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植物が生きていることを知る試み:ヨウ素デンプン反応と水の通り道の実験 理科指導法の授業での実践

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実践報告

植物が生きていることを知る試み:ヨウ素デンプン反応と水の通り道の実験

理科指導法の授業での実践

水 野 暁 子

日本福祉大学 名誉教授

Experiments for Recognizing Plants as Living Things:

Issues in Science Education

Akiko MIZUNO

Emeritus Professor, Nihon Fukushi University

Keywords:植物,菌類,理科,ヨウ素デンプン反応,水の通り道 要旨  「ヨウ素デンプン反応」と「植物の水の通り道」の実験を理科指導法の授業で行なった.「ヨウ素デンプン反応」の実験で は,あえて反応が起こらない材料も使い,「植物の水の通り道」の実験では,植物以外のもの,キノコやスポンジも試した. これらの実験を介して,学生たちは,「植物が生きている」という認識に,一歩近づくことができたと思われる.併せて, 教師を目指す学生たちにとっての課題や教材の選択の面からも考察した.

Ⅰ.はじめに

 教師を目指す大学生たちに向けて実施した理科指導法 の授業において,「ヨウ素デンプン反応」と「水の通り 道」の実験を行なった.いずれも,小学校 6 年生の理 科の授業で取り組まれている課題であり,大学生たちも 皆経験しているはずのものである.ただ,小学校以来, 植物を観察したり実験を行なったり,さらに高校ではか なり新しい知見についても学んでいたにも関わらず,大 学生の中にも,植物を生物と思っていない人が何割かい ることが分かっている(水野 2013,2014).昨日 1 日 に食べたものを書きだし,その原材料を生物に由来する ものとそうでないものに分類するというアンケートを実 施したところ,多くの学生たちが,ジャガイモや豆やニ ンジンや米を生物でないと思っていたのである.人間は 他の生物を食べずには生きていけない動物である.すべ ての生物たちのエネルギー源を作る植物が生物であるこ とを認識できるようにすることは,理科教育の重要な目 的の一つであると私は考えている.しかし,人間と同じ ように食べたり出したり動いたり卵や子どもを産んだり する動物たちに比べて,植物たちを命ある仲間と感じる ことは難しい.植物を理解するには,より一層の働きか け,多様な生物の共通性と違いが分かるような取り組み が必要である(水野 2013,2014).そこで,「ヨウ素 デンプン反応」と「水の通り道」の実験において,植物 の中での多様性や植物以外のものとの比較もできるよう な試みを行なった.学生たちのレポートの記述も紹介し

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起こるものではないことを,学生たちは十分に理解し てはいないことが分かっていた.そこで,小麦粉・片 栗粉・砂糖・塩を用意し,ヨウ素デンプン反応の実験 を行なった.   ヨウ素デンプン反応の観察に際しては,バナナ, ジャガイモ,サツマイモなどは切断面に,小麦粉・片 栗粉・砂糖・食塩には,粉の上にヨウ素液を 1 滴た らして,色の変化を観察した.クズやアシなどの葉 は,すりつぶして出た液を濾紙につけ,その上にヨウ 素液を 1 滴たらして観察した.なお,濾紙を用意し たのは,ティッシュペーパーやペーパータオルの中に はデンプンが含まれているものがあり,その上に実験 材料を置いてヨウ素液をたらした場合,実験結果が紛 らわしくなるためであり,このことは予め学生たちに 説明した. 2)学生たちの予想と実験結果:表 1 に,ヨウ素デンプ ン反応についての学生たちの予想と実験結果を示す. 「反応が強い」とは,ヨウ素デンプン反応のため濃い 紫色に,あるいは青黒く呈色した場合を指し,「反応 ながら,報告したい.

Ⅱ.理科指導法の授業での実践

1.「ヨウ素デンプン反応」の実験 1)実験材料および方法:実験材料は,新しいバナナと 熟したバナナ,クズの葉とアシの葉,ジャガイモとサ ツマイモ,および,小麦粉・片栗粉・砂糖・食塩は筆 者が用意し,その他は,学生たちが試してみたいもの を持ち寄った.新しいバナナは,表皮に黒い点が現れ ていないものを実験前日に購入したもので,熟したバ ナナは,購入後数日経っていて黒い点が多く現れたも のであり,新しいバナナより熟したバナナの方が,甘 味が増している.クズとアシの葉を用意したのは,い ずれもキャンパス内外で採取できること,また,クズ の葉はヨウ素デンプン反応が起こりやすく,イネ科植 物は,葉にデンプンを蓄積しないものが多いことが分 かっており(大西 2008),教師を目指す学生たちに は両方体験してほしいからである.また,過去数年間 の授業での経験では,ヨウ素デンプン反応は正にデン プンに対して起こるものであって,糖類全般に対して 予想 ジャガイモ サツマイモ 長芋 セロリ タマネギ ナス キュウリ 青梗菜 枝豆 エリンギ 熟バナナ 新バナナ ミカン 反応が強い 43 47 4 0 0 0 0 0 2 1 14 16 0 反応が弱い 3 2 1 1 3 0 0 3 1 5 15 17 3 反応が起こらない 0 0 0 6 3 3 5 0 0 5 4 0 3 クズ アシ イネ ササ 小麦粉 片栗粉 砂糖 塩 乾燥寒天 反応が強い 5 0 0 0 9 23 5 1 1 反応が弱い 12 9 2 1 9 9 10 3 3 反応が起こらない 7 13 0 1 5 4 22 22 1 ラムネ 除菌シート ティッシュ スポンジ 樹脂棒 バナナ イモ系 草タイプ 葉 葉(単子葉) 葉(双子葉) 反応が強い 4 0 0 0 0 15 2 1 1 0 0 反応が弱い 1 0 1 0 0 12 0 2 5 1 0 反応が起こらない 0 2 5 5 3 2 0 0 3 0 0 実験結果 ジャガイモ サツマイモ 長芋 セロリ タマネギ ナス キュウリ 青梗菜 枝豆 エリンギ 熟バナナ 新バナナ ミカン 反応が強い 25 54 4 0 0 0 0 / 3 0 1 36 / 反応が弱い 24 0 0 0 0 0 0 / 1 2 20 4 / 反応が起こらない 0 0 0 7 2 2 2 / 1 9 17 0 / クズ アシ イネ ササ 小麦粉 片栗粉 砂糖 塩 乾燥寒天 反応が強い 8 0 / 0 31 39 1 0 0 反応が弱い 24 6 / 1 1 0 0 1 3 反応が起こらない 5 24 / 3 1 1 37 25 1 ラムネ 除菌シート ティッシュ スポンジ 樹脂棒 バナナ イモ系 草タイプ 葉 葉(単子葉) 葉(双子葉) 反応が強い 3 0 2 0 0 16 / 0 0 / 0 反応が弱い 0 0 8 0 0 4 / 3 5 / 1 反応が起こらない 0 2 0 6 4 1 / 0 0 / 0 表 1 ヨウ素デンプン反応についての学生たちの予想と実験結果

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ように,「ヨウ素デンプン反応は,甘いものに対して 起こる」と考えていたことである.砂糖や小麦粉の予 想が違った時に「片栗粉の原料はジャガイモのデンプ ンだった」と気付いて,ヨウ素デンプン反応はデンプ ンに対して起こる反応であることを認識した学生もい た.   バナナは新しいものと熟したものの,どちらが強く 反応するかについての予想は半々であったが,反応の 違いは予想以上であったらしい.予想が外れたり予想 以上に違いがあったりしたことや,砂糖が反応しな かったことから,原因についての考察が始まって, 「バナナは熟すとデンプンが分解されて,ヨウ素デン プン反応が起こらなくなる」という考察に辿りついた 学生もいて,中には,中学校や高校で学習したことも 併せて,「デンプンが分解されて糖になった」という 考察に至った学生もいた.   その他,デンプンの含量が植物によって違うことに 対する驚きや,ティッシュペーパーでヨウ素デンプン 反応が見られることに対する驚きも見られた. が弱い」とは,呈色反応が薄い紫色に留まった場合を 指している.なお,表 1 内の網掛にしたところは, 予想と結果の違いが多かったものであり,予想や実験 結果の表のそれぞれの右下にイタリック文字で表した 箇所は,新しいバナナと熟したバナナ,イモ類のどれ なのか,またどの植物の葉であるかが明確でないもの を集めたものである.実験に関わっての教員からの指 示が伝わりきらなかったものである. 3)実験結果の例   学生たちの実験結果の例を,図 1 ∼ 4 に示す.図 中の黄色く染まっているところはヨウ素液自身の色で あり,青黒く変色しているところが,ヨウ素デンプン 反応が起きているところである. 4)学生たちの予想と実験結果と考察:学生たちのレ ポート記述(表 2)より   レポートの記述を見ると,学生たちが特に驚いたの は,砂糖が反応しなかったこと,小麦粉が強く反応し たこと,バナナは新しい方が強く反応したことであっ た.予想が違った主な原因は,学生たちも書いている 図 1 ヨウ素デンプン反応の結果 左上:小麦粉, 右上:砂糖, 左下:片栗粉, 右下:塩 図 2 ヨウ素デンプン反応 左:新しいバナナ  右:熟したバナナ 図 3 ヨウ素デンプン反応 クズの葉 図 4 ヨウ素デンプン反応 アシの葉

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3)「植物の水の通り道」の実験から学生たちが学んだ こと:学生たちの記述(表 3)より a)キノコは植物ではないこと:学生たちが学んだこ との一つは,キノコであるエリンギが植物ではないと いうことであった.レポートに直接的な記述があった のは数名だが,菌類であるキノコが植物ではないこと を初めて知った学生は,他にもいたであろう.小学校 の理科では,キノコが扱われておらず,高校の生物の 教科書は,新しい知見も多く載せられているが,菌類 についてはわずかしか書かれていない.動くことをし ない植物と菌類を,学生たちが区別していなかったの も無理からぬことと思われる.小学校でも「生物と環 境」の単元では「生物の間には,食う食われるという 関係があること」を学ぶのであるから,光合成をする 植物,食べる動物とともに,落葉・枯れ枝,遺体や排 泄物を分解する菌類について学んだ方がよいのではな いかと思う. b)植物やキノコは,切っても生きていること:レ ポートではないが,実験中に「植物は,切っても生き ているの?」と,声をあげた学生がいた.その学生と は別の学生たちが,「植物は,切り取られても,水を 5)ヨウ素デンプン反応の実験を介して学生たちが植物 に対して感じたこと   学生たちのレポート記述(表 2)には,「自分の体 の中でデンプンが作れる植物は偉大だと思った.」「自 然の植物や野菜,果物には,多くのデンプンが含まれ ていて,私たちの力の源になってくれているのだと改 めて感じた.」というものがあった.植物に対する敬 意も感じられる. 2.「水の通り道」の実験 1)実験材料および方法:実験材料であるセロリ,エリ ンギ,スポンジ,樹脂棒は,筆者が用意した.植物染 色液(ナリカ G40-5704)を使った実験で,「水の通 り道」を観察しやすい材料としてセロリ(平賀ら 1990) を,植物ではない生物として大きくて扱いやすく結果 も見やすい菌類であるエリンギを,また,生物ではな いスポンジや樹脂棒を,比較のために用意した.それ ぞれ切断面を植物染色液につけて 30 分から 1 時間置 いた後,縦断面や横断面を観察した. 2)実験結果の例   学生たちの実験結果の例を,図 5 ∼ 7 に示す. 図 5 水の通り道:セロリの茎の横断面(左)と葉(右) 図 7 水の通り道:ポリウレタンスポンジ(左)と        メラミン樹脂スポンジ(右) 図 6 水の通り道:エリンギの縦断面と横断面

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ヨウ素の反応は甘さで決まると,なんとなく思っていたが,「でんぷん」があるかどうかだった.でんぷんを唾液が糖に変換するの を思いだした. バナナは2種類の反応が起こり,熟したバナナは,デンプンが別のものに変化したのではないかと考える. バナナは,古い方がデンプンが多くなると思っていたのに,逆だった.(糖にかわった…?) バナナにもデンプンがあるとは思わなかった. カタクリ粉は植物由来だから反応があったと考える.しかし,砂糖はサトウキビからつくられているから反応があるかも知れないと 思ったけどなかった. 同じ「葉」でも反応するものとしないものがある. バナナは,デンプンが含まれなくなると甘くなるんだと考えた. 古いバナナの方が甘みがあることから,ヨウ素デンプン反応と何か関係性があるのではないかと思った. 反応が強いのは,デンプンが含まれているからであると考える.古いバナナはデンプンが糖に変わってしまったから,反応が薄くなる. デンプンがあるから反応が強いというのは,中学校の時に学んだから知っていたが,新しいバナナが反応が強くて,古いバナナが反 応が弱いと初めて知った.それは,新しい方はデンプンが多いけど,古い方は熟しているためデンプンが糖に変わったため,反応が 弱いのだということを学んだ. 甘さは熟したバナナの方が高いが,デンプン反応では,若いバナナの方が強い.甘さとデンプンに関係性がないことが分かった. 塩や砂糖が反応がないのに対し,片栗粉に反応があったのは,植物由来から来るのかと考えられた.そういうことを考えるのが,非 常におもしろかった. デンプンと言えば甘いイメージで,砂糖は反応すると思っていたが,しなかった.片栗粉は植物由来で反応したと思ったが,砂糖が 反応しないのは不思議だった. 熟れたバナナの方が反応が強いと思っていたけど,熟れたバナナはあまり反応しなかった.デンプンが糖に変化したからだろう. 若いバナナの方がデンプン反応が強かった.しかし,そこからデンプンが時間が経つと糖に変わるため,熟したバナナの方が甘くなる. どの植物も同じような反応をするのではなく,デンプンに反応する時の反応の仕方も,長芋が一番強く反応したりした.よって,一 つ一つに含まれるデンプンの量も違いがあることに気がついた.このことを活かして,植物に含まれる物質はどんなのがあって,ど のくらいの量が含まれているかなどを調べると面白そうだと思った. 古い方はデンプンが分解され糖になっている.甘く感じるがヨード液には反応しない. 同じバナナでも新しいものと古いものとで実験の結果が違うということをはじめて知りました. バナナは熟すと反応がみられなかったことから,成長する過程でデンプンが使われるのではと考えられる. ヨウ素はデンプンに反応するが糖には反応しない.バナナは熟れるとデンプンから糖に変化しているかも. 植物によってデンプン量や水の通り道が違うことを,改めて感じた. 砂糖など,ヨード液をはじくような感じだったけど,片栗粉と小麦粉が強く反応したのは意外だった. でんぷん=甘いというイメージがあったので,砂糖が反応しなかったことに驚きました. 熟れたバナナと熟れていないバナナの予想が逆だったのは面白かった. デンプンは光合成によりできるものなのに,どうして植物の種類によりデンプンを含む量に違いがあるのか疑問に思った. デンプンがあると色が反応し・・・などの勉強はしてきましたが,どの野菜や植物が反応するなど分からなかったので,反応の結果 をみて,とてもおもしろかったです. エリンギや砂糖には,デンプンが存在していない.エリンギは植物ではないため,エネルギーを作るためのデンプンが必要ないのか なと思った. バナナ(旧)が反応しなかったのは,デンプンが糖?に変わったからではないかと考えました. バナナが熟れているか熟れていないかで反応の変化があった.デンプンが何かに変化したと考えられる.おそらく糖だろう. 同じ植物,同じ種でも,デンプンの量が違うというのは驚いた. 糖分があるものは反応が強いと予想していたので,砂糖が無反応なのが驚いた.また,片栗粉にも反応があり,意外だった. 小麦粉も片栗粉もしっかりと強く反応したので,炭水化物が多く含まれていることが分かったし,摂取しすぎたら太るだろうなと思 いました. 同じバナナでも新しいものと古いものとでは反応に違いが出ることが不思議だなと思います. 小麦粉や片栗粉などの粉系のものは反応しないのではないかと思っていたが,実際はそうではなかった.よく考えてみると,片栗粉 の原料はたしかジャガイモが含まれていた気がするなあ・・・と思いながら実験をすることができた. どうして砂糖は反応しなかったのか分からないので,調べたい. バナナは,デンプンだったものがだんだん別のもの(糖?)に変化すると思った. 片栗粉の成分はイモだということを知り,イモが強く反応したということは,片栗粉も強く反応する. バナナは,古くなることで成分が変化すると思った. 葉が2種類あったが,結果が違ったのが変だなと感じた. 自然の植物や野菜,果物には,多くのデンプンが含まれていて,私たちの力の源になってくれているのだと改めて感じた. 自分の体の中でデンプンが作れる植物は偉大だと思った. 表 2 ヨウ素デンプン反応についての記述(学生たちのレポートより)

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植物に維管束が必要な理由と菌類に維管束が不必要な理由を知りたくなった. きのこなど植物以外のものは,なぜ,全体に水をいきわたらせないのか気になった.(かれたりしないのか) エリンギが植物ではないことを初めて知った. 植物の栄養素をいただいて生きているけれど,どのような組織でできていてどのような栄養素をもっているか分かってきた. 今日学んだことは,キノコは植物ではないということ. 植物はやったことがあったが,キノコはやったことがなく発見があった.キノコは中心と外側が水が吸いやすい質になっている. 植物の方が生きのびるために水分を欲しているのだと感じた. 私は恥ずかしながら,エリンギが植物でないことをはじめて知った.たくさん知らないことがあるので,もっと学びたい. 樹脂棒は,吸っているというよりは沁みている?ついている?という感じ.植物は,吸っている!自発的にやっている,というイ メージだ. エリンギは,まん中に染みる感じで染みていた.時間がたっても,染み込む時間がかかった.どんどん上に上がっていく感じ. 植物には水の通る道があるから,水を吸うのが速いのだと思いました.植物が生きるために進化しているのかなと思いました. セロリが,葉の先まで青くなっていることに驚きました.葉を食べるような野菜はだから水分が多いということを改めて実感しました. 植物は,炭水化物を多く含み,水を体全体に届くような仕組みになっていることが,とても良く理解できた.物体との比較も楽し かった. 植物は,切り取られても,水を吸い上げて成長しようとしていて凄いなと思いました. エリンギは,全体的にしみている気がする.外側と一番中心にかたまっている.セロリは,くっきりと通り道が分かった. 植物は動くことはないため普段は命を感じることはできないが,今回の水の吸収を見て,命が存在していることを実感した.植物と 菌類のそれぞれの特質の違いも分かった. 私の中で,エリンギは,水分を吸収するというイメージがなくて,キノコは収穫された時点で,もう死んでいて,吸収する力はない と思っていたが,少しは吸収されていて驚いた. 植物と植物以外を比べたときに,維管束の有無でこれだけ染まり具合などが違うということがはっきりと分かりました. 葉っぱの先端まで赤くなっているのがおもしろかった.葉はうすくて断面は見れないけど,遠くから見ると本当に赤くてびっくりした. 植物は,水分を送る先が植物以外のものと比べて多い(枝や葉など)のではないかと思った.そのために,いろいろな場所へ水分を 送りやすいように,外側に反応が見られたのではないかと考えた. 吸った後,植物は吸ったまま(保持),植物以外は,吸った後,また吐き出す(出る). 植物は,切っても生きているの? 人と植物は全く違うけど,血管と道管・師管はにているなと思いました. 植物は,茎から葉の先まで青くなって,全体に回った感じがするけど,エリンギは下の方だけなので,どうやって上まで水を持って 行くのか気になりました. 他の班から,「死」がいつなのかが分からないと言っていて,たしかにその通りだと思いました. きのこは全然植物といってもわからない程度のものだが,全く違う結果になったので驚いた. 植物は葉脈などに水が通り,色に染まるが,植物以外のものは,通る水が一定方向でなく,逆に水が出たりすることが分かった.ま た,植物以外のものは,葉脈のような道筋が見つけられなかった. 植物は,ちゃんと筋道を通って水を吸収している.その他は,全体的にまんべんなく吸収している. きのこは,全体で水を吸い上げている.道管・師管というものがないからかもしれない. 植物は,吸った水分を保持しているというより,蒸散しようとして上の方まで染まる. 表 3 水の通り道についての記述(学生たちのレポートより) 吸い上げて成長しようとしていて凄いなと思いまし た.」「私の中で,エリンギは,水分を吸収するという イメージがなくて,キノコは収穫された時点で,もう 死んでいて,吸収する力はないと思っていたが,少し は吸収されていて驚いた.」「他の班から,「死」がい つなのかが分からないと言っていて,たしかにその通 りだと思いました.」と,レポートに書いていた.ヒ トは,切られた腕や足が何の処置もしない状態で生き ているということはなく,動物たちの中で再生能力が 高いものは限られている.動物である自分たち自身を 「生きているもの」の典型と捉えていれば,スーパー で売られている野菜やキノコが生きているものとは思 わなかったのだろう.学生たちがそのように感じてい たということは,筆者にとって,新たな発見であっ た. c)植物・キノコおよび生物でないものの吸水の仕組 みの違い:学生たちのレポートには,以下のような記 述が見られた.「植物は,ちゃんと筋道を通って水を 吸収している.その他は,全体的にまんべんなく吸収 している.」「植物は葉脈などに水が通り,色に染まる が,植物以外のものは,通る水が一定方向でなく,逆

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ンチの責任ではなく,自然科学の発展がまだそこに至っ ていなかったということであり,ダ・ヴィンチも含め多 くの人たちが人体や他の動物たちの解剖学的知見を積み 上げてきた結果,動物の血管や心臓や肺に働きかける人 も現れ,血液循環の発見に至ったのである.植物の場合 も,基礎となる観察は重要であるが,その上に,植物に 対して働きかける必要もある.血液循環の仕組みが分 かっていない時代でも,人々は人間や他の動物たちを 「生きている」と認識していただろうが,食べたり動い たりしない植物は,現在でもなかなか「生きている」と 認識してもらえないからである.また,植物に働きかけ るにあたり,植物でないものとの比較ができることも有 効であると,今回の実践で分かった.植物は生物ではな いポリウレタンスポンジやメラミン樹脂にはもちろんの こと,キノコにもない維管束を持っていて,非常に効率 よく水を吸収しており,植物染色液から取り出して ティッシュペーパーの上に切断面を下にして置いても, 一旦吸収した水はティッシュペーパーに吸われて排出さ れることはない.それに対してエリンギやスポンジは, 吸収した水が容易に元に戻り,取り出したエリンギやス ポンジを置いたティッシュペーパーが大きく染まってし まう.キノコは生きているが,特別な水の通り道はな く,細い菌糸の集合体であって,菌糸の隙間を毛細管現 象で水が吸われていくだけである.水を吸い上げて通す 特別な通り道がある植物の威力が感じられる実験であっ たと思われ,「植物が生きている」ことを学生たちが実 感することができたものと思われる. 2.教師を目指す学生たちにとっての課題として 1)典型例以外を知ること   「ヨウ素デンプン反応」も「植物の水の通り道」も, 小学校 6 年生の理科で学習する内容である.   ヨウ素デンプン反応については,教科書には,ヨウ 素デンプン反応が起こる場合しか載っていないことが 多いようであるが,実際には,植物でもヨウ素デンプ ン反応が見られない例もあり,満足のいく実験結果が 得られないことも多いことも報告されている(深谷& 山田 2018).筆者は学生の教育実習を見学した際, 実際には反応がよく見られていないのに,「日が当 たっていた葉っぱでは,紫色になりました.」と発言 する子どもに出会ったことがある.望まれている答え を知っていたようだ.しかし,うまくいかないのは, に水が出たりすることが分かった.また,植物以外の ものは,葉脈のような道筋が見つけられなかった.」 「エリンギは,全体的にしみている気がする.外側と 一番中心にかたまっている.セロリは,くっきりと通 り道が分かった.」「エリンギは,まん中に染みる感じ で染みていた.時間がたっても,染み込む時間がか かった.どんどん上に上がっていく感じ.」「植物と植 物以外を比べたときに,維管束の有無でこれだけ染ま り具合などが違うということがはっきりと分かりまし た.」「樹脂棒は,吸っているというよりは沁みてい る?ついている?という感じ.植物は,吸っている! 自発的にやっている,というイメージだ.」「植物は, 炭水化物を多く含み,水を体全体に届くような仕組み になっていることが,とても良く理解できた.物体と の比較も楽しかった.」 維管束を持ち道管という水の 通り道がある植物と,特別な水の通り道を持たないキ ノコやスポンジなどとの違いが観察されていた. 3.「ヨウ素デンプン反応」と「水の通り道」の実験を 介して学生たちが学んだこと:植物が生きていると いうこと  以下に,学生たちの記述を紹介する.「植物は動くこ とはないため普段は命を感じることはできないが,今回 の水の吸収を見て,命が存在していることを実感した. 植物と菌類のそれぞれの特質の違いも分かった.」「植物 の栄養素をいただいて生きているけれど,どのような組 織でできていてどのような栄養素をもっているか分かっ てきた.」「植物には水の通る道があるから,水を吸うの が速いのだと思いました.植物が生きるために進化して いるのかなと思いました.」 植物の仕組みを知ること で,植物が生きているということを実感して学ぶことが できたと思われる.

Ⅲ.考察

1.植物が生きていることを知る:植物教育の課題  植物が生きていることを身をもって知るには,人間が 植物に働きかけなければならない.筆者は,理科研究の 授業の準備で血液循環の発見の歴史を調べていた時に気 がついたことがある.それは,解剖をしているだけでは 血液循環の発見に至らなかったということである.レオ ナルド・ダ・ヴィンチは詳細な解剖図を残しているが, 血液循環の発見には至っていない.もちろん,ダ・ヴィ

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との比較も行なった.このことが,「植物が生きてい る」ことを感じることに繋がったと思われる.いずれ も,小学校の理科の授業で実際に行うかどうかは別と して,教師は知っておくとよいことだと思われる.な お,これらの実験の場合も,学生たちの考察が途中で 終わっている場合もあるので,翌週の授業で解説して いる.また,植物ではあっても維管束がないコケ植物 では,毛細管現象によって吸水が行われることも補足 している. 4)実験方法の限界を知ること   植物の水の通り道についての実験に関しては,植物 が根から水を吸収していることも知る必要があるとい う議論もある.ただ,植物の健全な根そのままを植物 染色液に浸しても,道管が染まらないことが多い.図 8 は,筆者による実験の結果であるが,ミニ大根の根 の先端を生かしたまま植物染色液に浸けた場合には, 道管がほとんど染まっていないが,先端を切り取って 植物染色液に浸けた場合には,大根の根も茎も葉も, 青く染まっている.   根の先端の有無による上記のような違いは,水吸収 能力の違いではなく,水を吸収することはできても, 根の表皮の細胞膜を染色剤が通ることができないため であり,水は吸収しているのである(山田ら 2014). そうしてみると,根からの水吸収を観察する場合に は,植物染色液や食用色素などが細胞膜を通らないこ とを認識して,予め根の先端を切っておくことが必要 となるし,子どもたちにその説明をどうするかという 課題も,教師に課せられる.また,これを含めて 1 回の授業で実験することは難しいかもしれないので, 先ずは,今回の実験のように,植物には「水の通り 実験の失敗ではなく,光合成をしても,葉にデンプン を貯蔵しない植物では,葉を調べてもヨウ素デンプン 反応は起こらないためである.子どもに上記のような ことをさせないためにも,教材研究を深め,教科書に 載っていない例についても体験しておくとよいと思 う.植物によるヨウ素デンプン反応の違いについて は,植物生理学会のサイトでは,葉に蓄積されている 糖質の違いについて述べられている(大西 2008) が,理科の教材として様々な植物材料を比較した研究 もある(土井ら 2011).また,植物材料の違いだけ ではなく,ヨウ素デンプン反応の実験方法について, 「アルコール脱色法」と「たたき染め法」を比較検討 している報告(土井ら 2011,河合 2019)もあり, 教材研究を進めるのに,大いに参考になると思われ る.また,ヨウ素デンプン反応に限らず,典型例でな い場合も含めての教材研究が必要となることは,他に もあると思われる. 2)反応の原理を知ること   また,ヨウ素デンプン反応が何に対して起こる反応 であるかを,学生たちがよく理解していなかったこと も分かった.植物だと起こる反応だと思っていたり, 甘いものに対して反応すると思っていたりしていたこ とが,レポートの記述からも伺える.小学校 6 年生 の子どもたちには求めなくてもよいことかもしれない が,ヨウ素デンプン反応は,あくまでデンプンの存在 を検知する方法であり,糖類全般に対して起こる反応 でもなく,光合成の能力そのものを測る方法でもない ことを,教師は理解することが必要ではないだろう か.なお,これらのことについては,理科指導法の授 業では,翌週の授業で解説している. 3)植物以外のものと比較すること   小麦粉・片栗粉・砂糖のヨウ素デンプン反応を試 し,小麦粉と片栗粉にはヨウ素デンプン反応が見られ るが,植物由来であっても,砂糖は反応が見られな かった.学生たちはそのことで,ヨウ素デンプン反応 がまさにデンプンに対して起こる反応であることが実 感として理解でき,バナナが熟す過程でデンプンが分 解されて糖になっていくという考察に至ることができ た.水の通り道の実験でも,キノコであるエリンギ や,人工物であるポリウレタンやメラミンのスポンジ 図 8 水の通り道:ミニ大根 左:根の先端を残したままで植物染色液に浸けたもの 右:根の先端を切り取って除き植物染色液に浸けたもの

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道」として特別に作られた組織があることを知ること から出発してよいと思う. 謝辞  日本福祉大学子ども発達学部で理科指導法を履修し, 筆者に考えさせてくれた学生たちに感謝いたします. 引用文献 河合信之(2019)「簡単な教材を使った効果的な指導法の開発 −小中学校における葉のデンプンの検出を事例として−」日 本科学教育学会研究会研究報告 Vol.33 21 − 24 大西純一(2008)「でんぷん葉と糖葉について」植物生理学会 「 み ん な の ひ ろ ば  植 物 Q & A  登 録 番 号 0128」https:// jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=128&key= で ん ぷ ん葉と糖葉について &target=full 土 井 徹・ 古 瀬 健 太 郎・ 秋 山 哲・ 野 添 生・ 竹 下 俊 治・ 富 川 光 (2011)「生物教材に関する基礎的研究−デンプンの検出と 花粉管の成長−」広島大学 学部・付属学校共同研究機構研 究紀要 第 39 号 319 − 324 西沢徹・大野未由季・林雅恵・大山利夫(2016)「「植物の水 の通り道」の単元で活用できる身近な植物と維管束のつくり を学ぶための線画による教育素材の開発」福井大学初等教育 研究 2016 第 2 号 57 − 64 西沢徹(2017)「オオアレチノギクとヒメムカシヨモギのすす め 単元「植物の水の通り道」に適した身近な生物教材」福 井大学初等教育研究 2017 第 3 号 45 − 51 平賀伸夫・岩瀬三千雄・篠原美香・水上朋子・清水三穂(1990) 「セロリの教材化−単元「植物の体のつくり」への導入−」 東京学芸大学附属竹早中学校研究紀要 Vol.29 41 − 46 深谷秀次・山田俊樹(2018)「葉のでんぷん検出が確実にでき る実験の要点」名古屋経営短期大学 子ども学研究論集 第 10 号 13 − 24 水野暁子(2013)「「命の仲間度アンケート」に見る大学生の 生物観と生物教育の課題」日本福祉大学子ども発達学論集  第 5 号 13 − 23 水野暁子(2014)「植物を「生きている」と思えるには:大学 生の生物観から考える生物教育の課題」日本福祉大学子ども 発達学論集 第 6 号 11 − 20 山田真子・渡邉重義・日詰雅博(2014)「小学校理科における 植物の水の通り道を調べる実験に関する研究」生物教育 第 54 巻 第 2 号 84 − 93

参照

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