• 検索結果がありません。

関節制動による関節不安定性の違いが関節軟骨・半月板に与える影響

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "関節制動による関節不安定性の違いが関節軟骨・半月板に与える影響"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに 変形性膝関節症(膝 osteoarthritis:膝 OA)は,関 節軟骨の変性に伴い,関節の炎症を引き起こし,疼痛や 可動域制限により,活動制限をきたす運動器疾患であ る。現在,本邦における膝 OA 患者数は 2,530 万人と推 定されている1)。高齢化が進む本邦において,今後さら に患者数が増加していくことは確実であり,膝 OA の 発症・進行に対する予防法の確立が求められている。 膝 OA の明確な発症機序は依然として未解明である が,複数の要因の中でも,メカニカルストレスは膝 OA 発症において主要因の一つであるとされている2)。また, 過度なメカニカルストレスは関節軟骨変性を招く一方 で,適度なメカニカルストレスは関節軟骨を保護するこ とも報告され2),メカニカルストレスは関節軟骨に対し, 強度依存的に作用することが考えられる。 膝関節は人体最大の荷重関節でありながら,骨形態学 的上不安定である。そのため,膝周囲筋,靭帯,半月板 などの軟部組織により安定性を確保している。特に半月 板は,膝関節における骨形状の不適合を補填して安定化 に寄与するとともに,関節軟骨にかかる圧縮応力を軽減 している。更に,半月板は脛骨高原上における大腿骨顆 部の運動制動機能を有しており,膝関節運動に伴う骨の 滑りや回旋など水平面上の運動において機能上重要な組 織である。スクリューホームムーブメントに代表される ように,膝関節の屈曲伸展に伴い,回旋運動が同時に生 じるが,膝 OA 患者ではこの回旋運動に異常が見られ ることが報告されている3-5)。Weidow ら3)は,膝 OA 患者は一歩行周期中の回旋可動範囲が増大傾向にあるこ とを示し,日本人を対象とした報告では,この回旋運動 性が OA の病態進行に伴い変化することが明らかとなっ ている4,5)。実際,膝 OA 患者では,有症状者において 半月板変性を合併している症例が多いと報告されてお り6),半月板の機能不全が回旋不安定性の要因となって いる可能性は高い。しかしながらこの回旋不安定性と関 節軟骨変性の関係性は未解明であり,この関係性を明ら かにすることは膝 OA 発症機序の解明に向けた糸口に なると考えている。 近年,膝 OA 発症機序解明のために,小動物を用いた 実験動物モデルによる病態の分析が進んでいる。膝 OA の齧歯類モデルで最も一般的なモデルとして,内側の脛 骨半月靭帯を切断し,半月板機能を不全化させることで

関節制動による関節不安定性の違いが関節軟骨・半月板に

与える影響

諸沢 和真

1)*

  荒川 航平

2,3)

  国分 貴徳

1) 要旨 【目的】メカニカルストレスは変形性膝関節症(膝 osteoarthritis:膝 OA)の発症・進行において主要因の一つと

されている。本研究では膝 OA 動物モデルである destabilization of medial meniscus(DMM)モデルで生じる半月板機 能不全に着目し,関節不安定性を抑制する関節制動モデルを用いることで,関節不安定性の違いが関節軟骨,半月板に 与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象を DMM 群,DMM 群に対して関節制動を施した DMM 制動群, INTACT 群に分類した。制動モデルの妥当性を検証した後,関節軟骨変性と半月板変性について組織学的解析を行った。 【結果】DMM 制動群では関節不安定性が抑制された。関節軟骨変性では,DMM 制動群で関節軟骨変性が抑制されてい た。一方,半月板変性に関しては, DMM・DMM 制動群の両群で半月板変性が確認された。【結論】本研究から,DMM モデルで生じる関節軟骨変性は関節不安定性に起因することを示唆した。 キーワード:変形性膝関節症・関節軟骨・半月板 ■研究論文 (* 責任著者:諸沢 和真 埼玉県立大学 保健医療福祉学 部 理学療法学科 〒 343-8540 埼玉県越谷市三野宮 820 e-mail:[email protected]) 1)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科 2)埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 3)医療法人⻘木会 ⻘木中央クリニック 受付日:2021 年 1 月 14 日,Accept:2021 年 2 月 19 日

(2)

DMM 制動群では,DMM 群と同様の手術を行った後, 25 ゲージ針を用いて,近位脛骨中央と,遠位大腿骨中 央に骨孔を作成した。作成した骨孔に 4-0 ナイロン縫合 糸(株式会社秋山製作所 , 東京)を通し,ループ状に縫 合糸を緊縛し,関節制動を行った(図 1)。その後,関 節包ならびに皮膚をナイロン縫合糸を用いて閉創した。 また、外科的介入の差をなくすため,DMM 群に対して も骨孔を作成し,4-0 ナイロン縫合糸をループ状に緩く 結ぶ同様の外科的介入を実施した。術後の飼育環境は, 気温 23℃,12 時間周期で明暗とし,餌や給水は自由に 摂取できる条件下のもと,運動制限は設けなかった。 3)サンプル採取 外科的介入から 8 週後にイソフルランを吸引麻酔後, 深麻酔として三種混合麻酔(ドミトール・ドルミカム・ ベトルファール)を腹腔内投与(0.1 ml / 10 g)し, 頸椎脱臼法にて屠殺を行った。その後,対象肢を採取し, 4%Paraformaldehyde リン酸緩衝液 にて 24 時間固定し たのち,10%エチレンジアミン四酢酸溶液にて 3 週間脱 灰を行った。脱灰終了後,パラフィン置換を行い,パラ フィン包埋を行った。 4)モデル妥当性の検証 予備実験において,DMM モデルでは膝関節回旋不安 定性が生じることを確認し,関節不安定性を脛骨回旋角 度変化量と定義した。DMM 群,DMM 制動群,Intact 群において,組織採取後に脛骨側方牽引装置(図 2)と 軟 X 線装置 M-60(SOFTEX, 東京,日本)を用いて脛 骨回旋角度変化量を測定した。 測定方法は図 2 に示した側方牽引装置に採取した膝関 節を屈曲 90°に固定し,脛骨骨幹部に 25 ゲージ針を貫 膝 OA を誘導する destabilization of medial meniscus

(DMM)モデルがある。DMM モデルでは半月板機能 不全によって,関節軟骨変性と半月板変性が生じるこ とが,先行研究では報告されている7,8)。しかし,半月 板の機能のうち回旋不安定性と圧縮応力のいずれの増加 が,膝 OA を誘導しているのかについては未解明であ る。 そこで本研究では,臨床上において頻回に遭遇する膝 OA 患者の回旋不安定性が,関節軟骨変性の要因である のかについて,同様の回旋不安定性を惹起することので きる DMM モデルを用いて検証することを目的とした。 今回,DMM モデルにおいて確認される回旋不安定性を 関節包外から制動するモデルを作成し,回旋不安定性の 有無により関節軟骨変性の進行に影響を及ぼすかを組織 学的に解析した。本研究の結果は,臨床で頻回に見られ る膝 OA 患者の回旋不安定性に対し,関節不安定性の 制動を目的とした理学療法介入を行うことが関節軟骨変 性の進行に有効であるかの根拠となる基礎データを提示 するものである。 対象および方法 1)対象 ICR 系白色雄性マウス(12 週齢)(東京実験動物株 式会社,東京)10 匹を対象とした。対象を,DMM 群 (内側半月板機能不全によって膝 OA を誘導する群), DMM 制動群(DMM モデルに生じる回旋不安定性を抑 制した群)と Intact 群(DMM 群の対側肢で無処置の群) の計 3 群に各群 5 匹ずつ割り当てた。対象の平均体重は, DMM 群(Intact 群)で 46.6 g(42-55 g),DMM 制動 群では 45.6 g(41-51 g)で群間に有意差はなかった。 DMM 群,DMM 制動群は左後肢を対象肢とし,外科的 介入を行わない Intact 群は,DMM 群の右後肢とした。 2)手術方法 対象動物は,環境適応期間として 2 週間,ポリカーボ ネイド製ゲージ内で飼育し環境適応させたのち,外科的 な手術を施行した。イソフルランを吸引麻酔後,深麻酔 として三種混合麻酔(ドミトール・ドルミカム・ベト ルファール)を腹腔内投与(0.1 ml / 10 g),疼痛管理 として,アンチセダンを皮下注射した(0.1 ml / 10 g) 条件で手術を実施した。 各群の手術方法に関して,DMM 群は,先行研究7) 基づき左膝関節を縦切開後,関節包を露出させ,膝蓋腱 内側から,剪刀にて関節内に侵入し,内側の脛骨半月靭 帯を切断した。その後,関節包および皮膚を閉創した。 脛骨半月靭帯切断 ナイロン縫合糸 骨孔 (A) (B) 図 1 マウス DMM・DMM 制動モデルのシェーマ (A)DMM モデル:膝関節内に侵入後,脛骨半月靭帯を切断 した。 (B)DMM 制動モデル:DMM モデル作製後,大腿骨と脛骨に 骨孔を作成し,骨孔に貫通させた縫合糸によって緊縛すること で回旋不安定性を制動した。

(3)

6)統計学的解析 プログラミング言語 Python,ver.3.6.9 を使用し,脛骨 回旋変化量は一元配置分散分析ののち,Tukey の多重 比較を行った。関節軟骨変性と半月板変性の採点結果に 対しては,Kruskal-Wallis test を行なったのち,多重比 較として Steel-Dwass test を行った。モデル妥当性検 証のデータは,平均値 ± 標準偏差で示し,関節軟骨変 性と半月板変性のデータは,中央値[最小値 - 最大値] で示した。 7)倫理的配慮 本研究を行うにあたり,研究内容は大学内動物実験倫 理委員会の承認を受け,学内動物実験指針を厳守した (承認番号:29-13)。実験動物に対しては,疼痛軽減措 置を実施し,解析に用いる動物数はできる限り最小限に した。 結 果 1)モデル妥当性の検証 各群における側方牽引装置による脛骨回旋位での X 線画像および,脛骨回旋角度変化量を図 3 に示した。脛 骨回旋角度変化量について,DMM 群は Intact 群と比較 して有意に増大しており(p = 0.001),DMM 制動群は, DMM 群と比較して有意に減少していた(p = 0.011)。 Intact 群と DMM 制動群の間に有意差はみられなかっ た(p = 0.364)(Intact,3.02 ± 2.35; DMM 制動,8.65 ± 7.07; DMM,22.53 ± 6.26)。 2)組織学的分析 関節軟骨変性の組織像および,採点結果を図 4 に示 した。DMM 群では関節軟骨の表面が線維化し,染色性 通させた。その後,定力バネを用いて 0.05 kgf の力で 近位脛骨を左右から牽引し,X 線画像を撮影した。その 際の脛骨に貫通させた針の角度変化から回旋角度変化量 を,画像解析ソフト ImageJ(米国国立衛生研究所,ア メリカ合衆国)を用いて算出した。 5)組織学的分析 各群パラフィン包埋した組織(n = 5)をミクロトー ム(サクラファインテック,東京,日本)に固定し,厚 さ 6 μm にて膝関節内側関節面を矢状面より薄切した切 片を作成した。その後,サフラニン -O・ファストグリー ン染色にて切片を染色した。染色後,オールインワン蛍 光顕微鏡 BZ-X700 シリーズ(KEYENCE,大阪,日本) を用いて PC 上で巨視的観察を行い,関節軟骨の変性と 半月板前節の変性についてそれぞれ先行研究に基づいて 点数化し8,9),半定量的に分析を行った。点数化に際し て各染色像を共同研究者が盲検化した後に著者自ら採点 を実施した。 関節軟骨変性の点数化は,国際変形性関節症研究 会(Osteoarthritis Research Society International; OARSI)が推奨する OARSI スコアを用いた9)。段階を 0-6 の 8 段階(0 =正常,0.5 =染色性の低下,1 =表層 の線維化,2 =表層のいくつかの亀裂や欠損,3 =表層 から 25%未満の亀裂や欠損,4 = 25-50%の亀裂や欠損, 5 = 50-75%の亀裂や欠損,6 = 75% 以上の亀裂や欠損) に分類した。 半月板変性の点数化は,Kwok らの変性スコアを用い た8)。表面構造,細胞性,染色性について合計 24 点で 採点を行い,合計点から段階を 0-4 の 5 段階(Grade0 = 0-4,Grade1 = 5-9,Grade2 = 10-14,Grade3 = 15-19,Grade4 = 20-24)に分類した。

図 2 側方牽引装置

(A)側方牽引装置全体像

(4)

図 3 側方牽引 X 線画像および脛骨回旋角度変化量 (A)各群の側方牽引時の X 線像。 (B)DMM 群の脛骨回旋変化量は Intact 群と比較して有意に増大しており(p = 0.001),DMM 制動群の脛骨回旋変化量は,DMM 群より有意に減少していた(p = 0.011)。データは平均 値 ± 標準偏差で示した。 図 4 関節軟骨組織像および OARSI スコア (A)DMM 群では、関節軟骨の染色性は低下(矢印)し,表面の繊維化および欠損が見られた。 DMM 制動群では,関節軟骨の染色性が低下していたが,表面の線維化は見られなかった。各 スケールバーは 100 μm。 (B)OARSI スコアでは,DMM 群が Intact 群と比較し優位に高値(p = 0.025),DMM 制動群 は DMM 群と比較して有意に低値を示した(p = 0.049)。 (A) (B) (A) (B) p = 0.001 p = 0.011 p = 0.365 p = 0.025 p = 0.049 p = 0.170

(5)

有している。また,脛骨半月靱帯により脛骨高原上に固 定された半月板は,骨運動に伴い一定の前後方向への可 動性は有するものの,脛骨上における大腿骨顆部の水平 面上の運動においては,駐車場にある車のタイヤ止めの ごとくその運動を制動している。そこで本研究では,半 月板の機能不全に伴う膝関節の回旋不安定性が,その有 無により半月板自体の変性と,関節軟骨に与える影響 を,組織学的に検証した。 本研究では,DMM 介入により内側半月板の機能不全 を惹起することで,脛骨の回旋不安定性を惹起し,これ に回旋不安定性を制動するモデルを加えることで,回旋 不安定性の有無が膝関節へ与える影響を明らかにするこ とを目指した。モデル間の回旋不安定性を,軟 X 線を 使用して調査すると,DMM 群と比較し DMM 制動群に おいて脛骨回旋角度変化量が減少していたことから,関 節包外からの制動介入は回旋不安定性を抑制しており, DMM 制動モデルの妥当性が確認された。この結果を前 提として,半月板及び関節軟骨の変性について群間の比 較データを見ていく。 組織学的解析の結果を見ていくと,OARSI スコアに よる関節軟骨変性においては,回旋不安定性を抑制し が低下していた。DMM 制動群では,染色性の低下がみ られたが,表面の線維化はみられなかった。OARSI ス コアによる採点について,DMM 群は Intact 群と比較 して有意に高値を示し(p = 0.025),DMM 制動群は, DMM 群と比較して有意に低値を示した(p = 0.049)。 Intact 群と DMM 制動群の間に有意差はみられなかった (p = 0.170)(Intact,0[0-0.5]; DMM 制動,0.5[0-0.5]; DMM,2[0.5-6])。 半月板変性の組織像および,採点結果を図 5 に示し た。DMM 群,DMM 制動群において構造の破綻,細 胞の凝集,染色性の低下が見られた。採点後の半月板 変性の段階に関して DMM 群は Intact 群と比較して有 意 に 高 値 を 示 し(p = 0.034),DMM 制 動 群 と DMM 群では有意な差はみられなかった(p = 0.344)。また, Intact 群と DMM 制動群の間に有意差はみられなかっ た(p = 0.122)(Intact,0[0-1]; DMM 制動,3[0-4]; DMM,2[1-3])。 考 察 半月板は,大腿骨と脛骨の骨形状不適合を補正するこ とで関節面の適合性を向上させ,荷重を分散する機能を 図 5 半月板組織像および半月板変性スコア (A)DMM 制動群・DMM 群で構造の破綻,細胞の凝集化,染色性の低下(矢印)が見られた。 各スケールバーは 100 μm。(B)半月板変性スコアでは,DMM 群が Intact 群より有意に高値 を示し(p = 0.034),DMM 制動群と DMM 群に有意差はなかった(p = 0.344)。 (A) (B) p = 0.034 p = 0.344 p = 0.122

(6)

による圧縮応力増加ではなく,回旋不安定性に起因して 生じることが考えられる。したがって,膝 OA 患者の 回旋不安定性を抑制する理学療法介入は,関節軟骨変性 の進行を予防または遅延させる有効な介入手段であるこ とが示唆された。 本研究の限界として,主に以下の点が挙げられる。ま ず,回旋不安定性の評価に関して,本研究では膝関節を 採取した後に計測機器に下肢を固定した状態での静的安 定性の評価を行っており,実際の歩行など動的な安定性 を評価できていない。また,本研究は DMM モデルで 生じる回旋不安定性に着目した初めての研究であり,関 節制動の効果がどの時点で影響を及ぼすのかが明らかで なかった。そのため,DMM モデルは外科的介入後 8 週 時点で中等度から重度の OA に進行するという Glasson ら7)の報告を基に外科的介入後 8 週時点のみで組織を 採取した。しかし,DMM 群と DMM 制動群間で差がみ られなかった半月板変性に関して,より早期の段階で違 いがあった可能性を棄却することができていない。さら に,関節内の炎症や関節軟骨変性と半月板変性に関与す る因子の解析が未実施である点である。加えて,本研究 の解析対象が関節軟骨と半月板のみである点である。膝 OA は関節全体の疾患として捉えられており,特に滑膜 や関節軟骨の直下に位置する軟骨下骨は関節軟骨と生物 学的相互作用を有する。そのため,関節不安定性や圧縮 応力の増大が関節軟骨,半月板以外の周辺組織に与える 影響を検証する必要がある。最後に,本研究を結論づけ るためにはサンプル数が少ないため,今後はより多くの サンプル数で検証する必要がある。 よって,今後は関節不安定性の評価方法の検討や複数 の時点による検証,関節内の炎症,関節軟骨変性,半月 板変性に関与する炎症性サイトカインやタンパク質分解 酵素などの解析,膝関節周辺組織の解析を行う必要があ る。 結 論 本研究では,半月板機能不全によって生じた回旋不安 定性を抑制することで,外科的介入後 8 週時点における 関節軟骨変性を抑制した。これらは,DMM モデルに対 しての関節制動が有効であり,DMM モデルにおける関 節軟骨変性は,半月板機能不全に伴う回旋不安定性に起 因することを示している。よって,膝関節の回旋不安定 性という異常なメカニカルストレスが関節軟骨変性を助 長しており,この膝関節回旋不安定性を抑制することは 有効な治療手段であることを示唆した。 た DMM 制動群が,DMM 群と比較して OARSI スコア が低値を示した。近年,関節不安定性は膝 OA の発症・ 進行要因の一つとして注目されている。また,ラット膝 前十字靭帯切離モデルに生じる前後方向の関節不安定性 を制動することで関節軟骨変性を遅延させることが報 告10,11)されており,関節不安定性への介入効果が期待 されている。本研究では,結果として,外科的介入後 8 週時点において回旋不安定性が残存する DMM 群では 関節軟骨は変性するが,DMM モデルで生じる膝関節の 回旋不安定性を物理的に抑制した DMM 制動群では関 節軟骨変性を抑制することが確認された。この結果は, 既に明らかにされている脛骨の前後方向の関節不安定性 に加え,回旋方向の関節不安定性も関節軟骨変性を引き 起こしうる要因であり,関節不安定性の抑制する介入が 関節軟骨変性に対して有効な介入手段である可能性を示 唆している。この結果は,初期から進行期前半までの変 形性膝関節症者において観察される脛骨の回旋方向の過 可動性による回旋不安定性を制動する理学療法介入が, 軟骨変性の進行抑制に有効である可能性を示唆する結果 と言うことができる。 一方,半月板については,Intact 群と比較し DMM 群・DMM 制動群とも変性を認めたが,群間に有意差は 見られなかった。先行研究において,DMM モデルでは 外科的介入後 2 週時点の早期から半月板の変性が確認さ れており,術侵襲における炎症反応の影響が大きいと報 告がされている8,12)。本研究結果では術後早期の炎症反 応の影響は未確認のため明らかではないが,組織学的観 察から半月板における細胞凝集が確認された。この細胞 凝集の形成は組織損傷・変性に対しての治癒反応である と考えられ,DMM 介入による急性期の炎症反応に対す る反応と考えられる。また,DMM 群と DMM 制動群 の外科的介入方法の違いは,ナイロン縫合糸によるルー プを緩く結ぶか,緊縛するかの違いのみとなっている。 そのため,術侵襲の違いが関節内の炎症に及ぼす影響は 否定できる。これらの結果から,関節内の炎症所見が DMM 群と DMM 制動群で同程度の状態であった事が示 唆され,軟骨変性の結果の群間差が回旋不安定性の有無 によるものである可能性を補強する結果と考えられる。 DMM モデルでは,半月板の機能不全化によって生じ る回旋不安定性と圧縮応力の増大によって関節軟骨変性 が生じることが考えられてきた。しかし,回旋不安定 性や半月板変性との関係性は十分に検証されておらず, 回旋不安定性と圧縮応力増加が関節軟骨変性に与える 影響は未解明であった。これに対し,本研究結果から, DMM モデルで生じる関節軟骨変性は,半月板機能不全

(7)

6) 福田昇司,久下 章 : 変形性膝関節症の症状と半月板変性 との関連.日関外誌.1999; 18: 141–146.

7) Glasson SS, Blanchet TJ, et al.: The surgical destabilization of the medial meniscus (DMM) model of osteoarthritis in the 129/SvEv mouse. Osteoarthritis and Cartilage. 2007; 15: 1061–1069.

8) Kwok J, Onuma H, et al.: Histopathological analyses of murine menisci: implications for joint aging and osteoarthritis. Osteoarthritis and Cartilage. 2016; 24: 709–718.

9) Glasson SS, Chambers MG, et al.: The OARSI histopathology initiative-recommendations for histological assessments of osteoarthritis in the mouse. Osteoarthritis and Cartilage. 2010; 18: 17–23.

10) Murata K, Kanemura N, et al.: Controlling joint instability delays the degeneration of articular cartilage in a rat model. Osteoarthritis and Cartilage. 2017; 25: 297–308.

11) Onitsuka K, Murata K, et al.: Effects of Controlling Abnormal Joint Movement on Expression of MMP13 and TIMP-1 in Osteoarthritis. CARTILAGE. 2020; 11: 98–107.

12) Meckes JK, Caramés B, et al.: Compromised autophagy precedes meniscus degeneration and cartilage damage in mice. Osteoarthritis Cartilage. 2017; 11: 1880–1889. 利益相反

開示すべき利益相反状態はない。 文 献

1) Yoshimura N: Prevalence of knee osteoarthritis, lumber spondylosis and osteoporosis in Japanese men and women: The Research on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability (ROAD). J Bone Miner Metab. 2009; 27: 620–628.

2) 黒木裕士:メカニカルストレスと変形性膝関節症の理学 療法―関節軟骨研究の視点からの提言―.理学療法学. 2011; 38: 637–638.

3) Weidow J, Tranberg R, et al.: Hip and knee joint rotations differ between patients with medial and lateral knee osteoarthritis: gait analysis of 30 patients and 15 controls. J Orthop Res. 2006; 24: 1890–1899. 4) Ikuta F, Yoneta K, et al.: Knee kinematics of severe

medial knee osteoarthritis showed tibial posterior translation and external rotation: a cross-sectional study. Aging Clin Exp Res. 2020; 32: 1767–1775. 5) Nagano Y, Naito K, et al.: Association between in vivo

knee kinematics during gait and the severity of knee osteoarthritis. The Knee. 2012; 19: 628–632

図 2  側方牽引装置
図 3  側方牽引 X 線画像および脛骨回旋角度変化量 (A)各群の側方牽引時の X 線像。 (B)DMM 群の脛骨回旋変化量は Intact 群と比較して有意に増大しており(p = 0.001),DMM 制動群の脛骨回旋変化量は,DMM 群より有意に減少していた(p = 0.011)。データは平均 値  ±  標準偏差で示した。 図 4 関節軟骨組織像および OARSI スコア (A)DMM 群では、関節軟骨の染色性は低下(矢印)し,表面の繊維化および欠損が見られた。 DMM 制動群では,関節軟骨の染色性

参照

関連したドキュメント

研究開発活動  は  ︑企業︵企業に所属する研究所  も  含む︶だけでなく︑各種の専門研究機関や大学  等においても実施 

これまで応用一般均衡モデルに関する研究が多く 蓄積されてきた 1) − 10)

節の構造を取ると主張している。 ( 14b )は T-ing 構文、 ( 14e )は TP 構文である が、 T-en 構文の例はあがっていない。 ( 14a

音節の外側に解放されることがない】)。ところがこ

ABSTRACT: To reveal the changes of joint formation due to contracture we studied the histopathological changes using an exterior fixation model of the rat knee joint. Twenty

算処理の効率化のliM点において従来よりも優れたモデリング手法について提案した.lMil9f

1 月13日の試料に見られた,高い ΣDP の濃度及び低い f anti 値に対 し LRAT が関与しているのかどうかは不明である。北米と中国で生 産される DP の

攻撃者は安定して攻撃を成功させるためにメモリ空間 の固定領域に配置された ROPgadget コードを用いようとす る.2.4 節で示した ASLR が機能している場合は困難とな