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食品中残留農薬規制の動向

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Academic year: 2021

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JSM Mycotoxins is issued twice a year, one volume a year, by the Japanese Society of

Mycotoxicology and the purpose of the journal is to publish results and technical

information regarding mycotoxins. JSM Mycotoxins publishes Reviews, original results

(Research Papers, Technical Notes, Notes, and Letters), Proceedings of special lectures,

symposia, and workshops of the meeting of Japanese Society of Mycotoxicology

www.jstage.jst.go.jp/browse/myco

Japanese Society of Mycotoxicology

(http://www.jsmyco.org/MYCONTENTS/Eng/index_eng.html)

O O O O O OMe H H O O OH OH O OH O O O OH N H COOH O O O Cl OH

Trends in regulations on pesticide residues

in food

Toshihiro Nagayama

JSM Mycotoxins, 71(1):21-24 (2021)

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プロシーディング

www.jstage.jst.go.jp/browse/myco/-char/ja/

食品中残留農薬規制の動向

永山 敏廣

1 1明治薬科大学(〒204-8588 東京都清瀬市野塩2-522-1) キーワード 赤カビ病;規制;小麦;残留基準; 残留農薬;食品衛生法;防除 連絡先 永山 敏廣,明治薬科大学,〒204-8588 東京都清瀬市野塩2-522-1 電子メール:nagayama@my-pharm. ac.jp (2021年3月1日受付, 2021年3月1日受理) 要旨  農薬は農作物等の生産性向上と過重労働の低減などを目的に開発・使 用される.菌類により発症する植物病害防除と併せ,マイコトキシンの 低減効果が高い農薬の開発が進むなど,農薬はカビ毒汚染を抑制する有 用な資材のひとつとなっている.  食品に残留した農薬は,食品衛生法に基づき残留基準が設けられて厳 しく規制される.法に則り監視・指導され,違反品の廃棄,違反者への 懲役または罰金が課せられる.本残留基準は昭和43年に設定されて以来 順次拡大され,平成18年にはポジティブリスト制度が導入され,すべて の食品に対してすべての農薬が規制対象となった.その後も,新規開発 や適用拡大,インポートトレランス,安全性評価見直し等により,逐次, 基準値の追加,改正,削除が進められている.

はじめに

 農薬は,農薬取締法第二条により「農作物(樹木 及び農林産物を含む.以下「農作物等」という.)を 害する菌,線虫,だに,昆虫,ねずみ,草その他の 動植物又はウイルス(以下「病害虫」と総称する.) の防除に用いられる殺菌剤,殺虫剤,除草剤その他 の薬剤(その薬剤を原料又は材料として使用した資 材で当該防除に用いられるもののうち政令で定め るものを含む.)及び農作物等の生理機能の増進又 は抑制に用いられる成長促進剤,発芽抑制剤その他 の薬剤(肥料取締法(昭和二十五年法律第百二十七 号)第二条第一項に規定する肥料を除く.)」と定義 され,農作物等の生産性向上と過重労働の低減など を目的に,開発・使用されている.その使用に際し, ヒトや畜水産物等に対する安全性の確保を一義と して,薬効を有し薬害を生じない,生活環境動植物 に害を及ぼさないなどの要件が必要とされる.  イネいもち病・イネ紋枯病・ネギさび病・キュウ リうどんこ病・イチゴ炭疸病・ハクサイべと病・ト マト灰色かび病などの病害を引き起こす植物病原 体には,細菌やウイルスより糸状菌(変形菌・真菌 類:俗にカビと呼ばれる)が圧倒的に多く,糸状菌 病は植物病害の70∼80%を占める.ムギ赤カビ病の 病原菌としては,Gibberella zeae(ScHWEINITZ)

PETCH〔不完全世代:Fusarium graminearum

SCHWABE〕,Monographella nivalis(SCHAFFNIT)

MÜLLER〔 不 完 全 世 代:Microdochium nivale

(FRIES)SAMUELS et HALLETT〕などが知られ,こ

れら病原菌の繁殖によりデオキシニバレノール (DON),ニバレノール(NIV)などのカビ毒が産生 される.カビ毒による健康被害を防止するため, DONには小麦に対する暫定基準1.1 ppmが設けら れている.  農作物の病原菌を防除する農薬として,殺菌剤 (農作物を加害する病気を防除する薬剤)が挙げら れる.小麦では,赤カビ病防除に併せてカビ毒含有 濃度の低減効果も得られている.DONやNIVの半 数致死量(LD50)や耐容一日摂取量(TDI)は,使用 される農薬のLD50や許容一日摂取量(ADI)に比較 してかなり低く,農薬の利用はカビ毒に起因する人 の健康に対するリスクをより低減するとされる. 食品中残留農薬規制のはじまり  初めて食品に残留した農薬量が規制されたのは, 昭和31年11月2日衛発第769号「りんごに残留する 農薬の取扱について(通知)」によるとされる.許容 量を超えて残留した場合は,「払拭,洗浄等の方法に よる除去及び生産者・農林担当部局に対して厳重警 告を行う」ことが示された.

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22 永山 敏廣  その後,昭和43年3月30日厚生省告示第109号に より,食品,添加物等の規格基準(昭和34年12月28 日厚生省告示第370号)の一部改正が行われ,食品の 成分規格として残留農薬の許容量(残留基準)が設 けられた.昭和43年10月1日から適用されて法に基 づく監視・指導が始まり,違反品は廃棄され,違反 者には懲役または罰金が課せられるようになった.  食品中の農薬の残留基準は,現在,リスク分析の 考え方に基づき農薬を適正な使用方法で使用した 際の残留濃度や国際基準を参照して設定されてい る.農林水産省または農薬製造業者などから新規登 録,使用方法の変更,インポートトレランス(諸外 国で使用が認められている農薬等を使用した農畜 水産物を我が国に輸出する際に,当該農薬等の残留 基準の設定または改正を要請すること)等に伴い, 厚生労働省に基準値設定要請がされると,厚生労働 省から食品安全委員会に当該農薬についてのリス ク評価が依頼される.食品安全委員会がヒトに対す る健康影響についてリスク評価を行ってADIや急性 参照用量(ARfD)を設定し,厚生労働省がその評価 結果に基づき食品中の残留基準を設定してリスク 管理を行っている(図1).そして,これらリスク評 価やリスク管理の全過程に関して,関係者間で相互 に情報の共有や意見の交換を行うリスクコミュニ ケーションが実施されている.基準の設定に際して は,毎日食事を摂る際に摂取すると推定される総農 薬量がADIの80%を超えないこと,個々の食品を一 度に大量に摂ったときの農薬摂取量がARfDを超え ないこと,を確認している.農薬が残留した食品で あっても,基準に適合していれば,それらの食品を 長期間にわたり継続して摂取した場合であっても, また,ある食品を一度に大量に摂取した場合であっ ても,人の健康を損なうおそれはないとされる. 食品衛生法食品規格による規制の変遷  残留基準は順次拡大され,平成18年5月29日には ポジティブリスト制度が導入された.すべての食品 に対してすべての農薬をはじめ,飼料添加物および 動物用医薬品(農薬,飼料添加物および動物用医薬 品を,以下「農薬等」と総称)も規制対象となり,本 基準,暫定基準,不検出基準,一律基準(0.01 ppm), 対象外物質(農薬等のうち,農畜水産物にある程度 残留したとしても人の健康を損なうおそれのない ことが明らかなもの)が規定された.その後も,新 規開発や適用拡大,インポートトレランス,安全性 評価見直し等により,逐次,基準値の追加,改正, 削除が進められている(表1).基準が設定されてい る農薬等の数は,ポジティブリスト制度が施行され た平成18年(2006年)5月29日に暫定基準(760農薬 等:現在の品目に合わせて集計したとき,以下同様) 図1 農薬残留基準設定までの概略 (厚生労働省「残留農薬 よくある質問」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/ shokuhin/zanryu/faq.html より引用)

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と本基準(41農薬等)を合わせて801農薬等の基準が 設定されていたが,令和2年(2020年)12月15日まで には,暫定基準が見直しに伴う本基準への移行や削 除により269農薬等に減少し,本基準(491農薬等: このうち新規は100農薬等)と合わせて760農薬等と なっている. 法適合を確認するための試験法  的確に法適合を判断するためには,精確な分析値 を得ることが求められる.一方,残留農薬等を規制 する基準値は極めて低く,このレベルで正しい分析 値(基準値と比較する値)を得ることは難しい.そこ で,その試験法が一斉分析法や個別分析法として告 示または通知され,これらと同等以上の手法を用い ることで,分析値の正当性を確保している.これら 分析値の信頼性を高めるため,その使用には妥当性 確認(選択性,真度,精度及び定量限界の目標値適 合を確認すること)が必須とされている.  妥当性評価の方法は,「食品中に残留する農薬等 に関する試験法の妥当性評価ガイドライン」(平成 22年12月24日食安発1224第1号「食品中に残留す る農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイドライ ンの一部改正について」https://www.mhlw.go.jp/ topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu3/dl/ 101224-1.pdf)に示されている.食品毎に,妥当性 を評価する試験法の試験対象である農薬等を含ま ない試料(ブランク試料)に試験対象の農薬等を,原 則として対象食品中の対象農薬等の基準値量を添 加した試料(添加試料)について,試験法に従って試 験し,その結果から各性能パラメータがそれぞれの 目標値等に適合していることを確認する. 農薬残留基準の設定と国際調和の推進  現在,小麦赤カビ病防除用の農薬として,クレソ キシムメチル,チオファネートメチル,テブコナ ゾール,プロピコナゾールおよびメトコナゾールな どが使用されている.また,最近,キャプタンとテ ブコナゾールを配合した殺菌剤が発売されるなど, カビ病防除と高いカビ毒低減効果を有する農薬の 開発が進められている.農薬はカビ毒汚染を抑制す る有用な資材のひとつであるが,ヒトや畜水産物等 に害を及ぼさずに,カビ毒による健康影響を低減す ることが望まれる.過量な使用により残留量が増大 して健康影響を及ぼすことのないように,各農薬そ れぞれに基準値が設けられ,厳しく規制されている (表2). 表1 厚生労働省公開の食品中残留農薬にかかわる 基準改正施行通知の状況 *2021年(令和3年)1月5日現在 施行通知発出回数 115 対象農薬等数 農薬等数 延べ数 重複を除く 基準値改正 820 495 基準削除 121 121 対象外物質指定 10 10 計 951 626 表2 小麦における基準値の例 農薬 小麦の基準値(ppm) キャプタン 2 クレソキシムメチル 0.1 チオファネートメチル 0.6※ テブコナゾール 2 プロピコナゾール 1 メトコナゾール 1 ※ 暫定基準:カルベンダジム,ベノミルをカルベンダジム含量 に換算したもの,チオファネートをカルベンダジム含量に換 算したもの及びチオファネートメチルをカルベンダジム含量 に換算したものの総和 表3 果実類検体部位の変更 (令和元年9月20日厚生労働省告示第123号) 〔改正前〕 食品 検体 すいか 果皮を除去したもの メロン類果実 果皮を除去したもの まくわうり 果皮を除去したもの みかん 外果皮を除去したもの びわ 果 ,果皮及び種子を除去したもの もも 果皮及び種子を除去したもの キウィー 果皮を除去したもの 〔改正後〕 (基準見直しに伴い順次改正) 食品 検体 すいか(果皮を含む.) 果実全体 メロン類果実(果皮を含む.) 果実全体 まくわうり(果皮を含む.) 果実全体 みかん(外果皮を含む.) 果実全体 びわ(果 を除き,果皮及び種子を含む.) 果 を除く果実全体 もも(果皮及び種子を含む.) 果実全体 キウィー(果皮を含む.) 果実全体

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24 永山 敏廣  一方,近年多くの食品は世界を巡っており,基準 設定に際して国際調和が図られている.小麦は,我 が国では市販されず目にする機会はほとんどない 玄麦が対象となっている.一方,びわ,もも,すい か,メロン類果実およびまくわうりの試験部位は諸 外国における部位と若干異なっていたが,国際基準 に合わせ,2019年9月20日に果皮等を除去したもの から果実全体に改正された(表3).

おわりに

 より安全で効果の高い農薬の開発や適用拡大が 図られ,国際化を踏まえた基準の新設や見直しは今 後も進められる.法適合を正しく判断し,安全な食 品の確保に務めたい.  科学技術の進歩はめざましく,より簡易,高感度 に分析できるようになってきた.しかし,食品は多 くの未知物質の集合体であり,分析に際し,思わぬ 問題が出現することもある.常に新しく正しい情報 を得て,的確に対処していくことが肝要と考える.

Trends in regulations on pesticide residues in food

Toshihiro Nagayama1

1Meiji Pharmaceutical University, 2-522-1 Noshio, Kiyose, Tokyo 204-8588, Japan

Pesticides are developed and used for the purpose of improving the productivity of ag-ricultural products and reducing overwork. The development of pesticides with high effects of plant disease caused by funji and reduction of mycotoxins is progressing. It is one of the useful materials to control mycotoxin contamination.

Pesticides residue in food are strictly regulated by establishing Maximum Residue Limit (MRL) based on the Food Sanitation Law. Foods are monitored and instructed in ac-cordance with the law, and the infringing foods are disposed of, and the offender is impris-oned or fined. This MRL has been gradually expanded since it was set in 1968, and the posi-tive list system was introduced in 2006, and all pesticides and foods have been subject to regulation. Since then, due to new development, application expansion, import tolerance, safety evaluation review, etc., MRL values have been added, revised, and deleted one after another.

Keywords: control; Food Sanitation Law; fusarium head blight; Maximum Residue Limit (MRL); pesticide residue; regulation; wheat

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