107 本プロジェクトの目的は、新設されたメディ ア・社会心理コースの本学における位置づけを 確認するとともに、学際的研究の基礎を確立す ることにある。そのため、今年度はメディア・ 社会心理において専門科目の中核を担う教員の 元指導教官を招いた研究会を企画した。 今回、お招きしたのは、社会心理学の浅井暢 子教員の指導教官である唐澤穣氏である。唐澤 氏には、集団アイデンティティーの問題を社会 心理学がどのように扱うかについて、講演して いただいた。講演は、社会心理学において集団 アイデンティティーが研究された最初の例まで 遡って学説史的な議論を紹介しつつ、徐々に最 新の研究にまで話を広げるという展開を見せた。 社会心理学における集団アイデンティティーの 研究は「人間にとって内集団 / 外集団という感 覚がどの程度重要であるか?」という基礎的な 問いに焦点を当てたものから、徐々に愛国心 (Nationalism)や愛郷心(Patriotism)、国際主 義(Internationalism)などに関する応用的なも のへと発展していったという。 集団アイデンティティー研究における最初期 の実験では、被験者たちをとくに意味のない2 グループに分け、2つのグループのあいだで報 酬を分配させるという課題を課した。この実験 からは被験者たちが自身の属するグループと他 のグループとの間に差をつけようとする、いわ ゆる「えこひいき」の構造を抽出することがで きたという。この種の研究から発展したナショ ナリズム研究は、主に欧米で盛んにおこなわれ ている。その手法を日本に持ち込み、実際に研 究を進めている唐澤氏は、その方法論における 難しさを強調する。質問紙のワーディング1つ とっても、日本人と欧米人の間には溝が深い。 また、そもそも Nationalism と Patriotism を日 本人が分離して考えているかどうか。そういっ た手法面の議論をするだけでも、他分野の研究 との関係性が浮き彫りになってくる。とくに、 ナショナリズムの問題は、他分野でも興味の対 象となることが多いのに加え、昨今の社会情勢 とも深くかかわっているため、全員の興味関心 の結節点として作用したといえる。 研究会は発表の途中でドンドン質問してよい とする形式をとったため、2時間の間に十分に 議論を尽くすことができた。参加者がメディア 論や社会学、思想哲学、政治学、文化人類学な どの視点から様々な質問を投げかけたことで、 本プロジェクトが目指す異分野の有機的統合に も寄与したと考えられる。人数は少なかったも のの、プロジェクトの目的を十分に踏まえた意 義深い研究会となった。 このような企画はシリーズとして計画してい るため、次年度はメディア論の長﨑励朗教員の 元指導教官である佐藤卓己氏をお招きしてメデ ィア論に関する講義をしていただくことを予定 している。各教員が、互いの核となっている専 門性を理解し、敬意を抱きあうことによって、 本プロジェクトの最終目標である共著執筆が可 能になることが今後、期待される。
共同研究プロジェクト メディア・社会心理研究の有機的統合に関する共同研究 活動報告
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