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奥日光地域の大型土壌動物群集調査におけるサンプルサイズと抽出時間の検討

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Academic year: 2021

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1. はじめに  自然の森林生態系における物質やエネルギーの循環 に土壌動物の働きが強く関与していることは、これま での多くの研究者によって報告されている。近年は、 農耕地における土壌動物の働きが着目されるようにな っている。藤川 (1979) や中村 (1979,1987) は無農薬・ 無施肥で行われる自然農耕地においても、育土に果た す土壌動物の役割が大きいことを報告している。  藤川 (1976) や中村 (1979) の研究で扱われているサ サラダニ類、トビムシ類およびミミズ類などの動物群 では、まずその生息地の原点ある森林生態系での群集 構造が十分研究された後に、それらの動物群を用いて 農耕地の育土に応用している。つまり、森林生態系に おける群集構造の解明が、他の環境での群集構造の基 礎になっている。  そこで、本研究では基礎的研究として限られた地域 内において多様な植生環境がみられる栃木県の奥日光 地域を調査地として選定し、この地域での代表的な森 林環境下での大型土壌動物群集に関する研究を行うた めの基礎調査として必要最小サンプルサイズとツルグ レン装置の抽出時間の検討を検討を行ったので報告す る。 2. 調査地の概要 2.1 調査地の土壌構造  奥日光地域の基本的な土壌構造は、青木(1962)に より詳しく述べられている。その報告によると、母 岩の上部に厚さ約 50cm の母岩の風化した C 層があ り、さらにその上部に厚さ約 20cm の第 1 次 B 層と 約 60cm に堆積した第 1 次 A 層が発達している。第 1 次 A 層は有機物と無機物が混合し、腐植を多く含む 暗色層である。さらにこの第 1 次 A 層の上に、男体 山の噴火が起こり浮石が積もり第 2 次 B 層を形成し、 植物の生育により第 2 次 A 層が生じている。このよ うな土壌の構造が基礎となり、上部に腐植層 (H 層 )、 腐糞層 (F 層 )、落葉落枝層 (L 層 ) が堆積しており、 この 3 層を Ao 層と呼んでいる。 2.2  調査地の気象  調査地域の気象については未観測であるが、気象庁 日光測候所 ( 北緯 36 度 44.3 分、東経 139 度 30.0 分、 標高 1291.9m)の 1981 ~ 2010 年間の観測データによ ると、奥日光の年平均気温は 6.9℃、月平均の最高気 温は 22.6℃(8 月)、月平均最低気温は− 8.1℃(1,2 月)、 年降水量は 2,176.3mm および最大積雪深は 36cm(2 月) であった。 2.3 調査地の選定  1987 年 4 月 24 ~ 26 日に、ツルグレン装置の抽出 時間およびサンプルサイズ検討のため、弓張峠と湯滝 西側の 2 カ所で各 10 サンプルの土壌試料採取を行っ た。選定条件は、ほぼ同一標高帯にあり、植生の攪乱 が少なく安定し、奥日光において代表的な植物群落か らなる地域とした(図 1)。 2.4 調査値の植生  調査地点に選定した植生は下記の通りである。選定 にあたっては、舘脇 ・ 他 (1965) および長谷川 (1982) を参考にした。 2.4.1 N-1 日光市湯滝西側 ( 写真 1)

 高木層はコメツガ (Tsuga diversifolia) やブナ (Fagus crenata)からなる混交林で、林床はミヤコザサ (Sasa

奥日光地域の大型土壌動物群集調査におけるサンプルサイズと抽出時間の検討

Study of sample size and extraction time about soil macrofauna

in Oku-Nikko Area, Central Japan

敦見 和徳1・小金澤正昭

Kazunori Tsurumi, Masaaki Koganezawa

東京農工大学連合農学研究科

United Graduate School of Agricultural Science, Tokyo University of Agriculture and Technology, 183-8538, Japan

宇都宮大学農学部附属演習林

University Forest, Faculty of Agriculture, Utsunomiya University, 329-2441, Japan

165〜168 宇  大  演  報

第 48 号(2012)資 料 No.48(2012)Research materials dataBull.Utsunomiya Univ.For.

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166 nipponica)の自然林である。林内は薄暗い。 2.4.2 N-2 日光市弓張峠 ( 写真 2)  高木層はミズナラ (Quercus crispula) の純林であり、 林床はクマイザサ (Sasa senanensis) の自然林である。 林内は薄暗く土壌表面はササが密生しているため直射 日光はほとんど差し込まない。 3 調査方法  大型土壌動物群集を解明するため、まず一定地域に おける定量的な調査が必要になる。しかし、これまで に定量調査に必要な最小サンプルサイズとツルグレン 装置の抽出時間の検討はほとんど成されていない。そ こで精度の高い密度推定をするために、本調査に先立 ち検討を行った。 3.1 土壌試料のサンプリングとツルグレン装置によ る大型土壌動物抽出時間の検討 3.1.1 土壌試料サンプリング  サンプリングは、大型土壌動物の定量調査で一般に 行われている、25cm × 25cm の方形枠を用いた「枠 取り法」で行なった(写真 3、 4)。Ao 層の土壌を採 取し、通気性のある紙袋に入れ持ち帰り 24 時間以内 にツルグレン装置による抽出を行った。 3.1.2 ツルグレン装置による抽出時間  ツルグレン装置は、研究者により対象とする動物群 に合ったものが作成され、使用されているのが現状で ある ( 新海 1983)。そのために各研究者が効率よく抽 出するための抽出時間を、使用するツルグレン装置で検討する必要が生じてくる。そこで筆者も、本研究 写真1 湯滝西側の調査地(1986 年) 写真2 弓張峠の調査地(1986 年) 写真3 サンプリング① 写真5 獨協医科大学ツルグレン装置① 写真4 サンプリング② 写真6 獨協医科大学ツルグレン装置② 宇都宮大学演習林報告第48号 2012年3月

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167 で使用した獨協医科大学生物学教室のツルグレン装置 (写真 5、6、表 1)と宇都宮大学ツルグレン装置(図 2, 写真 7、表 1)を用いて抽出時間の検討を湯滝西側の 10 サンプルを用いて行った。一定時間の間隔で、土 壌動物が抽出されるサンプルビンを交換し抽出時間ご とにソーティングを行い抽出時間の検討を行った(表 2)。各時間に抽出された大型土壌動物は、双眼実体顕 微鏡(2 ~ 30 倍)を用いて同定と個体数の計数を行 った。抽出対象とした動物群は、ミミズ類、ムカデ類、 ヤスデ類、コムカデ類、ヤスデモドキ類、真正クモ類、 カニムシ類、等脚類、双翅類(幼虫)、甲虫類(幼虫、 成虫)、鱗翅類(幼虫)、膜翅類(アリ類)、カマアシ ムシ類、アザミウマ類、陸貝類の 16 グループである。 3.2 必要最小サンプルサイズの検討  Takeda(1973)および武田(1975)は、土壌動物は 野外において一様に分布することなく、パッチ状に 集中分布することを報告している。このことは、集 中度の強さにより、多くのサンプルを採らなければ ならないことを意味する(Tamura1987,Tamura and Kojima1990)。そこで、大型土壌動物の群集構造解明 にあたり、本調査で使用する 25cm × 25cm の方形枠 で何個のサンプルを採取すれば、統計的に信頼性の高 い密度推定を得ることができるかを検討する必要があ る。  本調査では、Cochran(1953)に基づいて土壌性の トビムシ類の調査に適用した武田(1975)の手法を参 考にして、サンプルサイズの算出を行った。このモデ ルは、 ①一定数(nʼ)以内の抽出誤差で個体数を推定 ②平均密度の一定比率内の抽出誤差で個体数の推定 をする場合の 2 つの方法がある。  本調査では、島田 (1986) に従い②の方法に準拠した。  一定比率 P= nʼ/x ・・・・・・・・・・(1)で推定す る場合には、        n ≧(t s / nʼ)2 に (1) 式を代入して        n ≧(t s / Px)2 ・・・・・・・・・・(2) このとき、P は許容誤差で 40%許容誤差として P=0.4 とし、sは標本分散、t の値は信頼度 70%で t = 1.119 とした。 4 結果と考察 4.1 ツルグレン装置による大型土壌動物の抽出時間  時間経過と累積個体数(%)の結果は図 3、図 4 に 示す通りであった。  結果より、大型土壌動物の抽出時間は、獨協医科大 学のツルグレン装置では 75 時間、 写真7 宇都宮大学ツルグレン装置② 図2 宇都宮大学ツルグレン装置① 奥日光地域の大型土壌動物群集調査におけるサンプルサイズと抽出時間の検討 表1 ツルグレン装置の仕様 表2 サンプルビンの交換時間

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168 宇都宮大学ツルグレン装置では 150 時間とした。 4.2 必要最小サンプルサイズ  弓張峠と湯滝西側における、必要最小サンプルサイ ズの算出を行った結果は、40%許容誤差・70%信頼度 で弓張峠が 1.16 サンプル、そして湯滝西側が 3.12 サ ンプルとなり、4サンプルを採ればよいことが判明し た(表 3)。島田(1986)を参考に、さらにツルグレ ン装置の性能や調査地点間の相違を考慮して、湯滝西 側のサンプルサイズの約2倍強の8個をサンプルサイ ズとした。 5  おわりに  本研究を行うにあたり、サンプリングの方法論およ び土壌動物全般についてご指導いただいた茨城大学名 誉教授田村浩志先生、土壌動物全般のご指導とツルグ レン装置の使用許可をいただいた獨協医科大学教授石 井清先生に深く感謝いたします。 引用文献  青木淳一:奥日光のササラダニ群集構造と植生との 関連Ⅰ 植生,土壌およびササラダニ類の記載,日本 生態学会誌,12(5),p169 − 180 (1962)

 Cochran,W.G:Sampling techniques. John Wiley & Sons , New York (1953)

 藤川徳子:無農薬・無施肥農法 ( 自然農法 ) と慣行 農法の畑地におけるササラダニ,Edaphologia, 15, p1-11 (1976)  藤川徳子,中村好男,藤田正雄,都築義勝,細野雄 作,西村和雄:重粘土壌畑の土壌動物による育土 (1), 環境科学総合研究所年報,7,p91 − 103 (1979)  長谷川順一:栃木県の植生と花,栃の葉書房 (1982)  中村好男,藤川徳子,藤田正雄,都築義勝,細野雄 作,西村和雄:重粘土壌畑の土壌動物による育土 (2), 環境科学総合研究所年報,7,p105 − 109 (1979)  中村好男,藤川徳子,藤田正雄:土壌動物移入と しての名寄の林床堆積中の土壌動物,Edaphologia, 37, p9-16 (1987)  島田泰夫,筑波研究学園都市近郊アカマツ林におけ る大型土壌動物群集に関する研究,筑波大学環境科学 研究科修士論文 (1986)  新海明,加藤宏保,大型土壌動物用ツルグレン装置 (清澄式 ) の制作とその抽出率についての検討 (1), 清 澄,10 号,p11 − 22 (1983)

 Takeda, H, A pveliminary study on collembolan population in pine forest soil, Res. Popul. Ecol., 15, 76-89(1973)

 武田博清,土壌動物の個体数調査法,Edaphologia, 12, p10-29 (1975)

 Tamura, H, A simulated experiment for sampling soil microarthropoda to reduce sample size, Bull. Sugadaira, Montane Res. Cen., No.8, p109-118 (1987)

 Tamura H and Kojima J, An application of stirring sampling method to the quantitative estimation of a collembolan community in field, Edaphologia, 44, p17-23 (1990) 表3 必要最小サンプルサイズ 宇都宮大学演習林報告第48号 2012年3月  ಴ మ ᩐ 䦼 㸚 䦽    ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸶 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸷 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸸 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸹  㸝᫤㛣㸞   ಴ మ ᩐ 䦼 㸚 䦽    ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸶 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸷 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸸 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸹 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸺  㸝᫤㛣㸞   ಴ మ ᩐ 䦼 㸚 䦽    ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸶 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸷 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸸 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸹  㸝᫤㛣㸞   ಴ మ ᩐ 䦼 㸚 䦽    ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸶 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸷 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸸 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸹 ዚ᪝ක᤿㞗ᆀⅤ㸺  㸝᫤㛣㸞  図3 獨協医科大学ツルグレン装置による抽出経過時間と大型 土壌動物落下個体数(%)奥日光西ノ湖 1987 年5月 22 日採取 図4 宇都宮大学ツルグレン装置による抽出経過時間と大型土 壌動物落下個体数(%)奥日光湯滝西側 1987 年5月 22 日採取

参照

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