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TIMP-2 刺激によるシグナル伝達系は TIMP-2 濃度に依存して 選択される 王 挺1、○近藤 千裕1、山下 京子1、岩田 和士2、早 川 太郎1 1 愛知学院大学 歯学部 生化学講座、2 第 1 ファインケミカ ル(株) 【目的】TIMP には、 MMP インヒビターとは別に、多彩な細胞機能調節活性と総称さ れるいくつかの機能が知られている。 私たちは、すでに、TIMP-2 の細胞増殖シグナ ル と し て チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ (PTK) と extracellular-signal-regulated protein kinase 2(ERK2) 両活性の有意な上昇がみられることを報告した(1)。 本研究では、 ヒト骨肉腫(MG-63)細胞を用い、TIMP-2 刺激によるシグナル伝達系に TIMP-2 濃度がど のような影響を与えるかについて、さらに、TIMP-2 刺激によるシグナル伝達系の間に クロストークが存在するかどうかについて検討した。 【方法】ヒト骨肉腫細胞(MG-63, CRL 1427)を用い、基本培地としては細胞培養には D-MEM(Gibco BRL)に FCS(Gibco BRL)を 10%添加した培養液を用いた。TIMP-2 による細胞増殖を 3H-チミジン取り込みアッセイにより検討した。さらに、細胞内情報伝達研
究について、FTI-277、HA、H89 及び 8-Bromo-cAMP を用い、TIMP-2 による細胞内情報 伝達を検討した。ERK2 の活性化、Raf-1 の活性化、pMAPK の検出は、ウエスターンブロ ッティングを用い; Ras の活性化および Ras/PI3K 複合体の検出は、グルタチオン-セ ファロースに固定した GST 結合 Ral GDS RBD 融合タンパクを用い、免疫沈降法を行っ た。細胞内 cAMP の定量には、cAMP 酵素免疫測定キット (Amersham)を用いた。 【結果と考察】
1.低濃度(1ng/ml)の TIMP-2 による MG-63 細胞の刺激は、Raf-1 および ERK2 の活性
化を伴うことが明らかとなった。PTK 阻害剤であるハービマイシン A によって Raf-1 お よび ERK2 の活性化が強く抑制されるという事実は、PTK の下流にこれらのエフエクタ ー分子が存在することを示唆しており、すでに、報告されている結果(1)を再確認し た。一方、高濃度 (100 ng/ml)の TIMP-2 刺激によって MG-63 細胞内に cAMP の産生が 見られたことは、TIMP-2 刺激によって MG-63 細胞内には、TIMP-2 濃度に依存して選 択される 2 つの独立したシグナル伝達系が存在することを強く示唆している。 2.TIMP-2 刺激によって Ras の活性化がみられることが明らかとなった。また、PKA の阻害剤 H-89 が Ras-GTP の形成を抑制したことから、TIMP-2 は cAMP/PKA 系を介し て Ras を活性化することが示唆された。さらに、Ras の下流に存在する因子に関して は、20? 100ng/ml という濃度範囲の TIMP-2 刺激によって Ras と共沈するのは、分子 量 55、53 および 50 kDa の PI3K であることが明らかとなった。
3.本研究では、低濃度の TIMP-2 による Raf-1 と MAPK の活性化が、Ras に依存しな いことを示唆するという予想外の結果を得た。そこで、Ras の farnecylation を触媒 する farnecyltransferase の特異的な阻害剤である FTI-277 を用いて、MAPK の活性化 への影響を検討したが、何の影響も与えないことが明らかとなり、低濃度の TIMP-2
によるシグナル伝達は Ras 非依存性であることを確認した。 4.高濃度(100 ng/ml) の TIMP-2 ではほぼ完全に抑制されていた3 H-チミジンの取り 込みが一連の PKA 阻害剤によって低濃度の TIMP-2 による3H-チミジンの取り込みレベ ルまで回復したこと、高濃度の TIMP-2 刺激によって細胞内 cAMP の有意な産生が見ら れたこと、Raf-1/ERK2 系が低濃度の TIMP-2 によって活性化されるのに対し、高濃度 の TIMP-2 では活性化されないこと、さらに、cAMP アゴニストである 8-Bromo-cAMP が低濃度の TIMP-2 による Raf-1 または ERK2 の活性化を抑制する結果を得たことは TIMP-2 によって刺激される 2 つのシグナル伝達系の間に負の制御機構が存在する可 能性を強く示唆している(図 1)。
1) K. Yamashita et al., FEBS Lett. 396:103-107, 1996
キーワード:TIMP-2、細胞増殖、シグナル伝達系、負の制御機構 図1. TIMP-2 刺激による細胞内シグナル伝達経路 R PT K high affinity herbimycin A 100 ng/ml 1 ng/ml TIMP-2 ? Raf-1 MAPKK ERK2 nuclear targets Ras Ras FT FTI-277 Ras PI3K ? PKA cAMP Gs low affinity AC H89 8-Bromo-cAMP negative crosstalk?