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地域の資源を活用した住宅づくり : 田辺「木の国の家」推進事業について (平成14年度事業中間報告)

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Academic year: 2021

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−18− 1 はじめに―「木の国の家」推進事業とは  魅力と活力に富んだ都市を創り出すために、必要なこと は何だろうか。都市をまず、人々が住まう場としてとらえ た場合に、必要なことは、快適で良質な住宅ストックの形 成であろう。そして、こうした住宅ストックの形成が、そ の地域に存在する資源と技術を活用して実現されるならば、 地域産業の活性化に寄与し、生産→流通→消費が地域のな かで循環する経済、つまり地域循環型経済の発展に寄与す るものとなるであろう。  こうしたアイデアにもとづいて、近年、田辺市商工会議 所は「木の国の家」推進事業に取り組んでいる。地元の建 築家、林業家、工務店、さらに消費者、行政、大学の研究 者が参加して、「木の国の家推進委員会」を組織し、「紀 州材をつかった紀州の家」づくりに取り組んでいる。  「木の国の家」推進事業は他府県からも注目されている。 昨年10月、きのくに活性化センターの支援を受けて、「地 域の資源と文化を活かす住まいづくり・コミュニティづく り」をテーマとするセミナー、シンポジウムが田辺市で開 催され、関西および和歌山の研究者・学生・市民が多数参 加した。シンポジウムでは「木の国の家推進委員会」のメ ンバー諸氏もパネリストとして活躍し、参加者の強い関心 を呼んだ。  そこで、この「木の国の家」推進事業の概要について紹 介したい。以下の紹介は、「木の国の家推進委員会」委員 長である中村伸吾氏(建築家)から提供いただいた資料に よるものである。 2 「木の国の家」推進事業の目的  「木の国の家」推進事業は、田辺商工会議所が取り組む 4.研究会「都市創造戦略研究会」  

地域の資源を活用した住宅づくり

―田辺

「木の国の家」

推進事業について―

都市創造戦略研究会        研究リーダー 

大 泉 英 次

(和歌山大学経済学部教授)

(2)

−19− 地域経済活性化策の一環である。この事業の目的は、田辺 商工会議所中小企業相談室長の田ノ岡比呂志氏によれば、 つぎの通りである。 (1)新しい住宅供給システムを構築することで、地場産 業の振興を図り、地域循環型経済の活性化に貢献する。 (2)新 し い 住 宅 供 給 シ ス テ ム を 仲 立 ち と し て、環 境 (森)と人(街・住まい)との関係を再構築し、紀州の環 境保全に貢献する。 (3)環境(森)との関係を保ち、紀州のアイデンティ ティを意識した「木の国の家」を開発・建設することで、 住まう人々の快適生活を実現する。 (4)「木の国の家」を良質な紀州材で建築することによ り、個人財産としての価値を高めると同時に、優良な公共 財産として蓄積されることで、紀南らしい街並みの形成に 寄与する。 (5)地元職人の仕事量を確保し、技能の復権に貢献する。 3 「木の国の家」推進事業の実際  以上のような事業目的を具体化するために、「木の国の 家 推 進 委 員 会」の も と に 専 門 家 チ ー ム「木 国 家 kiguniya」(きぐにや)が設けられている。これは、紀州 材を使用した「木の国の家」を実際に設計・施工・材料供 給する組織である。田辺商工会議所と連携しながら、住宅 建設の川上から川下までを地域にねざした形でリンクする 新しい住宅供給システムのモデルケース構築に携わってい る。  「木国家 kiguniya」の活動の特徴は、「山(林業)と 街(住宅設計者・施工者・建主)をつなぐネットワークづ くり」、「住宅建設の川上と川下(山と設計者と職人)の 協業づくり」である。  住宅建築の工業化が進展し、全国どこでも同じような住 宅が建設されている。建築用材は国産材から輸入材にとっ てかわられ、林業は衰退の一途をたどっている。地方の工 務店は、大手メーカーとの競争のなかで量産化技術を導入 し、地元材の性能を引き出す伝承技術を放棄しようとして いる。その結果、住宅建設はそれぞれの地方を代表する地 場産業としての性格を失っている。「木国家 kiguniya」

(3)

−20− の活動は、こうした状況にたいする強い危機意識にもとづ いている。 4 「木の国の家」推進事業の意義  「木の国の家」推進事業の意義は、さきに紹介した同事 業の目的に尽くされている。これに私が思うところを付け 加えるなら、つぎのようになる。  近年、地域づくり、都市づくりの課題として、「コミュ ニティ・エンパワーメント」そして「コミュニティ・マネ ジメント」ということが重要視されている。「コミュニ ティ・エンパワーメント」とは、地域の資源(自然資源・ 文化資源・技術・人材)を継承し活用する能力を高めるこ とである。「コミュニティ・マネジメント」とは、地域の 資源を活用しながら、地域の様々な活動主体の連携を効果 的に組織し、地域の共通目標を達成する能力をいう。  「木の国の家」推進事業は、この2つの地域力を高める うえで大きな意義を持っていると思われる。田辺商工会議 所は、この事業を「自治体・会議所・業者が一体となった だけでなく、女性を中心に地域の住民が加わり、住宅や生 活の環境からまちづくりまでの大きなテーマに主体的に取 り組んでいる」という意味で、新しい「地域の協働システ ム」の先例となりうる、と考えている(田ノ岡氏)。  「木国家 kiguniya」の活動の成果として、すでに数戸 の住宅が建設されている。「木の国の家」推進事業が、地 域力を高めるユニークな先進事例として発展しつづけるこ とを強く期待したい。

参照

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