封入体筋炎患者に対してHAL医療用下肢タイプを用いたリ
ハビリテーションの効果検討
下肢筋力と歩行・起立動作に着目して
佐々木 健吉
(PT),市丸 勝昭
(PT),重松 達大
(PT),野中 慶子
(PT),鐘ヶ江 季恵
(PT),
片渕 宏輔
(PT) 佐賀県医療センター好生館HAL 医療用下肢タイプ/封入体筋炎/下肢筋力
【目的】2015 年より、進行性神経筋疾患に適合した HAL 医療用下肢タイプ(以下 HAL)による歩行運動 処置が診療報酬点数化されている。当館でも 2017 年 から運用を開始しており、適応となる指定難病 8 疾患 のうち、封入体筋炎患者に対して HAL を用いてリハビ リテーションを入院にて行う機会を得た。 封入体筋炎は、骨格筋に縁取り空胞と呼ばれる組織変化 を生じ炎症性細胞浸潤を伴う緩徐進行性の希少難治性筋 疾患である。臨床的特徴として、他の部位に比して大腿 四頭筋、手指屈筋が侵される進行性の筋力低下および筋 萎縮が挙げられる。 今回、封入体筋炎患者に対する HAL を用いたリハビリ テーションの効果を、下肢筋力と歩行・起立動作に着目 して検討した。 【対象】80 歳代、女性の封入体筋炎患者 1 名。独居で ADL は自立、歩行能力はシルバーカー自立。HAL 開 始時の主訴は「立ち上がりに苦労する」。10 年前より 週 2 回、通所介護を利用している。 【方法】22 日間の入院期間内で HAL によるリハビリ テーションを週 2 回、通常のリハビリテーションを週 6 回実施した。HAL によるリハビリテーションは、起立、 歩行練習を実施した。HAL の設定は患者の歩きやすさ と、随時 HAL モニターから得られる情報を基に適宜調 節した。通常のリハビリテーションは、下肢筋力増強訓 練を中心に実施した。 評価は入院時、入院 10 日目、入院 17 日目、退院時 に実施し、下肢筋力(腸腰筋、殿筋、大腿四頭筋、前脛 骨筋)、10 m歩行速度、2 分間歩行距離、起立所要時 間を測定した。下肢筋力は、アニマ株式会社製のハンド ヘルドダイナモメーターμ Tas F-1 を用い測定した。 10m 歩行速度、2 分間歩行距離の測定は、HAL 医療 用下肢タイプに対する医師主導治験(NCY-3001 試 験)の方法に基づいて実施した。起立所要時間は、端坐 位から起立動作を行い、直立位になるまでの時間を測定 した。 【 結 果 】入 院 時 の 下 肢 筋 力( 右 / 左 ) は、 腸 腰 筋 が 3.8/4.7kgf、殿筋が 16.8/10.2kgf、大腿四頭筋が 1.2/1.1kgf、前脛骨筋が 17.1/15.1kgf であった。 10m 歩行速度は 0.8m/ 秒、2 分間歩行距離は 60m、 起立所要時間は 10.0 秒であった。退院時の下肢筋力は、 腸腰筋が 10.1/8.4kgf、殿筋が 19.9/22.1kgf、大 腿四頭筋が 1.5/1.4kgf、前脛骨筋が 19.6/16.9kgf となった。10m 歩行速度は 1.0m/ 秒、2 分間歩行距 離は 90m、起立所要時間は 3.4 秒となった。 【考察】今回、HAL を用いた歩行・起立練習と、下肢 筋力増強訓練を併用して行ったことで、大腿四頭筋以外 の下肢筋力と、10 m歩行速度、2 分間歩行距離、起立 所要時間の改善に至った。しかし、封入体筋炎によって 変性した筋の筋力維持は困難であるとされており、今回 の介入においても、特徴的に筋力低下が生じるとされて いる大腿四頭筋の筋力向上には至らなかったと考えられ る。 封入体筋炎患者は、大腿四頭筋の筋力低下が生じること で、歩行能力や基本動作能力の低下を招き、その結果大 腿四頭筋以外の筋においても廃用性の筋力低下が生じ、 さらに動作能力が低下するという悪循環に陥っていると 推察された。 【まとめ】HAL と下肢筋力増強訓練の併用は、封入体 筋炎患者に対する廃用筋の筋力向上と、歩行・起立動作 の改善に有効であることが示された。根本的治療が困難 である封入体筋炎に対するリハビリテーションとして HAL が機能改善の一助になれば、臨床的意義も高いと 考える。 倫理的配慮,説明と同意 本研究は、佐賀県医療センター好生館倫理審査委員会で研究の 倫理性について審査を受け、承認を得た(承認番号:17-07-99-01-01 承認日:平成 29 年 7 月 28 日)。 また研究の 実施に際し,対象者に研究について十分な説明を行い,同意を 得た。Key Words
002
4698
認知機能障害脳卒中患者に対するHAL
®
による歩行練習の
効果
若林 祐士
(PT)1),渡邊 亜紀
(PT)1),森 淳一
(ST)1),山口 豊
(Dr)2) 1)大分リハビリテーション病院 リハビリテーション部,2)大分リハビリテーション病院認知機能/歩行障害/ロボットスーツ HAL
® 【目的】 認知機能低下のある患者に対する歩行練習は、PT の指 示が伝わりにくく難渋することが多い。ロボットスーツ HAL®( 以下、HAL) は歩行障害を呈した患者に対し効 果的であるとの報告はあるが、認知機能低下のある患者 に対して導入している報告は少ない。今回、認知機能低 下のある脳卒中患者に対する HAL を用いた歩行練習の 効果を検証し、若干の知見を得たので報告する。 【方法】 対象は当院回復期病棟に入院した脳血管障害の患者 23 名で、HAL 開始時に MMSE が 23 点以上であった者 11 名(以下、非障害群)と、MMSE が 23 点以下も しくは導入困難であった者 12 名(以下、障害群)の 2 群に分けた。練習内容は、両群ともに HAL®と懸架 装置を用いた歩行練習 40 分、週 2 ~ 3 回計 10 回実 施した。効果判定は、各群内で HAL 実施前後の歩行 FIM、下肢の振り出しの有無を比較し、群間でその改善 度を比較した(p<0.05)。 【結果】 各群とも HAL 使用前後で歩行 FIM、下肢の振り出し は有意に改善した (p<0.05)。群間比較では歩行 FIM、 下肢の振出の有無の改善度に有意な差は認めなかった。 【考察】 今回の結果から認知機能低下の有無に関わらず、HAL を用いた歩行練習前後では歩行 FIM、下肢の振出の改 善効果が示唆された。これは、患者は歩くという簡単な 動作を遂行するのみでよいこと、HAL によって目標と する歩行が繰り返し反復強化されたことが今回の結果に 繋がったと考えた。また、平地での歩行練習では疲労感 を認めやすく積極的な歩行練習の導入が困難であった が、HAL を用いることで患者からの疲労感の訴えは軽 度であり、HAL によって患者の意図した歩行動作が確 保できたことが今回の結果に繋がったと考えた。HAL をはじめとするロボットは一定の運動を長時間反復で き、患者は自身の意思での歩行動作が体感できるという 利点があり、療法士の指示が入りにくい症例では有用で あると考えた。 倫理的配慮,説明と同意 本研究はヘルシンキ宣言に則り、実施に際して対象者に十分な 説明を行い、同意を得た。なお本研究に対して利益相反に関す る開示事項は無い。Key Words
外側線条体領域の脳梗塞により意欲障害を呈した事例の急
性期介入経験
興味関心チェックリストを使用し意味のある作業の提供と支援
土器屋 真未
(OT)1),宮本 忠司
(OT)1),冨口 若菜
(Dr)2),小山 雄二郎
(Dr)2) 1)熊本大学医学部附属病院 医療技術部リハビリテーション技術部門,2)熊本大学医学部附属病院 リハビリテーション科急性期/脳梗塞/ MTDLP
【はじめに】内発的動機づけとその変動には線条体や前 頭前野が重要な役割を果たしている . 今回,前立腺癌の 診断で入院加療中に外側線条体動脈 ( 以下 LSA) 領域の 脳梗塞を呈した患者を経験した . 当事例は麻痺の回復が 得られるも訓練意欲障害や拒否が問題であった . 今回 , 生活行為向上マネジメント ( 以下 MTDLP) を用いて合 意目標を設定し動機づけを行った結果 , 意味のある主体 的な作業行動が可能となった事例の介入経過を報告す る . 【事例紹介】70 歳代男性 . 右利き . 妻と二人暮らし . 前 立腺癌に対してロボット支援腹腔鏡前立腺摘除術施行さ れた 2 日後にトイレで転倒している所を発見された . 発 見時 , 全失語 , 右上下肢麻痺を認め NIHSS25 点であっ た .MRI で LSA を主体とする左 MCA 領域の心原性脳 梗塞の診断で血管内治療が施行された . 術後 9 日より ベッドサイドにてリハ開始した . 【介入時 OT 評価】JCS Ⅰ -1, 軽度の聴理解低下を認め るも従命動作可能 , 右片麻痺 :BRS 上肢Ⅱ手指Ⅴ下肢Ⅴ , 感覚障害は軽度鈍麻 ,ADL はベッド上安静のため全介 助であった . 【経過】術後 12 日に安静フリー , 車いすでリハ室来室 された . 右 BRS は上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅴに改善 , 握力 Rt36/Lt40(kg),STEF Rt0/Lt89( 点 ) で あ っ た .MAL は AOU1.5/QOM1.1 で右上肢の使用頻度 は乏しかった . 高次脳機能は全般的認知機能に低下なく 訓練に支障は無かった . 離床を進め ,ADL は自室内の独 歩移動可能も行動観察の目的で見守り対応であった . 左 手使用にて食事 , 整容 , 排泄動作が自立した . 書字は右 手で可能も字体構図不良で解読難であった . 介入当初は 一般的な片麻痺機能訓練 ,ADL 訓練を施行するも意欲 障害や拒否がみられた . よって ,MTDLP を用いた訓練 を施行した . 【方法】まず , 興味関心チェックリストより該当した動 物の世話 ( 金魚の餌やり ) を目標に取り入れ , 合意目標 を 「①身辺処理自立」, 「②金魚の餌やりができる」 と 設定した . 訓練は片麻痺機能訓練 , 巧緻動作訓練 , 上肢 機能訓練 ,ADL 訓練を 1 日 20 分 , 週 5 日間実施し , 合意目標設定後 7 日目 ( 転院前日)の ADL 動作 , 上肢 機能および合意目標自己評価を行った . 【結果】ADL はボタン操作や紐結びなど更衣時の両手 動作に稚拙さを認めたが数回の練習後自立した . 麻痺側 である右手での摂食動作も可能となり , 書字は字体の歪 みがあるものの解読できるまでに至った . 生活習慣に合 わせて鋏操作 , タッパー蓋開閉 , 餌やりに必要なつまみ 動作 , しゃがみ動作なども実施し , 近監で可能となっ た . 上 肢 機 能 評 価 は STEF Rt50/Lt89( 点 ),MAL: AOU3.08 QOM3.25 と 改 善 が 得 ら れ ,WMFT: 40 秒 /FAS72,MFT:78/100 とこれまで実施出来な かった麻痺評価が可能となった . 合意目標設定後 7 日目 の 自 己 評 価 で は 目 標 ① 実 行 度 1 → 7/10, 満 足 度 1 → 7/10, ② 実 行 度 1 → 5/10, 満 足 度 1 → 5/10 と改善を認めた . 【考察・まとめ】当事例は , 運動麻痺の回復が得られた にも関わらず , 無意識的な運動調節や報酬など損得を訴 求しない内発的動機の役割を果たす LSA の障害により , 利き手である右手の実用性と使用頻度が低下してい た . 介入時から積極的な機能訓練や ADL での右手使用 , 自主練習を励行したにも関わらず , 訓練の意欲障害およ び拒否がみられた .wilcock は何をするかによって , そ の人の現在の状態や役割が決まり , 本人にとって意味の ある作業をすることに焦点をあて , 共に取り組む協業の プロセスが重要である , と述べている . 今回 ,MTDLP を介して事例の生活に焦点を当て , 楽しみや生きがいで ある金魚の餌やり等の家庭内で意味のある活動を訓練に 取り入れる事で行動目標を明確化し , 内発的動機付けの 賦活を行った . その結果 , その人らしく生きられる生活 の理解と支援が可能となり , 主体的な作業行動に繋がっ た事が示唆された . 倫理的配慮,説明と同意 報告に際して患者本人に文書で説明 ・ 同意を得た .Key Words
004
4315
脳梗塞・脳出血患者におけるFugl-Meyer Assessment
およびFunctional Independence Measure改善の特徴
竹内 睦雄
(PT)熊本機能病院 総合リハビリテーション部
脳血管疾患/ Fugl-Meyer Assessment / Functional Independence
Measure
【背景および目的】脳血管疾患(以下、CVA)患者の身 体機能と ADL 能力は相関関係にあることが報告されて いる。理学療法診療ガイドラインは、CVA 患者の身体 機能および ADL 能力の評価尺度として、それぞれ Fugl-Meyer Assessment( 以 下、FMA) お よ び Functional Independence Measure(以下、FIM) を推奨している。CVA で脳梗塞や脳出血といった病型 の違いが予後に及ぼす影響について報告されているが、 病型の違いによる FMA と FIM の改善への影響を調査 した報告はない。そこで今回、CVA 患者の病型の違い による FMA と FIM の改善の特徴について調べること を目的とした。 【方法】対象は 2008 年 4 月 1 日から 2016 年 3 月 31 日までの期間に当院入院していた CVA 患者のうち、 診断名が脳梗塞または脳出血の患者である。そのうち、 測定データに欠損あり、在院日数が 14 日未満および 240 日以上、転帰が急性期病院転院・死亡・不明の患 者を除外した 1179 例を対象とした。 調査 1:対象者を脳梗塞群と脳出血群の 2 群に群分けし、 年齢、入院期間についてマン・ホイットニの U 検定法 で群間有意差の有無を解析した。 調査 2:対象者を脳梗塞群と脳出血群の 2 群に群分けし、 入院時 FMA 総得点、退院時 FMA 総得点、FMA 総得 点利得、FMA-effectiveness(以下、FMA 改善率)、 入院時 FIM 総得点、退院時 FIM 総得点、FIM 総得点 利得、FIM-effectiveness(以下、FIM 改善率)の 8 項目について、マン・ホイットニの U 検定法で群間有 意差の有無を解析した。
調査 3:脳梗塞群、脳出血群の各群で、退院時 FMA 総 得点と退院時 FIM 総得点との相関、FMA 総得点利得と FIM 総得点利得との相関、FMA 改善率と FIM 改善率と の相関をスピアマンの順位相関係数を用いて調査した。 統計ソフトにはエクセル統計を用い、有意水準は 5%未 満とした。なお、利得は退院時総得点-入院時総得点、 改善率は利得 /(満点-入院時得点)で求めた。 なお、本研究は当院の倫理審査会の承認を得て行ったも のである。 【結果】調査 1:脳梗塞群と脳出血群で性別による有意 差はなかった。年齢は脳梗塞群 71.1 歳、脳出血群 64.4 歳 で あ り、 脳 梗 塞 群 が 有 意 に 高 か っ た(p > 0.01)。 入 院 期 間 は 脳 梗 塞 群 75.6 日、 脳 出 血 群 99.7 日 で あ り、 脳 出 血 群 が 有 意 に 長 か っ た(p > 0.01)。 調査 2:入院時 FMA 総得点、退院時 FMA 総得点、 入院時 FIM 総得点、退院時 FIM 総得点では、脳出血群 に対して脳梗塞群が有意に高い結果となった(いずれも p < 0.01)。FMA 総 得 点 利 得、FMA 改 善 率、FIM 総得点利得、FIM 改善率では、脳梗塞群に対し脳出血 群が有意に高い結果となった(いずれもp< 0.01)。 調査 3:FMA と FIM の相関は、脳梗塞群、脳出血群 とも、退院時総得点、利得、改善率でいずれも有意な相 関を認めた(p < 0.01)。相関係数は脳梗塞群、脳出 血群とも退院時総得点(脳梗塞群 r=0.71、脳出血群 r=0.74) が 利 得( 脳 梗 塞 群 r=0.50、 脳 出 血 群 r=0.55) や 改 善 率( 脳 梗 塞 群 r=0.43、 脳 出 血 群 r=0.59)よりも高かった。 【考察】脳梗塞群は脳出血群に比べて高齢で入院期間は 短かったが、入院時の FMA、FIM がともに高く、退院 時の FMA、FIM も高いという結果であった。脳出血群 は脳梗塞群と比較して入院時の FMA、FIM ともに低く、 入院期間が長い結果となったが、平均年齢が脳梗塞群に 比べて若いこともあり、利得や改善率は高くなったと考 えられた。一方で、脳梗塞群、脳出血群ともに、退院時 総得点と比較して利得、改善率の相関が低く、両群とも FMA と FIM の改善率は必ずしも一致しないことが示 唆された。 倫理的配慮,説明と同意 本研究は当院の倫理審査会の承認を得て行ったものである。
Key Words
急性期脳卒中患者における回復期病院退院時の食事動作自
立へ影響を及ぼす高次脳機能障害の検討
~地域連携パスを利用して~
廣田 早織
(OT),佐藤 憲明
(PT),十時 浩二
(PT),岐部 千佳子
(OT),渡邊 勇樹
(OT),
帯田 有希菜
(OT),林 秀俊
(PT) 地域医療機能推進機構九州病院脳卒中/高次脳機能障害/食事動作
【はじめに】 急性期病院では、急性期における脳卒中患者の在院日数 短縮化が進んでいる。そのため、発症後早期より目標設 定を行い、それに沿ったリハビリテーションを行ってい くことが重要である。急性期から高次脳機能障害の有無 や種類による Activities of daily living( 以下 ADL) 動作獲得の予測が可能であれば、方針や作業療法を提供 するうえで獲得を優先するべき ADL 動作を決定する際 に有用である。しかし、高次脳機能障害の有無により ADL 獲得の予後予測を急性期から行っている報告は少 ない。そこで、本研究は ADL の中でも食事動作に着目 し、急性期における高次脳機能障害が回復期病院退院時 の食事動作に影響している因子であるか明らかにするこ とを目的とした。 【対象・方法】 対象は、2014 年 1 月から 2016 年 12 月の期間に 当院に入院し、脳卒中地域連携パスを使用した脳卒中患 者 417 例のうち、回復期病院から詳細な情報の返信が 得られた 192 例 ( 男性 106 名 女性 86 名 平均年 齢 71.2 歳 )。除外基準は、認知症等の ADL に支障を 来 す 既 往 が あ る 者、 当 院 転 院 時 に Japan Coma Scale( 以下 JCS) がⅡ桁~Ⅲ桁の者、失語症を呈して いる者とした。調査項目は、性別、年齢、右片麻痺の有 無、当院転院時における高次脳機能障害の内容、回復期 病院退院時の食事動作の自立度とし、診療録、地域連携 パスより調査した。統計学的分析は、回復期病院退院時 の食事動作自立群と非自立群の 2 群に分類し、対応の ない t 検定、カイ二乗検定を用いて比較した。また、回 復期病院退院時の食事動作自立へ影響を及ぼす高次脳機 能障害を検討する因子として、食事動作自立の有無を従 属変数、年齢、性別、半側空間無視、注意障害、構成障 害、認知機能低下を独立変数とした多重ロジスティック 回帰分析を行った。有意水準は 5%とし、統計処理は SPSS Statistics21(IBM 社製 ) を使用した。 【結果】 食事動作自立群 147 例 ( 男性 78 名 女性 69 名 ) と 非自立群 45 例 ( 男性 28 名 女性 17 名 ) に分類され た。高次脳機能障害は、半側空間無視 29 例 (16 vs 13)、注意障害 22 例 (16 vs 6)、構成障害 11 例 (10 vs 1)、認知機能低下 26 例 (12 vs 8) に分類された。 右片麻痺を呈した症例は 65 例 (58 vs 7) であった。 平均年齢は自立群が有意に低値 (70.1 vs 74.4 歳 p < 0.05) であった。高次脳機能障害においては、半側 空間無視 ( 有:28.9% vs 10.9% p < 0.01) に有 意差が認められた。一方で性別、注意障害、構成障害、 認知機能低下においては有意差を認めなかった。多重ロ ジスティック回帰分析の結果、年齢 (OR1.037 95% Cl1.004 - 1.070 p < 0.05)、 半 側 空 間 無 視 (OR3.590 95% Cl1.536 - 8.392 p < 0.01) が 食事動作自立に影響している因子として抽出された。 【考察】 今回、多重ロジスティック回帰分析にて抽出された因子 のうち、高次脳機能障害における半側空間無視の有無は 食事動作の自立に影響している因子であることが示唆さ れた。半側空間無視は動作・行動面でも病識の乏しさを 認めることが多く、無視側にある食器の見落としが出現 するため、動作自体が可能であってもセッティングや見 守り、声掛けが必要となることが予測される。今後の課 題は、食事動作について詳細に分析し、半側空間無視の 重症度と合わせて検討することである。 倫理的配慮,説明と同意 本研究に際して患者データを使用する旨を説明し、同意を得て いる。Key Words
006
4364
スポーツ障害予防の取り組み
メディカルマネージャー制度を大分県から全国へ
伊東 健太
(PT) 大場整形外科メディカルマネージャー/障害予防/スポーツ
【はじめに】 メディカルマネージャー(以下Mマネ)とは、スポー ツ障害を防止することを目的として、選手の健康管理、 指導者やコーチのサポート、スポーツ現場と医療機関と の橋渡しをすることを役割としている。保護者を始め、 医療関係者や監督・コーチなど幅広い方を対象としてい る認定資格である。 【目的】 2003 年よりスポーツ障害防止を目的にMマネ制度の 活動を開始してきた。更に活動を拡大する為、2015 年 6 月より(NPO)日本メディカルマネージャー協会 を設立した。その取り組みとして行ったチームマネジメ ントシステムの開発、大分県における障害予防の為の組 織改革を紹介する。 【方法】 大分県サッカー協会、大分県スポーツ学会会員および大 分県体育協会加盟競技団体を主な対象とし、Mマネの説 明・案内を送付し講習会を行った。サッカー協会に関し ては、今年度より大分県を6地域に分け、各地域にブロッ ク担当者を配置し定期的なMマネ養成講習会を設定して おり、2017 年のMマネ養成講習会の受講者は 96 名、 そのうち 72 名が現在Mマネとして活動をしている。ま た、ネットワーク環境下において、スマートフォンやタ ブレット端末にて簡易的に入力・管理することの出来る チームマネジメントシステムを、今年度より本格的に運 用していく。本活動内容は「ヘルシンキ宣言」、「医療研 究に関する倫理指針」の原則を遵守し、プライバシー保 護に基づき施行している。 【まとめ】 スポーツ障害を防止するために医療関係者やトレー ナーなどが多くかかわって来ている昨今、いまだ小中学 校などには障害予防の取り組みがなされていないのが現 状である。そこに、このMマネ制度を導入することで、 医師やトレーナーがいなくても、Mマネによって、ある 程度のスクリーニングができ相談ができるシステムにな れば、スポーツ現場と医療機関との橋渡しになるのでは ないかと期待する。また、Mマネの実際の活動にはサポー ト役として理学療法士等の医療関係者の充実が必要であ る。2020 年の東京オリンピック開催を控え、全国的 にスポーツの過熱が予想されるなか、多くの青少年が傷 つき挫折することのないよう、このシステムを普及して いくことが急務と考えている。 倫理的配慮,説明と同意 本研究の実施に際し、対象者に研究について十分な説明を行い、 同意を得た。製薬会社や医療器機メーカーから研究者へ提供さ れる謝金や研究費、株式、サービス等は一切受けておらず、利 益相反に関する開示事項はない。Key Words
女性アスリートの健康問題と今後の課題
~高校女子バスケットボール部へのヨガの導入~
鬼木 綾子
(PT)1),永吉 由香
(PT)1),舌間 崇士
(Dr)2)1)聖峰会マリン病院 リハビリテーション科,2)聖峰会マリン病院 整形外科
Women’s Health Care /女性アスリート/ヨガ
【はじめに】 近年、国内女子スポーツ選手の活躍が目覚しく、平昌冬 季オリンピックにおいても女子選手が男子選手のメダル 獲得数を上回る大会として記憶に新しい。 しかし、一方で女性が持つ特性により、身体的、精神的、 社会的などの課題に直面しやすく、問題解決に向けた取 組みが必要とされている。これに対し、Women’s Health Care としての取り組みは少しずつ広がってき ているが、このような活動を行っている地域は少ない。 また我々、理学療法士を含むリハビリテーション専門職 の介入は少なく、介入していても産前産後や尿失禁に対 するものが多く、効果が期待される女性アスリートへの 介入報告は非常に少ない。 今回、高校生女性アスリートを対象に、Women’s Health Care としてヨガを取り入れ、その前後を通し てみられた健康問題変化を調査し、今後の課題を提起し たい。 【対象と方法】 高校女子バスケットボール部の通常練習に参加できる 18 名を対象にヨガの指導を行った。ヨガは 30 分で出 来るものを、練習日を含め、毎日施行するよう指導し、 8 週間の経過を追い、ヨガの指導初日(以下、介入前) と 8 週後(以下、介入後)にアンケート調査を実施した。 アンケート要旨は、①月経前症候群(premenstrual syndrome:以下 PMS)における身体的症状(複数 回答)、② PMS における精神的症状(複数回答)、③月 経異常、④尿失禁の有無とし、介入前と介入後を比較検 討した。 【結果】 ① PMS における身体症状を認めた選手、介入前 67% (12 名 )19 例、 介 入 後 無 く な っ た 症 状 1 例。 ② PMS における精神症状を認めた選手、介入前 56% (10 名)18 例、介入後無くなった症状 5 例。また、 ①②において症状が無くなっていないが介入後軽くなっ たと感じる選手 39%(7 名)。③月経異常を認めた選手、 介入前 11%(2 名)、介入後 0%(0 名)。④尿失禁を 認めた選手、介入前 22%(4 名)、介入後尿漏れを感 じにくくなった選手 11%(2 名)であった。 【考察】 女性アスリートは月経や性ホルモンなどの影響を受けや すく、前十字靭帯損傷をはじめとするスポーツ外傷や腰 痛などのスポーツ障害の発生に関与するとされている。 これに対し、今回 Women’s Health Care の1つと して取り入れたヨガは、心身のリラクゼーション効果が 得られるとともに、筋肉増強、血行改善、ホルモン分泌 機能と免疫機能が改善するとされ、身体的健康を促進す る効果や心理的健康にも好影響を与えるとされている。 今回高校女子バスケットボール部に対しヨガを導入した 結果、身体的症状の変化は少なかったものの、8 週間の 経過ではあるが精神症状や月経異常、尿失禁に関して、 症状緩和を認めた。 これは、ヨガを通して自身の身体に向き合うようになっ たこと、コンディションの変化を感じ取りやすくなった ことが要因であると推測され、継続していくことにより 多くの効果が得られるのではないかと考える。 また、その効果は障害予防や競技能力の向上につながる ことも期待されると思われ、今後症例数や追跡期間を増 やし、更なる効果の検証を重ねていきたい。 倫理的配慮,説明と同意 本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者にあらかじめ本研究 の内容、個人情報の保護を十分に説明し、同意を得た。
Key Words
008
4496
膝前十字靱帯損傷予防トレーニングがスポーツ外傷・障害に
もたらす効果
~高校男女バスケットボール部の一例~
永吉 由香
(PT)1,2,3),鬼木 綾子
(PT)3),舌間 崇士
(Dr)4) 1)筑紫女学園高校、福翔高校 男子バスケットボール部,2)福岡県バスケットボール協会 医科学委員会, 3)聖峰会マリン病院 リハビリテーション科,4)聖峰会マリン病院 整形外科ACL 損傷予防トレーニング/高校生バスケットボール部/スポーツ外傷・障害
【はじめに】 膝前十字靱帯(以下、ACL)損傷予防トレーニング(以 下、予防トレーニング)は ACL 損傷の発生を減少させ ることができるとされており、ACL 予防トレーニング の普及は我々理学療法士に課せられた使命であるとも言 える。我々も、ACL損傷予防クリニック等を数多く行い、 スポーツ現場への普及に努めると共に、その経時的効果 等の報告をしてきた。 しかし、帯同チームにおいて予防トレーニングを継続 していく中で、ACL 損傷以外のスポーツ外傷・障害の 予防にも効果があるのではないかという疑問を生じた。 今回、高校男女のバスケットボール部を対象に ACL 予防トレーニングを導入し、導入前後に発症したスポー ツ外傷・障害を追った。 【対象と方法】 高校男子バスケットボール部 37 名、高校女子バス ケットボール部 31 名の男女それぞれ 1 校ずつを対象 とした。 対象のチームに ACL 予防トレーニングを施行し、施 行前の 1 年間に発症したスポーツ障害・外傷と、施行 後に発症したスポーツ障害・外傷を比較検討した。なお、 スポーツ障害・外傷は炎症期の 3 日以上練習参加がで きなかったものとした。 【結果】 男子バスケットボール部における施行前の外傷・障害 の発症は 28 名 45 件であり、施行後の外傷・障害の 発症は 13 名 16 件であった。その内容は、施行前、 肩関節 1 件、腰部 4 件、膝関節 4 件(うち ACL 損傷 1 件)、下腿 9 件、足関節 18 件、足趾 3 件、手指 4 件、 裂傷 2 件、施行後、腰部 3 件、下腿 1 件、足関節 5 件、 足趾 2 件、手指 3 件、裂傷 1 件、筋断裂 1 件であった。 女子バスケットボール部における施行前の外傷・障害 の発症は 14 名 16 件であり、施行後の外傷・障害の 発症は 5 名 5 件であった。その内容は、施行前、腰部 2 件、膝関節 2 件(うち ACL 損傷 1 件)、足関節 10 件、手指 2 件、施行後、腰部 1 件、下腿 1 件、足関節 2 件、手指 1 件であった。 男女共に、明らかにスポーツ外傷・障害の発症は減少 し、特にバスケットボールで多いとされる、足関節捻挫 の減少が見られた。 【考察】 諸報告による ACL 予防トレーニングは、ジャンプ、 着地、ストップ、ターン等の要素で成り立っており、そ の効果に対するエビデンスも多く報告されている。我々 も、帯同チームは基より、地域貢献を目的とした ACL 損傷予防クリニックを数多く開催し、予防トレーニング の重要な要素を見出し、その効果を報告してきた。また、 それとは逆に、スポーツ現場への普及が進んでいないと いう問題も提起してきた。 今回、その予防トレーニングの継続により、足関節捻 挫を主としたスポーツ外傷・障害の予防にも効果がある 可能性が高いことが分かった。選手や監督からも、「止 まれるようになったからパフォーマンスが上がった」と いう声も聞かれ、ACL 損傷のみならず、他のスポーツ 外傷・障害の予防にも効果があること、パフォーマンス が上がる可能性があることを併せて現場に伝えていくこ とができ、これはスポーツ現場にも取り入れてもらいや すいものになるのではないかと考える。 今後、スポーツ外傷・障害の発生状況に選手・監督へ のパフォーマンスに対する調査を重ね、我々の使命であ る地域貢献に活用していきたいと考える。 倫理的配慮,説明と同意 本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者にあらかじめ本研究 の内容、個人情報の保護を十分に説明し、同意を得た。Key Words
安静立位偏位はマウンド上での投球時に肘下がりの発生要
因になる
鶴田 崇
(PT)1,2),西村 勇輝
(PT)1,2),伯川 広明
(PT)1),櫻井 智恵
(PT)1),
本田 遼太郎
(PT)1),大塚 雅史
(PT)1),髙島 崇義
(PT)1) 1)南川整形外科病院,2)南川スポーツ医科学研究所投球障害/静止立位偏位/肘下がり
【はじめに】 投球障害疾患は投球動作時における肘下がりが懸念され るが、肘下がりが生じる疾患はフォーム不良だけでなく、 安静立位時の上位体幹が偏位した不良姿勢を呈している ことを経験する。そこで今回、肩最大外旋位時 ( 以下、 MER) とリリース時における肩 - 肩 - 肘ライン ( 以下、 S-S-E) に着目し、安静立位時の上位体幹の偏位がある とマウンドでの投球時に肘下りが生じるか検討した。 【対象】 大学硬式野球部に所属し、投球時痛の無い右投手 14 名、 左投手 9 名。平均年齢は 19.6 ± 0.8 歳。 【方法】 安静立位を腹側の前額面で撮影し、マーキングした剣状 突起に対する垂線と両肩峰前角を結ぶ線が成す角度 ( 以 下、側方傾斜角 ) を個人の立位姿勢として基準化した。 静止立位時の上位体幹の偏位は、側方傾斜角を基に投球 側を基準として 90 ± 0.5 度を中間群、89.5 度未満 を下制群、90.5 度超過を挙上群として 3 群に分類した。 S-S-E は、両肩峰前角を結んだ線と投球側の肩峰前角 と内側上顆を結ぶ線が成す角度とし、負の表記は肘下が り傾向を示す。投球動作は、十分なウオーミングアップ 後に 18.44m を傾斜のあるマウンドで 3 回、全力投 球を行った。撮影は、2 台のデジタルビデオカメラ HDR-CX(SONY 社製 ) を用いて腹側の矢状面と前額 面で行った。撮影位置は、矢状面がプレートの中点から 5m、前額面がホームベース先端から 3m で捕手の後 方に固定した。カメラの焦点は、剣状突起として入射角 を統一し、撮影した動画を同期させた。投球解析は、3 群 の MER と リ リ ー ス の S-S-E を 画 像 解 析 ソ フ ト Image J で測定した。統計処理は EZR を利用し一元 配置分散分析法、多重比較検定を用いて危険率 5% 未 満を有意差ありとした。 【結果】 安静立位時の側方傾斜角による 3 群の内訳は、中間群 が 4 名で平均 90.2 ± 0.2°、下制群が 12 名で平均 87.7 ± 0.9°、挙上群が 6 名で平均 91.3 ±± 0.6° であった。MER の S-S-E は中間群が -0.8 ± 4.6°、 下制群が -4.6 ± 8.6°、挙上群が -8.1 ± 10.8°と 3 群間に有意差はなかった。リリースの S-S-E は中間群 が平均 -8.0 ± 6.6°、下制群が平均 -17.8 ± 6.8°、 挙上群が平均 -20.9 ± 6.3°と下制・挙上群が中間群 より有意に低下した。 【考察】 今回より、安静立位時に上位体幹を基準とした投球側肩 甲帯の下制・挙上偏位を伴う姿勢不良があれば、傾斜が あるマウンドでの投球時のリリースで肘下がり傾向にな ることが示唆された。安静立位時の上位体幹の偏位は肩 甲胸郭関節の機能不全を呈し、下肢・体幹から成る全身 の運動連鎖の破綻が生じ投球動作に影響すると考える。 投手は、他のポジションと比較して安静立位姿勢に近い 態勢から投球動作を開始する。投球動作は支持基底面積 の増減の変化が瞬時に起こるので、比較的安定した安静 立位において姿勢偏位があると投球動作開始からフォー ム不良が生じると推察する。更に平地と異なりマウンド の傾斜が負荷となり、前方へ重心移動するリリース時に 影響すると考える。よって投球障害に対する治療は、単 純に投球動作指導ではなく安静立位姿勢を含む全身の理 学評価・治療が必要であり、日頃から姿勢に配慮する生 活習慣と意識付けが重要である。 【結語】 安静立位時の上位体幹偏位は傾斜のあるマウンドの投球 時に肘下がりの発生要因になる。 倫理的配慮,説明と同意 本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき対象者に対して本研究の趣 旨と目的を十分に説明して同意を得た。また、当院の学術研究 に関する方針ならびに個人情報の保護を遵守して行った。本研 究は、開示すべき利益相反はなし。Key Words
010
4187
小学生陸上競技選手の身体機能と障害発生について
川越 大輔
(PT)1),谷上 弘樹
(PT)2),藤井 弘通
(PT)3) 1)ふくしま整形外科,2)健和会大手町病院,3)小倉リハビリテーション学院小学生/陸上競技/左右差
【目的】 陸 上 競 技 に お い て , 走 る 動 作 は 基 本 的 な 動 作 で あ り ,100 m走や長距離種目では連続して左右交互に対 称性に行われる . そのため , 関節可動域や筋力 , 筋の柔 軟性など身体機能面の左右差は , 繰り返し行われる動作 によってストレスが増大し , その結果障害発生に大きく 影響すると考えられる . こうした報告は成人や大学生に 散見するが , 練習頻度の少ない学童期については見受け られない . そこで今回 , 小学生陸上競技者を対象として 身体機能の左右差に着目し , 下肢障害との関連を検討し た . 【方法】 対象は測定時に疼痛を有していない 4 ~ 6 年生の小学 生陸上競技者 39 名(男子 24 名 , 女子 15 名 , 平均年 齢 10.6 歳)とした . このうち外傷を除く下肢障害既往 者(以下 , 障害群)は 10 名であった . 測定項目は臀踵 間距離、股関節内・外旋可動域、パトリックテスト距離 (以下 , パトリック距離), トーマステスト角度 , 足関節 背屈可動域 ,SLR 角度 , 股関節 90°屈曲位での膝伸展 角度 ,Wing test, 下肢長 ,FFD,Shoulder mobility(以 下 ,SM), 立ち幅跳び , 体幹回旋可動域 , 肩伸展テスト , 筋力検査として膝関節屈曲・伸展 , 股関節屈曲・伸展の 計 19 項目を測定した . 筋力測定機器はサカイ医療社製 「モービィ」を使用した . これらの測定項目の左右差を 障害群と健常群で比較 , 検討した . 統計処理は対応のな い T 検定を用い , 有意水準は 5%未満とした . 【結果】 パトリック距離で障害群が 1.6cm(± 2.4cm), 健常 群が 0.6cm(± 2.6cm),また SM で障害群が 8.6cm (± 5.6cm), 健常群が 3.7cm(± 5.0cm)と障害 群に有意な左右差を認めた(P<0.05). 【考察】 今回有意差の認められたパトリック距離は , 背臥位にて 検査側の足関節を反対側膝に乗せた状態で股関節を外旋 し , 検査側下肢が開排したような肢位で大腿骨外顆と床 との距離を測定した . 今回 , 他動的な股関節外旋可動域 (以下、股関節外旋)も測定しているが , この股関節外 旋には有意差が認められなかった . パトリックテストの 観点から , パトリック距離と股関節外旋の比較を行なっ た場合 , パトリック距離は股関節外転運動が伴い , 骨盤 の動きが関与する . このことから , 股関節外転や仙腸関 節を含めた骨盤の運動の左右差が障害発生に関与すると 考えられる .SM にも有意差が認められ , この項目は片 側上肢を上から , 反対側上肢を下から背中で手を組むよ う指示し , 両中指が重なる距離を測定した . 両中指が重 ならない場合は , その距離をマイナス表記した . 手を組 んだ際 , 上にある検査側は肩関節屈曲 , 外転 , 外旋 , 下に ある検査側は肩関節伸展 , 内転 , 内旋の複合運動とされ ている . 肩関節は疾走中の腕振りに関与し , 肩関節の屈 曲 , 伸展運動が中心となるが , 疾走時は体幹の回旋運動 を伴うため肩関節は内外旋 , また内外転運動を伴う . ま た , 腕振りのエネルギーは推進力に影響し , 左右非対称 な腕振りは体幹および下肢の運動に影響を及ぼすと考え られている . このことから SM における左右差は腕振り による推進力の左右不均衡や体幹 , 下肢への影響により 下肢障害との関連が認められたと考えられる . 【まとめ】 今回 , 小学生陸上競技選手の身体機能を計測し , 左右差 について下肢障害群と健常者群で比較 , 検討した . パト リック距離と SM の項目において有意差がみられた . 股 関節外転や骨盤の回旋 , また肩の運動における左右差が 障害発生と関連があることが示唆された . 倫理的配慮,説明と同意 ヘルシンキ宣言に基づき , 本人 , 保護者 , チーム関係者に説明を 行ない同意を得た . 利益相反に関する事項はない .Key Words
歩行開始動作における下肢関節運動の加齢による変化
時間・空間的パラメーターと下肢運動の関連
安藤 将孝
(PT)1),池内 秀隆
2),中原 浩喜
(PT)1),石井 寛海
(PT)1),
日元 世菜
(PT)1),森 淳一
(ST)1),山口 豊
(Dr)3) 1)大分リハビリテーション病院 リハビリテーション部,2)大分大学理工学部門,3)大分リハビリテーション病院歩行開始動作/下肢関節運動/加齢
【目的】 歩行開始動作に関する先行研究では筋活動や床反力作用 点の挙動など運動力学的パラメーターに着目したものに 加え,歩行開始動作速度と下肢関節運動に相関があるこ とが報告されている.しかし,歩行開始動作時の下肢関 節運動に加齢が与える影響を調査した研究は無い.そこ で,本研究の目的は歩行開始動作時の下肢運動の特徴を 若年者と高齢者で比較することとした. 【方法】 被験者は歩行に影響を与える整形外科疾患および中枢神 経疾患の既往がなく独歩が可能な健常若年男性 5 名(年 齢:23.6 ± 3.6 歳,身長:170.6 ± 6.0 cm,体重: 63.1 ± 9.1kg)(以下,若年者群)と健常高齢女性 4 名(年齢:66.3 ± 1.9 歳,身長:153.0 ± 6.1cm, 体重:59.9 ± 14.0kg)(以下,高齢者群)であった. 歩行開始動作の運動学的データは 8 台の赤外線カメラ を用いた三次元動作解析システム Vicon Nexus 2.5 により計測した.各被験者の身体各部に Plug-in Gait model に準じ反射マーカーを貼付した.開始姿勢は肩 幅に足を開いた安静立位とし,口頭指示による合図の後 に被験者自身のタイミングで歩行を開始した. データ解析には各被験者の右脚からの歩行開始動作 5 試行を用いた.データの解析区間は安静立位から左踵接 地の瞬間までとした.時間 / 空間的パラメーターは,ス テップ長とステップ速度を算出し,各被験者の身長によ り正規化を行った.下肢の運動学的パラメーターは解析 区間における骨盤前傾角度(以下,PA),左股関節伸展 角度(以下,HE),左立脚期前半における左足関節背 屈角度(以下,AD),左立脚期後半における左足関節 底 屈 角 度( 以 下,AP), 右 股 関 節 屈 曲 角 度( 以 下, HF)の最大値と安静立位時の平均値との差を角度変位 量として算出した. 統計学的解析には SPSS version24 を用いた.2 群 間の比較には,データが正規分布に従い,等分散性が仮 定された場合は 2 標本 t 検定を,仮定されなかった場 合は Welch の検定を,正規性が認められなかった場合 は Mann-Whitney の検定を行った.解析パラメーター 間 の 相 関 分 析 に は, 正 規 性 が 認 め ら れ た 場 合 は Pearson の相関係数を,正規性が認められなかった場 合は Spearman の順位相関係数を用いた.有意水準 は 5% とした. 【結果】 ステップ長,PA,AD および HF は若年者群と比較し て高齢者群で有意に大きかった(p<0.01).ステップ 速度,HE,AP は 2 群間に有意差は認められなかった. 若年者群において,ステップ長と AP,HE の間に有意 な正の相関を(r = 0.60 ;r = 0.65),AD の間に有 意な負の相関を認めた(r = -0.50). 高齢者群におい て,ステップ長と AD,HF の間に有意な正の相関を認 めた(r = 0.67;r = 0.54).PA と HF の間に有意 な正の相関を(r = 0.88),HE の間に有意な負の相関 を認めた(r = -0.83). 【考察】 歩行開始動作の動作速度が快適速度の場合,若年者群と 比較して高齢者群ではステップ長が大きくなることが明 らかとなった.また,相関分析の結果から若年者群は支 持脚の股関節伸展および足関節底背屈運動,高齢者群は 支持脚の足関節背屈と遊脚側の股関節屈曲運動によりス テップ長を調整している可能性が示唆された. 【まとめ】 加齢により歩行開始動作時のステップ長を調整する動作 戦略が変化する可能性があり,疾患を有する被験者を対 象とした研究を行う際には加齢による下肢関節運動の変 化も考慮すべきである. 倫理的配慮,説明と同意 本研究はヘルシンキ宣言に沿ったものであり,当院(承認番号: A0014)および大分大学理工学部研究倫理審査委員会(承認 番号:3)の承認を得て計測を実施した.各被験者に研究内容 を十分に説明し,書面にて同意を得た後に計測を行った.本研 究に開示すべき利益相反は無い.Key Words
012
4181
体重支持指数と胸腰椎彎曲角度
健常成人を対象とした検証
松岡 健
(PT),下野 直也
(PT),領家 健之介
(PT),大熊 健悟
(PT),井手 賢斗
(PT),
田川 拓磨
(PT) 福岡県済生会大牟田病院 リハビリテーション科体重支持指数/胸腰椎彎曲角度/上位腰椎彎曲角度
【 目 的 】黄 川 ら の 提 唱 し た 体 重 支 持 指 数 (weight bearing index:以下 WBI) は , 人が重力に対しどれ だけの運動機能を持っているかを示す指数であり , また 体力を表す指数として , 近年臨床で多く活用されてい る . また脇元は , WBI には脊柱の柔軟性機能が重要であ るとし , なかでも胸椎の柔軟性機能の関与が大きいと報 告している . さらに嵩下らによると , 慢性疼痛者におい て胸椎可動性の低下が生じていることを確認し , 胸椎・ 胸郭機能の重要性を指摘している . これらの考えのもと 我々は非特異的腰痛者と健常者の脊柱彎曲角度特性につ い て 検 証 を 行 い , 上 位 胸 椎 お よ び 上 位 腰 椎 彎 曲 角 度 ,local muscle,global muscle 収縮能に有意な相 違点を確認し報告した . しかしながら , これまでの検証 は ,2 群間比較によるものであり , 健常者の特性を十分 に把握するまでには至っていない . そこで今回 , 様々な 疾患群と比較するうえでの健常者指標の確認を目的に検 証を行った . 【方法】対象は骨関節疾患を有しない健常な男女 18 名 とした . WBI 測定にはハンドヘルドダイナモメーター (アニマ社製 , 等尺筋力測定装置μ -Tas F - 1)を使 用し , 最大値を体重比百分率(%)に換算して行った . 測 定に際し代償を防ぐため , 上肢は腕組みとし , 股関節・ 膝関節 90 度で対側足底は床面接地させた状態で測定 を行った .5 秒間の最大等尺性収縮筋力を左右 2 回ずつ 測定し , 数値の高い方を採用した . 脊柱彎曲角度測定は 全脊柱側面像の撮像後 , 解析ソフトにて算出した . 上位 胸椎彎曲角度は C7 下縁接線から Th7 下縁接線の交わ る点の角度 , 下位胸椎を Th8 上縁接線から Th12 下縁 接線の交わる点の角度 , 上位腰椎彎曲角度を L1 上縁接 線から L4 上縁接線の交わる点の角度 , 下位腰椎を L4 上縁接線から S1 上縁接線の交わる点の角度とし測定し た . 統計解析には SPSS ver25 を使用し ,WBI と胸腰 椎彎曲角度の関係には pearson の相関係数を用いて検 証した . また目的変数を WBI, 説明変数を胸腰椎彎曲角 度とした重回帰分析 , ステップワイズ法を用い , 影響因 子を抽出した . 有意水準はいずれも 5% 未満とした . 【結果】WBI は平均 135.3 ± 24.6, 胸椎彎曲角度は 平均 31.5 ± 4 度 , 腰椎彎曲角度は平均 40 ± 3.8 度 であった . 胸椎後彎角度は , 先行研究に比較し少ない傾 向であった .WBI と脊柱彎曲角度との関係において , 上 位 腰 椎 彎 曲 角 度 (r=0.774,p<0.01), 上 位 胸 椎 (r=0.646,p<0.01) お よ び 下 位 胸 椎 彎 曲 角 度 (r=0.586,p<0.01) で中等度の相関を認めたが , 下位 腰 椎 彎 曲 角 度 に お い て 相 関 関 係 は 認 め な か っ た (r=0.30,p>0.05). ステップワイズ重回帰分析におい ては , 上位腰椎彎曲角度のみが抽出され , 標準偏回帰係 数は 0.72 であった . 【考察】WBI との関係において , 下位腰椎弯彎角度以外 の項目で有意な相関を認め , また影響因子として上位腰 椎彎曲角度が抽出されたことは , 上位腰椎彎曲角度の評 価 , 治療する有効性を示唆するものといえる . 上位腰椎 部を起始とする呼吸・呼吸補助筋 , 多分節を跨ぐアウター マッスルの関与が推察されるが , 本検証では確認するに 至らず , 今後継続した検証を行っていきたい . さらに全 脊柱彎曲測定は , 吸気位での撮影であり , 胸椎は伸展位 を呈しており , 安静状態とは異なる状況であることを考 慮する必要がある . 【まとめ】健常者を対象として WBI と胸腰椎彎曲角度の 関係について検証した . 結果 , 上位胸椎彎曲角度 , 上位 腰椎彎曲角度との有意な相関を認めた . 影響因子では上 位腰椎彎曲角度が抽出され , 評価・治療の対象部位とし ての意義が示唆された . 倫理的配慮,説明と同意 福岡県済生会大牟田病院の倫理委員会の承諾を得た上で , ヘル シンキ宣言に基づき全ての被験者には動作を口頭で説明すると ともに実演 , 同意を得たのちに検証を行った . 本演題発表内容 に関連し , 開示すべき COI 関係にある企業などはありません .Key Words
回復期リハビリテーション病棟におけるMTDLPの実践
自動車学校と連携し運転再開を目指した症例を通して
松尾 涼太
(OT) 田川新生病院生活行為向上マネジメント/自動車運転/回復期リハビリテーション
【はじめに】 回復期リハ病棟において,在宅復帰を目指した様々な取 り組みがなされているが,在宅復帰後の生活範囲拡大を 目的とした自動車運転の支援まで対応できる医療機関は 少ないのが現状である(牟田,2016).しかし,脳血 管疾患受傷後の運転再開には身体・高次脳機能評価のみ に留まらず,自動車教習所等を利用した運転能力の評価 が重要である(武原,2013).今回,脳幹梗塞により 右不全麻痺を呈した症例に対し,生活行為向上マネジメ ント(以下,MTDLP)を利用して,症例が望む生活 を実現するための目標を抽出した.その一環として,自 動車学校と連携した介入を行った結果,実行度と満足度 に改善を認めた.以下,考察を加え報告する. 【症例紹介】 70 歳代男性.X 年 Y 月に左延髄脳梗塞と診断され,X 年 Y 月+ 1 か月後に当院回復期病棟へ転院.病前の ADL は自立.妻を車に乗せて買い物に行くことが本人 の役割であった. 【方法】 MTDLP を使用して目標を抽出し,発症 28 日目(当 院入院より 1 週目)より作業療法介入開始.治療時間 は 1 日に作業療法 3 単位の介入に加え,自動車学校へ の教習を依頼.担当教官と OT が作業療法評価結果の 共有を行い,計 3 回の面談と 2 回の教習を実施した. 【結果】初期評価:1w/ 最終評価 16w FIM:83/117 点 BrS: Ⅴ - Ⅴ - Ⅴ / Ⅵ - Ⅵ - Ⅵ HDS-R:29/25 点 STEF 麻 痺 側 上 肢:76/85 点 FBS:40/49 点 TMT-A:76/74 秒 TMT-B: 277/268 秒 FAB:12/12 点 MTDLP 聞き取りシー ト:目標①「1 本杖を使用した身辺動作の完全自立」実 行度 2/8 満足度 2/7 目標②「運転の再開」実行度 0/7 満足度 0/9 【経過および考察】 症例は身体機能に関して,比較的に保たれていたが,「脳 梗塞は何も出来なくなる病気」との認識が強い状態で あった.まずは,MTDLP を活用し現在の状況や課題 を可視化して情報の整理を行った.その中で,本人の語 りから「妻と車で買い物に行く」ことは特に重要な作業 であることが抽出され,運転という自己の役割を喪失し てしまう不安から今後の生活に対する混乱が生じてい た.そこで,① 1 本杖を使用した身辺動作の完全自立, ②運転の再開を合意目標として掲げた.MTDLP 利用 後は,達成すべき目標が明確化されたことで意欲的に訓 練に取り組み,他職種と連携することで病棟内 ADL は 早期に自立となった.次に,生活範囲拡大プログラムと して自動車学校スタッフによる面談および教習を実施し た.初回教習ではペダルの踏み替えとハンドル操作の遅 さに指摘があり,それらを改善するための訓練を実施し た.再教習を実施した結果,ハンドルの握り方を工夫す ることで運転再開が十分に可能であることが判明し,自 宅退院となった.リハビリテーションの効果を生活行為 レベルに結び付けるためには,居宅や地域社会での実践 練習などをバランスよく組み合わせることが重要である (大内,2017).今回,医療的評価に加えて専門職(自 動車学校)による多角的なアプローチを実践できたこと が,症例が望む生活への目標達成の一助になったのでは ないかと考える. 倫理的配慮,説明と同意 倫理的配慮として,症例・家族に対し,学会報告および介入の 趣旨を十分に説明し同意を得た.本報告は,田川新生病院倫理 委員会の承認を得ており,利益相反に関する開示事項はない.Key Words
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温熱前処置がシスプラチン誘発性腎障害を軽減する可能性
岩下 佳弘
(PT)1),中村 智明
(PT)1,2),渡 孝輔
(PT)1,3),山川 依瑞美
(PT)4,5),
山田 しょう子
(臨床試験技士)1),前田 曙
(PT)5),飯山 準一
(Dr)1) 1)熊本保健科学大学保健科学部 リハビリテーション学科,2)玉名地域医療センター リハビリテーション科, 3)桜十字病院 リハビリテーション部,4)西日本病院 リハビリテーション科, 5)熊本保健科学大学大学院 保健科学研究科保健科学専攻リハビリテーション領域全身温熱刺激/シスプラチン誘発性腎障害/網羅的解析
【目的】 我々は CKD マウスに対する穏和な全身温熱刺激(mild systemic thermal stimulation: MTS)が尿細管保 護 効 果 に 作 用 す る こ と を 報 告 し た(Iwashita, 2016)。今回、尿細管障害を主体とするシスプラチン (cisplatin: Cis)誘発性腎症モデルマウスに対する MTS の効果および作用機序について検討した。 【方法】 Cis 誘発性腎障害に対する MTS の効果を確認する目的 で マ ウ ス を Vehicle 群、 室 温 で Cis を 投 与 し た 群 (RT-Cis)、予測水分損失分の補液後に MTS を行い Cis を投与した群(MTS-Cis)、補液後室温で Cis を 投 与 し た 群(SRT-Cis) に 分 け て 実 験 を 実 施 し た。 MTS は 39℃で 15 分間加温した後 35℃で 20 分間 保温した。MTS 実施から 6 時間後に Cis(20 mg/ kg)を腹腔内投与し、その 48 時間後に血液と腎組織 を採取した。検体は生化学、組織学、分子生物学的に評 価した。mRNA は real time PCR 法、タンパク質は ウェスタンブロッティング法を実施した。次に MTS 実 施後の Cis を投与する直前の腎組織での遺伝子発現を 確認する目的で、室温群(control)と MTS 実施群 (MTS6H)に分け micro array を用いて網羅的に解 析した。52,145 の遺伝子解析において、|Z score| >2 且つ ratio >1.5, ratio <0.66 の変動を示した遺 伝子を有意として分析した。 【結果】 1. Cis 誘発性腎症マウスに対する MTS 前処置の効果: Cis 投与による Cr 値の上昇は、MTS により有意に低 下 し た(P<0.05, MTS-Cis vs. RT-Cis)。RT-Cis 群にみられた尿細管上皮脱落、嚢胞性拡大や尿細管障害 の指標である KIM-1mRNA も MTS で有意に減少し た(P<0.05, MTS-Cis vs. RT-Cis)。また Cis 投与 による TUNEL 陽性細胞数は有意に減少(P<0.001) し、Caspase3 の活性や Bax 発現の減少を伴ってい た(P<0.001)。Hsp 発現に差は認められなかった。2. 遺伝子発現の網羅的解析:MTS 実施により 378 の 遺伝子が有意に増加、470 の遺伝子が有意に減少した。 脱 水 関 連 (solute carrier family, aquaporin) や heat shock protein(Hsp)(Hspa1a, Hspa1b, Cryab) の遺伝子発現が増加した。pathway 分析では ROCK1、MYLK 発現の有意な減少、PPP 1CB 発 現の有意な増加が示され、Rho シグナル経路を介した 血管平滑筋の収縮弛緩に関与する遺伝子 変動が認められた。 【考察】MTS による Cr 値の減少、尿細管上皮脱落や 嚢胞性拡大の軽減、KIM-1 発現の減少は MTS が尿細 管保護に作用することが示された。MTS 後 Cis 投与前 の腎組織において誘導された Hsp はストレス耐性に関 与 し、 ま た ROCK1、MYLK 発 現 の 減 少 や PPP 1 CB の発現増加は、血管平滑筋を弛緩させて髄質血流を 増加させると考えられ作用機序の可能性が示唆された。 MTS による脱水関連遺伝子の発現増加は体表への熱刺 激に対する生理的反応を裏付ける結果と考えられた。 【まとめ】 MTS は Hsp 誘導および血流改善によって Cis 誘発性 腎障害の軽減に寄与する可能性が示唆された。 倫理的配慮,説明と同意 実験は所属大学の動物実験委員会の承認(15-010、16-010)を得て行った。本研究は JSPS 科研費 15K01447 の助成を受けて実施された。
Key Words
姿勢の違いが下肢への認知課題実施時の脳活動に及ぼす影
響
―座位・立位におけるfNIRSを用いた検証―
一ノ瀬 和洋
(PT)1),光武 翼
(PT)1,2),中尾 真理
(PT)1),黒木 浩之
(PT)1) 1)白石共立病院 リハビリテーション部,2)佐賀大学医学部 地域医療科学教育研究センター姿勢の違い/認知課題/ fNIRS
【目的】 近年,脳卒中片麻痺において体性感覚の識別課題(物体 の質感,形状,長さの識別)が感覚・運動機能回復に有 効 で あ る と 報 告 さ れ て い る(Travis Bird et al, 2013).fNIRS を用いた先行研究(中野ら , 2008) では,足部で圧の識別課題 ( 以下,認知課題 ) 時の脳活 動が示されているが,座位で実施されており,姿勢の違 いが認知課題の成績や脳活動に及ぼす影響については検 討されていない.姿勢の違いが認知課題成績や脳活動に 何らかの影響を与える可能性があり,より効果的な運動 学習を図るために科学的な検証が重要である.本研究の 目的は,足底における圧の識別課題時の姿勢の違いが認 知課題成績と大脳皮質活動へ及ぼす影響について検証す ることである. 【方法】 対象は健常成人 16 名(男性 7 名,女性 9 名,年齢 25.3 ± 2.9 歳)とした.脳活動計測は,fNIRS(島 津製作所製 FOIRE-3000)を使用した.計測領域は, 脳波における国際 10-20 法の Cz を中心とし,前頭 頭頂領域に 3cm 間隔で 16 個の送光プローブ,15 個 の受光プローブを格子状に配置し,計 50ch を計測し た.測定指標は Oxy-Hb を選択した.計測部位の空間 座標は,3次元位置計測装置FASTRAK(POLHEMUS 社製)を使用し,標準脳 MNI 座標を算出した.課題は, 被験者が開眼したまま右足底で 3 段階の異なる硬さの スポンジの圧の識別を座位と立位で実施し,認知課題正 答率(計 30 回試行の正答率), 課題難易度(VAS)及 び脳活動を計測した.実験デザインは,課題遂行時間 40 秒,安静時間 20 秒を 1 サイクルとし,計 3 サイ クルのブロックデザインを用いた.統計学的検討は,認 知課題成績・VAS・脳活動(Oxy-Hb)に関して,座位・ 立位の比較を対応のある t 検定にて行った.有意水準は 5% とした. 【結果】 認知課題正答率は座位 86.5%,立位 88.1%となり有 意差は認められなかった.課題難易度は座位 70.6 ± 15.1mm,立位 69.4 ± 8.5mm となり有意差は認 められなかった.脳活動においては,座位と比較して立 位では,左補足運動野・右運動前野・右中心前回・右中 心後回・左中心傍小葉・左上頭頂小葉・左楔前部に相当 す る 領 域 の Oxy-Hb の 有 意 な 増 加 が 認 め ら れ た (p<0.05). 【考察】 各課題の正答率は,少なくとも 70% 以上の正答率を得 た.Miquee らによると,その正答率は,課題に対す る注意やモチベーションを維持できる数値であり,本研 究は適切な課題設定だったと考える.一方,課題難易度 は,若年健常者を対象としたことで,主観的な差異が生 じなかった可能性がある.姿勢の違いによる脳活動領域 について,座位と比較して立位で異なる点は,①高い姿 勢制御能力が要求される点,②身体動揺を制御するため に右足関節だけではなく,膝・股関節や左下肢の運動が 関与する点,③下肢全体に生じる運動感覚をもとに識別 する点である.①は,補足運動野が姿勢制御に重要であ り,左上頭頂小葉は触覚情報識別時に活動する.②に関 しては,運動前野・左中心傍小葉は直接の運動指令を生 成する領域であり,右中心前回・中心後回は,左下肢の 運動感覚に関与する.③は,楔前部は全身運動イメージ 時に活動する領域であり,立位における課題時に複数の 身体領域で生じた運動感覚を記憶し,識別する際に貢献 したのではないかと考える. 【まとめ】 座位と比較して立位における足底での圧の識別課題時 は,足の感覚入力,圧覚情報の識別,姿勢制御,全身運 動イメージ等に関与する複数の感覚運動領域を活性化さ せる可能性がある. 倫理的配慮,説明と同意 本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院倫理委員会にて承認を 得て実施した(承認番号 20120).また研究実施にあたり, 対象者に十分な説明を行い,同意を得た.Key Words
016
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障害との向き合い方や気持ちの整理の仕方に関する一考察
東馬場 要
(PT) 小倉リハビリテーション病院障害者施設等一般病棟/心理的適応/ NAS-J-D
【目的】 当院障害者施設等一般病棟 ( 以下,障害者病棟 ) では, 様々な疾患や入院背景の患者が入院しており心理的ケア の側面からも多様なかかわりが求められる.特に障害へ の心理的適応は ADL の改善や社会参加などにも影響を 及ぼすため,障害との向き合い方や気持ちの整理の仕方 を把握することは患者を援助する上で重要であると考え た. そこで今回,障害者病棟に入院中の患者の心理的適応 を踏まえ,どのように援助するべきかを考える手掛かり を探ることを目的として,実態調査を行った. 【方法】 平成 30 年 3 月 19 ~ 30 日に障害者病棟へ入院中 であった患者の内,障害者施設等入院基本料で定める状 態 に あ る 者 で,Mini Mental State Examination 24 点以上を有し,研究に同意の得られた患者を横断的 に調査した.診療録より基本情報 ( 年齢,疾患,発症から入院まで の期間など ),アンケート調査時の日常生活機能評価, Functional Independence Measure( 以下,FIM) を調査し,障害に対する心理的適応については The Nottingham Adjustment Scale Japanese Version for Disease( 以下,NAS-J-D) を用いたア ンケート調査を行った. 分析は,障害への心理的適応に関係する要因を調べる ために主成分分析を行った.因子の抽出条件として,固 有値が 1 以上かつ累積寄与率 60% 以上を基準とし, 各主成分の特徴付けを行った . 統計解析には JMPver.9 を使用した . 【結果】 対象者は 16 名 ( 男性 9 名,女性 7 名 ) で,年齢は 69.6 ± 15.1 歳, 発 症 か ら 入 院 ま で の 期 間 は 1295.9 ± 3598.7 日,入院からアンケート調査ま での期間は 72.6 ± 74.8 日,疾患の内訳は脊髄疾患 6 名,脊髄損傷や切断などの外傷性疾患 6 名,神経難 病 4 名,入院経路は急性期病院 10 名,自宅 4 名,回 復期病棟 1 名,その他 1 名,アンケート調査時の FIM 運動項目は 48.1 ± 16.9 点,NAS-J-D の総得点は 100.6 ± 11.4 点であった. 分析の結果,主成分は第 4 主成分までが抽出された ( 累積寄与率 63.3%). 主成分負荷量の大きさを解析し た結果,第 1 主成分 ( 寄与率 26.8% ) は,主に不安・ うつ,障害受容に関する設問が抽出され「自信」と名付 けた.第 2 主成分 ( 寄与率 14.4% ) は,主に自尊感情, 自己効力感に関する設問が抽出され「自尊心」と表現し た.第 3 主成分 ( 寄与率 11.8% ) は,“ 健常者よりも 落ち込みやすい ” など「劣等感」,第 4 主成分 ( 寄与率 10.3% ) は,“物事がうまくいくのは幸運だからである ” など「幸運感」とそれぞれ特徴づけた. 【考察】 障害との向き合い方や気持ちの整理の仕方,すなわち 心理的適応を測るために,身体障害者に用いられる NAS-J-D を使用した . 様々な疾患および障害を持ち罹 患歴が長い患者が対象であったが,応答しにくい設問項 目もなく回答を得ることができた.結果は,主観的な判 断ではあるが「自信」,「自尊心」が上位の概念を占めて おり,障害者病棟に入院中の患者の心理的適応とは,自 分を尊重し,障害と共に過ごす生活に対して自信をもっ ている状態である可能性が示唆された.また,ほとんど の患者がアンケートの設問項目以外に辛さや苦しみ,嘆 き,そして喜びといったエピソードを語ることが多く, 心に秘めた思いを感じることができたことも印象的で あった . このように患者の気持ちを丁寧に知る機会を得 ることが心理的適応を支援するための基本であることが 再認識できた . 今後も対象者を増やし検証を重ねると共 に,リハビリテーションの効果などについても縦断的に 検証していきたい. 倫理的配慮,説明と同意 本研究の計画立案に際し,事前に当院の倫理審査委員会の承 認を得た上で ( 共倫第 290022 号 ),対象者に文書による同 意を得た.