• 検索結果がありません。

大学生を対象としたイメージ法を用いた オンラインによるストレスマネジメント教育

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "大学生を対象としたイメージ法を用いた オンラインによるストレスマネジメント教育"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

大学生を対象としたイメージ法を用いた

オンラインによるストレスマネジメント教育

古川依里香

・五位塚和也

** キーワード:イメージ法 オンライン ストレスマネジメント教育 イメージ視点 要約:本研究では、コロナ渦における大学生への心理学的支援として、イメージ法を用いたオン ラインによるストレスマネジメント教育の有効性について、イメージ視点およびイメージ想起に 伴う身体感覚に着目して検討を行った。大学生を対象として、オンライン上でイメージ法を用い たストレスマネジメント教育を実施し、その前後に気分状態およびイメージ体験に関する調査を 行った。研究協力者のイメージ視点をもとに行為者視点群、観察者視点群、その両方の視点を体 験した群に分類し分析を行った。その結果、いずれのイメージ視点の研究協力者においても、鮮 明なイメージ、イメージへの集中、リラックス感といった良好なイメージ体験や、イメージ想起 に伴って何らかの身体感覚の生起がみられ、それらの体験が介入前後のポジティブな気分状態の 変化につながっていたことが示唆された。以上の結果をふまえて、臨床上の工夫と配慮について 考察を加えた。

1 問題

現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界的な広がりをみせ、2020 年 1 月に日 本の指定感染症とされ、そして 2 月 11 日には、World Health Organization によってパンデミッ ク(世界的な大流行)と認められた。これに伴い、同年 3 月 2 日より小・中学校、高等学校、 特別支援学校は臨時休校となった。続いて、3 月 13 日に改正された新型インフルエンザ等対 策特別措置法に基づき、4 月 7 日に東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福 岡県の 7 都府県を対象とした緊急事態宣言が発令され、4 月 16 日にはその対象を全国に拡大 した。このような経緯から、緊急事態宣言が解除された 5 月 25 日まで「接触機会の 8 割削減」 を目標として、生活や健康の維持のために必要な場合を除く外出自粛や、感染拡大につながる 可能性のある施設の使用制限、事業者への休業などの要請が行われた。また、緊急事態宣言が 解除された後も、国民に対しては、「密室空間、密集場所、密接場面」という 3 つの密を避け ──────────────── * 大阪府太子町役場子育て支援課 ** 大阪大谷大学教育学部 ― 53 ―

(2)

るよう注意喚起が行われ(木村・尾島・近藤,2020)、多くの大学では感染症対策を行いなが ら教育を行うために、テレビ会議システムやストリーミング・サービスなどのオンラインによ る遠隔授業が実施されていた。現在、対面形式での授業が実施されるようになった大学も少な くないものの、新型コロナウイルス感染者が発生した場合には学生の登学禁止等の措置がとら れている。このように、現状としては、従来の生活様式が一変し、先の見えない状況下で行動 が制限される日々が続いている。この状況について、黒木(2020)は、「感染への不安・恐怖 以外にも環境変化と混乱する情報などの要因が、個人の心身の不調だけでなく、家族や人間関 係、さらには社会全体に及ぶ様々なメンタルヘルスの問題を生じる可能性がある」と述べた。 実際に、橋元(2020)は、コロナ渦における人々の不安やストレス、抑鬱、孤独感について調 査し、将来について考えたり、家族関係が悪化したりした人については抑鬱が増加しているこ とを明らかにした。このような混乱した状況が続くことを考慮すると、今後、コロナ禍を要因 とした様々な心理社会的な危機に直面する人々が増え、心理学的な支援に対する需要が高まる ことが想定される。以上より、今後も感染症対策を図りながらも心理学的支援の実践を両立し ていく必要があると考えられ、そのような状況下における心理学的支援の一方法として、オン ラインによる心理学的支援の有効性について検討することが求められよう。 ところで、宮城(2009)は家庭環境の変化、職場環境の変化、社会生活の変化が現代社会の 環境によるストレス要因であると述べており、新型コロナウイルス感染症の拡大は、まさにそ れらすべてに変化を及ぼしていると言える。さらに、大学生生活においては、入学や進級など のライフイベント要因や友人や恋人、研究室などの人間関係の要因などさまざまな要因がスト レッサーになることが指摘されており(斉藤,2020)、通常の状況でさえ様々なストレスがあ る大学生活において新型コロナウイルス感染症の拡大は大きな影響を与えていると考えられ る。四方田(2020)は、感染症対策として制限の対象となったスポーツや文化、音楽イベン ト、旅行、他者との交流などはストレスマネジメントの方略の 1 つである積極的休養の機会を 著しく減少させていることを指摘した。ストレスマネジメントとは、ストレスによる心身の過 緊張および人間関係についての「気づき」を良くすること、そして自分の力で心身を「リラッ クス」できる方法を身につけてストレス耐性を向上させること(福永,2000)とされている。 そして、ストレスマネジメント研究には大きく 2 つの流れが認められ(竹中,2005)、 1 つは 臨床現場での対処療法としてのストレスマネジメントであり、もう 1 つは予防的措置としての ストレスマネジメントであり、近年ニーズが広がっている(津田・岡村・堀内・田中・津田, 2008)。予防的措置としてのストレスマネジメントには、教育現場で広まっているストレスマ ネジメント教育が該当する(金・津田・松田・堀内,2011)。山中・冨永(2000)は、ストレ スマネジメント教育をストレスに対する自己コントロールを効果的に行えるようになることを 目的とした教育的なはたらきかけと定義した。元来自己に関する悩みや将来に関する悩みを抱 ― 54 ―

(3)

えやすいうえに、登学をはじめとして様々な行動が制限されやすい状況にある大学生において は、対人関係や修学などをめぐるストレスがかかりやすいことが推察される。したがって、大 学生を対象としたオンラインによるストレスマネジメント教育の効果的な実践について検討す ることは、コロナ禍における学生の心身の健康増進や修学意欲の維持をめざした支援について 考えるうえで意義があると考えられる。 ストレスマネジメント教育として用いられるリラクセーション法の 1 つとして、イメージ法 がある。イメージとは、視覚だけではなく、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、運動感覚も含めて全身 体的に「ひとがこころの中に抱く準感覚的なもの(山中,2013)」とされる。イメージは知覚 や思考、記憶や感情などの心的機能に幅広く影響を及ぼす(Hatakeyama, 1997;上杉,1983 ; Richardson, 1969/1973)ため、心理臨床場面でも多く活用されている(田嶌,1989;許・澤・ 田嶌,2006)。オンラインによる遠隔実施が可能なリラクセーション法としてイメージ法が有 用であると考えられるが、オンラインでの実施については、対面形式での実施とは異なり、 様々な工夫や配慮点が必要である。 そこで、本研究では、イメージ法を用いたストレスマネジメント教育のグループワークをオ ンラインで実施し、グループワーク前後の参加者の気分感情の変化について分析し、オンライ ンによるイメージ法を用いたストレスマネジメント教育の有効性の検討を行う。その際、イ メージ法の効果に影響を与えるとされるイメージ視点に着目する。イメージ視点とは、イメー ジを想起している人が行為者になるか、観察者になるかの点において大きく 2 つに分類されて おり(大隈,1987)、心理療法でイメージを用いる際には、行為者視点の方が観察者視点より 効果的であるとされている(Harris & Robinson, 1986;松尾・菊池,2000 など)。田嶌(1987) や成瀬・水島・藤原(1999)は、行為者視点を取ることによって、視覚像としてだけでなく筋 感覚や感情などを伴ったイメージが可能となり、イメージが深まり臨床的な効果が生じると述 べている。成瀬ら(1999)は、イメージ法でイメージが臨床的に有効に働くためには、視覚像 としての見え方が鮮明になることではなく、身体感覚や五感や気分などとの繋がりができ、全 身的な体験になることが重要であると述べている。したがって、オンラインによるイメージ法 において、イメージ視点によって気分の変化やイメージ体験にどのような違いが生じるのかつ いても詳細に検討を行い、オンラインによるイメージ法を用いたストレスマネジメント教育の 有効性を検討することを第一の目的とする。 次に、オンラインでのイメージ法を用いたストレスマネジメント教育の実践について、臨床 上の工夫や配慮について考察することを第二の目的とする。 ― 55 ―

(4)

2 方法

研究協力者 2020 年 6 月に A 大学の授業中に実施した。調査協力に承諾した全 29 名のうち、回答に不 備のあった者を除いた 27 名(2 年生 17 名、3 年生 10 名;女性 21 名、男性 6 名;平均年齢 19.5 歳)を有効回答者として分析を行った。 手続き 対象となった授業は、A 大学で行われているゼミナールの授業であった。ゼミナールは各 学年で別々の時間に実施されており、1 つのゼミナールの参加者が 10∼19 名であった。授業 時間は 90 分間であり、ZOOM を利用した同時双方向型の遠隔授業であった。第一著者はゼミ ナールのゲスト講師としてストレスマネジメント教育を目的としたグループワークを行った。 なお、調査が行われた 2020 年 6 月は、A 大学では学生は原則的に登学が禁止されており、全 ての授業がオンラインによる遠隔授業であった。第一著者はゼミナールの指導教員から紹介を 受け、ストレスマネジメントおよびイメージについて、パワーポイントを用いて 10 分程度の 講義を行った。その後、イメージ法を実施する前の研究協力者の感情状態を調査するために、 研究協力者全員に対してチャットにて質問フォームの URL を送り、質問フォームへの回答を 求めた。 研究協力者全員の回答を確認したうえで、イメージ法を実施した。イメージ法は、古川・山 中・富原(2018)の草原イメージをもとに、より安全面に配慮し、詳細に場面を設定した教示 に改変して行った。イメージ法の教示は以下のように行った。草原のイメージの導入として、 「まず最初に、あなたがとてもくつろげて、楽な気持ちになれる、晴れの日の草原をイメージ してみてください。草の長さはあなたの足首くらいの長さで、青々とした草が生えている草原 です。その草原は、今まで行ったことのある所でも、想像の中のものでも構いません。イメー ジははっきり見えることもあれば、何となく感じるという場合もあります。映像で浮かぶこと もあれば、言葉で浮かぶこともあるかもしれません。思い浮かべることができたら浮かんでき たイメージをじっくりと味わってみましょう」と教示し、研究協力者が十分に草原についてイ メージできるよう時間を確保した。次に、「では、その草原の様子を少し観察してみましょう。 季節はいつ頃でしょうか。時間帯は何時頃でしょうか。天気はどうでしょうか、また、周りに はどんなものがあるでしょうか。草原の様子をじっくりと観察してみましょう」と、想起され たイメージを観察するよう教示した。そして、「では、あなたがその草原でゆっくり過ごして いるところを思い浮かべてみましょう。過ごし方は、寝転んでも、座っても、歩いても、どの ― 56 ―

(5)

ようなものでも構いません。イメージの中で、行動する自分を傍で見ているのでしょうか。そ れともあなた自身がイメージの中で行動しているのでしょうか。自分の好きなように、草原で ゆっくりと過ごしてみましょう」と教示し、草原のイメージのなかで研究協力者がくつろいで リラックスするよう促した。最後に、「それでは最後に、くつろいでいるときのあなたのから だの感覚を味わってみましょう。草の感覚はどうでしょうか。気温はどうでしょうか。涼しい のでしょうか。温かいのでしょうか。風はどうでしょうか。それでは、からだの感覚に注意を 向けてみましょう。肩の感じはどうでしょうか。肘や手の平の感じはどうでしょうか。背中や 腰の感じはどうでしょうか。おなかの感じはどうでしょうか。ふくらはぎやつま先の感じはど うでしょうか。また、今の自分の気分はどうでしょうか。からだの感じと気持ちをじっくり味 わってみましょう」と教示し、イメージを通して喚起される身体感覚に注意を向けるよう促し た。 イメージ法実施後の研究協力者の感情状態やイメージ体験の内容について調査するために、 イメージ法を実施した後に、再度質問フォームの URL を送付し、質問フォームへの回答を求 めた。 なお、90 分間のうち、調査者および指導教員の画面は全員に公開した状態にし、ゼミ生は ゼミの開始時の出席確認のみ Web カメラとマイクを ON にし、それ以外は Web カメラとマ イクを OFF にした状態であった。 倫理的配慮 イメージ法を行う前に、途中辞退が可能であることを明示した。質問紙への回答前に、研究 目的と個人情報の守秘・匿名性を文書および口頭で説明を行い、調査結果の公表については同 意書での了承を得た。研究協力に伴い不利益が生じないことを明示した。さらに、イメージの 実施により不調を生じた者が調査者に連絡が取れるよう、イメージ終了後に連絡先を提示し た。 測定変数 イメージ前後の気分の変化の測定:草原イメージによる気分の変化の指標として、一時的気 分尺度 TMS(Temporary Mood Scale;徳田,2007)を使用した。この尺度は、POMS(Profile Of Mood States;横山,1990)をもとに作成されており、「今の気分」について、「緊張」「抑 鬱」「怒り」「混乱」「疲労」「活気」の 6 尺度全 18 項目について 5 件法で回答し、回答を 0∼4 点に換算して得点化を行った。 イメージ体験に関する質問項目:イメージ法を実施した後に、研究協力者のイメージ体験の 質的側面として、まずイメージ法のなかで研究協力者が観察者視点を体験したか、行為者視点 ― 57 ―

(6)

を体験したか、その両方の視点を体験したか、選択肢方式で質問し、この回答を「イメージ視 点」として測定した。次に、研究協力者が体験したイメージがどの程度鮮明であったか質問 し、「はっきり見えた(3 点)」、「どちらともいえない(2 点)」、「ぼんやりとしていた(1 点)」 の 3 件法で回答を求め、「イメージの鮮明性」得点を算出した。加えて、研究協力者がイメー ジに集中して取り組めたか質問し、「集中できた(3 点)」、「どちらともいえない(2 点)」、「集 中できなかった(1 点)」の 3 件法で回答を求め、「イメージへの集中」得点を算出した。さら に、イメージ内でリラックス感が得られたか質問し、「リラックスすることができた(3 点)」、 「どちらともいえない(2 点)」、「リラックスすることができなかった(1 点)」の 3 件法で回答 を求め、「イメージ内でのリラックス感」得点を算出した。イメージ体験に生起された身体感 覚として、音、におい、触感、温度、そして草原イメージに関連する風の知覚の有無について 2 件法で回答を求めた。加えて、草原イメージの内容やイメージ内での自身の過ごし方、感想 などに関する 12 項目について自由記述で尋ねた。以上の項目の具体的な質問内容について、 Table 1 に示す。 なお、本研究における統計学的検定には SPSS Ver.24 が使用された。 Table 1 イメージ体験に関する質問項目 イ メ ー ジ 体 験 の 質 的 側 面 イメージ視点 イメージはあなた自身が体験しているように感じましたか?観察しているよ うに感じましたか? イメージの鮮明性 そのイメージははっきり見えましたか?それともぼんやりしていましたか? イメージへの集中 イメージすることに集中できましたか? イメージ内での リラックス感 イメージの中でリラックスすることができましたか? 身 体 感 覚 の 知 覚 音の知覚 イメージの中で音を感じましたか? においの知覚 イメージの中でにおいを感じましたか? 触感の知覚 イメージの中で触感を感じましたか? 温度の知覚 イメージの中で温度を感じましたか? 風の知覚 イメージの中で風を感じましたか? 自 由 記 述 草原イメージの内容 どのような草原だったか、できるだけ具体的に教えてください。 イメージ内での 過ごし方 イメージの中であなたは何をしましたか? イメージ内での心的 状態 イメージの中であなたはどんな気持ちだったか教えてください。 イメージ法を実施 した際の感想 イメージ法をしてみた感想を教えてください。 ― 58 ―

(7)

3 結果

イメージ法の実施前後の気分の比較 イメージ法の実施に関するストレスマネジメント教育の効果について分析を行った。その際 に、研究協力者のイメージ視点の違いによるストレスマネジメント教育の効果の違いについて 分析を行うために、イメージ視点に関する回答から、研究協力者を観察者視点群(以下、観察 群)、行為者視点群(以下、体験群)、両方の視点を体験した群(以下、両方群)に分類した。 観察群は 8 名、体験群は 11 名、両方群は 8 名であった。また、TMS の各下位因子に含まれる 項目の平均値を、「緊張」因子得点、「抑鬱」因子得点、「混乱」因子得点、「疲労」因子得点、 「怒り」因子得点、「活気」因子得点として統計学的分析に用いた。観察群、体験群、両方群に おける TMS 各因子得点の平均値と標準偏差を Table 2 に示した。イメージ視点(観察者視点 群・行為者視点群・両方群)と TMS 測定時期(イメージ法の実施前・実施後)を独立変数、 TMS の各因子得点を従属変数とした二要因混合計画の分散分析を行った。これらの結果のま とめを Table 3 に示した。 Table 2 イメージ視点の違いによるストレスマネジメント前後の TMS 得点の平均 TMS イメージ視点 n 実施前 実施後 Mean SD Mean SD 緊張 観察 体験 両方 8 11 8 1.08 1.42 1.29 .64 .80 .70 .54 .70 1.21 .47 .80 .66 抑鬱 観察 体験 両方 8 11 8 1.04 1.24 1.54 .63 1.21 .96 .96 .85 1.17 .58 1.12 .64 混乱 観察 体験 両方 8 11 8 1.67 1.64 2.58 .98 1.03 1.23 1.63 1.39 2.00 .84 .98 .84 疲労 観察 体験 両方 8 11 8 1.96 1.45 2.08 .86 1.28 .71 1.67 1.00 1.67 1.23 .76 .56 怒り 観察 体験 両方 8 11 8 .79 .73 1.17 .96 .61 .76 .50 .33 .88 .56 .47 .40 活気 観察 体験 両方 8 11 8 1.42 1.85 1.00 .66 .89 .87 1.46 2.09 1.58 .50 .78 .53 ― 59 ―

(8)

TMS の「緊張」得点について、測定時期の主効果(F(1, 24)=11.94, p<.01)が有意であ り、イメージ法実施前よりもイメージ法実施後の方が「緊張」得点が有意に低かった。イメー ジ視点の主効果(F(2, 24)=.77, n.s.)および交互作用(F(2, 24)=2.18, n.s.)は有意でなかっ た。 TMS の「抑鬱」得点について、測定時期の主効果(F(1, 24)=5.48, p<.05)が有意であり、 イメージ法実施前よりもイメージ法実施後の方が「抑鬱」得点が有意に低かった。イメージ視 点の主効果(F(2, 24)=.40, n.s.)および交互作用(F(2, 24)=.52, n.s.)は有意でなかった。 TMS の「混乱」得点について、測定時期の主効果(F(1, 24)=3.95, p<.10)が有意な傾向 であり、イメージ法実施前よりもイメージ法実施後の方が「混乱」得点が有意に低い傾向がみ られた。イメージ視点の主効果(F(2, 24)=1.78, n.s.)および交互作用(F(2, 24)=1.08, n.s.) は有意でなかった。 TMS の「疲労」得点について、測定時期の主効果(F(1, 24)=7.87, p<.05)が有意であり、 イメージ法実施前よりもイメージ法実施後の方が「疲労」得点が有意に低かった。イメージ視 点の主効果(F(2, 24)=1.59, n.s.)および交互作用(F(2, 24)=.13, n.s.)は有意でなかった。 TMS の「怒り」得点について、測定時期の主効果(F(1, 24)=11.94, p<.01)が有意であ り、イメージ法実施前よりもイメージ法実施後の方が「怒り」得点が有意に低かった。イメー ジ視点の主効果(F(2, 24)=1.70, n.s.)および交互作用(F(2, 24)=.12, n.s.)は有意でなかっ た。 TMS の「活気」得点について、測定時期の主効果(F(1, 24)=6.39, p<.05)が有意であり、 イメージ法実施前よりもイメージ法実施後の方が「活気」得点が有意に高かった。イメージ視 点の主効果(F(2, 24)=2.72, n.s.)および交互作用(F(2, 24)=1.75, n.s.)は有意でなかった。 Table 3 イメージ視点の違いによるイメージ法実施前後の感情状態の比較 TMS 測定時期の主効果 イメージ視点の主効果 交互作用 緊張 F(1, 24)=11.94** 事前>事後 F(2, 24)=.77 n.s. F(2, 24)=2.18 n.s. 抑鬱 F(1, 24)=5.48* 事前>事後 F(2, 24)=.40 n.s. F(2, 24)=.52 n.s. 混乱 F(1, 24)=3.95 + 事前>事後 F (2, 24)=1.78 n.s. F(2, 24)=1.08 n.s. 疲労 F(1, 24)=7.87* 事前>事後 F(2, 24)=1.59 n.s. F(2, 24)=.13 n.s. 怒り F(1, 24)=11.94** 事前>事後 F(2, 24)=1.70 n.s. F(2, 24)=.12 n.s. 活気 F(1, 24)=6.39* 事前<事後 F(2, 24)=2.72 n.s. F(2, 24)=1.75 n.s.: <.10 * : p<.05 ** : p<.01(以下、同様) ― 60 ―

(9)

イメージ視点とイメージ体験との関連 イメージ視点の違いと、イメージの鮮明性やイメージへの集中、イメージ内で得られたリラ ックス感、イメージ想起時に生起した身体感覚といったイメージ体験の質的な側面との関連性 について分析を行った。 まず、イメージ視点の違いを独立変数、「イメージの鮮明性」得点および「イメージへの集 中」得点、「イメージ内でのリラックス感」得点を従属変数とした一元配置分散分析を行った。 イメージ視点の違いによる「イメージの鮮明性」得点、「イメージへの集中」得点、「イメージ 内でのリラックス感」得点の平均値と標準偏差、一元配置分散分析の結果のまとめを Table 4 に示した。「イメージの鮮明性」に関する分析の結果、有意な結果はみられなかった(F(2, 24)=1.21, n.s.)。また、「イメージへの集中」に関する分析の結果、有意な結果はみられなか った(F(2, 24)=.72, n.s.)。「イメージ内でのリラックス感」に関する分析の結果、有意な結 果はみられなかった(F(2, 24)=.45, n.s.) イメージ想起時に生起した身体感覚の有無に関する人数比を研究協力者のイメージ視点別に 集計し、χ2 検定と残差分析を行った。これらの結果のまとめを Table 5 に示した。 音に関する χ2 検定の結果、人数の偏りに有意差はみられなかった(χ2 =2.47, n.s.)。におい に関する χ2 検定の結果、人数の偏りに有意差はみられなかった(χ2 =.64, n.s.)。触感に関する χ2 検定の結果、人数の偏りに有意差はみられなかった(χ2 =.00, n.s.)。温度に関する χ2 検定の 結果、人数の偏りに有意差がみられた(χ2 =2.47, n.s.)。温度に関する残差分析の結果、観察群 で温度を生起しなかった者が期待度数よりも有意に少なかった(z=2.18, p<.05)。また、体 験群では、温度を生起した者が期待度数よりも有意に多く(z=2.37, p<.05)、温度を生起し なかった者が期待度数よりも有意に少なかった(z=−2.10, p<.05)。風に関する χ2 検定の結 果、人数の偏りに有意差はみられなかった(χ2 =.18, n.s.)。 Table 4 イメージ視点の違いによるイメージ体験の質的側面の比較 イメージ体験の質的側面 イメージ視点 n Mean SD F(df ) p イメージの鮮明性 観察 体験 両方 8 11 8 1.07 1.45 .75 1.07 .93 1.04 1.21(2,24) n.s. イメージへの集中 観察 体験 両方 8 11 8 1.38 1.73 1.50 .74 .65 .54 .45(2,24) n.s. イメージ内での リラックス感 観察 体験 両方 8 11 8 1.75 1.91 1.88 .46 .30 .35 .72(2,24) n.s. ― 61 ―

(10)

4 考察

オンラインによるイメージ法を用いたストレスマネジメント教育の有効性 イメージ法による気分の変化について:本研究の第一の目的は、イメージ法の効果に影響を 与えるとされるイメージ視点に着目して、イメージ法による気分の変化やイメージ体験にどの ような違いが生じるのかということについて詳細に検討を行い、オンラインによるイメージ法 を用いたストレスマネジメント教育の有効性を検討することであった。イメージ法実施前後の 気分の変化に対してイメージ視点の違いが及ぼす影響について分析した結果、イメージ視点の 違いによる主効果は有意でなく、TMS の測定時期の効果のみが有意であった。このような結 果から、観察者視点を体験した者においても、行為者視点を体験した者においても、その両方 を体験した者においても、イメージ法の実施前と比較してイメージ法の実施後の方が、緊張や 抑鬱、混乱、疲労、怒りなどの不快な気分が軽減し、活気といった快の気分が増大したことが 示された。このような結果が得られた背景には、研究協力者のイメージ視点によらず、良好な Table 5 イメージ視点の違いによる身体感覚の知覚の有無に関する人数比 観察 体験 両方 音 感じた 4(14.29%)−.24 8(28.57%)1.63 3(10.71%)−1.08 感じなかった 5(17.86%) 2.18 3(10.71%) −1.34 5(17.86%) 1.33 におい 感じた 2(7.1%) .29 3(10.71%) .61 1(3.57%) −.73 感じなかった 6(21.4%).00 8(28.57%)−.22 7(25.00%).97 触感 感じた 5(17.86%) .12 7(25.00%) .25 5(17.86%) .12 感じなかった 3(10.71%).12 4(14.29%).06 3(10.71%).12 温度 感じた 3(10.71%) −1.87 10(35.41%) 2.37* 5(17.86%) −.13 感じなかった 5(17.86%) 2.18* 1(3.57%) −2.10* 3(10.7%) .38 風 感じた 6(21.43%).00 9(32.14%).67 6(21.43%).00 感じなかった 2(7.14%) .29 2(7.14%) −.34 2(7.14%) .29 上段は人数(%)、下段は調整された残差を示す。 残差が正の値の場合は期待度数より多い、負の値の場合は期待度数よりも少ないことを示す。 ― 62 ―

(11)

イメージ体験が得られたためと考えられる。橋元(2020)は、コロナ渦において、休息し、リ ラックスする時間が増加したと回答した者は抑鬱が減少していたことを明らかにした。本研究 においても、「イメージ内のリラックス感」得点はいずれの群においても天井効果がみられ、 イメージ視点の違いによる有意差はみられなかった。特に「イメージ内でのリラックス感」に ついては、全ての研究協力者 27 名のうち 23 名が「リラックスすることができた」と回答し、 「リラックスすることができなかった」と回答した者は 1 名もいなかった。また、「イメージへ の集中」得点についても全ての群において天井効果がみられ、「イメージの鮮明性」得点につ いても全ての群の総和においては天井効果がみられていた。このことから、オンラインによる イメージ法の実施によって、研究協力者がどのようなイメージ視点であったとしても、イメー ジに集中し、鮮明なイメージを想起でき、リラックス感を得るといった良好なイメージ体験が できたことにより、不快感情が低減し快感情が増大するという気分の変化が得られたと考えら れる。オンラインによるイメージ法の実施がリラックス感を体験することにつながるのであれ ば、コロナ渦にある人々にとってもソーシャルディスタンスを保ちながらリラックス体験を促 進し、抑鬱などの不快気分の減少や快の気分の活性化などストレスマネジメントとして有効に 作用することが推察される。 また、本研究では、観察者視点群、行為者視点群、両方群のいずれの群においてもイメージ 法実施前後で気分の変化が示され、イメージ視点による差はみられなかった。この結果は、心 理療法においてイメージ法を用いる際には、行為者視点の方が観察者視点より効果的であると いう田嶌(1987)や成瀬ら(1999)の指摘とは異なった結果であると言える。この背景には、 継続的に展開される心理療法と、本研究で実施したような単発で実施される研修型のグループ ワークといった、イメージ法を実施する場面や構造の違いが要因として考えられる。心理療法 としてイメージ法を用いる際には、イメージ視点は重要であり、イメージ法の治療機序として あげられている体験様式という概念においても、イメージ視点について言及されている(田 嶌,2003;松本,2008)。しかしながら、本研究で実施されたイメージ法は、研修型のストレ スマネジメント教育として単発で行っており、心理療法で行われるイメージ法とは異なる。そ こでは、構造化された個人心理療法のように、セラピストとクライエントがやりとりをしなが らイメージを展開していくのではなく、セラピストからグループメンバーに対して一方向的に 教示がなされることが主となっている。したがって、単発の集団形式で実施されるストレスマ ネジメント教育などにおいては、イメージ視点にかかわらず、イメージ法の実施によって不快 な気分の低減と快の気分の活性化を促進することができ、イメージ法の適用の効果が広く一般 化できる可能性を期待できるのではないかと考えられる。 イメージ視点とイメージに伴う身体感覚との関連性:イメージ法の効果に影響を及ぼす要因 として、イメージ視点と並んであげられるのがイメージ想起時における身体感覚の生起である ― 63 ―

(12)

(福留,1999;田嶌,2011)。イメージ内で身体感覚が生起する体験が、イメージ法が有効に働 くうえで重要であることが指摘されている(田嶌,1987;藤岡,1999;福留,2016)。古川ら (2018)は、健康な大学生にイメージ法を実施し、イメージ想起時の身体感覚の生起の有無が イメージ法による効果にどのような影響を及ぼすかを検討した結果、イメージ想起時に身体感 覚を生起した者の方がそうでない者より、イメージ法によるリラックス感が得られることを実 証的に示した。そこで、本研究においても、イメージ想起時に生起された身体感覚とイメージ 視点との関連性について分析した結果、行為者視点群が観察者視点群および両方群と比較して 有意に温度を生起していたことが示された。イメージ法の治療機序とされている体験様式の重 要性を指摘した田嶌(2011)は、イメージの体験様式が最も高度化した「イメージ受容」の段 階では、イメージによって生起された感情をゆったりと受け止められるようになることに伴っ て、「身体の中が温かくなる感じ」などの身体感覚が生じると述べている。このことをふまえ ると、イメージ法においては、身体感覚の中でも特に温度感覚が重要になってくる可能性が考 えられる。本研究においても、行為者視点であった者に温度の感覚が生起していた者が多かっ た。イメージ視点について、田嶌(1987)や成瀬ら(1999)は、行為者視点をとることによ り、視覚像のみならず筋感覚や感情を伴ったイメージが可能となり、イメージが深まりながら 臨床的な効果が生じると述べているが、本研究で示された行為者視点とイメージに伴う温度の 感覚との関連性についての結果は、田嶌(1987)や成瀬ら(1999)の指摘を一部指示するもの であった。一方で、本研究では行為者視点と温度感覚との関連性が示されたものの、イメージ 視点の違いによる気分の変化やリラックス体験に差はみられなかった。しかし、先行研究で指 摘されるイメージ視点や身体感覚の生起と臨床効果との関連性については主に継続的に実施さ れる個別形式の心理療法場面を想定したものであり、本研究のように単発で実施されるストレ スマネジメント教育を想定したものではない。そのため、継続的に心理療法を実施する際に は、イメージ視点の違いが、身体感覚の生起の仕方に影響を与え、イメージ法の臨床的効果に 差が出る可能性も考えられる。しかしながら、本研究では継続的な実施によるイメージ体験の 変化や臨床的効果については検討しておらず、これらの考察は仮説の域を出ないため、今後の 検討が求められよう。 また、本研究においては、行為者視点群の研究協力者のみならず、全ての研究協力者 27 名 のうち 26 名がイメージ想起時に、温度のみならず、音や触感、風などの身体感覚が生起した と回答していた。このことから、研究協力者のほとんどに何らかの身体感覚が生じていたもの と推測される。身体感覚の生起を伴うことでイメージ法によるリラックス効果がみられたとい う古川ら(2018)の知見をふまえると、本研究において、イメージ視点にかかわらず、研究協 力者全体において良好なイメージ体験とポジティブな気分の変化が示されたのは、イメージに 伴って身体感覚が生起された者が多かったためであると推察される。このような結果が得られ ― 64 ―

(13)

た背景として、イメージ法の実施において、身体感覚に注意を向けるような教示を行ったこと が影響していると考えられる。しかしながら、古川ら(2018)の研究において、身体感覚に注 意を向けるような教示を受けながらも身体感覚が生起しなかった者が 3 割程度存在していたこ とをふまえると、身体感覚に注意を向けるような教示を行ったことだけが、本研究の研究協力 者の 9 割がイメージ想起時に何らかの身体感覚を生起していた要因であるとは考えにくい。古 川ら(2018)の研究と本研究との教示の相違点として、思い浮かべてもらう草原のイメージを 指定した点があげられる。古川ら(2018)の研究では、イメージの最初に「あなたがとてもく つろげて、楽な気持ちになれる草原をイメージしてみましょう」とのみ教示していた。しか し、どのような草原を思い浮かべるかを体験者側にゆだねると、雨や嵐の日の草原のイメージ や自分の膝くらいの長さの草が生えた草原で身動きが取れなくなるイメージなど、ネガティブ な体験につながるイメージが想起されてしまうリスクが想定された。そのため、本研究におい ては、「あなたがとてもくつろげて、楽な気持ちになれる、晴れの日の草原をイメージしてみ てください。草の長さはあなたの足首くらいの長さで、青々とした草が生えている草原です」 と教示した。実際にイメージ法実施後の自由記述回答の中でも、ネガティブなイメージ体験に ついて記述していた者はいなかった。したがって、身体感覚を促す教示を行ったことに加え て、想起する草原のイメージを指定したことで、ほぼ全員の研究協力者がイメージ想起時に何 らかの身体感覚を生起したのではないかと考えられる。また、古川ら(2018)の研究と本研究 との相違点として、イメージ法を実施した環境が異なる点もあげられる。古川ら(2018)の研 究では、実験室にて 1∼3 名の他者と同じ空間でイメージ法を実施していたが、本研究では自 室にて実施しており、Web カメラもオフにしていたため、研究協力者は外部からの刺激がよ り少ない環境でイメージ法に取り組むことが可能であったかもしれない。このような教示の工 夫と、イメージ法を実施した環境といった要因が、本研究ではどのようなイメージ視点をとっ ていたとしても、研究協力者全体の傾向として鮮明なイメージとイメージへの集中、リラック ス感といった良好なイメージ体験をもたらし、気分のポジティブな変化を促進したと考えられ る。しかしながら、教示の工夫およびイメージ法を実施した環境による効果については、本研 究では実証できていないため、今後検討すべき課題であると言える。 オンラインでのイメージ法を行う際の工夫と留意点 インターネット環境について:オンラインでイメージ法を行うにあたって、最も必要なこと として、インターネット環境の整備があげられる。本研究では、事前に指導教員がテレビ会議 システムを用いてゼミナールを何度か行っていたため、研究協力者がどのようなインターネッ ト環境にあるのかを把握することができていた。さらに、質問フォームの実施についても、普 段ゼミナールで行っている手法を用いたため、研究協力者の混乱も少なかったと考えられる。 ― 65 ―

(14)

また、自由記述の回答の中にも「ゆっくりとした話し方やストレッチで心身のリラックスが出 来てよかった」や「イメージ法でリラックスできたこともありますが、(教示者)のゆっくり な温かい声にもリラックスできたと思います」といった記述がみられたことから、声のトーン や教示のペースが重要になると言える。本研究においてはオンライン上でイメージ法を実施す るにあたって、教示が伝わりやすいように、語尾が小さくならないよう最後まで声のトーンを 落とさないこと、ハキハキと話すことを意識していたが、インターネット環境に不備が生じる ことにより、重要な要素と考えられる声のトーンや教示のペースが乱れ、イメージ体験に集中 することが困難になる可能性が考えられる。そのため、オンラインにてイメージ法を行う際に は、インターネット環境の整備や参加者のインターネット環境についての事前の確認が必要に なると考えられる。 イメージ法実施前の準備について:本研究では、イメージ法を実施する前に、ストレスマネ ジメントおよびイメージについての講義を行い、さらに、イメージを想起する練習を行った。 実際に、自由記述回答の中で、「練習のときにイメージしたのも今より過去に見たことがある ようなものばかり頭に浮かんだ」という記述や「自分が創り出した草原、というよりか、過去 の自分、過去に行ったことのある場所が思い浮かんだ」、「イメージした物は、実際に見たり、 聞いたり、知っている物やことの情報を元にして生まれるのかなと思いました」といった記述 がみられた。これらのことから、イメージ法を実施する前に指定されたイメージを想起する練 習を行ったことによって、イメージ法に対する抵抗感の軽減や、イメージを想起するためのウ ォーミングアップにつながったのではないかと考えられる。また、事前にストレスマネジメン トについての講義を行っていたことで、イメージ法に取り組むモチベーションの向上に繋がっ たのではないかと考えられる。 本研究の限界と課題 本研究では、研究協力者がイメージ内で行為者視点、観察者視点、その両方の視点を体験し ていたとしても、研究協力者は鮮明なイメージとイメージへの集中、リラックス感といった良 好なイメージ体験や、イメージに伴う身体感覚の生起を体験し、気分のポジティブな変化が促 進されたことが示唆された。その要因として、教示の工夫およびイメージ法を実施した環境が あげられる。しかしながら、教示の工夫やイメージ法を実施した環境の効果については、本研 究では十分に検討することができなかった。したがって、本研究で用いた教示と古川ら (2018)で使用された教示との比較や、自室でイメージ法を実施する場合と実験室で実施する 場合との比較、オンラインで Web カメラをオフにした状態でイメージ法を実施する場合とオ ンにした状態で実施する場合との比較などを詳細に検討することが求められる。 また、本研究では、イメージ法の実施前に指定されたイメージを想起する練習を行ったこと ― 66 ―

(15)

によって、イメージ法に対する抵抗感の軽減およびイメージを想起するためのウォーミングア ップにつながった可能性や、事前にストレスマネジメントについての講義を行っていたこと で、イメージ法に取り組むモチベーションの向上につながった可能性が考えられた。しかし、 指定されたイメージの想起の練習やストレスマネジメントに関する事前講義に関する効果につ いては、本研究の結果のみでは断定ができない。したがって、今後、イメージ想起の練習を行 ってからイメージ法を実施した群とイメージ想起の練習なしでイメージ法を実施した群との比 較や、イメージ法前にストレスマネジメントについての講義を受けた群とイメージ法のみを実 施した群とで比較検討することが求められる。これらのことを詳細に比較検討していくことに よって、今後、ストレスマネジメントにおいてイメージ法を実施する際の有効な知見が蓄積さ れると考えられる。 文献 藤岡孝志(1999).イメージ療法における動作の活用.現代のエスプリ ,387, 84-90. 福留留美(1999).心理臨床におけるイメージ体験.現代のエスプリ, 387, 60-67. 福留留美(2016).実践イメージ療法入門:箱庭・描画・イメージ技法の実際.東京:金剛出版. 福永知子(2000).高齢者のストレスマネジメント.老年精神医学誌, 11, 1347-1352. 古川依里香・山中寛・富原一哉(2018).イメージ想起時の身体感覚の有無がイメージ体験に与える効 果の検討.リハビリテイション心理学研究, 44, 63-72. 橋元良明(2020).新型コロナ禍中の人々の不安・ストレスと抑鬱・孤独感の変化.情報通信学会誌, 38, 25-29.

Harris, D. V., & Robinson, W. J.(1986). The effects of skill level on EMG activity internal and external im-agery. Journal of Sport Psychology, 8, 105-111.

Hatakeyama, T.(1997). Adult and children with high imagery show more pronounced perceptual priming ef-fect. Perceptual and Motor Skills, 84, 1315-1329.

金ウィ淵・津田彰・松田輝美・堀内聡(2011).本邦における予防的ストレスマネジメント研究の最近 の動向.久留米大学心理学研究, 10, 164-175. 木村美也子・尾島俊之・近藤克則(2020).新型コロナウイルス感染症流行下での高齢者の生活への示 唆:JAGES 研究の知見から.日本健康開発雑誌, 41, 3-13. 黒木俊英(2020).新型コロナ・パンデミックに関連するメンタルヘルスの課題.教育と医学, 68, 292-296. 許寧・澤聡一・田嶌誠一(2006).開眼イメージ法と閉眼イメージ法の差異に関する研究:性格特性と イメージ傾向に注目して.九州大学心理学研究, 7, 203-210. 松本明夫(2008).イメージ療法におけるイメージの体験過程に関する研究:イメージ体験の深まりを 評定する試み.心理臨床学研究, 26, 269-278. 松尾直子・菊池はるか(2000).イメージトレーニングの実際.上田雅夫(監修).スポーツ心理学ハン ドブック (pp.233-247).東京:実務教育出版. 宮城重二(2009).健康に影響する生活 要 因.苫 米 地 孝 之 助(編 著).健 康 管 理 論 第 3 版(pp.41-69).東京:建帛社. 成瀬悟策・水島恵一・藤原勝紀(1999).座談会 イメージ療法を考える:その未来をみつめて.現代 ― 67 ―

(16)

のエスプリ, 387, 5-36.

大隈靖子(1987).イメージの様式と身体感覚:“しているイメージと”見ている“イメージ.九州大学 教育学部紀要, 32, 237-248.

Richardson, A.(1969). Mental Imagery. New York : Springer.(鬼沢貞・滝浦静雄(訳)(1973).心像. 東京:紀伊国屋書店.) 齋藤憲司(2020).大学生活で出会うストレス.齋藤憲司・石垣琢麿・高野明(著)大学生のストレス マネジメント:自助の力と援助の力 (pp.1-24). 東京:有斐閣. 四方田健二(2020).新型コロナウイルス感染拡大に伴う不安やストレスの実態:Twitter 投稿内容の計 量テキスト分析から.体育学研究, 65, 757-774. 田嶌誠一(編著)成瀬悟策(監)(1987).壺イメージ療法:その生いたちと事例研究 .大阪:創元社. 田嶌誠一(1989).心身相関とイメージ.季刊精神療法, 15, 16-24. 田嶌誠一(2003).イメージ面接.田嶌誠一(編)臨床心理面接技法 2 , 207-308.東京:誠信書房. 田嶌誠一(2011).心の営みとしての病むこと:イメージの心理臨床 .東京:岩波書店. 竹中晃二(1997).子どものためのストレス・マネジメント教育 .京都:北大路書房. 徳田完二(2011).一時的気分尺度(TMS)の妥当性.立命館人間科学研究, 22, 1-6. 津田彰・岡村尚昌・堀内聡・田中芳幸・津田茂子(2008).医療における心理学の意義と役割:健康心 理学的視点,ストレス科学, 22, 205-215. 上杉喬(1983).イメージと思考.水島恵一・上杉喬(編).イメージの基礎心理学 (pp.103-136).東 京:誠信書房. 山中寛(2013).ストレスマネジメントと臨床心理学:心的構えと体験に基づくアプローチ. 東京:金 剛出版. 山中寛・冨永良喜(2000).動作とイメージによるストレスマネジメント教育(基礎編):子どもの生き る力と教師の自信回復のために .京都:北大路書房. 横山和仁(1990).POMS(感情プロフィール検査)日本語版の作成と信頼性および妥当性の検討.日 本公衆衛生雑誌, 37, 913-918. ― 68 ―

参照

関連したドキュメント

2Tは、、王人公のイメージをより鮮明にするため、視点をそこ C木の棒を杖にして、とぼと

ロボットは「心」を持つことができるのか 、 という問いに対する柴 しば 田 た 先生の考え方を

睡眠を十分とらないと身体にこたえる 社会的な人とのつき合いは大切にしている

ところが,ろう教育の大きな目標は,聴覚口話

Rumiko Kimura* College of Nursing and

手話の世界 手話のイメージ、必要性などを始めに学生に質問した。

   がんを体験した人が、京都で共に息し、意 気を持ち、粋(庶民の生活から生まれた美

17) ,safe instruction in martial arts requires that instructors be:1)individuals who can appropriately cope with any eventuality so that they can prevent accidents