婦人科良性疾患に対して施行したTLHの周術期合併症について
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(2) ついて後方視的に検討し、若干の考察を踏まえて 報告する。なお、全ての症例において研究発表を. た婦人科良性疾患に施行した子宮全摘術713例で、 腹式子宮全摘術は432例、TLHは262例、ロボッ. 行う事を文書で同意を得ている。. ト支援子宮全摘術は19例であった。子宮全摘術の 年次推移としてTLHの割合は、2013年から2015 年までは約10%であったが、2016年と2017年は49. 【対象と方法】 2013年1月から2019年12月までの7年間に当科 で婦人科良性疾患に対して施行した子宮全摘術 713例を対象とし、子宮全摘術の変遷とTLHを施 行した262例の周術期合併症について検討した。 TLHを予定した症例で、開腹手術に移行した症 例は無かった。子宮筋腫や子宮腺筋症などの子宮 疾患に対しての腹腔鏡手術の適応は、子宮頸部細 胞診、子宮内膜細胞診や画像検査などで悪性疾患 の可能性が低く、子宮の大きさがMRI矢状断で子 宮底部上端が岬角を超えない事としている。子宮 底部上端が岬角を超える大きさになると子宮の可 動域が悪いために把持が難しくなり、また視野確 保も困難となる事から手術操作の難易度が高くな り、出血量も多くなるためである。子宮筋腫にお ける最大筋腫核径は8㎝を目安とし、筋腫核数に ついては厳密な手術適応基準は設けずに症例ごと に判断した。全ての症例に腹腔鏡手術に関する詳 細な説明を行い、文書で同意を得た。手術方法は 二酸化炭素ガスにより気腹し、ポート配置は4孔 式ダイヤモンド法で施行している。子宮摘出時の 多くはKoh colpotomizer systemや子宮マニピュ レーターを使用してTLHを行っている。尿管と 子宮動脈の確認、子宮動脈の結紮は側方アプロー チで行っている。子宮を経腟的に摘出し、腟断端 縫合後に膀胱鏡で両側尿管口からの尿流を確認し ている。膀胱鏡はインジゴカルミン1Aを静脈注 射し、生理食塩水150mlで膀胱を膨満させ、硬性 膀胱鏡で膀胱内を観察している。. %、2018年は54.6%、2019年は49.5%であった(図 1)。当院の規定でTLHは内視鏡技術認定医の指 導の下で施行する事になっており、2015年までは 他施設の内視鏡技術認定医に来院して指導して頂 い て い た。2016年 以 降 にTLHが 増 加 し た のは、 に当科医師が内視鏡技術認定医を取得し、他施設 から来院して頂く必要が無くなり、手術日程など の調整が容易になったためである。2018年にロボ ット支援手術を導入し、2019年はロボット支援手 術を含めると64%が内視鏡手術で子宮を摘出して いた。 TLH262例における周術期合併症は12例(4.6%) であった。合併症の有無において年齢、BMI、経 腟分娩歴、既往開腹歴を比較したが、両群間に統 計学的な有意差は認めなかった(表1)。手術時間、 出血量、子宮の大きさ、子宮筋腫の有無、重症子 宮内膜症の併存についても、両群間に差は認めな かった。 TLHにおける周術期合併症において術中合併 症は5例(1.9%)で、内訳は尿管損傷2例、膀 胱損傷2例、直腸損傷1例であった(表2) 。尿 管損傷の1例目は、深部子宮内膜症を伴った子宮 頸部高度異形成の症例で、骨盤内に高度の癒着を 認めていた。癒着剥離や尿管や子宮動脈を露出す. 今回は、診療録の記載内容から後方視的に術式 の年次推移や周術期合併症数や発生状況を検討し た。 合併症の有無において年齢、BMI、経腟分 娩歴、既往開腹歴、手術時間、出血量、子宮の大 きさ、子宮筋腫の有無、重症子宮内膜症の併存を 評価項目とし、子宮の大きさは術前MRI画像で評 価し、子宮内膜症所見は腹腔内所見をもとに判断 し た。 統 計 学 的 検 討 はFisher検 定、 χ 2 検 定、 Mann-Whitney U検定法を用い、P<0.05 を統計 学的に有意とした。本研究は福岡大学医学部倫理 委員会の承認(No.U20-586)を得ている。 【結 果】 2013年1月から2019年12月までに当科で施行し. 図1 子宮全摘術の術式別割合(n) 腹式子宮全摘術 全腹腔鏡子宮全摘術 ロボット支援子宮全摘術. 2015年までは85%以上を腹式子宮全摘術で行っていたが、 2016年からは約50%を全腹腔鏡下子宮全摘術で行うようにな った。2018年からロボット支援手術を導入した。. ― 8 ―.
(3) 表1 TLHにおける合併症の有無での比較. 表2 TLHにおける合併症の発生数(n). る際に出血に対して、鈍的な剥離やモノポーラー やバイポーラーを使用した。2例目は卵巣腫瘍合. ント(ピッグテイルタイプ)を留置して経過観察 とした。術後3ヵ月目に尿管ステントは抜去し、. 併の完全子宮脱に対してTLHを行った症例で、 子宮脱のために尿管の走行が偏移していた。特に. 以後も問題なく経過している。 膀胱損傷の2例はいずれも膀胱剥離時に損傷. 基靭帯切断時に尿管を確認しているときに不用意 な出血を認め、モノポーラーやバイポーラーで数 回にわたり止血した。2例とも腟断端縫合後の膀 胱鏡で尿管孔から膀胱内への尿流出は確認できた. し、損傷部位を吸収糸で2層縫合した。2例とも 術後7日目に逆行性膀胱造影で膀胱内から腹腔内 に尿の流出が無い事を確認し、尿道カテーテルを 抜去した。退院後も問題なく経過している。. が、同時に腹腔内にもインジコカルミンの流出を 認めた。術中に尿路造影検査を施行したが、尿管. 直腸損傷の1例は子宮脱を併発した子宮筋腫に 対してTLHを行った症例である。経腟的に子宮. から明らかな尿流出部位は確認できず、尿管ステ. を摘出する時に直腸0時方向に径2㎝の損傷を認. ― 9 ―.
(4) め、損傷部位を縫合した。術後3日目から流動食 を開始し、徐々に食種を変更した。術後11日目に. /µl、CRP 22.5 mg/dlと炎症所見の上昇、尿中ミオ グロビン190.4ng/ml(正常値:<10ng/mL)CK. 常食とし、術後13日目に自宅退院とした。 TLHにおける術後合併症は7例(2.7%)で、 腟断端部膿瘍3例、尿管瘻1例、コンパートメン. 5,229 U/L、AST 124 U/L、ALT 55 U/L、LDH 412 U/Lと上昇、Plt 46,000/µl、FDP 188µg/ml、. ト症候群1例、術後悪性高熱症1例、創離開1例 であった(表2)。腟断端部膿瘍の3例は、全て 腟断端部に3㎝大の膿瘍を認め、3例ともに抗菌 薬で改善した。 尿管瘻は多発子宮筋腫に対してTLHを行った 症例で、腟断端を縫合後の膀胱鏡で両側尿管から 尿流出を確認し、手術を終了した。術後経過も異 常は無く、術後5日目に退院した。術後20日目頃 から腹部膨満感と排尿痛が出現し、術後25日目に. フィブリノーゲン 374mg/ml、PT-INR 1.51であ った。全身筋硬直、尿中ミオグロビン高値、不自 然な頻呼吸、周術期の不自然な体温上昇(>38.8 ℃)、不自然な洞性頻脈、ダントロレン投与による 呼吸性アシドーシスが改善したことからclinical grading scale 48点であり、悪性高熱症ランク5 (かなり高い)と診断した。ダントロレンナトリ ウム水和物投与によりアシドーシスは改善し、輸 血などの全身管理を行うことにより、徐々に全身 状態や血液検査値も改善し、術後17日目に全ての. 当科を再診した。超音波断層法、下腹部造影CT 検査で肝表面からダグラス窩におよぶ腹水と右腎 盂から尿管の拡張を認め、尿管から腹腔内への尿 流出を疑った。逆行性膀胱造影や尿路造影検査で 膀胱近位部の右尿管から腹腔内への線状の造影剤 流出を認め、尿管瘻と診断した。瘻孔が小さく保 存療法が可能と判断し、尿管ステント(ピッグテ イルタイプ)を留置した。6ヵ月後に尿管ステン トを抜去し、抜去後は問題なく経過している。 コンパートメント症候群症例はBMI25.4Kg/m2 で、多発子宮筋腫に対してTLHを行った。硬膜 外麻酔を併用した全身麻酔後に体位を砕石位と し、手術中は約12度の頭低位で行った。手術時間 は5時間41分で、手術終了直後に左下腿に発赤を 伴った腫脹を広範囲に認め、CKは403U/L(正常 値:41~153U/L)に上昇していた。左前脛骨と 浅後方のコンパートメント症候群と診断し、減張 筋膜切開術を施行した。術後11日目から下肢のリ. 検査項目が正常化し、術後19日目に自宅退院とな った。 創離開症例は臍部にカメラポート(12mm)を. ハビリテーションを開始し、術後28日目に自宅退 院となった。術後3ヵ月目から手術前と同様の歩 行が可能となり、術後6ヵ月目から激しい運動も 可能となった。. れ た 腹 腔 鏡 手 術 は172,919例 で、 術 中 合 併 症 は 2.35%、術後合併症は1.22%であった。術中合併 症は500mlを超える出血が1.71%、腸管損傷0.15%、 膀胱損傷が0.13%、尿管損傷が0.07%であった。 良性疾患に行われた子宮全摘術の合併症も同様の. 術後悪性高熱症症例は粘膜下子宮筋腫に対して 全身麻酔でTLHを施行した。術中のバイタルサ インに異常は無く、術直後に40.2℃の発熱を認め たが、血圧、酸素飽和度は保たれ、血清生化学検 査値も正常範囲内であった。発熱に対しては解熱 剤を使用し、解熱後のバイタルサインは正常範囲 であった。手術18時間後に筋強直が出現し、血圧 低下(74/40mmHg)、頻脈(脈拍121回/分)、頻 呼吸(呼吸数30回/分)を認めた。動脈血ガス分 析で代謝性アシドーシス(pH 7.335、PCO2 58.8 mmHg、HCO3 20.1 mEq/L)を認め、WBC 21,900. 配置し、4孔式ダイヤモンド法でTLHを行い、 子宮は経腟的に回収した。臍部のカメラポート挿 入部は筋膜を2-0バイクリルで短結紮縫合し、 皮膚にステリストリップを貼付した。他のポート 刺入部は4-0バイクリルで真皮縫合を行い、皮 膚にステリストリップを貼付した。術後2日目に 臍部のカメラポート挿入部から小腸の脱出を認 め、用手的に小腸を腹腔内に還納して再縫合を行 った。 【考 察】 2018年に谷口ら4)が報告した日本産科婦人科内 視鏡学会の集計では2014年から2016年にかけて年 間 に10,000例 ず つ 手 術 数 が 増 加 し、2016年 は 67,758例の手術が行われている。3年間で集積さ. 割合であった。2018年に報告された第14回日本内 視鏡外科学会アンケート調査5)では、2017年に行 われた婦人科腹腔鏡手術総数は81,962例で、2016 年よりも14,000例の増加を認め、81,962例の術中 合併症は2.24%、術後合併症は0.52%であった。 良性疾患に対して行われた子宮全摘術の術中合併 症は膀胱損傷0.3%、尿管損傷0.2%であった。当 科のTLH262例では、術中合併症5例(1.9%)、 術後合併症7例(2.7%)、膀胱損傷が2例(0.76%)、 尿 管 損 傷 が 3 例(1.1 %) で あ っ た。 出 血 量 が. ― 10 ―.
(5) 500mlを超える症例がなかった事から術中合併症 の割合は全国平均と同様であるが、膀胱損傷や尿 管損傷は全国平均を上回っていた。膀胱損傷や尿 管損傷の原因としてはエネルギーデバイスによる 熱損傷であったと考えている。モノポーラーやバ. は症例の体格によって異なる事から、TLHの適 応を考える上で子宮横径について検討している Hattaらの報告も参考となる。合併症を発症する 要因としては子宮の大きさだけではなく、骨盤内 の癒着や解剖学的偏倚なども要因となるために術. イポーラーシーリングデバイスを使用する際は、 組織を可及的に挙上して周囲の組織との距離を取 る事に心がける必要がある。また、術前から尿管. 前の評価を慎重に行う事も必要である。また、. の確認が難しいと思われる症例は、後述している ように尿管ステントを留置するようにしている。 今回の検討で術中出血量については500ml以上 を認めた症例は無く、TLHの適応が関与してい. より安全な手術が成し遂げられるように研錯を続. ると思われる。TLHの適応は産婦人科内視鏡手 術ガイドライン(2019年版)でも明確な基準は無 く、適応の選択は施設により異なり、適応の選択 は安全な運用が第一と記載されている。当科で行 っているTLHの適応は、MRI矢状断で子宮底部 上端が岬角を超えない事としている。子宮重量が 500gを超えるTLHから開腹手術への移行率が有 意に高くなるという報告や子宮重量500g以上は 合併症リスク因子であると報告されている2,6)。術 前に子宮重量を測定する事は困難であるが、双合 診において双手拳大の子宮の推定子宮重量が500 ~600g、新生児頭大~小児頭大の子宮は約800g と言われている。しかし、双合診は診察者の主観 に頼る傾向が強く、客観的判断は困難である7)。 客観的に判断する方法として術前MRI検査の子宮 縦径や横径を用いることが可能である。個々の合 併症についての報告はないが,HattaらはTAH、 LAVH、TLHを比較してMRIで測定された子宮 横径100mm以下がTLHに適していると報告8) し. TLHの合併症は術者の経験値によって低下する との報告10)もあり、今後も更に症例数を蓄積し、 ける事が肝要である。 手術手技では、子宮動脈をはじめに結紮した方 が有意に出血量を減少させるという報告11) もあ るが、子宮動脈も基靭帯も結紮しない方が出血が 少ないという報告12) もある。子宮動脈を同定す るための組織の展開方法には前方アプローチ・側 方アプローチ・後方アプローチが報告されている。 前方アプローチは広間膜前葉側より後腹膜腔に入 り、側膀靭帯を目安に子宮動脈を同定する方法、 側方アプローチは骨盤三角部腹膜より後腹膜腔に 人り、側膀靭帯を目安に内腸骨動脈からの子宮動 脈分岐部を求め子宮動脈を同定する方法、後方ア プローチは広問膜後葉より後腹膜腔に入り、尿管 を目安に交叉する子宮動脈を同定する方法であ る13,14)。当科では側方アプローチを用いて尿管と 子宮動脈を同定し、できるだけ早く子宮動脈を結 紮するようにしている。さらに様々な血管もでき るだけバイポーラ電気凝固止血装置や超音波凝固 切開装置で細かく止血するように心がけている。 尿管に関与した合併症は術中に発症した尿管損 傷2例と術後に発症した尿管瘻の1例であった。 TLHを行う上で、子宮内膜症による癒着、子宮 筋腫による解剖学的偏倚、子宮筋腫の大きさが手 術が難航するリスク因子となる15) と報告されて. ている。今回は経腟超音波断層法での比較を行う 事はできなかったが、Leonardらは経腟超音波断 層法で子宮縦径が100mmを超えると開腹手術へ の移行率が9.17倍になると報告9)している。今回 後方視的に術前MRI検査から子宮を測定し、合併 症を発症しなかった250例中、子宮縦径が100mm を超えたのは33例であった。合併症を発症した12. いる。尿管損傷の発生率は、開腹手術より腹腔鏡 手術の方が高いと報告されている16)。その理由と しては、視野の不良、触覚の欠如、子宮の牽引が できず尿管が切開線に近いこと、エネルギーデバ イスの使用などが挙げられる。尿管瘻発症例は尿. 例の中で子宮縦径が100mmを超えたのは2例で、 膣断端部膿瘍の1例が子宮縦径100mm、尿管瘻. 管の確認が困難であったため、尿管や子宮動脈を 露出する際に出血し、エネルギーデバイスを用い. を発症した症例が117mmであった。合併症を発 症しなかった250例で子宮横径が100mmを超えた のは3例であった。合併症発症例で子宮横径が 100mmを超えたのは1例のみで、膣断端部膿瘍. た止血操作後の遅発性熱損傷が原因と考えられ る。今回の検討で子宮の大きさは有意差を認めな かったが、これは手術の適応を岬角を超えない大 きさとしている事が関与している可能性がある。. を発症した症例が子宮横径110mmであった。当 科はMRI矢状断で子宮底部上端が岬角を超えない. 3症例ともに尿管周囲に癒着や視野不良、解剖学 的偏移のため尿管の確認が困難であった。また、. 大きさをTLHの適応としているが、岬角の位置. 3例中2例は子宮脱を併発した症例であり、解剖. ― 11 ―.
(6) 学的偏倚は子宮脱症例も注意する必要がある。 尿管瘻を経験してからは、高度な癒着が想定さ れる症例や悪性腫瘍手術には尿管ステントを留置 するようにした。尿管ステントは麻酔導入後に留 置し、膀胱鏡時に抜去するため患者自身へ負担は 非常に少なく、積極的に尿管ステント留置を行う ようにした。2019年からはStryker社が開発した 新しい発光式尿管カテーテル(Infrared illumination system;IRIS)を症例を選択して使用している。 図2のように子宮を挙上させIRISを発光させる と、後腹膜から発光した尿管を透見することがで きる。蛍光の明るさは5段階で調整可能で、状況 に応じて視認性の調整を行うことができる。また、 ロボット支援手術(da Vinci Si, Xi)でも使用可 能であり、触覚がないロボット支援手術にも有用 なツールである。 コンパートメント症候群は発生率が0.067%~ 0.28%と非常に稀は合併症であるが、永続的な筋 肉神経障害を来す可能性があるため、緊急にコン パートメント内の圧力を下げるための措置を行う ことが必要である2,17,18)。コンパートメント症候群 のリスク因子は1)手術体位(砕石位、頭低位)、 2)4時間以上の手術時間、3)BMI 25 以上、4) 糖尿病の既往や喫煙歴、5)弾性ストッキングや 観血的空気圧装置の装着、6)術中出血量、術中 低血圧、7)術中の下肢血管の直接的な圧迫など がある19-21)、本症例は、1)2)3)5)のリス ク因子が関与したと考えられる。本症例を経験し、 術前に既往症や合併症によるリスクの評価と周 知、体位は開脚仰臥位、頭低位を3時間毎に解除 し、下肢血流の確認と圧迫解除の徹底、術後直後 に下腿の理学的所見の確認を実施している。. 悪性高熱症は骨格筋の筋小胞体のカルシウム代 謝異常で、揮発性吸入麻酔薬や脱分極性筋弛緩薬 により誘発される。常染色体優性遺伝の潜在的筋 疾患で、男性に多いと言われている。発症頻度は 全身麻酔73,000例に1例とされる稀な疾患で22)、 発症後に急速に状態が悪化して死亡するなど重篤 な結果に至る症例も少なくはない。さらに術中に 発症する悪性高熱症とは異なり、麻酔後に発症す る術後悪性高熱症の報告があり、病態は不明であ る。婦人科手術の合併症として術後悪性高熱症の 報告例は無かった。術後悪性高熱症の発症率は、 麻酔覚醒時に39.0%、2時間以内に26.8%、24時 間以内に22.0%、24時間以降に2.4%と報告されて おり、術後2時間は特に慎重に観察する必要があ る23)。診断方法は盛生らの体温の数値基準24)を使 用した臨床診断基準や臨床症状について項目ごと 加点して行うclinical grading scale25) を用いる。 診断後は直ちに揮発性吸入麻酔薬や脱分極性筋弛 緩薬を中止し、静脈麻酔薬と非脱分極性筋弛緩薬 に変更する。術中であれば早急に手術を終了し、 ダントロレンナトリウム水和物を投与するととも に全身管理を行う事である26)。本症例は手術18時 間後に筋硬直や頻脈などが出現し術後悪性高熱症 と診断したが、症状を伴っていない術直後の高熱 時から発症していた可能性がある。悪性高熱症は 非常に稀な疾患であるが、致死的な疾患である。 そのため腹腔鏡手術に関わらず、麻酔を伴う処置 を行った際は常に悪性高熱症を念頭に置くことが 重要である。 【結 論】 今回の後方視的検討でMRI矢状断で子宮底部上 端が岬角を超えないというのはTLHに適切な適 応であることを再認識することができ、今後も安 易な適応拡大は行わずに慎重に腹腔鏡手術を行っ ていきたい。また、コンパーメント症候群や悪性 高熱症など非常に稀な術後合併症が発症してい た。本研究を振り返り、今後も術中の手技だけで はなく、体位や手術時間、術後管理を含めて、常 に安全性を配慮して腹腔鏡手術を行うように心が けていきたい。 すべての著者に開示すべき利益相反はない。. 図2 発光式尿管カテーテルの手術所見. 子宮頸部筋腫症例に発光式尿管カテーテルを留置した。発行 式尿管カテーテルが透見でき、尿管の走行を容易に確認でき る。. 【参考文献】 1 ) Garry R, et el.: The eVALuate study: two parallel randomized trials, one comparing laparoscopic with. ― 12 ―.
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