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過去の再現-『ヘンリー四世』第二部の場合

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(1)過去の再現-. 『ヘンリー四世」l第二部の場合. Tbeir. Memory. 水. Former. of. 落. Icbiro. Days. 朗*. MIZ口OCI‡Ⅰ. 『ヘンリー四世』第二部は,第一部とほ零囲気や音調において著しい変化があるため, 単純に第一部に連続しているとほいえない作品である.歴史劇としては,. -ソリー四世王. の治世の主要な政治事件をすでに第一部においてほぼ描ききってしまっているため,素材 にめばしいものがないという事情がこの変化をもたらしたということができようが,それ だけでは,この第二部の特徴を説明しつくすことはできない。フォールスタッフの創造と いう歴史劇の枠組みをはるかにはみだす喜劇要素をみごとに第一部において組み込んでみ せたシェイクスピアが,この喜劇的創造人物をどのように第二部においておさまりをつけ ようとしたのであろうか。第二部におけるフォ-ルスタッフの処遇こそ,作者の想像力と 平衡感覚との協力を必要とするものであった。第一幕第二場に小姓に剣と盾をもたせて登 場するフォールスタッフの姿こそ,作者の答えであるといえよう1)。場所ほロンドンの街 顔,昼間である。時間,場所,服装のいずれにおいても,第一部の彼の出没ぶりとは異質 な登場である。しかしなにより,彼の次の台詞に注目すべきであろう。 Men compounded. clay,. the. cause. that. wit. a. is. man,. tも・an l invent・. more. take. sorts. of all. or. is in. not. pride able. is invented other. to to on. at. gird. invent me;. men・. The. me.. anything I. am. not. brain that. only. of. intends vitty. in. (1.. this to. f。。Iisb・ laughter. myself, 2.. 5-9). 彼ほ・意識的に彼の役割について述べているとは断定できないかもしれないが,すくな くとも彼の健康について,衣服についてほ意識的である。金欠病についてなおさらである。. つまり,彼ほ第一部における非日常的虚構の世界からまるで浦島太郎のように現実の世界 に引きもどされていると考えてよい。ここでほ,金額にして一千ポソドなくてほ暮せない ばかりか,若いつもりのフォールスタッフの本当の年齢までが白昼の街頭でほはっきりと 他人の眼に写ってしまう。法院長の観察によれば, *. 英語教室(°ept.. of. En.glisb). but.

(2) 62. 水 Do. down. old. hand, Is. a. not. down. set. you. yellow your. slngle,. every. call yourself. a. part. Fie・. scroll. of age?. your. Have. short,. blasted. fie・ fie・ Sir. of you. a. not. are、written eye,. moist. leg'an. your. with. that. youtb・. decreaslng. a. wind you. about. young?. the. wbiteもeard,. broken,. voice. and. characters. cheek,. 朗. 一. in. name. your. all the. with. 落. increasing double,. chin. And. antiquity?. John!. (1.. belly?. your. will 2.. dry. a. wit. you. yet. 177-185). と老人特有の徴がすべてみえてしまっているoこうしてみると,彼ほ先きの引用の台詞を もじっていえば,みずから老人であるばかりか,他人にも老いを悟らせるきっかけを与え ることになる。事実,法院長が舞台を去るとすぐ,彼が老人病のひとつ痛風のため足の栂 指が痛み・歩行困難であること認めるのだoこれ以降,彼の登場のたびに,彼の老齢が話 題になり,また他人も彼らの年齢を意識することになるoたとえば,第二幕第四場におけ るドル・ティアシートとの次のような会話である。 Doll・ I'faith・ and. Fal・. thou. followedst. Bartholomew. boar・pig・. a-nights,. begin. and. Peace・. good. mine. end・. Doll・. do. to. him. when patch. not. speak. like. church・. Thou. whoreson. leave. fighting. a-days,. thou. wilt up. a. thine like. a. old. body. for. death・s-head,. little tidy foining. and. heaven? do. bid. not. (2.. me. remember. 4.. 226-232). まるで・彼の剣の力でピストルが居酒屋を出ていったかのように口ではいいながらも,そ の立ち回りをみていたドルには・彼の力強さよりも,むしろ老人の動作の滑稽さが目立っ てみえたのであり,フォールスタッフも自らの老齢を全面的に否定ほできない。ただ,考 えたくないだけであるo三十行先では,. 「いや,わしも齢じゃ,齢じゃて」とドルに告白. するはめになるoそして・この場面が終るところで居酒屋の女将クィクツリーは次のよう. に,彼らの交際の長さを明らかにしてフォールスタッフと別れをつげる。 Well, peascod-time・. fare. thee but. an. well・ honester. I. have and. known truer-hearted. thee. these man-well,. twenty-nine. fare. (2.. years,. thee 4.. come. well.. 379-381). この台詞を最後に二人は舞台の上で再び会うことはない。 たしかに,第一部においても彼ほ老人であった。しかし,その事実は表面にでてこない ばかりか,むしろ若い王子の遊び友達という役回りのため幾分割引かれていたというべき であろうo錯覚のため彼も若くみえたのであるo第二部は,若い王子の飲み友達というよ りも・老いた色ごのみの詐欺師の側面が前景化されているといってよい。時間が第一部と 違って,情け容赦もなく日常生活の次元でその経過を刻みつけており,誰もその手からま ぬがれることができないo彼も例外ではないoこうして,シェイクスピアは,第二部にお.

(3) 過去の再現-. 『ヘンリー四世』第二部の場合. 27. いて歴史劇という枠組みを確保することができたといえよう。フォールスタッフの処遇が 方向づけられると同時に,第二部の作品世界の基調も決定されたと考えられる。 「時をし て語らしめよ」がモットーである。現在という時間が,無色透明であることやめて,濃淡 の差はあれ,過去によって染めあげられていることが鮮明になってきたのである。現在が 過去をうちに含むというよりも過去が現在を含んでいるという意識がめばえてきていると いってもよいだろう2)0. ・過去が記憶という形で現在を支配しほじめている。おそらく,この作品世界ほど,登場 人物たちが過去を物語る頻度の高い作品世界ほ他にないであろう3)。第一幕第一場におけ るホットスパーの敗因を予測できたはずだと,その暴挙ともいうべき性質を語るノーサン バランドの従者モートンの回想から始って,第五幕第五場での新王-ソ.)-が,フォ-ル スタッフに向って「知らぬな,その方など」という台詞に終るまですべて,過去の出来事 を記憶で再現してみせている,あるいほ,記憶から抹消しようとする,諸々の試みである といってもよいであろう。この論文において,これらの試みをたどりながら,. 『-ソリ-. 四世』第二部の特質をいくぶんなりと明らかにしようと思う。. まず,フォ-ルスタッフの結婚詐欺まがいの生活から始めてみようL。彼ほ,金欠病の対 症療法として居酒屋の女将に借金しては「一週間ごとに女房にするって約束」してきた。 これがつもりつもって女将クイックリーだけでも百マルク,つまり66ポンド13シリング 4ペソスにも達してしまい,. 「我慢に我慢を重ねた上に,またしても一日延ばしてごまか. されてさ,とどのつまりはポイと,あんた,逃げられちまったんだもんねえ」という事態. を迎え,フォールスタッフを告訴し,逮描してもらおうとする。法院長にたしなめられて, 彼が借金の額をたずねると,彼女は次のように申し立てる。 Marry,. if thou. swear. to. the. round. wben. the. me. a. upon. by. table・ Prince. goodwife. and. make. Keech. the. good told was. poor. fire,. thy. head. swear. to. of. prawns,. thee. they. were. gone. downstairs・. people,. me. saying. for. lady. my. to. ill for desire that. ere. a. his. a. green me. long. to. mess. they. no. And more. a. to. didst. call. us. some,. me. madam?. Did. me. not. gossip. she. had. a. l. whereby not,. familiarity. so. to. wound,. call. thou. of. it?. telling eat. week,. singing-man. thy. and. at. chamber,. deny. thou. didst. Wheeson. washing. then. desire. should. to. vinegar,. wound? be. was. in. of. didst. in. Canst. wife,. wife. Dolphin. father. l. as. come. thou. whereby. upon. Thou. too.. money. my. liking. thy. borrow. ln. Wednesday. then,. me. butcher's in. Quickly?-coming dish. a. sea-coal. the. and. sitting. goblet,. didst. me,. thyself. man,. parceトgilt. broke. Windsor-thou marry. honest. an. wert. when. she. with. such. And. didst.

(4) 水. 28. thou to. kiss. not. thy. book. me,. oath,. and deny. bid. me. 落 fetch. it if thou. -. .顔 thee. thirty. canst.. I put. shillings?. (2.. 1.. thee. now. 83-101). 借金だけでなく結婚を口実に女将を思い通りに操ってきたフォールスタッフの生活が,こ の記憶を通して再現される。まるで映画のフラッシュバックを見ているかのように,その 場の情況が再現され,彼女の証言が真実であることが伝達されている。言い抜けようとす るフォ-ルスタッフを法院長が見逃がしはしないのも当然である.それ放ど彼女の証言は 見事であり, 「あの降撃退の水曜日」がいつのことであれ,彼女の記憶力の前では,彼も ー旦は引き過らずをえないo結婚の申込みと借金とが結びつき,しかも,約束の履行も借 金の返済もする気のない男,これがフォールスタッフの正体である。彼の年齢と同じよう に,彼の正体も露顕した4)0 しかしなから,過去の再現されることで彼がすぐ法院長の命令するようにその償いをた だちに実行するわけでほない。それどころか,再び同じ手口で十ポンドの借金をしてみせ るのである.フォールスタッフは,. 「まるでこれは天下御免,悪事の権利でも獲ているか. のごとき」言動をするところに,つまり過去に責任をとろうとしないところに,真骨頂を 示めす男である。. 女将クイックリーの記憶による証言が,一見何の役にも立たないようにみえながら,衣 面にはみえない形で,この証言はその効力を発揮しているといえよう。喜劇的場面では, たしかに,、. 7オ-ルスタッフがまだその面目一相当にうすよごれた面目であるにせよ, 面目を保っているけれども・こ.の日常生活での過去の再現ほ,ここだ桝ことどまるもので ないからである。やがて,グロスタシャーの治安判事シャロウの館においても,過去が再 現されるだろう.散文による日常生活における記憶による過去の物語ほ,韻文による政治 世界の過去の再現とも関連していることはいうまでもない。 その共通した特性ほ,いずれの登場人物も,過去を想起することなしに,また同じこと であるが,未来に期待を寄せることなしに,生きてはいけないという時間のなかに存在し ているということであろう.女将クイックリ-は知りあって二十九年というフォ-ルスタ ッフの正体を今さら知らなかったというほど世間知らずであるわけがない。にもかかわら ず,騎士の奥方になれるかもしれないという期待をいだいたとしても責めることほできな い。彼の詐欺師の手口を承知の上で,過去の約束の履行を告訴してまでせまる状況ほ,一 転して,謀叛を企てる貴族たちと一脈相通じていることに注目すべきであろう0 女将クイック1)-の記憶は正確であるといえるのは,法院長がさもありなんと思ったか. らだけではなく,それに続いてすく。フォールスタッフか彼女をまったく同じ手口でしかも 「工面はほかでする。いずれ馬鹿ア見るのアお前だろうからな」と脅し文句まで使って 「触れなば落ちんこれなる女'b」を利用してみせるからである。記憶は主観的なものであ り,必しも事実をありのまま記憶しているわけではない。欠落もあれば,補綴もある。圧 縮や抑制などもあるだろう。しかしながら,個人の過去の記憶なしに歴史物語ほ成立しな い。また同一登場人物でも,そのとき置かれた状況によって同じ出来事でも記憶に齢齢が.

(5) 過去の再碗-. 『ヘンリー四世』第二部の場合. 29. 生ずることさえある。女将クイックリ-の主観的な過去の再現は,彼女の記憶にあるかぎ りわ状況証拠をもって補強されているといえよう.. Ⅲ. 次に,ホットスパーの戦死によって未亡人となった′1-シー夫人の過去の再現を読んで みよう。様々な意味で,女将クイックリーの記憶と比較,対照できるからであるo. 'く-シ. ー夫人ほ,歴史的物語としての『-ソリ-四世』第二部に登場する必敵性はまったくない 点でほ,女将クイック1)-と同じであり,事実としての歴史においても彼女がこのような 発言,説得をしたかどうかわからない。その意味ではシェイクスピアの虚構であるという. 共通性を両者ともわかちあっている。夫-1). -の父ノ-サンバラソドが,謀叛に参加しな くてほ「面目の回復ができない」と出陣の決意を述べるのに対して,彼女は義父の「過ぎ. た過ち」を鋭く指摘し,. 「夫-リーのときは,ちっともお考えになりませんでしたのに,. こんな他人の場合ばかり,名誉だの面目だのと,しきりにやかましくおっしゃいますのは,. いわば亡き夫の霊までお辱しめになる」ようなものだから,出陣をとりやめるよう懇願す る。その際,彼女ほ夫-リーの在りし日を次のように回想するのである。 He Wherein He. the. bad. And. noble legs. no. For. the. Would To. that. that. of the. turn. their. like him・. seem. diet, in affections. In. military. He That 0. the. was. miracle. Second To ln. look. Did. humours. mark. and. to. none,. upon. nothing 、seem. others.. And. but. to. abuse,. did. abide the. in gait,. and. him-0. by. hideous to. blemish,. tardily. and. copy. glass,. unseconded the. his. blood,. of. of men!-him. disadvantage,・. Where. low. that in speech, of delight,. rules,. fasbion'd. gait;. made. perfection. So. In. his. not. valiant;. speak. own. glass themselves.. nature. wbicb. could. the. dress. practis'd. accents. those. did. youth. thick,. speaking. Became. indeed. was. god a. book, wondrous. bin. !. leave,. you you,. of. war. field of Hotspur's. sound. defensible:so、you. この理想化された騎士の肖像画は,. left bin.. name. (2.. 3.. 21-38). 『-ムレット』でオフィーリアが描いてみせることに.

(6) 水. 30. 落. 一. 朗. なる高貴な宮廷人の肖像と同じように,かってあったはずのものが今ほ失なわれてしまっ ているという喪失感と情念の感情にともなわれた修辞の結構を備えた定型とみることがで きる。それにもかかわらず,この肖像画がこの場面で精彩を放っているのは,過去が美し くみえるからばかりではなく,第一部におけるホットスパ-の言動を想起させる契機とな っているからである。第一部の世界にあって,すくなくとも中世的な騎士道の残映が照り 映えていたといえよう。パーシー夫人の視点からすれば,ノ-サンバランドが出陣すれば -. 「出陣をお止め申したのは,いったい誰方でございます?」と彼女ほ詰問する-す 「夫. べてほ違っていたほずであり,いまも「愛する夫の頚にすがって」おれたはずなのだ。 -リーの栄誉の光明ゆえにこそ,この国の若武者たちは,勇戦に奪い立った」にもかかわ らず,ノーサンバランドは,息子を孤立無援のまま,見殺しにしてしまったのであるから, 今さら名誉だ面目だというのは笑止千万というべきなのである.義父の仮病こそ彼女にと って騎士道の終蔦をもたらしたものであり,もはや騎士の面目など一顧の価値もないので. ある。第一部と第二部とは,こうしてまったく様相を異にする世界である-すくなくと も彼女にとってそうである。. パーツ一夫人の過去の再現がもたらした反響は,騎士道の終蔦を告げるだ桝ことどまら ない。その反響は作品のいたるところに聞きとることができる。直接には,ノーサンバラ ンドが,理由をはっきりせぬままに「形勢観望」をきめこみ,スコットランドに逃げ込んで しまう。そして,イングランドの政治舞台から姿を消してしまうことになる。また,再度 企図された謀叛軍にとって欠くことのできない援軍であったはずのノーサンバランドの手 勢が参加しないことで,失敗してしまうことになるだろう。しかし,直接的な影響よりも むしろ作品世界の雰囲気に与える効果がより大きいというべきであろう。 ひとつには,舞台での展開からみれば,すでに論じた女将クイックリーの騎士フォ-ル スタッフに対する告訴と呼応していることが指摘できよう。フォールスタッフほシュルズ べ.)の戦聞において,武勲があったという評判,あるいは噂を前提にして第二部に再登場 しているのであるが,パーシー夫人の記憶によって再現される騎士像と,女将クイックリ ーが描き出す騎士像とは,名前において一致するだけであってまったく異質の存在である ことを物語っている。単に,散文と韻文,あるいほ,伝統的な修辞と写実的な現実主義と の差異を越えて,決定的な差異が乗り越えがたくそこにあることを感じさせるものである。. それは,パーシー夫人の個人的な主観とは違った次元において,騎士道の終蔦を傍証して いるというべきであろう。このことは,同時に,第一部と第二部に対する作者シェイクス ピアの態度の違いということまでも説明できるものである。前者において,王位につく資 格ほ,すくなくとも騎士道によって了解されうる器量の争いでの勝利者が,獲ちとるもの という前提が暗黙のうちにあったといえるのに対して,後者において,この暗黙の前提が 消失してしまっていると考えられるのである5)0 第二の反響としては,その修辞的性格においても共通するところのあるモウプレーによ る回想との結びつきが指摘できよう。舞台での時間的距離は隔っているけれども騎士道と ほどのようなものであるかという点において,両者は呼応しているばかりか,舞台での現.

(7) 過去の再現-. 『へン7)一四世』第二部の場合. 31. 在がどのようにして形成されたかを暗示し,あるいほ想起させる点でも,共通性をもって いるoウェスモランドに「それに,とりわけ君の場合だが,どう見ても,陛下に対して,. 怨みを含むような理由はないわけだし,また現在の事情に関しても,事情は同様のはず だ」と指摘されて,彼は次のように答えるo彼自身が目撃した出来事とは時間的に考えら れないが,. 彼の父と現在の-ソリー王との決闘についてそれが歴史上の決定的瞬間であっ. たと語る。. And. then. Henry. that. Bolingbroke. Being. mounted. and. Tbeir. neighing. coursers. Tbeir. armed. Their. eyes. And. My. then,. from. did. life bung. own. Tben. threw. Tbat. by. Have. since. he. was. dovn. the. by. and. miscarried. steel,. together, could. his warder be. staff. himself. indictment. of. have. stay,d. of Bolingbroke,. throw. upon. down,. sights. nothing. breast. the. King. the. when. His. of the spur, in cbarge'tbeir beavers. there. when. seats,. daring. staves. father. 0・. in their. roused. of fire sparkling through loud trumpet blowlng them. the. Then,. both. he,. and. threw;. all their. and dint. down,. lives. of sword. Bolinghroke.. under. (4. 1. 117-129) 正義がいずれにあるか王の御前で執行される貴族の一命を賭した決闘,そのきらびやかな 騎士道の世界が一瞬ここに再現され,リチャード王がもしあのとき中止を命じなかったな らばという歴史におけるもしを考えてみる気持に誘う台詞である。パーシー夫人の場合は, 夫を戦場で失った無念の想いであったのと同じように,ノ-フォク公爵モウプレ-がもし あのとき一騎打に勝利をおさめていたならば,. -ソリー四世の御代などなかったはずなの にという情念がこめられているoしかし,歴史をもとに戻すことができるはずがない。ウ ェスモウランドが,モウプレ-の過去の再現をあっさり否定して6', を知らないようだ」とたしなめていう。 The ln. Earl. of. England. the. Who. knows. But. if your. He. Cried. all the bate. ford. most. valiant. whom father had borne. it. country, upon. reputed. was. on. had. ne'er. For. Here. him;. in. gentleman.. Fortune been out a. and. then. then. would. have. smil・d?. there,. victor. of Coventry; general. voice,. all their. prayers. and. love. 「君はなんにも事情.

(8) 水. 32. Were And But. Here. on. set. ford,. bless'd, and this is. indeed. digression. 朗. 一. doted. they. whom. grac'd,. mere. 落. on,. than. more. from. my. King・. the. purpose・. (4.. 1.. 131-140). モウプレーにとって一家の面目がかかっている過去の出来事,それも歴史の流れをまった く変えてしまったかも知れない出来事は,客観的にみれば,ありえない空想にしかすぎな いことになるのであろうか。謀叛に加担する者にほそうは思えない。主観的な記憶の世界 では,王はリチャードでありつづける。. パーシ-夫人の記憶における夫-リーの肖像も客観的にみればありのままの姿でないこ とはいうまでもあるまい.反響の第三にあげられるのがこれと関連しているo. ノ-サンバ. ランドはウェスモランドのように,事実関係を説明し嫁に納得のいく了解を得ようとほし なかったが,他の看たちがホットス′く一に言及するとき浮び上ってくる肖像は,彼女のそ れとは異なっている。これについては,次に述べることにしよう。. Ⅳ. 謀数を企図する看たちにとって最大の関心が集るのは,なぜ前回シールズべ1)で敗北し たか,その敗因をつきとめ,今度の決起において過去の教訓として生かすことである。こ れ捻ど歴史教材として適切なものほ他にみつからない. ホットスパーの戦死が動かしがたい事実であることを知ったノーサンバランドが興奮し て長口舌をふるうのに対して,従者モ-トンほ冷静になるようすすめた上で,今回の敗北 ほ予想されたとうりであって,なにも意想外でないと次のように敗北を語る。 You. cast. And. sumln'd. 'Let. knew. More. Of. walk'd. wounds. and. Or. say. More. fortb';. action.. bath. than. `Go. to. that. this bold being. What. said. o'er・. was. capable. that. his. forward. splrlt. of danger. trade. none. and. bath. rang'd・. this,. of. restrain. could. was. Ldrop・. edge,. an. get. enterprlSe. which. might. on. perils,. most. you. presurmise. your. and. before. son. apprehended,. stiff-borne what. your. was. his flesh. where. Thoughstrongly The. chance,. o'er. scars,. lift bin you. of. fall in than. to. advis'd. did. noble. of blows. were. Would Yet. be. likely. You. dole. It. lord,. my. war,. account. head'.. in the. You. of. the. make. us. That. tb'event. befall'n,. then brought like. to. forth, be?.

(9) 『へン]). 過去の再現-. 33. -四世』第二部の場合. (1.. 1.. 166-179). このモ-トンの台詞に二回引用されているノーサンバランドの言葉に注目しよう。父親が 息子の性格をすべて承知の上で,暴挙といってもよい,バードルフが続いていうように 「機会ほ十に-である」ような戦場に送り出したことを強調しているといえよう。そして, ホットスパ-の「行く手の危険が大なれば大なるほど,いよいよ逸って駈け出す」性格が 敗因であることを暗示している。親子ともに責任がある。パ-シー夫人の修辞では話し方 についての欠点はあげられていても,この猪突盲進というべき性格は言及されていない。. しかし,敗因は単に指揮者の猪突盲進のためばかりでない。 皮肉にも,パーシー夫人が義父にすすめる「形勢観望」の態度-. 「そして,もしあの人. たちが,王方に対して優位に立つようなことにでもなりますれば,そのときこそは,起っ. て合流なさるがようございます.さしあたりほあの人たちだけで戦わせてごらんになるこ とです」一課叛に参加すると約束した貴族の多くがこの態度をきめこんだから壊滅した のだo彼女がこのようにあからさ割こ表現できるのも彼女が戦場におもむく騎士でなく女 性であるからいえることであろう.ノーサンバランド自身,息子に対してとった態度がそ. うであったと彼女は断定しており,口上役の「流言」も「仮病でお引き寵り」と曝さして いるところである。. 敗因はもうひとつあげられている。謀坂の大義名分が参加する者によって宗全に了解さ れていないはど瞬昧であった。. 「味方の戦意ほもともと,若殿一人の勇気で鍛えられてい. たようなもの」であって,無理強いに参加したものが多かったのだとモートンほいう。謀. 叛という言葉がまずかったとこう述べる。 For. that. The. action. And. they. As. This. of. drink on. word fish. are. `rebellion'did. word. did. men. Seem'd. As. same. our. their. bodies. fight. with. potions, side;but,. `rebellion'-it in. a. from. divide their. queasiness, that. their. for. their. had. souls,. constrain'd, weapons. only. sp】rlts. froze. them. (1.. pond・. souls,. and up,. 1.. 194-200). いままでの敗因の追及ほ,ノーサンバランド家でのうちうちのものにすぎない。再挙は. 言及されているものの,すでに先きまわりして,パーシ-夫人の説得を紹介したのでこの 一家は参加しないことになるためもあって,ホットスパ-に対する非難もそれはど手厳し いものでないo第一幕第三場でほ,バードルフが次のようにシュルズベリの敗因を分析す る。. It. was,. Eating. my. the. lord;who air and. lin'd himself promise. of. with. supply,. hope,.

(10) 落. 水. 34. himself. Flatt'ring Mucb And proper And. smaller so,. with to. in project. than. the. great. imaglnation. madmen,. winking. leap'd. led into. a. of. smallest. his. 朗. 一. power. of his. to. powers. tbougbts,. death,. destruction・. (1.. 3.. 27-33). バIドルフは全面的にホットスパ-の責任であるようにいうが,一方で彼の強調したいこ とは,. 「当てにもならない援軍-の期待,臆測・空頼み」をしてはならぬという点であるo. 彼は邸宅の建設を例にあげて慎重に情勢を見究わめる必要を説くoそれにもかかわらず, 彼らの軍議は綿密な計画と慎重な情勢分析による決断であるという印象よりも,. 「期待と. 予想」にすぎない論議に終始しているといって過言ではないo. ヨIク大司教の大義名分ほ故意にこの場面で省略されていると考えられるが,彼が非難 する愚民の移り気について述べるところから推測すると,まるで大義名分など存在せず, 「およそ大衆の心情などを基 謀叛の首謀者たちが愚民そのものであるように聞えてくるo 礎にして家を建てる人間ほど,危い不安な住居におびえなければならぬものはないはず」 といいながら,彼こそ当の家を建てようとする人間であることに気付いていないoシュル ズベリでも暖昧であった名分は一層瞬昧さを増しているo. 最後に指導者の能力が残されるが,もはやホットス/i-のような個性的な魅力にあふれ た人物は誰もみあたらない。ヨーク大司教が大将らしいのだがそれすら明確でないo彼の 器量のほどは第四幕で試めされることになろうo こうして,すべての点においてシュルズベリでの経験ほ想起されるものの・何ひとつ教. 訓を残すことなく,いや学ばれることなく・単なる過去の出来事にすぎないものとなって -ソリー四世王の宮廷でも・シュルズベリ. しまう。またこれと符牒を合せたかのように,. が想起されることさえないという事実も付記しておくべきだろうo法院長がフォールスタ ッフに瞬昧にこの戦闘での武勲について言及する以外誰も口にしないのだoともあれ,第 一部のハイライトであったシュルズべ.)の戦闘も,時間的にも,Eh理的にも遠くに隔てられ てしまっているということを確認してお桝ま充分であるoその意味でも・パ←シ-一夫人の 記憶は尊重されなければならないo Ⅴ. 過去を記憶を通して再現する場面をいくつかとりあげて考察してきたが・皮肉なことに・ ′く-シ-夫人の 過去の再鄭こよって現状なりあるいは未来-の展望が開けたという例は・ 場合があるだけである。しかも,この場合は,謀坂側にとって手痛い打撃となったのであ る。女将クイックリーの例でいえば,告訴をあくまで諦めないのがよかったということに なろう.彼女の衣装を質に入れて用立てた十ポソドは返る見込みがないばかりか,風紀取 締りの対象にされてもフォ-}レスタッフの力ではどうともすることができなくなるだろうo.

(11) 過去の再現-. 『ヘンリー四世』第二部の場合. 謀叛を起す着たちも,失敗してしまうであろうoこうして,過去に経験したことがらが, すべて見込み違いの結果に導かれてしまう。. しかし,以上ですべてがつきるのではなく,むしろこの作品世界の過去の記憶による再 環ほ,すでにみてきた諸例とさまざまな回路を通して結びついているより大きな意味を持 つ場面-とつながっているのであるoその場面とは,第四幕第五場における-ソリー親子 の対面の場であり・それに付随するともいえる第五幕第二場における-ンリ-五世王ぼ 院長の対面する場である。 この二つの場面ほ,もうひとつの場面,. -ソリー王が初めて登場する第三幕第一場と関 連しているので,まずこの場面から考えてみることにしよう。 第一部と違って療題主人公である-ソl)一四世王が登場するのほ,この場面と第四幕の 二つの場面にしかすぎないo第二部においてほ,彼の宮廷ははとんどその機能を果してい ないようにさえみえるoウェールズ遠征-の言及があってもその戦果ほ語られず,同行し. た皇太子についても何も知らされていないoところが,ノーサンバランドがスコットラン ドで「形勢観望」することに決意したあとをうけて,間に居酒屋ボアズ-ッドでの王子ルの登場をはさんで・夜も安穏に眠れない王が登場するo. 「王冠を戴く頭に,平安はつい. にないのか」と不眠を訴-ながら,新しく謀叛の報せで対策に腐心している様子がよみと. れる。しかし,夜中の一時過ぎに二人の貴族を呼びだしながら,相談することもなく過去 の回想が始まるo前半ほ,一般論ともいうべき部分であるが,ここに彼の現在の'Ch墳がに じみでているo力で王冠を入手したというよりも,主観的には事のなりゆきで玉座につい. たと考えたい彼にとってほ,即位後の政情不穏の連続をどう理解してよいのか途惑って いる有様がまず述べられ,つづいて具体的にノーサンバランドとの関係を次のように語 る。. 'Tis Since Did. ten. not. Richard feast they. This. Per°y. And. laid. Yea,. for. You, When Then Did. Northumberland,. and. at. my. sake,. cbeck'd. But. these. 'Northumberland,. eight. the. which I may. as. rated words, thou. by. after years. my. soul;. my. foot;. eyes. of. since,. Richard. of you. by-. was. remember-. his eye. with and. years. nearest. to. friends. great. life under. even. Nevil,. Richard,. man. and. defiance.. cousin. two. It is but. the. was. in. and. wars・. his love. him. speak. gone,. together,. Were. Gave. years. brimful. of. tears,. Nortbumberland,. now. ladder. prov'd by. a. the. prophecy? which. 35.

(12) 水. 36. My. Bolingbroke. cousin. 落. tbrone'. my. ascends. 朗. 一. (3.. 57-71). 1.. わずか十年にみたない期間に,二人の関係は二転三転したのである。彼にとっては,それ が「人生不定の盃に注がれる色とりどりの転変の酒」とみえたとしても無理からぬことで 「いかに幸福な若者といえども・思わ ある。このような事態が予知予見できるとしたら, ず運命の書を閉じて,むしろ死を選ぶ」かもしれないだろうが,人間にはこのような運命 1)チャ-ド王がノ-サソ. の暑が与えられていないのだ。それにつけても,不思議なのほ,. バラソドの裏切りを予言したことであるoそのリチャードの言葉をそのままいまでも記憶 「ノ-サンバラソド卿,そなたはただ従弟ボ1)ソブルックを,王位に しているのであるo 登らせる階子の役を勤めているはすぎないのだ。だがこの悪行ほ必ず化膿して,膿を噴き 出す日がくるに決っているoきっとくる」とリチャードは予言していたと想い出すo この回想に対して,ウォリックほ次のように答える。 There. is. a. Figurlng Tbe. As And such. the. wbicb. with. a. yet. history nature. weak things. aim, come. of to. beginnlngS become. all. a. man. the. lives. men's. the. of. observ'd,. near. not. ln. deceas'd;. times may. main. prophesy, Of. cllanCe. in their life, who lie intreasnred・ the. hatch. and. things. seeds. brood. (3. 彼はヘンリー王のように「運命の書」のかわりに,. of time; 1.. 80-86). 「過去の姿をそのまま写し出している. 歴史」をとりあげて説明するo歴史を学ぶことによって事態の推移も予言が可能であり・ 個々の人間についても同じことがいえ,種子のようなものでも「時という親鶏が温めて,. やがて樹ヒして見せる」という「必然の理法」があるのだと説明するoリチャード王の予 言も,この「必然の理法」にのっとってされたものであり・彼が神秘的な超能力をもって いたからではないと,. -ソ.)-王の沈欝な回想をおしとどめようと試みるoウオ1)ックの 説明するように,萌芽する前から種子の段階でその後の成育を予測できるのは・歴史の効 用であろうoしかし,彼がこの比愉を-ソ1)-王その人に適用したら・事態ほ一層よく理 解され, -ソ.)-王の当惑も解消できたかもしれないだろうoつまり,この王国の「おそ るべき病状」の原因が,力を顧んで正統な王リチャードを-ソリーが廃位させたことにあ り,謀叛が頻発するのも彼の示した例にならっているにすぎない・という理解が得られた はずである。やがて-ソリー王自身がこの「必然の理法」に思いが至る時がくるo ウォリックの配慮から, -ソリー王ほ過去の記憶を中断することができたoすぐに現実 の諸問題を必然という便利な言葉-ウオ1)ックとはやや異った意味にすりかえているけ れども-で解釈すると,いままでの悲劇的な様子から一転して・内乱の鎮定に自信がも て,更にほ聖地-の遠征の願望までもらすのであるo.

(13) 過去の再現-. 『ヘンリー四世』第二部の場合. この場面における-ソl)-王の回想ほ,. 37. 『リチャードニ世』の重要な一場面をそのまま. 再現したともいえる性質をもち,その点では・すでに言及したモウプレ-の決闘について の記憶と類以のものであるoただ,前者がその場面の主人公であったのの対して,後者ほ おそらくはモウプレー家の神話の再現であるという違いが認めらるoいわば,. -ソリー王. の人生の歴史物語の出発点,萌芽期を回想することにより,その物語の終末を予言する機 能を果していると考えられよう。そして,その予言ほ,イエルサレムの間において,思い がけない形で的中するのである。. Ⅵ. 第三幕第一場ほ,重苦しい回想の場面であり,この作品世界の転回点といってよい内容 を持つばかりか,過去の出来事をいかに現在において理解解釈すべきかという課題を内包 している点で意義深いものであるo歴史劇内部で歴史とほ何であるのかを問いかけている ともいえるからであるo結論として何か答えがでてくるというわけではない。その点でい. えば,必然という硬昧でほあるがここちのよい言葉で,深く考えることを中断させたにす ぎないoだが,. -ソリ-王の「時の有為転変」を知りたいという願望こそ,彼を主人公と する劇が善かれ,上演されかつ読まれる所以である。そして,. -ソリー王自身その間いか. 桝こ何とか答えをみつけようと努力する姿が舞台で演ぜられることになるのである。それ が第四幕である。 ヘンリー王にとって生涯つきまとって離れない不安ほ,ひとつにほ,謀叛による政情不 穏であり,ふたつ糾ま・後継者についてであったo前者については,死を目前にした病床 において・すべてが鎮定されたという報告を聞くことで安堵できたが,皇太子-ルに対す. る不安ほ解消されていないo彼の不安ほ「死後まで永く跡」をひきそうなはどであり,死 後の「無秩序の世界・腐敗の時代がほっきりとこの眼のうちに浮かぶ」ほど深刻である。 彼ほ息子の美点がまったくみえないというのではないoそれにもかかわらず,王位纂奪看 である彼にほ誰もが立派であると認める後継者でなければ彼のこれまでの血のにじむ思い で維持してきた王冠がたちまち他人に渡ってしまうことを知っているため,それだけ不安. が昂じてくるoこのような不安は仮に後継者としてすぐれた皇太子がいても解消する性質 のものでない。 ウォリックがふたたび王の心痛を和らげようと次のように述べても役立たない。. My. The Like 'Tis Be Your. lord・. gracious Prince a. but. strange. needful look'd. studies tongue・. that upon. Highness. look. you. the and. knows,. beyond. him. quite.. his companions. to wherein・ immodest most. learnt; comes. to. no. language,. w.rd once. which. the. gain. attain,d,. further. use.

(14) 水. 38. But. be. to. known. Prince. Cast. off. By. as. a. or. pattern. his Grace. wbicb. Turnlng. must to. evils. past. terms,. time,. of memory. live. measure. a. 朗. 一. like gross. So,. bated.. and. will, in the perfectness his followers, and their. The. sball. 落. lives. the. mete. of. other,. (3・. advantages・. 1・. 67-78). ウォリックが外国語の学習を例に説くところを,歴史の研究と置きかえてみれば,そのま 普,第三幕第一場の彼の台詞と呼応するはずである.記憶は基準として役立つ。これが, この作品世界におけるさまざまな記憶による過去の再現場面を再度想起させる契機となる 言葉である。ウォリックの考えは,残念ながら,希望的観測にしかすぎないといわざるを 「いや,腐肉に巣を営む蜂どもが,まさかそれを見棄てようとは」考えら. えないだろう。. れないからだ。しかし,それにもかかわらず,. -ソリ←王ほ秘かに記憶ほ基準として役立. つことを信じたいのである。 いつ登場するかと待ち望まれていた皇太子-ルが登場するのほ,王が意識を失ってほと どん死んだと思われる時になってからである。 へソl)-王が意識を回復したとき, る。. -ルほ事実死んでいると思ったのであり,. 「二度とお言葉を伺えようとは」思わなかったのであ. -ムレットの父の亡霊と同じように,煉獄から彼の過去を伝えようと戻ってきたかの. ように,彼ほ過去の記憶を正直に再現しようとする7)。第三幕第一場での「王位の方でお のずと頭を垂れてきたような形,わしとしても,玉に接吻せざるをえないことになったの だ」という回想を撤回するかのように告白する。 God, By. by-paths. l. what. this. met. How To. crown,. it shall. thee. Better For. all the. But And My. as. l bad. For. to. supposed. all my. with relgn. qulet,. to. me. boist'rous. with. hand,. llpbraid. assistances,. quarrel All. peril I have been. bloodshed,. to. and. peace.. bath. goes. in. seem'd. snatch'd. their. seest. It. earth.. grew. better. achievement. of it by daily. well. bead.. my. confirmation,. living. Wounding Thou. the. ways. know. with. son,. my. crook'd. upon. many. gain. Which. l myself. the. soil of. honour. an. and. better. into. me. indirect. descend. opinion,. With. and. it sat. troublesome. knows,. bold. these answered;. but. as. a. scene. fears.

(15) 『ヘンリー四世』第二部の場合. 過去の再現Acting. that. (4.. argument・. 5.. 183-198). 玉にある間決して口にしなかったであろう回想である。ノーサンバランドの裏切りについ てもその理由がはっきりしていたのである,. 「あえて危険を賭してまで,ことごとく処. 分」せざるをえなかったのである.彼の治世が「あげてこれが主題の一幕」といってもよ いとの彼の認識は,今だからかそ得られるものであって,途中でほ無理であった。芝居が 終ってはじめて認めることができることである。こうして,一度ほウォリックの記憶の効 用を悲観的に考えた-ソリー王も,彼の過去の経験を是非息子に伝えておきたいと思う。 「正統の遺産として,この王冠を受けるのだ。もっとも,まだ安心、はならぬ」と次のよう に忠告する。. Yet. though. Thou And. art. but. their. be. To Lest Too Be. lead. May. teeth. l. to. many. lying. and. near. unto. it thy. course. to. busy. the. must. to. Holy. friends,. out;. giddy. now. Land, them. make. look Harry,. my. minds. action. the. fear. a. avoid,. Therefore,. of. thy. ta'en. lodge. purpose. that. green;. make. newly. do,. could. are. griefs. might. still might. quarrels, memory. a. the. state・. my. forelgn waste. had. l. than. first advanc'd,. was. l. off, and. out. rest. With. and. stings. well displac'd;which. again them. cut. since thou. power. whose. sure. which. fell working. by. To. enough,. friends,. whose. And. I. not. more. stand'st. firm. my. all. Have By. thou. hence. former. borne. out. days.. (4.. 5.. 202-215). そして,その結びに過去の記憶を臣下の看たちから忘れさせることだといい終ったとき,. 彼はもはや神に祈る時間しか与えられていない。なんという皮肉なことであろう。記憶は 両双のつるぎであったのであるo支持者はいつ敵になるかも知れないのだからその記憶を まぎらわせてしまうのが最善であると,過去の記憶をもとにしていわなければならない。 この道説的な状況は,彼自身がもたらしたものであるとして,彼の告白には悲劇的な響き があり,彼の苦悩がそのまま息子の将来を按ずる気持と一体になって伝わってくるのであ るoそして,観客の脳裡において,第一幕第一場における息子を戦死させたノーサンバラ ンドの激情を重ね合せて想い描がかせるのである。親と息子の対面の場はこうして終りを 告げるが,. -ソリー王の支持者についての悲観的な判断,それほ経験によって裏打ちされ. た判断であるが,それと,ヨーク大司教の次の台詞と比較してみると,一層彼のおかれた 立場が明らかになるだろう。. 39.

(16) 水. 40. be. For. bath. found,. two. greater. Revives. therefore. And. keep. That. may. repeat. new. He. cannot. As. bis皿isdoubts foes. That. to. doth. fasten. un. his friends. with enemy. an. unfi又 so. knows. be. occasion・. enrooted. plucking. clean,. this land. weed. present. so. are. full well. For. precisely. tables. :. his loss. history. remembrance. so. his. death. his memory. to. and. by. of life. heirs. wlpe. tell-tale. no. T。. He. in the. 朗. -一. doubt. one. end. will be. And. His. to. 落. and. a. shake. friend・. (4.. 199-209). 1.. 両者を合せてみると,まるで悪夢のような世界であるといってよいだろうoノーサンバラ -ソ1) -王も彼の治世を舞 ンドも「この血塗れ芝居」と王との争いを舞台にたとえたが, 台にたとえてみせたo言葉をかえていえば,舞台は夢なのであり,この場合,悪夢なので ぁる。比愉的にいえば,. -ソ1). -王は過去の記憶を記録した「帳面を思い切って払拭」し. たといえる。なぜなら,皇太子-ルにすべてを語ってきかせたからであるoしかし,いか. に敵と味方が「お互い根を絡ませあった雑草」で根絶しすることが不可能であっても, 「っいこの最近に,針や牙を抜かれたばかり」の味方を全面的に倍額できるはずがないo 信概してはならないと忠告するのは-ソリー王であるoその点からみると,叛乱軍のなか ではモウプレーが唯ひとり醒めた目で状況を見ているo yea,. but. That. slight. shall. to. That. That And. even. good. be. taste. this action;. of. royal winnow・d. with. our. corn. from. bad. shall find. cause, reason,. wanton. and. faiths. our. were. shall. and. King. the. such. false-derived. idle, nice,. every. be. shall. valuation. every. yea,. we. our. in. martyrs. seem no. a. rough. so. as. love,. light. wind as. chaH. partition・. (4.. 1.. 189-196). このような疑心暗鬼の根元にあるのほ,王位塞奪者に特有の不安,支持者による廃位の不 安である。この不安が,清疑,Lhと流言とが合流して・モウプレーの指摘するように「籾殻 も実も,てきめん,えらぶことなく,善意ともに」吹き散らしてしまう嵐となっているか らである。. へソリー王ほ,最後にもうひとつの予言を想起し,その予言のとうりにイエルサレムの 間において息をひきとる。.

(17) 『ヘンリー四世』第二部の場合. 過去の再現-. 41. Ⅶ. -ソリー王のもうひとつの不安であった後継者-ルについても和解がなったとほいえ, 他の貴族たちほ,王弟たちも含めてだが,不安ほ解消されていない。皇太子をできるかぎ り好意的にみようとしてきたウォリックでさえ,その不安はかくせない。この不安を一身 に集めて代表しているのが,法院長である。彼は,正義,真実,廉常などを代表している ばかりでなく,新王-ソリー五世が放とうとする「はみをはずされた狂犬」が噛みつく無 事の民の代表でもある。ここで,ふたたび記憶の劇が演ぜられることになる。 新王はどこかよそよそしい法院長にいう。. How So. a. indignltleS. you. laid upon. and. roubly. rate,. rebuke,. Tb'immediate May. hopes. Of. great. Wbat!. my. prince. might. this be. great. heir. of England?. wash'd. in Letbe. forget. me? to. send Was. prlSOn. this easy? forgotten?. and. (5.. 2.. 68-72). これに対して,法院長は君主論の一節を朗読するかのように,また,イングランドにお ける君主と法の関係を講塞で語々と解き明すように答える。 これを額きながら聞いていた-ンリ←五世王ほ,臣下の者の予想を裏切って法院長を現. 職にとどめるばかりか,父親代りになってもらいたいと申しでる。そしてその際に,彼の 父の言葉を引用する。. So. shall l live. `Happy That And That lnto. dares less. would the. do. deliver. hands. have. justice happy,. of. faftler's words:. my. speak. I, that. am. not. to. a on. man. my. his. son;. proper. having up. bold. so. such greatness. justice.'. a. son so. (5.. 2.. 107-112). 彼はこの一節を自分の息子にいえる暗がきたらそのままいいたいという。幾分,役者が台 詞の練習をしているような感じが残る。ひとつにほ,この引用は,法院長の台詞にあって も不思議ほないのであり,この一節は君主論のなかに象験されるにふさわしいものである からだo. また,. 「-l)-のあとを-l)-が継ぐ」のだから安'Chせよという新王へソ1)-五. 世ほ,この引用をすることでそれを実証してみせたのだとも考えられる。すでに触れたよ. うに,第四幕第五場での二人の-1). -は,一方が他方の記憶を引継ぐことで,一体化して いく過程を描いたものであるから,その意味からも,これほその一体化が完了したことの.

(18) 水. 42. 落. 朗. 一. 証拠でもある。いずれにせよ,この殴打事件は,舞台で上演されれば大向こうをわきたた せるものであるのに,あえて言及にのみとどめておいたのは,シェイクスピアがこの場面 で効果的に利用したかったからに違いないのである8)。記憶ほ君主を賢明にする。それが. この法院長との記憶の劇の主題であろう。 Ⅷ. しかしながら,現実ほ机上で学者たちが君主論を書く場合と違って,記憶の効用もおの ずから異った様相を示めすものである。あるいは,もうひとりの君主論の著者を想い出す ことが大切かも知れない。マキアヴェルリほ,君主の演技性を見抜いていたのだから,シ ェイクスピアは彼の忠実な弟子であるともいえよう.記憶を否定することについてすでに ウォリックが説明し,予言していたことであった。いまそのことが舞台で演じられようと しているのだ。記憶にないということは,記憶が消えたことではなく,演技をすることで 「王. ある。したがって,法院長とのまったく予期されていなかった結果に終る対話劇も, 権という豪勢な新装」を身にまとった新王の宮廷人を観客にした高踏的な演技であったと すれば,今度は別に,民衆を観客にした大衆向けの演技が要求されるのも当然である。そ 「記憶の手帳からくだらぬことは一切消. れが,フォールスタッフ追放劇である。主題ほ, してしまう」ということになろう。. フォールスタッフに向って「知らぬな,その方など」と-ソリ-五世王がいうとき,彼. が決して忘れていたわけでないことほ,それに続く台詞から明らかだ。しかし単なる「体 裁」でないことも,すでに宮廷人は知っており,知らないのはフォールスタッフとその仲 間および民衆である。この追放劇は民衆を観客にしていることを忘れてはならない。彼ら. にこの場面を記憶してもらわねばならない。奇蹟的な放蕩息子の改俊の姿を演技する-ソ リー五世王を偽善者であると考え必要はない。王とは演技する人のことである。 フォ-ルスタッフのグロスタシャ-での言動について触れなかったが,それらのすべて. は,この結末にいたる作者の側の準備であるといってもよいだろう.それら自体の楽しさ, あるいほ主題との結びつきは,いうまでもないほどで,無視できるものではないが,ここ では割愛することにしたい。ヘンリー王が「そちごとき男の夢を見ていたような気がする」. というように,観客もフォールスタッフという稀代の喜劇的創造人物の傍若無人の振舞い に拍手をしながら,これは夢なのだと了解していたにちがいないのである。また逆にいえ ば,夢であればこそその記憶は一層鮮明でいつまでも消えることがないのだ。. 本論での引用は,. A.. Humphnreys:King. R.. 訳文は中野好夫『-ソリー四世 (I). T.m. F.. Driver. :. The. Ⅳ. Part. Ⅱ. (1666)によっており,. 第二部』 (1970,岩波文庫)から借用させてもらった。 John. 1フォ-ルスタッフの変化について, (1943) pp.91-93が面白い。 2. Henry. Sense. of. Hl'story. Dover. in Greek. Wilson:The. and. Fortunes. ShakesPearean. of. Falsiaj:i. Drama. (1960).

(19) 過去の再現-. 『へン7). 43. -四世』第二部の場合. p・157 3. (Ⅱ). 4. (Ⅲ). 5. 6. (Ⅵ). 7. Joseph. A・. Porter. The. Drama. of SPeech. Acts. (1979), p. 95 このクイックリーの台詞の見事さについて,次を参照のこと. Brian Vickers : The Artistry Prose of Sh2'kesPeare's (1968), p. 123. Sigurd Burckhardt : ShakesPe-can Meanings (1968)Chap. Ⅵ参照o第一部において 実力によって王位につく競争原理が,第二部において血統による王位継承説が,それぞれあ :. るという主張が展開されている。 A・ R・ Humphreysは,ウェスモアランドの台詞の正確さの保障ほ史実に忠実であるこ とによると注記している。 Emrys. Jones. :. Scenic. From. in ShakesPe-e. (1971). pp.. 39-40にすぐれた分析があるo. 彼の説にここでほ全面的に依拠している. Kristian. Smidt. Unconformiiies. (Ⅶ). 8. 付記. この論文の一部ほ,昭和58年10月22日シェイクスピア学会で発表したものである。. :. in. ShakesPeare's. History. Plays. の殴打事件がなぜ省略されたか,やや違う説が述べられているo. (1982). p.. 111にこ.

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