにより、国民の健康を保護することであ る。規制対象物質は、土壌や地下水に含まれることで人の健康被害が生じるおそれがある26 物質であり、第一種特定有害物質として12種類の揮発性有機化合物、第二種特定有害物質と して9種類の重金属等、第三種特定有害物質として5種類の農薬等が指定されている。 法律の基本的な流れは、土壌汚染調査の実施、汚染が判明した場合の区域の指定、指定の 事由がなくなった時の指定の解除である。 2.2 調査の義務者および契機 調査の義務者は土地の所有者、管理者または占有者(以下「土地所有者」という)であ る。法律に基づく調査は、3条、4条、5条に基づき実施される。3条調査は、汚染のおそれの 程度を基準とした調査契機を設定しており、汚染のおそれが高いと考えられる有害物質を取 り扱ったことのある工場の敷地について、工場として管理されなくなる時点で調査を実施す る。4条調査は、一定規模以上の土地の形質変更時を調査契機としており、3,000m2以上の大 規模な土地の形質変更時に事前届出が義務付けられ、その土地に土壌汚染のおそれがあると 都道府県知事等が判断した場合に調査命令が発出される。5条調査は、土壌汚染により人の 健康被害が生じるおそれがあると都道府県知事等が判断した場合に調査命令が発出される。 また、法律に基づかない調査により土壌汚染が判明した場合、土地所有者は14条に基づき 区域に指定されることを自主的に申請することができる。4条および14条は、2003年法によ る調査契機が極めて限定されていたことに対応し、法律に基づく土壌汚染の把握の機会を拡 大するため2010年法により設けられたものである(大塚, 2009)。 2.3 区域の指定 区域の指定に関する基準については「汚染状態に関する基準」と「健康被害が生じるおそ れに関する基準」の2つが設けられている。報告された調査結果が汚染状態に関する基準に 適合しない場合、その土壌は汚染状態にあるものとして規制の対象となる。この汚染土壌に ついて、健康被害が生じるおそれに関する基準の該当性が判断される2。この基準に該当す る場合は、汚染の除去等の措置が必要な区域として要措置区域に指定される。一方、この基 準に該当しない場合は、汚染の除去等の措置が不要な区域として形質変更時要届出区域に指 定される。それぞれの区域に指定された場合、土地の所在地や土壌の汚染状態等の情報を記

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載した台帳が調製され、閲覧により一般に公表される。 2.4 区域の管理 要措置区域に指定された場合、都道府県知事等から健康被害を防止するための「指示措 置」が示され、土地の所有者等は期限内に法律で定められた摂取経路の遮断のための措置を 実施しなければならない3。掘削除去などの措置により汚染の除去と摂取経路の遮断が同時 に行われた場合には要措置区域の指定が解除されるが、封じ込めなどの措置により汚染を除 去せず摂取経路の遮断のみを行った場合には形質変更時要届出区域に指定替えされる。 形質変更時要届出区域に指定された場合、法律により健康被害を防止するための措置を求 められることはなく、汚染土壌が存在する状態での土地の管理が期待されている。この区域 では、汚染の拡散防止の観点から土地の形質の変更の方法等が制限され、形質を変更しよう とする者は、その計画を事前に都道府県知事等に届出なければならない。 2.5 指定の解除 汚染の除去等の措置により指定の事由がなくなったと認めるときは、要措置区域や形質変 更時要届出区域の指定は解除される。指定の事由がなくなるためには汚染の除去が必要であ る。汚染の除去には掘削除去と原位置浄化の二つの手法があるが、9割以上が掘削除去によ る指定の解除となっている4。いずれの区域においても区域内から汚染土壌を搬出する場合 には事前の届出が義務づけられ、汚染土壌の処理を土対法の許可を受けた汚染土壌処理業者 に委託しなければならない。 図 1 土壌汚染対策法の概要 ( 出 典 ) 環 境 省 水・大気環境局 土壌環境課(2019)より筆者作成

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土壌汚染地の制度的管理と土地利用転換

3.データ

3.1 台帳の入手 区域の台帳は東京都内の土対法執行団体である東京都、八王子市および町田市5より入手 した(高浜・川瀬2017)。入手した台帳のうち形質変更時要届出区域は424件(うち八王子市 は6件、町田市は1件)であった。 3.2 区域の地理空間情報 台帳により管理されている区域の土地利用を把握するためには、一般の地図において区域 の位置を把握する必要がある。しかしながら台帳では汚染地の所在が地番によって管理され ており、直ちに地理空間情報として活用するのは困難な状態にある。 そこで高浜・川瀬(2017)は指定区域の台帳より得られる汚染地の地番情報をもとに区域 が存在する土地に座標を付与する手順を示した。図2は、先行研究に従い付与した座標によ り、東京都内の形質変更時要届出区域の分布を示したものである。全体の86%にあたる365 件が23区に、残りの59件は市に分布しており、町村には1件も存在しなかった。 3.3 区域の土地利用状況 台帳には、区域の指定年月日や所在地のほか、区域の概況、面積、汚染状態に関する情報 などが記載されている。このうち区域の概況欄には台帳調製時の土地利用が記載されている が、指定後の土地利用を把握することはできない。 そこで高浜・川瀬(2019)は、東京都都市整備局都市づくり政策部土地利用計画課が取り まとめている「土地利用現況調査」による土地・建物分類(表1)の区分に基づき、区域指 定時と区域指定後の土地利用を把握した。本研究では先行研究で用いた土地利用の情報をも 図 2 東京都内の形質変更時要届出区域の分布(2010 年度~2014 年度)

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とに分析を進める。

4.分析

4.1 形質変更時要届出区域の土地利用 表2は、東京都において2010年度から2014年度までに指定された形質変更時要届出区域424 件について、区域指定時と区域指定後の土地利用を整理したものである6。区域指定時の土 地利用についてみると、最も多いのが工業用地(249件、58.7%)であり、次いで公共用地 (71件、16.7%)、住宅用地(34件、8.0%)、商業用地(18件、4.2%)の順となっていた。 区域指定後の土地利用では、住宅用地(146件、34.4%)が最多であり、次いで公共用地 (80件、18.8%)、工業用地(57件、13.4%)、未利用地(40件、9.4%)の順となっていた。 区域指定前と指定後の土地利用の変化をみると、区域指定の前後で土地利用転換がない区 域(表2中網掛けの部分の合計)は170件(40.0%)であった。このうち公共用地として継続 使用されているケースが最も多く(55件、12.9%)、次いで工業用地(54件、12.7%)、住宅 用地(30件、7.0%)の順であった。 また全体の60.0%にあたる254件において指定前後で土地利用の転換がみられた。そのう ち最も多いのは工業用地から住宅用地への転換(101件、23.8%)であり、次いで工業用地 から未利用地(25件、5.8%)、工業用地から商業用地(23件、5.4%)、工業用地から公共用 地(20件、4.7%)の順であった。 (注) 表に示した分類は抜粋である。この他に農用地や森林地などの分類もあるが、東京都における土対法の区域で はこれらに分 類 される土 地 は存 在 しなかったため省 略 した。 (出典) 東京都都市整備局都市づくり政策部土地利用計画課(2018)より筆者作成。 官公庁施設 教育文化施設 厚生医療施設 供給処理移設 事務所建築物 専用商業施設 住商併用施設 宿泊・遊興施設 スポーツ・興行施設 独立住宅 集合住宅 専用工場 右記の専用工場、専用作業所 住居併用工場 右記の併用工場、作業所併用住宅 倉庫・運輸関係施設 その他 公共用地 商業用地 住宅用地 工業用地 屋外利用地、仮設建物 公園、運動場等 未利用地等 上水道施設、電力供給施設(発電所、変電所)、卸売市場、ごみ焼却施設、廃棄物処理施設、下水道施設など 事務所、営業店舗(銀行、証券会社等)、新聞社、放送局、NTT、計算センター、医師会館 専用商業施設(住宅を含まないもの)、スーパーマーケット、小売店舗、ガソリンスタンド、飲食店など 道路 鉄道、港湾等 工場、作業所、生コン工場、精米工場、自動車修理工場、 洗濯作業を伴うクリーニング店 自衛隊基地など (屋外利用又は仮設利用)材料置場、屋外駐車場、屋外展示場、プレハブ住宅展示場、中古車センターなど (屋外利用を主とするもの)公園緑地、運動場、遊園地、ゴルフ場、ゴルフ練習場、テニスコート、墓地など 宅地で建物を伴わないもの、建築中で用途不明のもの、区画整理中の宅地、取りこわし跡地など 街路、歩行者道路、自転車道路、農道、林道、団地内通路 鉄道、軌道、モノレール、空港、港湾 住居併用店舗(物販・飲食などの店舗、税理・会計・建築などの事務所)・事務所、住居併用作業所付店舗 ホテル、バー、キャバレー、パチンコ店、ゲームセンター、カラオケボックスなど (屋内又は観覧席を有するもの)体育館、競技場、野球場、劇場など 専用戸建住宅、住宅を主とする塾・教室・医院等の併用建築物 公団・公社・公営住宅、アパート、マンション、独身寮、寄宿舎、家族寮など 自動車車庫、バスターミナル、バス・タクシー・トラック車庫、倉庫、屋根付き資材置き場、配送所など 官公署・出先機関、警察署・派出所、消防署、郵便局、税務署、裁判所、大公使館 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、専修学校、各種専門学校、研修所、研究所、自動車教習所など 病院、診療所、保健所、保育園、託児所、高齢者福祉施設、障害者福祉施設、児童福祉施設 表1 土地利用現況調査における土地利用の区分

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土壌汚染地の制度的管理と土地利用転換 4.2 土地利用と制度的管理の状況 表3は、指定後の土地利用と区域の指定・解除状況を整理したものである7。要措置区域で は期日までに汚染の除去等の措置を実施なければならず、暴露経路の遮断が認められた場合 に区域の指定が解除される。一方、形質変更時要届出区域では制度的管理に基づく汚染地管 理が期待されており、指定の解除は、土地所有者が自主的に汚染を除去したことを意味す る。 最も解除率が高かったのはその他でありいずれも自衛隊基地内の土地であった。一般の土 地利用について最も解除率が高かったのは、再開発(複合施設)であり90%で区域が解除さ れ、次いで商業用地の73.7%、住宅用地の65.8%、未利用地の55.0%の順であった。一方、最 も解除率が低い工業用地の解除率は36.8%と63.2%で区域の指定が継続しており、指定後の 土地利用により、掘削除去が実施される程度が異なっている。 表2 形質変更時要届出区域の土地利用 公 共 用 地 商 業 用 地 住 宅 用 地 工 業 用 地 屋 外 利 用 地 公 園 運 動 場 未 利 用 地 道 路 鉄 道 港 湾 そ の 他 再 開 発 ( 複 合 施 設 ) 合 計 公共用地 55 1 3 0 1 1 9 0 0 0 1 71 商業用地 1 8 4 1 0 0 1 1 0 0 2 18 住宅用地 1 1 30 0 0 0 2 0 0 0 0 34 工業用地 20 23 101 54 9 6 25 9 0 0 2 249 屋外利用地 1 1 0 1 1 0 0 0 0 0 1 5 公園運動場 0 0 1 0 0 7 1 0 0 0 0 9 未利用地 2 1 3 0 0 1 1 2 0 0 0 10 道路 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 4 鉄道港湾 0 0 0 0 0 0 1 0 8 0 0 9 その他 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 2 空欄等 0 3 4 1 0 0 0 1 0 0 4 13 合計 80 38 146 57 11 15 40 17 8 2 10 424

指定後の土地利用

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表3 指定後の土地利用と区域の指定・解除状況(2010 年度~2014 年度) 件数 割合 指定中 42 52.5% 解除 38 47.5% 計 80 指定中 10 26.3% 解除 28 73.7% 計 38 指定中 50 34.2% 解除 96 65.8% 計 146 指定中 36 63.2% 解除 21 36.8% 計 57 指定中 5 45.5% 解除 6 54.5% 計 11 指定中 9 60.0% 解除 6 40.0% 計 15 指定中 18 45.0% 解除 22 55.0% 計 40 指定中 10 58.8% 解除 7 41.2% 計 17 指定中 5 62.5% 解除 3 37.5% 計 8 指定中 0 0.0% 解除 2 100.0% 計 2 指定中 1 10.0% 解除 9 90.0% 計 10 指定中 186 43.9% 解除 238 56.1% 計 424 商業用地 住宅用地 鉄道港湾 その他 再開発 (複合施設) 合計 公園運動場 未利用地 道路 公共用地 工業用地 屋外利用地 (注) 表中の「その他」に分類されたのは、いずれも自衛隊基地内の土地であった。

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土壌汚染地の制度的管理と土地利用転換 表4は、土地利用転換の有無と区域の指定・解除状況を整理したものである。土地利用転 換がなかった170件のうち84件(49.4%)で区域が解除されていたのに対し、転換があった 254件のうち154件(60.6%)で区域が解除されていた。土地利用転換がある場合、転換がな い場合に比べ解除率が10%ポイント以上高くなっており、土地利用転換を契機とした掘削除 去が多くなっている。

5.考察

前節の分析で、形質変更時要届出区域に指定された時点での土地利用では工業用地であっ た土地が最も多いこと、区域全体の約6割において指定後に土地利用転換が生じていること、 指定前後の土地利用転換の状況により区域の解除率が異なっていることが明らかとなった。 これらの要因について、土壌汚染が不動産価格に与える影響という視点から検討してみたい。 不動産鑑定評価の実務では、土壌汚染が存在することによる不動産価値の減価要因を、 「汚染対策に要するコスト」、「土地利用の制約に伴うコスト」、および「汚染によるスティグ マ8」に分類し、これらを土壌汚染がない状態を想定した土地の価値から減ずることで土壌 汚染地の価値が算出されている(廣田, 2017)。これらの減価要因に係るコストは再開発の実 施に影響を与える。再開発の意思決定についてBrueckner(1980)やWheaton(1982)は 「再開発後の土地から得られる収益が、再開発前の土地利用収益を上回ったときに再開発が 実施される」との基本モデルを示し、McGrath(2000)は土壌汚染の措置コストを考慮した モデルを示している。これらの知見を踏まえると、指定が解除された区域では割高な掘削除 去の実施について汚染対策に要するコストを負担し、区域指定が継続している土地では将来 にわたる土地利用の制約に伴うコストを負担することで、再開発後の土地の収益が確保され ており、土地利用による解除率の違いは、プロジェクトにおける収益構造を反映していると 表4 土地利用転換と区域の指定・解除状況(2010 年度~2014 年度) 件数 割合 指定中 86 50.6% 解除 84 49.4% 計 170 指定中 100 39.4% 解除 154 60.6% 計 254 指定中 186 43.9% 解除 238 56.1% 計 424 利用転換なし 利用転換あり 合計

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考えられる。不動産市場では汚染地を住宅用地として取引する場合には汚染の除去が前提と 考えられていた(廣田, 2009)。しかしながら近年の不動産市場の参加者の中には、形質変更 時要届出区域では、法の規制に応じた事業計画の範囲内で土地の取得や運用が検討される事 例が出てきている(廣田, 2017)。こうした市場のリスク受容の概念の変化を捉えるには、区 域が存在する土地の属性をコントロールした分析が必要であろう。 また法規制により生じる土地利用の制約に伴うコストについて、2010年法では、健康被害 が生じるおそれがない形質変更時要届出区域に厳しい規制が課せられていることが課題とさ れた(中央環境審議会, 2016)。これを受け、2019年から施行された改正土対法では、形質変 更時要届出区域における土地の形質変更の規制が緩和された9。これらの制度改正により区 域における土地利用の制約コストが低下すれば、割高なコストを負担して汚染を除去する必 要性が低下し、制度的管理に基づく汚染地管理の増加につながると考えられる。ただし、形 質変更時要届出区域の9.4%にあたる40件が未利用地であり、東京都内でもブラウンフィー ルドが生じている可能性があることに留意する必要がある。未利用地の6割で区域の指定が 継続しているが4割では指定が解除されている。掘削除去が行われてもなお土地の再利用が 停滞しているのであれば、再開発の実施に汚染によるスティグマが影響しているのかもしれ ない。この影響をみるためには、区域と地価の関係について分析を深める必要があるだろう。

6.おわりに

本稿では、東京都における土対法に基づく区域指定のデータを用いて、2010年法で制度的 管理の明確化として導入された形質変更時要届出区域における区域の指定・解除状況と土地 利用の関係を検証した。その結果、東京都の形質変更時要届出区域では、指定前後の土地利 用転換の状況により区域の解除率が異なっていることが明らかとなった。また形質変更時要 届出区域の1割弱が指定後において未利用地となっており、東京都内でもブラウンフィール ドが生じている可能性があることが示された。土壌汚染地の土地利用の実態に関する分析を 深めるには、区域が存在する土地の属性や地価の影響を考慮する必要があるだろう。今後の 研究課題としたい。

謝辞

本稿を作成するにあたり、東洋大学大学院経済学研究科教授である川瀬晃弘先生ならびに 同研究科教授である鈴木孝弘先生よりご指導を戴いた。また、匿名の査読者の先生からも多 くの有益なコメントを頂戴した。本研究は不動産流通経営協会の助成を受けたものである。 記して深謝の意を表したい。

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土壌汚染地の制度的管理と土地利用転換 1 掘削除去は舗装や封じ込めに比べ割高で、例えば汚染面積3,000㎡で深度3mの掘削除去の場合 4.5億円(舗装の20倍)のコストがかかる(中央環境審議会, 2008)。 2 健康被害が生じるおそれは、地下水経由のリスクおよび直接摂取のリスクにより判断される。 地下水経由のリスクは汚染土壌が存在する土地の周辺に飲用井戸が存在する場合に、また直 接摂取のリスクは汚染土壌が存在する土地に人が立ち入ることができる状態となっている場 合に生じる。 3 地下水摂取リスクに対する指示措置は原位置封じ込め・遮水工封じ込め、直接摂取リスクに 対しては盛土が基本とされる。指示を受けた者は、指示措置またはそれと同等以上の効果を 有すると認められる方法(「実施措置」)のいずれかを選択して措置を実施する必要がある。 2017年度までの累計では、指示措置数は564件であり、うち汚染土壌の除去を指示したのは18 件(3.2%)に過ぎない。一方、要措置区域で実施された対策の90.2%(731件のうち660件) が汚染土壌の除去であった(環境省水・大気環境局, 2019年)。 4 2017年度までの累計では、汚染土壌の除去のうち掘削除去は2,630件、原位置浄化は211件であ り、掘削除去が92.5%を占めていた(環境省水・大気環境局, 2019年)。 5 土対法の事務は都道府県知事が行うが、法律の規定により、都道府県知事の権限に属する事 務の一部は、政令で定めるところにより市の長が行う(法64条)。東京都では八王子市、町田 市がこれにあたる(令8条)。 6 指定時の土地利用における「空欄等」とは、台帳帳簿の「区域の概況」欄に記載がなかった ものおよび記載があっても土地利用を判断できなかったものを示す。また指定後の土地利用 における「再開発(複合施設)」は表1に示す土地利用調査における分類には存在しないが、 これは表1に示した分類では土地利用を特定できない再開発や複合施設を示す分類として筆者 が設けたものである。 7 区域指定の解除については、例えば地下水摂取等のリスクに関する措置では掘削除去後に地 下水汚染が生じていない状態が2年継続することを確認することが必要である。そのため区域 指定の解除を確認するための基準日を、分析期間である2014年度末から2年以上が経過した 2017年4月23日とした(高浜・川瀬, 2019)。 8 スティグマとは土壌汚染の存在(または土壌汚染が過去に存在したこと)に起因する心理的 な嫌悪感等から生じる減価要因とされる。掘削除去により区域が解除された土地では、不動 産評価の実務上、スティグマによる価格形成への影響は僅少とされている(廣田, 2017)。 9 具体的には、①臨海部特例区域における土地の形質の変更の特例制度の設置、②飛び地にな って区域指定された区域間の土壌の移動規制の緩和、③土地の形質の変更の施行基準の緩和 などである。このうち①は、土壌汚染による健康リスクが低いと考えられる臨海部の形質変 更時要届出区域について産業活性化及び土地の有効利用のために設けられた制度であり、②

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は、2010年法において飛び地になって区域指定されている区域間の土壌の移動が認められず 迅速なオンサイトの処理や工事の支障になっていたことを踏まえ設けられた制度であり、③ は、2010年法において形質変更時要届出区域に要措置区域より厳しい施行基準が定められて いたことへの対応として設けられた制度である(環境省水・大気環境局長, 2019)。

参考文献

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Abstract

The Soil Contamination Countermeasures Act (SCCA) was enacted in 2003, and method of investigations on soil contaminations and countermeasures were established in Japan. Although the SCCA established countermeasures only for blocking the intake route of harmful substances, excessive countermeasures and excavation removal have frequently been carried out after its enactment. So, the Area for which Changes in Form or Nature Require Notification (ACFNRN), which are designated areas for no damage to human health, was established in the amended SCCA enacted in 2010 as an institutional control on contaminated sites. However, very little is known about the effectiveness of the ACFNRN.

This article focuses on 424 Tokyo properties that were designated as ACFNRNs from FY2010 to FY2014 and clarifies the relation between the degree of implementation of excavation removal in ACFNRNs and its land use change. The data analysis shows that the rate of excavation removal in ACFNRNs in Tokyo has been extremely different from its land use. Furthermore, the data show that about one- tenth of the ACFNRNs are vacant, implying the possibility of the existence of brownfields in Tokyo despite taking proper countermeasures in the ACFNRNs.

Institutional Controls and Land Use Change on

Soil Contaminated Sites:Evidence from Tokyo

表 3  指定後の土地利用と区域の指定・解除状況( 2010 年度~ 2014 年度) 件数 割合 指定中 42 52.5% 解除 38 47.5% 計 80 指定中 10 26.3% 解除 28 73.7% 計 38 指定中 50 34.2% 解除 96 65.8% 計 146 指定中 36 63.2% 解除 21 36.8% 計 57 指定中 5 45.5% 解除 6 54.5% 計 11 指定中 9 60.0% 解除 6 40.0% 計 15 指定中 18 45.0% 解除 22 55.0% 計 40

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