超伝導技術に基づく高性能マイクロ波フィルタ
——
超伝導エレクト
ロニクスの進展を顧みて
——
大嶋
重利
†a)High Performance Microwave Filters Based on Superconducting Technology
——Looking at the Progress of Superconducting Electronics——
Shigetoshi OHSHIMA
†a)あらまし 超伝導現象が発見され105 年が経ち,やっと超伝導エレクトロニクスデバイスが世に出るように なってきた.その代表的なデバイスとして,高性能な超伝導マイクロ波フィルタを取り上げ,その特徴,開発過 程や実用化プロセスについて述べる.携帯電話基地局に設置された超伝導バンドパスフィルタシステム,市中電 波望遠鏡の雑音除去バンドパスフィルタや気象レーダ用狭帯域バンドパスフィルタについて,なぜ実用化された のかの観点から記述する.また,超伝導デバイスで特に期待されている素子,SQUID と SFQ 素子についても, その特徴,利点と現状を記載する. キーワード 超伝導マイクロ波デバイス,超伝導バンドパスフィルタ,SQUID,SFQ
1.
ま え が き
超伝導現象は1911年オランダ・ライデン大学の H.K. Onnes(オネス)により発見された[1], [2].こ の大発見は,当時の低温物理で問題になっていた「絶 対零度では金属の電気抵抗はゼロになるのか,それと も無限大になるのか」という論争に終止符を打ちたい というオネスの熱意により発見された.ライデン大学 のH.A. Lorentz教授は「ゼロ」の支持者であり,そ れを裏付けるために,オネスは極低温における金属の 電気抵抗を測定することにした.1907年に彼自身が液 化に成功した液体ヘリウム(沸点4.2 K)を用い,4 K 以下の極低温における高純度金属の電気抵抗を測定す ることにした.最初は金や白金のような貴金属の電気 抵抗を測定していたが,それらは残留抵抗が大きく, 「ゼロ」に推移する気配が全く見られなかった.それ は金属中に含まれる不純物の影響であるというDrude の電子理論に基づき,より高純度貴金属の電気抵抗を 測定することにしたが,それでも残留抵抗はゼロには †山形大学大学院理工学研究科,米沢市Graduate School of Science and Engineering, Yamagata Uni-versity, 4–3–16 Jonan, Yonezawa-shi, 992–8510 Japan a) E-mail: [email protected] ならなかった.当時最も高純度化が可能な金属は水銀 であり,それを用い実験を進めることにした.水銀を 4.2 K付近まで冷却すると,突然電気抵抗が測定でき なくなる程小さくなった.これが,超伝導の発見であ る.彼は,実験のミスを気遣いながら,何度も実験を 繰り返し,水銀特有の現象であると確信し,その現象 を「Superconductivity」と命名した. 超伝導現象はオネスにより「偶然に発見された」と よく言われるが,偶然の発見ではないと私は思ってい る.ヘリウムの液化を成功させ,極低温の世界の物理 を解明するために水銀の電気抵抗を4 K以下まで測定 するプロセスを経て発見したのであり,そこに「必然 性」を感じる.「偶然な大発見はない」と私は信じて いる. 超伝導現象が発見され105年が経ち,超伝導現象を 利用した種々の実用機器が世に出るようになってきた. その応用には次の三つの特徴を利用している.1直 流電流では完全にゼロ抵抗となる(R = 0).2超伝 導体内部には磁束が侵入しない(Meissner(マイス ナー)効果)[3],ただし厳密には第1種超伝導体に限 る.3 薄い絶縁層を挟んだ超伝導体間には電圧ゼロで も大きなトンネル電流が流れる(Josephson(ジョセ フソン)効果[4]).1の現象を利用して,強磁場マグ
実用化について述べる.新しいデバイスが実用化され るのはその性能とそのときの社会のニーズがマッチす ることが重要である.超伝導フィルタもまさにその状 況下で実用化された.また,超伝導エレクトロニクス の中で有望な実用化素子である,SQUID, SFQにつ いても概説し,超伝導エレクトロニクスデバイスの魅 力を紹介したい.
2.
超伝導技術に基づく高性能なバンドパ
スフィルタの開発
高温酸化物超伝導体が発見されたときに,最も実用 化が期待されたのはバンドパスフィルタである.では, なぜ,期待され,実用化されたのであろうか.それ は,超伝導フィルタの高性能性と社会のニーズがマッ チしていたからである.超伝導体は,高周波電流でも 極めて小さい損失をもつという特徴がある.図1に 1 GHzの電流に対する超伝導体(Nb, NbN, YBCO) と銅(Cu)の電気抵抗の温度特性を示す.マイクロ波 電流は導体の表面にしか流れないので,通常の電気抵 図 1 超伝導薄膜及び銅薄膜のマイクロ波表面抵抗の温度 特性Fig. 1 Temperature dependence of Rs of YBCO, NbN, Nb and Cu films. もの共振器を直列に接続し,通過特性を制御する.し たがって,共振器の段数を増やせば急しゅんなスカー ト特性を示すようになるが,挿入損失も増える.金属 製のフィルタでは共振器を増やすと挿入損失が増え, バンド端が丸くなる.15段以上になると,もはやバン ドパスフィルタとは言えない周波数特性になる.しか し,超伝導体でフィルタを作製すると,段数を15以 上に増やしても,挿入損失は0.1 dB以下であり且つ, バンド端の特性が極めてシャープのままとなる.この 理想的なバンドパスフィルタの実現と,1990年代の 無線通信の問題が,超伝導バンドパスフィルタの実用 化を生んだ[10].米国では1970年代に800 MHz帯を 用いてA,B社による携帯電話サービスが開始された. 1990年代になると急速に携帯電話が普及し,トラヒッ ク密度が急増した.その結果,2業社のユーザ間でし ばしば混信や遮断が起きるようになった.その原因は 図3で示されるように,A社,B社の使用周波数帯が 複雑に入り組んでおり,これを分離できる通常のバン ドパスフィルタが存在していなかった.ところが,高 図 2 超伝導及び金属で作製したバンドパスフィルタの段 数と周波数特性の模式図
Fig. 2 Schematic drawing of bandpass filter charac-teristics made by superconductor and normal metal.
図 3 米国の A,B 社の無線通信の周波数割り当てとそれ をカバーする金属及び超伝導フィルタの周波数特性 Fig. 3 Frequency characteristics of A and B com-panies in the USA, and superconducting and metal filters covering it.
性能な2帯域通過超伝導バンドパスフィルタが提案さ れると,この問題は見事に解決され,携帯電話の通話 品質が各段に向上した.その結果,必然的に携帯電話 の基地局に超伝導バンドパスフィルタが設置されるこ とになった.米国では,一気に3000基を超える基地 局に,超伝導バンドパスフィルタが設置された. 第2世代の移動体通信分野で超伝導バンドパスフィ ルタが実用化されたことに力を得て,次の第3世代の 移動体通信,IMT-2000用超伝導バンドパスフィルタ の開発が世界中で検討された.日本でも,多くの企業, 大学等でその開発にしのぎを削った.特に際立った成 果を出したのは,基盤技術研究促進センターの出資を 受けて,(株)デンソー,アルプス電気(株),(株)移動 体システム研究所(ただし1年で撤退)が共同で設立 した企業移動体通信先端研究所((株)AMTEL)だっ た.AMTELの成果は後にデンソーとアルプス電気 の共同出資により設立されたクライオデバイス(株) に引き継がれた.同社は,2000年に32段J型共振器 のバンドパスフィルタを試作し,世界をアッと驚かせ た[11].図4にそのフィルタの外観写真とバンドパス フィルタ特性を示す.帯域外遮断特性が90 dB以下, 挿入損失0.5 dB以下,スカート特性が30 dB/MHzと いう,極めて優れたフィルタ特性を示している.この 特性は現在でも破られていない優れた性能である. しかし,このような優れた超伝導バンドパスフィル タが試作されても,IMT-2000に超伝導フィルタが採 図 4 32段 J 型共振器フィルタの外観写真 (a) とその周 波数特性 (b)(元アムテルの上野祥樹氏より提供) Fig. 4 Photo of 32-stage J-type resonator filter (a) and its frequency characteristics (b) (provided by Dr. Yoshiki Ueno of former AMTEL).
用されることは無かった.それは,2000年以降にな ると,新たなインフラ整備に強い制限が打ち出され, 高価な超伝導フィルタを設置する余力がなくなってい たからである.実用化には,性能だけではなく社会的 なニーズとコストも重要であるという例ではないだろ うか. 超伝導フィルタは,極めて優れた周波数特性を示す ので,何とか実用化したいという願いが強く,色々な 分野で実用化が検討された.代表的なものは,1 市中 電波望遠鏡の雑音除去フィルタ2気象レーダ用狭帯 域バンドパスフィルタであり,以下にそのデバイスの 実用化の歩みを概説する. (1) 市中電波望遠鏡の雑音除去フィルタ 電波天文台では宇宙から来る微弱な電波を高感度 で受信する必要があり,通常は高い山の頂や砂漠の 中に設置される.しかし,必要に応じて,市中にも 設置しなければならないこともある.鹿島宇宙研究 センターも市中に34 mの電波望遠鏡を設置し,微
図 5 超伝導フィルタを用いたときと用いないときの電波 望遠鏡の出力特性
Fig. 5 Output characteristics of radio telescope when we use the superconducting filter and normal filter. 弱な宇宙電波を受信していた.ところが,2002年に IMT-2000が運用開始され,2.2 GHz帯に大きな雑音 電波が重畳され,微弱な宇宙電波が受信できなくなっ てしまった.そこで,超伝導バンドパスフィルタの優 れた特性を利用して,2.2 GHz帯の雑音電波除去の研 究が開始された.クライオデバイスの後を引き継いだ (株)デンソーにより,そのノイズ除去用超伝導バン ドパスフィルタ(32段J型共振器フィルタ)が開発さ れ,図5で示されるような出力特性を得ることができ た.通常のフィルタでは受信可能なバンド幅が2.25∼ 2.35 (GHz)と狭かったのが,超伝導フィルタを用いる と,2.193∼2.35 (GHz)と広くなり,重要な測定周波 数である2.218 GHzもカバーできるようになった[12]. 残念ながら,(株)デンソーは超伝導フィルタの開発か ら手を引いてしまったので,その後の設置は,(株)東 芝に引き継がれた.2012年に(株)東芝は34 m電波 望遠鏡用に新たな超伝導バンドパスフィルタシステム を開発し,設置した.この超伝導バンドパスフィルタ により,2 GHz帯の市中ノイズ,特に1.48 GHzの携 帯電話の電波を完全に除去し,微弱な宇宙からの電波 を受信できるようになった[13]. (2) 気象レーダ用狭帯域バンドパスフィルタ バンドパスフィルタの挿入損失やスカート特性は使 図 6 バンドパスフィルタの Q 値とフィルタ特性の関係 (シミュレーション)a:バンド幅 2.5%,b:バンド 幅 0.25%(2 GHz,8 段フィルタを想定) Fig. 6 Relationship between the Q value of the band
pass filter and the filter characteristic (simu-lation) a: Bandwidth of 2.5%, b: Bandwidth of 0.25% (2 GHz, assuming an 8-stage filter).
用する薄膜のRsに依存するが,バンド幅の違いでも 影響を受ける.特に狭帯域のフィルタでは,Rsの違 いにより特性が大きく変化する.図6に,バンド幅 2.5%と0.25%の8段のチェビシェフ型フィルタ(共振 周波数2 GHz)のQ値とフィルタ特性の関係のシミュ レーション結果を示す.超伝導体でフィルタを作製す れば,フィルタのQ値は50,000以上にすることがで きるが,金属でフィルタを作製すれば1,000以下とな る.すなわち,バンド幅が0.25%以下の狭帯域フィル タでは超伝導体フィルタしか実用レベルの性能が得ら れない.この狭帯域フィルタの応用に気象レーダ用バ ンドパスフィルタが選ばれた.急増する無線LANに 対応すべく,総務省は既に使用されていた気象用レー ダシステムの周波数帯を狭帯域にし,周波数の有効利 用を検討することにした. 図7にその模式図を示す.従来のフィルタでは,隣 接する信号源を遮断することができないので,信号間 隔を広くしなければならなかったが,超伝導フィルタ を用いると,隣接する信号源を完全にシャットダウン することができ,使用チャンネルの周波数間隔を狭く することができる.気象レーダ用システムでは,レー ダの送信パワーが10 kWを超えるので,通常の超伝 導バンドパスフィルタでは,耐電力がもたない.そこ で,(株)東芝の加屋野等は,空洞共振器フィルタと超 伝導フィルタを組み合わせたハイブリッド型を試作し た.大電力のレーダ用発信電波は空洞共振器を通過し て直接出力側に出るようにし,中心周波数からずれた
図 7 9 GHz帯の気象レーダのチャンネル配置とそのフィ ルタ特性(東芝 加屋野博幸氏提供)
Fig. 7 Channel arrangement of 9 GHz band weather radar and its filter characteristics (provided by Dr. Hiroyuki Kayano, Toshiba Corpora-tion). 弱い受信電波は超伝導フィルタを通過させるようにし た[14].これにより,100 kWを超える気象レーダ用 狭帯域のバンドパスフィルタシステムの開発に成功し た.このシステムは既に東京に設置され,ゲリラ豪雨 の正確な位置決定などに役に立っている.
3.
既存のデバイスを凌駕できる超伝導デ
バイス
3. 1 SQUIDSQUIDとはSuperconducting QUantum Interfer-ence Deviceの略称で,日本語では超伝導量子干渉計 と呼ばれる.SQUIDの原理は1962年にジョセフソ ンにより提案された「弱く結合した二つの超伝導体間 に流れるトンネル電流」を基本としている.図8に SQUIDの模式図を示すが,二つのジョセフソン接合 を含んだ閉超伝導ループに極めて弱い磁場,磁束量子 (φ0 = 2.07 × 10−15wb)程度の磁場が印加されると, ジョセフソン接合に流れる電流がφ0の周期で変調さ れる.その結果,SQUIDで10−12T以下の極めて弱 い磁場を検出できる.図9に,世の中に存在する主な 磁場発生源とその大きさ,及びそれを検出できる磁気 センサを示す.10−12T以下の極めて小さい生体磁場 を検出できるのは,今のところSQUIDセンサだけで あり,超伝導デバイスの優位性を示す一つの例である. このような優位性をもつSQUID素子は,既に医療分 野で実用化されている[15].実際のSQUIDシステム の写真を図10に示す.金沢工業大学で進められてい る脳磁波測定システムの写真である. 図 8 SQUIDの概念図 Fig. 8 Conceptual diagram of SQUID.
図 9 環境・生体磁場とそれを検出する磁気センサ Fig. 9 Magnetic sensor for detection of environment
and biomagnetic field.
図 10 SQUID脳波測定システムの写真(金沢工大足立義 昭教授提供)
Fig. 10 Photograph of SQUID EEG (provided by Prof. Yoshiaki Adachi, Kanazawa Institute of Technology).
られた.IBMは接合作製の容易さから,鉛合金ジョセ フソン接合を主として研究していたが,材料の経時変 化,接合の臨界電流の不均一性,集積回路の困難性等 により,1983年にジョセフソン論理回路の開発を断 念した.これが世に言う「IBMショック」である.そ のショックを引きずりながらも,日本は独自な研究を 進め,Nb系接合のジョセフソン素子を用いたマイク ロプロセッサの試作に成功した.ただし,それまでの ジョセフソン論理回路は,電圧モードを利用した「1」 「0」認知[ラッチ型回路]であり,それを動作させるク ロック周波数に上限(∼5 GHz)があった.したがっ て,急成長した高速半導体論理回路との優位性が見い だせなくなり,日本においても電圧モード型のジョセ フソン論理回路の開発は終止符となった. ジョセフソンコンピュータはもはや実用化の芽はな いと考えられつつあったとき,電圧モードに変わる新 しい論理回路,「位相制御型論理回路」が提案され,再 び脚光を浴びることになった.その基本的な概念は 1976年に東北大学の中島らにより提案された[16].発 表当時はそれ程注目されなかったが,その後,1985 年モスクワ大学にいたK.K. Likharev(リカレフ)教 授が,独自な位相モードジョセフソン論理回路を提案 し,その高速性と低消費電力をアピールし,世界的に 注目されるようになった[17].この回路を単一磁束量
子(Single Flux Quantum, SFQ)回路,または高速 単一磁束量子(Rapid Single Flux Quantum, RSFQ)
回路と呼ぶ.リカレフはその後米国に移り,精力的に 新たなジョセフソン論理回路を提案し,ジョセフソン コンピュータの有利性を力説し,大型プロジェクトの 開始につなげた.しかし,残念ながらジョセフソンコ ンピュータは未だ実現していない.単純なSFQ回路 モデルを図11に示す[18].電圧パルスを超伝導回路 に印加すると,超伝導ループ内に磁束量子が存在でき るようになる.SFQ回路は超伝導ループの中に磁束量 子が存在するかどうかで「1」「0」を認知するもので あり,電圧モード論理回路と比較し,1桁以上の高速 図 11 SFQ素子の基本概念図(横浜国大吉川信行教授 提供)
Fig. 11 Basic conceptual diagram of SFQ element (provided by Professor Nobuyuki Yoshikawa, Yokohama National Univ.).
図 12 SFQ回路のクロックサイクルと消費エネルギーの 関係(名古屋大藤巻朗教授提供)
Fig. 12 Relationship between clock cycle and energy consumption of SFQ circuit (provided by Professor Akira Fujimaki of Nagoya Univ.).
性と3桁以上の低消費電力性が実現できる.したがっ て,低消費電力のスーパーコンピュータ用素子として 再び認識されるようになった. SFQ素子の集積回路を作製し,その優位性を実証 しようとしているのは,米国よりも日本が先んじてい る.名古屋大の藤巻教授や横浜国立大の吉川教授ら のグループは,SFQマイクロプロセッサの優位性を 立証するために,消費電力や応答速度を検討してい る[19], [20].図12にクロック周波数と1素子の消費 エネルギーの関係を示す.1素子あたりの消費電力が 10−17(J)で,且つクロックサイクルが10−11秒程度 (周波数100 GHz)となるSFQマイクロプロセッサ の可能性を示した.これを現在の半導体素子と比較し た図を図13に示す.SFQ回路は半導体デバイスと比
図 13 種々のデバイスのクロック周波数と集積密度の関 係(名古屋大藤巻朗教授提供)
Fig. 13 Relationship between clock frequency and integration density of various devices (pro-vided by Professor Akira Fujimaki of Nagoya Univ.). 較し,高速性,低消費電力性を有し,次世代の省エネ スーパーコンピュータ用素子として注目され始めたが, クリアすべきハードルは極めて高い.特に,100万素 子を超えるジョセフソン素子の集積化には,微細加工 の新たなブレークスルーが必要であろう.しかし,そ の開発は極めて重要であり,国家プロジェクトとして 産官学で協力すべき時期に来ていると思われる.目的 を絞ったプロジェクトが開始されることを願っている. 事実,米国では,2016年度から大型SFQプロジェク トが新たに始まっている.
4.
む す び
マイクロ波超伝導フィルタ,SFQ回路やSQUID素 子など極めて特徴のある,有利性を含んだ超伝導デバ イスが実用化され,あるいは実用化されつつある.私 も長年大学で,超伝導マイクロ波エレクトロニクスの 研究をしてきたが,このような状況になってきたこと に喜びを感じている.しかし,大学での研究は常にオ リジナルな研究が求められ,その研究遂行のために予 算獲得に奔走しなければならない状況になってきた. 決して楽な環境ではない.「大学の魅力が失せてきた」 「自由な研究ができない」などの言葉もよく聞かれる が,それでも今の研究環境は「そんなに悪くない」と 思っている.大学間交流が盛んになり,共同プロジェ クトの推進も容易になりつつある.また,全国共同利 用施設も充実し,高価な評価・分析システムの借用が 可能になってきた.「叩けよ,さらば開かれん」この精 神で若き大学人は頑張ってもらいたい. 謝辞 本原稿をまとめるに当たり,元クライオデバ イス(株)の上野祥樹氏,(株)東芝の加屋野博幸氏, 名古屋大学の藤巻朗教授,横浜国立大学の吉川信行教 授,九州大学の円福敬二教授,金沢工科大学の足立善 昭教授に貴重な情報や資料を提供していただきました. ここに記して感謝を致します. 文 献[1] K. Onnes, “The superconductivity of mercury,” Comm. Phys. Univ. Leiden, Nov. 122 and 124, 1911. [2] D. van Delft and P. Kes, “The discovery of super-conductivity,” Phys. Today, vol.63, pp.38–43, Sept. 2010.
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