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パラインフルエンザウイルス感染症の小児285例の臨床的特徴と重症化リスク因子の検討

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Academic year: 2021

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(1)PIV 感染症の臨床的特徴と重症化因子の検討. 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020. 原著論文 パラインフルエンザウイルス感染症の小児 285 例の 臨床的特徴と重症化リスク因子の検討 三浦拓人 1)、鈴木聡志 1)、大宮卓 2)、渡邊王志 2)、石田智之 1)、渡邊庸平 1)、大沼良一 1)、貴田岡節子 1)、 佐藤光 2)3)、西村秀一 2)、久間木悟 1) 1) 国立病院機構仙台医療センター 小児科 2) 同 ウイルスセンター 3) 現 東北大学大学院医学系研究科感染制御インテリジェンスネットワーク寄附講座 抄録 パラインフルエンザウイルス(PIV)は、小児の主な気道感染症原因ウイルスの一つであり 4 つの型に分 類される。本研究では、2013 年 2 月から 2017 年 7 月に国立病院機構仙台医療センター小児科を受診し、ウ イルス分離で PIV の型が同定された 285 名の小児を対象に臨床的特徴や重症化のリスク因子を検討した。 その結果、3 型が 167 例(58.6%)と最も多く、次いで 4 型 51 例(17.9%)、1 型 36 例(12.6%)、2 型 31 例(10.9%)の順であった。1 型・2 型・4 型は主に秋季に検出されたが、3 型は初夏にピークを認め、年 毎の変動はなかった。罹患時平均年齢は 2 型が最も高く 4.5 歳で、1 型が 2.3 歳、4 型が 2.2 歳と続き、3 型 は最も低く 1.7 歳であった。臨床診断では 1 型・2 型はクループの割合が高かったのに対し、3 型・4 型は下 気道炎合併の割合が高かった。特に 3 型の患者において早産の既往がある児のほうが成熟児よりも酸素投与 を必要とした患者の割合が高く酸素投与日数も有意に長かった。さらに抗菌剤の使用頻度も高かった。以上 より早産の既往が PIV3 型感染における重症化のリスク因子としてあげられた。 キーワード:パラインフルエンザウイルス、PIV、気管支喘息、喘息性気管支炎、早産児 方法. はじめに パラインフルエンザウイルス(PIV)はパラミク. 調査期間は 2013 年 2 月から 2017 年 7 月までの. ソウイルス科に属する多型性のエンベロープを有す. 4 年 6 か月間で、この期間に国立病院機構仙台医療. る 1 本鎖 RNA ウイルスで、抗原性により 1 型から. センター小児科を受診し、発熱、咳嗽などの経過か. 4 型までの 4 つの型に分類される 。. らウイルス検査が必要と判断された患者のうち当院. 1). 併設のウイルスセンターでウイルス分離を行い PIV. 臨床症状は上気道炎から下気道炎まで多彩で、型 によって季節性や症状は異なる 。迅速検査キット. 感染症と診断された 285 症例を対象に後方視的に. がないため臨床像を把握しにくく、その病態に関し. 解析を行った。本研究は国立病院機構仙台医療セン. ては十分に確認されているとは言えない。本研究で. ター倫理員会の承認を得て施行した(倫 26-03)。. は当科で診断された小児の PIV 感染症について各. 検体は保護者の同意を得た上で鼻腔拭い液または鼻. 型の臨床的特徴を比較検討し、さらに重症化のリス. 腔吸引液を採取した。有意差の検定に関して、計測. ク因子について検討を行った。. 値などのデータについては t 検定を、臨床所見の割. 1). 合については Fisher の正確確率検定を用いて行い、 42.

(2) PIV 感染症の臨床的特徴と重症化因子の検討. 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020. p<0.05 を有意差ありとした。. かったのに対し、2 型は逆に高かった。男女比は 32:25 で男児に多い傾向にあったが、有意差は認め. 調査項目は期間中の PIV の検出数の推移、対象 患者の年齢・性差・基礎疾患の有無の割合、症状・. なかった。基礎疾患を 45 例(15.8%)に認めた。. 診断の内訳、入院患者の割合、入院日数、治療内容. その中で早産の既往が 31 例(11%)と最も多かっ. とし、それぞれの項目に関して 1 ~ 4 型で比較検. たが、1 ~4型の間で有意差は認められなかった。 ウイルスの重複感染者は 24 例(8%)に認められ. 討を行った。. た。検出されたウイルスはサイトメガロウイルスが 結果. 12 例 と 最 も 多 く、 次 い で ア デ ノ ウ イ ル ス 7 例、. 1.症例. RS ウイルス(RSV)4 例、エンテロウイルス 1 例. 対象は PIV の型が同定された 285 例で、3 型が. であった。 2.症状・診断・治療. 167 例(58.6 %) と 最 も 多 く、 次 い で 4 型 51 例. 各型の臨床症状及び診断名を表 2 に示した。発. (17.9%) 、1 型 36 例(12.6%) 、2 型 31 例(10.9%) の順となった。図 1 に調査期間中の月別 PIV の検. 熱・咳嗽が全ての型において 70%以上の患者に認. 出数の推移を示した。1 型・2 型・4 型は秋季に多. められた。また喘鳴を呈した症例は 3 型と 4 型の. く検出されたが、3 型は他の型より早い初夏にピー. 半数以上に認められ、1 型・2 型に比べ有意に割合. クを認めた。各型で年ごとの月別検出数に有意な変. が高かった。鼻汁に関しては 4 つの型の間で有意. 動は認められなかった。. 差は認められなかった。. 続いて年齢及び性差・基礎疾患の有無を検討した. 臨床診断は 1 型・2 型でクループと診断された割. (表 1)。罹患時の平均年齢は 1 型 2.3 ± 1.4 歳、2. 合が高く、3 型・4 型では気管支炎及び肺炎といっ. 型 4.5 ± 3.6 歳、3 型 1.7 ± 1.2 歳、4 型 2.2 ± 1.7. た下気道炎の診断割合が有意に高かった。. 歳で、3 型は他の型に比べ罹患時年齢が有意に低 表2 PIV感染症の臨床症状・診断・治療. 30. HPIV-1. HPIV-2. HPIV-3. HPIV-4. 臨床症状 発熱 咳嗽 喘鳴 鼻汁 診断 上気道炎 咽頭炎・扁桃炎 クループ 下気道炎 気管支炎 肺炎 気管支喘息 治療 酸素投与 ステロイド全身投与 抗菌薬投与. 25 検 20 出 数 15 ( ). 人 10 5 Jan Mar May Jul Sep Nov Jan Mar May Jul Sep Nov Jan Mar May Jul Sep Nov Jan Mar May Jul Sep Nov. 0. 2013. 2014. 2015. 2016. 図1 各月のPIVの検出数. 図1 各月の PIV の検出数 表1. PIV1(n=36) PIV2(n=31) PIV3(n=167) PIV4(n=51) 97% 97% 31% 56%. 100% 84% 29% 61%. 93% 98% 50%* 80%. 78% 96% 57%* 69%. 39% 19% 19%** 58% 36% 22% 8%. 35% 19% 16%** 48% 29% 19% 10%. 14% 11% 3% 84%*** 45% 39% 17%. 20% 18% 2% 73%*** 40% 33% 26%. 6% 22% 67%. 10% 26% 62%. 27%**** 22% 61%. 31%**** 21% 55%. *p<0.01 **p<0.01 ***p<0.01 ****p<0.01. 表2 PIV 感染症の臨床症状・診断・治療. PIV感染の患者情報. PIV1(n=36) PIV2(n=31) PIV3(n=167) PIV4(n=51) 年齢(歳)# 性差(男性割合) 入院患者数 基礎疾患 早産の既往 心奇形・弁膜症 神経系疾患 染色体異常. 2.3±1.4 18(50%) 21(58%). 4.5±3.6 22(70%) 23(74%). 1.7±1.2 88(53%) 115(69%). 2.2±1.7 32(63%) 33(65%). 2(5.6%) 1(2.8%) 0 0 1(2.8%). 4(13%) 3(9.7%) 1(3.2%) 0 0. 33(20%) 23(13.8%) 5(3.0%) 3(1.8%) 5(3.0%). 8(16%) 4(7.8%) 1(2.0%) 1(2.0%) 2(3.9%). 表3 PIV 入院症例の治療方法 投与基準 酸素投与. SpO2<95%(室内気). ステロイド全身投与 多呼吸、陥没呼吸、高度喘鳴 等の所見を認める SpO2≦91%(室内気) 喘息の既往歴・家族歴あり CRP>2.0 mg/dl 抗菌薬投与 グラム染色で菌体を確認. #平均±SD.*p<0.01 **p<0.01. 表1 PIV 感染の患者情報. 表3 PIV 入院症例の治療方法. 43.

(3) 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020. PIV 感染症の臨床的特徴と重症化因子の検討. 3.治療. に多く他の型は秋季に多いという結果が得られた。. 治療は表 3 に示すように症状等に応じて酸素投. これは従来の報告と同様であった 1)、4)。また PIV. 与、ステロイドの全身投与、抗菌薬の投与を行った。. の 1 型や 2 型は 2 年毎に流行すると報告されてい. そのうち酸素投与を行った割合は 3 型と 4 型が他. るが 1)、4)、今回の研究ではいずれの型も年毎の変. の 2 つの型よりも有意に高かった。ステロイド投. 動は見られなかった。発症年齢に関しては 2 型が. 与及び抗菌薬の投与割合は 4 つの型の間で有意差. 他の型と比較し高い年齢であったのに対し、3 型は. を認めなかった(表 2) 。. 逆に低い年齢で発症した。診断については PIV1. 4.重症化リスク因子. 型・2 型ではクループと診断される割合が 3 型・4. PIV 感染症で最も割合が高く低年齢で発症する 3. 型より有意に高かった。一方で 3 型・4 型は下気道. 型 の 患 者 167 人 に 焦 点 を 当 て、RSV や ヒ ト メ タ. に感染し肺炎や気管支炎の頻度が高かった。これら. ニューモウイルス(hMPV)でも重症化因子として. の結果は従来の報告と一致していた 1)、4-6)。 RSV による呼吸器感染症に罹患し入院した早産. あげられている早産の既往に着目し検討を行った。 38 週未満で出生した早産児 23 例と 38 週以降に出. 児の割合は、正期産児の割合と同程度であったのに. 生した非早産児 144 例について治療内容の比較を. 対し、PIV 感染では早産児のほうが入院する割合. 行った(表 4)。その結果、早産児では酸素投与を. が有意に高かったと報告された 9)。このことから母. 受けた患者の割合が高く、酸素投与日数も有意に長. 体からの移行抗体の絶対量が少ない早産児は正期産. かった。さらに抗菌剤の使用頻度も高かった。他の. 児に比べて PIV 感染が重症化しやすいことが示唆. 型では 3 型と比較し症例が少数であり、早産児と. され、PIV 感染症は RSV 感染症よりも母体からの. 非早産児間で治療内容に有意差は認めなかった。. 移行抗体が重要な役割を果たしている可能性が考え. 表4 PIV3型における早産児と非早産児の入院症例の比較. られた。さらに新生児を扱う保育園で PIV3 型が流. 入院患者数 入院日数 発熱期間日数 酸素投与患者数 投与日数 ステロイド投与患者数 投与日数 抗菌薬投与患者数. 早産児(n=23) 16(70%) 6.9* (4-15)** 3.9* (1-7)** 14(61%) 2.4* (0-12)** 8(35%) 2.5* (0-7)** 19(83%). 非早産児(n=144) 99(69%) 6.1* (3-31)** 4.4* (1-11)** 31(22%) 1.0* (0-9)** 28(19%) 1.1* (0-12)** 84(58%). 行した際に、早産児では生まれてから日数が経つほ. p値 1.000 0.290 0.198 <0.001 0.023 0.107 0.060 0.036. ど罹患しやすくなると報告されている 10)。これら のことから母体からの移行抗体が PIV3 型感染症の 発症抑制に重要な役割を果たしていることが示唆さ れた。さらに早産児は成熟児と比較し気管虚脱や closing capacity の増加及び低酸素症を伴う換気量. *平均値 **最小-最大. の低下をきたしやすく下気道感染が重症化しやすい. 表4 PIV3型における早産児と非早産児の入院症例の比較. ことが知られている。以上のことを踏まえ、今回 我々は RSV やヒトメタニューモウイルス(hMPV). 考察. でも重症化因子としてあげられている早産の既往. PIV は幼少児や免疫不全患者における下気道感. に着目し解析を行った 8)。その結果、PIV3 型にお. 染の起因ウイルスとしては RSV に次いで多いとさ. いて早産児は非早産児と比較して酸素投与を行った. れている 。臨床像も RSV に類似しているが、感. 割合が高く、酸素投与日数も有意に長かった。さら. 染による死亡率は RSV よりも PIV が有意に高いと. に抗菌剤の使用頻度も高かった。今後早産の既往を. 1). する報告もあり 、その疫学を詳細に把握すること. 有する患者を含む乳幼児の PIV3 型感染による重症. は重要である。また、現在パリビズマブが RSV 感. 化を予防するために PIV3 型に対する抗体製剤やワ. 染症の高リスク群に投与されるようになり RSV 感. クチンの開発が望まれる。. 2). 染の重症化がある程度予防できるようになってきた. 本研究における limitation としては、単一施設. ため 、今後は RSV 感染症より PIV 感染症が問題. の後方視的研究である事、当院は二次医療機関であ. となってくることが予測される。. り一次医療機関からの紹介患者が多く含まれている. 3). PIV 各型の季節変動に関しては、3 型のみが初夏. 事、診察医が同一でない事等によってバイアスがか 44.

(4) 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020. PIV 感染症の臨床的特徴と重症化因子の検討. 5 ) Frost HM, Robinson CC, Dominguez SR.. かっている可能性がある点などであり、今後は以上. Epidemiology and clinical presentation of. の点を考慮した研究が望まれる。. parainfluenza type 4 in children: a 3-year comparative study to parainfluenza types. まとめ. 1-3. J Infect Dis 2014;209:695-702. 当院でウイルス分離を行い PIV の型が同定され た小児 285 名を解析したところ、PIV 感染症各型. 6 ) Xiao NG, Duan ZJ, Xie ZP, et al. Human. の季節変動は従来の報告と同様であったが、年ごと. parainfluenza virus types 1-4 in hospitalized. の変動はみられなかった。さらに PIV1 型・2 型は. children with acute lower respiratory. クループと診断される割合が高く、3 型・4 型は肺. i n f e c t i o n s i n C h i n a . J M e d Vi r o l. 炎や気管支炎の頻度が高かった。また、PIV3 型感. 2016;88:2085-2091 7 ) Klein MI, Coviello S, Bauer G, et al. The. 染症の重症化リスク因子は早産の既往であった。. impact of infection with human 文献. metapneumovirus and other respiratory. 1 ) Henrickson KJ. Parainfluenza viruses. Clin. viruses in young infants and children at high risk for severe pulmonary disease. J Infect. Microbiol Rev 2003;16:242-264. Dis 2006;193:1544-1551. 2 ) Pecchini R, Berezin EN, Souza MC, et al. Parainfluenza virus as a cause of acute. 8 ) 堅田有宇、加賀元宗、鈴木菜絵子、他:迅速診. respiratory infection in hospitalized children.. 断キットにより診断したヒトメタニューモウイ. Braz J Infect Dis 2015;19:358-362. ルス感染症入院例の重症化リスク因子の検討 小児感染免疫 2014;26:459-464. 3 ) American Academy of Pediatrics Committee on Infectious Diseases; American Academy of. 9 ) García-Garcia ML, González-Carrasco E,. Pediatrics Bronchiolitis Guidelines. Quevedo S, et al. Clinical and Virological. Committee. Updated guidance for. Characteristics of Early and Moderate. palivizumab prophylaxis among infants and. Preterm Infants Readmitted With Viral. young children at increased risk of. Respiratory Infections. Pediatr Infect Dis J. hospitalization for respiratory syncytial virus. 2015;34:693-699 10)Moisiuk SE, Robson D, Klass L, et al.. infection. Pediatrics 2014;134:415-420 4 ) DeGroote NP, Haynes AK, Taylor C, et al.. Outbreak of parainfluenza virus type 3 in an. Human parainfluenza virus circulation,. intermediate care neonatal nursery. Pediatr. United States, 2011-2019. J Clin Virol. Infect Dis J 1998;17:49-53. 2020;124:104261. 45.

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