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<論説>逮捕・勾留中の被疑者取調べの在り方--いわゆる「出頭・滞留義務」を中心に

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Academic year: 2021

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(1)法科大学院論集. 第7号. 逮 捕 ・勾 留 中 の被 疑者 取 調 べ の在 り方 いわ ゆ る 「 出 頭 ・滞留 義 務 」 を 中 心 に. 中 目. 次. 1は. じめ に. 2出. 頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 の 内 容. 3出. 頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 の 批 判 的 検 討. 園. (1>出 頭 ・滞 留 義 務 を課 した被 疑 者 取 調 べ の実 態 (2)取 調 べ の適 正 化 に関 す る近 時 の改 革 と そ の効 果 (3)出 頭 ・滞 留 義 務 を課 した被 疑 者 取 調 べ の法 的 性 質 (4)法198条1項 4出. の解 釈. 頭 ・滞 留 の 可 否(取. 調 禁 止 説 の 主 張 と そ の 検 討). (1)逮 捕 ・勾 留 の 目的 ・効 果 (2)弁 護 人 依 頼 権 (3)黙 秘 権 ・公 判 中 心 主 義 (4)法198条1項 (5)小 5任. の解釈. 括 意処分性確保の方策. (1)出. 頭 ・滞 留 義 務 の 不 存 在,取 調 べ 手 続 等 の 明 示. (2>弁. 護人 依 頼権 の実 質 的 保 障. (3)黙. 秘権 の実 質 的保 障. 6お. わ りに. 一81一. 江 里 人.

(2) 逮捕 。勾留 中の被疑者取調べ の在 り方. 1は. じめ に. 実 務 に お い て は,現 行 刑 事 訴 訟 法 の制 定 以 来 一 貫 して,逮 捕 ・勾留 中 の 被疑 者 に は い わ ゆ る 出頭 ・滞 留 義 務 が あ る(出 頭 拒 否 ・随 時退 去 の権 利 は な い)も の と し て,運. 用 さ れ て い る 。 す な わ ち,逮. 捕 ・勾 留 さ れ て い る 被 疑 者 は,捜. 査. 機 関 か ら当該 被 疑 事 実 に関 す る取 調 べ の た め に取 調 室 等 に 出頭 す る よ う求 あ ら れ た と き は それ を拒 む こ と は で きず,取 調 室 等 か ら退 去 して身 柄 拘 束 場 所(居 室)に. 1)裁. 戻 る こ と も で き な い1)。 そ し て,そ. の 条 文 上 の 根 拠 は,法198条1項. 但. 判 例 と して は,こ れ につ い て 直 接 正 面 か ら判 断 した もの はみ あ た ら な い。 た だ,余 罪 取 調 べ の. 適 法 性 を判 断 す る 際 に,逮. 捕 ・勾 留 の基 礎 とな った 被 疑 事 実 に 関 して は 出頭 ・滞 留 義 務(「 取 調 受. 忍 義 務 」 と表 現 され る こ と も多 い)が. あ る 旨判 示 す る も の は,多 数 存 在 す る。 余 罪 取 調 べ につ い て. は 出 頭 ・滞 留 義 務 が な い と した 裁 判 例 と して は浦 和 地 判 平 成2年10月12日. 判 時1376号24頁. などがあ. り,余 罪 取 調 べ につ い て も出 頭 ・滞 留 義 務 が あ る と した裁 判 例 と して は東 京 高 判 昭 和53年3月29日 刑 月10巻3号233頁 また,東. な ど が あ る。. 京 地 決 昭 和59年6月22日. 刑 月16巻5=6号504頁. は,現. 行 犯逮 捕 した 被 疑 者 の 写 真 撮 影 ・. 指 紋 採 取 お よ び これ らに 伴 う留 置 場 か ら各 場 所 へ の 移 動 に際 して,捜. 査 官 が 被 疑 者 に対 して 有 形 力. を 行 使 した こ とに 関 して,「 逮 捕 さ れ て い る被 疑 者 が,犯 罪 捜 査 の必 要 の た め,司 法 警 察 職 員 が 出頭 を 要 求 した の に これ に 応 ぜ ず 留 置 場 か ら出 房 しな い と き は,必 要 最 少 限 度 の 有 形 力 を 用 いて,司 警 察 職 員 の もと に 出 頭 させ る こ と が で き る こ とは,刑 り,ま た 刑 訴 法218条2項 るに は,被. 法. 但 書 の趣 旨 に よ り明 らか で あ. に よれ ば,身 体 の 拘 束 を受 けて い る被 疑 者 の指 紋 を採 取 し,写 真 を 撮 影 す. 疑 者 を 裸 に しな い 限 り,令 状 を 要 しな い と され て お り,指 紋 採 取 及 び写 真 撮 影 の 性 質 は. 身 体 検 査 で あ るか ら,同 法222条1項 され,右. 訴 法198条1項. に よ り,そ の拒 否 に 対す る直 接 強制 に 関 す る 同法139条 が 準 用. 被 疑 者 が 右 指 紋 採 取 や 写 真 撮 影 に任 意 に 応 じず,こ. れ を 拒 否 した 場 合 にお いて,間. 接強制. で は 効 果 が な い と認 め られ る と き は,そ の ま まそ の 目的 を 達 す るた め 必 要 最 小 限 度 の 有 形 力 を もつ て 直 接 強 制 を す る こ とは 許 され る と解 され る。」 と判 示 して い る。 最 高 裁 判 例 と して は,最 大 判 平 成11年3月24日. 民 集53巻3号514頁. が あ る。 これ は,弁 護 士 が 接 見. 妨 害 を 理 由 に 国家 賠償 を 請 求 した 事 案 で,請 求 を 棄 却 した 原 判 決 に対 して 原 告 が 上 告 した と こ ろ, 上 告 理 由 の 中 の 「刑 訴 法39条3項. 本 文 が 憲 法34条,37条3項,38条1項. に違 反 す る」 旨の 主 張 に関. して,最 高 裁 第3小 法 廷 が 大 法 廷 に い わ ゆ る 論 点 回 付 を 行 い,大 法 廷 が こ れ に つ い て 「理 由 は な い」 旨 の 判 断 を 示 した もの で あ る。 この 中 で 大 法 廷 は,「 な お,所 論 は,憲 法38条1項 利 益 な 供述 を 強 要 され な い 旨 を 定 め て い る こ とを 根 拠 に,逮 捕,勾 る 取 調 べ を受 忍 す る 義 務 は な く,刑 訴 法198条1項. が 何 人 も 自 己 に不. 留 中 の 被 疑 者 には 捜 査 機 関 に よ. た だ し書 の規 定 は,そ れ が 逮 捕,勾 留 中 の 被 疑 者. に 対 し取 調 べ受 忍義 務 を 定 め て い る とす る と違 憲 で あ って,被. 疑 者 が 望 む な らい つ で も取 調 べ を 中. 断 しな け れ ば な らな い か ら,被 疑 者 の 取 調 べ は 接 見 交 通 権 の 行 使 を 制 限 す る理 由 に は お よ そ な らな 一82一.

(3) 法科大学院論集. 第7号. 書 に 求 め られ て い る 。. しか し,同 条 項 の解 釈 を め ぐ って は,出 頭 ・滞 留 義 務 を否 定 す る見 解 が あ る ほか,逮 捕 ・勾 留 中 の被 疑 者 を取 調 室 で取 り調 べ る こ とが そ もそ も許 され な い と い う見 解 もあ る。 ま た,近 時,被 疑 者 取 調 べ に関 す る違 法 ・不 当 の事 例 が 明 らか にな っ た り2),刑 事 収 容 施 設 法 の審 議 に伴 って 代 用 刑 事 施 設 問題 が ク ロー い とい う。 しか し,身 体 の 拘 束 を 受 けて い る被 疑 者 に取 調 べ の た め に 出頭 し,滞 留 す る義 務 が あ る と解 す る こ とが,直. ちに 被 疑 者 か らそ の 意 思 に反 して 供 述 す る こ とを 拒 否 す る 自 由を 奪 う こ と を意. 味 す る もの で な い こ とは 明 らか で あ るか ら,こ の 点 につ いて の 所 論 は,前 提 を 欠 き,採 用 す る こ と が で き な い。」 と判 示 し た。 出頭 ・滞 留 義 務 の 肯 定 が 供 述 拒 否 権 の 否 定 を 意 味 す る こ と に はな ら な い と した だ けで あ って,出. 頭 ・滞 留 義 務 を 正 面 か ら肯 定 した もの と は いえ な いが,出. 頭 ・滞 留 義 務. 肯 定 説 と強 い 親 和 性 を もつ 判 示 で あ る。 2)た. とえ ば,以 ①. 下 の もの が あ げ られ る。. 志 布 志 事 件(鹿. 児 島 地 判 平 成19年2月23日. 判 タ1313号285頁). 現 金 の 供 与 及 び 受 供 与 とい う公 職 選 挙 法 違 反 被 告 事 件 で,捜 否 定 され,被 ②. 査 段 階 にお け る 自 自 の信 用 性 が. 告 人12名 全 員 が 無 罪 と され た 。. 富 山 事 件(富 山地 高 岡 支 判 平 成19年10月10日. 裁 判 所 ウ ェ ブサ イ トhttp://www.courts.go.jp/. hanrei/pdf/20071114115014.pdf)o 強 姦 等 の 罪 で 有 罪 が 確 定 した 元 被 告 人 に つ い て,刑 検 察 官 が 再 審 請 求 した 事 案 で,元 て,元 ③. の 執 行 終 了 後 に,真 犯 人 が 現 れ た と して. 被 告 人 の 捜 査 段 階 に お け る 自 白の 信 用 性 が 否 定 され るな ど し. 被 告 人 が 無 罪 と され た 。. 足 利 事 件(宇. 都 宮 地 判 平 成22年3月26El裁. 判 所 ウ ェ ブ サ イ トhttp://www.courts.:・. ・/. hanrei/pdf/20100526085646.pdf)o DNA型. 鑑 定 と元 被 告 人 の 自 白 と が 重 要 な 証 拠 とな って,わ. 棄 の 罪 で 有 罪 判 決 が 確 定 した 事 案 で,再. いせ つ 目 的 誘 拐 ・殺 人 ・死 体 遺. 審 請 求 の 即 時 抗 告 審 に お け る鑑 定 で 遺 留 物 のDNA型. が 元 被 告 人 の そ れ と一 致 しな い こ とが 判 明 して 再 審 開 始 決 定 が な され,再 鑑 定 に は 証 拠 能 力 が 認 め られ ず,自 だ と して,無 ④. 審 公 判 で,DNA型. 白 に つ い て も信 用 性 が 皆 無 で あ り虚 偽 で あ る こ とが 明 らか. 罪 が 言 い 渡 され た 。. 厚 労 省 元 局 長 事 件(大. 阪 地 判 平 成22年9月10日. 裁 判 所 ウ ェブ サ イ トhttp://www.courts。go.. jp/hanrei/pdf/20101118132100.pdf)o 厚生 労 働 省 の課 長(当. 時)と. して,心. 職 務 に 従 事 して い た被 告 人 が,そ 上 記 部 下職 員 に 指 示 して,上. 身障害者団体用の郵便割引に関する公的証明書発行の. の 部 下 職 員 及 び実 体 の な い 障 害 者 団体 の 会 長 等 と共 謀 の 上,. 記 団 体 が 郵 便 割 引 の適 用 の あ る 団 体 で あ る 旨 な どを 記 載 した 内 容. 虚 偽 の 公 的 証 明 書 を 発 行 した とい う虚 偽 有 印 公 文 書 作 成 ・同 行 使 被 告事 件 で,共. 謀の事実は認. め られ な い と して無 罪 とさ れ た。 こ の件 で は,証 拠 決定(大. 阪地 決 平 成22年5月26日. go.jp/hanrei/pdf/20100806114630.pdf)で,関. 疑 者 と して取 り調 べ られ た 際 に 作 成 さ れ た もの)の が却 下 さ れ て お り,そ の 中 で,一. 裁判 所 ウ ェブ サ イ トhttp://www.courts.. 係 者 の捜 査 段 階 の供 述 調 書(い 多 くに つ い て,検. ず れ も各 人 が 被. 察 官 に よ る 証 拠 調 べ請 求. 部 の 者 に 対 す る検 察 官 に よ る取 調 べ に つ い て,不. 一83一. 当 とい う判.

(4) 逮捕 ・勾留 中の被疑者取 調べの在 り方. ズ ア ップ され 関連 問 題 と して 取 調 べ の 在 り方 が と りあ げ られ た り3),裁 判 員 裁 判 の 開 始 に伴 い 従 来 の よ うな(被 告 人 と取 調 官 の 証 言 とい う水 掛 け論 にな りが ち な)任 意 性 立 証 の 在 り方 を 改 善 す べ きだ とい う問 題 意 識 が 出 て きた り した4) こ とで,被 疑 者 取 調 べ の在 り方 が 脚 光 を 浴 び,そ の適 正 化 に 向 け た 機 運 が 高 ま って い る。 こ こで は,出 頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 に依 拠 し た実 務 を 前 提 と して, そ の適 正 化 が め ざ され て い る。 しか し,出 頭 ・滞 留 義務 の 肯 定 とい う前 提 自体 を,再 考 して み る必 要 が あ るの で は な い か。 断 が な さ れ て い る。 ⑤. 大 阪 府 警 東 署 事 件(産 2010年9月3日. 経 新 聞2010年12月22日. 朝 刊 な ど). に大 阪府 警 東署 の警 察 官2名. が 在宅 の被 疑 者 に対 す る取 調 べ を 行 った 際,被. 疑 者 に対 して暴 言 を吐 い た と して,同 年12月16日. に 懲 戒処 分 を受 け,同. 年12月21日 に 脅迫 罪 で. 略 式 起 訴 さ れ た。 ⑥. 堺 公 訴 取 消 事 件(産. 経 新 聞2010年12月22日. 大 阪 地 検 堺 支 部 が,2010年1月. 朝 刊 な ど). に起 訴 した放 火 等 の事 件 につ い て,知. 的 障 害 が あ る被 告 人 の. 捜 査 段 階 に お け る 自 白 につ い て信 用 性 を立 証 す る こ と は 困難 と の結 論 に達 した と して,同 月26日 に公 判 担 当検 察 官 が 公 訴 取 消 を 申 し立 て,大 3)2006年2月2日. 年11. 阪地 裁 堺 支 部 が公 訴 棄 却 決定 を した。. の 「未 決 拘 禁 者 の処 遇 等 に 関 す る 提 言 」(法 務 省 ウ ェブ サ イ トhttp://www.moj.. go.jp/KYOUSEI/SYOGU/proposal.html)は,「 え る こ と は,次. 代 用 刑 事 施 設 制 度 を将 来 的 に廃 止 す べ き もの と考. の よ う な視 点 に立 つ と適 当 で は な く,ま た,現 在 の 司法 の運 用 に お い て,大 半 の被. 疑 者 が代 用 刑 事 施 設 に勾 留 さ れ て い る事 実 を 踏 まえ る と現 実 的 で な い とす る意 見 が 多 数 を 占 め た 」 と しなが ら,「代 用 刑 事 施 設 制 度 は将 来 的 に は廃 止 す べ き とす る強 い意 見 もあ る こ とや,刑 事 司法 制 度 全 体 が 大 き な変 革 の時 代 を迎 え て い る こ と な ど を考 え る と,今 後,刑. 事 司法 制 度 の在 り方 を検 討. す る際 に は,取 調 べ を含 む捜 査 の在 り方 に加 え,代 用 刑 事 施 設 制 度 の在 り方 につ い て も,刑 事 手 続 全 体 と の 関 連 の 中 で,検. 討 を怠 って は な らな い」 と した。 そ して,同. 年6月2日. に は 第164回 国 会. で 「刑 事 施 設 及 び受 刑 者 の処 遇 等 に関 す る法 律 の一 部 を改 正 す る法 律 」 が 成 立 して,同 法 が 「刑 事 収 容 施 設 及 び被 収 容 者 等 の処 遇 に 関す る法 律 」 と な っ た が,そ. の審 議 過 程 で,衆 参 両 院 の法 務 委 員. 会 が 上 記 法 案 を可 決 し た際 に附 帯 決 議 を して い る。 衆 議 院 法 務 委 員 会 の そ れ に は 「刑 事 司法 全 体 が 大 きな 変 革 の 時 代 を迎 え て い る こ と な ど を踏 まえ て,刑 成16年4月23日. 事 司法 制 度 の 在 り方 を検 討 す る際 に は,平. と と もに,代. の 当委 員 会 の 附 帯 決 議 の1を 尊 重 し,取 調 べ を含 む 捜 査 の在 り方 につ いて 検 討 す る 用 刑 事 施 設 制 度 の在 り方 に つ い て も,刑 事 手 続 全 体 と の 関 連 の 中 で 検 討 す べ き こ と」. (議事 録 第17号. 平 成18年4月14日)と. い う内 容 が 含 まれ て お り,参 議 院 法 務 委 員 会 の 附帯 決 議 に は. 「裁 判員 制 度 の実 施 を控 え,刑 事 司法 制度 の 在 り方 を検 討 す る 際 に は,取 調 べ 状 況 の可 視 化,新. たな. 捜 査 方 法 の 導 入 を 含 め,捜 査 又 は公 判 の手 続 に関 し更 に講 ず べ き措 置 の 有 無 及 び その 内容 につ い て 検 討 を 進 め る と と も に,代 用 刑 事 施 設 制 度 の 在 り方 につ いて も,刑 事 手 続 全 体 と の関 連 の 中で 検 討 す る こ と」(議 事 録 第22号 4)司. 平 成18年6月1日)と. い う内 容 が 含 ま れ て い る。. 法 研 修 所 編 『裁 判 員 制 度 の下 に お け る大 型 否 認 事 件 の 審 理 の 在 り方 』(法 曹 会,2008年)71頁. 以下。 一84一.

(5) 法 科大学 院論 集. 第7号. 本 稿 は,こ の よ うな 問題 意 識 か ら,逮 捕 ・勾留 中 の被 疑 者 取 調 べ の 在 り方 に 関 して,適 正 化 の基 盤 を な す 出頭 ・滞 留 義 務 の 問題 を 中心 に,適 正 化 に関 す る 近 時 の動 き を ふ ま え て,検 討 す る。 具 体 的 に は,ま ず,次 項 に お い て,出 頭 ・ 滞 留 義 務 肯 定 説 の 内容 ・根 拠 を確 認 す る。 次 い で 第3項 で は,適 正 化 に 関 す る 改 革 の現 状 を参 酌 しつ つ,出 頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 が採 用 可 能 か ど うか を批 判 的 に検 討 す る。 続 く第4項. で は,そ. もそ も取 調 室 に お け る取 調 べ が許 され るの か. (逮 捕 ・勾 留 中 の被 疑 者 につ い て,取 調 室 へ の 出頭 や そ こ で の滞 留 が あ り得 る の か)と い う点 につ い て,検 討 す る。 そ して第5項. で は,出 頭 ・滞 留 義 務 に 関. す る結 論 をふ ま え て,逮 捕 ・勾 留 中 の被 疑 者 取 調 べ に 関す る若 干 の解 釈 上 ・運 用 上 お よ び立 法 上 の提 案 を行 う。. 2出. 頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 の 内 容. 出頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 は,法198条1項. を 次 の よ う に解 釈 す る。 す な わ ち,. ① 同項 本 文 は,捜 査 機 関 が 被 疑 者(逮 捕 ・勾 留 され て い る者 も,さ れ て い な い 者 も含 む)に. 出頭 を 求 めて これ を取 り調 べ る こ とが で き る 旨 を,規 定 した もの. で あ る。 ② 同 項 但 書 は,⑧ 逮 捕 ・勾 留 され て いな い被 疑 者 は 出頭 を拒 否 した り 退 去 した りす る こ とが で き る 旨 と,⑤ 逮 捕 ・勾 留 され て い る被 疑 者 は 出頭 を拒 否 した り退 去 し た りす る こ と は で き な い 旨 と を,規 定 した もの で あ る。 そ し て,こ の よ うな 法198条1項. の解 釈 は,立 法 者 の 意 図 す る と こ ろで もあ っ た とみ. られ る。 す な わ ち,現 行 法 制 定 過 程 の,国 会 司 法 委 員 会 にお け る提 案 理 由の 説 明 で は,「 次 は被 疑 者 の取 調 べ に つ い て で あ ります が,こ れ は198条 の 規 定 で あ ります 。 本 案 にお き ま して は,検 察 官,検 察 事 務 官 また は司 法 警 察 職 員 は,犯 罪 の 捜 査 を す る につ い て 必 要 が あ る と き は,被 疑 者 の 出 頭 を 求 め,こ れ を 取 調 べ る こ とが で き るの で あ りま す が,こ の 場 合 被 疑 者 は 逮 捕 また は勾 留 され て い る者 以 外 は,出 頭 を 拒 み,ま た は 出 頭 後 い つ で も退 去 す る こ とが で き る もの と 一85一.

(6) 逮 捕 ・勾留 中 の 被疑 者 取 調 べ の 在 り方. し … … 」 と述 べ ら れ て い る5)。 ま た,こ. の よ う な 同 条 項 の 解 釈 は,現. 後 通 説 化 し た6)。 そ の 代 表 的 な 見 解 は,立. 行法制定. 案 関 係 者 に よ る 逐 条 解 説 書 に,以. 下. の よ う に示 さ れ て い る。. 「 検 察 官,検 察 事 務 官 ま た は 司法 警 察 職 員(39皿)は,犯 者 の 出頭 を求 め る こ とが で き る(1項. 罪 の捜 査 を す るた め 被 疑. 本 文 前 段)。 取 調 の 目的 の た め で あ る と,そ の. 他 の 目的(例 え ば,身 体 の検 査,218)の. た め で あ る とを 問 わ な い。 た だ し,被 疑 者. は,逮 捕 ま た は 勾 留 され て い る ばあ いを 除 いて は,出 頭 を拒 み,ま た は 出 頭 後 い つ で も退 去 す る こ とが で き る(1項. 但 書)。 … … 。 な お,『逮 捕 又 は 勾留 され て い る場 合 』. の意 義 につ いて は疑 問 が あ る。 わ た く しは疑 問 を留 保 しな が ら,一 応 こ れ を次 の よ うに解 す る。 (1)当 該 被 疑 事 件 に つ き逮 捕(199,210,213)ま. た は勾 留(204-207,211,216). さ れ て い るば あ い に は,逮 捕 さ れ た 被 疑 者 を 留 置 して い る 捜 査 機 関 ま た は勾 留 され た被 疑 者 を 拘 置 して い る監 獄 な い し代 用 監 獄 の職 員 は,被 疑 者 の 出 頭 を要 求 した捜 査 機 関 に被 疑 者 を 出頭 さ せ る義 務 を 負 い(こ の 点 に関 して も種 々 の問 題 が あ る),こ の ば あ い に は被 疑 者 は 出頭 を拒 み,ま た は 出頭 後 退 去 す る こ とは で き な い。 け だ し, 被 疑 者 の 逮 捕 ・勾 留 は主 と して捜 査 の た め に被 疑 者 の身 体 を確 保 す る こ と を 目 的 と す る もの で あ るか ら,右 の よ うに 解 す る こ と は,当 然 に逮 捕 ・勾 留 の 趣 旨 の 中 に包 含 され て い る もの と解 す る こ と が で き,し か も,か よ う に解 しな いか ぎ り,本 項 但 書 に 『逮 捕 又 は 勾留 され て い る場 合 を 除 い て は』 と され て い る こ とが 無 意 味 に な る か らで あ る。 ち な み に,逮 捕 ま た は勾 留 され て い る被 疑 者 が 当該 捜 査 機 関 の もと に留 置 ま た は拘 置(代 用 監 獄 の ば あ い を 考 え よ)さ れ て い る ば あ い に は,出 頭 を 求 め る こ と は は じめ か ら問 題 に な らず,し た が つ て 但 書 の適 用 の 余 地 が な い(た だ,出 頭 した被 疑 者 に対 し逮 捕 ま た は勾 留 状 の執 行 を した と き は,但 書 の適 用 を生 じる)。」7). 5)第2回. 国 会 衆 議 院 司 法 委 員 会 議 録 第23号5頁. (1984年)63頁 6)し. 。 引 用 は 米 澤 慶 治 「被 疑 者 の取 調 べ 」 判 タ537号. に よ っ た。. か しそ の 後,1958年. 斐 閣,1958年)106頁),漸. に 平 野 龍 一 が 出 頭 ・滞 留 義 務 否 定 説 を 提 唱 す る と(同. 「刑 事 訴 訟 法』(有. 次 そ れ が 有 力 化 し,現 在 で は出 頭 。滞 留 義 務 否 定 説 が 学 説 の多 数 を 占め. て い る。 学 説 の流 れ に つ い て は,酒 巻 匡 「逮 捕 ・勾 留 中 の 被 疑 者 の取 調 べ 受 忍 義 務 」 『刑 事 訴 訟 法 の 争 点 〔新 版 〕』(有 斐 閣,1991年)56頁 7)団. 藤 重 光 『條 解 刑 事 訴 訟 法. 以下。. 上』(弘 文 堂,1950年)365∼366頁 一86一. 。 な お,同. 書 は,引 用 部 分 に 続.

(7) 法科大学院論集. 第7号. こ こで,出 頭 ・滞 留 義 務 を 肯 定 す る実 質 的 根 拠 と され て い るの は,「 被 疑 者 の逮 捕 ・勾留 は 主 と して捜 査 の た め に被 疑 者 の 身 体 を 確 保 す る こ とを 目的 とす る もの で あ る」 とい う,逮 捕 ・勾 留 の 制 度 趣 旨 に つ いて の理 解 で あ る。 「被 疑 者 の逮 捕 も勾留 もそ の取 調 を 目的 と して 認 め られ る もの で はな い と解 す べ きで は あ る が,逮 捕 ま た は 勾留 した か ら とい って 取 調 が 禁 止 され るわ けの もの で は な く,一 定 の場 所 で の取 調 とい うか た ち で拘 束 す る こ とは 逮 捕 ・勾 留 とい う処 分 の 内 容 と して 承 認 さ れ て い る と考 え るべ き で あ る」8)と か,「 逮 捕 ・勾 留 と い う処 分 の 中 に は,そ の効 力 と して 出頭 ・滞 留 義 務 が 当 然 含 ま れ て い る と解 さ れ る」9)と い った主 張 は,こ れ を敷 術 す る もの と位 置 づ け られ る。 こ こで は さ らに,な ぜ 「一 定 の 場 所 で の 取 調 とい う形 で 拘 束 す る こ と」 が許 され る のか, なぜ 「逮 捕 ・勾 留 とい う処 分 の 中 に … 出頭 ・滞 留 義 務 が 当 然 含 ま れ て い る」 と い え る の か が,問 題 で あ る。 この点 に つ い て は,次 の よ うな説 明 が な され て い る。 「逮 捕,勾 留 中 の 者 は,そ れ らの 処 分 を 受 け るだ けの 嫌 疑 の あ る者 で あ る。 そ の よ う な嫌 疑 の あ る者 は,彼 が犯 人 で あ ろ う とな か ろ う と真 相 解 明 の た め の 最 良 の情 報 を もっ て い る の が普 通 で あ る か ら,そ の者 に対 して 黙秘 権 や弁 護 人 と の接 見 交 通 権 等 を保 障 す る か ぎ り,嫌 疑 か ら生 じて い る疑 問 に 答 え るよ うに と の説 得 を受 け る義 務 を認 め て も不 合 理 と は い え な い と思 わ れ る」10)とい うの. い て,「 逮 捕 又 は 勾 留 され て い る 場 合 」 とは 当 該 被 疑 事 実 に つ い て 逮 捕 ・勾 留 さ れ て い る場 合 に 限 られ,他. の 被 疑 事 実 につ い て 逮 捕 ・勾 留 され て い る場 合 を 含 まな い と して い る。 これ に対 して,同. じ く立 法 関 与 者 に よ る逐 条 解 説 書 で あ る 宮 下 明 義 『新 刑 事 訴 訟 法 逐 条 解 説II』(司 法 警 察 研 究 会 公 安 発 行 所,1949年)は,「. 本項 〈198条1項:引. 留 され て い る 被 疑 者 は,出 が,被. 用 者 注 〉 に よ る出 頭 要 求 が あつ た場 合,逮. 捕 又 は勾. 頭 を 拒 み 又 は 出 頭 後 退 去 す る こ と は 許 さ れ な い。 逮 捕 又 は勾 留 の 処 分. 疑 者 の 逃 亡 を 防 止 しそ の 出 頭 を 確 保 す る趣 旨の 制 度 で あ る と こ ろか ら 当然 の こ とで あ る。 他. 事 件 に お い て 逮 捕 又 は 勾 留 され て い る者 は 勿 論,す 中 の 者 も本 項 に よ る出 頭 の 要 求 を 受 けた 場 合,出. で に他 事 件 に よ り刑 の 言 渡 を受 けそ の 刑 の執 行. 頭 を 拒 み 又 は 出 頭 後 退 去 す る こ と は許 され な い と. 解 す る 。」 と して い る(同 書53頁)。 8)平. 場 安 治 ほ か 『注 解 刑 事 訴 訟 法. 9)松. 尾 浩 也 監 修 『条 解. 中巻. 全 訂 新 版 』(青 林 書 院,1982年)51頁. 10)佐. 藤 文 哉 「コ メ ン ト 〈被 疑 者 の 取 調 べ 〉」 「刑 事 手 続. 刑 事 訴 訟 法 〔第4版. 〕』(弘 文 堂,2009年)378頁. 一87. 〔高 田 卓 爾 〕。. 。. 上 』(筑 摩 書 房,1988年)196頁. 。.

(8) 逮 捕 ・勾留 中 の 被 疑 者取 調 べ の 在 り方. で あ る11)。 ま た,出 頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 は,形 式 的 根 拠 と して,法198条1項. 但書 の文. 理 を あ げ て い る。 同但 書 を反 対解 釈 して 出頭 ・滞留 義 務 を肯 定 す る の で な け れ ば,同 但書 が無 意 味 な もの とな って しま う とい うの で あ る。 そ れ で は,こ の よ うな 出頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 は,妥 当 で あ ろ うか 。 次 項 で は, ① 出 頭 ・滞 留 義 務 を課 した 取 調 べ の 実 態 が どの よ うな もの(と な り得 る)か, ② 出 頭 ・滞 留 義 務 の肯 定 を 前 提 に近 時 整 備 さ れ て き た 適 正 化 に関 す る諸 制 度 は,ど の よ うな効 果 を もた らす か,③ そ の よ うな被 疑 者 取 調 べ の法 的性 質 を ど うみ る べ き か,と い った観 点 か ら,出 頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 を 批 判 的 に検 討 す る。. 3出. 頭 ・滞留義務肯定説の批判的検討. (1)出 頭 ・滞 留 義 務 を課 した被 疑 者 取 調 べ の 実 態 た しか に,逮 捕 ・勾 留 され た被 疑 者 は,一 定 の被 疑 事 実 につ い て の嫌 疑 が あ る(現 行 犯 逮 捕 を除 いて 裁 判 官 に よ って 嫌 疑 あ りと認 め られ た)者 で あ り,事 件 に関 して 最 良 の情 報 を持 って い る のが 普 通 だ と は いえ る。 しか し,こ の こ と は,そ の者 に 出頭 ・滞 留 義 務 を課 す 十 分 な 理 由 と いえ るだ ろ うか 。 こ こで まず 問 題 とす べ き は,出 頭 ・滞 留 義 務 を 課 した 取 調 べ が どの よ うな もの にな(り 得) るの か と い う こ とで あ る。 この 点 につ いて,最 良 情 報 所 持 を 援 用 す る先 の 論 者 は,「否 認 し続 け て い る被 疑 者 に対 す る取 調 べ は,取 調 官 の 呈 示 す る問 に任 意 に 答 え て くれ る よ う に説 得 す る過 程 に ほか な らな い」 と し,出 頭 ・滞 留 義 務 の 内 容 を 「嫌 疑 か ら生 じて い る疑 問 に答 え る よ う に との 説 得 を 受 け る義 務 」 と解 し て い る12)。また,出 頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 の 中 に は,被 疑 者 が 「取 調 べ を 拒 ん だ 11)こ. の よ うな 根 拠 づ け が妥 当 し う るの は,当 該 被 疑 事 実 で 逮 捕 ・勾 留 され て い る場 合 の み で あ り,. 他 の 被 疑事 実 で逮 捕 ・勾留 さ れ て い る 場 合 に は 及 ば な い。 こ の 点 は 余罪 取 調 べ に 関 係 す る が,本 稿 で は こ れ以 上 立 ち 入 らな い。 12)佐. 藤 ・前 掲 注10)196頁. 。. ::.

(9) 法科大学院論集. 第7号. 場 合,捜 査 機 関 の側 で翻 意 さ せ る た あ の説 得 一 被 疑 事 実 を裏 づ け る 資料 の存 在 を指 摘 して弁 解 を促 す な ど一 を試 み る と して も,そ れ が長 時 間 に わ た る こ とは 許 さ れ な い。 被 疑 者 の拒 否 の意 思 が確 認 さ れ て しま え ぱ,そ れ以 上 取 調 べ の場 に滞 留 させ る合 理 的 な 理 由 は な くな るか らで あ る。」13)と す る見 解 もあ る。 出 頭 ・滞 留 義 務 肯 定 説 の 中 に は,出 頭 ・滞 留 義 務 を課 した取 調 べ の法 的性 質 にっ い て,強 制 処 分 とす る説14)と,任. 意 処 分 とす る説15)と が あ るが,任 意 処 分 説. は,こ の よ う な取 調 べ の実 態 を想 定 して い る と考 え られ る。 しか し,出 頭 ・滞 留 義 務 を課 した取 調 べ の実 態 は,こ の よ う な もの に留 ま らな い。 現 に,出 頭 ・ 滞 留 義 務 肯 定 説 の 中 に は,① 出頭 ・滞 留 義 務 を課 した取 調 べ だか らと い って 当 該 取 調 べ が 法 の 許 容 しな い強 制 捜 査 にな る と い う の は 疑 問 で あ る,と. しつ っ. も,② 出頭 ・滞 留 義 務 が あ る ので,捜 査 官 は 出頭 ・滞 留 を 確 保 す る た め に被 疑 者 に対 して 必 要 な 有 形 力 を 行 使 す る こ とが で き,③ 被 疑 者 が 黙 秘 して い る場 合 で あ って も,取 調 べ に応 じ真 実 を 語 る よ う被 疑 者 に説 得 す る こ とが,滞 留 義 務 が あ る こ とで 被 疑者 に供 述 を 強 要 す る こ と にな る はず もな く,当 然 許 され る捜 査 手 法 だ と い い,さ ら に,④ 取 調 べ に応 じる よ う説 得 す るの み な らず,詰 問 的 な 尋 問 も含 め た 方 法 で の 被 疑 者 の 取 調 べ も許 さ れ る は ず だ,と 主 張 す る も の16)も あ る。 実 務 にお い て は,否 認 な い し黙 秘 す る被 疑 者 に対 して,取 調 官 が納 得 す る よ. 13)松. 尾 浩 也r刑. 事 訴 訟 法(上)新. 版 』(弘 文 堂,1999年)67頁. 。 な お,論. 者 に は 出頭 拒 否 及 び退 去 の 自 由 は な い と しつ つ,取 調 べ に応 ず る義 務(取. 者 は,身 柄 拘 束 中 の 被 疑 調 受 忍 義 務)は. 認 め られ. な い と して,本 文 で 引用 した主 張 を して い る。 14)中 谷 雄 二 郎 「別 件 逮 捕 ・勾 留 一 裁 判 の 立 場 か ら」 『刑 事 手 続 だ し,同. 「別 件 逮 捕 。勾 留 一 裁 判 の 立 場 か ら」 『新. 制 処 分 か 任 意 処 分 か を明 言 しな い),植 書 院,1998年)65頁 15)伊. 々 社,2002年)320頁. は,強. 村 立 郎 「任 意 取 調 べ の 限 界 」 「新 実 例 刑 事 訴 訟 法1』(青. 林. 。. 藤 栄 樹 ほか 編 『新 版 注 釈 刑 事 訴 訟 法. 場 ほか ・前 掲 注8)52頁 16)藤. 上 』(筑 摩 書 房,1988年)204頁(た. 刑 事 手 続1』(悠. 〔第3巻. 〕』(立 花 書 房,1996年)85頁. 〔 高 田〕,松 尾 監 修 ・前 掲 注9)378頁. 永 幸 治 ほ か 編 『大 コ ンメ ン ター ル 刑 事 訴 訟 法. 村 博 〕。 一89一. 第3巻. 〔 東 條 伸 一 郎 〕,平. な ど。 』(青 林 書 院,1996年)162∼163頁. 〔 河.

(10) 逮 捕 ・勾留 中の被疑者取調 べの在 り方. うな 供 述 を す るま で,逮 捕 ・勾 留 の 期 間 を 通 じて,食 事 等 の 時 間 を 除 いて 朝 か ら晩 ま で 取 調 室 に 出 頭 ・滞 留 させ,理 詰 め や 詰 問 等 の 手 段 に よ り,黙 秘 権 を 放 棄 して 供述 す るよ う迫 る こ とが,行 わ れ て い る。 そ して,裁 判 所 も,相 当 広 範 に,任 意 性 を肯 定 す る とい う形 で,こ の よ うな 取 調 べ を 追 認 して い る。 近 時 の 実 例 と して,た. 「ア. とえ ば以 下 の よ うな もの が あ る。. 被 告 人 は,平 成19年7月25日. 午 後11時5分. に本 件 殺 人 の 被 疑 事 実 で 逮 捕 さ. れ,同 月29日 に 初 め て 本 件 殺 人 を 認 め る内 容 の供 述 を す る まで の 間,毎. 日相 当 時 間. の取 調 べ を 受 けて,取 調 べ終 了 が 午 後11時 を過 ぎ る 日 もあ った 。 しか し,そ の 間 は 食 事 時 間 等 の 十 分 な 休 憩 時 間 が と られ て お り,連 続 で取 調 べ が 行 わ れ た の はせ い ぜ い4時 間程 度 で あ った。 イ. 同 月29日 は,本 件 殺 人 の 事 実 を 認 め る 内容 のA察 官 調 書(原 審 検 乙2号)が. 作 成 され た 。 この 取 調 べ は,午 後6時40分 く行 わ れ た(以 下,こ ウ. か ら翌30日 午 前 零 時20分 ま で,6時. 同 月30日 は,午 前 中 の 取 調 べ はな く,午 後 か ら取 調 べ が 行 わ れ,こ の取 調 べ. で本 件 殺 人 未 遂 の事 実 を認 め る警 察 官 調 書(同3号)が 工. 間近. の取 調 べ を 『29日の取 調 べ』 と い う。)。. 作 成 さ れ た。. 以 上 の取 調 べ 状 況 を み る と,被 告 人 が 高 齢 で,持 病 が あ り,体 調 が 優 れ な. か っ た こ と を十 分 考 慮 して も,被 告 人 が 自白 に至 るま で の取 調 べ が 時 間 的 に み て, 任 意 性 を損 なわ せ る よ う な過 酷 な もの で あ っ た と は い え な い。 2以. 上 の と お り,被 告 人 が 自 白 に至 る ま で の 取 調 べ が 時 間 的 に み て 特 に過 酷 な も. の で あ った とは い え な い し,被 告 人 が 自白 した の は,Aか て,も. らお悔 や み 文 書 を示 さ れ. はや 言 い逃 れ が で きな い と観 念 した こ と に よ る と認 め られ,そ の 間Aが 取 調. べ で 怒 鳴 った り,机 を 叩 いた り した可 能 性 は 否 定 で き な い もの の,こ の 点 が 直 ち に 任 意 性 に影 響 を 与 え る もの と は い え な い 。 原 審 が 自 白調 書 の任 意 性 を 認 め た 点 は是 認 で き る。」17). 「取 調 時 間 につ いて み る と,殺 意 につ いて 供 述 した被 告 人 の検 察 官 調 書 が 作 成 され た 平 成19年1月13日. の 検 察 官 に よ る取 調 べ は,午 前9時37分. か ら午 後5時35分. ま で,. 昼 こ ろ に1時 間 程 度 の 休 憩 を 挟 ん で行 わ れ て お り,格 別 長 時 間 で あ った と は いえ な. 17)福. 岡 高 判 平 成21年12月10日LLI/DB判. 例秘書登載。. 一90一.

(11) 法科大学 院論 集. 第7号. いo ま た,逮 捕 後 連 日の 取 調 べ が 行 わ れ た 点 につ い て は,被 告 人 の公 判 供 述 に よ れ ば, 午 前9時. か10時 く ら いか ら午 後9時. か10時 く ら い まで 連 日取 調 べ が 行 わ れ て い た と. の こ とで あ るが,仮 に この 供述 を 前提 と して も,取 調 べ が 深 夜 に及 ぶ こ と は な く,食 事 と睡 眠 の 時 間 は 確 保 され て い た の で あ り,取 調 時 間 そ の もの が 任 意 性 に影 響 を及 ぼ す 程 度 に長 時 間 にわ た って い た と は認 め ら れ な い。」18). この よ う に,出 頭 ・滞 留 義 務 を課 した取 調 べ は,と. りわ け黙 秘 す る被 疑 者 に. 対 す る そ れ は,「 取 調 官 が 納 得 す るよ う な供 述 を す る ま で,逮 捕 ・勾 留 の 期 間 を 通 じて,食 事 等 の 時 間 を 除 いて 朝 か ら晩 まで 取 調 室 に 出頭 ・滞 留 させ,理 詰 め や 詰 問 等 の 手 段 に よ り,黙 秘 権 を 放 棄 して 供 述 す る よ う迫 り続 け る」 とい う もの にな り得 る。 出 頭 ・滞 留 義 務 を 肯 定 しつ つ,こ れ を 理 論 的 に防 止 す る こ と は,不. 可 能 と 考 え ら れ る19)。. この 点 に関 して,近 時,取 調 べ の 適 正 確 保 を 目的 とす る制 度 や,適 正 確 保 に 資 す る 制 度 が,拡. 充 さ れ つ つ あ る20)。 こ れ ら に よ っ て,出. 18)名 古 屋 地 岡 崎 支 判平 成21年4月6日LLI/DB判 19)出 頭 ・滞 留 義 務 を肯 定 しつ つ,取. 例秘書登載。. 調受 忍義 務 を 否 定 す る 説 が あ る(松. 修 『被 疑 者 取 調 べ の 法 的 規 制』(三 省 堂,1992年)210頁 (成 文 堂,2008年)144頁)。. こ れ らは,取. 頭 ・滞 留 義 務 を 課 し. 以 下,寺. 尾 ・前 掲 注13)67頁,渡. 辺. 崎 嘉 博 『刑 事 訴 訟 法[第2版]』. 調 受 忍 義 務 が な い こ とを 根 拠 に,本. 否 定 す る もの と考 え ら れ る。 しか し,取 調受 忍 義 務 を 否 定 す る以 上,取. 文 の よ う な取 調 べ を. 調 場 所 へ の 出 頭 ・滞 留 義 務. を肯 定 す る こ と は で きな い で あ ろ う。 は じめ か ら取 調 べ に 応 じな い 旨 を 確 定 的 に 明 言 して い る 者 に,取 調 場 所 へ の 出頭 を義 務 づ け る こ と は,背 理 と 考 え られ る し,取 調 べ を 拒 否 す る 被 疑 者 に つ い て,取 調 場 所 に いつ で も出頭 しい つ ま で もそ こ に滞 留 しな け れ ば な らな い と す れ ば,そ 忍 義 務 を 課 して い る と い わ ざ るを 得 な い(三 頁 な ど)。 また,渡. 辺 ・前 掲 書 は,出. は な い と した うえ で,取. 頭 ・滞 留 義 務 を肯 定 しつ つ,取. 調 べ そ の もの を 受 忍 す る義 務. 調 べ へ の弁 護 人 立 会 請 求 権 を肯 定 し,被 疑 者 に よ る接 見請 求 に取 調 べ 中 断. 効 が あ る とす る。 こ こで,被 で き るが,取. れ は 取 調受. 井 誠 『刑 事 手 続 法(1)〔 新 版 〕』(有 斐 閣,1997年)133. 疑 者 が接 見請 求 を した場 合 に 「被 疑 者 を取 調 室 に拘 束 して お くこ と は. 調 べ を す る こ と は で き な い」 ので あれ ば,そ. の よ う な 「取 調 べ」 と切 り離 さ れ た取 調. 室 へ の 「出頭 ・滞 留 義 務 」 を 観 念 す る こ とは 疑 問 で あ り,「 取 調 べ が 許 さ れ な い 状 態 に なれ ば,出 頭 ・滞 留 義 務 の根 拠 が 失 わ れ 退 去 を許 さ な けれ ばな ら な い」 ので あれ ば,こ. れ は実 質 的 に 出頭 ・滞. 留 義 務 を 否 定 す る もの と解 され る。 20)こ. れ に 関す る新 しい 文献 と して,佐 藤 隆 之 「被 疑 者 取 調 べ の適 正 化 」 ジ ュ リ1370号(2009年)102. 頁 以 下 が あ る。 一91一.

(12) 逮 捕 ・勾 留 中 の 被 疑 者 取 調 べ の 在 り方. た 取 調 べ が 「取 調 官 の 呈 示 す る問 に任 意 に 答 え て くれ る よ う に説 得 す る過 程」 を 逸 脱 しな い こ とを,確 保 で き るだ ろ うか 。 次 に この 点 を 検 討 す る。. (2)取 調 べ の 適 正 化 に関 す る 近 時 の 改 革 とそ の 効 果 ア. 被疑者国選弁護制度. 被 疑 者 が 自己 の 権 利 を 認 識 ・理 解 し,行 使 す る うえ で,弁 護 人 に よ る援 助 が 重 要 で あ る。 ま た,弁 護 人 が つ い て い る こ とで,取 調 べ の 逸 脱 が あ る程 度 監 視 され,是 正 され 得 る。 この 点 に関 して は,2006年10月2日. か ら,法 定 合 議 事 件. (死 刑 又 は 無 期 若 し くは短 期1年 以 上 の 懲 役 若 し くは 禁 鋼 に 当 た る事 件(一 定 の 例 外 を 除 く))で 勾 留 請 求 され た 被 疑 者 が,国 選 弁 護 人 の 選 任 を 請 求 で き る こ と に な った(法37条. の2)。. そ して,2009年5月21日. か らは,そ の 対 象 が必 要. 的 弁 護事 件(死 刑 又 は 無 期 若 し くは 長 期3年 を 超 え る懲 役 若 し くは 禁 鋼 に当 た る事 件)に ま で拡 大 され て い る。. イ. 警 察 に お け る取 調 べ に 関 す る制 度. (ア)被 疑 者 取 調 べ監 督 制 度 2008年4月. に 「被 疑 者 取 調 べ 適 正 化 の た め の監 督 に関 す る規 則 」(平 成20年. 国家 公 安 委 員 会 規 則4号)21)が. 公 布 され,2009年4月1日. か ら施 行 され た。 そ. こ で は,監 督 対 象 行 為 と して,⑦ や む を得 な い場 合 を 除 き,身 体 に接 触 す る こ と,◎ 直 接 又 は聞 接 に 有 形 力 を行 使 す る こ と(④ に掲 げ る もの を 除 く),..殊 更 に不 安 を覚 え させ,又. は 困惑 させ る よ うな言 動 をす る こ と,㊥ 一 定 の姿 勢 又. は動 作 を と る よ う不 当 に要 求 す る こ と,㊥ 便 宜 を供 与 し,又 は供 与 す る こ とを 申 し出,若. し くは約 束 す る こ と,㊦ 人 の尊 厳 を著 し く害 す る よ うな言 動 をす る. こ と,が 列 挙 され(3条1項2号),さ 21)当. 局 者 に よ る 解 説 と して,阿. ら に,午 後10時 か ら翌 日午 前5時. まで. 久 津 正 好 「『被 疑 者 取 調 べ の適 正 化 の た め の監 督 に 関 す る規 則 』 及. び 『犯 罪 捜 査 規 範 の 一 部 を 改 正 す る規 則 』 の 制 定 につ い て 」 警 論61巻6号(2008年)66頁. 一92一. が あ る。.

(13) 法科大学院論集. の 間 に,ま た は,1日. 第7号. につ き8時 間 を 超 え て 被 疑 者 取 調 べ を 行 う と き に,警 察. 本 部 長 等 又 は 警 察 署 長 の 事 前 の 承 認 を 受 けな い こ とを,監 督 対 象 行 為 とみ な す と され た(同 条2項)。. ま た,取 調 べ 監 督 官 が 視 認 ・事 件 指 揮 簿 及 び取 調 べ 状. 況 報 告 書 の 閲 覧 そ の 他 の 方 法 に よ っ て被 疑 者 取 調 べ の状 況 の 確 認 を 行 う こ と や,現. に監 督 対 象 行 為 が 認 め られ た 場 合 の 措 置(6条),取. の 扱 い(7条),監. 調 べ に 関 す る苦 情. 督 対 象 行 為 が 行 わ れ た と疑 う に足 りる相 当 な 理 由が あ る場 合. の 取 調 べ 調 査 官 に よ る調 査(10条)な. ど につ いて も,規 定 され た 。. α)取 調 べ 時 間 管 理 の 厳 格 化 上 記 規 則 にお い て み な し監 督 対 象 行 為 が 規 定 され た ほか,2008年4月 され た 犯 罪 捜 査 規 範168条3項. に施 行. で,「 取 調 べ は,や む を 得 な い理 由が あ る場 合 の. ほか,深 夜 に又 は長 時 間 に わ た り行 う こ とを避 け な け れ ば な らな い」 こ とが, 規 定 され た 。 (ウ)取 調 べ 室 の 構 造 及 び 設 備 2009年4月. に施 行 され た 犯 罪 捜 査 規 範182条 の3で,取. 調 べ 室 は,透 視 鏡 を 備. え 付 け るな ど取 調 べ 状 況 の 把 握 の た め の 構 造 及 び設 備 を 有 す る こ と等 の 基 準 に 適 合 す る もの と しな けれ ば な らな い 旨が,規 定 され た 。 (エ)弁 護 人 等 との 接 見 に対 す る配 慮 2008年9月1日. か ら,改 正 され た 犯 罪捜 査 規 範130条3項. に も とつ い て,被 疑. 者 に対 して 弁 護 人 選 任 権 の 教 示 が 行 わ れ る こ と とな った が,こ れ と併 せ て,警 察 庁 の 各 都 道 府 県 警 察 宛 の 通 達 「取 調 べ の 適 正 を 確 保 す るた め の 逮 捕 ・勾 留 中 の 被 疑 者 と弁 護 人 等 との 間 の 接 見 に対 す る一 層 の 配 慮 につ いて 」に も とつ い て, ① 弁 解 録 取 の 際 に,取 調 べ 中 にお い て 弁 護 人 等 と接 見 した い 旨の 申 出が あ れ ば 直 ち にそ の 申 出 が あ った 旨を 弁 護 人 等 に連 絡 す る 旨を,被 疑 者 に告 知 す る,② 取 調 べ 中 に被 疑 者 か ら弁 護 人 等 と接 見 した い 旨の 申 出 が あ った 場 合 に は これ を 直 ち に弁 護 人 等 に連 絡 す る,③ 取 調 べ 中 に弁 護 人 等 か ら接 見 の 申 出 が あ った 場 合 には,で. き る限 り早 期 に接 見 の 機 会 を 与 え る よ う に し,遅 くと も直 近 の 食 事 一93一.

(14) 逮 捕 ・勾 留 中 の 被 疑 者 取 調 べ の 在 り方. 又 は休 憩 の 際 に接 見 の 機 会 を 与 え る よ う配 慮 す る,④ 被 疑 者 や 弁 護 人 等 か ら接 見 に関 す る 申 出 が あ っ た場 合 に は,そ の 申 出及 び これ に対 して と った 措 置 を, 当 該 申 出 を 受 け た 捜 査 員 が 書 面 に記 録 す る,と. い った 内容 が実施 され て い. る22)。 (オ)取 調 べ状 況報 告 書 2004年4月. 以 降,犯 罪 捜 査 規 範182条 の2に. よ り,逮 捕 ・勾 留 中 の被 疑 者 ・. 被 告 人 の取 調 べ に 際 して取 調 べ状 況報 告 書 が 作 成 され る こ と にな った が,2008 年9月. か らそ の対 象 が拡 大 され,身 柄 不拘 束 被 疑者 を取 り調 べ る場 合(微 罪 処. 分 で取 り調 べ る場 合 を 除 く)に も作成 され る こ と とな った。 な お,取 調 べ 状 況 報 告 書 の記 載 事 項 は,① 逮 捕 ・勾留 の 有無 及 び罪 名,② 取 調 べ 時 聞,③ 休 憩 時 間,④ 取 調 べ 場 所,⑤ 取 調 べ担 当者 氏 名,⑥ 供 述 調 書 作 成 の 有無 及 び通 数,⑦ そ の他 参 考 事 項 の有 無 及 び 内容,等. で あ る。. (カ)取 調 べ の録 音 ・録 画 2008年9月. か ら,東 京 ・埼 玉 ・千 葉 ・神 奈 川 ・大 阪 の5都 道 府 県警 察 に お い. て,裁 判 員 裁 判 対 象 事 件(自. 白事 件 に 限 る)の 取 調 べ の一 部(自. 白調 書 の読 み. 聞 け ・署 名 押 印場 面 を基 本 と した,自 白 内容 に 間違 い が な い こ とを確 認 して い る状 況)の 録 音 ・録 画 が 開 始 され た23)。そ して,2009年4月. 22)児. 玉 晃 一. 「ト ピ ッ ク. 接 見 指 定(刑. 訴 法39条3項)の. か らは,そ の範 囲. 実 質 死 文 化 へ!」LIBRAVol.8No.12. (2008年)36頁(東. 京 弁 護 士 会 ウ ェ ブ サ イ トhttp://www。toben.or.jp/news/libra/pdf/2008. 37。pdf),警. 「足 利 事 件 に お け る 警 察 捜 査 の 問 題 点 等 に つ い て(概. 察 庁. _12/p36-. 要)」(2010年4月)18頁(警. 察 庁 ウ ェ ブ サ イ トhttp://www.npa.go.jp/sousa/kikaku/houkokushogaiyou.pdf),島 る 平 成20年5月20日. 付 県 警 本 部 長 通 達(島. 捜 一 甲 第555号)「. 根 県 に お け. 取 調 べ の 適 正 を 確 保 す るた めの 逮 捕 ・. 勾 留 中 の 被 疑 者 と 弁 護 人 等 と の 接 見 に 関 す る 一 層 の 配 慮 に つ い て 」(島. 根 県 ウ ェ ブ サ イ ト. http://www.pref.shimane.lg.jp/police/shiritai/kunrei/keiji/keiji.data/keiji. _kikaku_11.pdf)0. 23)こ. の 試 行 に 関 す る と り ま と め と し て,2009年3月. 試 行 の 検 証 に つ い て 」(警. に警 察 庁. 「警 察 に お け る 取 調 べ の 録 音 ・録 画 の. 察 庁 ウ ェ ブ サ イ トhttp://www.npa.go.jp/keiji/keiki/rokuon/kensho.. pdf)が 公 表 さ れ た 。 そ こ で は,録 音 ・録 画 が 取 調 べ の 適 正 確 保 に も 資 す る と 考 え ら れ る と さ れ る 一 方 ,録 音 ・録 画 が 取 調 べ の 真 相 解 明 機 能 に 影 響 を 及 ぼ す こ と が あ る こ と が 明 ら か と な っ て き た と こ ろ で あ る か ら,取. 調 べ の 機 能 を 損 な わ な い よ う に,録. だ と も され て い る。. 一94一. 音 ・録 画 の 方 法 に つ い て 十 分 に 配 慮 す べ き.

(15) 法科大学院論集. 第7号. が 全 都 道 府 県 警 察 に拡 大 さ れ て い る。 oう 非旨導 ・教 養 等 富 山事 件 ・志 布 志 事 件 ・足 利 事 件 を受 け て,各 種 の通 達 が 出 さ れ た り,検 証 報 告 書 が 公 表 され た り して い る24)。ま た,2010年2月. に は,警 察 庁 に 「捜 査 手. 法,取 調 べ の高 度 化 を 図 る た め の研 究 会 」 が組 織 さ れ て い る。. ウ. 検 察 に お け る取 調 べ に 関す る制 度. (ア)弁 護 人 等 と の接 見 に対 す る配 慮 検 察 に お い て も,2008年9月1日. か ら,最 高 検 察 庁 の通 達 「取 調 べ の適 正 を. 確 保 す る た め の逮 捕 ・勾 留 中 の被 疑 者 と弁 護 人 等 との 間 の接 見 に 対 す る一 層 の 配 慮 に つ いて(依 命 通 達)」 に も とつ いて,警 察 に お け る の とほ ぼ 同 内容 の も の が実 施 さ れ て い る25)。 α)取 調 べ 状 況 報 告 書 「取 調 状 況 の 記 録 等 に関 す る訓 令 」(平 成15年11月5日. 付 法 務 大 臣訓 令)に. も. とつ い て,取 調 べ 状 況 報 告 書 も作 成 さ れ て い る。 24)警. 察 庁 「富 山事 件 及 び志 布 志 事 件 に お け る警 察 捜 査 の 問題 点 等 につ い て」(2008年1月)(警. ウ ェ ブサ イ トhttp://www.npa.go.jp/keiji/keiki/torishirabe/toyama_mondai.pdf),警. 察庁 察 庁 ・前. 掲 注22)。 25)児. 玉 ・前 掲 注22)36頁. 。. 「(1)弁 解 録 取 の際 に,被 疑 者 に対 し弁 護 人 選 任 権 を告 知 す る と と もに,取 調 べ 中 の被 疑 者 か ら弁 護 人 と接 見 した い 旨 の 申 出 が あれ ば,直. ち に弁 護 人 に連 絡 す る 旨 を告 知 す る。 ま た,被 疑 者 に. 対 し,弁 護 士 会 等 を 通 じて の弁 護 人 選 任 を 申 し出 る こ と を教 示 し,申 出 が あ れ ば直 ち に そ の措 置 を と る。 (2)検. 察 官 取 調 べ 中 に被 疑 者 か ら弁 護 人 と接 見 した い 旨 の 申 出が あれ ば,直. ち に弁 護 人 に そ の 旨. 連 絡 す る。 (3)検 ①. 察 官 取 調 べ 中又 は検 察 庁 に押 送 され た被 疑 者 に弁 護 人 か ら接 見 の 申 出 が あ った場 合, 現 に取 調 べ 中で な い場 合 に は,直 ち に接 見 の機 会 を与 え,接 見 施 設 が な い 場 合 には 職 員(検. 察 官 で は な い)立 会 い の も と で の面 会 接 見 の機 会 を与 え る よ う配 慮 す る。 ②. 現 に取 調 べ 中 の場 合 に は,で. き る 限 り早 期 に,遅. くと も直 近 の 食事 又 は休 憩 の際 に は,接. 見 の機 会 を与 え る よ う配 慮 す る。 (4)こ. れ らの 接 見 の 申 出 が あ っ た場 合 に は,申. これ を 事 件 記 録 に編 て つ す る。」. 一95一. 出 及 び こ れ に対 して と った 措 置 を書 面 に 記 録 し,.

(16) 逮 捕 ・勾留 中の被疑者取調 べの在 り方. (ウ)取 調 べ の 録 音 ・録 画 取 調 べ の一 部 の録 音 ・録 画 もな され て い る。 す な わ ち,2008年4月 判 員 裁 判 対 象 事 件 につ い て,原 則 と して,自. か ら,裁. 白調 書 の読 み 聞 け場 面 を 中 心 に,. 取 調 べ の一 部 の録 音 ・録 画 を行 う こ と と され た。 そ して,2009年2月,最. 高検. 察庁 は 「取 調 べ の録 音 ・録 画 の試 行 に つ い て の検 証 結 果」26)を 公 表 した。 そ こ で は,録 音 ・録 画 が 自 白 の任 意 性 等 の効 果 的 ・効 率 的 立 証 に有 用 だ とす る一 方, 録 音 ・録 画 が取 調 べ の真 相 解 明機 能 に影 響 を及 ぼす 場 合 が あ る こ とが 明確 とな り,録 音 ・録 画 の実 施 方 法 に つ い て は真 相 解 明 の観 点 か ら十 分 な慎 重 さ を要 す る こ と を再 認 識 した と して,裁 判 員 裁 判 対 象 事 件 に関 し,検 察 官 の判 断 と責 任 に お い て,取 調 べ の機 能 を損 な わ な い範 囲 内 で,検 察 官 に よ る被 疑 者 取 調 べ の う ち相 当 と認 め られ る部 分 の録 音 ・録 画 を行 う こ と とす べ き で あ り,そ の具 体 的 方 法 等 につ いて は基 本 的 に本 格 試 行(自. 白調 書 を証 拠 請 求 す る こ とが 見 込 ま. れ る事 件 で,録 音 ・録 画 に よ り取 調 べ の真 相 解 明 機 能 が 害 され た り関 係 者 の保 護 や 協 力 確 保 に支 障 を 生 じた りす る お それ 等 が な く,被 疑 者 が 拒 否 しな い場 合 に,自 白後 に行 う任 意 性 の立 証 を 目的 とす る取 調 べ の場 面 を 録 音 ・録 画 す る) と同 様 とす るの が 相 当 だ が,裁 判 員 に と って 分 か りや す く効 果 的 ・効 率 的 な 立 証 とな って い るか を 検 証 しつ つ,必 要 な 改 良 を 加 え て い くもの とす る,と い る。 そ の 後27),2010年12月27日,最 26)検. 高 検 察 庁 は 「い わ ゆ る厚 労 省 元 局 長 無 罪. 察 庁 ウ ェブ サ イ トhttp://www.kensatsu,go.jp/saiban. 27)2010年6月18日,法. 務 省 が,取. して. _in/img/rokuon.pdf。. 調 べ の 可 視 化 に関 す る省 内 勉 強 会 の 中 間 取 りま と め と して,「 取. 調 べ の 可 視 化 に 関 す る 今 後 の 検 討 方 針 につ い て 」(法 務 省 ウ ェブ サ イ トhttp://www.moj.go.jp/ content/000049066.pdf)と. 「被 疑 者 取 調 べ の 録 音 ・録 画 の在 り方 につ い て」(法 務 省 ウ ェ ブ サ イ ト. http://www.mol.go.jp/content/000049080.pdf)を. 公 表 した。 そ こ で は,① 全 事 件 の可 視 化 は現 実. 的 で は な い と い わ ざ る を得 な い の で,可 視 化 の 目 的 に照 ら して実 施 の必 要 性 が 高 く,ま た,早 期 か つ 円滑 に実 現 可 能 な具 体 的 事 件 や取 調 べ の範 囲 につ い て検 討 す る,② 録 音 ・録 画 が捜 査 ・公 判 の機 能 や被 害 者 を始 め とす る事 件 関 係 者 に与 え る影 響 につ いて も更 に検 討 しなが ら,録 音 ・録 画 の具 体 的 な在 り方 につ い て検 討 を進 め る。 そ の過 程 で は,取 調 べ の可 視 化 に よ り実 現 しよ う とす る 目的 と 取 調 べ を 通 じ た真 相 の 解 明 等 刑 事 司 法 制 度 の適 正 な 機 能 の確 保 との バ ラ ンス を 欠 くこ とが な い よ う,録 音 ・録 画 の 対 象 とす る取 調 べ の 範 囲 につ いて も検 討 を加 え る。 また,今 程 に お いて,上. 記 の よ うな 可 視 化 の 影 響 につ いて も吟 味 しつ つ,必 一96一. 後 の調 査 ・検 討 の 過. 要 に応 じて,新. たな 捜 査 手 法 の.

(17) 法 科大学 院論 集. 第7号. 事 件 に お け る捜 査 。公 判 活 動 の 問題 点 等 に つ い て(公 表 版)」28)を示 した。 そ こ で は,「 再 発 防 止 の た め の方 策」 と して12項 目が掲 げ ら れ て い るが,そ. のひ と. つ と して 「特 捜 部 が 担 当す る身 柄 事 件 に お い て は,自 白 の任 意 性 。信 用 性 等 に 関 わ る取 調 べ 状 況 につ いて,裁 判 所 の公 正 な判 断 に資 す る立 証 方 策 の在 り方 を 検 討 す る必 要 が あ る」 こ とか ら,「 平 成23年2月. 頃 ま で に試 行 方 針 を 策 定 した. 上,そ の 後 速 や か に取 調 べ の録 音 ・録 画 の試 行 を開 始 す る。」 と され て い る29)。. 工. 各制度の効果. これ らの 制 度 に よ って,出 頭 ・滞 留 義 務 を 課 した 取 調 べ が 「取 調 官 の呈 示 す る問 に任 意 に答 え て くれ る よ う に説 得 す る過 程 」に留 ま る こ とに な る だ ろ うか。 結論 を 先 に 言 え ば,否. とい わ ざ るを 得 な い 。. ま ず,警 察 に お け る取 調 べ の監 督 制 度 に つ い て は,監 督 対 象 行 為 の 中 に明 ら か に違 法 な もの(便 宜 供 与,一 の あ る もの(有 形 力 の 行 使)ま. 定 の 姿 勢 の 強 要 等)か. ら不 当 とい え な い 可 能 性. で 含 ま れ て い る点 や,監 督 対 象 行 為 の 定 義 に. 「や む を 得 な い 」 「殊 更 に」 「不 当 に」 「著 し く」 とい った 規 範 的 要 素 が 含 ま れ て お り不 明確 さ が残 る点 な どの,問 題 が あ る。 ま た,取 調 べ 時 間 管理 の 厳格 化 に つ い て も,午 前5時 か ら午 後10時 ま で の 間 で1日8時 ず,午 後10時 以 降 午 前5時. ま で の 聞 や1日8時. 導 入 な どに つ い て も検 討 す る。 また,知 て,自. 間以 内 な ら何 ら制 約 され. 間超 で あ って も警 察 署 長 等 の事. 的 能 力 等 に起 因 す る一 定 の 事 情 が 認 め られ る被 疑 者 につ い. 白 の 信 用 性 を 検 討 す る手 段 と して の 録 音 ・録 画 の 在 り方 につ い て も,今 後,調. ③ 平 成23年6月 を 行 う,と. され て い る。. 28)検. 察 庁 ウ ェブ サ イ トhttp://www.kensatsu.go.jp/oshirase/sinki/kensyou.pdf。. 29)録. 音 ・録 画 を 導 入 す る 理 由 と して は,特. チ ェ ッ クが で き ず,警 が,あ. 査・ 検 討 す る,. 以 降 の で き る限 り早 い時 期 に,省 内 勉 強 会 と して の 検 討 の 成 果 につ いて 取 り ま と め. 捜 事 件 に お い て は 警 察 に よ る取 調 べ が な い の で,重. 層的. 察 の 取 調 べ に対 す る 供 述 の 状 況 を 明 らか に す る こ と も で き な い と い う こ と. げ られ て い る。 ま た,録. 音 ・録 画 す る 範 囲 に つ い て は,真. 相 解 明 機 能 や 関 係 者 の 名 誉 ・プ ラ. イ バ シ ー 等 に録 音 ・録 画 が与 え る影 響 を もふ ま え て 検 討 す る とさ れ て い る。 2011年1月15日. 現 在,法. 務 大 臣 の下 に,外. 部 の 有識 者 で構 成 さ れ る 「検 察 の 在 り方 検 討 会 議 」 が. 設 置 さ れ,改 革 策 の提 言 に 向 け て議 論 が行 わ れ て お り,そ こ で は さ らに踏 み込 ん だ提 言 が 行 わ れ る 可 能 性 が あ る。 一97一.

(18) 逮 捕 ・勾 留 中 の 被 疑 者 取 調 べ の 在 り方. 前 の 承 認 が あれ ば取 調 べ 可 能 と され て い る こ とな どか らす る と,取 調 べ を 「任 意 に答 え て くれ る よ う に説 得 す る過 程 」 に限 定 す る制 度 的 保 障 と して は,不 十 分 で あ る。 黙 秘 な い し否 認 す る被 疑 者 を,最 大23日 間,毎 日8時 間 に わ た って, 取 調 室 に滞 留 させ,(監 督 対 象行 為 に あ た らな い方 法 で)取 調 べ を行 うこ とは, 被 疑 者 が 「取 調 べ を 拒 ん だ 場 合,捜 査 機 関 の 側 で 翻 意 させ るた あ の 説 得 一 被 疑 事 実 を 裏 づ け る資 料 の 存 在 を 指 摘 して 弁 解 を 促 す な ど一 を 試 み る と して も,そ れ が 長 時 間 にわ た る こ と は許 され な い。 被 疑者 の 拒 否 の 意思 が 確 認 され て し ま え ば,そ れ 以 上 取 調 べ の 場 に滞 留 させ る合 理 的 な理 由 は な くな るか らで あ る」 と い う状 態 とは,到 底 い え な い。 な お,黙 秘 な い し否認 を続 け る被疑 者 に対 し て,自. 白 させ る 目的 で取 調 べ を 長 時 間 にわ た って続 け る こ とは,監 督 対 象 行 為. の う ちの 「殊 更 に不安 を 覚 え させ,又 は 困 惑 させ るよ うな言 動 」 に該 当 す る と 考 え られ る。 しか し,そ の 限 界 は 不 明確 だ し,そ の取 調 べ の状 況 は録 音 ・録 画 され な い か ら,録 音 ・録 画 によ る捜 査 官 へ の抑 止 力 も働 か な い。 取 調 べ状 況 報 告書 も,取 調 べ 時 間等 に 関 して は事 後 的 に 明 らか に して くれ る と して も,取 調 べ の 中身 を再 現 す る機 能 は期 待 で き な い30)。ま た,透 視 鏡 等 を備 え 付 け た取 調 室 に お い て取 調 べ が行 わ れ て も,取 調 べ監 督 官 が取 調 べ の全 過 程 を視 認 す るわ け で は な い。 む しろ,確 認 の方 法 と して は,取 調 べ状 況 報 告 書 を事 後 に 閲 覧す る とい う方 法 が,広. く用 い られ る と推 測 され る31)。そ して,監 督 官 に よ る視 認. が行 わ れ る場 合 も,監 督 対 象 行 為 の定 義 自体 に不 明確 さが残 る点 や,内 部 者 に よ る監 督 で あ る こ とに よ る 限界 が あ る。 30)取. 調 べ 状 況 報 告 書 は,取 調 べ の経 過 ・状 況 に 関す る客 観 的 ・外 形 的 な証 拠 資 料 と して作 成 され る. もの で あ り(阿 久 津 ・前 掲 注21)91頁 こ の点 に関 して,近. 参 照),取. 調 べ の 内 容 を 記 録 す る こ とは 予 定 され て い な い。. 時 は,弁 護 人 が 「被 疑 者 ノ ー ト」 を差 し入 れ,被. 等 を 記 入 す る例 も増 え て い る(「 被 疑 者 ノ ー ト」 の 形 式 は,日 nichibenren.or,jp/ja/legal. 疑 者 が それ に取 調 べ の 内容. 弁 連 ウ ェ ブサ イ トhttp://www.. _aid/on-duty_lawyer/data/higishanote_000.pdf参. 照)。 し か し,弁. 護 人 が選 任 さ れて い な い状 態 で は被 疑 者 ノ ー トは作 成 され な い し,弁 護 人 が 選 任 され て被 疑 者 が 被 疑 者 ノ ー トを手 に した場 合 で も,数 時 間 に わ た って 行 わ れ る取 調 べ の 内容 を,被 疑 者 が もれ な く正 確 に ノ ー トに記 載 す る こ と は,困 難 な こ と も 多 い。 31)阿. 久 津 。前 掲 注21)74頁. も参 照 。 一98一.

(19) 法 科大学 院論 集. 第7号. 次 に,「 被 疑 者 と弁 護 人 等 との 接 見 交 通 に つ いて の配 慮」 は,そ れ が 正 し く 運 用 さ れ れ ば,か な りの 程 度 取 調 べ の 逸 脱 防 止 に 資 す る と考 え られ る。 しか し,「 配 慮 」 は,直 接 取 調 べ の 内容 を 規 制 す る もの で は な い。 しか も,接 見 申 出 に よ って直 ち に取 調 べ が 中断 さ れ る わ け で もな い。 弁 護 人 が接 見 の た あ に被 疑 者 の現 在 場 所(取 調 べ を 受 け て い る場 所)に 赴 い た と して も,「 で き る限 り 早 期 に接 見 で き る よ う配 慮 」 され はす る もの の,必 ず 直 ち に接 見 させ る(取 調 べ を 中断 す る)こ と まで は,求 め て い な い。 さ らに,接 見 交 通 の前 提 とな る弁 護 人 が,逮 捕 され たす べ て の被 疑 者 につ いて 逮 捕 の時 点 か らつ い て い る わ け で は な い。 ま た,「 配 慮 」 要 請 が,警 察 や 検 察 の 内部 に お け る通 達 で しか な く, そ れ に違 反 した 場 合 の 効 果 も明 確 で な い こ と も,そ の 実 効 性 を 懸 念 させ る。 最 後 に,取 調 べ の 録 音 ・録 画 につ いて は,現 在 行 わ れ て い る もの で は,取 調 べ を 「取 調 官 の 呈 示 す る問 に任 意 に答 え て くれ る よ う に説 得 す る過 程 」 に留 あ る機 能 を 期 待 す る こ と は難 しい。 な ぜ な ら,録 音 ・録 画 の 対 象 が,自. 白 し(そ. れ を 内 容 とす る供 述 調 書 が 作 成 され)た 後 の 読 み 聞 けや 署 名 押 印 な どの 状 況 と され て お り,「 説 得 す る過 程」 す な わ ち 「黙 秘 な い し否 認 して い た被 疑 者 が 自 白 す るに 至 る過 程」 は 録 音 ・録 画 され な い か らで あ る。 録 音 ・録 画 は,取 調 べ の 状 況 を 正 確 ・確実 に 保 存 す る もの で あ るか ら,取 調 べ が 「任 意 に答 え て くれ るよ うに説 得 す る過 程」 に留 ま って い た か ど うか を事 後 的 に 検 証 す る手 段 と し て は,極 め て 有用 で あ る。 ま た,そ の状 況 が確 実 に 保 存 され る こ とか ら,捜 査 官 が逸 脱 行 為 を 自制 す る で あ ろ う とい う効 果 も期 待 で き る。 しか し,こ れ らの 機 能 を 果 た す た め に は,取 調 べ 過 程 の 全 て を録 音 ・録 画 しな けれ ば な らな い。 そ もそ も,警 察 庁 や最 高 検 察 庁 は,取 調 べ の録 音 ・録 画 の 目的 を,公 判 に お い て捜 査 段 階 の 自 白 の任 意 性 ・信 用 性 を効 果 的 ・効 率 的 に立 証 す る こ と と して お り32),取 調 べ の適 正 化 は そ の副 次 的効 果 と位 置 づ け られ て い る にす ぎ な い。 こ 32)最. 高 検 察 庁 「取 調 べ の 録 音 ・録 画 の 試 行 につ い て の検 証 結 果 」(2009年2月). 掲 注23)1頁. 。 一99一. 1頁,警. 察 庁 ・前.

(20) 逮 捕 ・勾 留 中 の 被 疑 者 取 調 べ の 在 り方. の よ うな 発 想 で は,録 音 ・録 画 を 取 調 べ の 適 正 確 保 の手 段 とす る こ と に は,限 界 が あ る。 こ う して,現 在 まで に実 現 した 諸 制 度 に よ って は,出 頭 ・滞 留 義 務 を課 した 被 疑 者 取 調 べ が 「取 調 官 の 呈 示 す る問 に任 意 に答 え て くれ る よ う に説 得 す る過 程 」 に留 ま る保 障 はな い。 現 に,上 記 諸 制 度 が 実 施 され た 後 に,大 阪 府 警 東 署 事 件33)(任 意 同行 中 の 被 疑 者 に対 す る取 調 べ に お け る警 察 官 に よ る暴 言)や 堺 公 訴 取 消 事 件34)(捜 査 段 階 に お け る被 疑 者 の 自白 の信 用性 を 立 証 す る こ とが 困 難 だ と して,検 察 官 が 公訴 を 取 り消 した)の 取 調 べ が 行 われ て い る。 ま た,2008 年10月30日 に出 され た 自由 権 規 約 委 員 会 の 最 終 見 解(規 約 第40条1(b)に 基 づ く 日本 の 第5回. 政 府 報 告 に 関 す る も の)も,「 主 な 懸 念 事 項 及 び勧 告」 の 中 で,. 以 下 の よ う に述 べ て い る。. 「19.委 員会 は,警 察 の 内 部 規 範 で 定 め られ て い る被疑 者取 調 べ の 時 間 制 限 が 不 十 分 で あ る こ と,真 実 を 明 らか に す る よ う被 疑 者 を説 得 す る と い う取 調 べ の機 能 を 阻 害 す る と の理 由 で 取 調 べ に お け る 弁 護 人 の 立 会 い が認 め られ て い な い こ と,及 び, 取 調 べ の 電 子 的 な監 視 の手 法 が 散 発 的 及 び選 択 的 に 行 わ れ,し ば しば被 疑 者 の 自白 を 記 録 す る こ と に 限定 され て い る こ と を 懸 念 を も って 留 意 す る。 ま た,委 員 会 は, 主 に 自白 に基 づ く有 罪 率 が 極 め て 高 い こ と に懸 念 を 再 度 表 明 す る。 こ の懸 念 は,こ の よ うな有 罪 判 決 の 中 に死 刑 が含 ま れ る こ とで更 に強 くな る。(第7条,第9条. 及び. 第14条). 締 約 国 は,虚 偽 の 自 白 を 防止 し,規 約 第14条 に定 め られ て い る 被 疑 者 の権 利 を確 保 す る た め,取 調 べ の 厳 格 な時 間制 限 や 法 律 を 遵 守 しな い行 為 へ の 制 裁 につ き規 定 す る立 法 措 置 を 取 る と と もに,取 調 べ の 全 過 程 に つ い て 体 系 的 に録 音 ・録 画 し,さ らに 全 て の 被 疑 者 に,弁 護 人 が 取 調 べ に立 ち会 う権 利 を 保 障 す べ き で あ る。 ま た, 締 約 国 は,犯 罪 捜 査 に お け る警 察 の 役 割 は,真 実 を 発 見 す る こ と よ り,公 判 の た め の 証 拠 を収 集 す る こ とで あ る こ とを認 識 し,被 疑 者 の黙 秘 が 有 罪 で あ る こ とを 示 す も. 33)前. 掲 注2)⑤. 。. 34)前. 掲 注2)⑥. 。 一100一.

(21) 法科大学院論集. 第7号. の で は な い こ とを 確 認 し,警 察 の取 調 べ に お い て な され た 自 白 よ り も現 代 的 な科 学 的 証 拠 に依 拠 す る よ う,裁 判 所 に働 き か け るべ きで あ る。」35). 35)自. 由権 規 約 委 員 会 の最 終 見解(2008年10月30日)外. mofa.go。jp/mofaj/gaiko/kiyaku/pdfs/jiyu な お,最. 務 省 仮 訳(外 務 省 ウ ェブ サ イ トhttp://www.. _kenkai.pdf)6∼7頁. 。. 終 見 解 は,特 定 の 勧 告 に対 す る フ ォ ロ ー ア ッ プの 情 報 を1年. 以 内 に提 出す る よ う,日 本. 政 府 に要 請 して お り,そ の 中 に本 文 で 引 用 した 勧 告 が 含 まれ て いた 。 日本 政 府 の これ に対 す る現 状 説 明 は,以. 下 の と お りで あ る(「 自由 権 規 約 委 員 会 の 最 終 見 解(CCPR/C/JPN/CO/5)に. 本 政 府 コ メ ン ト」 外 務 省 仮 訳(外 kiyaku/pdfs/2c 「9.取. 対す る日. 務 省 ウ ェ ブ サ イ トhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/. _commentO912.pdf)4∼6頁)。. 調 べ 時 間 の 制 限 及 び 違 反 に対 す る制 裁 の 立 法 化 につ い て 捜 査 の 流 動 性 や 事 件 の 多 様 性 にか ん が み る と,一 定 時 間 を 超 え る取 調 べ や 特 定 の 時 間 帯 にお. け る 取 調 べ を 法 律 で 一 律 に 禁 止 す る には 至 って い な い 。 も っ と も,近 年,我 が 国 の警 察 及 び検 察 で は,被 疑 者 に過 度 の 負担 を か け る こ と が な い よ う, 従 前 に も増 して 取 調 べ の 時 間 及 び 時 刻 に つ い て 配 慮 して お り,や む を 得 な い 理 由 が あ る場 合 の ほ か,深. 夜 に 又 は 長 時 間 に わ た り被 疑 者 の 取 調 べ を 行 う こ とを 避 け る こ と と して い る。 警 察 に. お い て は,深. 夜 に 又 は 長 時 聞 に わ た る取 調 べ を 原 則 と して 避 け な けれ ば な らな い とす る規 定 を. 内 部 規 則 に明 記 し,1日 に つ き8時 承 認 を受 け る こ と と した 上,こ. 間 を 超 え て 取 調 べ を行 う と き 等 に は 警 察 本 部 長 等 の 事 前 の. の 事 前 の 承 認 を 受 け ず に この よ うな 取 調 べ を 行 った 場 合,取. 調. べ の 中止 そ の 他 の措 置 を 講 ず る こ と も内 部 規 則 に 明 記 して い る。 さ らに,最. 近,我. が 国 の警 察 及 び 検 察 で は,取 調 べ過 程 ・状 況 を 書 面 で記 録 す る と と も に,. そ の 内 容 を被 疑 者 に確 認 さ せ て,そ り,警 察 に お い て は,こ. の署 名 指 印 を 得 る こ とな ど の措 置 を 講 じる こ と と して お. の点 に つ い て も内 部 規則 に 規 定 した。. 10.取 調 べ の全 過 程 を体 系 的 に録 音 ・録 画 す る こ とに つ い て 警 察 に お い て は,裁 判 員 裁判 に お い て,自. 白 の 任意 性 に 関 し,裁 判 員 に も分 か りや す く,効. 果 的 ・効 率 的 な立 証 方 策 を検 討 す る た め,裁 判 員 裁判 対 象事 件 に 関 し,取 調 べ の 機 能 を 損 な わ な い範 囲 内 で,警 察 官 に よ る被 疑 者 の取 調 べ の うち相 当 と 認 め られ る部 分 の 録 音 ・録 画 の試 行 を実 施 して い る。 ま た,検 察 に お い て は,裁 判 員 裁判 に お け る 自 白 の任 意 性 の効 果 的 ・効 率 的 な 立 証 方 策 の検 討 の一 環 と して,裁 判 員 裁 判 の対 象 と な る一 定 の重 大 事 件 に つ い て,検 察 官 の 判 断 と 責任 に お い て,取 調 べ の機 能 を損 な わ な い範 囲 内 で相 当 と認 め られ る部 分 の録 音 ・録 画 を試 行 し,2009 年2月,最 まえ,同. 高 検 察 庁 が これ ら試 行 結 果 を と りま と めて 検 証 した と こ ろ で あ り,同 検 証 結 果 を踏 年4月. 以 降,原. 則 と して,裁. 判 員 裁 判 対 象 事 件 の う ち 自 白事 件 の 全件 に つ い て,上 記. の よ うな 録 音 ・録 画 を実 施 して い る。 この よ うな 警 察 及 び検 察 にお け る録 音 ・録 画 は,取 調 室 の状 況 や取 調 官 の発 問状 況,被 の 表 情,声. の 様 子,挙. にお い て,被. 疑者. 動 等 を 客 観 的 に明 らか にす る も の で あ り,録 音 ・録 画 さ れ た取 調 べ の 中. 疑 者 が 自 白の 経 緯 や 取 調 べ 状 況 につ いて 自 由 に供 述 す る機 会 が与 え ら れ て い る こ. と,犯 罪 を 立 証 す る上 で 不 利 な 供 述 が な され て も途 中 で 録 音 ・録 画 が 中断 さ れ る こ とが な い と され て い る こ と,録 音 ・録 画 記 録 につ いて は,そ の 終 了 後 に一 切 改 変 や 編 集 を加 え る こ と な く そ の ま ま弁 護 人 に開 示 され て い る。 な お,政. 府 は,本 件 につ い て,諸. 外 国 にお け る捜 査 手 法,取. 一101一. 調 べ の 可 視 化 の状 況 等 犯 罪 捜 査.

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