はじめに
数学はいろいろな現象について,その現象の意味するところを普遍的な 形式で表現したり,ある対象を定め,その対象の有する性質などを捉え表現 する学問といえる.その表現に用いられるものが数式であり図形であった りする.そして,それら表現に到る過程や経過が計算であり,論証である. 数学の中で特に図形に関連する分野が幾何学と呼ばれる.古くはエジプ ト時代に平面図形についての幾何学が盛んであった.直角三角形について のピタゴラスの定理などはその代表的なものといえよう. その後,幾何学の内容も平面図形から空間図形へ,さらにはもっと一般 化された空間へと進み,それに伴う諸概念の抽象化が行われた.その中で 最も一般的に抽象化された空間が位相空間である.それによってそこで用 いられる手法などが利用され,また応用される面も広がってきている. 反面,抽象化が進みすぎて図形的な意味合いが見えにくくなったり,捉 えにくくなってきているところが多分にあるようにも見られる. 本書ではそのような傾向も踏まえ,できるだけ入門的に書き,その先の 専門分野への基礎になることができればという視点で説明をつけてきた. そのぶん説明の中に厳密性の欠けるところもあるが,それらの不正確さは 読者の皆さんが埋めることができるものと期待しているので,トライして ほしい. なお,例はその中に説明を含んでいるもの,例題は説明を要求している もの,命題はそこで示される一般的な事柄を述べ説明を要求しているもの, 定理は全般的に示される事柄で説明も要求しているもの,と大まかではあii はじめに るが分別している.また,それらにつけられている数字は章,節,その中 の順序としている.参考になれば幸いである. 最後に,本書の執筆に際し,その計画を推進してくださった仏教大学教 育学部 黒田恭史氏,その労をとってくださった仏教大学通信教育部教材課 野口恒雄氏とスタッフの方々,出版の機会を与えていただいた共立出版㈱ 取締役 寿日出男氏ならびに直接担当していただいた赤城圭氏に厚くお礼申 し上げる.