105 すこしまえ本プロジェクト代表者の一人は、 現代世界の特徴を、グローバル化・メディア化・ 個人化という3点からとらえようとしたことが ある。 現代世界を生きる人々は、グローバルな場所 としてのこの世界に生きている。好きな歌であ ればどこの国のものだろうが頻繁に聞く。遠い 場所で起きたテロリズムに心を痛め、手には世 界中で同じスマートフォンを握りしめる。国境 を越える情報環境のなかで育った子どもたちは、 誰とでもつながることを躊躇しない。 しかしその一方で、人々はきわめて個人的な 生活様式を生きているようにも見える。人々を つないだ社会統合の仕組みは弱まり、地域社会 や労働組合などの組織的紐帯など持たずとも、 ひとりの立派な社会人として生きることが現実 的に(少なくとも日本では)可能になっている からだ。 グローバルな情報空間では誰とでもつながっ ていたいと欲望しながら、生身の社会では強い 紐帯をもたずに生きる。一見対立するこのふた つの状況を社会的に結びつけるもの、それこそ が、分散する人と人のあいだを媒介するさまざ まなメディアであろう。 欲望と紐帯のベクトルが形成する心理的・社 会的な生活様式の歴史的形態に応じて、メディ アもまたその媒介の形態を、産業とむすびつき ながら歴史的に変化させてきた。たとえば、映 像を見る環境は、集合し集団で見る〈映画〉から、 分散しつつ同時に見る〈テレビ〉を経て、分散 しつつ非同時的に(それでも同じ映像を多数で) 見る〈YouTube〉へと変化している。ここで注 目すべきなのは、視聴行為がより個人化された 様式へ向かいつつも、同じ映像を見た他者たち と語り合うための機能は決して失われることが なかった点である。 ベルナール・スティグレールが言うように、 「わたしの心的環境はこうして、いわばそのま まで社会的になるだけでなく、ハイパーメディ アによって社会的になる」(石田英敬他編『メ ディア哲学』東京大学出版会 , 2015年 , p.80)。 メディア技術は、個々人が分散した状態で存在 することを可能にするという意味で関係を解体 させもするが、別のかたちで紐帯をつくりだし つづけているのである。個々人の心的環境は、 他の個体との関係を解体されるとともに、メ ディアによってふたたび連結される。この意味 において現代世界では、メディア研究と社会心 理学とはそもそも切り離しえないものだ。 本プロジェクトの3年間で問われていたのは、 こうした現代的現象の意味をまずは明確にとり だすことであったし、次にその認識を各々の学 問がもつ知的資源と照応させながら、より深く 理解していくことであったと思われる。残念な がら本プロジェクトはその当初の目標であった 共著の刊行には至っていないが、それはその企 図の大きさのゆえだと考えたい。引き続き何ら かの形で共同研究をすすめていくことが必要で ある。
共同研究プロジェクト2015年度活動報告「メディア・社会心理研究の有機的統合に関する共同研究」
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本報告書は、日本財団の 2015
代表研究者 小川 莞生 共同研究者 岡本 将駒、深津 雪葉、村上
代表研究者 川原 優真 共同研究者 松宮
経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を
6 の事例等は注目される。即ち, No.6
【 大学共 同研究 】 【個人特 別研究 】 【受託 研究】 【学 外共同 研究】 【寄 付研究 】.
社会学研究科は、社会学および社会心理学の先端的研究を推進するとともに、博士課
共同研究者 関口 東冶