• 検索結果がありません。

ネットワーク仮想化技術と通信利用型放送 : 2.仮想化ネットワーク-管理機能の仮想化とJGN2plusにおける利活用報告-

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ネットワーク仮想化技術と通信利用型放送 : 2.仮想化ネットワーク-管理機能の仮想化とJGN2plusにおける利活用報告-"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)特集|ネットワーク仮想化技術と通信利用型放送. 2. 仮想化ネットワーク. 管理機能の仮想化と JGN2plus における利活用報告 早川浩平 *1 森 工 *2. 仮想化の概念と目的. *1. シスコシステムズ合同会社. *2. ジュニパーネットワークス(株). ① 論理分割. ▶仮想化の種類 ▶  コンピュータやネットワークなどの IT インフラにお いて,限られたリソースを効率的かつ柔軟に活用するこ. ② 論理統合. とは重要な課題である.また,信頼性に対する要求も高 まっており,これらの課題を解決する 1 つの手法として. +. +. 仮想化技術が挙げられる.仮想化技術は大きく 2 つに分 類できる.1 つ目は,1 台の装置を複数の装置があるか. 図 -1 仮想化の種類 1. のように使う技術で,これを「論理分割」と呼ぶ.2 つ目 は,複数の装置を論理的に 1 つのシステムのように使う 技術で,これが 「論理統合」 である (図 -1 参照) ..  また,ネットワークでの「論理統合」の代表的なものと.  論理分割の長所は,1 つの装置を異なる用途に利用で. してスタック型スイッチがある.図 -3 にスタック型ス. きたり,複数のサービスを提供することができることで. イッチの例を示す.複数のスイッチから構成されるが. ある.その結果,ハードウェアを集約させることが可能. 1 台のスイッチとして動作し,必要なネットワークのポ. となり,ハードウェアのコストダウン,消費電力量の削. ート数に応じて,必要なスイッチ装置を接続していくこ. 減が可能となる.また,論理統合の長所は,システム全. とが可能である.. 体の信頼性を向上させ,システム全体の拡張性や柔軟性 を向上させることができる点である.. ネットワークの仮想化とは. ネットワーク機器の仮想化とは ▶ネットワーク機器の仮想化 ▶  現在普及しているネットワークの論理分割の仮想化技. ▶ネットワークの仮想化とは ▶. 術としては,前述したように 1 つのネットワーク機器を.  ネットワーク分野でも 「論理分割」 と 「論理統合」 の2つ. 論理分割して,複数の独立したネットワークサービスを. の仮想化技術が存在する.ネットワークでの主な「論理. 提供している.. 分割」の代表的な技術としては,LAN スイッチで実装さ.  この仮想化技術の利用形態は,そのネットワーク機器. れているバーチャル LAN(VLAN) ,レイヤ 3 スイッチ(以. の「管理者」が基本的に 1 人であることを想定している.. 下 L3 スイッチ) で実装されているバーチャルルーティン. つまり,1 人の管理者が装置全体を管理し,その装置を. グ/フォワーディング(VRF)技術,ルータで実装されて. 論理分割し,分割されたものを,各利用者がネットワー. いるバーチャルプライベートネットワーク(VPN)技術な. クサービスとして利用するという利用形態の仮想化技術. どがあり,すでに一般的に利用されている.. である(図 -4)..  図 -2 に L3 スイッチでの仮想化技術である VRF 機能.  それに対し,「ネットワーク機器の仮想化」とは,文字. を使った場合の構成例を示す.仮想化機能に対応した. 通りネットワーク機器を論理分割して仮想化し,ネット. L3 スイッチであれば複数の L3 スイッチを 1 台の装置に. ワーク管理機能までも仮想化することを意味する.管理. 集約可能で,同等のネットワーク環境を構築可能である.. 機能までも仮想化させることで,利用者に対して VLAN 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009. 1115.

(2) 特集|ネットワーク仮想化技術と通信利用型放送. VLAN VLAN VLAN VLAN 1Q T runk. VLAN VLAN VLAN VLAN VLAN. 仮想 L3 スイ ッチ 仮想 L3 スイ ッチ. Si仮想. VLAN. 制御部. VLAN VLAN. ネットワーク 利用者. VLAN VLAN. 1Q T runk. ネットワーク 利用者. VLAN VLAN. L3 スイ ッチ. VLAN VLAN VLAN VLAN VLAN VLAN VLAN. 仮想 L3 スイ ッチ 仮想 L3 スイ ッチ. Si. VLAN VLAN. 装置全体 の 管理者. VLAN VLAN VLAN VLAN. ※装置のすべ ての設定を行. VLAN 仮想 う. ネットワーク VLAN VLAN L3 スイ 利用者 ッチ VLAN VLAN ネットワーク機器の仮想化 管理機能の論理分割 図 -4 従来のネットワーク仮想化技術の例 (複数のネットワークサービスを提供). VLAN VLAN. 図 -2 VRF 機能を利用した L3 スイッチ構成 2. 装置全体 の 管理者. 制御部. スイッチ装置のスタック技術. ネットワーク 利用者 &管理者. スタック ケーブル. 1台のスイッチ装置 としても利用可能. 1台のスイッチ装置として 設定/管理可能. 図 -3 スタック型スイッチの構成例. VLAN VLAN VLAN. ネットワーク 利用者 &管理者. VLAN. ネットワーク 利用者 &管理者. VLAN. VLAN VLAN. VLAN VLAN. 制御部 仮想 L3 スイッチ. 制御部. Si. 仮想 L3 スイッチ. 制御部. 仮想 L3 スイッチ. VLAN VLAN VLAN. ※各仮想L3ス イッチ自身の 設定は行わな い. VLAN VLAN VLAN VLAN VLAN VLAN. 図 -5 管理機能の論理分割. や VPN などのネットワークサービスだけを提供するの. は独自の経路制御やネットワーク設計,トラブルシュ. ではなく,仮想的な 「ネットワーク機器」 を提供する.ネ. ーティング作業などを自身で行う必要性があるケース.. ットワーク機器が提供された利用者は,自らネットワー ク機器の設定が行え,またネットワーク機器の稼働状況.  これらのケースは,従来のネットワーク装置の管理者. を自ら管理,監視することが可能となる (図 -5) .. が 1 人であることを想定されている仮想化技術では対応 できない.仮想化されたネットワーク装置は,結果とし. ▶管理機能の仮想化と複数の管理者 ▶. て複数の異なるネットワークサービスを提供することに.  以下のような場合にはネットワーク装置の管理機能の. なるという点では,従来のネットワークの仮想化技術と. 仮想化が有効となると考えられる.. 同等であるが,根本的な違いは,そのネットワークサー ビスの管理主体であり,ネットワーク利用者に管理機能. ①従来,別の管理者が運用していた個別のネットワーク. を含む仮想的なネットワーク機器を提供する技術である.. 装置を 1 台のネットワーク装置に集約するケース.装. この技術により,従来の技術では不可能であった形態で. 置として 1 台に集約するが,管理者は従来と同じ個別. の装置の共有化が可能となり,ハードウェアの集約性を. 管理を実施したいケース.例)大学の各学部に設置し. 高めることが可能となる.. てあるファイアウォール装置を 1 台に集約するケース. ②通信事業者/サービスプロバイダが契約利用者に対し. ▶管理機能の仮想化の実装方式と課題 ▶. て,仮想化したネットワークインフラをサービス提供.  管理機能の仮想化の実装は,当初はソフトウェアベー. するケース.契約利用者が独自でネットワーク設計,. スの実装が進み,ルータの場合は,論理ルータと呼ばれ. 運用管理を望むケース.. ていた.論理ルータは複数の仮想化ルータをソフトウェ. ③複数のネットワーク研究者などへネットワークインフラ を提供するテストベットネットワークインフラ.研究者. 1116. 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009. ア実装で実現した機能であり,基本的に筐体内の CPU やメモリなどのハードウェアリソースは共有されている..

(3) 仮想化ネットワーク. 2 CPU/メモリ. リソース 競合. 制御部. CPU/メモリ. CPU/メモリ. CPU/メモリ. ASIC/ メモリ. リソース 競合. 経路情報. ASIC/ メモリ. ASIC/ メモリ. ASIC/ メモリ 経路情報. スイッチ ファブリック. スイッチファブリック インタフェ ースカード. インタフェ ースカード. インタフェ ースカード. 仮想化ルータ. 仮想化ルータ. 仮想化ルータ. インタフェ ースカード. 制御部. スイッチ ファブリック. スイッチファブリック インタフェ ースカード. インタフェ ースカード. インタフェ ースカード. 仮想化ルータ. 仮想化ルータ. 仮想化ルータ. インタフェ ースカード. 図 -6 ソフトウェア論理ルータの課題. 図 -7 ハードウェア論理ルータの概念図. この実装方式の長所は,ハードウェア追加なしで仮想化. どのコアルータでの要求に耐え得る可能性を秘めている.. ルータを追加できる点であり,利用者としてはコスト増. なお,ハードウェア論理ルータの実装方式が提供されて. を抑圧でき,ルータの柔軟な設計が可能であった.. きたので,区別するために従来の論理ルータはソフトウ.  しかし,この実装には課題がある.管理機能を仮想化. ェア論理ルータと呼ばれるようになってきている.. し,各仮想化ルータの管理者が自由に設定を行えるよう 仮想化ルータ間の相互干渉問題である (図 -6) .. ▶ハードウェア論理ルータ機能に対応したコア ▶ ルータ製品.  たとえば,1 つの仮想ルータが非常に多くのルーティ.  ハードウェア論理ルータ機能を実装しているコアルー. ングテーブルを収容したことでルータ装置全体のメモリ. タ製品として,シスコシステムズ社の CRS-1 と,ジュ. 使用量が増大した場合や,ある仮想化ルータがリブート. ニパーネットワークス社の JCS 1200 の 2 機種がすでに. された場合に他の仮想化ルータの動作に影響があるよう. 販売されている.. であれば,独立したルータ装置のように仮想化ルータの.   シ ス コ シ ス テ ム ズ 社 の CRS-1 に は Secure Domain. 運用ができない.仮想化ルータを割り当てられた管理者. Routing(以下 SDR)と呼ぶ仮想化ルータ機能がある.. は,割り当てられた仮想化ルータが, 「仮想」 であること. 仮想化ルータごとに Distributed Route Processor(以. を意識しなくともオペレーションができることが望まし. 下 DRP)と呼ぶプロセッサカードをシャーシ内に搭載. い.たとえば,それがネットワーク装置に対するコンソ. し,仮想化ルータのルートプロセッサとして動作させ. ールアクセスや,ラインカードのハードウェアの追加や. る.DRP 上で仮想化ルータ用のオペレーティングシス. 「仮想化」され 削除などの運用的なオペレーションさえも. テム IOS-XR が稼働する.また,ジュニパーネットワー. ていることを意識せずに利用できることが望ましい.特. ク社は,T1600 のハイエンドルータ筐体および Juniper. に通信事業者のインフラなどでは高信頼性と安定性が非. Carrier System 1200( 以 下 JCS 1200) を 組 み 合 わ せ. 常に重要であるため,仮想化されていることに起因する. Protected System Domain(以下 PSD)と呼ぶ仮想化ルー. 課題が残っていればその技術を採用することは一般的に. タ機能を提供している.JCS 1200 内に各仮想化ルータ. 困難であり,完全な独立性が必須であると考えられる.. 用のブレードを搭載し,そのブレード上で仮想化ルータ. この課題を解決するために,仮想化ルータの実装方式と. 用の JunOS が稼働する.. してハードウェア論理ルータと呼ばれる方式が開発され,.  両社の現在のハードウェア論理ルータの実装では,ラ. 実装されてきている (図 -7) .. インカード単位で各仮想化ルータへ割り当てを行う実装.  ハードウェア論理ルータとは,各仮想化ルータ間でハ. となっている.その大きな理由は,CRS-1 も T1600 もシ. ードウェア的な競合が発生する部分に対して,仮想化ル. ャーシ内部にて分散処理アーキテクチャであり,実際に. ータごとにハードウェアリソースを割り当てる手法であ. パケット処理を行うために必要なルーティングテーブル. る.ハードウェア論理ルータの場合,仮想化ルータごと. などの情報は各ラインカード上のメモリに格納されてお. にハードウェアの追加が必要になる点が短所となるが,. り,各ラインカード単位で仮想化ネットワークに割り当. 仮想化ルータ間の動作やオペレーションの相互干渉を非. てることで,ラインカード上での CPU やメモリなどの. 常に減らすことが可能な実装方式であり,通信事業者な. リソース競合も発生しない構造で設計されている.. になったことで,筐体内の有限なリソースの競合による. 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009. 1117.

(4) 特集|ネットワーク仮想化技術と通信利用型放送. 写真 1 さっぽろ雪まつりで使用した CRS-1 概観(東京大手町) 写真 2 さっぽろ雪 まつりで使用した JCS 1200 と T1600 概 観( 東 京 大 手 町 ) ( ラ ッ ク 上 部:JCS 1200,下部:T1600). SDR4 SDR3. CRS-18 スロットシャーシシステム 仮想ルータ1. 仮想ルータ2. 10GbE-LR. SIP-800 DRP SIP-800 DRP RP1 RP0 SIP-800 DRP SIP-800 DRP. JGN2plus テストベッド インフラ GS4000 10GbE-LR note-gs4k-1. ルータを構成している.各 DRP にはコンソールポート や管理用 LAN ポートなどが実装されており,各仮想化 ルータは,物理的に独立したルータと同等の管理機能が 提供されている.  次に,さっぽろ雪まつり実証実験のインフラにて利 用されたジュニパーネットワークス社の T1600 と JCS. Owner SDR (Admin). PS A. PS B. 図 -8 さっぽろ雪まつりで使用した CRS-1 の構成概念図. 1200 の外観と構成を示す(写真 2,図 -9 および図 -10).  JCS 1200 はブレードスイッチの筐体であり,12 枚の. blade,冗長化された Switch(以下 SW),冗長化された Management Module(以下 MM),アラーム監視およ びコンソール制御部,冗長化された電源部を備えている.  T1600 は 8 個 の ス ロ ッ ト を 持 ち Flexible PIC.  (独)情報通信研究機構(略称:NICT)が 2009 年 2 月に. Concentrator(以下 FPC)を搭載可能である.また,制. 行ったさっぽろ雪まつり実証実験にて使用した構成を例. 御用ソフトウェアを動作させるモジュールを Routing. に両社の製品を具体的に説明する.. Engine(以下 RE),FPC と RE を接続するスイッチ制御.  さっぽろ雪まつりの実証実験では CRS-1 と JCS 1200. 部 Control Board(以下 CB),ルータ自身のスイッチフ. のそれぞれで,1 つの筐体内で 2 つの仮想ルータを構. ァブリック Switching Interface Board(以下 SIB)を搭載. 成して,実証実験を行った.さっぽろ雪祭り実証実験. している.RE,CB,SIB および電源部は冗長化されている.. のインフラにて利用された CRS-1 の外観と構成を示す.  図 -9 は JCS 1200 と T1600 の接続方法を示している.. (写真 1 および図 -8) .. 両 者 の 接 続 は JCS 1200 の SW 0 系 1 系 と T1600 の CB.  8 スロットシャーシの中央部にシャーシ全体を制御す. 0 系と 1 系をそれぞれ RJ45 のケーブルと専用のジョイ. るルートプロセッサ(以下 RP)が冗長構成で実装されて. ントケーブルを繋ぎ接続する.JCS 1200 の SW および. おり,その左右に DRP もしくはラインカードが搭載可. T1600 の CB はそれぞれ冗長されているため,障害が発. 能なスロットが提供されている.仮想化ルータに対する. 生した場合も無停止でサービスは継続可能である.また. ラインカード割り当てなどの制御は RP 上にて実施する.. 接続距離は 100 メートルまで延長可能である.JCS 1200. 上図の左側のスロットから,1 つの DRP と 1 つの SIP-. は最大で 3 台の T シリーズを接続することが可能である.. 800 と呼ばれるラインカードの組合せで,1 つの仮想化.  JCS 1200 と T1600 の そ れ ぞ れ の 筐 体 を 管 理 す る 管. 1118. 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009.

(5) 仮想化ネットワーク. 2. JCS 1200 JCS 1200. MM1 PSD1. blade12 blade11 blade10 blade9 blade8 blade7 DRP blade6 blade5 blade4 blade3 blade2 blade1. SW0. PSD2. T1600(前面). MM0 T1600 (背面). blade12 blade11 blade10 blade9 blade8 blade7 DRP blade6 blade5 blade4 blade3 blade2 blade1. SW1. 仮想ルータ1. 10GbE-LR RSD. FPC7 FPC6 FPC5 FPC4 FPC3 FPC2. SIB0 SIB1 SIB2 SIB3 SIB4. JGN2plus テストベッド インフラ GS4000. FPC1 FPC0. CB0 RE0 RE1 CB1. 仮想ルータ2. 10GbE-LR. 図 -9 JCS 1200 と T1600 の接続形態および RSD 概念図. 図 -10 さっぽろ雪まつりで使用した T1600 と JCS 1200 の構成概 念図. 理者を Route System Domain(以下 RSD)と呼ぶ.RSD. ベットネットワークの構築フローを図 -11 の上図に示す.. は JCS の MM および T1600 の RE を通して両筐体の管. ネットワーク構築はテストベット利用者がオペレーショ. 理および仮想化ルータ Protected System Domain(以. ンセンタに利用申請を行い,それに基づきネットワーク. 下 PSD)の設定を行う.仮想化ルータは JCS 1200 には. オペレーションセンタがネットワークの機器構築および. blade と T1600 の FPC から構成される.T1600 には仮想. 作業報告をする.その後,ネットワークの変更が必要な. 化ルータ用の特別なハードをインストールする必要は. 場合,テストベッド利用者が再びオペレーションセンタ. ないので,FPC8 枚それぞれで仮想ルータを構築した場. に申請を行い,オペレーショセンタがその都度,設定変. 合,最大 8 つの仮想ルータを構築することが可能である.. 更および作業通知を行っている.. 図 -10 は今回の雪まつりで構築した仮想ルータの構成を.  図 -11 の下図は現在のネットワーク運用概念図を示し. 示す.2 つの仮想ルータ PSD1, PSD2 を構築した.コン. ている.基本的にオペレーションセンタがテストベッド. トロールプレーン冗長化のため JCS 1200 の blade を 2. ネットワーク構築,運用を包括的に行い,テストベッド. つ割り当てている.. 利用者はネットワーク機器の設定に携わることはでき. 管理機能の仮想技術の利活用 ▶既存の ▶ JGN2plus のネットワーク運用概要  NICT では新世代ネットワークの実現に向けて,Japan Gigabit Network2(以下 JGN2)をさらに高機能化した 研究開発テストベッドネットワーク JGN2plus の運用 を行っている.新しいリサーチセンタ Service Platform Architecture Research Center(以下 SPARC)は新世代ネッ. ない.  近年,通信とコンテンツの融合をにらみテストベッド 利用者の実験,研究に必要なネットワーク要件が高帯域 化,高機能化してきている.たとえば,コンテンツの 帯域も非圧縮フルハイビジョンおよび 4K-2k ディジタル シネマとますます高帯域になると同時に,IPv4/IPv6 の マルチキャストを利用して配信する事例が多くなってお り,実験設備の高性能化/高機能化が求められている.. JGN2plus の既存の高機能ルータを活用する場合,既存. トワークの運用・管理技術の研究を行っている.. のプロトコルとの組合せ,既存利用者のトラフィックの.  JGN2plus はレイヤ 2 およびレイヤ 3 バックボーンの. 品質保証に対応するため,ネットワーク設計の変更や検. ネットワークサービスをネットワーク研究に携わる研究. 証等も必要な場合もあり,速やかに要求された機能をテ. 者に提供することを目的としており,テストベッドネッ. ストベッド利用者に提供する場合は困難である.特に運. トワークと呼ばれている.今までに JGN2plus を利活用. 用事例のない,トライアル的な実証実験の場合,テスト. して IPv4/IPv6, MPLS/GMPLS, マルチキャスト通信および. ベッド利用者からの要求にすべて対応するのは困難であ. 高帯域コンテンツ配信などのさまざまな実証実験,研究. る.テストベット利用者が自前で機材を準備することが. および運用開発が行われてきている.. 可能であるが,高機能な通信機器を用意する場合コスト,.  この JGN2plus テストベッドの利用者に対するテスト. 電源,スペースの確保は大きな負担である.現在の課題 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009. 1119.

(6) 特集|ネットワーク仮想化技術と通信利用型放送 テストベットネットワーク構築フロー. テストベッド 利用者 A/B. 変更 申請. 利用 申請. 利用 申請. 機器 構築. 機器 構築. 設定 変更. ネットワーク オペレーション センタ 作業 通知. 時間. 変更 申請. 設定 変更. 作業 通知. 作業 通知. 作業 通知. ネットワーク運用概念図 作業通知. テストベット 利用者 B. 利用申請/変更申請 ネットワーク オペレーション センタ. 構築 設定・設定変更. JGN2plus 利用/変更申請. テストベット 利用者 A. 作業通知. 図 -11 テストベットネットワークの構築フローとネットワーク運用概念図. 点をまとめると以下のようになる.. コスト,スペース,電力などの運用経費を負担.. ネットワークオペレーションセンタ側の課題.  JGN2plus ではこれらの課題を解決しオペレーション. - 運用負担. センタの運用業務改善,テストベッド利用者へのサービ.  設定変更が発生するたびにオペレーションセンタが介. ス改善のため,ネットワークの管理機能の仮想化に着目. 在するのは負担が大きく,コストがかかる.. した.テストベッド利用者に対して,以下の項目のよう. - テストベッドネットワークの独立性確保が困難. にリソースの独立性,運用の独立を確保した仮想ルータ.  テストベッドネットワーク間のリソース競合を考慮し. を提供できる,ハードウェア論理ルータ方式を採用し導. ネットワークを設計する必要がある.. 入運用することにした.. - 提供サービスの制約  プロトコルとの相互接続,新機能の運用実績を考慮す ると,テストベッドネットワーク利用者からのすべて の要求にこたえるのは困難.. 1)仮想化ルータのネットワークの運用を開放し,管理 機能および運用に関する研究・開発を行う.. 2)仮想化ルータは IPv4/IPv6 対応,ユニキャスト,マル チキャスト対応し通常のルータと同等の機能で利用で. テストベット利用者の課題. きる.仮想化ルータごとに制御部を冗長化し,経路情. - オペレーションセンタに依存した運用. 報が相互に作用せず独立している..  ネットワークの変更が必要な場合,オペレーションセ. 3)仮想ルータは個別にリブート可能で他の仮想化ルー. ンタにその都度,依頼する必要がある.またトラブル. タに影響を及ぼさない.また,仮想ルータごとに別バ. の切り分けもオペレーショセンタに解析依頼をする必. ージョンで運用可能.. 要がありタイムラグが発生する.. - 利用できるネットワークサービスが制約. ▶さっぽろ雪まつりのネットワーク概要 ▶.  利用可能なネットワークサービスは JGN2plus の提供.  今回のさっぽろ雪まつりの実証実験では,前述のシ. 範囲に限定される.. スコシステムズ社の CRS-1 の仮想化ルータ機能 SDR と,. - 機材確保の負担. ジュニパーネットワークス社の T1600 と JCS 1200 の仮.  テストベッド利用者が通信機器を用意する場合,導入. 想ルータ機能 PSD を用いて,ネットワーク機器の仮想. 1120. 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009.

(7) 仮想化ネットワーク. 2 さっぽろ雪まつり2009 バックボーンネットワーク 物理接続情報 韓国. L2 SW HBC L2 SW. 札幌. 3750G-24TS. L2 SW. KOREN. L2 SW L2 SW. 名護球場. L2 SW 3560-8PC. 3750-WLAN-24PS(予備) 3560E-24PD (予備). LX. L2 SW. JGN. MM館. L2 SW 3560-8PC. JGN ( PNW). L2 SW. CRS-1 (ABC). L2 SW. L2 SW. ISID(品川). 仮想ルータR5 on CRS-1. CKP. JGN ax78. JGN GS4K (kote). JGN GS4K (dojima). 高知. LX. L2 SW 安芸. IP88. EX4200-24F EX4200-24T. 仮想ルータR2 on T1600. LR JGN2 用意. ワンセグボックス. L2 SW 5/0. LAN-PHY 2/0. ER. N大手町. 5/0 10/0. 仮想ルータR6 on CRS-1. 仮想ルータR1 on T1600 LR. JGN GS4K (note). LR. 仮想ルータR3 on CRS-1 LR. 10/1 LR. 高知 情報HW. GAORA SKY-A. LX. L2 SW L2 SW. LR. 2/0. VPN 箱. LR. LX. N堂島. ABC. 3560E-24PD. LR. PD. Nexus. MBS L2 SW. PD. K大手町. JGN 中国-1. JGN. ER. JGN. L2 SW. 九州. 3560E-24PD. 3560E-12D. プレハブ IP88 L2 SW. 3560E-24PD. PD PD PD. Hotnet. 芸科大用意. 3560-8PC 3560E-24PD L2 L2 音響室 SW SW. 宜野座村役場. PD. LC コネクタ. GENKAI. 岡山 沖縄. HTB L2 SW. LX/LH. SC コネクタ. IP88. EX4200-24T(予備). 仮想ルータR4 on CRS-1. ※札幌機材を流用 SINE LINK. L2 SW 弁長. 図 -12 ネットワークの物理構成図. 化技術を用いて構築した.図 -12 にさっぽろ雪まつりの. た.ユニキャストルーティングは IPv4 および IPv6 共に. 実証実験で構築したネットワークの物理構成図を示す.. OSPF,マルチキャストルーティングは PIM-SM を利用.  JGN2plus テストベッドネットワーク上には,東京大. した.. 手町に CRS-1 と T1600-JCS 1200,大阪堂島に CRS-1 を.  東京,大阪のコアルータにそれぞれ 2 台仮想ルータを. 設置して JGN2plus のバックボーンとスイッチと接続し. 構築したのは,1 台の仮想化ルータにて停止もしくは障. た.これら 3 台のコアルータをそれぞれ 2 個ずつの仮. 害が発生した場合,他の仮想化ルータにルーティングで. 想化ルータとして利用し,論理的には 6 台のコアルータ. 切り替わり機能を引き継ぎ,サービス停止を短縮するよ. としたネットワークを構築し実証実験を行った(具体的. うに考慮したためである.. なルータにおける仮想ルータの実装および構成は図 -8,. 9 および 10 に示す).  図 -13 は今回のさっぽろ雪まつりの仮想ルータ論理構. 実験結果と今後の展望. 成図と運用概念図である.さっぽろ雪まつりの実証実験. ▶実験結果 ▶. を行うために,まず実験利用者がオペレーションセンタ.  さっぽろ雪まつりの実証実験にて仮想化ルータの管理. に仮想化ルータの利用を申請する.東京大手町,大阪堂. 機能の仮想化は JGN2plus とテストベット利用者に大き. 島のコアルータに構築された仮想化ルータの管理権限. な恩恵をもたらした.図 -14 上図は仮想ルータ導入後テ. が申請を行った実験利用者に開放される.その後,実. ストベットネットワークの構築フローを示す.テストベ. 験利用者はオペレーションセンタとは独立して仮想化. ット利用者がネットワークの構築申請をネットワークオ. ルータの設定および設定変更を実施することが可能と. ペレーションセンタに依頼し,ネットワークオペレーシ. なる.. ョンセンタがこれに基づき,仮想化ルータを構築する..  さっぽろ雪まつり実験利用者は IPv4/IPv6 のデュアル. 仮想化ルータがテストベッド利用者に開放されるため,. スタック,かつユニキャストルーティングおよびマルチ. テストベット利用者はネットワークオペレーションセン. キャストルーティングが可能なネットワークを構築し. タを介すことなく,随時ネットワーク機器の設定および 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009. 1121.

(8) 特集|ネットワーク仮想化技術と通信利用型放送 変更が可能となった.. 札幌会場.  図 -14 下図にネットワーク運用概念を示す.. L2SW. この形態の場合のオペレーションセンタおよび 実験利用者の長所は以下となる. 仮想化 ルータ1. ネットワークオペレーションセンタの長所. 仮想化 ルータ2. JGN2plus バックボーン. - 運用負担の軽減  仮想化ルータ構築の作業のみであった.  ※仮想化ルータ自身の設定は実験利用者が実施. 構築 設定.   緊急な設定変更依頼などが削減された 実験利用者の長所. - 開放された運用. 仮想化 ルータ3. ネットワーク オペレーション センタ.  設定変更は利用者が随時実行でき,実験作業 の効率が向上した.特に突発的なトラブル発 生時に,緊急にネットワークの変更による切 り分け作業に成果を発揮した.. - 利用できる機能が柔軟で豊富. 仮想化 ルータ5. 仮想化ルータ 設定・設定変更. 仮想化 ルータ4. JGN2plus バックボーン. さっぽろ 雪まつり 利用者. 仮想化. JGN2plus ルータ6 バックボーン. 韓国,国内拠点. 作業通知 利用申請.  さっぽろ雪まつり利用者は仮想化ルータ内の 多様な機能を活用できた.. - 機材確保が不要. 図 -13 さっぽろ雪まつりの論理構成図と運用概念図.  札幌および国内外の通信機器の設置コストの 削減と,環境構築の短縮化を実現した.  特に仮想化ルータをリブートしても他の仮想化ルータ  今回,実験利用者が,仮想化ルータに対して設定した. に影響がなかったことは,ハードウェア論理ルータの独. 機能および,運用中に利用したコマンド機能は以下の通り. 立性を証明できた.ハードウェア論理ルータは製品化さ. である.実験利用者は従来のルータを操作する感覚で仮. れて間もないことから,通信事業者の研究機関における. 想化ルータを設定運用することが可能であった.. 実験評価という状況にとどまっているケースが多かった. 今回のさっぽろ雪まつりの実証実験を通して,仮想化ル. 1)仮想ルータにおける設定. ータが通常のルータと同様のネットワーク設計を行うこ.  a)アクセス  TELNET/FTP,ユーザアカウント発行. とができ,かつ,通常のルータを使用した場合と遜色の.  b)サービス  IPv6 Route Advertise,DHCP. ない性能を発揮することが確認できた.仮想化ルータ間.  c)ルーティング. のリソース競合も確認されなかった..    Static/OSPF/OSPFv3/PIM-SM/IGMP/MLD.  しかし,今回の実験において,ハードウェア論理ルー.  d)ポリシーコントロール. タにいくつかのソフトウェア不具合が確認された.発見.    ルーティングポリシー,アクセスリスト. された不具合の中には,ハードウェア論理ルータ固有の. 2)仮想ルータにおける運用. ものと,コアルータそのものの不具合との両方が含まれ.  a)SNMP による情報管理. た.仮想化ルータ環境で発生した不具合が仮想化ルータ.  b)CPU,メモリのリソース管理. 固有の問題なのか,ルータプラットフォーム自身の問題.  c)インタフェース統計情報の収集. かどうかの切り分けは困難で,仮想化ルータ実装の詳細.  d)ping, traceroute による疎通確認. な知識,過去のトラブルをまとめた知識データベースの.  e)ルーティング,フォワーディングテーブル確認. 蓄積が有効である.今回の実証実験を通じて発見された.  f) トラフィックモニタリング,パケットキャプチャ. 仮想化技術の実装にかかわる不具合のいくつかはすでに.  g)ルーティングデバック. 修正されており,ハードウェア論理ルータを用いた管理.  h)プロセスリセット. 機能の仮想化の実証実験を経て貴重なフィードバックを.  i) インタフェース ラインカード オン/オフ. 得ることができた.このような実証実験を繰り返し行う.   j)仮想ルータリブート. ことで,実際のインフラでも十分利用可能な成熟した実. 1122. 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009.

(9) 仮想化ネットワーク. 2 テストベットネットワーク構築フロー. 仮想 ルータA 設定. 利用 申請B. 利用 申請A. 仮想 ルータB 設定. 仮想 ルータB 設定変更. 仮想 ルータA 設定変更. テストベッド 利用者 A/B ネットワーク オペレーション センタ. 時間 運用概念図. 仮想 ルータ A 構築. 作業 通知. 仮想 ルータB 構築. 作業 通知. 作業通知 テストベット 利用者 B. 仮想化 ルータB. 利用申請. 設定・設定変更 ネットワーク オペレーション センタ. JGN2plus. 構築 設定 利用申請. 仮想化 ルータA. 設定・設定変更 テストベット 利用者 A. 作業. 図 -14 仮想化ルータ導入後のテストベッド構築フローとネットワーク運用概念図. 装に一歩近づけたことが大きな成果である.. ては思考錯誤が行われている状況であり,運用機能がま すます注目されると思われる.運用の仮想化が実現でき. ▶課題 ▶. ればハードウェアの集約がより可能になり,結果的に利.  仮想化ルータにおいて,不具合の切り分け作業の効率. 用者への柔軟なサービス提供およびコスト削減につなが. 化のため各仮想化ルータの状態を,よりきめ細かく確認. ることが期待できる.さらにサーバにおける管理機能の. するコマンド機能の拡充が今後重要である.. 仮想化技術も進んできており,今後,サーバとネットワ.  また,ハードウェア論理ルータはシスコシステムズで. ークの仮想化機能の連携,融合が IT インフラのより効. は CRS-1,ジュニパーネットワークスでは T シリーズと. 率的な運用には有効であると考えられ,今後の技術革新. いういずれも通信事業者向けのハイエンドルータで提供. に期待する.. されている.より手軽に管理機能の仮想化を実現するた. (平成 21 年 8 月 31 日受付). めにはミドルレンジの性能の通信機器に拡張されること が必要である.また,筐体あたり,構築可能な仮想化ル ータは 4 ∼ 8 個と収容密度は高くない.仮想化ルータ のサポート数の追加と,ラインカードだけではなくポー ト単位に割り当てられるような柔軟な設計が今後の課題 と思われる.. ▶今後の展望 ▶  IT インフラはすでにライフラインとなり,我々の生活 に欠かせないものになっている.通信サービス事業者の 中には既存の固定電話,携帯電話,さらには放送等を, インターネットプロトコルを活用した Next Generation. Network と称される新たな IT インフラを構築し統合し ていく動きがある.統合を行ううえで運用の統合につい. 早川 浩平| khayakaw@cisco.com  シスコシステムズ合同会社システムエンジアリング&テクノロジー ソリューションアーキテクト.1998 年シスコシステムズ(株)入社. サイバー関西プロジェクトや IPv6 相互接続性試験などの技術支援を 行う.2008 年度から情報通信研究機構 JGN2plus テストベッド特別研 究員としてさっぽろ雪まつりなどの実証実験の技術支援を行う. 森 工| tmori@juniper.net  ジュニパーネットワークス(株)技術本部第二技術部 SE マネージャ. 2000 年ジュニパーネットワークス(株)入社.MPLS-IX ワーキング グループにて相互接続検証に参加.2008 年度から情報通信研究機構 JGN2plus テストベッド特別研究員として Super Computing 2008,さ っぽろ雪まつりなどの実証実験の技術支援を行う.. 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009. 1123.

(10)

参照

関連したドキュメント

4-35 Relationship between flow rate and 0.15µm particle penetration of glass fiber filter measured at cyclic and constant flow condition.... Glass

VMWare Horizon HTMLAccess はこのままログインす ればご利用いただけます。VMWare Horizon Client はク

A flat singular virtual link is an equivalence class of flat singular virtual link diagrams modulo flat versions of the generalized Reidemeister moves and the flat singularity moves

4G LTE サービス向け完全仮想化 NW を発展させ、 5G 以降のサービス向けに Rakuten Communications Platform を自社開発。. モデル 3 モデル

「Silicon Labs Dual CP210x USB to UART Bridge : Standard COM Port (COM**)」. ※(COM**) の部分の

Example 仮締切の指定仮設(河川堤防と同等の機能) 施工条件

本案における複数の放送対象地域における放送番組の

地球温暖化対策報告書制度 における 再エネ利用評価