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IRUCAA@TDC : 摂食・嚥下リハビリテーションの実際 補綴装置による対応 舌接触補助床(PAP)の使用法

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

摂食・嚥下リハビリテーションの実際 補綴装置による対

応 舌接触補助床(PAP)の使用法

Author(s)

杉山, 哲也; 大久保, 真衣; 石田, 瞭

Journal

歯科学報, 112(4): 463-465

URL

http://hdl.handle.net/10130/2857

Right

(2)

―――― カラーアトラス ――――

摂食・嚥下リハビリテーションの実際

補綴装置による対応 −舌接触補助床(PAP)の使用法−

いし だ りょう すぎ やま てつ や

杉 山 哲 也,

おお く ぼ ま い

大久保 真 衣,石 田

東京歯科大学千葉病院摂食・嚥下リハビリテーション・地域歯科診療支援科

(3)

カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説

1.はじめに 摂食・嚥下障害を有する患者に対して,嚥下機能 の改善を目的として補綴装置を製作し口腔内に装着 する場合がある。例えば先天性の口蓋裂症例に対す る Hotz(ホッツ)床,口腔癌術後の顎欠損症例に対 する顎義歯や舌運動障害症例に対する舌接触補助床 (PAP:palatal augmentation prosthesis),鼻咽腔閉 鎖不全症例に対する軟口蓋拳上装置(PLP:palatal lift prosthesis)などである。今回は平成23年度より 健康保険に導入された PAP について,その適応症 や製作方法について解説する。 2.PAP とは PAP とは舌の切除や萎縮,運動障害によって舌 と口蓋の接触が不十分なために食物の送り込みがで きない症例に対して,口蓋の形態を変えることで舌 の機能障害を補い,摂食・嚥下障害や発音障害の改 善を行うことを目的とした装置のことである。上顎 に歯の欠損がある義歯装着者に対しては,口蓋部分 の義歯床を舌運動機能に応じて肥厚させ,上顎に歯 の欠損がない患者に対しては,口蓋部分を舌運動機 能に応じて肥厚させた口蓋床を製作する(図1)。 適応症は舌腫瘍や口腔底腫瘍の術後等の器質的な 摂食・嚥下障害症例,および脳血管障害後遺症や神 経筋疾患等の機能的な舌の運動障害性の摂食・嚥下 障害症例である。口蓋部分を厚くすることで嚥下障 害の改善が期待されるだけでなく,構音点の回復に よって硬口蓋部で産生される子音が明瞭になるなど の構音機能の改善も期待できる。しかし効果的な構 音機能の改善には,適切な PAP の適用とともに言 語聴覚士による専門的な言語治療を行うことが望ま しい。 「摂食・嚥下障害,構音障害に対する舌接触補助 床(PAP)の診療ガイドライン1) 」では,「PAP は頭 頸部癌症例の嚥下障害に対して有効か?」というク リニカルクエスチョン(CQ)に対する推奨度は B(行 うよう勧められる)であり,「PAP は頭頸部癌以外 の症例の嚥下障害に対しても有効か?」という CQ に対しては推奨度 C1(行うことを考慮してもよい) となっている。また「構音障害に対しても有効か」 という CQ に対しても頭頸部癌症例で推奨度 B,そ れ以外の症例で推奨度 C1 となっている。 3.PAP の効果 口腔底・舌亜全摘および下顎骨舌側切除術を施行 した無歯顎症例の嚥下造影検査(VF)の結果を示す (図2)。PAP 未装着では食塊保持困難,舌(口腔底 部)の蠕動運動不全が認められ,頭部を後屈させて 咽頭部に食塊を落とし込み,喉頭蓋谷,食道入口部 に貯留させてから飲み込む方法をとっていた。PAP を装着すると最初の数回は口腔底部が舌の蠕動運動 のように動いている様子が認められ,頭部を後屈す ることなく食塊を送り込んで嚥下しており,口腔内 の食塊が少なくなると頭部を後屈させて移送してい た。このように PAP の装着により食塊の送り込み や嚥下に明らかな違いが認められる症例がある。 4.PAP 口蓋部の製作法(図3∼4) 確立された PAP の製作法や調整法というものは ないが,比較的簡便な方法として以下のような方法 がある。 1)使用可能な義歯がない場合は新義歯あるいは新 たな口蓋床を製作する。 2)口蓋部分に粘膜調整材を盛り,空嚥下や発音 (タ,カなど)を行わせて舌の運動範囲を印記する。 可能であればフードテストを行い,食塊の残留程 度をみながら粘膜調整材の量と形態を調整する。 3)実際に使用してもらいながら粘膜調整材で機能 的な口蓋部の形態を仕上げていく。 4)主観的,客観的に安定したところで粘膜調整材 をレジンに置換する。 5.PAP 応用時の注意点 PAP は必ず口蓋部を広く覆う形態となる。従っ て PAP 装着で口蓋部の知覚が失われ,嚥下反射, 食塊の認識および舌接触の認知に少なからず影響が 生じる。結果として期待された嚥下機能の改善が得 られない場合もある。また試行錯誤で口蓋部の形態 を調整していくため,望ましい形態が得られるまで の調整に予想以上の手間がかかる場合がある。また 舌運動機能の回復に合わせて長期的に口蓋部の形態 を修正していく必要もある。ともあれ PAP は他の 摂食・嚥下リハビリテーションとの組合せで用いら れるものであり,摂食・嚥下リハビリテーションの 一環としての手技のひとつであるということを忘れ てはならない。 文 献 1)摂食・嚥下障害,構音障害に対する舌接触補助床(PAP) の診療ガイドライン http://www.hotetsu.com/s/doc/ guideline_pap.pdf,一般社団法人日本老年歯科医学会,社 団法人日本補綴歯科医学会,平成23年3月

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摂食・嚥下リハビリテーションの実際

補綴装置による対応 −舌接触補助床(PAP)の使用法−

杉 山 哲 也,大久保 真 衣,石 田

東京歯科大学千葉病院摂食・嚥下リハビリテーション・地域歯科診療支援科 a.総義歯型 b.局部義歯型 c.口蓋床型 図1 舌接触補助床の種類 上顎の歯の欠損状態により,総義歯型(a),局部義歯型(b),口蓋床型(c)に分けられる。 a.安定した口蓋部の形態の石膏コア(右)を採得 b.片側(左側)の粘膜調整材を除去 d.片側(左側)のみレジンに置換 したころ c.石膏コアを使用して片側のみに レジンを塡入 e.同様に反対側(右側)も石膏コアを利用 して粘膜調整材をレジンに置換 図4 口蓋部粘膜調整材のレジンへの置換方法 図3 口蓋部の調整法 使用中の義歯などの口蓋部に粘膜調整材をやや多めに盛り,硬化までの間に空嚥 下や発音(タ,カなど)を指示し,舌の可動域を印記する。可能であればフードテス トを行い,食塊の残留程度をみながら粘膜調整材の量を調整する。何回か使用して もらいながら口蓋部の形態を形作っていく。 図2 PAP 装着の有無による食品 摂取状況の違い PAP 未装着(a)では,食塊保 持困難で頭部を後屈させること により咽頭部に落とし込むよう に食塊を移送し,嚥下している。 PAP 装着(b)では,最初の数回 は口腔底部を蠕動運動のように 動かしながら頭部を後屈させる ことなく食塊を移送し,嚥下し ている。 a.PAP 未装着 b.PAP 装着

参照

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