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自作積分球による市販冷却 CCD カメラ
BN-52E の性能評価
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10S1-016 木崎 弘明 10S1-019 倉橋 拓也 [明星大学 理工学部 総合理工学科 物理学系 天文学研究室] February, 12, 2014 AbstractWe present results of the evaluation of a commercial CCD camera, BN-52E. An astronomical optical detector using CCD acquired various images with CCD and analyzed them. We examined dark and bias characteristics, linearity, read out noise and gain. We make use of these characteristics for a future study.
[1] 目次 1.概要 1.1.目的 1.2.方法 1.3.実験 1.4.結果 1.5.結論 2.理論 2.1.CCD 撮像素子 2.1.1.CCD 素子 2.1.2.基本動作原理および電荷信号転送方式 2.2.電気的および光学的特性 2.2.1.分光感度特性 2.2.2.感度不均一性 2.2.3.飽和電荷量 2.2.4.直線性誤差 2.2.5.転送効率 2.2.6.雑音 2.2.7.暗電流 2.2.8.ダイナミックレンジ 2.2.9.A/D 変換 2.3.データ解析 2.4.積分球 2.4.1.原理 2.4.2.自作積分球の概要 3.使用した冷却 CCD カメラ 4.測定 4.1.測定装置 4.1.1.光源 4.1.2.定電圧電源装置 4.1.3.温湿度計データロガー 4.1.4.自作積分球 4.2.実験環境 4.3.測定方法および測定結果 4.3.1.冷却に伴うダークフレーム及びバイアスフレームの安定性 4.3.2. 暗電流およびリニアリティーの測定 4.3.3. リニアリティー 4.3.4. ゲインおよび読み出し雑音
[2] 5.結論 6.議論 7.謝辞 8.付録 8.1.相関関係 8.2.回帰直線 8.3.ポアソン分布 8.3.1.ポアソン分布 8.3.2.ポアソン分布の平均と分散 9.参考文献 はじめに CCD カメラは古今から高価であることは変わらないが、その汎用性は高く赤外線観 測、可視光観測、紫外線観測、X 線観測に用いられ、CCD の特性を活かし分光測定装 置や光学顕微鏡、複写機にも応用されている。輝度特性が極めて高いことから多岐に わたる観測の応用性を備えていると云える。CCD カメラはより高感度と長時間露光が 要求される機器に使用されているようである。 今後も明星大学の天文台で冷却CCD カメラを用いて研究する学生に向けて、原理 と構造を紹介する事を主とし、性能評価の方法とその結果を論じる。電子・電気回路 やシステム上の構造など深くは触れず、CCD カメラの性能評価に留まる事にして本研 究を遂行した。
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1.概要
1.1.目的 本研究は、天体観測で幅広く使われる CCD カメラの原理・構造の理解と把握を前 提とする。市販冷却CCD カメラ BN-52E の性能評価を行い、研究対象の CCD カメラ が測光観測等の天体観測に適しているか否かを判断し、精度の決定や観測方法に貢献 することを目的として行うものである。屋内での測定を行い正確な観測データを得て CCD カメラの性能評価を理解していく。明星大学では過去に上記に関する測定データ が無いことから、研究する意義のある実験である。 1.2.方法 観測上重要になるのは、(1)暗電流の時間安定性、(2)暗電流の温度依存性、(3)CCD 画素の入力に対する出力の線形性である。(1)はダークフレームをどの程度の間隔で取 得すべきか重要な情報であり、(2)は CCD 素子の冷却温度を決める際に重要な情報で あり、(3)は適正な露出時間や、観測に適した明るさの選別の際に重要な情報である。 これらはメーカーカタログ等に記載がないので、独自の室内実験で確かめる。 1.3.結果 データ解析にIDL を用い、暗電流の時間安定性と暗電流の温度依存性は経過時間、積 分時間と平均カウント数の関係性をグラフにプロットしそれぞれの測定結果を示し た。その結果、暗電流の時間安定性では約120 分を要し、暗電流の温度依存性では冷 却温度0℃が最も低いカウント数を求めた。リニアリティー、ゲイン、読み出し雑音 では分散と平均カウント数を求めグラフにプロットした結果、リニアリティーでは-10℃と-20℃で安定した直線性を示し、ゲインでは 0℃~-30℃の冷却温度で ± 0.1 e-/ADU の値を求め、読み出し雑音では 0℃~-30℃の冷却温度で ± 0.3 ADU の精度で値 を求めた。 1.4.結論 -10℃~-20℃の冷却温度で測定することが良いと思われる。この冷却温度領域であれ ばダークフレーム、バイアスフレームの安定性と、暗電流、リニアリティー、読み出 しノイズが比較的安定する実験結果が得られている。[4]
2.理論
2.1.CCD 撮像素子 2.1.1.CCD 素子
CCD は電荷転送デバイス(CTD:Charge Transfer Device)の 1 つであり、電位の井 戸(potential well) を 利 用 し て 半 導 体 中 で 電 荷 を 転 送 す る デ バ イ ス で あ る 。 CCD(Charge Coupled Device)の略称とされており、電荷の転送を司る部分の名称と される。 現在、可視光の天体観測では最もよく使用される光検出器である。CCD が普及する まで使用され続けてきた写真乾板に比べ高い感度(量子効率)と出力信号が入射光量に 対して高い線形を有するという特徴を持っているため、より効率的かつ定量的に観測 を行うことができる。 一般的に受光部の材質は可視光撮像用ではシリコン(Si)が最も多く使用されている。 半導体の上面には酸化シリコン(SiO2)で構成される絶縁層を介して、各画素に電極(主 にアルミニウムを使用)が設けられ、それぞれに配線が埋め込まれている。多結晶 Si を用いた電極では可視光領域のなかでも波長の短い青~紫の感度が大きく減尐する。 半導体内には区分けは無いが、非常に細かな多数の電極が個々の画素に分割されてい る。このように、今日ではほとんどの CCD で基板内部に電荷転送路が埋め込まれた BCCD(Buried Channel CCD)構造が用いられる。
CCD のポテンシャルウェルは Fig.2-1 に示すように、複数の MOS(Metal Oxide Semiconductor)構造で成り立つ。電極へかける電極や電気極性をコントロールするこ とによって、各画素の半導体内部の電界の変化を利用して、受けた光の強度に比例し た数の電子を蓄えることができる。半導体名部にはもともと自由電子はないが、受光 部に光が入射すると光エネルギーにより光電効果が起こり、伝導体まで励起した自由 電子が現れる。露光が終了すると半導体内に電極直下に蓄えられた電子が集められ る。Fig.2-2 のように、断面図を見るとあたかも電子が容器に入っている様に見える。 この状態の電位を電子の井戸(potential well)と呼ぶ。Fig.2-2 は、CCD が発明された 当初の電荷転送の仕組みを 3 相パルス駆動方式で説明した断面図であるが、3 相の電 極に位相のずれた異なるパルス電圧をかけることにより、隣同士の電位の井戸の深さ に差ができ、各画素に集められた電子の集合を一塊の電荷として深い井戸の方へ移動 させることができる。これが繰り返されて、隣同士の電荷と結合しながら順次同一方 向に転送されていく。
[5]
Fig.2-1 CCD の基本構造とポテンシャルウェル Fig.2-2 半導体内の電子状態(断面図)
2.1.2.基本動作原理および信号電荷転送方式
現在実用化されている 2 次元イメージセンサを転送方式によって分類すると以下の
様に分けられる。
・X-Y アドレス転送型 (X-Y Address Transfer) ・フレーム転送型 (FT:Frame Transfer)
・フルフレーム転送型 (FFT:Full Frame Transfer) ・インターライン転送型(IT:Interline Transfer)
・フレームインターライン転送型(FIT:Frame Interline Transfer)
この中でフルフレーム転送型は動作原理よりビデオカメラに利用することは難しく 計測用や分析用に利用される。本実験で用いた市販冷却 CCD カメラ BN-52E はフル フレーム転送型であるので、一般的な動作原理についてはこれを紹介していく。 ・フレーム転送型 (FT:Frame Transfer) 典型的なフレーム転送型は受光領域と蓄積領域および水平 CCD と電荷検出部によ って構成される。撮像領域は CCD カメラの基本動作のうち光電変換、電荷の蓄積、 電荷の転送の3 つの動作を兼ねる垂直 CCD で構成され、縦方向に垂直 CCD を分ける 素子分離、横方向に転送電極および出力部が配置されている構造をする。受光領域の 金属電極としては、一般的にポリシリコン(多結晶 Si)などの透明電極を扱う。透明電 極を通って CCD の半導体中に光が入射すると、光電変換が行われ信号電荷が発生す る。この信号電荷は一定の時間、ある電極下のポテンシャルウェルに蓄えられる。信 号電荷は垂直帰線区間を利用してフレームごと蓄積部に高速転送される。受光領域の 垂直 CCD は信号蓄積期間において光電変換デバイスとして機能する。蓄積領域で は、受光領域で光電変換と信号の蓄積が行われる間に水平 CCD を通って出力部に信 号が転送される。この動作は、蓄積領域の 1 列ごとに水平帰線期間に水平 CCD へ電 荷が転送されることによって行われる。フレーム転送型では、受光領域以外の部分は 光が入らないようにアルミ等の不透明金属で覆われているようである。 転送時は映像信号のブランキング期間を利用する。受光領域の各画素で光電変換し
[6] た信号電荷は、映像信号でいう垂直ブランキング期間に全ての画素について蓄積領域 まで転送するフレーム転送が行われている。このときも受光領域の垂直 CCD では光 電変換が常に行われいる状態であるので、受光領域の信号電荷は蓄積領域に高速転送 し、転送中の信号電荷に余分な光電変換の信号付加を阻止する。特に強い光が入射し ている部分を通過する列ではその影響が大きく、上下に白い筋を引くノイズ(スミア) が画像に現れる。スミア(smear)はフレーム転送速度に反比例して減尐するが、転送速 度には限度があるため、フレーム転送型では避けられない。 ・フルフレーム転送型
(FFT:Full Frame Transfer)
フルフレーム転送型のCCD は基本的にはフレーム転送型の CCD の蓄積部がない構 成になっている。蓄積部が無いために、通常は何らかの外部のシャッター機構と併用 して使用される。この制約のためビデオカメラとして使用することは難しい。 動作原理はフレーム転送型に似ており、信号蓄積期間には受光領域のポテンシャル ウェルに電荷を集め、シャッター等の閉期間に水平 CCD を通して信号電荷が出力部 に転送される。転送電極による光の吸収は無視できるほど小さくはなく、感度低下の 要因になる。 蓄積領域が無いため同一サイズで多画素にすることができ、あるいは大きな受光部 サイズにできるため、FFT-CCD は主としてフレームレートの遅い計測用のカメラシ ステムに使用される。メカニカル・シャッターとの組み合わせで、垂直 CCD の転送 を停止した状態で露光し、シャッターを閉じてから垂直 CCD の転送を行う方法でカ メラを成立させる。 Fig.2-3 フルフレーム転送型簡易図
[7] 2.2.電気的および光学的特性 2.2.1 分光感度特性 CCD の分光感度特性は波長と量子効率の関係を示すものである。分光感度特性は使 用する半導体基板材料(長波長側)やセンサ上の構造(短波長側)によって決定される。 表面入射型FFT-CCD では構造上、有効受光面の上にポリシリコンゲート電極を形 成する必要があるため、400nm 以下の紫外域ではほとんど感度がよくない。紫外域に 感度をもたせるために表面入射型CCD にルモゲンシンチレータを塗布できるが、裏 面入射型CCD に比べると量子効率は低く長期の安定性も良くない。裏面入射型 CCD は紫外域から赤外域まで高い量子効率を実現でき、紫外光に対しての安定性も非常に 優れている。また、700nm 以上の赤外域の感度は感光領域の厚さに依存しているため 一般のCCD を製作する半導体基板を変更することで、赤外域でも高い量子効率を実 現するCCD 素子もある。 2.2.2.感度不均一性
感度不均一性(PRNU: Photo Response Non-Uniformity)は CCD の各画素の感度の ばらつきを規定するもので、固定パターン雑音(FPN: Fixed Pattern Noise)と同じこ とを示す。感度不均一性が発生する原因は、開口窓やプロセスのばらつきに起因する 量子効率のばらつきによるものと推定され、信号量に比例した特性になる。 2 次元 CCD カメラでは均一光を当てた有効受光領域に対してある程度の狭い領域を 設定し、露出量に対応した入力信号量と雑音の関係をプロットする電荷転送 (雑音は rms での値を示す)によって測定する。感度不均一性(PRNU)は以下の式で定義されて いる。ここでの雑音は統計的な値であり画素の信号の標準偏差を示し、信号は各画素 における平均カウント数を示している。従って信号量が尐ない場合は信号量によらず 一定の値になる。 PRNU(%)=(雑音 / 信号)×100 2.2.3.飽和電荷量 CCD の飽和電荷量はポテンシャルウェルで転送できる信号電子数を示すため一般に フルウェル(FW: Full Well)とも呼ばれ、検測用 CCD では電子数(𝑒−)で表される。 CCD の飽和電荷量は以下の 4 つの部分によって決定されますが、通常出力部の飽和 で制限されることはない。
1. 垂直 CCD の飽和(Vertical Full Well) 2. 水平 CCD の飽和(Horizontal Full Well) 3. サミングウェルの飽和(Summing Full Well) 4. 出力部の飽和 2 次元の電荷転送系では各画素の信号電荷は分離して出力されるため、飽和は垂直 CCD で決定される。一方、水平 CCD はラインビニング(垂直の加算)を可能にするた め、垂直CCD の飽和に対して大きな値になるように設計されている。更に最終クロ ックゲートであるサミングゲートによって形成されるサミンウェルは水平CCD の信 号を加算するため(ピクセルビニング)、水平 CCD よりもさらに大きな値になるように
[8] 設計されている。一般に電圧で出力される信号の飽和電圧Vsat は以下の式で求められ る。 𝑉𝑠𝑎𝑡=FW× Sv (Sv: 変換係数) 2.2.4.直線性誤差 CCD の入出力特性の直線性は信号量によって理想的な直線である γ=1 から僅かに ずれる。この直線性劣化の原因は出力段階に関係し、FDA を構成する逆バイアスされ た接合の信号電荷による容量変化や、これに伴う電荷電圧変換用MOSFET のゲート 電圧の変化によるものと推定される。この直線性の劣化を表す直線性誤差(LR: Linearity Residual)は、以下の式で定義される。 LR(%)=( 1 - 𝑆𝑚/𝑇𝑚𝑆/𝑇 )×100 Sm: 飽和電荷量の半分のときの信号量 Tm: 飽和電荷量の半分のときの露出時間 S : 信号 T : 露出時間 2.2.5.転送効率 CCD は完全電荷転送デバイスであるため、理想的には転送過程における損失はない が材質に起因するトラップや転送過程で発生するトラップにより電荷転送が100%完 全にはいかず、僅かな量は転送されずに残存する。転送効率(CFE)はこの量を規定す るものであり、CFE を各画素あたりの電荷の転送された割合で定義する。(2 相駆動 CCD では 1 画素分の信号電荷を転送するのにゲート単位では 2 回の転送が必要である が、これを1 回として規定している。) インターライン型のCCD では受光部のフォトダイオードから CCD シフトレジスタ への信号の転送は不完全であるため、数%程度の残像が存在することがある。一方で FFT- CCD のようにシフトレジスタ自身が受光する場合では、文献などで報告されて いるトラップへの進行電荷の捕獲と放出による残像のようにCFE の劣化として観察さ れる。従って、2 次元動作ではあまり問題になることはないため、ここではラインビ ニングのCTE による残像について示す。 ラインビニングでは信号は水平CCD の数に対応した 1 ラインの信号として得られ る。Fig.2-4 に示すように CTE が 1(理想的)の場合には以降(1st, 2nd, …)の読み出しに おいて信号電荷はダークレベルと同じだが、有限のCTE では転送数により表に示す様 な信号電荷が読み残される。 Fig.2-4 ラインビニングによる残像
[9]
2.2.6.雑音
Fig.2-5 CCD 素子のノイズ成分
●固定パターン雑音(Nf: Fixed patten noise)
撮像画像の中の固定した位置に現れるノイズでCCD の各画素の感度差のばらつき により発生する。感度差によるばらつきの発生する原因は画素の増幅器のばらつきと フォト・ダイオードの暗電流の2 つが主要因である。画素の増幅器のばらつきは製造 プロセスの開口面積や膜厚のばらつきにも依るが、閾値電圧(ソース-ドレイン間に電 流が流れ始めるゲート電圧)のばらつきは数十 mV くらいであり避ける事はできない。 信号量の大きなところでは露出光(信号電子量)に比例する。1 画素の雑音について考え るときにはNf=0 となる。以下に固定パターン・ノイズをまとめた。ここで述べるフ ォトダイオードの暗電流については後述する2.2.7.暗電流を、フォトダイオードの感 度不均一性は前述した2.2.2.感度不均一性をそれぞれ参照されたい。 Fig.2-6 主な固定パターン・ノイズ ・フォトダイオードの暗電流 ・転送劣化 ・フォトダイオードの感度不均一性 ・転送劣化 光が弱い撮像条件で現れやすい低照度黒点と縦筋は垂直CCD および水平 CCD の転 送劣化が主な原因であり、CCD の転送劣化はトラップ準位電位のディップ/バリアが
[10] 原因である。低照度黒点は垂直CCD の転送劣化により発生し、転送電極のポテンシ ャルで説明される。フォトダイオードから垂直CCD に信号電荷が読み出される直前 まで信号電荷がない状態で転送が繰り返された場合、転送劣化を起こしているポテン シャル・ディップやトラップ準位から電子が放出され空の状態になる。信号が読み出 されるとそこに電子が拘束されるが、垂直CCD の転送が始まると拘束を受けた分だ け減った信号電荷が次の電極に転送される。後から来た信号電荷は電子の放出が遅い ディップやトラップ準位をそのまま通過しやすいため変化しない。結果的に転送劣化 を起こしている画素の信号電荷が減って黒点として現れる。 但しトラップ準位の拘束速度が遅い場合や画素の信号電荷量よりディップが束縛で きる信号電荷量の方が大きい場合は、黒点が尾を引く場合もある。またポテンシャ ル・ディップやトラップ準位に拘束される電子数は限度があるので、信号の減量はほ ぼ変わらないため、光量の尐ない低照度のときにこの固定パターン・ノイズが目立 つ。低照度縦筋も水平CCD および一部は垂直-水平 CCD の転送において同じ様なメ カニズムで発生する。このとき転送劣化が列に共通する場所で発生するため固定パタ ーン・ノイズが縦筋状に現れる。 ●ランダムノイズ ランダム・ノイズは映像を画面に映し出したとき画面の位置に関係なく現れるノイ ズである。ランダム・ノイズには、大きく分けて4 種類ありますが、近年の高性能な CCD カメラにおいては、暗電流ショット・ノイズは無視できるほど小さく、FD リセ ット・ノイズは回路的に抑圧ができるため、FD アンプ・ノイズが支配的になってい る。しかし、FD アンプに使われている MOS トランジスタの性能が向上することによ り、撮影条件によっては光ショット・ノイズのほうが目立つようになることも考えら れる。 ・暗電流ショット・ノイズ ・FDA リセット・ノイズ ・FDA のアンプ・ノイズ ・光ショット・ノイズ
・暗電流ショット・ノイズ(Nd: Dark shot noise)
暗電流(ダーク)ショット・ノイズは、フォト・ダイオードや垂直/水平 CCD の中で 発生した暗電流が原因であり、その暗電流の不規則なゆらぎ成分である。暗電流は電 子が深い単位などを足場に熱的に励起されることにより発生するが、その発生が不規 則過程によるため、ある瞬間を見るといつも同じ個数の電子が発生しているわけでは ない。CCD カメラのようにポテンシャルウェルで信号電荷を転送して、一つ一つ画素 ごとに信号が出力されるような場合でも特定の画素信号を見るとそれに含まれる暗電 流の電子数にゆらぎがあり、それがダークショット・ノイズになる。 フォト・ダイオードや垂直/水平 CCD で発生した平均の暗電流の電子数をN個とす れば、その平方根の√𝑁個がショット・ノイズの電子数になる。 ・FDA リセット・ノイズ FDA リセット・ノイズは、一般的にkTCノイズと呼ばれる。これはある容量にスイ ッチを介してある電流を与え、スイッチをOFF した後に現れるノイズであり、サンプ リング回路などで必ず発生するノイズである。CCD カメラでも、信号電荷を検出する
[11] 直前にFD を電源電圧などにリセットするが、基準になるリセット後の FD 電圧に kTCノイズが加わる。このkTCノイズ電圧𝑉𝑛は、下記のような式で示される。ただ し、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、Cは容量である。 𝑉𝑛= √ 𝑘𝑇 𝐶 FDA リセット・ノイズは CCD カメラの出力波形の中で基準電圧になるリセット部 に現れる。その後に水平CCD から信号電荷が転送されてきてデータ部に信号電圧が 出力されるが、既にリセット・ノイズが含まれているリセット部に信号電荷に相当す る電圧が加算される形になる。リセット部とデータ部の両方に同じだけリセット・ノ イズが含まれている。リセット部とデータ部の両方をサンプリングし減算する動作を 行うCDS 回路により原理的に取り除かれる。
・FDA のアンプ・ノイズ(Nr: Read-out noise)
FDA のアンプ・ノイズは FDA を構成する増幅回路で発生する。この増幅回路は FD で信号電荷が変換された信号電圧を CCD カメラに接続される映像信号処理 IC な どの入力の負荷に耐えられるように、出力インピーダンスを下げる働きをするソー ス・フォロワ回路になっている。このアンプでは増幅素子にMOS トランジスタが使 われるので、そこから主に熱雑音と1/fノイズ(フリッカ・ノイズ)が発生する。熱 雑音はMOS トランジスタのチャネル抵抗により発生する。 これらのノイズについて回路の中で FD に接続されている最もサイズの小さい MOS トランジスタから発生するものが支配的である。CCD カメラの出力センサの出 力信号を映像信号にするとき、まずCDS 回路でサンプリングをすることになるが、そ の過程でノイズはその伝達特性や帯域幅の制限を受けると同時に検出限界に制限を与 える。そのため映像信号に現れるFD アンプ・ノイズは CDS の伝達特性や回路の帯域
幅の影響を受けたあとの、雑音パワースペクトル密度(PSD:Power spectral density)
を積分した値になる。特に低い周波数で大きいパワー・スペクトル密度を示す1/fノ イズはCDS 回路のフィルタ効果により低減する。 ・光ショット・ノイズ(Ns: Shot noise) 光ショット・ノイズは光の強度が一定でも1 回の蓄積時間にフォト・ダイオードに 入射する光のフォトン数がいつも同じでなく、ゆらぎをもつことに起因する。これも ダークショット・ノイズと同様にフォト・ダイオードに入射したフォトンの数𝑁𝑠の平 方根が光ショット・ノイズ𝑁𝑛になる。 𝑁𝑛= √𝑁𝑠 以上のランダム・ノイズのうち、多くのCCD カメラは FD アンプ・ノイズが支配 的であるようだが、今後アンプに用いられているMOS トランジスタの性能が向上す ることにより、FD アンプ・ノイズが光ショット・ノイズより小さくなることが予想 され、光ショット・ノイズが支配的になる可能性がある。このことは、ランダム・ノ イズが物理的限界に近づいてきていることを示唆していると思われる。 光ショット・ノイズはショットノイズ、ショット雑音と同義である。
[12] Fig.2-7 各露光量で支配的になる雑音 トータル雑音(Nt: Total noise)は 𝑁𝑡 = √𝑁𝑓2+ 𝑁𝑠2+ 𝑁𝑑2+ 𝑁𝑟2 但し、1 画素についての雑音を考えるときは Nf=0 である。 Fig.2-7 は信号と各種ノイズの関係を示す。暗電流に起因するダークショット・ノイ ズは露光時間が一定ならば入射フォトンとは無関係なため、露光量に依らず常に一定 になる。読み出しノイズも露光量とは無関係にCCD の出力方式によって決まる雑音 のため、露光量の影響は受けない。動作条件によりダークショット・ノイズを読み出 しノイズ以下に下げることでCCD の検出限界まで性能を引き出せる。暗電流を下げ る方法としてはMPP 動作とデバイスの冷却が最も効果的な手法である。 使用状態におけるS/N 比は露光量が大きい場合では主として固定パターン・ノイズ によって決まり、露光量が小さい場合はショットノイズによって決まる。最終的に検 出限界を制限する雑音はダークショット・ノイズと読み出しノイズであり、暗電流を 十分に低減できれば究極的には読み出しノイズで検出限界が決まり、ダイナミックレ ンジが決定される。 2.2.7.暗電流 CCD カメラにとって、CCD 受光面に光の入射しない状況で撮像した画像に写る白 点、白傷やザラツキの原因になるフォト・ダイオードの暗電流は画質を決定する最も 重要な要素である。この固定パターン・ノイズは各画素の暗電流のばらつきによるた め入射光がなくても発生し、ノイズ信号電圧が蓄積時間に比例する上に温度依存性を もつ性質がある。 典型的な埋め込み型ダイオードならば、結晶欠陥や重金属汚染による発生再結合中 心からの発生電子、電界により加速された電子がインパクト・イオン化を起こして発 生する新たな電子 - 正孔対、表面準位から発生した電子の拡散電流成分、強い電界に
[13] より順位を介してバンド・ギャップを通り抜けるトンネル効果や強い電界がかかって いる領域でPool - Frenkel 効果(深い準位から伝導体への電位障壁低下により発生確率 が高くなる現象)等が主な暗電流発生メカニズムとして考えられる。エネルギー・バン ドの中ほどに位置する発生再結合中心からの暗電流は、Shockley - Read-Hall モデル により温度が10℃上昇するごとに約 2 倍に増えることが示唆される。 このような白傷は使用している間に増加する可能性があり、極端な例として、宇宙 ステーションで使用したCCD カメラでは 3 ヶ月以内に多くの白傷が発生しているこ とが確認されている。宇宙空間を飛来するα 線、中性子線の量に相関があるとされ、 質量をもつ宇宙線によりフォト・ダイオードに結晶欠陥を引き起こすことが原因と考 えられる。確率的に非常に低くなるが地上環境でも同様な現象があり、後に白傷にな ると考えられる。 2.2.8.ダイナミックレンジ ダイナミックレンジは検出器の測定可能範囲を規定するもので最大レベルと最尐レ ベル(検出限界)の比で定義する。CCD のダイナミックレンジは飽和電荷量を読み出し 雑音で割った値である。検出限界はダークショット・ノイズと読み出し雑音の両者に よって決定されるため、動作湿度や蓄積時間など動作条件によってトータルの雑音が 変わりダイナミックレンジも変わる。 室温付近ではダークショット・ノイズが検出限界を決定するが、十分に冷却した状 態でダークショット・ノイズが無視できるような動作条件では読み出し雑音によって ダイナミックレンジは、このような最大限の効果が期待できる場合の値であり、 ダイナミックレンジ = 飽和電荷量 / 読み出し雑音 或いは 20×log(飽和電荷量 / 読み出し雑音)[dB] で定義している。 2 次元 CCD カメラでは飽和電荷量は垂直 CCD の飽和で与えられるが、ラインビニ ングやピクセルビニングでは飽和が異なるため、動作の方法によっては計算式の電荷 を水平CCD の飽和で置き換えて計算する必要がある。
[14] 2.2.9.A/D 変換 デジタル画像を出力するため画像データをアナログ信号からデジタル信号へ変換しなけ ればならない。この過程をA/D 変換という。アナログ信号は電気回路の電流や電圧値の変 化量で表し、デジタル信号は2 進数で扱い、2 進の桁上がりの数をビット数として各ビッ トを並列に転送する。 Fig.2-8 の様に光の輝度値として考えると、アナログデータは輝度差が何倍違うかの倍 数値の表現あり、輝度は滑らかに連続的な変化をしていて段差がなく階調で表せない。デ ジタルデータは輝度値の0 から最大値までを階調で表現し、輝度差は全階調のうち何階調 であるかで示される。 Fig.2-8 アナログ信号とデジタル信号
[15] 2.3.データ解析 本実験により得られたFIT ファイルを解析するにあたり CCD カメラの読み出した デジタル信号と受光領域に入射したフォトンの数を正確に知る必要がある。CCD カメ ラが受け取ったフォトンの数とカウント数を関係付ける係数のことをコンバージョン ファクター(換算係数)という。フォトン数をn、カウント数をN、コンバージョンファ クターをfとすると、これらは次式よって結ばれる。 𝑛 = 𝑓𝑁 …(2.1) n と N を同時に求めることができればコンバージョンファクターは容易に求まる が、CCD カメラが受け取ったフォトン数を直接知る手法はない。この CCD カメラに 入射するフォトン数はポアソン分布に従うものである。一定の強度の光を CCD 受光 面に照射させても CCD 受光面でのフォトン数にはばらつきが存在する。このとき入 射するフォトンをそれぞれ独立であれば、そのばらつきはポアソン分布に従うことに なる。よって、入射するフォトン数の標準偏差をσとすれば 𝜍 = √𝑛 …(2.2) ここでFIT ファイル上での平均カウント数の標準偏差をΣとすれば 𝜍 = 𝑓𝛴 …(2.3) n, σは直接的な計測はできないのでN, Σの関係式にすると 𝛴2=1 𝑓𝑁 …(2.4) FIT ファイル上での平均カウント数と分散をフィッティングし、その傾きの逆数を 求めることでCCD カメラシステムのコンバージョンファクターを求めることができ るが、CCD の読み出し回路内での雑音の発生は避けられない。読み出し回路内の電圧 が変動することが大きな要因であり、この変動の平均値のばらつきがκであるとおく と、CCD が変換するフォトン数のばらつき𝜍′はこの読み出し雑音による影響を受けて 次のような式で表される。 𝜍′ = √𝑛 + 𝜅 …(2.5) この影響を考慮に入れて、 𝛴2=1 𝑓𝑁 + 𝜅2 𝑓2 …(2.6) よってFIT ファイル上での平均カウント数と分散をフィッティングして、得られた 回帰直線の傾きと切片を計算することでゲイン(コンバージョンファクター)fと読み出 し雑音κを算出する。 この関係を確かめるため、CCD カメラに一様な光を当てて横軸が平均カウント数、 縦軸に分散をとったグラフを作成する。露光時間を変えて平均カウント数が異なるフ ラットフレームを取得し、それぞれのFIT 画像について標準偏差を計算し散布させ る。プロットしたグラフから得られる回帰直線の傾きの逆数がゲインになる。 これらは回帰式の相関関係から求められる。 𝑦 = 𝑎𝑥𝛾+ 𝑏 …(2.7) このとき相関関係の最大値は1、最小値は-1 であり、−1 ≦ 𝛾 ≦ 1の範囲を持つ。 CCD カメラは正に近い直線性を示すのでγ ≒ 1 として考えることができる。よって、 式(2.6)と式(2.7)から
𝑓 =
𝑎1 , 𝜅 = √𝑏𝑓2 …(2.8) ゲインと読み出し雑音の値を得る。[16] 2.4.積分球 測定する光源の配光分布が、電球のように全方向の空間に分布する光源は、一般的 に積分球の中心に試料光源を点灯して測定する。原理に、その光学モデルを示す。 2.4.1.原理 Fig.2-9 積分球中心に光源を点灯した場合の光源モデル 半径r の積分球の中心に光源があり、その光源から角度 α 方向の積分球壁面上の微 小面A に光度𝐼0(α)で照明されたとする。このとき、積分球壁面 A の照度𝐸𝑎0は、次式 で表せる。
𝐸
𝑎0=
𝐼0(𝛼) 𝑟2 ... (2.7) 積分球内壁が反射率ρ(視感反射率)で均等拡散反射し、壁面上の微小面 A が面積 dS であるとすれば、微小面A より反射される光束(𝜑𝑎)は次式で表せられる。 𝜑𝑎= 𝜌・𝐸𝑎0・𝑑𝑆 …(2.8) 面A の法線に対して角度 θ の方向の積分球壁面上の微小面を B とする。 面A より面 B 方向の光度𝐼0(𝜃)は面 A が均等拡散反射面とすれば次式で表される。𝐼
𝑎=
𝜑𝑎・cos 𝜃 𝜋 …(2.9) 面B は積分球内壁面上の面であるから、面 B への𝐼𝑎(𝜃)の入射角は θ であり、面 A と面B との距離は(2𝑟・cos 𝜃)であるから、面 B の光源𝐼𝑎(𝜃)による照度𝐸𝑎𝑏は次式で表 される。 𝐸𝑎𝑏 =𝐼𝑎(𝛼)・cos 𝜃 (2𝑟・cos 𝜃)2 = 𝜑𝑎 4𝜋𝑟2=
𝜌・𝐼0(𝛼)・𝑑𝑆 4𝜋𝑟4 …(2.10) 式(2.10)より、面 A からの反射光は面 A からの出射角θによらず、積分球内壁のど の部分に対しても均一の照度で照明される。積分球壁面を反射した光は積分球壁面間 を繰り返し反射し、面A の照度𝐸𝑎は次式で表せる。 𝐸𝑎=𝐼0(𝛼) 𝑟2 + 𝜌・𝜑 4𝜋𝑟2 + 𝜌2・𝜑 4𝜋𝑟2 + 𝜌3・𝜑 4𝜋𝑟2 ・・・=
𝐼0(𝛼) 𝑟2+
𝜌・𝜑 *(1−𝜌)・4𝜋・𝑟2+ …(2.11)[17] 従って、積分球内壁にその照度を測定するCCD カメラ(受光器)を設け、光源と CCD カメラ(受光器)の間に光源からの直接光である𝐸0(𝛼)を遮断する遮光板を設けるこ とにより、式(2.5)の𝐼0(𝛼)/𝑟2の項が消去されて、光源の全光束φ に比例した受光器 (CCD)出力が得られる。このことから、全光束の値が付けられた全光束標準光源と、 試料光源を同一の積分球で比較測定することにより、試料光源の全光束を求めること ができる。実際には光源やこれを点灯する光源点灯治具、遮光板等が大きさを持つた め、積分球にはFig.2-2 に示すような誤差要因が存在する。 Fig.2-10 積分球で全光束を測定する場合の誤差要因 これらの誤差要因のうち、[1]は光源自身が影を作る光源の自己吸収で補助光源を考 慮することで補正することが可能である。[2]は遮光板によって生ずる影や反射で、積 分球を設計する際、最小化を目指さなければならない。[3]は光源を支持する光源点灯 治具の自己吸収や反射で、全光束標準電球と試料光源の配光が異なる場合に大きな測 定誤差を生ずる可能性がある。 しかし、本実験のために自作した積分球ではこの測定誤差を考慮し、光源を検出部 の周囲に設置した。十分な光源を得ることで自己吸収の測定誤差を無くし、遮光板を 取り除くことで作製の簡易化を図った。 2.3.2.自作積分球の概要 積分球を自作する上でいくつかの条件を踏まえ設計した。光源に必要な条件とし て、実験中の3 時間程度の時間安定性が確保されることと、CCD 受光面の全面を均質 に照射できなくとも中心付近の受光領域がほぼ均質であれば良いことにした。Fig.2-3 に積分球を作製する上での設計図を示す。
[18]
Fig.2-11 積分球の設計図
自作積分球に用いた機材は、5φ 帽子型白色 LED[EEHD-05SK]、半球発泡スチロー
[19]
3. 使用した冷却 CCD カメラ
今回、私たちが使用した冷却CCD カメラは BITRAN 社製の BN-52E 仕様(メーカ
ーHP より)である。
Fig.3-1 BN-52E の寸法図 Fig.3-2 BN-52E の仕様簡易図
オートガイド機能……(BJ シリーズを接続することによりオートガイド可能) 電動フィルタホイール機能……電動フィルタホイール付(R-band, V-band, B-band)
シャッタースピード……メカニカルシャッター:0.1sec~6,500sec 冷却方法……2 段ペルチェ素子、自然空冷 (温度環境条件の悪い時に、水冷使用可) 冷却温度……自然空冷時:外気温度-35℃ 市冷却時:-40℃ 取り付け接眼部……50.8mm 通信方式……(USB2.0 及びイーサネット[TCP/IP]) PC-OS……Windows vista / XP / 2000 / Me 画像出力ファイル形式……オリジナル形式/FITS/TIFF(非圧縮)/RAW/BMP /JPEG/テキスト/バイナリ
[20]
BN-52E に使用されている CCD 素子の量子効率の図を以下に示す。
Fig.3-3 BN-52E に使用される CCD 素子 KAF-1001E の量子効率
水冷却の際に用いる電動式ポンプやチューブを含め、BN-52E の周辺機材は以下の ようになる。
[21]
4.測定
4.1.実験装置 本実験のうち輝度特性およびゲインの実験には、より安定した電源を得るため積分 球を自作した。 4.1.1.光源 千石電商で発売している5φ 帽子型白色 LED [EEHD-05SK]を使用した。仕様とし て、順電圧が3.2V〜3.4V、順電流が 20mA、輝度が 1,000〜1,500mcd、指向角が 120°である。これを自作積分球の光源として用いた。 4.1.2.定電圧電源装置 本研究で使用した定電圧電源装置である。松定プレシジョンで販売されている直流 型電源である。Fig.4-1 はその写真であり、Fig.4-2 は仕様を示す。この内、実験で使 用したものはPL-18-5 である。 Fig.4-1 間に挟まれている電源装置が PL-18-5 である Fig.4-2 PL-18-5 の仕様[22] 4.1.3.温湿度計データロガー
Fig.4-3 midi LOGGER GL10-TH
[23]
Fig.4-5 midi LOGGER GL10-TH の仕様 2
4.1.4.自作積分球 CCD 受光面を一様に照射するための球で、外部直径約 32cm、厚さ約 2cm、内部半径 30cm、出射穴径約 5cm で ある。この積分球ではCCD 受光面全体を実験に必要な 一様性で照らすことが出来なかったため、本実験では CCD 受光面の中心付近 256×256 ピクセルのデータを用 いて解析を行った。右の画像が実際に自作した積分球で ある。 Fig.4-6 実際に自作した積分球の画像
[24] 4.2.測定環境 本測定は天文学研究室505 号室で行い、研究室の一角に暗室を用意した。暗室の中 にはCCD カメラをはじめとする測定装置を設置した。CCD カメラの設置場所は気 温・湿度がほぼ一定である環境下である。下図は暗室の中を示している。実験期間は 12 月 6 日から測定を開始し翌年の 1 月 27 日まで測定を行った。実験時間は、 P.M.21:00〜A.M.6:00 に留めた。 Fig.4-7 暗室内の測定環境 他の卒業研究にも使用されるので開始時間にばらつきはあるが、この実験時間内で 測定を遂行した。 木造机の上に光学台を置き、BN-52E を固定した。これは BN-52E の稼働振動を抑 え、筐体温度と外部との温度伝導を考慮した為である。木造机と光学台の空間に温湿 度計データロガーを置き、BN-52E の筐体周りの温度と湿度を 5 分間隔で計測した。 自作積分球とBN-52E を固定させ、自作積分球の LED の電源は低電圧電源装置から 供給した。このときBN-52E と定電圧電源装置の電源は、別々のコンセントから電源 を確保した。水冷を用いて冷却する時も、水冷用モーターの電源はBN-52E と別のコ ンセントから電源を確保した。BN-52E に供給する電源をより安定させるためであ り、水冷用モーターや電力消費等が著しい機器をBN-52E と同じ電源から供給してし まうとBN-52E への安定した電源の確保は難しい。ノイズの原因となる場合がため観 測装置と駆動装置・電源装置などの電源を分け、無視できないノイズをなくす。
[25] 4.3.測定方法および測定結果 4.3.1. 冷却に伴うダークフレーム及びバイアスフレームの安定性 CCD カメラの冷却を開始してから CCD 受光面付近が冷えきって、安定した結果が 得られるまで相当の時間を要する。液体窒素等で冷却するCCD カメラでは、冷却媒 体を絶やす事なく補給を続けてCCD カメラの冷却温度を一定に保っている場合が多 い。本研究の対象となるCCD カメラ BN-52E はペルチェ式(電子冷却式)であり、電源 を入れてから安定して使用出来るまでの時間を正確に把握しておく事が重要である。 これは温度管理に注意し連続して冷却し続ける事が共通して大事である事を示してい る。 本実験では BN-52E の電源を ON にしてから素早く冷却を開始した。BN-52E の冷 却が開始して設定した冷却温度に管理されてから、ダークフレームとバイアスフレー ムの平均カウント値が一定になるまでの時間を測定する。画像はfits 形式に設定し、 冷却管理直後から3 時間まで 30 秒間隔で自動的に取得した。積分時間はダークフレ ームが90sec、バイアスフレームが 0.1sec である。 ・ダークフレームの平均カウントの安定性 ダークフレームの冷却開始からのカウントの平均値の変化について、図に示す。図 の横軸は冷却開始からの経過時間であり、縦軸は平均カウント値である。 Fig.4-8 0℃ ダークフレームの時間安定性
[26]
Fig.4-9 -10℃ ダークフレームの時間安定性
[27] Fig.4-11 -30℃ ダークフレームの時間安定性 0℃, -10℃, -20℃, -30℃ の各冷却温度では冷却を開始してから約 7000 秒で平均カウ ントの値が落ち着いてきている。これは異なる日の測定でも共通した傾向であり、 BN-52E 自体は約 7000 秒(約 120 分)で安定している事がわかる。 ・バイアスフレームの平均カウントの安定性 バイアスフレームの冷却開始からの平均カウント値の変化について、以下に図を示 す。図の横軸は冷却開始からの経過時間であり、縦軸は平均カウント値である。
[28]
Fig.4-12 0℃ バイアスフレームの時間安定性
[29]
Fig.4-14 -20℃ バイアスフレームの時間安定性
[30] -10℃, -20℃ の冷却温度下では比較的早い経過時間で安定し始め、冷却を開始して から約7000 秒以降には標準誤差内から平均カウントの値が大きく外れることなく落 ち着いてきている。0℃の冷却温度下では平均カウントの値がばらつくものの冷却を開 始してから約10000 秒(約 160 分)でバイアス値が安定してきた。-30℃の冷却温度下で は冷却を開始してから常に上昇値を取り続ける傾向があり、安定した時間は無さそう であった。冷却を開始してから経過時間とともにバイアス値が安定した測定が確認出 来たのは、4 回の実験の中で 1 回であった。 4.2.2.暗電流およびリニアリティーの測定 冷却温度を, +20℃, +10℃, 0℃, -10℃, -20℃, -30℃ に、積分時間を, 0.1sec, 1sec, 2sec, 4sec, 6sec, 8sec, 10sec, 20sec, 40sec, 60sec, 120sec, 240sec, 480sec, 600sec にし て実験を遂行した。 ・暗電流 CCD カメラの冷却が安定してから、ダークフレームを 0.1 秒から 600 秒まで積分時 間を変えながら複数のフレームを取得した。これらの取得したフレームから暗電流に よる影響を求める。+20℃から-30℃までの冷却温度に設定して実験を行った。最後の 図は+20℃から-30℃までの各冷却温度の平均カウント値を積分時間ごとに一つの図と してまとめた。 Fig.4-16 +20℃ 平均カウントと積分時間の関係
[31]
Fig.4-17 +10℃ 平均カウントと積分時間の関係
[32]
Fig.4-19 -10℃ 平均カウントと積分時間の関係
[33] Fig.4-21 -30℃ 平均カウントと積分時間の関係 Fig.4-22 平均カウントと積分時間の関係 各冷却温度の測定結果について、横軸に積分時間であり、縦軸に平均カウント値を とったもので、この直線性が暗電流の温度依存性を表している。Fig.4-16~Fig.4-22 の結果から、CCD カメラの冷却温度が -10℃, -20℃, -30℃ のカウント数が大きく出て
[34]
いることわかる。冷却温度が0℃のカウント数は短い積分時間から長い積分時間にお
いて一貫してカウント数が低いことを示している。ただ各積分時間での平均カウント にほとんど差は開かず、なかでも冷却温度が-20℃においては最も差が無い事を示し た。暗電流の計算結果は、+20℃, +10℃, 0℃, -10℃, -20℃, -30℃ の各冷却温度におい て、32.47 /sec/pix , 28.38 /sec/pix , 10.74 /sec/pix , 16.46 /sec/pix , 18.27 e-/sec/pix , 17.25 e-e-/sec/pix であることがわかった。-7℃〜-10℃の冷却温度差があれば 暗電流の値は約半分に減尐するが、今回の測定ではそれが見られなかった。 ・リニアリティー CCD カメラは写真と異なり輝度特性が直線に極めて近く、測光等をはじめ幅広い分 野の観測には最適の性能を有している。しかし、すべてのCCD カメラが良好な直線 性を示すわけではない。カウント値の尐ない部分や飽和に近い部分では輝度特性が直 線から外れる事がある。ここでは研究対象であるCCD カメラの輝度特性の直線性か らのずれを把握するために以下の実験を行った。 フレームの取得はCCD カメラの冷却温度と光源が十分安定するのを確認し、CCD カメラの接眼部に自作積分球を設置した状態で測定を行った。実際の観測に用いるV バンドフィルターを付けCCD カメラの接眼部に ND フィルターを設置し、CCD 受光 面に入射する光量を調整した。フレームの取得には 0℃, -10℃, -20℃, -30℃ の冷却温 度の管理下で実験を行い、CCD カメラの冷却温度が安定してからシャッターを切っ た。これは実際に天文台で観測するとき、この冷却温度が広く使われるためである。 まず、実験に用いる積分時間を決定するため、次の予備実験を行った。暗電流で用 いた積分時間を基準として、0.1sec からシャッターを切っていき CCD が飽和する 60,000〜64,000 カウントをとる積分時間までフレームを取得していった。暗電流で用 いた 0.1sec, 1sec, 2sec, 4sec, 6sec, 8sec, 10sec, 20sec, 40sec, 60sec, 120sec, 240sec, 480sec, 600sec の積分時間のうち、240sec の積分で飽和状態に近づく事を確認した。 CCD が飽和する積分時間を把握した上で 0.1sec, 1sec, 2sec, 4sec, 6sec,8sec, 10sec, 20sec, 40sec, 60sec, 120sec, 240sec の積分が可能となるようフレームを取得した。
Fig.4-23 積分球で取得したライトフレーム
Fig.4-23 は積分球の光源として取得したライトフレームである。このライトフレー
ムに積分球の光源としての均一性はない。周辺減光が認められCCD 受光面の全面で
[35]
を用いて直線性の評価を行った。解析は取得したライトフレームからダークフレーム を差し引き、各フレームの中心付近 256 × 256 pix の平均カウント数を求めた。この
計算は天文学研究室が所有しているIDL(Interactive Data Language)上のワークベン
チを起用した。
[36]
Fig.4-25 0℃ 相対パーセント
[37]
Fig.4-27 -10℃ 相対パーセント
[38]
Fig.4-29 -20℃ 相対パーセント
[39]
Fig.4-31 -30℃ 相対パーセント
[40] 各冷却温度においてリニアリティーと相対パーセントのグラフを作成し、0.1sec か ら線形性が保たれている積分時間までをグラフに表した。それぞれの冷却温度におい ても1,000〜9,000 カウントの範囲内で 0.1%未満と、リニアリティーは極めて良好で ある事がわかった。これはダークの差し引きがこれ以上の精度で行われなければ得ら れない結果であり、ダークの補正が十分にされていると云える。Fig.4-32 では横軸に 積分時間、縦軸に平均カウント値にして、各冷却温度の比較を表したものである。 -10℃〜-30℃の冷却温度ではほぼ同じような平均カウント数を示し、0℃において僅か に平均カウント数が高い。このような短い露出時間においてそれぞれの冷却温度でも 良好な線形性を保ちながら、同じようなカウント値を得る事がわかる。 ※それぞれの相対パーセントで、γ = 1 から最も大きなずれを示した値は、0℃で 0.33%、-10℃で 0.50%、-20℃で 0.30%、-30℃で 0.29%であった。どの冷却温度にお いてもγ = 1 からのずれが大きな値をもつ積分時間は 0.1 であった。これについて、バ イアスフレームの平均カウントの不安定性とシャッターの微小な時間での精度による 影響である可能性は否定できない。 4.2.3.ゲインおよび読み出し雑音 リニアリティーの実験で取得したフレームのうち、リニアリティーの良い範囲のラ イトフレームを用いてゲインと読み出し雑音を求める。2 枚の同じ積分時間のライト フレーム(ダークフレームを差し引いたもの)の差を取ったフレームを作成し、このフ レームの平均カウント値を横軸に、分散を縦軸にとり、グラフ右上に回帰式を記述し たものが以下の図である。 Fig.4-33 0℃ ゲイン
[41]
Fig.4-34 -10℃ ゲイン
[42] Fig.4-36 -30℃ ゲイン リニアリティーの実験と同様に線形性の保たれている積分時間を用いた。これについて は式(2.6)より𝜅2⁄𝑓2> 0であることは自明であり、雑音が負の値を取ることはない。また 線形性の安定している領域でないと精度のあるゲイン値と読み出し雑音を求めることがで きないため、切片が正の値を持っていても標準誤差の大きい値はフィッティングしなかっ た。詳しくは付録8.2.を参照されたい。 ・ゲイン 式(2.8)より、Fig.4-33~Fig.36 の直線の傾きの逆数がゲインとなる。それぞれの冷 却温度に対して1 回の実験を行い、0℃で 0.2127、-10℃で 0.2168、-20℃で 0.217、 -30℃で 0.2174 の傾きが求まった。その逆数から 1ADU の値を求め、0℃で 4.70e-、 -10℃で 4.61e-、-20℃で 4.61、-30℃で 4.60e-を得た。BITRAN 社はメーカーカタロ グ値を公開しておらず、BN-52E の飽和容量から製品のカタログ値を概算する事はで きない。しかし、それぞれの冷却温度において極めて近い値を示している事から、こ の実験にて測定したゲイン値は許容範囲に入るであろう。 ・読み出し雑音 式(2.8)より、Fig.4-33~Fig.36 からゲインfを求めることによって読み出し雑音κ を求めた。結果は0℃で 3.6 カウント、-10℃で 4.1 カウント、-20℃で 4.0 カウント、 -30℃で 4.3 カウントとなった。電子数に直すとそれぞれ 17.1e-、18.8e-、18.6e-、 19.6e-となり、各冷却温度と比較しても近い値を示している。
[43]
5.結論
以上の実験を通して以下の結論が得られた。 ・CCD カメラの冷却を開始してからカウントの平均カウント数が安定するまでに、外 気温が安定した状態で約120 分要することが分かった。 ・バイアスフレームの安定性では、0℃と-30℃の平均カウント数が比較的にばらつい ていることから、-10℃~-20℃での観測が良いと思われる。 ・CCD は冷却温度が低いほど暗電流および読み出し雑音が低下、或いは安定した値を とる。本実験では冷却温度が下がるにつれて暗電流の値をとったが、読み出し雑音 の値は僅かに上昇値を示している。 ・暗電流のリニアリティーでは0℃が最も低い平均カウント数と直線性をとった。こ のとき0℃~-30℃において e-/sec/pix の値はあまり変わらなかった。 ・リニアリティーの測定では冷却温度0℃~-30℃のなかで-30℃が最もγ = 1 からのず れが大きかった。 この様な実験結果を踏まえると、-10℃~-20℃の冷却温度で測定することが良いと 思われる。この冷却温度領域であればダークフレーム、バイアスフレームの安定性 と、暗電流、リニアリティー、読み出し雑音が比較的安定する実験結果が得られてい る。6.議論
・リニアリティー及びゲイン、読み出し雑音の測定で取得するライトフレームとダー クフレームは、同じ実験内で光源からの光を照射しながらこの2 枚のフレームを交 互に撮像していき、CCD の精度を決定していくものであるが、今回はそのような実 験方法はとらなかった。暗電流の測定で取得したダークフレームとリニアリティー の測定で取得したライトフレームを用いることにし、ゲイン、読み出し雑音を求め ることにした。理論的には暗電流やライトフレームの各画素のカウント数はポアソ ン統計に従うことから、その時々の実験で違う値をとる。従って、ライトフレーム とダークフレームは同じ実験内(若しくは観測日時)で撮像することが良いことになる が、この撮像方法においてライトフレームとダークフレームでの残像ノイズなど考 慮しなければならない点が出てくるため、時間の都合上この様な実験方法をとっ た。 ・フラットフレームの取得については議論の余地がありそうである。今回の実験で自 作した積分球ではフラットフレームの取得までの精度はなかった。フラットフレー ムはCCD 受光領域の前面に均一光を照射させ、CCD カメラから出力された画像で 感度不均一性を調べたり、ライトフレームでの1 次処理に用いるためのフレームだ が、本実験で取得したフレームには接眼アダプタによる影で周辺減光が確認できた ためフラットフレームの取得は出来なかった。取得したフレームの陰影を入射角と 接眼アダプタの照射角度から光の強度を補正する方法でフラットフレームの取得を 考えることが可能である。CCD 受光面の全面に入射できるように積分球の検出部の 開口面と入射角が直角であるようにすることや、CCD 素子を取り出し積分球により[44] フラットフレームを取得する方法(この方法では冷却方法について議論が挙がってし まう)などでフラットフレームの取得を考えることができる。 ・自作積分球に取り付けたLED だが研究の都合上につき分光分布特性を把握してな い。CCD カメラの性能評価には自然白色光に近く分光分布特性がほぼ一定の分光分 布を示す光源が望ましい。しかし、一般的な白色LED の分光分布特性は Blue の波
長帯が極端に高く、Green や Red の波長成分が弱い。本研究で用いた LED もこの
分光分布特性を示している可能性が大いにあるため、高演色LED を用いて波長帯 と波形の細かなチューニングを施す必要が捨てきれない。このように性能評価を行 う上で光源をどの様に得ていくか、議論が必要である。 ・分光感度特性はCCD 校正装置(モノクロメータ)が必要になるが、性能評価として波 長帯での量子効率を知ることは測光等の研究的観測において極めて重要である。ま た本実験から取得したフレームからホットピクセルの位置、領域などを調べ、これ がどの様な特性を持っているかも評価していく上で大事な議論となってくる。 ・屋外での測定を行い屋内との測定と比べるなどCCD カメラの外気温・湿度の条件 を変化させ、どの様に測定値が変動するかを調べ、観測方法を考慮する必要があ る。同時に天体望遠鏡にCCD カメラを設置した状態でリニアリティーと感度ムラ の補正の精度を確立し、フラットフィールドの安定性を確かめなければならない。 以上のように性能評価をする上で議論や課題は多く残っている。本実験は12 月~1 月にかけて実施した結果、CCD カメラの冷却温度の下限が約-33℃に制限された。今 後、この研究を続けるならばCCD カメラのメンテナンスを行い、再測定を行いつつ -40℃程度に冷却した理想的な環境で再度実験を行いたい。
7.謝辞
本研究テーマを通して学ぶことが多く、実験に対する姿勢を考えることができたと 思っております。実験方法やデータ解析を行うにあたり、祖父江 義明様、小野寺 幸子 様、日比野 由美様には大変お世話になりました。また、自作積分球を作製するにあた り助言を下さった、鈴木 昇様や他研究室、同研究室の方々、事務関係者の方々にも感 謝したいと思います。[45]
8.付録
8.1.相関関係 散布図(相関図)を視覚的に表現した 2 つの変数の関連性を統計的な指標で表現する 場合に相関という概念を用いる。X と Y の 2 つの独立変数間の関連の程度を散布図(相 関図)で表現したとする。2 つの変数直線的な関連性を相関の概念に基づいて相関係数 を算出し、その関連の程度を数値によって表現する。相関係数には多くの定義があ り、最も用いられるのは積率相関係数である。X と Y の変数のデータを(𝑥1, 𝑦1), (𝑥2, 𝑦2), …, (𝑥𝑛, 𝑦𝑛)で与えた場合、変数 x と y の間の相関関係は𝑟
𝑥𝑦=
∑(𝑥1,𝑥)(𝑦1,𝑦) √∑(𝑥1,𝑥)2√∑(𝑦1,𝑦)2 …(9.1.1) ・正の相関がある(𝑟𝑥𝑦≦1)……一方が増加するとき、他方も増加する傾向にある ・負の相関がある(𝑟𝑥𝑦≧-1)……一方が増加するとき、他方も減尐する傾向にある ・相関がない(𝑟𝑥𝑦= 0)…………一方の増減が他方に全く関係がない この様な2 つの変数間における相関は回帰に依るものである。X の値から Y の値を 予測することをX の Y への回帰といい、その逆の関係も回帰ということができる。し かし必ずしも2 つの変数の間に因果関係があるということではなく、相関係数 (correlation)と因果関係(causality)は異なるものである。 8.2.回帰式 与えられたn 個のデータの組(𝑥1, 𝑦1), (𝑥2, 𝑦2), …, (𝑥𝑛, 𝑦𝑛)から直線の方程式を求める にあたり、最小二乗法を用いて求めた直線は 𝑦 − 𝑦 =𝑆𝑥𝑦 𝑆𝑥𝑥(𝑥 − 𝑥) …(8.2.1) と表せられる。この直線が回帰式あるいは回帰方程式(regression equation)であ り、直線の傾き𝑆𝑥𝑦⁄𝑆𝑥𝑥が回帰係数である。この相関係数γ は−1 ≦ 𝛾 ≦ 1の範囲で、γ = 0 が無相関、γ = 1, -1 なら完全に直線上に並ぶことを示す。 𝛾 = 共分散 𝑥の標準偏差 × 𝑦の標準偏差= ∑(𝑥𝑖− 𝑥)(𝑦𝑖− 𝑦) √∑(𝑥𝑖− 𝑥)2√∑(𝑦 𝑖− 𝑦)2=
𝑆𝑥𝑦 √𝑆𝑥𝑥𝑆𝑦𝑦 …(8.2.2) 回帰と相関の考え方にはつながりがあり、切片bとは𝑏 =
∑(𝑥𝑖−𝑥)(𝑦𝑖−𝑦) ∑(𝑥𝑖−𝑥)2 …(8.2.3) と表され、bとyの間には𝑏 = 𝛾
𝑆𝑦 𝑆𝑥 …(8.2.4) という関係がある。即ち、相関関係𝛾𝑥𝑦の表すxとyの関係の密接度は、直線関係のあ てはまりの良さという意味をもつ。[46] 8.3.ポアソン分布 8.3.1.ポアソン分布 ある単位時間にある事象が発生する平均回数をλとするとき、単位時間内にその事 象がr回起こる確率密度𝑃(𝑟)は、 𝑃(𝑟)=𝜆𝑟𝑒−𝜆 𝑟! ...(8.3.1) で与えられる。このような分布をポアソン分布という。ここで、λは同じ単位時間 内での事象の平均生起数である。この分布は時間に関してランダムに分布する現象に 適用できる。ポアソン分布が適用できるためには次の条件が満たさなければならな い。 ・事象は同時に2 回以上は起こりえない ・各事象は独立である ・与えられた時間または空間での事象の平均生起数は一定である 8.3.2.ポアソン分布の平均と分散 ポアソン分布の平均と分散は2 項分布の平均と分散の式で、n→∞、p→0、ただし np=λは一定のときの極限をとることで導かれる。2 項分布の平均は μ=np だから、ポ アソン分布では 𝜇 = 𝜆 …(8.3.2) 2 項分布の分散は𝜍2= 𝑛𝑝𝑞に対して、n→∞、p→0、のとき、q→1。よって、𝑛𝑝 = 𝜆、q=1とおけば 𝜍2= 𝜆 …(8.3.3) 平均と分散が等しいというこの性質はポアソン分布の重要な性質である。これは分 布が近似的にポアソン分布かどうかの簡易な判定を与える。
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9.参考文献
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