まえがき
Rは10年以上に渡って無料で利用可能な分析ツールを提供してきた.開発当初は,R は統計分析のためのプログラミング言語とインタラクティブな環境の提供を目的としてい た.今ではこれらを提供することで,RはSPSSやMinitabのような統計分析ツールの みならず,新しい技術を開発していくためのフレキシブルな環境としても機能するように なっており,さらに,Rはパワフルなグラフィック機能も兼ね備えている. 筆者らは空間分析およびジオコンピュテーションの研究に携わっており,この数年で, この分野においてRが広まっていく様を目の当たりにしてきた.また,多くの学術領域 で空間データを扱う機会も増えてきており,Rは一層重要な位置を占めるようになって いる.Rはマウスをクリックしていけば標準的なGISの分析が簡単に実行できるような ものではないが,逆にコマンドラインで操作できるからこそ,幅広い分析ニーズそしてデ ータフォーマットに対応することができる.Rは空間データの操作や分析においてスイ スアーミーナイフ,つまり手軽で万能な道具として機能するのである. 本書の大半はRを用いた空間データの操作および地図の作成に割かれている.地理学 者,そして空間データを扱う他分野の研究者のどちらにも役に立つような教科書を書き たいという動機からこのような内容になっており,本書を読む上ではR,空間分析,GIS のいずれの事前知識も必要としない.本書を読み進め演習を解いていくことで,必要な分 析方法を身に付けられるようになっている.Rはデータ分析を行う上で極めて多様な環 境を提供しており,その機能性はパッケージという形で常に拡張され共有されている.本 書では地理情報の分析手法を数多く紹介しており,同時にその手法をRをどのように実 行するかについて解説している.この解説を通して,Rがどれだけパワフルであるかを 伝えていくことも本書の目的である.筆者らは「手を動かしながら学ぶ」ことが最も大切 だと考えている.こうすることでたくさんの情報を取り入れることができ,何よりも楽し みながら学んでいける.最後に,原稿と演習問題をチェックしてくれたIdris Jega Mohammed,初稿をレビュ ーし有益で建設的なコメントをくれたDavid UnwinとRich Harris,本書で用いたRそ してパッケージの開発者に感謝の意を述べたい.
CB, AJC Rによる地理空間データ解析入門
Chris Brunsdon ・Lex Comber 著・湯谷 啓明・工藤 和奏・市川 太祐訳 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320124394
まえがき iv 本書のデータおよびスクリプトについて 本書の事例で用いたデータは全てRのパッケージ内で提供されているものである.し たがって,パッケージをインストールすれば自動的に利用可能となる.また,ウェブ上の データについてはスクリプトを動かすことで自動的に収集できる.各パッケージのインス トール方法については,パッケージを紹介する際に示している.ウェブサイトから直接読 み込むタイプのデータについては本文の中で方法を解説している. 各章のRスクリプトはhttps://study.sagepub.com/brunsdoncomberで公開されて いる.使用しているパッケージのアップデートに伴う関数の変更時等に,著者が適宜スク リプトをアップデートしているので,こちらも確認してほしい. 本書のスクリプトの多くはGISToolsパッケージが提供する関数に依る.このパッケ ージの詳細についてはhttp://cran.r-project.org/web/packages/GISTools/index. htmlを参照してほしい. Rによる地理空間データ解析入門
Chris Brunsdon ・Lex Comber 著・湯谷 啓明・工藤 和奏・市川 太祐訳 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320124394