学校現場における図画工作科の現状と教師の意識と子どもの学びについての一考察
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(2) るようだ。その場合技法を教えることが重点的になっ. としては、価値判断を自分の外側、他人に任せている. ている。実際の指導になると、教材研究をする時間が. ことになり、自己の判断ではない。それゆえ、自分が. ないため、子どもの感性や創造的な力を育てる時間で. 絵に表した結果を鑑賞することで効果的な表現の学び. あるという図画工作科の目標と教員の意識がずれてい. はあっただろうが、自らの内的な力を発揮した創造的. るという問題点が課題として浮かび上がった。. な学びにはなっていない。. Bグループのように、表現方法のヒントを例示し、. 第3章 現職教員の児童の絵画作品に対する指導. 自分のイメージに合わせて選択させる指導では、判断. 観の傾向. が児童それぞれの自己にゆだねられているので、自分. 2章の調査からより具体的な課題として、子どもの. が描きたかったイメージに近いか、自分で考えて工夫. 絵画表現と技能の指導に焦点化して調査を実施するこ. できたか、精いっぱい頑張ったかを価値基準としてい. とにした。教員が子どもの表現より作品の完成イメー. る。そのことから、表現が子ども自身の試行錯誤によ. ジを優先して指導をしているのではないかと考え、児. る創造的な学びとなっていると考えられた。しかし、. 童作品の捉え方、指導観を絵に表す行為(絵画)作品. 造形的なはっきりとした価値基準がないため、それぞ. で調査することによりその実態を明らかにした。. れが工夫を凝らした作品であっても、全体に満足感が. アンケート調査の結果、教員の共通の価値観は、大. 低くなってしまっていた。. きく描くことであった。また、学年が上がるごとに、. 子どもが持ったイメージよりも技能面が高いことを評. 4.今後の課題. 価し、それを指導することに価値観を見出している。. 図画工作科の「造形的な創造活動」を重視するので. 特に高学年では、技能面での指導に大きな価値観を見. あれば、教え込まずに気付く教育をめざし、子どもに. 出している。また、どの学年も生活にそくした題材を. よる子どもにとっての「発見」=「子どもにとっての. 選ぶことに価値をおいている記述が多く見られた。. 価値ある新しさ」を中心にした教育を教育現場で実現 する努力が必要だろう。しかし、実際に授業をするに. 第4章 教員の意識と子どもの学びへの影響につ. あたっては、子どもの中に造形的な価値観が育ってい. いて. なければr子どもの発見」によっての表現方法も不安. このような技能面を重視した意識で、見栄えがする. 感が残ったり、稚拙な表現で満足したりしているなど. ように大きく描くことを推奨し、実際に指導がされた. の問題点があることがわかった。低学年の段階から鑑. とき、子どもの学びにどのような影響があるのか、図. 賞教育や造形遊びなどの体験を充実させ、造形的な価. 画工作科の特徴である造形的な創造活動を行うことが. 値観を育てる必要性が示唆される。2章の調査から、. できるのか、絵で表す行為の授業を実践することによ. その研究をする時間がないことがこれまでの調査で明. り、調査した。. らかになった。近年、団塊の世代と呼ばれる教員の退. 調査方法としてA,Bの教育観の違いに基づく2つの. 職に伴う新任教員の増加により、経験の少ない教員が. 授業アプローチによる子どもへの影響を比較検討した。. 増加した。そのような教員にも図画工作科の目標の理. Aグループは第2章、第3章でのアンケートに示され. 解がされ、図画工作科のr造形的な創造活動」が重視. た見栄えがするように大きく描くことが良いという価. された指導が子どもたちに届くように、日々の教育活. 値観を前提にした授業を行い、Bグループは学習指導. 動の中で様々な教員に図画工作科の価値を分かり易く. 要領に基づいて子どものイメージを子どもが色と形を. 伝えるため努力していきたい。. 工夫して表す指導を行った。その結果、Aグループの ように教師が造形的に固定的な価値観を持って児童を. 5.主要参考文献. 誘導的に指導した場合、教師の望むような作品群が作. 文部科学省ウェブサイト<幽旦>. られ、児童もその価値観を信じ、それに添うような絵. (2010/12/19アクセス). を描けたかどうかで自分や他の児童の作品も評価した。. 恩田彰、『創造教育の展開』、1994恒星杜厚生閣. そのため、価値基準が単純ではっきりとしているので、. 主任指導教員(福本謹」). 達成できると満足感も大きい。しかし、子どもの学び. 指導教員(高木厚子). 一379一.
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