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はじめに(pdf)

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Academic year: 2021

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はじめに

地球上の生物はみな一定の期間生き続け,その間に自分たちにとって都合の 良い環境を作り上げようとする.また,子孫を残すことで自分たちの生命活動 を永遠に続けようとする.生物はそれを可能にするために長い期間をかけて巧 妙なシステムを作り上げてきた.生命活動を続けるためには呼吸や代謝,情報 伝達,構造・形態形成など細胞の活動を維持することが必要である.そのため にいろいろな種類のタンパク質が遺伝子(DNA)の設計に従って発現され機 能している.一方,タンパク質を中心とした生命活動維持システムはその遺伝 子に暗号化されて子孫に受け継がれる.環境の大きな変化にも対応できる,よ り良い遺伝子を次世代に残すために,生物は「性のシステム」までをも作り上 げてきている.タンパク質がその場に応じて必要な「はたらき(機能)」が可 能となるのは,それぞれその機能に最適な固有の「形(立体構造)」をもって いるからである.遺伝子(DNA)が遺伝情報を 4 種類の塩基の並びという一 次元の情報として記録しているのに対して,タンパク質はさまざまな個性を もった20 種類のアミノ酸を三次元的に配置させることによって特有の構造を もつ.そして複雑な生命現象を維持するのに必要なさまざまな機能を有するこ とが可能となっている.構造生物学とはタンパク質などの生体内で重要なはた らきをする分子の機能と立体構造の関係を解明・理解する学問分野である.

構造生物学の夜明けは,James D. Watson と Francis H. C. Crick による DNA の 二 重 ら せ ん 構 造 の 解 明 と,ほ ぼ 同 時 期 に な さ れ たJohn Kendrew,Max Perutz によるミオグロビンやヘモグロビンの X 線結晶構造の解明である.そ の後,半世紀の間に多くのタンパク質の立体構造が解明されてきた.現在 (2010 年 1 月),タンパク質立体構造データベース(Protein Data Bank:PDB)

には63,000 件以上のタンパク質・核酸などの座標データが登録されている.1 年間の登録件数は2001 年では 3,000 件程度であったものが,2008 年には年間 7,000 件を超えている.これはポストゲノム情報解析の主要テーマとされ,国

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家プロジェクトとして各国で競って立ち上げられた「タンパク質立体構造解析 プロジェクト(構造ゲノム・構造プロテオミクスプロジェクト)」の寄与も大 きい.20 世紀中は抽出・精製・結晶化の容易なタンパク質を中心に構造解析 が進展した.その後,遺伝子組換え技術の進歩により,自然界には微量にしか 得られないタンパク質の調製も容易になった.今後は高等動物に特異的なタン パク質でとくに疾病に関与するものや膜タンパク質などが構造解析の対象にな る.近年の遺伝子工学技術,放射光利用技術,計算機技術およびゲノム解析技 術の進歩は,構造生物学の展開にとくに大きな貢献をしてきた.ゲノム情報科 学と構造生物学の相互の発展は,構造ゲノム科学や構造プロテオミクスなどの 新しい分野を創成しつつある.生命活動の本質を理解する研究にとって,もは や構造生物学はなくてはならない研究分野の1 つとなってきている. 本書の読者は構造生物学をこれから学ぼうとする学生(学部の2,3 年生) をおもな対象としているが,それよりも高学年の学部生や大学院生のためには 「注釈」を設け,より詳しい内容を紹介している.本書では,まず基本的知識 として核酸やタンパク質など生体高分子の構成単位を紹介する.次にα ヘリッ クスやβ シートなど基本的な二次構造単位やそれらの集合したモチーフやド メインなどの概念,さらには二次構造,三次構造,四次構造とよばれる階層構 造を説明する.その後,立体構造構築の基本的原理や構造安定化因子なども簡 単に紹介する.また,タンパク質がいかにして生体内でさまざまな機能を発揮 できるのかを,相互作用や反応性の立場から立体構造の柔軟性に注目してい く.後半では,まず細胞内での生命活動に着目し,そこで繰り広げられる生体 反応にかかわるいくつかのタンパク質について構造と機能の関係を紹介する. その後,細胞間の生命活動にかかわるタンパク質の構造機能相関を紹介する. 各セクションにおいてはタンパク質立体構造の進化における見解を適宜加え た.最後に,構造生物学の研究で利用される方法論について概説する. 本書では複雑な立体構造をできるだけステレオ図で示すことを心がけた.ま たすべての構造図についてPDB で公開されている各タンパク質の座標データ の識別記号(4 文字表記)を示した.本書を通じてより多くの方々が構造生物 学に興味をもち,本研究分野の裾野が広がるならば筆者らの喜びはこれにまさ るものはない. ii■はじめに

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本書を執筆するにあたり,八木達彦先生(静岡大学名誉教授)には,本書全 体を通して非常に多くの有益なご助言とご指摘をいただいた.また,奥山健二 先生(大阪大学教授),豊島 近先生(東京大学教授)および神山 勉先生(名 古屋大学教授)と前田章夫先生(京都大学名誉教授)には,コラーゲン,カル シウムATPase およびバクテリオロドプシンの構造に関してのご助言をいた だいた.兵庫県立大学・大学院生命理学研究科の生体物質構造学!研究室のス タッフおよび学生諸氏には,本書の内容について有益なご意見をいただいた. これらのご助言とご指摘およびご意見をもとに修正を加え,より読みやすい入 門書になったと思う.これらすべてについてここに厚くお礼申し上げる.最後 に,本書の企画にご尽力いただいた,共立出版株式会社の信沢孝一氏と三輪直 美氏にお礼申し上げたい. 2010 年 2 月 樋 口 芳 樹 中 川 敦 史 はじめに ■ iii

参照

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